説明

スタッド状部材の固定構造及びスタッド状部材の固定構造体の製造方法

【課題】スタッド状部材のベース金具に対する固定部位の耐荷重強度を確保することが出来る、新規なスタッド状部材の固定構造を提供することを、目的とする。また、スタッド状部材の固定構造体の製造方法を提供することも、目的とする。
【解決手段】スタッド状部材14に設けられた環状当接突部22とベース金具16の対向面の一方から他方へ向かって突出する溶接突起40が周上で複数形成されており、これら複数の溶接突起40によって環状当接突部22とベース金具16が溶着されていると共に、スタッド状部材14の基端部に設けられた筒状かしめ加工部20にかしめ加工が施されてかしめ部68とされており、かしめ部68によるかしめ力が溶着された環状当接突部22とベース金具16の重ね合わせ部分に及ぼされて環状当接突部22とベース金具16の対向面24,60が密着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッド状部材の基端部をベース金具に固定することにより、その先端部をベース金具から突出させたスタッド状部材の固定構造及びスタッド状部材の固定構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、スタッド状部材の基端部をベース金具に固定することにより、その先端部をベース金具から突出させたスタッド状部材の固定構造が知られている。例えば、特許文献1には、ベース金具としての補強板に対してスタッド状部材としてのスタッドボールが溶接によって固定されたバックドアステーのスタッドボール固着構造が開示されている。
【0003】
ところで、ベース金具に固定されたスタッド状部材には、特許文献1にも記載されているように、自動車のバックドア等の開閉体の開閉操作に用いられるダンパの一端が取り付けられるようになっている。従って、スタッド状部材とベース金具との固定部分には、開閉体の開閉操作に際して、開閉体の重量に耐え得るだけの耐荷重強度が必要になる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の如く、スタッドボールを補強板に溶接して固定するだけでは、スタッドボールと補強板の固定部分の耐荷重強度を確保することが難しいという問題があった。
【0005】
なお、特許文献2には、金属製のボールジョイントを樹脂製のブラケット本体に一体成形することが開示されている。しかしながら、金属製のボールジョイントを樹脂製のブラケット本体に一体成形する場合、ボールジョイントそのものの強度とブラケット本体そのものの強度の違いにより、ボールジョイントとブラケット本体の固定部分においてブラケット本体が破損し易いという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−35670号公報
【特許文献2】特許第3679041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、スタッド状部材のベース金具に対する固定部位の耐荷重強度を確保することが出来る、新規なスタッド状部材の固定構造を提供することにある。
【0008】
また、本発明は、スタッド状部材の固定構造体の製造方法を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0010】
本発明は、スタッド状部材の基端部をベース金具に固定して、その先端部をベース金具から突出させたスタッド状部材の固定構造において、ベース金具には、スタッド状部材の基端部が挿通される挿通孔が形成されている一方、スタッド状部材には、基端部において、軸方向外方に突出する筒状かしめ加工部が設けられていると共に、筒状かしめ加工部よりも先端部側の位置において、外周面上に突出して挿通孔の開口周縁部に重ね合わせられる環状当接突部が設けられており、環状当接突部とベース金具の対向面の一方から他方へ向かって突出する溶接突起が周上で複数形成されて、これら複数の溶接突起によって環状当接突部とベース金具が溶着されていると共に、スタッド状部材の筒状かしめ加工部にかしめ加工が施されてかしめ部とされており、かしめ部によるかしめ力が溶着された環状当接突部とベース金具の重ね合わせ部分に及ぼされて環状当接突部とベース金具の対向面が密着されていることを、特徴とする。
【0011】
このような本発明に従うスタッド状部材の固定構造においては、複数の溶接突起による環状当接突部とベース金具の溶着固定構造だけでなく、かしめ部によるかしめ固定構造も採用されていることから、これら溶着固定構造とかしめ固定構造の相乗的な作用に基づいて、スタッド状部材をベース金具に対して強固に且つ安定した状態で固定することが可能となる。
【0012】
すなわち、本発明においては、ベース金具を挟んでベース金具と環状当接突部の溶着部分とは反対側にかしめ部が位置せしめられていることから、スタッド状部材の軸方向や軸直角方向に荷重が加わったとしても、環状当接突部とベース金具の溶着部分に対して、負荷がかかり難くなる。これにより、スタッド状部材のベース金具に対する固定強度を確保することが可能となる。その結果、スタッド状部材をベース金具に対して強固に且つ安定した状態で固定することが出来るのである。
【0013】
特に、本発明では、溶着された環状当接突部とベース金具の重ね合わせ部分に対して、かしめ部によるかしめ力が及ぼされることにより、環状当接突部とベース金具の対向面が密着されていることから、複数の溶接突起のそれぞれを潰して環状当接突部とベース金具を溶着した際に、環状当接突部とベース金具の間に微小な隙間が残っていたとしても、かかる溶着後の残存微小隙間をなくして、環状当接突部のベース金具に対する対向面の全体をベース金具に当接せしめることが可能となる。その結果、環状当接突部とベース金具の溶着後の残存微小隙間への雨水等の浸入に起因する腐蝕や、それに伴うスタッド状部材の固定強度の低下等の問題も防止することが出来る。
【0014】
なお、本発明において、スタッド状部材とは、ベース金具から突出するように設けられて、その先端部に他の部材が取り付けられるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、自動車におけるバックドア等の開閉体を開閉するための開閉機構を構成するダンパの一端が取り付けられるボールスタッドであっても良いし、ボルト等であっても良い。
【0015】
また、本発明においては、複数の溶接突起が何れもベース金具に一体形成されていることが望ましい。これにより、溶接突起をプレス加工で形成することが容易になる。
【0016】
そこにおいて、複数の溶接突起が何れもベース金具に一体形成されている場合には、ベース金具に対するプレス加工によって複数の溶接突起がベース金具の表面側に突出して形成されていると共に、それら溶接突起のプレス形成に伴ってベース金具の裏面に開口形成された複数のプレス凹部が、それぞれの少なくとも一部をかしめ部を外周側に外れて開口せしめられていることが望ましい。これにより、雨水等がプレス凹部に溜まってしまうことを防止できる。
【0017】
なお、このような構成を採用する場合には、各プレス凹部の全体を開口させることが望ましい。これにより、プレス凹部への水の滞留を有利に回避することが可能となる。また、プレス凹部の開口をかしめ部で全体に亘って覆って密閉状態で蓋することも、勿論可能である。この場合、プレス凹部への水の浸入そのものを防止できる。
【0018】
また、かしめ部が必要以上に大きくならないことから、筒状かしめ加工部をかしめ加工してかしめ部を形成する際に、かしめ部が割れてしまうことを有利に回避することが可能となる。
【0019】
更にまた、本発明は、スタッド状部材の基端部をベース金具に固定して、その先端部をベース金具から突出させたスタッド状部材の固定構造体の製造方法において、(a)スタッド状部材の基端部が挿通される挿通孔を備えたベース金具を準備するベース金具準備工程と、(b)軸方向一方の基端部において軸方向外方に突出する筒状かしめ加工部が設けられていると共に、筒状かしめ加工部よりも軸方向他方の先端部側の位置において外周面上に突出して挿通孔の開口周縁部に重ね合わせられる環状当接突部が設けられているスタッド状部材を準備するスタッド状部材準備工程と、(c)スタッド状部材の基端部をベース金具の挿通孔に挿通せしめた状態で互いに対向せしめられるスタッド状部材の環状当接突部とベース金具との対向部分において、それらの対向面の一方から他方へ向かって突出する溶接突起を周上で複数形成する溶接突起形成工程と、(d)スタッド状部材の基端部をベース金具の挿通孔に挿通させた状態で、スタッド状部材の環状当接突部とベース金具における対向部分を複数の溶接突起によって溶着する溶着工程と、(e)スタッド状部材の基端部をベース金具の挿通孔に挿通せしめて、ベース金具の裏面に突出させた筒状かしめ加工部にかしめ加工を施すことにより、ベース金具の裏面で挿通孔の周囲に当接せしめられたかしめ部を形成し、かしめ部によるかしめ力を溶着された環状当接突部とベース金具の重ね合わせ部分に及ぼすかしめ加工工程とを、備えていることを、特徴とする。
【0020】
このような本発明に係るスタッド状部材の固定構造体の製造方法に従えば、所望の耐荷重強度を有するスタッド状部材の固定構造体を実現することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0022】
図1乃至4には、本発明に係るスタッド状部材の固定構造の一実施形態としてのスタッド固定構造10を有するスタッド状部材の固定構造体としてのダンパ取付部材12が示されている。このダンパ取付部材12は、スタッド状部材としてのボールスタッド14がベース金具としてのブラケット16に固定された構造とされている。
【0023】
より詳細には、ボールスタッド14は、鉄鋼等の金属材料で形成されており、図5及び図6において単品図が示されているように、全体として中実のロッド形状を呈している。
【0024】
また、ボールスタッド14には、軸方向一方の端面に開口する開口穴18が形成されている。これにより、ボールスタッド14の軸方向一方の端部には、ボールスタッド14の軸方向に延びる筒状かしめ加工部20が設けられている。特に本実施形態では、筒状かしめ加工部20は、略一定の内外径寸法で軸方向にストレートに延びる薄肉円筒形状を呈している。
【0025】
さらに、ボールスタッド14には、筒状かしめ加工部20よりも軸方向他方の側において、全周に亘って軸直角方向外方に向かって突出する環状当接突部22が設けられている。特に本実施形態では、環状当接突部22の軸方向一方の端面24が、軸直角方向に広がる円環状の平面とされている。
【0026】
更にまた、ボールスタッド14の軸方向他端には、ダンパ26(図15参照)が連結されるボール部28が設けられている。
【0027】
なお、このことから明らかなように、本実施形態では、軸方向一端部が基端部とされている一方、軸方向他端部が先端部とされている。
【0028】
一方、ブラケット16は、鉄鋼等の金属材で形成されており、図7及び図8において単品図が示されているように、ボルト孔30が形成された取付板状部32と、かかる取付板状部32から起立するように設けられた縦板状部34を備えている。
【0029】
また、ブラケット16の縦板状部34には、板厚方向に貫通する挿通孔36が形成されている。特に本実施形態では、挿通孔36の内径寸法は、後述の如く挿通孔36に挿通されるボールスタッド14の外径寸法よりも僅かに大きくされている。
【0030】
そして、本実施形態では、挿通孔36の開口周縁部38において、縦板状部34の厚さ方向一方の側(表面側)に突出する溶接突起40が、複数(本実施形態では、三つ)形成されている。特に本実施形態では、これら複数の溶接突起40は、周方向に等間隔に並んで形成されている。
【0031】
また、本実施形態では、複数の溶接突起40は、互いに同じ形状及び大きさで形成されている。特に本実施形態では、各溶接突起40は円形ブロック形状を呈している。また、各溶接突起40の突出高さは、特に限定されるものではないが、溶着による固定強度を確保するために、0.5mmよりも大きいことが望ましい。
【0032】
続いて、上述の如きボールスタッド14とブラケット16が固定されたダンパ取付部材12の製造方法について説明する。
【0033】
先ず、上述の如きボールスタッド14を準備するスタッド状部材準備工程としてのボールスタッド準備工程を実施する。具体的には、例えば、鍛造によって形成された加工前スタッド部材に対して軸方向一方の端面に開口する開口穴18を切削によって形成することで、図5及び図6に示されているように、軸方向一端側に筒状かしめ加工部20が形成されていると共に、かかる筒状かしめ加工部20よりも軸方向他端側に環状当接突部22が形成されたボールスタッド14を得る。
【0034】
次に、上述の如きブラケット16を準備するベース金具準備工程としてのブラケット準備工程を実施する。具体的には、板材を所定の形状に切断加工乃至は打抜加工すると共に、ボルト孔30と挿通孔36を打抜加工によって形成し、更に、曲げ加工を施すことにより、図7及び図8に示されているように、挿通孔36を備えたブラケット16を得る。
【0035】
そこにおいて、本実施形態では、挿通孔36を打抜加工で形成した後、曲げ加工を施す前の加工前板状部材42に対して、図9に示されているように、一対の金型44a,44bを用いてプレス加工(エンボス加工)を施すことにより、複数の溶接突起40を挿通孔36の開口周縁部38に形成する溶接突起形成工程が実施されるようになっている。
【0036】
具体的には、一方の金型44aに形成された突起46を加工前板状部材42の厚さ方向他方の面に押し当てて、他方の金型44bにおいて一方の金型44aの突起46と対応する位置に形成された凹所48内に加工前板状部材42の一部を押し込むことにより、複数の溶接突起40を挿通孔36の開口周縁部38に形成するようになっている。これにより、加工前板状部材42、ひいては、ブラケット16において、厚さ方向他方の側(裏面側)で溶接突起40と対応する位置にプレス凹部50が形成されることとなる。
【0037】
なお、上述の説明から明らかなように、本実施形態では、溶接突起形成工程がブラケット準備工程に含まれている。また、エンボス加工は、加工前板状部材42に曲げ加工を施した後に実施しても良い。
【0038】
次に、ボールスタッド14の環状当接突部22とブラケット16を複数の溶接突起40で溶着する溶着工程を実施する。具体的には、先ず、図10に示されているように、プロジェクション溶接をするための溶接装置において一方の電極を構成するベッド52に対して、ブラケット16の縦板状部34を重ね合わせる。また、ボールスタッド14を軸方向一端側から挿通孔36に挿通して、ボールスタッド14の環状当接突部22を挿通孔36の開口周縁部38に突出形成された複数の溶接突起40のそれぞれの突出端面に当接させる。なお、この状態で、筒状かしめ加工部20は、ベッド52に形成された収容穴54内に位置せしめられている。また、本実施形態では、挿通孔36の内径寸法が、ボールスタッド14において筒状かしめ加工部20と環状当接突部22の間に位置する部分の外径寸法よりも僅かに大きくされていることから、挿通孔36の内周面とボールスタッド14の外周面との間には、僅かな隙間しか形成されていない。これにより、ボールスタッド14と挿通孔36を略同心軸上に位置せしめることが容易に可能となる。
【0039】
続いて、図11に示されているように、他方の電極としての可動側電極56を環状当接突部22に押し当てて、環状当接突部22を複数の溶接突起40に押し付ける。なお、この状態で、ボールスタッド14における環状当接突部22よりも軸方向他端側の部分は、可動側電極56に形成された収容穴58内に位置せしめられている。
【0040】
そして、この状態で、ベッド52(一方の電極)と可動側電極56(他方の電極)の間に大電流を流して、環状当接突部22と溶接突起40の接触部分を溶かす。その際、環状当接突部22は、可動側電極56によって、複数の溶接突起40に押し付けられていることから、環状当接突部22と溶接突起40の接触部分が溶けると、図12に示されているように、複数の溶接突起40のそれぞれが潰れる。その結果、挿通孔36の開口周縁部38の厚さ方向一方の面60と環状当接突部22の軸方向一方の端面24との間に僅かな隙間が形成された状態で、環状当接突部22と縦板状部34が溶着固定されている。なお、図12及び後述する図13においては、溶接突起40が残っていることにより、環状当接突部22の軸方向一方の端面24と挿通孔36の開口周縁部38の厚さ方向一方の面60の間に隙間が形成されていることを示すために、溶接突起40を過大表示している。また、このことから明らかなように、本実施形態では、挿通孔36の開口周縁部38と環状当接突部22が互いに対向せしめられる対向部分を構成している。そして、本実施形態では、挿通孔36の開口周縁部38の厚さ方向一方の面60と環状当接突部22の軸方向一方の端面24のそれぞれが対向面とされている。
【0041】
次に、ボールスタッド14の筒状かしめ加工部20に対してかしめ加工を施すかしめ加工工程を実施する。具体的には、ボールスタッド14が溶着固定されたブラケット16を、図13に示されているように、プレス機械のダイ62にセットする。この状態から、パンチ64によって筒状かしめ加工部20に軸方向の外力を及ぼすことにより、筒状かしめ加工部20を軸方向に圧縮するように変形せしめる。このようにプレスによるかしめ加工を、筒状かしめ加工部20に施すことにより、図14に示されているように、挿通孔36の開口周縁部38の厚さ方向他方の面66側(裏面側)にかしめ部68を形成する。なお、本実施形態では、かしめ部68の外径寸法は、環状当接突部22の外径寸法よりも小さくされている。特に本実施形態では、かしめ部68において縦板状部34に重ね合わせられている部分よりも径方向外方に複数のプレス凹部50が位置するようになっている。これにより、本実施形態では、ボールスタッド14の軸方向の投影において、プレス凹部50がかしめ部68で隠れるようになっているが、プレス凹部50の開口がかしめ部68で覆われていない。
【0042】
そこにおいて、上述の如くかしめ部68を形成する場合、かしめ部68によるかしめ力が環状当接突部22と縦板状部34の溶着部分に及ぼされることにより、環状当接突部22の軸方向一方の端面24と縦板状部34の厚さ方向一方の面(挿通孔36の開口周縁部38における厚さ方向一方の面60)の間に残っていた隙間がなくなる。これにより、環状当接突部22の軸方向一方の端面24と、縦板状部34の厚さ方向一方の面(挿通孔36の開口周縁部38の厚さ方向一方の面60)が密着される。その結果、縦板状部34に形成された挿通孔36の開口周縁部38が環状当接突部22とかしめ部68によって厚さ方向両側から密着状態で挟まれることとなる。
【0043】
そして、上述の如くボールスタッド14の軸方向一端が縦板状部34に固定されることにより、ボールスタッド14の軸方向他端が縦板状部34から突出したスタッド固定構造10を有するダンパ取付部材12が製造される。
【0044】
このような構造とされたダンパ取付部材12は、図15に示されているように、取付板状部32のボルト孔30に挿通された取付ボルト70によって、取付板状部32が自動車の後部開口周縁部分72に重ね合わせられて固定される。そして、この状態で、ボールスタッド14の先端部に設けられたボール部28に対してダンパ26の一端が取り付けられる。なお、図示はしていないが、ダンパ26の他端は、自動車の後部開口を覆蓋するバックドアに取り付けられた、他のダンパ取付部材12のボール部28に取り付けられている。
【0045】
上述の如きスタッド固定構造10を有するダンパ取付部材12においては、縦板状部34の厚さ方向一方の側において、ボールスタッド14の環状当接突部22と縦板状部34に形成された挿通孔36の開口周縁部38が溶着されていると共に、縦板状部34の厚さ方向他方の側において、かしめ部68が縦板状部34に形成された挿通孔36の開口周縁部38に密着状態で重ね合わせられていることから、ボールスタッド14に対して、その軸方向や軸直角方向に荷重が加わったとしても、環状当接突部22と縦板状部34の溶着部分に負荷が加わり難くなる。これにより、ボールスタッド14を縦板状部34に対して強固に且つ安定して固定することが可能となる。その結果、ボールスタッド14の耐荷重強度を確保することが出来る。
【0046】
特に、上述の如きスタッド固定構造10においては、かしめ部68のかしめ力が環状当接突部22と縦板状部34の溶着部分に及ぼされることにより、環状当接突部22の軸方向一方の端面24と、縦板状部34の厚さ方向一方の面60が密着されている。これにより、環状当接突部22と縦板状部34の溶着に際して、僅かな隙間が残っていたとしても、かかる隙間を消失させることが出来る。その結果、環状当接突部22と縦板状部34の溶着後の残存隙間に雨水等が浸入することに起因する腐蝕や、それに伴うボールスタッド14の固定強度の低下等も回避することが可能となる。
【0047】
そこにおいて、本実施形態では、複数の溶接突起40が何れも縦板状部34の挿通孔36の開口周縁部38に形成されていることから、複数の溶接突起40の形成が容易になる。
【0048】
また、本実施形態では、溶接突起40のプレス形成に伴って形成されるプレス凹部50がかしめ部68で覆い隠されないようになっていることから、プレス凹部50内に雨水等が入り込んで溜まることを有利に回避することが可能となる。
【0049】
加えて、本実施形態では、かしめ部68の外径寸法が環状当接突部22の外径寸法よりも小さくされていることから、かしめ部68を形成する際に、かしめ部68が割れる不具合の発生を回避することが出来る。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0051】
例えば、前記実施形態において、周方向に全周に亘って連続して延びる食込突起を環状当接突部22に設けておき、環状当接突部22と縦板状部34を溶着固定した際に、環状当接突部22に設けられた食込突起を縦板状部34に食込ませるようにしても良い。これにより、溶着後の環状当接突部22と縦板状部34の間に存在する隙間から雨水等が浸入することを防ぐことが可能となる。
【0052】
また、前記実施形態において、溶接突起40の形状は、円形ブロック形状に限定されるものではなく、例えば、半球状や立方体形状,円錐形状,三角錐形状,四角錐形状,円錐台形状等の各種形状が採用可能である。
【0053】
さらに、前記実施形態において、プレスによるかしめ加工ではなく、例えば、ローリングかしめ加工を施すことにより、かしめ部を形成するようにしても良い。
【0054】
更にまた、前記実施形態において、かしめ部68は、その軸方向中間部分が軸直角方向外方に突出する形状とされているが、かしめ部の形状は、このような形状に限定されるものではない。
【0055】
また、前記実施形態において、例えば、図16に示されているように、プレス凹部50の開口全体がかしめ部68で蓋されていても良い。或いは、図17に示されているように、ボールスタッド14の軸方向の投影で、プレス凹部50の開口全体がかしめ部68の外側にあっても良い。
【0056】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態としてのスタッド固定構造を有するダンパ取付部材を示す平面図。
【図2】同ダンパ取付部材を示す正面図。
【図3】同ダンパ取付部材を示す右側面図。
【図4】図1におけるIV−IV断面図。
【図5】図1のダンパ取付部材に採用されているスタッド状部材を示す正面図。
【図6】図5におけるVI−VI断面図。
【図7】図1のダンパ取付部材に採用されているブラケットを示す左側面図。
【図8】図7におけるVIII−VIII断面図。
【図9】溶接突起形成工程を示す説明図。
【図10】ブラケットがベッドにセットされている状態を示す溶接工程の説明図。
【図11】ボールスタッドの環状当接突部が可動側電極で押えられている状態を示す溶接工程の説明図。
【図12】溶接突起が潰れた状態を示す溶接工程の説明図。
【図13】ブラケットがプレス機械のダイにセットされた状態を示すかしめ工程の説明図。
【図14】かしめ加工によりかしめ部が形成された状態を示すかしめ工程の説明図。
【図15】図1のダンパ取付部材の使用状態を示す説明図。
【図16】本発明で採用可能なプレス凹部とかしめ部の関係を示す断面図。
【図17】本発明で採用可能なプレス凹部とかしめ部の位置関係の他の態様を示す断面図。
【符号の説明】
【0058】
10:スタッド固定構造,12:ダンパ取付部材,14:ボールスタッド,16:ブラケット,20:筒状かしめ加工部,22:環状当接突部,36:挿通孔,40:溶接突起,68:かしめ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッド状部材の基端部をベース金具に固定して、その先端部を該ベース金具から突出させたスタッド状部材の固定構造において、
前記ベース金具には、前記スタッド状部材の前記基端部が挿通される挿通孔が形成されている一方、該スタッド状部材には、該基端部において、軸方向外方に突出する筒状かしめ加工部が設けられていると共に、該筒状かしめ加工部よりも前記先端部側の位置において、外周面上に突出して該挿通孔の開口周縁部に重ね合わせられる環状当接突部が設けられており、該環状当接突部と該ベース金具の対向面の一方から他方へ向かって突出する溶接突起が周上で複数形成されて、これら複数の溶接突起によって該環状当接突部と該ベース金具が溶着されていると共に、該スタッド状部材の該筒状かしめ加工部にかしめ加工が施されてかしめ部とされており、該かしめ部によるかしめ力が溶着された該環状当接突部と該ベース金具の重ね合わせ部分に及ぼされて該環状当接突部と該ベース金具の対向面が密着されていることを特徴とするスタッド状部材の固定構造。
【請求項2】
複数の前記溶接突起が何れも前記ベース金具に一体形成されている請求項1に記載のスタッド状部材の固定構造。
【請求項3】
前記ベース金具に対するプレス加工によって複数の前記溶接突起が該ベース金具の表面側に突出して形成されていると共に、それら溶接突起のプレス形成に伴って該ベース金具の裏面に開口形成された複数のプレス凹部が、それぞれの少なくとも一部を前記かしめ部を外周側に外れて開口せしめられている請求項2に記載のスタッド状部材の固定構造。
【請求項4】
スタッド状部材の基端部をベース金具に固定して、その先端部を該ベース金具から突出させたスタッド状部材の固定構造体の製造方法において、
前記スタッド状部材の前記基端部が挿通される挿通孔を備えた前記ベース金具を準備するベース金具準備工程と、
軸方向一方の前記基端部において軸方向外方に突出する筒状かしめ加工部が設けられていると共に、該筒状かしめ加工部よりも軸方向他方の前記先端部側の位置において外周面上に突出して前記挿通孔の開口周縁部に重ね合わせられる環状当接突部が設けられている前記スタッド状部材を準備するスタッド状部材準備工程と、
前記スタッド状部材の前記基端部を前記ベース金具の前記挿通孔に挿通せしめた状態で互いに対向せしめられる該スタッド状部材の前記環状当接突部と該ベース金具との対向部分において、それらの対向面の一方から他方へ向かって突出する溶接突起を周上で複数形成する溶接突起形成工程と、
前記スタッド状部材の前記基端部を前記ベース金具の前記挿通孔に挿通させた状態で、該スタッド状部材の前記環状当接突部と該ベース金具における前記対向部分を複数の前記溶接突起によって溶着する溶着工程と、
前記スタッド状部材の前記基端部を前記ベース金具の前記挿通孔に挿通せしめて、該ベース金具の裏面に突出させた該筒状かしめ加工部にかしめ加工を施すことにより、該ベース金具の裏面で該挿通孔の周囲に当接せしめられたかしめ部を形成し、該かしめ部によるかしめ力を溶着された前記環状当接突部と前記ベース金具の重ね合わせ部分に及ぼすかしめ加工工程と
を、備えていることを特徴とするスタッド状部材の固定構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−275715(P2009−275715A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124584(P2008−124584)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(597073715)国分プレス工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】