説明

スタート板整備用保持装置

【課題】スタート板用原板をグラインダで研削してスタート板を整備する際に上記原板を良好に保持することができる。
【解決手段】二次溶解のスタート板を整備するための保持具であって、互いに対向しその対向間隔が一方から他方へ漸次拡大する一対のガイド壁54,55を備え、これらガイド壁54,55の間に略円形のスタート板用原板Mを受容する受け台5と、原板Mの外周の二箇所を両ガイド壁54,55にそれぞれ当接させるように原板Mの他の外周を押圧する押圧片6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次溶解のスタート板を整備するための保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次溶解炉、例えばエレクトロスラグ再溶解炉(ESR炉)においては、上方から吊設したスティンガーロッド先端のスタブに、消耗電極としてのインゴットの上端を把持し、当該インゴットと炉底においたダライ及びスタート板との間で放電を生じさせて消耗電極を溶解し逐次凝固させて再溶融インゴットを得ている。この際のスタート板は、前回操業時に使用したインゴットの溶け残りの上端部分(スタート板用原板)を使用することが多いが、その両面には凹凸があるために、従来はガウジングによって上記原板の両面の凹凸を除去している。なお、特許文献1にはこのような用途に使用できるアークエアーガウジング装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−50233
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガウジング作業で生じるヒュームは一般的なろ布集塵では良好に捕集できないために作業環境が良くないという問題がある。一方、グラインダで原板両面の凹凸を研削除去して整備することが考えられ、この場合はろ布集塵で粉塵を良好に捕集できるため作業環境の悪化を防止することができる。しかし、スタート板用原板は略円形でサイズがまちまちであるため、グラインダ作業時に上記原板を保持するための保持装置に適当なものがないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、スタート板用原板をグラインダで研削してスタート板を整備する際に上記原板を良好に保持することができるスタート板整備用保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、二次溶解のスタート板を整備するための保持具であって、互いに対向しその対向間隔が一方から他方へ漸次拡大する一対のガイド部材(54,55)を備え、これらガイド部材(54,55)の間に略円形のスタート板用原板(M)を受容する受け台(5)と、前記原板(M)の外周の二箇所を両ガイド部材(54,55)にそれぞれ当接させるように前記原板(M)の他の外周を押圧する押圧部材(6)とを備える。
【0007】
本第1発明においては、受け台の、対向間隔が一方から他方へ漸次拡大する一対のガイド部材の間にスタート板用原板を受容して、両ガイド部材と押圧部材によって上記原板の周方向三箇所を当接させて位置決めしているから、上記原板の外径が異なってもこれに無関係に原板を良好に保持することができる。
【0008】
本第2発明では、前記受け台(5)を、前記他方が上方となるように水平姿勢から傾動させる傾動機構(31)を備える。
【0009】
本第2発明においては、吊り下げ状態で供給されるスタート板用原板をスムーズにガイド部材間に受容させることができる。
【0010】
本第3発明では、前記受け台(5)を略水平面内で回転させる回転盤(4)と、前記受け台(5)上に受容された前記スタート板用原板(M)の中心を前記回転盤(4)の中心軸(C)に合致させるように前記受け台(5)を前記回転盤(4)上で直線移動させる移動機構(34)とを備える。
【0011】
本第3発明によれば、スタート板用原板をその外径に関係なく常にその中心回りに回転させることができるから、直線的に移動するスイング式グラインダ等で上記原板の前面を良好に研削することができる。
【0012】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明のスタート板整備用保持装置によれば、スタート板用原板をグラインダで研削してスタート板を整備する際に上記原板を良好に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】保持装置の部分断面側面図を示し、断面部は図2のI−I線に沿うものである。
【図2】保持装置の受け台部分の平面図である。
【図3】受け台を傾斜させた状態の保持装置の部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には保持装置の部分断面側面図を示す。図1において、装置の基板1上には傾動板2が配置してある。傾動板2は一端が、基板1上のブラケット11に支持された軸体12に回動自在に結合されて、その他端を図の矢印で示すように上方へ旋回可能となっている。基板1の側面と傾動板2の側面との間には傾動機構を構成する傾動シリンダ31が設けられて、当該傾動シリンダ31のロッド311を伸長させることによって傾動板2を所望の角度へ旋回傾斜させることができる。なお、傾動板2の端面にはモータ32が設けられている。
【0016】
傾動板2の上面には円形の旋回盤4が設けてある。旋回盤4はその中心軸C回りに回転可能に設けられており、その外周には、上記モータ32の出力軸321に設けたプーリ33に一端が懸架されたベルト331の他端が懸架されている。これにより、回転盤4はモータ32によって所望の速度で回転させられる。回転盤4上にはレール41が設けられてこれにスライダ42が載置されている。スライダ42には、回転盤4に設けた移動機構を構成するジャッキ34の駆動軸341が結合されており、ハンドル342を回転操作してジャッキ34を伸縮させることにより、スライダ42は回転盤4の中心を通ってこれを横切るように直線往復動可能である。
【0017】
スライダ42上には支軸43が立設されて当該支軸43に受け台5が設けてある。受け台5は図2に示すように左右一対の載片51,52から構成されており、これら載片51,52は、一定の間隔を離して支軸43の上端部でステー53によって互いに連結されている。各載片51,52は同一の略三角形状で互いに対称形に配置され、対向辺511,521が互いに平行に位置するとともに、外側辺512,522は一方に向けて傾斜している。そして、外側辺512,522にはこれに沿ってガイド部材たるガイド壁54,55が形成されている。このようなガイド壁54,55は互いに対向しその対向間隔が一方から他方へ漸次拡大している。
【0018】
左右の載片51,52の間には押圧部材を構成する押圧片6が位置している。押圧片6は載片51,52の対向辺に沿って設けられたレール56に沿って移動可能としてある。押圧片6には支軸43(図1)に設けた駆動シリンダ35のロッド351が連結されており、駆動シリンダ35によって押圧片6は載片51,52の間を直線移動させられる。
【0019】
以上の構造の保持装置でスタート板用原板M(図2)を保持する場合には、傾動シリンダ31によって傾動板2、すなわち受け台5を図3に示すように傾斜させる。これにより、受け台5はそのガイド壁54,55の対向間隔が大きくなる方向が上方を向く。この状態で、駆動シリンダ35によって押圧片6を受け台5の上端位置まで後退移動させておく。
【0020】
続いて、クレーン等の吊りワイヤ71の下端に設けられた公知のクランプ72でスタート板用原板Mを垂直姿勢で把持して、これを傾斜状態のガイド壁54,55の間に挿入する。スタート板用原板Mはクランプ72から外れると、そのまま受け台5上を下降して、当該原板Mの外周の、径方向対称位置の二箇所の周面がそれぞれガイド壁54,55に当接する(図2の状態)。この状態で駆動シリンダ35によって押圧片6を前進させて、これを、原板Mの上記当接位置の間の他の周面に圧接させる。
【0021】
これにより、スタート板用原板Mはその外周の三箇所で、左右のガイド壁54,55と押圧片6とで挟圧されて位置決めされる。この状態で、傾動シリンダ31によって受け台5を水平に戻し、その後、ジャッキ34によってスライダ42を適当位置に移動させてスタート板用原板Mの中心を回転盤2の中心軸Cに一致させる(図1の状態)。
【0022】
この状態で、モータ32によって回転盤2を回転させ、上記原板Mをその中心回りに回転させつつ、スイング式グラインダ等で原板Mの表面を研削して凹凸を除去する。スタート板用原板Mの裏面を研削する場合には、再び受け台5を傾斜させるとともに押圧片6を後退させ、上記原板Mをクランプ72で吊って反転させた後、上記と同様の手順によって原板Mを位置決めして裏面を研削する。このようにしてスタート板用原板の径が異なってもこれを良好に保持して、グラインダを使用してスタート板を製作することができるから、この際に発生する粉塵をろ布集塵で確実に捕集して作業環境を良好に維持することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…基板、2…傾動板、31…傾動シリンダ(傾動機構)、34…ジャッキ(移動機構)、4…回転盤、5…受け台、54,55…ガイド壁(ガイド部材)、6…押圧部材、M…スタート板用原板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次溶解のスタート板を整備するための保持具であって、互いに対向しその対向間隔が一方から他方へ漸次拡大する一対のガイド部材を備え、これらガイド部材の間に略円形のスタート板用原板を受容する受け台と、前記原板の外周の二箇所を両ガイド部材にそれぞれ当接させるように原板の他の外周を押圧する押圧部材とを備えるスタート板整備用保持具。
【請求項2】
前記受け台を、前記他方が上方となるように水平姿勢から傾動させる傾動機構を備える請求項1に記載のスタート板整備用保持具。
【請求項3】
前記受け台を略水平面内で回転させる回転盤と、前記受け台上に受容された前記スタート板用原板の中心を前記回転盤の中心軸に合致させるように前記受け台を前記回転盤上で直線移動させる移動機構とを備える請求項1又は2に記載のスタート板整備用保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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