説明

スター型重合体、その合成方法及びベクター

【課題】N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に4個以上有する化合物をイニファターとしてスター型重合体を光照射リビング重合によって効率よく合成することができるスター型重合体の合成方法を提供する。
【解決手段】N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に4個以上有する化合物をイニファターとする光照射リビング重合によるスター型重合体の合成方法であって、非極性溶媒中にモノマー及びイニファターを溶解させてなる原料溶液を調製する工程と、該原料溶液中に光を照射する光照射工程と、を有するスター型重合体の合成方法において、該光照射工程において、300〜400nmの範囲で異なる複数の波長の光を照射することを特徴とするスター型重合体の合成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スター型重合体の合成方法と、この方法により合成されたスター型重合体と、このスター型重合体よりなるベクターとに関する。
【背景技術】
【0002】
DNAを細胞中に運搬するための非ウイルス系ベクターとして、例えば、リポフェクチン(Lipofectin)(登録商標)として商品化された、カチオン性脂質であるジオレオイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム(Felgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413-7417,1987)がある。ベクター用の高分子としてはポリエチレンイミンもエキソゲン(Exogen)として商品化されている。
【0003】
核酸は一般に生体内においてあまり安定ではなく、ある種の酵素によって分解される。本出願人は、核酸を凝集体とし、この凝集体の周囲にカチオン性ポリマーを含むベクターを配置させて酵素から保護することができるベクターとして、分岐鎖を有するカチオン性ポリマーよりなるベクターを特許文献1(WO2004/092388 A1)及び特許文献2(特開2007−70579)にて提案している。
【0004】
このベクターは、核酸凝集体と複合体を形成させて生体内へ投与される。
【0005】
上記文献1,2には、このベクターの具体例として、ベンゼン誘導体のベンゼン環から2〜6個の分岐鎖を放射状に分岐させた化合物よりなるものが記載されている。
【0006】
上記文献1,2には、分岐鎖を結合させる核となるベンゼン誘導体として、具体的には次が例示されている。即ち、3分岐鎖用としては、2,4,6−トリス(ブロモメチル)メシチレンとナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメートとをエタノール中で付加反応させて得られる2,4,6−トリス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)メシチレンであり、4分岐鎖としては、1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンとナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメートとをエタノール中で付加反応させて得られる1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンであり、6分岐鎖としては、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼンとナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメートとをエタノール中で付加反応させて得られるヘキサキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンである。
【0007】
この分岐鎖の好適例として、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドCH=CHCONHCN(CHの重合体が挙げられている。
【0008】
この3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドと、核となる上記の各ベンゼン誘導体とをメタノールなどのアルコール溶液あるいは溶解性を考慮してクロロホルムなどの非極性溶媒の溶液として混合し、光重合反応させることにより、ベンゼン環に対し上記ベンゼン誘導体由来の−CH−を介して上記ビニル系モノマーの重合体が結合して放射状に分岐鎖を構成してなるカチオン性ポリマーが生成する。このようにして生成したカチオン性ポリマーよりなるベクターは、高い電荷密度を有しており、結果、カチオン性ポリマーと核酸で形成される核酸含有複合体も高密度なものであり、生体内の酵素による作用を受けにくい立体構造のために、核酸の失活、分解を抑制することができる。
【0009】
上記の合成反応は、上記ベンゼン誘導体等をイニファターとした光照射リビング重合反応である。文献2には、この光の好適な波長について240〜300nm(クロロホルム、ベンゼンを溶媒とする場合)240〜330nm(アルコールを溶媒とする場合)と記載されている。光源としては低圧又は高圧水銀灯が用いられている。
【0010】
なお、本明細書において、イニファターとは、光照射によりラジカルを発生させる重合開始剤、連鎖移動剤としての機能と共に、成長末端と結合して成長を停止する機能、さらに光照射が停止すると重合を停止させる重合開始・重合停止剤として機能する分子のことである。
【0011】
上記文献1,2に記載の上記各ベンゼン誘導体等よりなるイニファターのうち、4分岐鎖以上の多分岐鎖のものはアルコールには難溶である。このイニファターはベンゼン、トルエンには可溶である。また、クロロホルム等のハロゲン化アルキルや、塩化メチレン等にも可溶である。
【特許文献1】WO2004/092388 A1
【特許文献2】特開2007−70579
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
低圧水銀ランプに含まれる183nmの高エネルギーな輝線は、イニファターの不可逆的解裂反応R−S(C=S)N(Et)→R・+・N(Et)2+CS2に寄与することが知られており、イニファターの末端が脱CS解裂した場合は重合反応はラジカル連鎖反応で進行し、当然、分子量は低分子量域で停止することになる。
【0013】
特開2007−70579記載のように、分岐型スターポリマーの核となるイニファターの溶媒として、クロロホルムなどを利用すると、溶媒への連鎖移動や溶媒分子自体から発生するラジカル核種による副反応が拮抗するため重合再現性が低く、分子量分布も広く、GPCピークの形状も肩や複数ピークを有するものであることが認められた。
【0014】
即ち、クロロホルム等は、ポリマー成長鎖からの連鎖移動を起こしやすく、目的物であるイニファター系のポリマーの成長停止反応に寄与する。また、クロロホルム等が光分解して発生するラジカルを開始剤とした重合が起こり、イニファターと無関係なホモポリマーを生成させる。さらに、成長停止反応に寄与するハロゲン化アルキルラジカルはリビング末端を失活させてしまうため、重合度を上げることやAB型ブロックポリマーの合成が不可能となる。
【0015】
なお、AB型ブロックポリマーとは、Aモノマーを重合した後にこのポリマーを単離し、次いで、Bモノマーとの系にて光照射を行うことにより合成されるブロックポリマーである。
【0016】
特開2007−7057には、イニファターを微量のクロロホルムとモノマーでペースト状にし、短時間の低エネルギー光の予備照射を行ってイニファターヘモノマー1分子を付加させてアルコールに可溶化することが記載されている。しかしながら、このスターポリマーの分子量分布もMw/Mn3.0以上とブロードであり、繊細な遺伝子導入剤として使用するためにはさらなる重合精度の向上を目指す必要があった。
【0017】
本発明は、上記問題点を解消し、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に4個以上有する化合物をイニファターとしてスター型重合体を光照射リビング重合によって効率よく合成することができるスター型重合体の合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1のスター型重合体の合成方法は、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に4個以上有する化合物をイニファターとする光照射リビング重合によるスター型重合体の合成方法であって、非極性溶媒中にモノマー及びイニファターを溶解させてなる原料溶液を調製する工程と、該原料溶液中に光を照射する光照射工程と、
を有するスター型重合体の合成方法において、該光照射工程において、300〜400nmの範囲で異なる複数の波長の光を照射することを特徴とするものである。
【0019】
請求項2のスター型重合体の合成方法は、請求項1において、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に4個以上有する化合物は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、ビフェニレン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環又はピレン環を核とし、この核に分岐鎖として4個以上の該N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団が結合していることを特徴とするものである。
【0020】
請求項3のスター型重合体の合成方法は、請求項1又は2において、モノマーがビニル系モノマーであることを特徴とするものである。
【0021】
請求項4のスター型重合体の合成方法は、請求項3において、ビニル系モノマーが3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドであることを特徴とするものである。
【0022】
請求項5のスター型重合体の合成方法は、請求項4において、前記溶媒がアルカン、アルケン、アロマチック、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルキレンであることを特徴とするものである。
【0023】
請求項6のスター型重合体の合成方法は、請求項4において、溶媒がベンゼン、トルエン、クロロホルム、四塩化炭素又は塩化メチレンであることを特徴とするものである。
【0024】
請求項7のスター型重合体の合成方法は、請求項4において、溶媒がクロロホルムであることを特徴とするものである。
【0025】
請求項8のスター型重合体の合成方法は、請求項1ないし7のいずれか1項において、波長の異なる光の波長差が5nm以上であることを特徴とするものである。
【0026】
請求項9のスター型重合体の合成方法は、請求項1ないし8のいずれか1項において、少なくとも1つの波長が355〜385nmであることを特徴とするものである。
【0027】
請求項10のスター型重合体の合成方法は、請求項1ないし8のいずれか1項において、少なくとも1つの波長が360〜380nmであることを特徴とするものである。
【0028】
請求項11のスター型重合体の合成方法は、請求項9又は10において、他の1つの波長が345〜380nmであることを特徴とするものである。
【0029】
請求項12のスター型重合体は、請求項1ないし11のいずれか1項の方法により合成されたものである。
【0030】
請求項13のスター型重合体は、請求項12のスター型重合体に、さらに該スター型重合体のモノマーに使用したモノマーと異種のビニル系モノマーを追加重合してなるものである。
【0031】
請求項14のベクターは、請求項12又は13のスター型重合体よりなるものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明のスター型重合体の合成方法によれば、光照射リビング重合の光として、300〜400nmの複数波長の光を照射することにより、副反応を抑制しつつ、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に4個以上有する化合物をイニファターとしてスター型重合体を光照射リビング重合によって効率よく合成することができる。なお、本発明でいう光の波長とは表示された数値を中心をして±3nmの範囲の光を意味する。例えば、370nmとは370nmを中心として367nm〜373nmの範囲の光を含むものである。
【0033】
本発明者らは、プリズムを使用したキセノンランプで250nm−400nmの範囲の光をほぼ同一の輝度で発生できる単色光照射装置を導入して多官能イニファターの開裂反応を検討した結果、
(1) R−S(C=S)N(Et)⇔R・+・S(C=S)N(Et)2のラジカル開裂は、S(C=S)N(Et)基のπ⇒π*のλmaxである250nm(S−C=Sの共鳴)及び280nm(C−N=Etの共鳴)とは無関係な波長で起こること
(2) ラジカル開裂するまでの励起反応は、量子化された2段階以上のステップで起こると推測され、その波長は非常に低エネルギーな近紫外領域にあること
の2点の現象を発見し、300nm−400nmの範囲の複数波長の光照射を行うことにより、副反応を抑制しつつ効率よく重合が行われることを見出した。
【0034】
また、この照射光はベンゼン系溶媒やビニル系モノマーが有する強いπ電子吸収帯250nm−280nmの範囲から外れているため、重合溶液の光透過性は極めて高く、低エネルギー光・長光路でも均質に重合が進行する。
【0035】
この方法によって製造されたスター型重合体は、これをベクターとして用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0037】
本発明において、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に4個以上有する化合物としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、ビフェニレン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環又はピレン環に該N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団が4個以上分岐鎖として結合しているものが好適である。
【0038】
分岐鎖を結合させるイニファターとなるのはベンゼン環が好適であり、具体的には次が例示される。即ち、4分岐鎖としては、1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンとナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメートとをエタノール中で付加反応させて得られる1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンであり、6分岐鎖としては、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼンとナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメートとをエタノール中で付加反応させて得られるヘキサキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンである。特に、後者のヘキサキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンが好適である。
【0039】
上記のイニファターは、アルコール等の極性溶媒に対しては殆ど不溶であるが、非極性溶媒には易溶である。この非極性溶媒としては炭化水素、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルキレンが好適であり、特に、ベンゼン、トルエン、クロロホルム又は塩化メチレン特にトルエンが好適である。
【0040】
このイニファターに重合させるモノマーとしては、ビニル系モノマー、アクリル酸誘導体、スチレン誘導体等、とりわけビニル系モノマーが好適であり、具体的には3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドCH=CHCONHCN(CH、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド及びN−イソプロピルアクリルアミドの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0041】
イニファターと上記モノマーとを反応させるには、イニファター及びモノマーを含んでなる原料溶液を調製し、これに光照射することによって、イニファターに対しモノマーが結合した反応生成物を生成させる。この溶液の溶媒としては、アルカン、アルケン、アロマチック、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルキレンが好適であり、具体的にはベンゼン、トルエン、クロロホルム、四塩化炭素又は塩化メチレンが挙げられ、中でもクロロホルムが好適である。
【0042】
このモノマーの該原料溶液中の濃度は0.5M以上、例えば0.5M〜2.5Mが好適である。モノマー濃度が低いと反応性が高いイニファター分子同士の衝突確率が高くなり、重合の開始剤として機能しなくなってしまう。モノマー濃度が高い場合は溶液粘度が高くなり過ぎ、拡散性に弊害が出てしまう。
【0043】
イニファターの濃度は0.1〜100mM程度が好適である。
【0044】
照射する光の波長は300〜400nmであり、かつ300〜400nmの複数波長を含む。2以上の波長の波長差は5nm以上が好適である。この波長の中でも、少なくとも1つの波長は355〜385nm特に360〜380nmの範囲にあることが好ましい。この場合、他の1つの波長が345〜380nmであることが好ましい。
【0045】
この光の光源としては、キセノンランプを分光フィルター、ガラス板、プリズムなどに通して300〜400nmの波長の光のみを取り出すようにしたものを用いることができる。
【0046】
光の照射時間は照射強度にも依存するが、1〜60分程度が好適であり、1μW/cm〜10mW/cm程度の低い照射強度で1分〜30分程度が特に好適である。
【0047】
なお、この光照射工程(第1の光照射工程)の後にさらに第2の光照射工程を行ってもよい。すなわち、この反応生成物を含む溶液をアルコール、好ましくは上記モノマーのアルコール溶液で希釈する。このアルコールとしてはメタノール又はエタノール、特にメタノールが好適である。アルコール溶液中のモノマー濃度としては、終濃度として、100mM〜5M程度が好適である。
【0048】
上記第1の光照射工程からの反応生成物含有液1体積部に対し、このアルコール溶液5〜500体積部を添加するのが好ましい。
【0049】
このようにアルコール溶液で希釈した希釈液を、第2の光照射工程に供し、上記反応生成物に対しさらに上記モノマーを重合させる。この際の照射光源としても300〜400nmの波長であり、かつ複数の波長を含むものであればよく、例えば上記と同様の光源を用いることができる。光照射時間は10分〜240分程度が好適である。
【0050】
この光照射により、反応液中に目的とする分岐型重合体が生成するので、必要に応じ精製して分岐型重合体よりなるカチオン性ホモポリマーを得る。
【0051】
この分岐型重合体の分子量は分岐鎖の鎖数によるが、2,000〜500,000、特に2,000〜150,000、とりわけ2,000〜100,000程度が好ましい。
【0052】
本発明では、この分岐鎖は、上記ホモポリマーであってもよく、さらに異なる重合体とのブロック共重合体又はランダム共重合体であってもよい。例えば、上記ホモポリマーに対し、N,N−ジメチルアクリルアミド2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレートなどを導入してもよい。また、N−イソプロピルアクリルアミド又はその誘導体をブロック共重合させて温度感応性ポリマーブロックを導入してもよい。なお、先にN,N−ジメチルアクリルアミド又はN−イソプロピルアクリルアミド又はその誘導体のポリマーよりなる分岐鎖を有した分岐型重合体を形成し、その後、各分岐鎖の先端側にカチオン性ポリマーブロックを導入するようにしてもよい。
【0053】
このN−イソプロピルアクリルアミド又はその誘導体のポリマー鎖は、低温度では親水性、高温では疎水性となる温度依存性を有する。なお、これにより遺伝子導入剤が上記温度応答性を具備するようになる。
【0054】
カチオン性ポリマーブロックにN,N−ジメチルアクリルアミドあるいはN−イソプロピルアクリルアミド又はその誘導体をブロック共重合させるには、上記のようにして合成したスター形分岐型重合体を好ましくはアルコール例えばメタノール等の溶媒に溶解させ、これにN,N−ジメチルアクリルアミド又はN−イソプロピルアクリルアミド又はその誘導体を混合し、光を照射して重合させればよい。この重合反応を開始する際の溶液中における分岐型ポリマーの濃度は0.01〜10重量%程度が好適であり、N,N−ジメチルアクリルアミド又はN−イソプロピルアクリルアミド又はその誘導体の濃度は0.3〜30重量%程度が好適である。光の照射条件は、光波長300〜400nmで、5nm以上の波長差の複数の光、照射時間1〜150分、照射強度100〜10,000μW/cm程度が好適である。この波長の中でも、少なくとも1つの波長は355〜385nm特に360〜380nmの範囲にあることが好ましい。この場合、他の1つの波長が345〜380nmであることが好ましい。
【0055】
このスター形分岐型重合体の分子量は3,000〜600,000、特に3,000〜150,000であることが好ましい。
【0056】
本発明では、上記のように合成したスター形分岐型重合体同士をさらに架橋させてもよい。この分岐型重合体の架橋を行うには、次のi),ii),iii)の方法を採用することができる。
【0057】
i)分岐型重合体をメタノールなど適宜の溶媒に溶解させ、加熱するか、光を照射することにより、分岐型重合体同士を架橋する。この架橋反応を開始させる際の溶液中の分岐型重合体の濃度は0.01〜10重量%程度が好適である。加熱条件は、30〜300℃、1分〜30,000時間程度が好適である。
【0058】
ii)分岐型重合体へ直接光照射や加熱処理を行うことによって分岐型重合体を架橋させる。この場合、i)の溶媒へ溶解した溶液への処理と相違して、分岐型重合体の主鎖及び又は側鎖へ発生したラジカルが溶媒によって捕捉され、分岐型重合体の架橋反応が阻害されることを抑制することが可能となる。直接光照射を行う場合は、凍結乾燥粉末を霧状に攪拌して、ここへ光を照射することで均質な処理が可能となる。なお、フィルム状に加工し、このフォルムへ処理を行うことも均質な架橋体を得る方法として好ましい。具体的には、ガラス板、金属板などの上へ分岐型重合体の溶液、例えば、クロロホルム溶液を流延させ、ドクターナイフなどで液切りして均一な厚みとし、これを乾燥させることで均質なフィルムを形成させることが可能である。この場合の溶媒としては揮発性が高いメタノール、クロロホルムが好適である。
【0059】
iii)常温又は冷却下に長期間保持することによって分岐型重合体を架橋させる。4℃、−20℃などの冷却下においても15,000時間程度の時間を経過すれば十分に架橋の効果が現れる。この場合、分岐型重合体は凍結乾燥フィルムまたはフィルム状態で経時変化させることが好ましく、遮光状態でも蛍光灯程度の光が迷光として暴露されていても良い。凍結乾燥状態で経時変化をさせるのであれば、高分子量成分の乾燥重量で1.5グラム/50mL程度の密度とすることで均質な架橋体を得ることが可能である。
【0060】
この架橋反応により、分岐型重合体が2〜10個、特に2〜5個程度架橋して架橋体を構成する。この架橋反応では、分岐型重合体の分岐鎖のN,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団のチオ基が開いて分岐鎖同士が架橋するものと推察される。
【0061】
加熱の代わりに、又は加熱と共に、光照射することによっても架橋させることができる。光の照射条件は、光波長300〜700nm、照射時間1分〜30,000時間、照射強度0.001〜10,000μW/cm程度が好適である。
【0062】
上記の通り、N−イソプロピルアクリルアミド又はその誘導体をブロック共重合させた遺伝子導入剤は、約30℃よりも高い温度で疎水性であり、約30℃よりも低い温度で親水性である。従って、30℃よりも低い温度で核酸と遺伝子導入剤の水溶液とを混合して遺伝子導入剤に核酸を複合させることができる。
【0063】
約30℃よりも高い温度では、核酸を複合した遺伝子導入剤は、温度感応性核酸よりなる疎水性部分を有し、水不溶性となる。
【0064】
このようにして生成した遺伝子導入剤(ベクター)が核酸を核酸含有複合体として包囲することによって、生体内の酵素による核酸の失活、分解を抑制することができる。
【0065】
上記遺伝子導入剤と核酸とを複合させるには、遺伝子導入剤の濃度1〜1000μg/mL程度の溶液に対し、核酸を添加し、混合すればよい。核酸に対して遺伝子導入剤を過剰量添加し、遺伝子導入剤中のカチオン性ポリマーを核酸に対し飽和状態に核酸含有複合体として複合化させるのが好ましい。
【0066】
使用する核酸としては、DNA、RNAのいずれでもかまわない。核酸の好ましい例としては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV1−TK遺伝子),p53癌抑制遺伝子及びBRCA1癌抑制遺伝子やサイトカイン遺伝子としてTNF−α遺伝子,IL−2遺伝子,IL−4遺伝子,HLA−B7/IL−2遺伝子,HLA−B7/B2M遺伝子,IL−7遺伝子,GM−CSF遺伝子,IFN−γ遺伝子及びIL−12遺伝子などのサイトカイン遺伝子並びにgp−100,MART−1及びMAGE−1などの癌抗原ペプチド遺伝子が癌治療に利用できる。
【0067】
また、VEGF遺伝子,HGF遺伝子及びFGF遺伝子などのサイトカイン遺伝子並びにc−mycアンチセンス,c−mybアンチセンス,cdc2キナーゼアンチセンス,PCNAアンチセンス,E2Fデコイやp21(sdi−1)遺伝子が血管治療に利用できる。かかる一連の遺伝子は当業者には良く知られたものである。
【0068】
また、21〜23塩基の二本鎖RNAを使用したRNA干渉によるmRNA破壊などに利用することも可能である。
【0069】
核酸含有複合体の粒径は50〜400nm程度が好適である。これよりも小さいと、核酸含有複合体内部の核酸にまで酵素の作用が及ぶおそれ、あるいは腎臓にて濾過排出されるおそれがある。また、これよりも大きいと、細胞に導入されにくくなるおそれがある。
【0070】
核酸は、細胞に導入されることによりその細胞内で機能を発現することができるような形態で用いる。例えばDNAの場合、導入された細胞内で当該DNAが転写され、それにコードされるポリペプチドの産生を経て機能発現されるように当該DNAが配置されたプラスミドとして用いる。好ましくは、プロモーター領域、開始コドン、所望の機能を有する蛋白質をコードするDNA、終止コドンおよびターミネーター領域が連続的に配列されている。
【0071】
所望により2種以上の核酸をひとつのプラスミドに含めることも可能である。
【0072】
本発明において、核酸を導入する対象として望ましい「細胞」としては、当該核酸の機能発現が求められるものであり、このような細胞としては、例えば使用する核酸(すなわちその機能)に応じて種々選択され、例えば心筋細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、骨格筋細胞、血管内皮細胞、骨髄細胞、骨細胞、血球幹細胞、血球細胞等が挙げられる。また、単球、樹状細胞、マクロファージ、組織球、クッパー細胞、破骨細胞、滑膜A細胞、小膠細胞、ランゲルハンス細胞、類上皮細胞、多核巨細胞等、消化管上皮細胞・尿細管上皮細胞などである。
【0073】
本発明のベクターを用いた核酸含有複合体は任意の方法で生体に投与することができる。
【0074】
当該投与方法としては静脈内又は動脈内への注入が特に好ましいが、筋肉内、脂肪組織内、皮下、皮内、リンパ管内、リンパ節内、体腔(心膜腔、胸腔、腹腔、脳脊髄腔等)内、骨髄内への投与の他に病変組織内に直接投与することも可能である。
【0075】
この核酸含有複合体を有効成分とする医薬は、更に必要に応じて製剤上許容し得る担体(浸透圧調整剤,安定化剤、保存剤、可溶化剤、pH調整剤、増粘剤等)と混合することが可能である。これら担体は公知のものが使用できる。
【0076】
また、この核酸含有複合体を有効成分とする医薬は、含まれる核酸の種類が異なる2種以上の核酸含有複合体を含めたものも包含される。このような複数の治療目的を併せ持つ医薬は、多様化する遺伝子治療の分野で特に有用である。
【0077】
投与量としては、動物、特にヒトに投与される用量は目的の核酸、投与方法および治療される特定部位等、種々の要因によって変化する。しかしながら、その投与量は治療的応答をもたらすに十分であるべきである。
【0078】
この核酸含有複合体は、好ましくは遺伝子治療に適用される。適用可能な疾患としては、当該複合体に含められる核酸の種類によって異なるが、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、動脈拡張術後再狭窄等の病変を生じる循環器領域での疾患に加え、癌(悪性黒色腫、脳腫瘍、転移性悪性腫瘍、乳癌等)、感染症(HIV等)、単一遺伝病(嚢胞性線維症、慢性肉芽腫、α1−アンチトリプシン欠損症、Gaucher病等)等が挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0080】
以下の実施例では次の光源装置を用いた。比較例の光源装置については各比較例において説明する。
【0081】
<実施例で用いた光源装置>
キセノン光源として朝日分光社製のMAX−301を使用した。本装置は300Wショートアークキセノンランプを元光源とし、プリズムにより図1のように250nm−400nmの範囲の光を均質な輝度で発生できる装置である。ランプ及びプリズムは2種類が選択可能であり、350nm−700nmの可視光の照射も可能である(図2)。フィルター装着により波長センター±2.5nmの単色光を取り出すことも可能であり、フィルターは5nmスパンでラインアップされている。照射強度はウシオ電機UIT−150を使用して計測した。
【0082】
実施例での重合に際しては、原料を3mm厚の軟質ガラスよりなる重合管に収容し、上記MAX−301の直接光を重合管の外側から照射した。
【0083】
周知の通り、軟質ガラスには透過光の波長選択性があり、分光光度計(日立LB−300)で各波長の光透過率をプロットすると280nm以下の光はいずれも100%遮光、290nmの光は約70%が遮光され、300nm以上の光はほぼ均質に透過するものであった。
【0084】
実際に3mm厚ガラスの透過直後の光の照度を照度計で測定するとUVD−C254(検出波長範囲220nm〜310nm)では0.00mW/cm、UVD−C405(検出波長範囲320nm〜470nm)では2.500mW/cmであった。従って、軟質ガラス管を重合管として用い、図1の光学特性のプリズムを装着したMAX−301の直接光を照射することは、実質的に300nm−400nmの混合光を照射するのに相当することになる。
【0085】
実施例1
[4分岐型遺伝子導入剤の合成]
i)イニファターの合成
下記反応式に従って、1,2,4,5−テトラキス(N−Nジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンを次のようにして合成した。
【0086】
1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチルベンゼン)1.0gとN,N−ジエチルジチオカルバミル酸ナトリウム4.0gをエタノール100mL中へ加え、遮光下で室温で4日間攪拌した。沈殿物を濾過し、減圧乾燥後、クロロホルム200mLへ溶解し、150mLの水を加えて抽出分離し、臭化ナトリウムを除去した。この操作を3回繰り返した後、クロロホルム層を硫酸マグネシウムで24時間乾燥させて、濾過後、n−ヘキサンを加え、再結晶を行って精製し、白色の1,2,4,5−テトラサキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンの針状結晶を得た(収率90%)。高速液体クロマトグラフィーにより、原料ピークが消失し、精製物が単一物質であることを確認した。
【0087】
H NMR(in CDCl)の測定結果はδ1.26−1.31ppm(t,24H,CHCH),δ3.69−3.77ppm(q,8H,N(CHCH),δ3.99−4.07ppm(q,8H,N(CHCH),δ4.57ppm(s,8H,Ar−CH),δ7.49ppm(s,2H,Ar−H)となった。
【0088】
【化1】

【0089】
ii)光重合によるスター形4分岐型重合体よりなるカチオン性ホモポリマーの合成
下記反応式に従い、次のようにして、1,2,4,5−テトラキス[(N,N−ジエチルジチオカルバミル)ポリ(3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)−メチル]ベンゼン(以下、pDMAPAAmと記載することがある。)よりなるカチオン性ホモポリマーの合成を行った。
【0090】
即ち、上記i)により合成した1,2,4,5−テトラサキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼン45.6mgを20mLのトルエンへ溶解し、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(以下、3−N,N−DMAPAAmと記載することがある。)19.0gを加えて混合し、全量をクロロホルムで50mLに調整した。
【0091】
上記軟質ガラス製の重合管中で激しく攪拌しながら高純度窒素ガスで5分間パージした後に、上記光源を重合管の外側から35分間照射した。照射強度は照度計(UVR−1,TOPCON,Tokyo,Japan)を使用して1mW/cmに調整した。
【0092】
重合溶液をエバポレーターで濃縮し、ジエチルエーテルで重合物を再沈殿させて精製し、少量の水へ溶解し、0.2μmフィルターで濾過してから凍結乾燥させて4分岐型スター型ホモポリマー(pDMAPAAm)よりなるカチオン性ポリマーを得た。
【0093】
【化2】

【0094】
得られたポリマーはMw/Mnが1.1〜1.3と単分散で低着色という特徴があり、重合効率も30%〜60%と高いものであった(分子量により異なる)。NMRによる構造確認は以下の通りであり、イニファターのδ7.5ppmのシングレットアロマチックHがポリマー鎖により隠蔽されることによるピーク消失、3−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピルアクリルアミドのホモポリマーであることを確認した。δ7.8ppm(CO−NH,1H,br)、δ3.4ppm(CO−NH−CH,2H,br)、δ2.4ppm(−CH−CH−N,2H、br)、δ2.1ppm(−N−CH,6H、br)、δ1.6ppm(−CH−CH−CH−,2H、br)。
【0095】
分子量が単分散になる理由としては、溶媒やポリマー側鎖への連鎖移動、イニファターの分解、成長停止反応の存在が考えられる。
【0096】
比較例1
上記実施例1において、ii)にて軟質ガラス製の重合管の代わりに石英セルを用い、光源として200W高圧水銀灯を用いたこと以外は同様にして4分岐型スター型重合体を製造した。この石英セルは、300nm以下の波長の近紫外光も透過させる。
【0097】
H NMR(in DO)の測定結果は、δ1.5−1.8ppm(br,2H,−CHCHCH−),δ2.1−2.2ppm(br,6H,N−CH),δ2.2−2.4ppm(br,2H,CH−N),δ3.0−3.4ppm(br,2H,NH−CH),δ7.4−7.8ppm(br,1H,−NH−)となった。
【0098】
得られたスターポリマーは淡褐色を呈しており、Mw/Mnは2.5〜3.6とブロードであった。重合効率は、分子量により変動するが、10%〜30%と実施例1よりも低かった。また、同一組成の反応溶液を重合すると、実施例よりも低分子量で頭打ちとなり、水銀ランプ光源による重合反応は拮抗する停止反応が多いことが示唆された。
【0099】
<比較例2 250nm単色光の照射>
イニファターのS(C=S)N(Et)基のS−C=S結合のλmax:250nmの単色光を照射することで重合させることを検討した。
【0100】
MAX−301へ分光フィルターを装着し、照射光を250nm±5nmの光とした。
【0101】
イニファター濃度は5mMを、3−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピルアクリルアミド濃度は1.0Mを最適濃度として固定して検討した。重合管は3mm厚の石英管を使用した。反応溶液の溶存酸素の除去は重合前に10分間の窒素バブリングを行い、重合中もこれを継続して行った。照射強度はUVD−C254(検出波長範囲220nm〜310nm)で1.00mW/cmに調整して行った。
【0102】
その結果、石英セルの光入射面に不溶性のフィルムが形成され、イニファターの分解、架橋、反応が進行して重合物が得られなかった。照射強度を0.3mW/cmまで下げ、照射時間を25時間まで延長してもイニファターの分解反応が進行するだけで高分子量の生成物は得られなかった。
【0103】
<比較例3 280nm単色光の照射>
S(C=S)N(Et)基のC−N=Et結合のλmax:280nmを照射したこと以外は比較例2と同様にして合成を行った。
【0104】
その結果、280nmの光照射ではGPCの分離能ではマルチプルイニファターから変化は確認できず、重合物は得られなかった。照射時間、照射強度、溶媒変更でも対応できなかった。微量に得られたエーテル不溶成分のDSCを測定すると、イニファター及びやや高温側にシフトしたピークを確認できるが、これは、一部のイニファターのジチオカルバメート結合の破壊により水素結合が強まったものがコンタミした結果と考えられる。
【0105】
<比較例4 400nm以上の波長の照射>
400nm−700nmの範囲の可視光を照射して重合を行った。照射強度はUVD−C405(検出波長範囲320nm〜470nm)で3.0mW/cm〜100mW/cmへ調整し(実際には470nm〜700nmを積算していないので更に強い照射強度となっている)て行ったが、重合物は得られなかった。
【0106】
実施例2
実施例1で用いたキセノン光源MAX−301にフィルターを装着し、345〜390nmの範囲で5nm刻みで波長を選択可能とした。この光源を2台用い、345〜390nmの範囲で、5nm以上異なる2波長を照射して前記ii)のカチオン性ホモポリマーの合成を行った。その他の条件は実施例1と同一とした。このカチオン性ホモポリマーの収率の測定結果を表1に示す。なお、この収率は、1,2,4,5−テトラサキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンを基準として算出した値である。
【0107】
【表1】

【0108】
表1の通り、少なくとも1つの波長が355〜385nmの範囲にあると、収率は23.5%以上であり、少なくとも1つの波長が360〜380nmの範囲にあると、収率は27.4%以上である。
【0109】
なお、1つの波長が360〜385nmの範囲にあり、もう1つの波長が350〜370nmの範囲にあると、収率は28.1%以上となる。
【0110】
また、1つの波長が365〜375nmの範囲にあり、もう1つの波長が360〜370nmの範囲にあると、収率は35.6%以上となる。
【0111】
さらに、1つの波長が365〜375nmの範囲にあり、もう1つの波長が360〜365nmの範囲にあると、収率は36.9%以上となる。
【0112】
1つの波長が365〜370nmの範囲にあり、もう1つの波長が360〜365nmの範囲にあると、収率は38.6%以上となる。1つの波長が370nmの場合、もう1つの波長が360〜365nmであると収率は39.6%以上であり、この場合、もう1つの波長が365nmであると収率は40%を超える。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】光源の分光図である。
【図2】光源の分光図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に4個以上有する化合物をイニファターとする光照射リビング重合によるスター型重合体の合成方法であって、
非極性溶媒中にモノマー及びイニファターを溶解させてなる原料溶液を調製する工程と、
該原料溶液中に光を照射する光照射工程と、
を有するスター型重合体の合成方法において、
該光照射工程において、300〜400nmの範囲で異なる複数の波長の光を照射することを特徴とするスター型重合体の合成方法。
【請求項2】
請求項1において、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を同一分子内に4個以上有する化合物は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、ビフェニレン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環又はピレン環を核とし、この核に分岐鎖として4個以上の該N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団が結合していることを特徴とするスター型重合体の合成方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、モノマーがビニル系モノマーであることを特徴とするスター型重合体の合成方法。
【請求項4】
請求項3において、ビニル系モノマーが3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドであることを特徴とするスター型重合体の合成方法。
【請求項5】
請求項4において、前記溶媒がアルカン、アルケン、アロマチック、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルキレンであることを特徴とするスター型重合体の合成方法。
【請求項6】
請求項4において、溶媒がベンゼン、トルエン、クロロホルム、四塩化炭素又は塩化メチレンであることを特徴とするスター型重合体の合成方法。
【請求項7】
請求項4において、溶媒がクロロホルムであることを特徴とするスター型重合体の合成方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、波長の異なる光の波長差が5nm以上であることを特徴とするスター型重合体の合成方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、少なくとも1つの波長が355〜385nmであることを特徴とするスター型重合体の合成方法。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1項において、少なくとも1つの波長が360〜380nmであることを特徴とするスター型重合体の合成方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、他の1つの波長が345〜380nmであることを特徴とするスター型重合体の合成方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項の方法により合成されたスター型重合体。
【請求項13】
請求項12のスター型重合体に、さらに該スター型重合体のモノマーに使用したモノマーと異種のビニル系モノマーを追加重合してなるスター型重合体。
【請求項14】
請求項12又は13のスター型重合体よりなるベクター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−308655(P2008−308655A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219950(P2007−219950)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(591108880)国立循環器病センター総長 (159)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】