説明

スチレンの重合方法

(a)スチレンモノマーを含む重合懸濁液を少なくとも60℃の温度に加熱するステップと、(b)重合反応中に、前記加熱された重合懸濁液に、開始剤を連続的に又は少なくとも2つの部分に分けて断続的に90分超から5時間未満の期間にわたって供給するステップとを含む、ポリスチレンを生成するためのスチレンモノマーの懸濁重合方法であって、前記期間がモノマー転化率65%以下から始まり、前記開始剤が、その供給温度において60分以下の半減期を有し、重合反応中に重合懸濁液中に臭素化難燃剤が存在する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン、特に発泡性ポリスチレン(EPS)の製造のための、臭素化難燃剤の存在下におけるスチレンモノマーの重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡剤を添加したスチレンの懸濁重合によって発泡性ポリスチレンを製造することは知られている。この方法は、ポリマービーズの形成をもたらす。発泡剤の例は、ペンタン、イソ−ペンタン、ブタン、プロパン、及びそれらの混合物であり、最も一般的であるのは(イソ−)ペンタンである。
【0003】
スチレンに加えて、発泡性ポリスチレンコポリマーを生ずる他のオレフィン性不飽和モノマーが存在してもよい。本明細書における「発泡性ポリスチレン」又は「EPS」という用語には、発泡性ポリスチレンホモポリマー及び発泡性ポリスチレンコポリマーが含まれる。
【0004】
発泡性ポリスチレンは、一般的に、ポリスチレンフォームの調製に使用される。このようなフォームは、予備発泡、中間貯蔵、及び最終発泡(又は成形)の3つのステップでEPSから得ることができる。予備発泡の間、粒子が加熱され、それにより、ポリスチレンが軟化し、ポリスチレン中の発泡剤が蒸発して、熱供給が遮断されるか又は発泡性(expandability)がなくなるまで、急速に成長する気泡を形成する。ビーズ径は約3倍に増加することがあり、ビーズ体積(かさ体積)は約30倍に増加することがある。
【0005】
個々のセル中に空気を拡散させるブロック、ボード、又は成形部品への最終発泡の前に、中間貯蔵が必要である。空気は、その後の成形に必要である。空気は、補助的な発泡剤として作用し、また、最終部品が型から取り出される時に軟らかいセル構造が外部大気圧に耐えられるようにもする。
【0006】
最終発泡は、通常、完全に自動化されている。孔あき金型(perforated mould)が、予備発泡されたビーズで完全に充てんされ、蒸気に曝露される。ビーズは、発泡して残りの空隙を満たし、融合される。次いで、フォーム中で凝縮した水の一部が蒸発し、内部冷却が発泡プラスチックの圧力をより急速に減少させるので、部品は型から迅速に取り出すことができる。
【0007】
発泡性ポリスチレンフォームには、例えば、建築工業における断熱材を含む多くの用途がある。このような用途では、フォームの耐火性が要求されることが多い。このため、ポリスチレンが難燃剤も含有することが一般的に望ましい。EPSには、ハロゲン化難燃剤、特に臭素化難燃剤が一般に使用されている。しかし、残念なことに、スチレン重合の間に臭素化難燃剤が存在すると、ポリスチレンの分子量に悪影響が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、分子量に対する難燃剤の影響が弱められた、臭素化難燃剤の存在下でのスチレンの重合方法を提供することである。したがって、本発明は、難燃剤の非存在下で得られるものと少なくとも同等の分子量を有するポリスチレンを生成する、臭素化難燃剤の存在下でのスチレンの重合を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、臭素化難燃剤の存在下においてポリスチレンを生成するためのスチレンモノマーの懸濁重合方法に関する。この方法によれば、スチレンモノマーを含む重合懸濁液は、少なくとも60℃の温度に加熱する。続いて、重合反応中に、この加熱された重合懸濁液に、開始剤を連続的に又は少なくとも2つの部分に分けて断続的に90分超から5時間未満の期間にわたって供給(dose)し、前記期間は、65%のモノマー転化率が達成される前に始まり、前記開始剤は、その供給温度において60分以下の半減期を有する。臭素化難燃剤は、重合反応中に重合懸濁液中に存在する。
【0010】
国際公開第2004/089999号は、開始剤を連続的又は断続的に供給することによるスチレンの重合方法を開示していることに留意する。しかし、臭素化難燃剤の存在下における90分超の期間にわたる供給は、この文献に開示も示唆もされていない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
モノマー
本発明による方法は、水性懸濁液中でのスチレンモノマーの重合を含む。
【0012】
好ましい一実施形態においては、スチレンが懸濁液中に存在する唯一のモノマーであり、ポリスチレンホモポリマーを生ずる。
【0013】
別の実施形態においては、追加のコモノマーが存在し、スチレンコポリマーを生ずる。この実施形態において、スチレンは、モノマーの総重量に基づき、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%の量で水性懸濁液中に存在することが好ましい。使用できるコモノマーは、通常のタイプのものであり、好ましくは、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、ブタジエン、(メタ)アクリレート、及びエチレン性不飽和ポリマー、例えば、ポリブタジエン及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択される。あまり好ましくないが、塩化ビニリデンも、コモノマーとして存在してもよい。
【0014】
難燃剤
本発明による方法における使用に好適な臭素化難燃剤は、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、ペンタブロモベンジルブロミド、テトラブロモビスフェニルAビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェニルAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、ジブロモヘキサヒドロフタルイミド、N−メチル−ジブロモヘキサヒドロフタルイミド、N,N−2,3−ジブロモプロピル−4,5−ジブロモヘキサヒドロフタルイミド、ビス(2,3−ジブロモプロピル)テトラブロモフタレート、トリス(2,3−ジブロモイソプロピル)−イソシアヌレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、及び臭素化スチレン(コ)ポリマーである。好ましい臭素化難燃剤の例は、ペンタブロモベンジルブロミド、テトラブロモビスフェニルAビス(アリルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモイソプロピル)−イソシアヌレート、及び臭素化スチレン(コ)ポリマーである。
【0015】
難燃助剤も存在してよい。このような難燃助剤の例は、ジクミルペルオキシド、ジ−(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、及びポリ(1,4−ジイソプロピルベンゼン)である。市販の難燃助剤は、Perkadox(登録商標)BC及びPerkadox(登録商標)30などの商品名で入手できる。
【0016】
重合懸濁液は、スチレンの重量に基づき、好ましくは0.3〜6重量%、より好ましくは0.4〜3重量%、最も好ましくは0.5〜1.5重量%の臭素化難燃剤を含む。臭素化難燃剤は好ましくは、懸濁液を所望の温度に加熱する前に、重合懸濁液に事前装入する。別法として、臭素化難燃剤を、スチレン中の溶液として重合反応中に反応混合物に供給してもよい。
【0017】
重合反応中の開始剤の供給
本発明による方法においては、開始剤は、少なくとも60℃の温度に加熱された後に、重合懸濁液に供給する。好ましくは、重合懸濁液は、開始剤を供給する前に、少なくとも75℃、より好ましくは少なくとも80℃に加熱しておく。
【0018】
開始剤は、連続的に又は少なくとも2、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも10、最も好ましくは少なくとも20の部分に分けて断続的に、90分超、好ましくは120分超から5時間未満、好ましくは4時間未満の期間にわたって、加熱された重合反応物に供給する。各部分間の時間間隔は、同じであっても異なってもよい。断続的供給を適用する場合、最後の部分は、最初の部分から90分超、好ましくは120分超経過してから添加しなければならない。多くの部分を短い間隔で添加する場合には、連続供給に近づく。
【0019】
連続供給が、好ましい供給方法であり、一定速度又は可変速度で実施できる。可変速度での開始剤の添加は、最適な方法で重合反応の冷却能力を使用して、重合反応中のいわゆる「暴走(run away)」のリスクを低減するのに有益である。開始剤の連続供給速度は、好ましくは、1〜100meq/kgスチレン/時、より好ましくは2〜50meq/kgスチレン/時、最も好ましくは5〜25meq/kgスチレン/時の範囲であり、ここで、meqはミリ当量を意味し、1当量は、過酸化物基又はアゾ基の1モルと定義する。
【0020】
供給期間は、重合懸濁液の温度が60℃に達するまでは始まらず、モノマー転化率が65%のレベルに達する前に始まる。好ましくは、開始剤の供給は、転化レベルが60%、より好ましくは40%、さらにより好ましくは20%、さらにより好ましくは10%に達する前に始まる。最も好ましくは、開始剤の供給は、転化率0%で始まる。これは、指示温度への到達後であるが指示転化レベル未満で開始剤の第1の部分を添加し、続いて、開始剤の供給が90分超の期間にわたって続くことを意味する。
【0021】
水性懸濁液への開始剤の供給は、重合反応中、即ち、重合が進行し、モノマーが実際に反応しているときに行う。
【0022】
重合反応中、温度は、ある期間、一定に保つことができ、増加させ、さらに別の期間、再び一定に保つことができる。これを1回又は複数回繰り返すことができる。別法として、温度を、特定の最高温度まで徐々に増加し、この温度をある期間、一定に保つことができる。連続的な重合温度増加及び一定の重合温度を有する(連続する)期間の組合せも可能である。
【0023】
好ましくは、重合反応中の温度は、最高160℃、より好ましくは最高150℃、最も好ましくは最高140℃である。温度は、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも75℃、最も好ましくは少なくとも80℃である。
【0024】
少なくとも60℃の温度に達する前に、使用する全開始剤量の一部、即ち、10重量%から、50重量%未満、好ましくは40重量%未満、最も好ましくは30重量%未満を反応混合物に事前装入できる。
【0025】
重合反応の進行に望ましい温度又はその近傍で反応混合物を配合する場合、これはウォーム−スタート法(warm-start process)と称され、一定量の開始剤の事前装入は必要としない。しかし、このウォーム−スタート法においても、60℃の温度に達する前に反応混合物に、モノマーの総重量に基づき、最高で20重量%まで、好ましくは最高で10重量%までの開始剤を一度に添加することが有益と考えられる。
【0026】
本発明による方法に使用する開始剤の合計量は、重合方法に通常使用する範囲に含まれる。典型的には、重合しようとするモノマーの重量に基づき、少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.05重量%、最も好ましくは少なくとも0.1重量%であって、好ましくは最高5重量%、より好ましくは最高3重量%、最も好ましくは最高2重量%を使用することが好ましい。
【0027】
反応器への供給は、一般的に、溶液、エマルジョン、又は懸濁液の形態で、それ自体(ニート)で又は1種若しくは複数の溶媒との混合物又は溶液として開始剤を供給することによって実施する。好適な溶媒は、好ましくは、水、通常の有機溶媒、モノマー(スチレンなど)、発泡剤(ペンタン、イソペンタンなど)及びそれらの混合物からなる群から選択される。モノマーとの混合物は、安全又は品質管理の理由で好ましくないことがある。好ましくは、開始剤の分散液、より好ましくは水性分散液を使用する。最も好ましくは、開始剤の水懸濁液、例えば、ジベンゾイルペルオキシドの40重量%水懸濁液を使用する。前記懸濁液は、Perkadox(登録商標)LW−40の商品名でAkzo Nobel Polymer Chemiicalsから購入できる。開始剤の分散液を供給する場合、分散液は、開始剤それ自体の分散液又は前記開始剤の溶液の分散液であることができる。好ましくは、分散液は、水性分散液である。好ましくは、開始剤と重合混合物の急速な混合を確実にし、開始剤のより効率的な使用をもたらす希釈開始剤溶液又は分散液を使用する。したがって、少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%、最高70重量%まで、より好ましくは最高60重量%までの開始剤濃度を有する開始剤の溶液、エマルジョン又は懸濁液を使用することが好ましい。
【0028】
本発明による方法の間に水性懸濁液に供給するために好適な開始剤は、モノクロロベンゼン中で測定された場合、それらの供給温度における半減期が60分以下、好ましくは50分以下、さらにより好ましくは30分以下、最も好ましくは15分以下の開始剤である。同時に、この半減期は、好ましくは0.5分超、より好ましくは1分超、さらにより好ましくは2.5分超、最も好ましくは5分超である。
【0029】
開始剤の半減期は、当技術分野で知られている、モノクロロベンゼン中の開始剤の希釈溶液の示差走査熱量測定法−熱活性監視(thermal activity monitoring)(DDC−TAM)によって測定する。この方法で測定した半減期データは、Akzo Nobelのコード番号2161の小冊子「Initiators for high polymers」、2006年6月に記載されている。
【0030】
「開始剤」という用語は本明細書中では、フリーラジカルを生成し、これらが次に重合反応を開始する化合物を命名する古典的な意味で使用することに留意する。したがって、特定の熱的に不安定な化合物を、重合条件を(完全に又は部分的に)耐え抜く目的で使用する、例えば、最終ポリマーに難燃助剤として存在するように使用する場合、分解しない部分は、本発明による開始剤とはみなされない。
【0031】
本発明による方法の間に水性懸濁液に供給するために好適な種類の開始剤の例は、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、アゾ開始剤、ケトンペルオキシド、及びそれらの混合物である。これらの開始剤は、1分子当たり1個若しくは複数のペルオキシ部分及び/又はアゾ部分を有することができる。場合によって、これらの開始剤は、1種又は複数の官能基、例えばアミド、クロリド、ホスフェート、エステル、エーテル及び/又はアルコール基でさらに官能化されている。
【0032】
好ましい開始剤は、置換又は非置換ジベンゾイルペルオキシド、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−アミルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、及びこれらの開始剤の1種又は複数の組合せである。最も好ましいのは、ジベンゾイルペルオキシド、ジセチルペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)である。
【0033】
通常の(発泡性)ポリスチレン製造方法におけるように、ポリマー生成物中の残留モノマー分の量は、好ましくは、比較的高温で、一般的に110〜170℃の範囲で分解する追加の開始剤を添加することによって、通常の方法で低減させることができる。この追加の開始剤は、二次開始剤(second stage initiator)とも称し、それ自体で又は溶媒、例えば発泡剤に溶解して、重合プロセスの開始時はその間に添加できる。好適な追加の開始剤の例は、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ジクミルペルオキシド、及びtert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートである。
【0034】
発泡剤
ポリスチレンを発泡性にするために、発泡剤の導入が必要である。発泡剤は、本発明の方法において水性懸濁液に添加でき、又はポリスチレンの調製後のより後の段階で、生成ポリスチレンに前記発泡剤を含浸させることによって若しくは発泡剤の存在下での生成ポリスチレンの押出によって、添加できる。
【0035】
発泡剤は、本発明の方法において水性懸濁液に添加するか、又はその後に添加することができる。好ましくは、モノマーの重合度が90%未満、好ましくは80%未満、最も好ましくは70%未満の場合に、発泡剤の一部又は全てを水性懸濁液に導入する。1つの好適な方法は、重合の開始の1時間以内に発泡剤を供給又は添加する方法であることが見出された。発泡剤は、それ自体を、又は上述の任意選択の追加の開始剤と混合して添加できる。
【0036】
好適な発泡剤は、フレオン、直鎖又は分岐飽和炭化水素及び環状飽和炭化水素、好ましくはC3〜7炭化水素、特にC4〜6炭化水素、例えばn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン又はイソヘキサン、二酸化炭素、及びこれらの化合物の2種以上の混合物である。最も好ましい発泡剤は、ペンタン及びイソペンタンである。
【0037】
本発明の方法において、発泡剤は、得られるEPSが、スチレン(コ)ポリマーの100重量部当たり、2から20重量部、好ましくは2から15重量部、特に2から10重量部の発泡剤を含むような量で使用するのが好ましい。
【0038】
カーボンブラック
得られるポリスチレンの断熱値(insulation value)を改善するために、炭素微粒子(例えば、カーボンブラック)を重合懸濁液に添加できる。
【0039】
本発明の方法において使用できる微粒炭素の例には、カーボンブラック、黒鉛、及び活性炭が含まれる。カーボンブラックのタイプの例は、オイルファーネスブラック(石油ブラック(petroleum black))、ガスファーネスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、フレームブラック(スモークブラック)、チャンネルブラック(小火炎燃焼(small-flame combustion)により得られるカーボンブラック)、サーマルブラック、及び導電性カーボンブラックである。導電性カーボンブラックは、特に比表面積が極めて高い点で、他のカーボンブラックと異なる。
【0040】
炭素微粒子は、好ましくは、0.1〜300ミクロン、より好ましくは0.5〜150ミクロン、最も好ましくは1〜100ミクロンの平均粒径を有する。
【0041】
市販のカーボンブラックの例は、Cabot製のN550及びDegussa製のLampblack FW101である。
【0042】
市販の導電性カーボンブラックの例は、Ketjenblack(登録商標)EC−300JD及びKetjenblack(登録商標)EC−600JD(Akzo Nobel製)並びにEnsaco(登録商標)及びSuper P(登録商標)導電性カーボンブラック(Timcal製)である。
【0043】
市販の黒鉛の例は、Graphit UFZ 99.5、Graphit UF2 96/96、膨張性黒鉛ES200 A5(全てGraphit Kropfmuhl AG製)、膨張性黒鉛タイプ2151(Bramwell Graphite AG製)、及びTimtex(登録商標)黒鉛(Timcal製)である。
【0044】
微粒炭素は、スチレンに添加して均一に分散することもでき、微粒炭素は、重合プロセスの前に重合懸濁液に添加することもでき、又は微粒炭素は、重合反応中に重合懸濁液に添加することもできる。微粒炭素は、粉末として、スチレン中の分散液若しくはスラリーとして、水中の分散液若しくはスラリーとして、スチレン及び水の両方と混合して、又は、炭素が、例えば、溶融混合方法によって混合されたポリスチレン顆粒として、添加できる。
【0045】
微粒炭素は、モノマーの重量に基づき、好ましくは0.1〜25重量%、より好ましくは0.5〜8重量%の量で重合懸濁液に添加する。
【0046】
他の成分
種々の他の成分、例えば、懸濁安定剤(例えば、リン酸三カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、過硫酸塩、亜硫酸水素塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)、緩衝塩、成核剤(例えば、ポリエチレンワックス)、界面活性剤、連鎖移動剤、保護コロイド、防汚剤、pH緩衝剤などを、重合懸濁液に添加してもよい。これらの添加剤の総重量は、好ましくは、全てのモノマーの総重量に基づき、最高20重量%である。
【0047】
得られるポリスチレン
本発明による方法から得られるポリスチレンは、好ましくは、140,000から300,000ダルトン、より好ましくは160,000から280,000ダルトン、最も好ましくは180,000から260,000ダルトンの範囲の重量平均分子量Mwを有する。
【0048】
重量平均分子量は、一般的に、ポリスチレン標準を使用する通常のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定する。
【0049】
ポリマーの数平均分子量Mnに対するMwの比によって計算されるスチレンポリマーの分子量分布は、好ましくは、1.5から4.0まで、より好ましくは1.7から3.5まで、最も好ましくは1.8から3.0までの範囲である。
【0050】
本発明による方法から得られるポリスチレンは好ましくは、比較的低レベルの残存スチレンモノマー及び適切な場合には残留コモノマー(複数可)を有する。残留モノマー含有量は、好ましくは5,000mg/モノマー1kg以下、好ましくは2,000mg/モノマー1kg未満、より好ましくは1,000mg/モノマー1kg未満である。
【0051】
本発明の方法から得られるポリスチレンは、粒子の形態又は、好ましくは発泡性ビーズの形態であることができる。「ビーズ」は、大径及び小径を有することができる、一般的に球状又はほぼ球状の粒子、特に回転楕円体粒子であって、大径及び小径の間の比が特に1.0から1.3まで、好ましくは1.0から1.2までの範囲のものを意味する。発泡性粒子又はビーズは0.2から3mmまで、好ましくは0.3から2mmまで、特に0.4から1.5mmまでの範囲の平均サイズを有することができる。
【0052】
その他
本発明による方法は、予備重合プロセスの使用及び種粒子の添加を必要としないことに留意する。しかし、それが望ましい場合には、ポリマー粒子、特に初期の重合バッチに由来する望ましくない粒径の粒子は、再循環させることができる。使用する場合には、粒子は好ましくは、所望の温度への重合懸濁液の加熱前又は加熱中にモノマー中に溶解させる。好ましいのは、スチレンモノマー中の0.5〜30重量%、最も好ましくは3〜20重量%のポリスチレンの添加である。
【0053】
別法として、スチレンを、懸濁重合方法で予備重合させることができ、得られたビーズを、本発明の方法において使用する重合懸濁液に添加する。
【実施例】
【0054】
実施例1〜7
従来型の重合
バッフル、3枚羽根車、圧力変換器及び窒素パージを備えた1リットルのステンレス鋼製反応器に、リン酸三カルシウム1.25gを装入した。続いて、ベンゼンドデシルスルホン酸ナトリウム20mgを含有する水性溶液260gを、反応器に添加し、約5分間撹拌した。ジベンゾイルペルオキシド(Akzo Nobel製のPerkadox(登録商標)L−W75;1.00meq/100gスチレン)、tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート(Akzo Nobel製のTrigonox(登録商標)117;0.46meq/100g合計スチレン)、並びに場合によってヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)及びジクミルペルオキシド(Akzo NobelからのPerkadox(登録商標)BC;スチレンの合計重量に基づき0.2%)の溶液を、スチレン250g中で生成し、反応器に装入した。Trigonox(登録商標)117は、二次開始剤として働き、一般的により高温で開始を引き起こした。Perkadox(登録商標)BCは、難燃助剤として働き、これはHBCDとの組み合わせとしてのみ添加した。
【0055】
温度を、1.56℃/分の速度で90℃まで上昇させ、90℃に4.25時間維持した。続いて、温度を、0.67℃/分の速度で130℃まで上昇させ、反応器をこの温度に3時間保った。温度が130℃に上昇する約15分前に、反応器を窒素(5バール)で加圧することによって容器からペンタン20gを添加した。
【0056】
室温に冷却後(終夜)、反応混合物を、HCl(10%)でpH1.5まで酸性化し、約1時間撹拌した。生成物を濾過し、得られたEPSビーズを、それぞれ、水で洗浄してpH>6とし、25ppmのArmostat 400(静電防止剤)の水溶液で洗浄した。最後に、EPSを、室温で約24時間乾燥した。
【0057】
開始剤連続供給(CiD)重合
以下を除き、上述したものと同じ装置及び成分を使用した。全ての成分を含むが開始剤を含まない反応混合物を110℃に加熱した。温度が85℃に達したときに、ジベンゾイルペルオキシド(Perkadox(登録商標)L−W40)の供給を開始した。過酸化物(1meqジベンゾイルペルオキシド/スチレン100gの懸濁液)を、一定の期間(供給時間)、蠕動ポンプを使用して反応器に連続的に供給した。次いで、ペンタン及び二次開始剤、Trigonox(登録商標)117を添加し、反応混合物を130℃に加熱し、上述のようにして手順を終えた。
【0058】
種々の供給時間を使用して得られたポリスチレンの重量平均分子量(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC))を、表1に記載する。
【0059】
この表は、難燃剤の存在は生成されるポリスチレンの分子量を減少させるが、開始剤の供給は、事前装入とは異なり、分子量をそれほど減少させないことを示している。さらに、分子量低下は、供給時間の長さとともに減少する。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例8(比較例)
1リットル撹拌式反応器に、リン酸三カルシウム1.125g、0.2重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム溶液(Nacconol 90G)10g、及び水365gを装入した。この混合物を500rpmで5分間撹拌した。次に、スチレン228.26g中のジクミルペルオキシド(Perkadox(登録商標)BC−FFF)0.550g及びヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)1.663gの溶液を、反応器に添加し、温度を45分かけて90℃に上昇させた。温度が90℃に達したときに、黒鉛(Graphit Kropfmuhl AG)2.5g、及びジベンゾイルペルオキシド(Perkadox L−W75)1.097gのスチレン21.74g中溶液を添加し、温度を6時間90℃に維持した。最後に、温度を45分かけて25℃に低下させた。
【0062】
実施例9
ジベンゾイルペルオキシド(Perkadox(登録商標)L−W75)の添加方法を除いて、手順は実施例8と同様とした。本実施例において、ジベンゾイルペルオキシド(1.097gをスチレン21.74g中に溶解)を2時間、均一な時間間隔で12の部分に分けて反応混合物に添加した。この添加は、温度が90℃に達したときに開始した。開始剤の全量を添加後、温度をさらに4時間90℃に維持し、次いで45分かけて反応器を25℃に冷却した。
【0063】
実施例8及び9におけるスチレン転化率は、反応混合物の有機相の固体分の重量測定法によって測定した。分子量は、上述のように、SECによって測定した。
【0064】
【表2】

【0065】
この表は、微粒炭素の存在下においても、事前装入とは異なり、開始剤の供給は、より高い分子量をもたらすことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)スチレンモノマーを含む重合懸濁液を少なくとも60℃の温度に加熱するステップと、
b)重合反応中に、前記加熱された重合懸濁液に、開始剤を連続的に又は少なくとも2つの部分に分けて断続的に90分超から5時間未満の期間にわたって供給するステップと
を含む、ポリスチレンを製造するためのスチレンモノマーの懸濁重合方法であって、
前記期間がモノマー転化率65%以下から始まり、前記開始剤がその供給温度において60分以下の半減期を有し、重合反応中に重合懸濁液中に臭素化難燃剤が存在する、懸濁重合方法。
【請求項2】
加熱された重合懸濁液に、開始剤を2〜4時間の期間にわたって供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加熱された重合懸濁液に、開始剤を連続的に供給する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
加熱された重合懸濁液に、開始剤を少なくとも20の部分に分けて断続的に供給する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記期間が、モノマー転化率0%から始まる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記臭素化難燃剤が、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、ペンタブロモベンジルブロミド、テトラブロモビスフェニルAビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェニルAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、ジブロモヘキサヒドロフタルイミド、N−メチル−ジブロモヘキサヒドロフタルイミド、N,N−2,3−ジブロモプロピル−4,5−ジブロモヘキサヒドロフタルイミド、ビス(2,3−ジブロモプロピル)テトラブロモフタレート、トリス(2,3−ジブロモイソプロピル)イソシアヌレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、及び臭素化スチレン(コ)ポリマーからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
重合懸濁液が微粒炭素を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
発泡剤を重合懸濁液に添加する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
開始剤が、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ケトンペルオキシド、及びアゾ開始剤からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
開始剤が、ジベンゾイルペルオキシド、ジセチルペルオキシジカーボネート、tert−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
重合反応を60〜160℃の範囲の温度で実施する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
開始剤を水性分散液の形態で供給する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−513680(P2013−513680A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542502(P2012−542502)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069012
【国際公開番号】WO2011/069983
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(509131443)アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ (26)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
【住所又は居所原語表記】Stationsstraat 77, 3811 MH Amersfoort, Netherlands
【Fターム(参考)】