説明

スチレン系樹脂発泡体および該発泡体に面材を積層接着した積層パネル

【課題】 本発明は、合板、石膏ボード等からなる面材をスチレン系樹脂発泡体に積層してなる積層パネルにおいて、該面材に積層接着する際の、面材との接着性に優れたスチレン系樹脂発泡体を提供することを目的とする。
【解決手段】 厚み方向の引張強さが30N/cm以上である、さらに、厚み方向の圧縮強さは、20N/cm以上であるスチレン系樹脂発泡体に、合板、石膏ボード等からなる面材を積層してなる積層パネルは、両界面での接着性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い引張強さを有するスチレン系樹脂発泡体に関するものであって、面材を積層接着した際に面材の接着性に優れたスチレン系樹脂発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、建築物の内壁材や間仕切壁として、石膏ボードや鋼鈑などの面材とスチレン系樹脂発泡体などの合成樹脂発泡体を組み合わせて使用することが広く行われている。
【0003】
このような壁構造の施工作業性を向上させるため、工場での製造段階にて面材と合成樹脂発泡体を接着剤等で貼り合わせておき、貼り合わされた積層パネルを建築現場に搬入して取り付け施工することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
上記技術では、現場施工の作業性ばかりでなく、石膏ボードや鋼板などの面材を合成樹脂発泡体に工場できちんと品質管理し接着することができるため、一体性を向上させることができる。
【特許文献1】特開平8−232368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記積層パネルでは、接着時の工程管理を確実に行っても、スチレン系樹脂発泡体と面材との界面での接着性不足により、容易に積層面材が外れてしまうことがあり、両界面での接着性向上が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題の解決のため鋭意研究の結果、スチレン系樹脂発泡体の厚み平面方向の引張強さを一定以上にすることにより、スチレン系樹脂発泡体と積層面材との界面での接着を向上することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
発泡体密度が15〜60kg/m、発泡体厚さが10〜150mmのスチレン系樹脂発泡体であって、厚み方向の引張強さが30N/cm以上であることを特徴とするスチレン系樹脂発泡体、これを用いた面材を積層接着した積層パネルとした。
ここで、上記スチレン系樹脂発泡体の圧縮強さは、20N/cm以上であることが好ましく、スチレン系樹脂発泡体としてはスチレン系樹脂押出発泡体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スチレン系樹脂発泡体の厚み方向の引張強さを一定以上にすることにより、スチレン系樹脂発泡体と面材との界面での接着性を向上することができ、高品質の積層パネルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で使用されるスチレン系樹脂発泡体の厚み方向の引張強さは、30N/cm以上が好ましく、40N/cm以上がより好ましい。厚み方向の引張強さが30N/cm未満の場合、積層パネルとして使用した際に、発泡体が厚み方向に材料破断を発生しやすく、積層面材を安定的に接着することができない傾向がある。
【0010】
本発明で使用されるスチレン系樹脂発泡体の厚み方向の圧縮強さは、20N/cm以上が好ましく、25N/cm以上がより好ましい。厚み方向の圧縮強さが20N/cm未満の場合、積層パネルを作成する際にプレス等を用いて面材を発泡体に圧着する際に、発泡体が潰れやすく、接着が安定的にできない傾向がある。
【0011】
本発明で使用されるスチレン系樹脂発泡体の厚さは、通常の板状物のように厚さのあるものが好ましく、通常10〜150mm、好ましくは20〜100mmである。
【0012】
本発明で使用されるスチレン系樹脂押出発泡体の密度は、軽量でかつ優れた断熱性を付与せしめるために、15〜60kg/mであることが好ましく、20〜50kg/mであることがさらに好ましい。
【0013】
本発明のスチレン系樹脂発泡体に用いられるスチレン系樹脂は、特に限定されるものではなく、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー;スチレン単量体とスチレンと共重合可能な単量体あるいはその誘導体から得られるランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体;後臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレンなどが挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0014】
スチレンと共重合可能な単量体としては、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体;ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物;ブダジエンなどのジエン系化合物あるいはその誘導体;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物などが挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0015】
本発明におけるスチレン系樹脂として、加工性の面から、スチレンホモポリマーが好ましい。
【0016】
本発明のスチレン系樹脂発泡体は、スチレン系樹脂発泡体を製造する方法としては、押出発泡法とビーズ発泡法の2つの方法が広く知られているが、ビーズ発泡法ではビーズの融着不良や発泡倍率のムラの発生等で所望の平面方向の引張強さや圧縮強さが安定的に得にくい傾向があるため、本発明の製造方法は押出発泡法が好ましい。
【0017】
本発明のスチレン系樹脂発泡体は、次の方法で製造されることが好ましい。スチレン系樹脂に難燃剤、増核剤、滑剤、さらに必要に応じて、他の添加剤を含有するスチレン系樹脂組成物を、押出機等の加熱溶融手段に供給し、任意の段階の高圧条件下で、発泡剤を溶融状態のスチレン系樹脂組成物に添加し、流動ゲルとなし、押出発泡に適する温度に冷却し、ダイを通して該流動ゲルを低圧領域に押出発泡して、発泡体を形成する押出発泡法により製造することが好ましい。
【0018】
スチレン系樹脂に各種添加剤を添加する手順として、例えば、スチレン系樹脂に対して各種添加剤を添加して混合した後、押出機に供給して加熱溶融し、更に発泡剤を添加して混合する手順が挙げられるが、各種添加剤をスチレン系樹脂に添加するタイミングや混練時間は特に限定されない。
【0019】
スチレン系樹脂の加熱温度は、使用されるスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、添加剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制され、且つ各種添加物が十分に混練できる温度、例えば、150〜260℃程度が好ましい。溶融混練時間は、単位時間当たりのスチレン系樹脂の押出量や溶融混練手段として用いる押出機の種類により異なるので一義的に規定することはできず、スチレン系樹脂と発泡剤や添加剤とが均一に分散混合されるに要する時間として適宜設定される。
溶融混練手段としては、例えば、スクリュー型の押出機などが挙げられるが、通常の押出発泡に用いられるものであれば、特に制限されない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるためには、押出機のスクリュー形状を低せん断タイプのものとすることが好ましい。
【0020】
発泡成形方法は、例えば、押出成形用に使用される開口部が直線のスリット形状を有するスリットダイを通じて、高圧領域から低圧領域へ開放して得られた押出発泡体を、スリットダイと密着または接して設置された成形金型、及び該成形金型の下流側に隣接して設置された成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する方法が用いられる。ここで、成形金型の流動面形状調整、金型温度調整および表面切削機器のスピード調整によって、所望の引張強さ、圧縮強さを有する発泡体を得ることができる。
【0021】
本発明に使用する積層面材としては、合板、石膏ボード、珪酸カルシウム板、セメント系板及び合成樹脂等の内装ボードとして使用されるものをあげることができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
上記積層面材の板厚としては、使用材料、使用目的によって異なるが、通常、5〜20mmの範囲に設定される。また、積層面材が5mmより薄いと、積層パネルとして使用する際に、表面からの応力で発泡体が凹んでしまう場合がある。
【0023】
本発明に使用する接着剤としては、合成樹脂エマルジョン系接着剤、剛性ゴムエマルジョン系接着剤、反応型樹脂系接着剤、モルタル系接着剤、樹脂モルタル系接着剤等を用いることができる。これら接着剤は、接着面の全面に塗布をし、隙間無く面材とスチレン系樹脂発泡体を接着させることが好ましい。
【0024】
本発明の積層パネルは、例えば、上記製造方法等で得られたスチレン系樹脂発泡体に、上記接着剤を全面に塗布し、プレス機を用いて1〜2N/cmの圧力を全面にかけて、15分以上圧力を保持することにより、好適に得ることができる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。
【0026】
以下に示す実施例、比較例の特性として、発泡体の密度、平面方向の引張強さ、平面方向の圧縮強さおよび面材接着試験、以下に従って測定・評価した。
【0027】
(1)発泡体密度(kg/m
得られた押出発泡体を、長さ100mm×幅100mm×厚み50mmの直方体に切り出した後、その重量を測ると共に、ノギスにて各方向での寸法を測定し、発泡体密度を、発泡体密度(kg/m)=10×発泡体重量(g)/発泡体体積(mm)に基づいて求めた。測定は3点で行い、その平均値で評価をした。
【0028】
(2)引張強さ(N/cm
ASTM C297に準じて、測定速度0.5mm/minの速度にて、厚み方向の引張強さを測定した。サンプルサイズは長さ50mm×幅50mm×厚み50mmとし、測定は製造後14日経過した発泡体を用いた。測定は3点で行い、その平均で評価をした。
【0029】
(3)圧縮強さ(N/cm
製造後14日経過した押出発泡体から、長さ50mm×幅50mm×厚み50mmの立方体に切り出した後、JIS K7220に準じて、測定速度5mm/minの速度で、厚み方向の圧縮強さを測定した。測定は3点で行い、その平均値で評価した。
【0030】
(4)面材接着試験
得られたスチレン系樹脂発泡体(サンプルサイズ:長さ120mm×幅300mm×厚み50mm)に、JAS(日本農林規格)の普通合板規格の適合品[ラワン合板、厚み2.5mm]を用いて、エポキシ樹脂系接着剤[(株)オーシカ製、オーシカダインTE−76]を50g/mの量にて全面に塗布して、プレス機[(株)山本鉄工所製、CTD2−75]を用いて、プレス圧力1.5kg/cmにて20分間プレスし、合板を積層接着したパネルを作製した。
24時間以上経過後に、合板の端部をペンチで引張り、合板を剥して、接着の状況を確認した。接着剤面および面材が材料破壊をしたものを合格、発泡体が材料破壊したものを不合格とした。測定は3点で行い評価をした。
【0031】
(実施例1)
ポリスチレン樹脂[PSジャパン(株)製、商品名:G9401]100重量部に対して、臭素系難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカン[アルベマール日本(株)製、商品名:HP900G]3.0重量部、気泡調整剤としてタルク[林化成(株)製、商品名:TALCAN POWDER PK−Z]0.5重量部、その他の添加剤として、ステアリン酸カルシウム0.2重量部をドライブレンドし、得られた樹脂混合物を口径65mmの単軸押出機(一段目押出機)と口径90mmの単軸押出機(二段目押出機)を直列に連結した二段押出機へ、約50kg/hrの割合で供給した。
一段目押出機に供給した樹脂混合物を、200℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、これに連結された二段目押出機内にて樹脂温度を120℃に冷却した後、二段目押出機の先端に設けた厚さ方向3mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、厚さ約60mm、幅約150mmの直方体状の押出発泡体を得た。
この際、発泡剤として、ポリスチレン樹脂100部に対して、イソブタン3.5重量部およびジメチルエーテル4.0重量部を、それぞれ別のラインから、一段目押出機の先端付近[二段目押出機の口金と反対側の端部側に、接続される側の端部]から、前記溶融混練樹脂中に圧入した。
成形金型の流動面形状調整および金型温度調整し、(株)菊川鉄工所製のプレーナーを用いて10m/minの速度で表面の切削を実施し、厚さ50mm、密度29kg/m、厚み方向の引張強さが35N/cmおよび厚み方向の圧縮強さが32N/cmの発泡体を得た。この発泡体の特性を、表1に示す。
下記の比較例1〜2と比較し、引張強さが強いことから積層パネル作成の実使用上問題のない発泡体が得られた。
【0032】
(実施例2)
成形金型の流動面形状調整および金型温度調整により、密度27kg/m、厚み平面方向の引張強さを33N/cm、厚み方向の圧縮強さを27N/cmにした以外は、実施例1と同様の条件にて、押出発泡体を得た。この発泡体の特性を、表1に示す。
下記の比較例1〜2と比較し、引張強さが強いことから積層パネル作成の実使用上問題のない発泡体が得られた。
【0033】
(実施例3)
(株)菊川鉄工所製のプレーナーの代わりにアミテック(株)製のベルトサンダーを用いて8m/minの速度で表面の切削をした以外は、実施例1と同様の条件にて、押出発泡体を得た。
得られた発泡体は、密度29kg/m、厚み方向の引張強さを44N/cm、厚み方向の圧縮強さを32N/cmであった。この発泡体の特性を、表1に示す。
下記の比較例1〜2と比較し、引張強さが強いことから積層パネル作成の実使用上問題のない発泡体が得られた。
【0034】
(実施例4)
押出発泡時の発泡剤として、ポリスチレン樹脂100部に対してイソブタン4.0重量部およびジメチルエーテル4.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様の条件にて、押出発泡体を得た。得られた発泡体は、密度22kg/m、厚み方向の引張強さを31N/cm、厚み方向の圧縮強さを23N/cmであった。この発泡体の特性を、表1に示す。
下記の比較例1〜2と比較し、引張強さが強いことから積層パネル作成の実使用上問題のない発泡体が得られた。
【0035】
(比較例1)
成形金型の流動面形状調整および金型温度調整により、密度27kg/m、厚み方向の引張強さを28N/cm、厚み方向の圧縮強さを26N/cmにした以外は、実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。この発泡体の特性を、表1に示す。
実施例と比較し、引張強さが弱く、積層パネル作成の実使用上問題が発生する可能性のある発泡体であった。
【0036】
(比較例2)
押出発泡時の発泡剤として、ポリスチレン樹脂100部に対してイソブタン4.5重量部およびジメチルエーテル4.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体は、密度18kg/m、平面方向の引張強さを27N/cm、平面方向の圧縮強さを19N/cmであった。この発泡体の特性を、表1に示す。
実施例と比較して、引張強さが弱く、積層パネル作製の実使用上、問題が発生する可能性のある発泡体であった。
【0037】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体密度が15〜60kg/m、発泡体厚さが10〜150mmのスチレン系樹脂発泡体であって、厚み方向の引張強さが30N/cm以上であることを特徴とする、スチレン系樹脂発泡体。
【請求項2】
厚み方向の圧縮強さが20N/cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項3】
上記スチレン系樹脂発泡体が、スチレン系樹脂押出発泡体であることを特徴とする、請求項1または2に記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項4】
上記請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体に、面材を積層接着したことを特徴とする、積層パネル。


【公開番号】特開2010−59373(P2010−59373A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229035(P2008−229035)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】