説明

スチールコード用ゴム組成物及び空気入りラジアルタイヤ

【課題】 耐疲労性を損なうことなく発熱性、破壊強度を向上しスチールコードとの接着性を改善したスチールコード用ゴム組成物、及びこれを用いた耐久性に優れる空気入りラジアルタイヤを提供する。
【解決手段】 天然ゴム及びジエン系合成ゴムより選ばれた少なくとも1種のゴム成分100重量部に対して、(A)窒素吸着比表面積(NSA)が70〜100m/g、(B)アグリゲート分布の最多頻度値(Dst)に対するDstの半値幅(ΔDst)の比ΔDst/Dstが0.85〜1.25、(C)24M4DBP吸油量が60〜120ml/100g、(D)NSAとヨウ素吸着量(IA)の比(NSA/IA)の値が1.10〜1.35のカーボンブラック35〜65重量部、及び有機酸コバルト塩、レゾルシン又はレゾルシン誘導体とそのメチレンドナー含有するスチールコード用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールコード用ゴム組成物及び空気入りラジアルタイヤに関し、さらに詳しくは耐疲労性を損なうことなく発熱性、破壊強度を向上しスチールコードとの接着性を改善したスチールコード用ゴム組成物、及び該ゴム組成物をスチールコード被覆ゴム及びベルトエッジクッションゴムに用いた空気入りラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路が全国的に整備され大型トラックや高速バスによる陸上輸送がますます発展し、また車両の高性能化(高速化、高馬力化、大型化など)が進み、空気入りラジアルタイヤの骨格となるスチールベルトやカーカスにかかる歪みが一段と増大し、特に交差ベルト層間、中でもそのベルトエッジ部には大きな剪断力が作用するため、コード被覆ゴムにはスチールコードとの接着性に優れるゴム組成物が用いられている。またベルトエッジ部の剪断歪みを軽減するために破壊強度や発熱性に優れるベルトエッジクッションゴムが配されてはいるが未だ不十分でゴムの内部破壊やコード層との接着破壊からのセパレーション故障が生じやすく、過酷化する使用条件にもかかわらずタイヤの長寿命化の要求は一段と厳しくなっている。
【0003】
かかる問題を解決するために、ベルトエッジクッションゴムに特定のコロイダル特性を有するカーボンブラックを配合し、ゴム強度を向上させるとともに低発熱化することが提案されている(特許文献1)。また、コロイダル特性を規定した2種類のカーボンブラックを併用することで、ゴム組成物の引き裂き強度、低発熱性に加えて剛性を向上したゴム組成物が開示されている(特許文献2)。また、カーボンブラックと有機コバルト塩、さらにレゾルシン系樹脂を用いることで発熱性、低転がり抵抗性、剛性、接着性などをバランスさせるゴム組成物が提案されている(特許文献3,4)。
【特許文献1】特開平6−212025号公報
【特許文献2】特開平6−25473号公報
【特許文献3】特開平7−149957号公報
【特許文献4】特開2002−338734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐疲労性を損なうことなく発熱性、破壊強度を向上しスチールコードとの接着性を改善したスチールコード用ゴム組成物、及びこのゴム組成物をスチールコード被覆ゴムやベルトエッジクッションゴムに用いた耐久性に優れる空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、カーボンブラックのコロイダル特性を選択することでスチールコード用ゴム組成物のゴム特性を最適化し、かつ有機酸コバルト塩とレゾルシン系樹脂の特定量を併用することで上記課題を解決し得ることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明のスチールコード用ゴム組成物は、天然ゴム及びジエン系合成ゴムより選ばれた少なくとも1種のゴム成分100重量部に対して、(A)窒素吸着比表面積(NSA)が70〜100m/g、(B)アグリゲート分布の最多頻度値(Dst)に対するDstの半値幅(ΔDst)の比ΔDst/Dstが0.85〜1.25、(C)24M4DBP吸油量が60〜120ml/100g、(D)NSAとヨウ素吸着量(IA)の比(NSA/IA)の値が1.10〜1.35、の全ての条件を満たすカーボンブラック35〜65重量部、有機酸コバルト塩をコバルト金属分量で0.1〜0.3重量部、レゾルシン又はレゾルシン誘導体を0.5〜5重量部とそのメチレンドナーとしてのヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体を前記レゾルシン又はレゾルシン誘導体の0.5〜2倍重量部含有してなることを特徴とする。
【0007】
本発明のスチールコード用ゴム組成物によると、カーボンブラックのNSA、ΔDst/Dst、24M4DBP吸油量、NSA/IAを上記範囲に特定することで、すなわちHAFクラスの粒径で凝集体分布を広くしてストラクチャーを適正範囲とし、かつ高活性なカーボンブラックの最適量を用いることによりゴム組成物の強度、耐疲労性、発熱特性を向上し、有機酸コバルト塩によりゴム組成物とスチールコードとの接着力を増加させるとともにレゾルシン又はレゾルシン誘導体とそのメチレンドナーを含有することでタイヤ走行に伴う負荷や発熱によるスチールコードの耐熱、耐湿熱接着性の低下を抑えることができる。
【0008】
本発明の空気入りラジアルタイヤは、前記スチールコード用ゴム組成物をスチールコード被覆ゴムに用いたことを特徴とし、スチールベルト被覆ゴムに用いることが好適である。
【0009】
また、本発明の空気入りラジアルタイヤは、前記スチールコード用ゴム組成物を、さらにベルトエッジクッションゴムに用いたタイヤである。
【0010】
本発明の空気入りラジアルタイヤでは、前記スチールコード用ゴム組成物をスチールコード被覆ゴム、特にスチールベルト被覆ゴムやベルトエッジクッションゴムに用いることで、スチールコード−ゴム間の高い接着力を保持しつつ耐疲労性、発熱性が改善され、スチールコード−ゴム間及びゴム−ゴム間のセパレーションを抑制してタイヤの耐久性を大幅に向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スチールコード用ゴム組成物の耐疲労性を損なうことなく発熱性、破壊強度を向上しスチールコードとの接着性を改善することができ、このゴム組成物をスチールコード被覆ゴム、特にスチールベルト被覆ゴムやベルトエッジクッションゴムに用いた空気入りラジアルタイヤは過酷な使用条件においてもスチールコード−ゴム間及びゴム−ゴム間での接着破壊やゴム内部破壊の発生を抑制してタイヤの耐久寿命を大幅に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のスチールコード用ゴム組成物に用いられるゴム成分としては、天然ゴム及びジエン系合成ゴムが使用でき、これらの1種或いは2種以上が任意の比率のブレンドで使用することができる。
【0013】
ジエン系合成ゴムとしては、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)等が挙げられ、その重合法や分子量などに制限されない。中でもIR、SBR、BRがスチールコードとの接着性、強度や耐疲労性、発熱性などの点で好ましい。
【0014】
本発明のスチールコード用ゴム組成物に用いられるカーボンブラックは、上記(A)〜(D)の全ての条件を満たす必要があり、すなわち比較的大粒径でありながら凝集体分布がブロードで広く、ストラクチャーが大きく、かつ活性の高いカーボンブラックであり、これによりゴム組成物の強度、耐疲労性、発熱特性などのゴム特性を高度にバランスすることができる。
【0015】
カーボンブラックのNSAが、70m/g未満であると粒径が大き過ぎるため強度、耐屈曲疲労性が低下し、100m/gを超えると発熱が高くなり耐久性が悪化する。
【0016】
カーボンブラックのΔDst/Dstが0.85未満であると凝集体分布がシャープでゴム組成物の低発熱性が実現されず、1.25を超えるものは引張強さが低くなる。
【0017】
また、24M4DBP吸油量が60ml/100g未満であるとカーボンブラックのストラクチャーが低くモジュラスが低下するため発熱が高くなり、また120ml/100gを超えると強度が低下し耐久性が悪化する。
【0018】
さらに、NSA/IAの値が1.10未満であるとカーボンブラックの活性が低くなり補強性が低下するため十分な強度が得られず耐久性が悪化し、1.35を超えると加工性や伸び特性の低下が見られる。
【0019】
なお、上記NSAはASTM D3037−84Bに準拠し、24M4DBP吸油量はASTM D3493−90に準拠し測定されるもので、NSA/IAにおけるNSAはASTM D3037−88、IAはASTM D1510に準拠して測定される値である。
【0020】
また、アグリゲート分布の最多頻度値(Dst)は、遠心沈降分析法により測定したカーボンブラックの凝集体(アグリゲート)特性で、ストークス相当径の分布曲線のモード径を意味し、半値幅(ΔDst)はDstに対する分布曲線の半値幅を意味する。
【0021】
上記のDst、ΔDstは、例えば、Disc Centrifuge Photosedimentmeter(DCP:Brook Haven社製、BI−DCP)を使用し以下のようにして測定することができる。すなわち、少量の界面活性剤を加えた20容量%のエタノール水溶液中に、50mg/lとなるようにカーボンブラックを加え、超音波処理を施して完全に分散させる。沈降液(スピン液)として蒸留水10ml、バッファー液(20容量%エタノール水溶液)1mlを順次注加した回転ディスクの回転数を8000rpmとし、上記のカーボンブラック分散液0.5mlを注射器を用いて注加して一斉に遠心沈降を開始させ、光電沈降法により凝集体分布曲線を作成する。Dstは該測定操作により得られる凝集体のストークス相当径の曲線において、最多頻度を与えるストークス相当径をモード径(Dst)(nm)と定義し、カーボンブラック凝集体(アグリゲート)の平均的大きさの代表値と見なされる。また、ΔDstは、前記モード径の50%頻度が得られる大小2つのストークス相当径の差の絶対値(半値幅)をΔDst(nm)とするものである。
【0022】
本発明のスチールコード用ゴム組成物は、上記(A)〜(D)の条件を満たすカーボンブラックをゴム成分100重量部に対して35〜65重量部配合される。配合量が35重量部未満であると補強性が十分でなく強度や耐疲労性が低下し耐久性が不十分となり、65重量部を超えると発熱が高くなりやはり耐久性に悪影響を及ぼす。
【0023】
本発明のスチールコード用ゴム組成物には有機酸コバルト塩が配合され、スチールコードとの接着力を向上させる。有機酸コバルト塩としては、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ホウ酸コバルト、オレイン酸コバルト、マレイン酸コバルトなどが挙げられ、加工性の点からナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトが好ましい。
【0024】
上記有機酸コバルト塩の配合量は、コバルト金属分量に換算してゴム成分100重量部に対して0.1〜0.3重量部であり、0.1重量部より少ないとスチールコードとの初期接着性が不十分となり、また0.3重量部を超えてもそれ以上の接着向上の効果は得難く、コストが高くなる。
【0025】
また、本発明のスチールコード用ゴム組成物には、レゾルシン又はレゾルシン誘導体がメチレンアクセプターとして、そのメチレンドナーとしてヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体が配合され用いられる。すなわち、メチレンアクセプターの水酸基とメチレンドナーのメチレン基とが硬化反応しゴムとスチールコードの接着性を高め耐熱、耐湿熱接着性を向上し、タイヤ走行に伴う負荷や発熱による接着性の劣化を抑制することができる。
【0026】
前記レゾルシン誘導体としては、レゾルシンとホルムアルデヒドとを縮合したレゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂が挙げられるが、フェノール類(フェノール、クレゾール等)とアルデヒドとを縮合したフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール系樹脂を用いることもできる。ゴム成分や他の成分との相溶性や硬化後の樹脂の緻密さ及び信頼性の見地からはレゾルシン又はアルキルフェノールを含むレゾルシン誘導体が好ましく、この誘導体としてはレゾルシン・アルキルフェノール・ホルマリン共重合体、レゾルシン・ホルマリン反応物ペナコライト樹脂等を挙げることができる。
【0027】
上記レゾルシン又はレゾルシン誘導体の配合量は、ゴム成分100重量部に対して0.5〜5重量部である。配合量が0.5重量部未満であると、スチールコードとの良好な接着特性が得られず、すなわち、長期の使用または促進劣化でゴムの弾性率が変化してしまい、また破壊特性を充分に維持することができず耐久性が低下する。一方、その配合量が5重量部を超えると、ゴム組成物の耐熱性が悪化するとともに弾性率が大きくなり脆くなってしまいやはり耐久性が低下する。
【0028】
また、メチレンドナーとしてのヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体は、レゾルシン又はレゾルシン誘導体の0.5〜2倍の重量部で配合される。メラミン誘導体としては、例えばメチロールメラミンの部分エーテル化物、メラミンとホルマリンとの反応物をメタノールでメトキシ化した化合物等が用いられ、その中でもメラミン1分子当たりの結合ホルマリン数が4〜6、メトキシ基数が2〜6の混合物でかつ一量体の含量が60〜90%の範囲のメラミン誘導体が好ましく、例えばヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。
【0029】
前記ヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体の配合量は、少なくとも、上記レゾルシン等に対して充分な反応、硬化を行わせるだけの量であり、配合量がレゾルシン等の0.5倍重量部より少ない場合には充分な反応、硬化を行わせることができない。一方、配合量が2倍重量部を超えると、ゴム組成物の物性低下を来してしまう。
【0030】
本発明にかかるゴム組成物は、上記ゴム成分、カーボンブラック、有機酸コバルト塩、レゾルシン等とそのメチレンドナーに加えて、タイヤ用ゴム組成物に一般的に配合される各種配合剤を任意に配合することができ、その配合量も一般的な量とすることができる。任意に配合する配合剤としては、例えば加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス、老化防止剤、加工助剤等を本発明の目的に反しない範囲で適宜配合することができる。
【0031】
本発明のスチールコード用ゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダなどの混合機を用いて混練し作製することができ、空気入りラジアルタイヤの補強材として使用されるスチールベルトやスチールカーカスの被覆(トッピング)ゴムとして用いられ、またトラックやバス、ライトトラックなどの大型空気入りラジアルタイヤのベルトエッジクッションゴムとして好適に使用される。
【0032】
上記ゴム組成物は、常法に従いスチールカレンダーなどのトッピング装置によりスチールコードトッピング反を製造しタイヤ補強部材とし、また押出機やカレンダーなどによりクッションゴムに加工しタイヤ部材として適用し、成形、加硫することにより本発明の空気入りラジアルタイヤを製造することができる。
【0033】
図1は、本発明の実施形態を示すトラック・バス用の空気入りラジアルタイヤTの半断面図である。符号1はスチールコードからなるカーカス、2は4層のスチールコードからなるベルト、3,4はタイヤ周方向に対してコード傾斜方向が交差する第2,3層のベルトプライ、5は第2,3層のベルトエッジ部の間でタイヤ周方向に延在して配されたベルトエッジクッションゴム、6はトレッドである。
【0034】
本発明の空気入りラジアルタイヤTは、ベルト2を構成する各ベルトプライのコード被覆ゴム(トッピングゴム)とベルトエッジクッションゴム5に本発明にかかるスチールコード用ゴム組成物が用いられている。もちろん、カーカスプライ1やスチールチェーファーのトッピングゴムとしても使用することができる。
【0035】
本発明の空気入りラジアルタイヤTは、タイヤ新品時のベルトプライ間の接着強度を確保し、走行中に受ける剪断歪みや発熱からの接着破壊やゴム自体の劣化、内部破壊を抑制し、また剪断力が大きくかかる交差ベルトプライ3,4のエッジ部間に配されたベルトエッジクッションゴム5が走行中の剪断歪みを緩和するとともに内部発熱を抑えてベルトエッジでのセパレーションを防止しタイヤの耐久性を向上するものとなる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明にかかるスチールコード用ゴム組成物及び空気入りラジアルタイヤを実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
表2に記載の配合内容(重量部)にて、天然ゴム100重量部に対して、表1に記載の特性を有するカーボンブラック(CB)(1)〜(6)、下記のステアリン酸コバルト、レゾルシン、メラミン誘導体と、下記の共通の配合成分(重量部)を配合し、実施例1,2及び比較例1〜8のゴム組成物を密閉式バンバリーミキサーを用いて混練し作製した。なお、カーボンブラックはゴム組成物のモジュラスを合わせるために配合量を調整した。
【0038】
実施例に用いたCB(1)〜(6)のコロイダル特性の調整は、炉頭部に空気供給口と炉軸方向に装着された燃焼バーナーを備える燃焼室と、この燃焼室と同軸に連設された原料油噴射ノズルを有する多段の径小の反応室及び径大の反応室とにより構成されるオイルファーネス炉を用いて、原料油の導入条件、空気導入条件、燃料油導入条件、冷却条件を調整することにより行った。
【0039】
【表1】

【0040】
・ステアリン酸コバルト:日本鉱業製
・レゾルシン:住友化学工業製
・メラミン誘導体(ヘキサメトキシメチルメラミン):三井サイテック製、サイレッツ963L
【0041】
[共通成分(配合量)]
・天然ゴム:100重量部(RSS3号)
・亜鉛華:8重量部(三井金属鉱業製、亜鉛華3号)
・老化防止剤6PPD:2重量部(モンサント製、サントフレックス13)
・加硫促進剤DZ:1重量部(大内新興化学製、ノクセラーDZ−G)
・硫黄:4.5重量部(四国化成製、ミュークロン OT−20F)
【0042】
各スチールコード用ゴム組成物について、引張強さ(JIS K6251に準拠、3号ダンベル使用)、発熱性(JIS K6255に準拠)、屈曲疲労性(JIS K6260に準拠)を測定し比較例1を100とする指数で表2に示した。引張強さ、発熱性、屈曲疲労性はいずれも指数が大きいほど良い。
【0043】
さらに、図1に示すベルトプライ2(スチールコード3×0.20+6×0.35)のトッピングゴムとベルトエッジクッションゴム5に各ゴム組成物を適用した試作タイヤ(サイズ;11/70R22.5)のドラム耐久性を下記方法により評価し、結果を表2に示した。
【0044】
[ドラム耐久性]
直径1.7mの鋼製ドラムを備えた室内ドラム試験機を使用し、空気圧をJIS D4230に規定の10%、試験速度を40Km/hとし、タイヤ負荷荷重をJIS規定の140%から始め、150時間毎に荷重を10%ずつ上げてタイヤに故障が発生するまで走行試験を行った。比較例1タイヤの故障発生までの走行距離を基準とし、故障発生までの走行距離が±10%以内で同等のものを「○」、比較例1よりも故障発生までの走行距離が10%以上短く劣るものを「×」、10%以上走行距離が長く優れるものを「◎」として評価した。
【0045】
【表2】

【0046】
表2に示すように、比較例1(従来例)に対して、比較例2はCB(2)が大粒径ではあるが高ストラクチャーであり引張強さが低下するが、凝集体分布はブロードで発熱性にメリットがある。比較例3はCB(3)の凝集体分布がシャープになりやはり発熱性にメリットがなく、低活性のため引張強さが低くなりドラム耐久性が悪化する。比較例4はCB(4)の粒径が小さく引張強さは高いが、凝集体分布がシャープで発熱性にメリットがなく耐久性が劣る。
【0047】
これに対して、実施例1はCB(5)の粒径が大きく、凝集体分布がブロードであり低発熱化され、活性が高いため大粒径化による引張強さの低下を補うことができドラム耐久性が向上する。また、実施例2はCB(6)の粒径が大きく、凝集体分布がブロードで、ストラクチャーも大きいため低発熱化され、活性が高いため大粒径化による引張強さの低下を補い耐久性を向上させることができる。一方、CB(6)の配合量の少ない比較例5は引張強さが低いためドラム耐久性が悪化し、CB(6)の配合量の多すぎる比較例6では発熱が高くなり耐久性が悪化した。
【0048】
また、ステアリン酸コバルトを含まない比較例7及びレゾルシンの配合量が少ない比較例8では、ドラム走行中の負荷と発熱によりスチールコード−ゴム間の接着破壊からセパレーションを生じドラム耐久性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のスチールコード用ゴム組成物は、空気入りラジアルタイヤのベルトプライ、カーカスプライなどのトッピングゴムとして広く使用することができ、特にトラックやバス、ライトトラックなどの大型タイヤに好適に用いられ、また、ベルトエッジクッションゴムとしても有用であり、タイヤの耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態を示すタイヤの半断面図である。
【符号の説明】
【0051】
T……空気入りラジアルタイヤ
1……カーカス
2……ベルト
3……第2層ベルトプライ
4……第3層ベルトプライ
5……ベルトエッジクッションゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及びジエン系合成ゴムより選ばれた少なくとも1種のゴム成分100重量部に対して、
(A)窒素吸着比表面積(NSA)が70〜100m/g、(B)アグリゲート分布の最多頻度値(Dst)に対するDstの半値幅(ΔDst)の比ΔDst/Dstが0.85〜1.25、(C)24M4DBP吸油量が60〜120ml/100g、(D)NSAとヨウ素吸着量(IA)の比(NSA/IA)の値が1.10〜1.35、の全ての条件を満たすカーボンブラック35〜65重量部、
有機酸コバルト塩をコバルト金属分量で0.1〜0.3重量部、
レゾルシン又はレゾルシン誘導体を0.5〜5重量部とそのメチレンドナーとしてのヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体を前記レゾルシン又はレゾルシン誘導体の0.5〜2倍重量部含有してなる
ことを特徴とするスチールコード用ゴム組成物。
【請求項2】
前記スチールコード用ゴム組成物をスチールコード被覆ゴムに用いた
ことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
前記スチールコード用ゴム組成物をスチールベルト被覆ゴムに用いた
ことを特徴とする請求項2に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
前記スチールコード用ゴム組成物を、さらにベルトエッジクッションゴムに用いた
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の空気入りラジアルタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2006−232895(P2006−232895A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46278(P2005−46278)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】