説明

ステアリングサポートメンバーの支持構造

【課題】車体側の部品の取り付け孔の位置のバラツキを容易に吸収できるステアリングサポートメンバーの支持構造を提供する。
【解決手段】ステアリングサポートメンバー1が連結部材2を介して車体側の部品3に支持されて、連結部材2の一端部14の連結面14Mがステアリングサポートメンバー1の連結部10の被連結面10Mに連結するとともに、連結部材2の他端部18の連結面18Mが車体側の部品3の連結部17の被連結面17Mに連結し、連結部材2の一端部14の連結面14Mと他端部18の連結面18Mがほぼ直角に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
ステアリングサポートメンバーが連結部材を介して車体側の部品に支持されているステアリングサポートメンバーの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
前記ステアリングサポートメンバーはステアリングコラムを支持している。このステアリングコラムのステアリングサポートメンバーによる支持剛性や振動特性を向上させる手段として、ステアリングサポートメンバーの肉厚や径を大きくしたり補強部材を追加したりする手段がある。
しかしながら、この手段によれば車両の重量化を招き、部品点数が増加する。そこで、冒頭に記載したように、ステアリングサポートメンバーを連結部材を介して車体側の部品に支持させている。
従来、上記のステアリングサポートメンバーの支持構造では、前記連結部材の一端部の連結面と他端部の連結面はほぼ平行に位置する縦面状に形成されていた(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−321546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、車体側の部品の取り付け孔の位置のバラつきは大きく、取り付け孔が設計通りの位置に落ち着くとは限らない。また、寸法が安定する量産直前にならないと目指す寸法が明確にならない。
上記従来の技術によれば、連結部材の一端部の連結面と他端部の連結面はほぼ平行に位置する縦面状に形成されていたために、例えば、車体側の部品が車両前後方向で位置ずれしていた場合、誤差を吸収することが困難で車体側での大掛かりな修正を行なう必要があり、修正に手間と費用がかかっていた。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、車体側の部品の取り付け孔の位置のバラツキを容易に吸収できるステアリングサポートメンバーの支持構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
ステアリングサポートメンバーが連結部材を介して車体側の部品に支持されているステアリングサポートメンバーの支持構造であって、
前記連結部材の一端部の連結面が前記ステアリングサポートメンバーの連結部の被連結面に連結するとともに、前記連結部材の他端部の連結面が前記車体側の部品の連結部の被連結面に連結し、
前記連結部材の一端部の連結面と前記他端部の連結面がほぼ直角に位置している点にある。(請求項1)
【0006】
この構成によれば、ステアリングサポートメンバーの連結部に連結する連結部材の一端部の連結面と、前記車体側の部品の連結部に連結する連結部材の他端部の連結面とがほぼ直角に位置しているから、車体側の部品の連結部の被連結面が、目標とする位置に対して前記被連結面と直交する方向に位置ずれしていた場合、連結部材をステアリングサポートメンバーの連結部の被連結面に沿って移動させることで、連結部材の他端部の連結面を車体側の部品の連結部の被連結面に正確に重ね合わせることができる。
これにより、車体側の部品の取り付け孔の位置のバラツキを容易に吸収でき、連結部材の他端部の連結面と車体側の部品の連結部の被連結面とを正確に重ね合わせるための車体側の部品の大掛かりな修正を不要にすることができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記連結部材の一端部の連結面に開口するボルト挿通孔が前記連結部材の一端部に形成され、
前記ボルト挿通孔に挿通されたボルトで前記連結部材の一端部の連結面が前記ステアリングサポートメンバーの連結部に連結され、
前記ボルト挿通孔は、前記連結部材の他端部の連結面と直交する方向に長く形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
前記連結部材の一端部の連結面に開口するボルト挿通孔に挿通されたボルトで連結部材の一端部の連結面がステアリングサポートメンバーの連結部に連結される。
また、車体側の部品の連結部の被連結面が目標とする位置に対して前記被連結面と直交する方向に位置ずれしている構造において、位置ずれ吸収のために連結部材をステアリングサポートメンバーの連結部の被連結面に沿って移動させた場合に、移動後であってもボルトをボルト挿通孔に挿通させることができ、例えばボルト挿通孔が円形孔であったときのようなボルト挿通孔の修正を不要にすることができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記車体側の部品はダッシュパネル、又は前記ダッシュパネルから立ち上がるカウルパネルであり、
前記連結部材の他端部が前記カウルパネルの上壁に沿うように延出されて、前記連結部材の延出端部が前記カウルパネルの上壁と前記インストルメントパネルの車両前方側の端部との間に入り込み、
前記連結部材の延出端部が前記インストルメントパネルの車両前方側の端部に連結されていると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
スペースが狭く変形が生じやすいインストルメントパネルの前端部側まで連結部材を延ばしてインストルメントパネルの前端部を支持することができる。また、カウル部への上面に設けられるダッシュサイレンサーに載置した状態とでき、カウル部の傷付きを防止しつつ、インストルメントパネルの前端部をしっかりと支持することができる。(請求項3)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、
車体側の部品の取り付け孔の位置のバラツキを容易に吸収できるステアリングサポートメンバーの支持構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ステアリングサポートメンバーを介してインストルメントパネルを車体に取り付ける様子を示す斜視図(インストルメントパネル本体の側壁は一部分を切り欠いてある)
【図2】インストルメントパネル、スティフナー、ダッシュパネル等の縦断側面図
【図3】スティフナー等を下方から見た斜視図
【図4】図1のY矢視図
【図5】(a)はスティフナーの斜視図(b)は図1のX矢視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1に自動車のインストルメントパネル4と、ステアリングを支持するステアリングサポートメンバー1と、ダッシュサイドパネル37,38を示してある。インストルメントパネル1は車室内の車体前部及び側部に取り付けられる合成樹脂製の一体成形品であり、運転席及び助手席(図示せず)の車両前方側Frに配置されている。
【0014】
インストルメントパネル4は車室内のほぼ全幅にわたる長さに設定され、上壁33と、運転席及び助手席に対向する車室内側の前壁34と、左右一対の側壁35とを備えている。そして、前壁34の車幅方向の中央部にカーステレオ(オーディオ類)・エアコン(空調機器)などの操作系パネル36が集約して設けられている。
【0015】
また、インストルメントパネル4の内側(下方)に、ステアリングを支持する円筒状の金属製のステアリングサポートメンバー1が車幅方向に沿って配置されている。そして、ステアリングサポートメンバー1の左端部に左側のサイドブラケット31が溶接固着され、ステアリングサポートメンバー1の右端部に右側のサイドブラケット32が溶接固着されている。左側のサイドブラケット31は車体側の左ダッシュサイドパネル37にボルトBで固定され、右側のサイドブラケット32は車体側の右ダッシュサイドパネル38にボルトBで固定されている。
【0016】
図2〜図5(a),図5(b)に示すように、ステアリングサポートメンバー1は帯板状のスティフナー2(連結部材に相当)を介してカウルパネル3(車体側の部品に相当)に支持されている。ステアリングサポートメンバー1の長手方向中間部の周部には前下方に突出する連結片10(ステアリングサポートメンバーの連結部に相当)が溶接固着されている。
【0017】
連結片10にはボルト挿通孔10Sが形成され、連結片10の前端部10Nが下方に折曲している。また、インストルメントパネル4の上壁33とスティフナー2の間に、インストルメントパネル4の全幅にわたるダクト7が前後に並ぶ状態に配置され、ステアリングサポートメンバー1の下方にハーネス6が配置されている。
【0018】
カウルパネル3は断面ハット状に形成され、後端部(車両後方側Rrの端部)が、エンジンルームと車室内とを仕切るダッシュパネル8の上端部8Jに接合されている。そして、カウルパネル3がインストルメントパネル4の前端部19(車両前方側Frの端部)に上方から覆われて、インストルメントパネル4の前端部19とカウルパネル3の上壁3Jとの間に、車両後方側Rrほど上下方向の高さ寸法が長い縦断面三角形状の隙間11が形成されている。
【0019】
カウルパネル3の上壁3Jにはエンジン音等の雑音が車室内側に侵入するのを防止するダッシュサイレンサー9が重ね合わされて固定されている。
【0020】
[スティフナー2の構造]
図2,図5(a),図5(b)に示すように、スティフナー2は前上がりに傾斜し、前端部18(車両前方側Frの端部、連結部材の他端部に相当)が三角波形の凹凸状に折曲されるとともに、後端部14(車両後方側Rrの端部、連結部材の一端部に相当)が下側に凸の「く」の字状に折曲され、スティフナー2の後端部14にボルト挿通孔14Sと角孔状の係合孔14Hとが形成されている。スティフナー2の幅方向の両端部は全長にわたって上方に折曲されて第1フランジ2Fに構成されている。
【0021】
また、スティフナー2の長手方向中間部に前記長手方向に間隔を空けて並ぶ複数の軽量化用の長孔13が形成され、この長孔13の周縁部が立ち上げられて第2フランジ13Fに構成されている。これにより、スティフナー2の剛性・強度を向上させることができる。
【0022】
そして、スティフナー2の前下がりに傾斜した後端部14の連結面14M(後端部14の上面である)が、ステアリングサポートメンバー1の連結片10の被連結面10M(連結片10の下面である)に下方から重なり、連結片10の下方に折曲した前端部10Nが、スティフナー2の後端部14に形成された係合孔14Hに上方から挿入係合され、スティフナー2の後端部14のボルト挿通孔14Sと連結片10のボルト挿通孔10SとにボルトBが挿通され、ボルトBにナットNが螺合されて、スティフナー2の後端部14とステアリングサポートメンバー1の連結片10とが連結している。
【0023】
また、スティフナー2の前上がりに傾斜した前端部18の連結面18Mがカウルパネル3の前上がりに傾斜した連結部17の被連結面17M(車体側の部品の連結部の被連結面に相当)に、アジャスターナット20及びボルトB(図4参照)を介して連結している。
【0024】
図2に示すように、前記スティフナー2の後端部14の連結面14Mと前記スティフナー2の前端部18の連結面18Mとはほぼ直角に位置している。
前記スティフナー2の後端部14のボルト挿通孔14Sは、前記スティフナー2の前端部18の連結面18Mと直交する方向に長く形成され、前記直交する方向の係合孔14Hの長さは、係合孔14H内の連結片10の前端部10Nが前記直交する方向に位置変更できる長さに設定されている。
アジャスターナット20は、固定筒部に対して軸芯方向に位置変更自在に内嵌した可動箇所で構成されている。図4に示すように、このアジャスターナット20にはボルトBが挿通される。
【0025】
また、図2,図5(a)に示すように、スティフナー2の前上がりに傾斜した前端部18にボルト挿通孔18Sが形成されるとともに、このボルト挿通孔18Sの両側(スティフナー2の幅方向両側)に一対の角形の係合孔18Hが形成されている。そして、前記一対の係合孔18Hにアジャスターナット20(図6,図7参照)の一対の係合爪が各別に挿入係合し、カウルパネル3に形成されたボルト挿通孔3Sとアジャスターナット20に挿通したボルトB(図4参照)がアジャスターナット20に螺合して、スティフナー2の前端部18の連結面18Mがカウルパネル3に連結されている。
【0026】
前記ハーネス6やダクト7はスティフナー2との干渉を回避可能に上方に断面ハット状に折曲されている。
【0027】
上記の構成によれば、ステアリングサポートメンバー1の連結片10の被連結面10Mに連結するスティフナー2の後端部14の連結面14Mと、前記カウルパネル3の被連結面17Mに連結するスティフナー2の前端部18の連結面18Mとがほぼ直角に位置しているから、カウルパネル3の被連結面17Mが、目標とする位置に対して前記被連結面17Mと直交する方向に位置ずれしていた場合、連結片10の下方に折曲した前端部10Nを係合孔14Hに挿入させた状態で、スティフナー2をステアリングサポートメンバー1の連結片10の被連結面10Mに沿って移動させることで、スティフナー2の前端部18の連結面18Mをカウルパネル3の被連結面17Mに正確に重ね合わせることができる。
これにより、スティフナー2の前端部18の連結面18Mとカウルパネル3の被連結面17Mとを正確に重ね合わせるためのカウルパネル3の大掛かりな修正を不要にすることができる。
【0028】
図2に示すように、スティフナー2の前端部18がカウルパネル3の上壁3Jに沿うように前上がりの傾斜姿勢に延出されて、スティフナー2の延出端部27がカウルパネル3の上壁3Jとインストルメントパネル4の車両前方側Frの前端部19との間に入り込んでいる。図2,図5(a)に示すように、延出端部27には一対のボルト挿通孔27Sが形成され、スティフナー2の延出端部27が前記インストルメントパネル4の前端部19に下側からボルトBで連結されている。
【0029】
インストルメントパネル4の前端部19には下方(裏側)に突出する円筒状のボス39が形成され、このボス39の内周部に雌ねじ部が形成されて、前記ボルトBが螺合している。ボルトBの頭部はダッシュサイレンサー9に当接している。
【0030】
前記延出端部27の上面27Jはボス39の端面に当接し、スティフナー2の前端部18の連結面18Mに対して角度θを成している。
【0031】
これにより、スペースが狭く変形が生じやすいインストルメントパネル4の前端部19側の下方空間までスティフナー2を延ばしてインストルメントパネル4の前端部19を支持することができる。また、カウルパネル3の上面に設けられるダッシュサイレンサー9に前記延出端部27を載置した状態とすることでき、カウルパネル3の傷付きを防止しつつ、インストルメントパネル4の前端部19をしっかりと支持することができる。
図2の符号Gはウインドガラスである。
【0032】
本発明の上記構成によれば、ダッシュパネル8とスティフナー2をステアリングサポートメンバー1と別体にしてあるから、輸送・保管時の荷姿を簡易化することができ、組み付け作業時に他部品との接触などによるスティフナー2の変形を回避することができる効果も得ることができる。
【0033】
また、インストルメントパネル4の組み付け時には、ステアリングサポートメンバー1を回転させながらインストルメントパネル4の表裏からさまざまな部品を組み付ける。その際にダッシュパネル8とスティフナー2がステアリングサポートメンバー1と一体になっていると、それらの部品の組み付け作業性を阻害してしまう。
特に、ダクト7やハーネス6などインストルメントパネル4の全幅に渡って取り付く部品に関しては、組み付かないだけでなく、レイアウトが成立しないなどの問題をも発生する。
これに対して本発明の上記の構成によれば、ダッシュパネル8とスティフナー2をステアリングサポートメンバー1と別体にしてあるから、それらの部品を互いに組み付けた後にインストルメントパネル4に組み付けることによって、上記の問題を解消することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ステアリングサポートメンバー
2 連結部材(スティフナー)
3 車体側の部品(カウルパネル)
3J カウルパネルの上壁
8 車体側の部品(ダッシュパネル)
10 ステアリングサポートメンバーの連結部(連結片)
10M ステアリングサポートメンバーの連結部の被連結面
14 連結部材の一端部(スティフナーの後端部)
14M 連結部材の一端部の連結面(スティフナーの後端部の連結面)
14S ボルト挿通孔
17 車体側の部品の連結部
17M 車体側の部品の連結部の被連結面
18 連結部材の他端部(スティフナーの前端部)
18M 連結部材の他端部の連結面(スティフナーの前端部の連結面)
19 インストルメントパネルの車両前方側の端部(インストルメントパネルの前端部)
27 連結部材の延出端部
B ボルト
Fr 車両前方側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングサポートメンバーが連結部材を介して車体側の部品に支持されているステアリングサポートメンバーの支持構造であって、
前記連結部材の一端部の連結面が前記ステアリングサポートメンバーの連結部の被連結面に連結するとともに、前記連結部材の他端部の連結面が前記車体側の部品の連結部の被連結面に連結し、
前記連結部材の一端部の連結面と前記他端部の連結面がほぼ直角に位置しているステアリングサポートメンバーの支持構造。
【請求項2】
前記連結部材の一端部の連結面に開口するボルト挿通孔が前記連結部材の一端部に形成され、
前記ボルト挿通孔に挿通されたボルトで前記連結部材の一端部の連結面が前記ステアリングサポートメンバーの連結部に連結され、
前記ボルト挿通孔は、前記連結部材の他端部の連結面と直交する方向に長く形成されている請求項1記載のステアリングサポートメンバーの支持構造。
【請求項3】
前記車体側の部品はダッシュパネル、又は前記ダッシュパネルから立ち上がるカウルパネルであり、
前記連結部材の他端部が前記カウルパネルの上壁に沿うように延出されて、前記連結部材の延出端部が前記カウルパネルの上壁と前記インストルメントパネルの車両前方側の端部との間に入り込み、
前記連結部材の延出端部が前記インストルメントパネルの車両前方側の端部に連結されている請求項1又は2記載のステアリングサポートメンバーの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−136203(P2012−136203A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291634(P2010−291634)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】