説明

ステアリングハンドルの支持装置

【課題】回転センサ付き軸受に直接的に大きい負荷がかかることなく、ステアリングハンドルを重み付けする。
【解決手段】ステアリングハンドル付きのハンドル軸16を回転自在に支持する上下二段に配置された回転センサ付き軸受15U,51Dの外輪23を、軸受固定機構14によりチルトフレームに取り付け、ハンドル軸16に形成された鍔部31と、ハンドル軸16の基端面に突設された軸固定ねじ軸32にロックナット34を介して下段軸受15Dの内輪21の下面に係止される下面内係止リング33とを有す軸固定機構18を設け、コイルばね37により摺動板36を軸固定ねじ軸32の端面32Eに圧接させてハンドル軸に回転抵抗を付与するステアリングハンドルの重み付け機構19を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトなど作業用車両のステアリングハンドルに、操作時に重み付けを行う重み付け機構を有するステアリングハンドルの支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばリーチ式フォークリフトなど、頻繁なハンドル操作により走行や工場などで小回りの効く走行を可能にするために、パワーステアリング方式が多く採用されている。このパワーステアリング方式は、ステアリングハンドルの回転を検出して、電動モータにより操向車輪の旋回を行うものである。
【0003】
ステアリングハンドルの回転角を検出するために、ハンドル軸の基軸部に特許文献1に示す回転センサ付軸受を装着して、ハンドル軸を回転自在に支持するとともに、ステアリングハンドルの回転角を検出するステアリングハンドルの支持装置がある。
【0004】
このステアリングハンドルの支持装置は、断線などによる検出不良を防止するために、回転センサ付軸受を上下二段に配置して、それぞれ回転角を検出するとともに、ハンドルの重み付けをする機構が設けられている。
【0005】
すなわち、図8に示すように、軸受ハウジング60内にそれぞれのセンサ部62,62が上面および下面となるように上下段軸受61U,61Dが配置されており、上段軸受61Uおよび下段軸受61Dの外輪63,63間にスペーサリング66が介在されるとともに、外輪63,63の上面と下面が、軸受ハウジング60に取り付けられた底板67と押さえ板68により保持されている。
【0006】
また、上段軸受61Uおよび下段軸受61Dの内輪64,64に、69の基端軸部が嵌合されている。そして、ハンドルに重み付けする機構は、ハンドル軸69の基軸部の上端に形成された鍔部70に上段軸受61Uの内輪64の上面が係止されて上方への移動が規制され、基端軸部の端面で軸心位置にロック用ボルト71が突設され、このロック用ボルト71に装着されたロックナット72により、固定プレート73が下段軸受61Dの内輪64に圧接され、上下段軸受61U,61Dにハンドル軸69が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−190624
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来構成では、ステアリングハンドル73の重み付けは、ロックナッ72を締め付けて上下段軸受61U,61Dの内輪64,64にプリロード(スラスト力)をかけることで、ベアリングボール(またはコロ)65の転がり抵抗を大きくして、ハンドル軸69に回転抵抗を付与していた。
【0009】
しかしながら、ステアリングハンドルの重み付けは、プリロードを管理する必要があり、調整時にロック用ナット72を強く締め過ぎて過大なプリロードが負荷されると、軸受61U,61Dを破損させるおそれがあった。
【0010】
本発明は上記問題点を解決して、プリロードの管理も不要で、回転センサ付き軸受に大きい負荷がかかることなく、破損を防止できて、ステアリングハンドルの重み付けが可能なステアリングハンドルの支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、
ステアリングハンドルが取り付けられたハンドル軸の基軸部が、上下二段に配置された回転センサ付き軸受により車体フレームに回転自在に支持されたステアリングハンドルの支持装置であって、
車体フレームに上下段軸受の外輪を固定する軸受固定機構と、ハンドル軸を上下段軸受の内輪に固定する軸固定機構と、ハンドル軸に回転抵抗を付与するステアリングハンドルの重み付け機構とを設け、
前記軸固定機構は、上下段軸受の内輪に嵌合されるハンドル軸に形成されて前記内輪の上方への移動を規制する上面内係止部と、ハンドル軸の基軸部に設けられた軸固定ねじ軸にナット部材を介して下段軸受の内輪の下面に係止される下面内掛止部とを具備して、当該下面内掛止部と前記上面内係止部との間で上下段軸受の内輪をハンドル軸に固定し、
前記軸受固定機構または車体フレームに、ハンドル軸の下方にガイド通路を形成するケーシングを設け、
前記重み付け機構は、前記ケーシングのガイド通路内に、案内部により軸心方向に移動自在でかつ軸心周りの回転が規制された摺動部材と、当該摺動部材を付勢して前記軸固定ねじ軸の端面に圧接させるばね部材とを具備したものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、
ステアリングハンドルが取り付けられたハンドル軸の基軸部が、上下二段に配置された回転センサ付き軸受により車体フレームに回転自在に支持されたステアリングハンドルの支持装置であって、
車体フレームに上下段軸受の外輪を固定する軸受固定機構と、ハンドル軸を上下段軸受の内輪に固定する軸固定機構と、ハンドル軸に回転抵抗を付与するステアリングハンドルの重み付け機構とを設け、
前記軸固定機構は、上下段軸受の外輪間に介在されたスペーサリングと、上下段軸受の内輪に嵌合されるハンドル軸の基軸部の上部に形成されて当該内輪の上方への移動を規制する上面内係止部と、ハンドル軸の基軸部に軸心上に設けられた軸固定軸と、当該軸固定軸に外嵌されて下段軸受の内輪の下面に当接可能な加圧リングと、前記軸固定軸に設けられた規制部材と前記加圧リングとの間に介装されて前記加圧リングを下段軸受の内輪に下方から圧接させるばね部材とを具備し、ハンドル軸を上下段軸受の内輪内に抜け止めし、
前記ばね部材により下段軸受の内輪を上方に加圧することにより、上下段軸受の転がり抵抗を増大させてハンドルの回転抵抗を付与するステアリングハンドルの重み付け機構を、前記軸固定機構に兼用させたものである。
【0013】
請求項3記載の発明は、
ステアリングハンドルのハンドル軸の基軸部が、上下二段に配置された回転センサ付き軸受により車体フレームに回転自在に支持されたステアリングハンドルの支持装置であって、
車体フレームに上下段軸受の外輪を固定する軸受固定機構と、ハンドル軸を上下段軸受の内輪に固定する軸固定機構と、ハンドル軸に回転抵抗を付与するステアリングハンドルの重み付け機構とを設け、
前記軸固定機構は、軸受の内輪に嵌合されるハンドル軸の基軸部に設けられて上段軸受の内輪の上方への移動を規制する上面内係止部と、下段軸受の内輪の下面に係止可能な下面内係止部を有する保護カバーとを具備し、
前記軸受固定機構は、上下段軸受に外嵌される軸受ハウジングの上面に取り付けられて上段軸受の外輪を係止する上面外係止部と、軸受ハウジングの下面に取り付けられて下段軸受の外輪を係止する下面外係止部とを具備し、
前記ステアリングハンドルの重み付け機構は、前記保護カバーに設けられてハンドル軸の基軸部の上部外周に摺接し、ハンドル軸と上段軸受との隙間をシールするとともに、ハンドル軸に回転抵抗を付与する単数または複数のリングシール材を具備したものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、軸受固定機構により車体フレームに回転センサ付き上下段軸受を取り付けるとともに、軸固定機構によりハンドル軸を上下段軸受に取り付け、ケーシング内に設けた重み付け機構により、ばね部材を介して摺動板を軸固定ねじ軸の端面に押し付けた摩擦抵抗によりハンドル軸に回転抵抗を付与し、ステアリングハンドルを重み付けできるので、プリロードの管理も不要で、回転センサ付き軸受に負荷をかけることなく破損を防止してステアリングハンドルの重み付けを行うことができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、軸受固定機構により車体フレームに回転センサ付き上下段軸受を取り付けるとともに、軸固定機構によりハンドル軸を上下段軸受に取り付け、軸固定機構で、ばね部材により加圧リングを下段軸受の内輪に摺接させて、軸受内の摩擦抵抗によりハンドル軸の回転抵抗を付与するので、プリロードの管理も不要で、回転センサ付き軸受に直接大きい負荷がかかることがなく、回転センサ付き軸受の破損を防止できて、ステアリングハンドルの重み付けを行うことができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、軸受固定機構により車体フレームに上下段軸受を取り付けるとともに、軸固定機構によりハンドル軸を上下段軸受に取り付け、ハンドル軸の外周部に摺接して回転抵抗を付与するリングシール材により、その摩擦力を利用してハンドル軸に回転抵抗を付与し、ステアリングハンドルに重み付けを行うことができるので、ハンドル軸と上段軸受との隙間への塵埃の侵入を防止できるとともに、プリロードの管理も不要となり、軸受に負荷がかかることがなくて破損を防止でき、ステアリングハンドルの重み付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るステアリングハンドルの支持装置の実施例1を示し、ハンドル軸の基軸部を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すA−A断面図である。
【図3】ハンドル軸の支持装置を示す縦断面図である。
【図4】実施例1の変形例を示すA−A断面図である。
【図5】本発明に係るステアリングハンドルの支持装置の実施例2を示し、ハンドル軸の基軸部を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係るステアリングハンドルの支持装置の実施例3を示し、ハンドル軸の基軸部を示す縦断面図である。
【図7】図6に示すC部拡大図である。
【図8】従来のステアリングハンドルの支持装置を示し、ハンドル軸の基軸部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施例1]
以下、本発明に係るステアリングハンドルの支持装置の実施例1を図1〜図3に基づいて説明する。
【0019】
図3に示すように、このステアリングハンドルの支持装置は、たとえばリーチ式フォークリフトに設置されるもので、車台(図示せず)に設けられた本体フレーム11にチルト機構12を介してステアリングハンドルの支持装置が取付けられ、ステアリングハンドル17が上下方向に位置調整可能に支持されている。このステアリングハンドルの支持装置は、上下二段に配置した回転センサ付き軸受15U,15Dと、チルト機構12により上下方向に揺動固定可能に支持されたチルトフレーム(本体フレーム)13に上下段軸受15U,15Dを取り付ける軸受固定機構14と、先端部(上端部)にステアリングハンドル17が取り付けられたハンドル軸16の基軸部を軸受15U,15Dに取り付ける軸固定機構18と、ハンドル軸16に回転方向の抵抗を付与するステアリングハンドル17の重み付け機構19とが具備されている。
【0020】
前記上下段軸受15U,15Dは、内輪21の外周部に複数のボール(またはコロ)22を介して外輪23が回転自在に嵌合され、内輪21の回転角と回転方向が検出可能な回転センサ部24が設けられている。これら回転センサ部24は、上段軸受15Uの上面および下段軸受15Dの下面にそれぞれ設けられており、内輪21に支持部材を介して取り付けられて位相差のある2個の歯形リング24aに対向して磁気センサ24bがそれぞれ配置され、これら磁気センサ24bにより歯形から位相の異なるパルス波を検出し、これらパルス波から内輪21に固定されたハンドル軸16の回転方向と回転角を検出することができる。
【0021】
軸受固定機構14は、チルトフレーム13に取り付けられて上下段軸受15U,15Dの外輪23に外嵌される軸受ハウジング25と、軸受ハウジング25の上面に軸受固定ボルト・ナット27を介して取り付けられて上段軸受15Uの外輪23を上方から係止する上面外係止リング(上面外係止部)26と、この軸受ハウジング25の下面に前記軸受固定ボルト・ナット27を介して取り付けられて下段軸受15Dの外輪23を下方から係止する下面外係止部28を有するケーシング29とを具備している。したがって、軸受ハウジング25に嵌合された上下段軸受15U,15Dを、軸受固定ボルト・ナット27により上面外係止リング26およびケーシング29の下面外係止部28との間で上下段軸受15U,15Dの外輪23を挟持して軸受ハウジング25に固定することができる。
【0022】
前記軸固定機構18は、ハンドル軸16の基軸部上部の外周に突設されて上段軸受15Uの外輪23の上方への移動を規制する鍔部(上面内係止部)31と,ハンドル軸16の基軸部端面から軸心Oに沿って突設された軸固定ねじ軸(軸固定ねじ部)32に外嵌された下面内係止リング(下面内係止部)33と、軸固定ねじ軸32に嵌合されて下面内係止リング33を下段軸受15Dの内輪21の下面に係止させるロックナット(ナット部材)34とを具備し、鍔部31に係止された下段軸受15Dの下端面がハンドル軸16の基軸部端面より僅かに突出されている。したがって、軸固定ねじ軸32に嵌合されたロックナット34を締め付けることにより、鍔部31と下面内係止リング33とで上下段軸受15U,15Dの内輪21を挟み付けてハンドル軸16を固定することができる。
【0023】
ステアリングハンドル17の重み付け機構19は、ケーシング29内に軸固定ねじ軸32の下方に沿ってガイド通路35が形成され、ガイド通路35内に軸固定ねじ軸32の端面32Eに対面する摺動板(摺動部材)36が配置されている。そしてケーシング29内の底部と摺動板36の間に、摺動板36を付勢して軸固定ねじ軸32の端面32Eに圧接させるコイルばね(ばね部材)37が介装されている。さらにケーシング29内面に所定角度(図では90°)ごとに軸心O方向に沿って突設された複数の凸条部38aと、摺動板36の外周部に形成されて凸条部38aにそれぞれ所定隙間をあけて嵌合される凹部38bからなり、摺動板36を軸心O方向に移動自在でかつ軸心O周りの回転を規制する案内部38が設けられている。したがって、コイルばね37により摺動板36を付勢して軸固定ねじ軸32の端面32Eに圧接させ、その摩擦抵抗によりハンドル軸16に回転抵抗を付与してステアリングハンドル17を重み付けすることができる。
【0024】
なお、ケーシング29はチルトフレーム13に取り付けられていてもよい。
上記実施例1によれば、上面外係止リング26とケーシング29の下面外係止部28を有する軸受固定機構14により、上下段軸受15U,15Dを軸受ハウジング25に取り付け、鍔部31と下面内係止リング33を有する軸固定機構18により、ハンドル軸16を上下段軸受15U,15Dに取り付け、ケーシング29に設けられた重み付け機構19により、コイルばね37を介して摺動板36を軸固定ねじ軸32の端面32Eに押し付けて摩擦抵抗を発生させ、これによりハンドル軸16の回転抵抗を発生させることができる。したがって、上下段軸受15U,15Dのプリロードの管理も不要で、上下段軸受15U,15Dに直接負荷がかかることがなくステアリングハンドル17の重み付けを行うことができ、重み付け調整による負荷により上下段軸受15U,15Dを破損させることもない。
【0025】
なお、重み付け機構19の案内部38を、複数の凸条部38aと、これらに嵌合する凹部38bとでスプライン形断面に構成したが、図4に示すように、ケーシング29のガイド通路35を、三角形乃至八角形(図では六角形)断面のガイド穴39aで構成し、摺動板36の外周部を、ガイド穴39aに所定隙間をあけて嵌合される相似形の被ガイド部39bとする案内部39を設けてもよい。この案内部39により、摺動板36を軸心O方向に移動自在でかつ軸心O周りの回転を規制することができて、先の実施例1の案内部38と同様の作用効果を奏することができる。
【0026】
[実施例2]
次に本発明ステアリングハンドルの支持装置の実施例2に係る図5に基づいて説明する。なお、実施例1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
この実施例2のステアリングハンドルの支持装置は、上下段軸受15U,15Dをチルトフレーム13に固定する軸受固定機構14と、ハンドル軸16の基部を上下段軸受15U,15Dに固定するとともに、ステアリングハンドル17に重み付けする重み付け機構が兼用された軸固定機構41とが設けられている。
【0028】
前記軸受固定機構14は、軸受ハウジング25に軸受け固定ボルト・ナット27により取り付けられた上面外係止リング26および下面外係止リング(下面外係止部)48とで構成されている。そして、上段軸受15Uと下段軸受15Dの外輪23間に、軸受ハウジング25に固定された所定厚みのスペーサリング40を配置され、軸固定機構41のコイルばね(ばね部材)45により、上下段軸受15U,15Dに一定のプリロードを付与して、ハンドル軸16に回転抵抗を付与するステアリングハンドル17の重み付け機構兼用の軸固定機構41が設けられている。
【0029】
すなわち、軸固定機構41は、ハンドル軸16の基軸部の上部外周に、上段軸受15Uの外輪23の上方への移動を規制する鍔部31突設されている。また、ハンドル軸16の基軸部端面の軸心位置に軸固定軸42が軸心O上に突出され、この軸固定軸42にスリーブ43が外嵌されるとともに、下段軸受15Dに対面する加圧リング44がスリーブ43に軸心O方向に移動自在に外嵌されている。そして、軸固定軸42の下端部にロックナット(ナット部材)47により固定された規制板(規制部材)46と加圧リング44との間に、加圧リング44を下段軸受15Dの内輪21に下方から圧接させるコイルばね45が介装され、このコイルばね45と加圧リング44とにより、ハンドル軸16を抜け止めする機構と、上下段軸受15U,15Dの内輪21と外輪23との間でボール22の摺動抵抗を付与してステアリングハンドル17を重み付けする機構とを具備している。
【0030】
実施例2によれば、従来では、ねじ機構により直接内輪を加圧して上下段軸受15U,15Dに回転抵抗を付与していたのに比較して、軸固定機構41において、コイルばね45により加圧リング44を下段軸受15Dの内輪21に圧接させ、上下段軸受15U,15Dに一定のプリロードを付与してハンドル軸16に回転抵抗を付与するので、上下段の回転センサ付き軸受15U,15Dに直接大きい負荷がかかることがなく、一旦設定したプリロードは管理が不要となり、上下段軸受15U,15Dの破損を防止できてステアリングハンドル17の重み付けを行うことができる。
【0031】
[実施例3]
本発明に係るステアリングハンドルの支持装置の第3実施例を図6および図7を参照して説明する。なお、実施例1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
このステアリングハンドルの支持装置は、上下段軸受15U,15Dをチルトフレーム13に固定する軸受固定機構14と、ハンドル軸16の基部を上下段軸受15U,15Dに固定する軸固定機構18と、ハンドル軸16に回転抵抗を付与してステアリングハンドル17に重み付けする重み付け機構51が設けられている。
【0033】
軸受固定機構14は、チルトフレーム13に取り付けられて上下段軸受15U,15Dの外輪23に外嵌される軸受ハウジング25と、軸受ハウジング25の上面に軸受固定ボルト・ナット27を介して取り付けられて上段軸受15Uの外輪23を上方から係止する上面係止部52を有する保護カバー体53と、軸受ハウジング25の下面に前記軸受固定ボルト・ナット27を介して取り付けられて下段軸受15Dの外輪23を下方から係止する下面外係止リング(上面外係止部)48とを具備している。
【0034】
重み付け機構51は、保護カバー体53の上部内周面に設けられて、ハンドル軸16の外周部に摺接して隙間をシールし、かつハンドル軸16に回転抵抗を付与する単数(または複数)のリングシール材55により構成されている。
【0035】
このリングシール材55は、たとえば図7に示すように、金属製の形状保持リング55aが内装されたシール本体55bに、内周側に加圧可能なリングばね55cが内装された加圧リップ部55dと、塵埃の侵入を防止する外側リップ部55eとを具備し、加圧リップ部55dにより、その摩擦力を利用してハンドル軸16に回転抵抗を付与し、ステアリングハンドル17を重み付け可能で、かつハンドル軸16と上段軸受15Uの隙間に密閉性を付与するように構成されており、たとえば潤滑油を封入しないオイルシール材が使用されているが、オイルシール材に限るものではなく、ハンドル軸16と上段軸受15Uの間に密閉性を付与するとともに十分な摩擦力が得られるシール材であればよい。
【0036】
なお、図では、保護カバー体53の内周面に1段のリングシール材55が設置されているが、上下複数段に設置することもできる。
上記実施例3によれば、軸受固定機構14により軸受ハウジング25に回転センサ付き上下段軸受15U,15Dを取り付けるとともに、軸固定機構18によりハンドル軸16を上下段軸受15U,15Dに取り付け、上下段軸受15U,15Dの上部に取り付けられた保護カバー53にハンドル軸16の外周部に摺接する回転抵抗用のリングシール材55を設けたので、ハンドル軸16と上段軸受15Uの隙間にごみや塵埃の侵入を防止してシールできるとともに、その摩擦力を利用してハンドル軸16に回転抵抗を付与することができ、上下段軸受15U,15Dにプリロードをかけることなく、ステアリングハンドル17に重み付けを行うことができ、プリロードの管理も不要で上下段軸受15U,15Dの破損を防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
O ハンドル軸の軸心
11 本体フレーム
12 チルト機構
13 チルトフレーム
14 軸受固定機構
15U 上段軸受
15D 下段軸受
16 ハンドル軸
17 ステアリングハンドル
18 軸固定機構
19 重み付け機構
21 内輪
23 外輪
24 回転センサ部
25 軸受ハウジング
26 上面外係止リング(上面外係止部)
27 軸受固定ボルト・ナット
28 下面外係止部
29 ケーシング
31 鍔部(上面内係止部)
32 軸固定ねじ軸
32E 端面
33 下面内係止リング(下面内係止部)
34 ロックナット(ナット部材)
35 ガイド通路
36 摺動板
37 コイルばね
38 案内部
38a 凸条部
38b 凹部
40 スペーサリング
41 軸固定機構
42 軸固定軸
43 スリーブ
44 加圧リング
45 コイルばね(ばね部材)
46 規制板(規制部材)
47 ロックナット(ナット部材)
48 下面外係止リング(下面外係止部)
51 重み付け機構
52 上面係止部
53 保護カバー体
55 リングシール材
55a 形状保持リング
55b シール本体
55c リングばね
55d 加圧リップ
55e 外側リップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドルが取り付けられたハンドル軸の基軸部が、上下二段に配置された回転センサ付き軸受により車体フレームに回転自在に支持されたステアリングハンドルの支持装置であって、
車体フレームに上下段軸受の外輪を固定する軸受固定機構と、ハンドル軸を上下段軸受の内輪に固定する軸固定機構と、ハンドル軸に回転抵抗を付与するステアリングハンドルの重み付け機構とを設け、
前記軸固定機構は、上下段軸受の内輪に嵌合されるハンドル軸に形成されて前記内輪の上方への移動を規制する上面内係止部と、ハンドル軸の基軸部に設けられた軸固定ねじ軸にナット部材を介して下段軸受の内輪の下面に係止される下面内掛止部とを具備して、当該下面内掛止部と前記上面内係止部との間で上下段軸受の内輪をハンドル軸に固定し、
前記軸受固定機構または車体フレームに、ハンドル軸の下方にガイド通路を形成するケーシングを設け、
前記重み付け機構は、前記ケーシングのガイド通路内に、案内部により軸心方向に移動自在でかつ軸心周りの回転が規制された摺動部材と、当該摺動部材を付勢して前記軸固定ねじ軸の端面に圧接させるばね部材とを具備した
ことを特徴とするステアリングハンドルの支持装置。
【請求項2】
ステアリングハンドルが取り付けられたハンドル軸の基軸部が、上下二段に配置された回転センサ付き軸受により車体フレームに回転自在に支持されたステアリングハンドルの支持装置であって、
車体フレームに上下段軸受の外輪を固定する軸受固定機構と、ハンドル軸を上下段軸受の内輪に固定する軸固定機構と、ハンドル軸に回転抵抗を付与するステアリングハンドルの重み付け機構とを設け、
前記軸固定機構は、上下段軸受の外輪間に介在されたスペーサリングと、上下段軸受の内輪に嵌合されるハンドル軸の基軸部の上部に形成されて当該内輪の上方への移動を規制する上面内係止部と、ハンドル軸の基軸部に軸心上に設けられた軸固定軸と、当該軸固定軸に外嵌されて下段軸受の内輪の下面に当接可能な加圧リングと、前記軸固定軸に設けられた規制部材と前記加圧リングとの間に介装されて前記加圧リングを下段軸受の内輪に下方から圧接させるばね部材とを具備し、ハンドル軸を上下段軸受の内輪内に抜け止めし、
前記ばね部材により下段軸受の内輪を上方に加圧することにより、上下段軸受の転がり抵抗を増大させてハンドルの回転抵抗を付与するステアリングハンドルの重み付け機構を、前記軸固定機構に兼用させた
ことを特徴とするステアリングハンドルの支持装置。
【請求項3】
ステアリングハンドルのハンドル軸の基軸部が、上下二段に配置された回転センサ付き軸受により車体フレームに回転自在に支持されたステアリングハンドルの支持装置であって、
車体フレームに上下段軸受の外輪を固定する軸受固定機構と、ハンドル軸を上下段軸受の内輪に固定する軸固定機構と、ハンドル軸に回転抵抗を付与するステアリングハンドルの重み付け機構とを設け、
前記軸固定機構は、軸受の内輪に嵌合されるハンドル軸の基軸部に設けられて上段軸受の内輪の上方への移動を規制する上面内係止部と、下段軸受の内輪の下面に係止可能な下面内係止部を有する保護カバーとを具備し、
前記軸受固定機構は、上下段軸受に外嵌される軸受ハウジングの上面に取り付けられて上段軸受の外輪を係止する上面外係止部と、軸受ハウジングの下面に取り付けられて下段軸受の外輪を係止する下面外係止部とを具備し、
前記ステアリングハンドルの重み付け機構は、前記保護カバーに設けられてハンドル軸の基軸部の上部外周に摺接し、ハンドル軸と上段軸受との隙間をシールするとともに、ハンドル軸に回転抵抗を付与する単数または複数のリングシール材を具備した
ことを特徴とするステアリングハンドルの支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−171518(P2012−171518A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36505(P2011−36505)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】