説明

ステアリングモジュール

【課題】複数のコネクタが実装された回路基板をその板厚に拘らず、少ない本数のねじを使用してハウジングに確実に固定できるステアリングモジュールを提供すること。
【解決手段】ハウジングの側壁1hに予め、4個のコネクタを実装した板厚の異なる2種類の回路基板に対応するように、先端部の高さ位置が互いに異なるスナップ爪1m,1nを一体形成しておく。4個のコネクタには舵角センサおよび回転コネクタと一対のストークスイッチがそれぞれ接続される。一対の幅広部を橋絡する幅狭部2aを有する回路基板2をハウジング内へ組み込む場合には、その幅狭部2aを受け部上に搭載してスナップ爪1mで係止すると共に、2本のねじを用いて両幅広部をハウジングにねじ止めする。また、回路基板2よりも板厚の厚い回路基板をハウジング内へ組み込む場合には、その幅狭部をスナップ爪1nで係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンビネーションスイッチの外殻をなすハウジングに一対のストークスイッチと回転コネクタおよび舵角センサを組み込んでユニット化したステアリングモジュールに係り、特に、予め回転コネクタと舵角センサを上下2段に積層・一体化した状態でハウジングに組み込むようにしたステアリングモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
回転コネクタはハンドルに搭載されたエアーバッグ・インフレータやホーン等と車体側の制御部等との電気的接続手段として使用されるものであり、ハンドルに連結されて回転するロータ部材と、このロータ部材を回転可能に支持するステータ部材と、これらロータ部材とステータ部材間に画成される環状空間に巻回された可撓性ケーブルとで概略構成されている。また、舵角センサはハンドルの操舵角を検出する回転情報検出手段として使用されるものであり、外周面にコード板を有するロータ部材と、このロータ部材を回転可能に支持するステータ部材と、コード板に対向配置されたフォトインタラプタ等の検出素子とで概略構成されている。
【0003】
これら回転コネクタと舵角センサはいずれも自動車のステアリング装置に組み込まれて使用されるが、従来より、ステアリング装置に付設されるコンビネーションスイッチのハウジング上面に回転コネクタのステータ部材をねじ等で取り付けることにより、回転コネクタとコンビネーションスイッチとを一体化してステアリングモジュールとしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる既知のステアリングモジュールでは、ウインカー動作やワイパー動作を行わせる一対のストークスイッチがハウジングの両側に装着されると共に、該ハウジングの下面に3つのコネクタを実装した回路基板が配設されており、両ストークスイッチの基端部に設けられたコネクタと回転コネクタのステータ部材に設けられた固定側コネクタが回路基板上の各コネクタに対してそれぞれダイレクトカップリングされるようになっている。
【0004】
一方、後者の舵角センサは回転コネクタと併用されることが多く、従来より、これら回転コネクタと舵角センサとを予め上下2段に積層・一体化してユニット体に組み立てておき、このユニット体の状態でステアリング装置へ組み込むようにした技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。かかる従来技術では、回転コネクタと舵角センサの両ロータ部材のいずれか一方に係合突起が設けられると共に、いずれか他方のロータ部材に係合溝が設けられており、回転コネクタと舵角センサとをユニット化する場合は、互いのロータ部材の端面どうしを接合させて係合突起を係合溝に挿入することにより、両ロータ部材を同軸上で連結した状態で互いのステータ部材どうしをねじ止め等で固定するようにしている。したがって、この特許文献2に開示された技術を上記特許文献1に開示されたステアリングモジュールに適用し、回転コネクタと舵角センサとを一体化したユニット体の状態でコンビネーションスイッチのハウジングに組み込むようにすれば、ユニット体をハウジングに組み込んだ時点で回転コネクタと舵角センサの各固定側コネクタを回路基板上の対応するコネクタに接続することができて、組立性が大幅に向上する。
【0005】
ところで、このように回転コネクタと舵角センサをユニット化した状態でハウジングに組み込むようにしたステアリングモジュールでは、回路基板上に実装されるコネクタの数が左右のストークスイッチと回転コネクタおよび舵角センサに対応して4個に増えるため、回路基板をハウジングの内底部にねじ止めするのに必要な取付スペースが各コネクタの実装スペースや引き回し用の配線パターン等によって大きく制約を受けることになる。そこで本発明者らは先に、4個のコネクタが実装できる回路基板をできるだけ少ない本数のねじでハウジングに固定できるようにするため、コネクタを2個ずつ実装した一対の幅広部を幅狭部が橋絡するという形状の回路基板を用い、この回路基板の各幅広部をハウジングの内底部にねじ止めすると共に、ハウジングの側壁に一体形成した片持ち梁状のスナップ爪で幅狭部を係止するようにしたステアリングモジュールを提案した(例えば、特許文献3参照)。かかる従来提案によれば、回路基板の比較的変形しやすい幅狭部をハウジングのスナップ爪で位置規制できるため、各幅広部を例えば1個所ずつハウジングの内底部にねじ止めするだけで、回路基板をハウジングに確実に固定できて外部振動に起因する上下方向のガタ付きも防止できる。また、この回路基板は、幅狭部と一対の幅広部とによって三方が包囲された切欠き部分にステアリングシャフトを挿通させることができる。なお、回路基板が外部振動によってガタ付きを生じるようになると回路部品の半田接合部に大きなストレスがかかるため、半田の破損や回路部品の脱落等が起こりやすくなって接続の信頼性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−172705号公報
【特許文献2】特開平11−135221号公報
【特許文献3】特開2008−18864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、ハウジングに一体形成したスナップ爪で回路基板の幅狭部が係止可能な従来のステアリングモジュールは、4個のコネクタを実装した回路基板を少ない本数のねじを用いてハウジングに確実に固定することができるが、このものは、ハウジングの内底部とスナップ爪とによって回路基板の幅狭部を板厚方向に挟持する構造になっているため、板厚の異なる回路基板に適用することができないという不具合があった。すなわち、回路部品や配線パターン等が異なる複数種類の回路基板に共通のハウジングが適用できれば、ステアリングモジュールを低コスト化できて汎用性も高まるため好ましいが、回路基板の板厚は必ずしも一様ではなく、例えば車種に応じて1.2mm厚の回路基板と1.6mm厚の回路基板を適宜選択することがあるため、板厚の異なる回路基板を係止するためにはスナップ爪の高さ位置が異なる別のハウジングを用意しなければならなかった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のコネクタが実装された回路基板をその板厚に拘らず、少ない本数のねじを使用してハウジングに確実に固定できるステアリングモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、上面を開口すると共に中央部にステアリングシャフトが挿通される貫通孔を有するハウジングと、このハウジングの両側部に装着された一対のストークスイッチと、一対の幅広部と両幅広部を橋絡する幅狭部とを有して複数のコネクタを実装し、前記ハウジングの上面開口から挿入されて前記貫通孔の周囲の内底部に配設された回路基板と、この回路基板の上方に配設された舵角センサと、この舵角センサの上方に配設された回転コネクタとを備え、前記回転コネクタと前記舵角センサが互いのロータ部材を同軸上に連結した状態で一体化されていると共に、前記回路基板の前記両幅広部が前記ハウジングにねじ止めされており、かつ前記複数のコネクタに前記両ストークスイッチと前記舵角センサおよび前記回転コネクタがそれぞれ接続されているステアリングモジュールにおいて、前記ハウジングの側壁に、片持ち梁状に延びて先端部の高さ位置が互いに異なる複数のスナップ爪を形成し、前記回路基板の板厚に応じて、前記複数のスナップ爪のうちのいずれかを前記幅狭部の上面縁部に選択的に係止させる構成とした。
【0010】
このように構成されたステアリングモジュールでは、ハウジング内へ挿入された回路基板の上面縁部が係止可能な高さ位置にスナップ爪の先端部を配置させることによって、この回路基板の一対の幅広部を橋絡する幅狭部を該スナップ爪で係止(スナップ止め)することができるため、比較的変形しやすい幅狭部が外部振動に起因してガタ付くことを防止できて、幅広部のねじ止め個所が少なくても回路基板をハウジングに確実に固定できる。しかも、予めハウジングの側壁に先端部の高さ位置が互いに異なる複数のスナップ爪が用意されており、これら複数のスナップ爪のうちのいずれかを回路基板の板厚に応じて選択的に幅狭部の上面縁部に係止させることができるため、板厚の異なる複数種類の回路基板に対してハウジングを共通化できる。
【0011】
上記の構成において、幅狭部の縁部には、この幅狭部が係止可能なスナップ爪を除く残余のスナップ爪との干渉を回避するための切欠きが形成されていることが好ましく、こうすることによって、回路基板をハウジング内へ挿入する際に幅狭部を所望のスナップ爪に確実に係止させることができると共に、残余のスナップ爪との干渉が回避できるため挿入作業を円滑に行えるようになる。
【0012】
また、上記の構成において、ハウジングの内底部に回路基板の挿入量を規定する受け部を突出形成し、スナップ爪に係止された該回路基板の幅狭部の縁部が該スナップ爪と受け部とによって挟持されていると、回路基板の幅狭部のガタ付きをより確実に防止することができて好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のステアリングモジュールは、ハウジング内へ挿入された回路基板の上面縁部が係止可能な高さ位置にスナップ爪の先端部を配置させることによって、この回路基板の一対の幅広部を橋絡する幅狭部を該スナップ爪で係止することができるため、比較的変形しやすい幅狭部が外部振動に起因してガタ付くことを防止できて、幅広部のねじ止め個所が少なくても回路基板をハウジングに確実に固定できる。しかも、予めハウジングの側壁に先端部の高さ位置が互いに異なる複数のスナップ爪が用意されており、これら複数のスナップ爪のうちのいずれかを回路基板の板厚に応じて選択的に幅狭部の上面縁部に係止させることができるため、板厚の異なる複数種類の回路基板に対してハウジングを共通化できる。すなわち、複数のコネクタが実装された回路基板をその板厚に拘らず、少ない本数のねじを使用してハウジングに確実に固定できるため、接続の信頼性を高めることができるのみならず、ステアリングモジュールの低コスト化が図れて汎用性も高まる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態例に係るステアリングモジュールの分解斜視図である。
【図2】図1のステアリングモジュールに備えられるハウジングの斜視図である。
【図3】図2のハウジングに回路基板を組み込んだ状態を示す斜視図である。
【図4】図3に対応する平面図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図2のハウジングにユニット体を組み込む状態を示す説明図である。
【図7】図2のハウジングの一方のスナップ爪を回路基板に係止させた状態を示す説明図である。
【図8】図2のハウジングの他方のスナップ爪を別の回路基板に係止させた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の実施の形態を図1〜図8を参照して説明すると、図1の分解斜視図に示すように、本発明の実施形態例に係るステアリングモジュールは、合成樹脂製のハウジング1と、ハウジング1の内底部に配設された回路基板2と、回路基板2の上方に配設された舵角センサ3と、舵角センサ3の上方に配設された回転コネクタ4と、ハウジング1の左右両側部に装着されたストークスイッチ5,6とで構成されており、後述するように、舵角センサ3と回転コネクタ4は上下2段に積層・一体化されたユニット体7として取り扱われるようになっている。
【0016】
ハウジング1は自動車のステアリングコラムに固定されてコンビネーションスイッチの外殻をなすものであり、図2に示すように、このハウジング1は上面を開口した有底箱形状に成形されている。ハウジング1の内底面中央部には貫通孔1aが穿設されており、この貫通孔1aにステアリングシャフトが挿通されるようになっている。ハウジング1の短手方向に沿う両側面は挿入口1bとして開口しており、これら両挿入口1b近傍の内底面入口には突起1dを有するボス1eがそれぞれ形成されている。ハウジング1の上端面には一対のガイドピン1fと3本の支柱1gが立設されており、これら両ガイドピン1fは貫通孔1aを介して約180度の対向位置にある。また、ハウジング1の長手方向に沿う一方の側壁1hの2個所にスナップ爪1m,1nが一体形成されており、各スナップ爪1m,1nはいずれも側壁1hに連結された固定端から下方へ向かって片持ち梁状に延びている。ただし、スナップ爪1nの先端(下端)の高さ位置はスナップ爪1mの先端(下端)の高さ位置よりも上方に設定されている。後述するように、これらスナップ爪1m,1nはハウジング1内へ挿入される回路基板(本実施形態例では回路基板2)の一部を係止(スナップ止め)するためのものであり、使用する回路基板の板厚に応じてスナップ爪1m,1nのいずれか一方が選択的に係止機能を果たすようになっている。ハウジング1の内底面から側壁1hに至るコーナ部には受け部1jが突出形成されており、この受け部1jの上面はスナップ爪1m,1nの下端よりもハウジング1の奥側(下方)に位置し、かつ前記ボス1eの上面(突起1dを突設させる面)と同一平面内に位置している。そして、これら受け部1jおよびボス1e上に回路基板(本実施形態例では回路基板2)が搭載されて安定的に支持されると共に、該回路基板の一部がスナップ爪1m,1nのいずれか一方の下端と受け部1jとの間に挟持されるようになっている。さらに、ハウジング1には一方の挿入口1bの両側の一方の背面から内方に向かって突出するガイド壁1kが一体形成されている。このガイド壁1kは側壁1hと平行に延びる板状片であり、図4に示すように、これらガイド壁1kと側壁1hとの間には挿入空間Sが画成されている。
【0017】
スナップ爪1m,1nの下端の高さ位置を異ならせている理由について説明すると、本実施形態例では板厚が1.2ミリメートルの回路基板2を使用しているため、図7に示すように、下端位置が低いスナップ爪1mによって回路基板2の幅狭部2aを係止しており、下端位置が高いスナップ爪1nは幅狭部2aの縁部の切欠き2eの上方に位置するため回路基板2と干渉することはない。しかるに、図8に示すように、板厚が1.6ミリメートルと厚い回路基板20を使用する場合には、下端位置が高いスナップ爪1nによって該回路基板20の幅狭部20aを係止するようになっており、この場合、下端位置が低いスナップ爪1mは幅狭部20aの縁部の切欠き20e内に位置するため、スナップ爪1mが回路基板20と干渉することはない。
【0018】
本実施形態例で使用した回路基板2は、幅狭部2aの両側に幅広部2bが連続する形状をしており、これら幅狭部2aと両幅広部2bで包囲された切欠き部8にステアリングシャフトが挿通されるようになっている。両幅広部2bの縁部には取付孔2cと位置決め孔2dが形成されており、また、両幅広部2bには片側について2個、合計で4個のコネクタ9,10,11,12が実装されている。説明の都合上、各コネクタ9,10,11,12を第1ないし第4のコネクタと呼ぶと、第1のコネクタ9と第2のコネクタ10は回路基板2の対角線上の隅部位置し、第3のコネクタ11と第4のコネクタ12は回路基板2の長手方向の両端部に位置している。さらに、回路基板2の幅狭部2aと両幅広部2bには抵抗やコンデンサ等の電気部品13が実装されており、図示せぬが、これら幅狭部2aと両幅広部2bには引き回し用の配線パターンも形成されている。
【0019】
図3と図4に示すように、回路基板2の両幅広部2bはねじ14を用いてハウジング1の内底面にねじ止めされており、回路基板2の幅狭部2aの上面縁部はハウジング1の側壁1hに形成されたスナップ爪1mに係止されている。これにより第1のコネクタ9が挿入空間Sの真下に配置されると共に、第2のコネクタ10が切欠き部8(貫通孔1a)を介して第1のコネクタ9と対向する位置に配置され、かつ、第3および第4のコネクタ11,12がそれぞれ挿入口1bの入口付近に配置される。このように2本のねじ14を用いて回路基板2をハウジング1の内底面に固定する場合、まず、回路基板2をハウジング1の上面開口から内底面に向かって挿入していき、その挿入途中で幅狭部2aの外縁部が側壁1hから突出するスナップ爪1mを押し込んでこれを外方へ弾性変形させるため、幅狭部2aがスナップ爪1mの下端を通過した直後に、弾性復帰するスナップ爪1mによって幅狭部2aの上面縁部が係止されると共に、受け部1j上に幅狭部2aが搭載された状態となる(図5参照)。つまり、幅狭部2aはスナップ爪1mの下端と受け部1jとによって挟持された状態となる。ただし、この過程でスナップ爪1nは切欠き2eの通過領域に位置するため、幅狭部2aとスナップ爪1nとの干渉は起こらない。また、この過程で両幅広部2bに形成された一対の位置決め孔2dがハウジング1の対応する突起1dに挿入されて、両幅広部2bがハウジング1の内底面から突出する両ボス1e上に搭載される。したがって、回路基板2をハウジング1の内底部の所定位置に確実に組み込むことができる。しかる後、両幅広部2bに形成された取付孔2cにねじ14を挿入して締め付けることにより、回路基板2をハウジング1の内底部に固定することができ、ねじ止め個所から離れた幅狭部2aもスナップ爪1mによって係止することができる。
【0020】
なお、図8に示す板厚の厚い回路基板20も上記と同様にしてハウジング1の内底部に固定することができるが、回路基板20の場合は、その幅狭部20aがスナップ爪1nに係止(スナップ止め)され、スナップ爪1mとの干渉は起こらない。
【0021】
舵角センサ3はハンドルの操舵角を検出する回転情報検出手段として使用されるものであり、この舵角センサ3は、外周面に図示せぬコード板を有する中空軸構造のロータ部材3aと、このロータ部材3aを回転可能に支持するステータ部材3bと、このステータ部材3bの内部に収納された図示せぬ検出素子等を備えており、ステータ部材3bの下面には外部接続用の固定側コネクタ3cが設けられている(図6参照)。回転コネクタ4はハンドルに搭載されたエアーバッグ・インフレータやホーン等と車体側の制御部等との電気的接続手段として使用されるものであり、この回転コネクタ4は、ハンドルに連結される中空軸構造のロータ部材4aと、このロータ部材4aを回転可能に支持するステータ部材4bと、これらロータ部材4aとステータ部材4b間に画成される環状空間に収納・巻回された図示せぬ可撓性ケーブルとを備えており、ステータ部材4bの外周面には下方へ延びる外部接続用の固定側コネクタ4cが設けられている。また、ステータ部材4bの外周面から突出する鍔部には、ハウジング1のガイドピン1fに挿入される一対のガイド孔4dと、ハウジング1の支柱1gにねじ止めされる3つの取付孔4eが穿設されている。なお、図示省略されているが、この回転コネクタ4にはロータ部材4aの自由な回転を阻止するストッパ部材が装着されており、ロータ部材4aをハンドルに連結するまで、該ストッパ部材によってロータ部材4aが回転中立位置に保持されるようになっている。
【0022】
これら舵角センサ3と回転コネクタ4は、互いのロータ部材3a,4aを同軸上で連結すると共に、互いのステータ部材3b,4bどうしをスナップ止めやねじ止め等で固定することにより、予め上下2段に積層・一体化された1つのユニット体7として取り扱われる。このユニット体7の状態において、下段側の舵角センサ3に設けられた固定側コネクタ3cはユニット体7の下面に位置して上方から見えないが、上段側の回転コネクタ4に設けられた固定側コネクタ4cは舵角センサ3のステータ部材3bの外側を通って下方へ延びている。そして、このユニット体7をハウジング1の上面開口から挿入して内部に組み込むことにより、回転コネクタ4の固定側コネクタ4cと舵角センサ3の固定側コネクタ3cが回路基板2上の第1のコネクタ9と第2のコネクタ10にそれぞれダイレクトカップリングされ、しかる後、回転コネクタ4の各取付孔4eに図示せぬねじを挿入してハウジング1の支柱1gにねじ止めすることにより、ユニット体7はハウジング1に固定される。かかるユニット体7の組み込み工程において、図6に示すように、回転コネクタ4の両ガイド孔4dがハウジング1のガイドピン1fに挿入される直前には、回転コネクタ4の固定側コネクタ4cは挿入空間Sに挿入されて第1のコネクタ9の上方位置にあり、舵角センサ3の固定側コネクタ3cも第2のコネクタ10の上方位置にあるが、ガイド孔4dがガイドピン1fに挿入された時点で、ユニット体7は一対のガイドピン1fによって水平方向に位置決めされると共に、固定側コネクタ4cがガイド壁4kに沿って挿入空間S内を下降することによって回転方向にも位置決めされる。したがって、この状態でユニット体7をハウジング1の内部に押し込むことにより、回転コネクタ4の固定側コネクタ4cと舵角センサ3の固定側コネクタ3cをそれぞれ第1のコネクタ9と第2のコネクタ10の適正位置に確実に導くことができ、接続ピンの変形等を含むコネクタの損傷を防止することができる。
【0023】
一方のストークスイッチ5はワイパー動作等を行うワイパースイッチであり、他方のストークスイッチ6はウインカー動作等を行うターンシグナルスイッチである。これらストークスイッチ5,6の基部側面には水平方向に延びるガイド突起5a,6aが形成されており、図示せぬが、両ストークスイッチ5,6の基部下面には外部接続用のコネクタが設けられている。そして、両ストークスイッチ5,6の基部をハウジング1の両側外方から挿入口1b内に挿入し、ガイド溝1cによってガイド突起5a,6aを挿入方向へ案内することにより、両ストークスイッチ5,6がハウジング1の左右両側部に装着されると共に、両ストークスイッチ5,6の図示せぬコネクタが回路基板2上の第3およびだ4のコネクタ11,12にそれぞれダイレクトカップリングされる。
【0024】
このようにハウジング1にユニット体7(舵角センサ3と回転コネクタ4)と一対のストークスイッチ5,6を一体化したステアリングモジュールは、ハウジング1をステアリングコラムに固定すると共に回転コネクタ4のロータ部材4aをハンドルに連結した状態で自動車のステアリング装置に組み込まれ、その時点で回転コネクタ4から前述したストッパ部材を取り外すことにより、舵角センサ3と回転コネクタ4のロータ部材3a,4aはステータ部材3b,4bに対して回転自在となる。したがって、使用に際して運転者がハンドルを時計回りまたは反時計回りへ回転操作すると、ハンドルの回転に連動して両ロータ部材3a,4aが一体的に回転し、回転コネクタ4と舵角センサ3がそれぞれ動作される。すなわち、回転コネクタ4については、ロータ部材4aが回転することによって図示せぬ可撓性ケーブルが巻き締めあるいは巻き戻され、舵角センサ3についてはロータ部材3aが回転することによって図示せぬ検出素子から回転量の検出信号が出力される。
【0025】
以上説明したように本実施形態例に係るステアリングモジュールは、回路基板2に形成された一対の幅広部2bと両幅広部2bを橋絡する幅狭部2aとによってステアリングシャフトを挿通するための切欠き部8の三方が包囲されていると共に、第1ないし第4のコネクタ9,10,11,12を実装した両幅広部2bをハウジング1の内底面にねじ止めしているので、ユニット体7として一体化された舵角センサ3および回転コネクタ4と左右一対のストークスイッチ5,6とをハウジング1に組み込んで回路基板2上の対応するコネクタ9〜12に無理なく接続することができる。また、ハウジング1の側壁1hに一体形成されたスナップ爪1mによって回路基板2の比較的変形しやすい部位である幅狭部2aの上面縁部を係止(スナップ止め)していると共に、この幅狭部2aをスナップ爪1mと受け部1jとで板厚方向に挟持しているため、幅狭部2aが外部振動に起因して上下方向にガタ付くことを防止できて、幅広部2bのねじ止め個所(本実施形態例では2個所)が少なくても回路基板2をハウジング1に確実に固定できる。しかも、予めハウジング1の側壁1hに先端部の高さ位置が互いに異なる2片のスナップ爪1m,1nが用意されており、図8に示すように、板厚が厚い回路基板20を使用する場合には、その幅狭部20aの上面縁部をスナップ爪1nで係止(スナップ止め)し、かつ該幅狭部20aをスナップ爪1nと受け部1jとで板厚方向に挟持することができるため、板厚の異なる2種類の回路基板に対してハウジング1を共通化できるようになっている。すなわち、このステアリングモジュールは、4個のコネクタ9〜12が実装された板厚の異なる2種類の回路基板を、少ない本数(本実施形態例では2本)のねじ14を使用してハウジング1に確実に固定できるため、接続の信頼性が高めやすいだけでなく、低コスト化が図りやすくて汎用性の高いステアリングモジュールとなっている。
【0026】
また、本実施形態例に係るステアリングモジュールでは、板厚が薄い回路基板2の幅狭部2aの縁部に、この幅狭部2aが係止可能なスナップ爪1m以外のスナップ爪1nとの干渉を回避するための切欠き2eが形成されているめ、回路基板2をハウジング1内へ挿入する際に幅狭部2aを所望のスナップ爪1mに確実に係止させることができると共に、残余のスナップ爪1nとの干渉を回避できるため挿入作業が円滑に行えるようになっている。同様に、板厚が厚い回路基板20の幅狭部20aの縁部にも、この幅狭部20aが係止可能なスナップ爪1n以外のスナップ爪1mとの干渉を回避するための切欠き20eが形成されているめ、回路基板20をハウジング1内へ挿入する際に幅狭部20aを所望のスナップ爪1nに確実に係止させることができると共に、残余のスナップ爪1mとの干渉を回避できるため挿入作業が円滑に行えるようになっている。
【0027】
なお、上記の実施形態例では、板厚の異なる2種類の回路基板に対応させて、先端部の高さ位置が異なる2片のスナップ爪1m,1nをハウジング1の側壁1hに形成しているが、板厚の異なる3種類以上の回路基板に対応させて、先端部の高さ位置が異なる3片以上のスナップ爪をハウジングの側壁に形成してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 ハウジング
1a 貫通孔
1b 挿入口
1c ガイド溝
1d 突起
1e ボス
1f ガイドピン
1g 支柱
1h 側壁
1m,1n スナップ爪
2,20 回路基板
2a,20a 幅狭部
2b 幅広部
2c 取付孔
2d 位置決め孔
2e,20e 切欠き
3 舵角センサ
3a ロータ部材
3b ステータ部材
3c 固定側コネクタ
4 回転コネクタ
4a ロータ部材
4b ステータ部材
4c 固定側コネクタ
4d ガイド孔
4e 取付孔
5,6 ストークスイッチ
7 ユニット体
8 切欠き部
9 第1のコネクタ
10 第2のコネクタ
11 第3のコネクタ
12 第4のコネクタ
13 電気部品
14 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を開口すると共に中央部にステアリングシャフトが挿通される貫通孔を有するハウジングと、このハウジングの両側部に装着された一対のストークスイッチと、一対の幅広部と両幅広部を橋絡する幅狭部とを有して複数のコネクタを実装し、前記ハウジングの上面開口から挿入されて前記貫通孔の周囲の内底部に配設された回路基板と、この回路基板の上方に配設された舵角センサと、この舵角センサの上方に配設された回転コネクタとを備え、前記回転コネクタと前記舵角センサが互いのロータ部材を同軸上に連結した状態で一体化されていると共に、前記回路基板の前記両幅広部が前記ハウジングにねじ止めされており、かつ前記複数のコネクタに前記両ストークスイッチと前記舵角センサおよび前記回転コネクタがそれぞれ接続されているステアリングモジュールであって、
前記ハウジングの側壁に、片持ち梁状に延びて先端部の高さ位置が互いに異なる複数のスナップ爪を形成し、前記回路基板の板厚に応じて、前記複数のスナップ爪のうちのいずれかを前記幅狭部の上面縁部に選択的に係止させたことを特徴とするステアリングモジュール。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記幅狭部の縁部には、この幅狭部が係止可能な前記スナップ爪を除く残余のスナップ爪との干渉を回避するための切欠きが形成されていることを特徴とするステアリングモジュール。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記ハウジングの内底部に前記回路基板の挿入量を規定する受け部を突出形成し、前記スナップ爪に係止された前記幅狭部の縁部が該スナップ爪と前記受け部とによって挟持されていることを特徴とするステアリングモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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