説明

ステアリングロック装置

【課題】外部からの破壊行為、及び磁石を使っての不正なロック解除行為を効果的に防止するプロテクタを備えたステアリングロック装置を提供する。
【解決手段】ステアリングロック装置(1)は、キーシリンダ(110)のロータ(112)に平行してロックバー(201)が配置され、ワンウェイの皿ボルト(25)を介してケース(101)を覆うプロテクタ(21)を備える。このプロテクタは、磁性金属材から形成され、少なくともロックバーの移動方向延長線上の前面部(211)を含む少なくとも4面の遮蔽面部を有している。かかるプロテクタ構造により、磁石等を使った不正行為を効果的に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングロック装置に関し、特にケース部材を覆うプロテクタを備えるステアリングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の盗難防止のために、イグニッションキーがキーシリンダに差し込まれていない状態でステアリングが回転された場合にステアリングの回転を規制するステアリングロック装置が知られている。そして、より小型化を図るため、キーシリンダとステアリングをロックするロックバーとが平行、かつ、一部オーバラップするように近接して配置した構成のステアリングロック装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−314745号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、以前よりステアリングロック装置においては、外部からの破壊行為や、強力な磁石を使ってロックバーのロック状態を強制的に解除する行為等の不正行為を効果的に防止するためのプロテクタ構造が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、外部からの破壊行為、及び磁石を使っての不正なロック解除行為を効果的に防止するプロテクタを備えたステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記目的を達成するため本発明に係るステアリングロック装置は、キーにより回転操作されるロータ及び該ロータの回転軸に対し平行する方向に移動するロックバーを収容するケース部材と、前記ケース部材の外壁の一部を覆う磁性金属材からなるプロテクタと、を備えるステアリングロック装置であって、前記プロテクタは、少なくとも前記ロックバーの移動方向の延長線上において交差する前記ケース部材の外壁を覆う面部を有している。
【0007】
[2]また、前記プロテクタには周囲に円錐状の座刳を有するボルト孔が形成され、当該ボルト孔に挿入される皿ボルトを介して前記ケース部材に固定される。
【0008】
[3]また、前記皿ボルトは、締める方向のみ回転を許すワンウェイボルトである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のステアリングロック装置によれば、外部からの破壊行為や、強力な磁石を使ってロックバーのロック状態を強制的に解除するような不正行為を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は、本発明の実施の形態によるステアリングロック装置の側面図であり、ステアリングコラムを固定するブラケットの部分を一部破断して示す図である。図1(b)は、そのステアリングロック装置の底面図である。
【図2】図2は、図1に示したステアリングロック装置の内部構造を示す縦断面図である。
【図3】図3は、図1に示したステアリングロック装置におけるロックバーとステアリングコラムの部分を示す断面図である。
【図4】図4は、図1に示したステアリングロック装置に備えられるプロテクタの外観形状を示す斜視図である。
【図5】図5(a)は、本発明の実施の形態によるプロテクタの取付部を詳細に示す平面図である。図5(b)は、その取付部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るステアリングロック装置の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1(a)は、本実施の形態によるステアリングロック装置1の側面図であり、車両のステアリングコラム80を固定するブラケット102の部分を一部破断して示している。また、図1(b)は、ステアリングロック装置1の底面図である。このステアリングロック装置1は、キー部10、ステアリングロック部20、インターロックユニット30及びイグニッションスイッチユニット40を備えて構成されている。
【0012】
図2は、ステアリングロック装置1の内部構造を示す縦断面図である。ステアリングロック装置1のケース101は、例えば亜鉛ダイカスト等の金属により一体に加工成形される。このケース101内には、シリンダ111と、シリンダ111内に回転可能に収容されるロータ112とを有するキーシリンダ110が挿着されている。キーシリンダ110のロータ112には、キーKが挿入される鍵孔112aが軸方向内部にかけて形成されている。
【0013】
また、ロータ112には、ロータ112の径方向(上下方向)に長い複数のタンブラ113,113,…が、その長手方向に沿って移動可能に収容されている。各タンブラ113,113,…は、キーKが挿入されていない状態においては、その各端部がロータ112の外周面から突出しシリンダ111の内周面に係合することで、ロータ112の回転が規制されている。一方、ロータ112に正規のキーKが挿入されると、キーKの山溝形状の端面に対応する各タンブラ113,113,…が係合し、全ての各タンブラ113,113,…がロータ112の外周面から退避する。これにより、ロータ112の回転操作が可能になる。
【0014】
ロータ112の前側下部には、スライドピース114が径方向に移動可能に設けられている。スライドピース114の外面は、ロータ112の外周面と同一の曲率で湾曲しており、キーシリンダ110の内部でロータ112とスライドピース114とが一体に回転するように構成されている。また、スライドピース114は、ロータ112にキーKが挿入された状態では、その端部がキーKの一部に当接することにより、ロータ112の中心方向への移動が規制される。
【0015】
キーシリンダ110の下方部には、長尺状の可動部材であるアンチロックレバー115が、キーシリンダ110の中心軸と平行、かつ中央部の軸を中心に回動可能に設けられている。アンチロックレバー115の前端には、上方のスライドピース114に向けて折れる前端部115aが形成され、その後端には、後述するスライダ203の係止突起203bと係止可能な後端部115bが形成されている。なお、アンチロックレバー115は、図示しないスプリング等により、前端部115aがスライドピース114に向かう方向(上昇する方向)に弾性力が作用している。ロータ112が「LOCK」位置又はキーシリンダ110からキーKが抜かれた状態では、この弾性力が作用してアンチロックレバー115の前端部115aが上昇し、同時に後端部115bが下降し、アンチロック状態が解除される(ステアリングロック許可状態)。
【0016】
ロータ112の後軸112bには、カムシャフト116が連結して設けられている。カムシャフト116は、略円筒状の外筒部116aと、同じく略円筒状の内筒部116bとが、前部において連結して一体に形成されている。カムシャフト116の内筒部116bの内周面にはロータ112の後軸112bが嵌着されるとともに、内筒部116bの後端部がケース101から突出してイグニッションスイッチユニット40に連結している。これにより、キーシリンダ110のロータ112が正規のキーKにより回転操作されることで、カムシャフト116を介してイグニッションスイッチユニット40が操作される。
【0017】
カムシャフト116の外筒部116aと内筒部116bの間の空間には、トーションスプリング117が収容されている。トーションスプリング117の一端はカムシャフト116の外筒部116aに係止されており、キーKの回転操作によりキーシリンダ110のロータ112が「ON」位置に至ったときにトーションスプリング117の他端がケース101に係止することにより、キーKの操作を「START」位置から「ON」位置に戻す方向にスプリング力がカムシャフト116に作用する。
【0018】
カムシャフト116の外筒部116aの下部には、後述するスライダ203のフォロア部203aと摺動するカム面116cが形成されている。
【0019】
ステアリングロック部20は、ロックバー201、コンプレッションスプリング202及びスライダ203とを備えている。ロックバー201は、剛性の高い金属により棒状に形成され、ステアリングロック装置1の下部においてその先端部がケース101からステアリングコラム80側に進退移動可能に設けられている。また、ロックバー201は、ケース101内に収容されているコンプレッションスプリング202により、常時、ケース101から進出する方向にスプリング力が作用している。
【0020】
ケース101内において、ロックバー201の上部には溝部201bが形成され、この溝部201bにスライダ203の下部が嵌合している。これとともに、スライダ203の上部後面がケース101の後部内壁101cに当接することにより、ロックバー201がケース101から抜け止めされる。
【0021】
スライダ203の上部には、上述したカムシャフト116のカム面116cに接触して従動するフォロア部203aが一体形成されている。また、スライダ203の前方上部には、上述したアンチロックレバー115の後端部115bと係止可能な係止突起203bが形成されている。
【0022】
ここで、図3は、図1に示したステアリングロック装置1におけるロックバー201とステアリングコラム80の部分を示す断面図である。ブラケット102は、半円弧状に形成され、その一端がケース101のヒンジブロック部101bにおいてヒンジ軸102aを介して開閉可能に支持されている。このブラケット102を開け、ステアリングコラム80をケース101に挟み込み、ブラケット102を閉じた状態で他端をボルト103を介してボスブロック部101aに固定することで、ステアリングコラム80がステアリングロック装置1に取り付けられる。
【0023】
図3に示されるように、ロックバー201がステアリングコラム80側に進出するロック位置では、ロックバー201の先端部201aがステアリングシャフト81に嵌着されているスプラインボス82の凹部82aの間に入って係合することで、ステアリングシャフト81の回転が規制される。また、ロックバー201が退避するアンロック位置では、ロックバー201の先端部201aとスプラインボス82とが係合せず、ステアリングシャフト81の回転規制が解除される。
【0024】
かかるステアリングロック部20の構成によると、キーKが鍵孔112aから抜かれた状態においては、スライドピース114の移動が規制されず、アンチロックレバー115の前端部115aにより押し上げられるとともに、アンチロックレバー115の後端部115bが下降する。したがって、スライダ203の係止突起203bと後端部115bとは係止できず、コンプレッションスプリング202の弾性伸張力によりロックバー201がロック位置に進出するとともに、ロックバー201の溝部201bに嵌合するスライダ203の上部後面がケース101の後部内壁101cに当接することにより、ロックバー201がロック位置に保持される。
【0025】
正規のキーKが鍵孔112aに挿入され、ロータ112が「LOCK」位置から「ACC」位置に回転する過程においては、スライドピース114の外面がロータ112の外周面と一致する位置に移動し、アンチロックレバー115の前端部115aを押し下げるとともにアンチロックレバー115の後端部115bが上昇する。このとき、ロータ112の回転に連動してカムシャフト116が回転し、カムシャフト116のカム面116cに接触して従動するフォロア部203aとともにスライダ203及びその前方部の係止突起203bが前方に移動し、さらには溝部201bにおいてスライダ203に嵌合するロックバー201がアンロック位置に退避する。そして、回転操作されたロータ112が「ACC」位置に至ると、係止突起203bがアンチロックレバー115の後端部115bに係止することでスライダ203がその位置に保持されるとともに、スライダ203に嵌合するロックバー201もアンロック位置に保持される。これにより、キーKが「ACC」位置に回転操作された後は、ステアリングロックが誤って作動しないようにアンチロックされる。
【0026】
図4は、ステアリングロック装置1に備えられるプロテクタ21の外観形状を示す斜視図である。プロテクタ21は、磁性金属材である例えば冷間圧延鋼(SPCC)、熱間圧延鋼(SPHC)又は炭素鋼(S25C〜S55C)等の鉄系素材をプレス加工等の鍛造工程を経て一体に形成される。図4に示されるように、プロテクタ21は、ステアリングロック部20のほぼ全外壁面を覆う形状に例えば厚みが約2mmに形成されている。
【0027】
より詳細には、プロテクタ21は、ロックバー201がステアリングコラム80から退避する方向の延長線上におけるケース101の前壁部分を覆う前面部211と、ロックバー201の下方の下壁部分を覆う傾斜底面部212a及び水平底面部212bと、キーKの挿入方向から見てケース101の左壁部分を覆う左側面部213と、ケース101の右壁部分を覆う右側面部214とを含む、少なくとも4面の遮蔽面部を有している。また、これら4面の遮蔽面部以外の上面側(キー部10に臨む側)と、背面側(ステアリングコラム80に臨む側)が解放している。
【0028】
本実施の形態のプロテクタ21を備えるステアリングロック装置1によれば、ステアリングロック部20のほぼ全外壁面を覆うプロテクタ21を磁性金属材により構成したので、不正者が外部から強力な磁石を使ってロックバー201をアンロック位置に引き寄せようとしても、その磁力がプロテクタ21に誘導されてロックバー201には作用しない。このため、かかる磁石を使った不正行為を防止することができる。特に本実施の形態のように、ロックバー201の進退方向とキー部10のロータ112の回転軸とが平行する小型化したタイプのステアリングロック装置1においては、ロックバー201が退避移動する延長線上にプロテクタ21の前面部211を設けたので、ここからの磁石を使った不正行為をより効果的に防止することができる。
【0029】
また、プロテクタ21の左側面部213と右側面部214には、プロテクタ21をケース101に取り付けるための取付部22を構成するボルト孔21bが穿設されている。図5(a)は、このプロテクタ21の取付部22を詳細に示す平面図であり、図5(b)は、取付部22の断面図である。
【0030】
プロテクタ21は、ワンウェイ皿ボルト25が外側からボルト孔21bに挿入されて、ケース101に締め着けされる。ボルト孔21bが設けられるプロテクタ21の表面側部分には、ボルト孔21bの中心に向かうに従って深くなる円錐状の円錐座刳21aが形成されている。
【0031】
このような本実施の形態によるプロテクタ21の取付構造によれば、プロテクタ21がケース101に取り付けられた状態で、ワンウェイ皿ボルト25の頭部が円錐座刳21aに入り込み、プロテクタ21の表面よりも深い位置に止められる。これにより、バール等を使ったワンウェイ皿ボルト25に対する不正なアタックができなくなり、プロテクタ21を不正な脱落を防止できる。
【0032】
また、ワンウェイ皿ボルト25の頭部には、時計回り方向の締め付けのみドライバに係合する縦溝25aと、縦溝25aから見て反時計回り方向において次第に浅くなるテーパ溝25bとが形成されている。これにより、ワンウェイ皿ボルト25を緩めて取り出すことは通常の工具では極めて困難となり、ボルトを外してプロテクタ21を不正に脱落させてしまうような行為を効果的に防止できる。
【0033】
以上、本発明に好適な実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で種々の変形、応用が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…ステアリングロック装置、
10…キー部、101…ケース、101a…ボスブロック部、101b…ヒンジブロック部、101c…後部内壁、102…ブラケット、102a…ヒンジ軸、103…ボルト、110…キーシリンダ、111…シリンダ、112…ロータ、112a…鍵孔、112b…後軸、113…タンブラ、114…スライドピース、115…アンチロックレバー、115a…前端部、115b…後端部、116…カムシャフト、116a…外筒部、116b…内筒部、117…トーションスプリング、
20…ステアリングロック部、201…ロックバー、201a…先端部、201b…溝部、201…ロックバー、202…コンプレッションスプリング、203…スライダ、203a…フォロア部、203b…係止突起、
21…プロテクタ、21a…円錐座刳、21b…ボルト孔、211…前面部、212a…傾斜底面部、212b…水平底面部、213…左側面部、214…右側面部、22…取付部、
25…ワンウェイ皿ボルト、25a…縦溝、25b…テーパ溝、
30…インターロックユニット、
40…イグニッションスイッチユニット、
80…ステアリングコラム、81…ステアリングシャフト、82…スプラインボス、82a…凹部、
K…キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーにより回転操作されるロータ及び該ロータの回転軸に対し平行する方向に移動するロックバーを収容するケース部材と、
前記ケース部材の外壁の一部を覆う磁性金属材からなるプロテクタと、を備えるステアリングロック装置であって、
前記プロテクタは、少なくとも前記ロックバーの移動方向の延長線上において交差する前記ケース部材の外壁を覆う面部を有しているステアリングロック装置。
【請求項2】
前記プロテクタには周囲に円錐状の座刳を有するボルト孔が形成され、当該ボルト孔に挿入される皿ボルトを介して前記ケース部材に固定される請求項1に記載のステアリングロック装置。
【請求項3】
前記皿ボルトは、締める方向のみ回転を許すワンウェイボルトである請求項2に記載のステアリングロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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