説明

ステアリング装置

【課題】軽量で製造コストを低減することが可能なステアリングギヤのハウジングを有するステアリング装置を提供する。
【解決手段】ラック軸40が移動端で当接した時の荷重を、ピニオン側ハウジング10の左右両端で支持するようにしている。従って、大きな強度が必要な部分を、車幅方向の長さが短いピニオン側ハウジング10に限定することが可能となるため、材料が軽量化されるとともに、加工が容易になるため、製造コストを低減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステアリング装置、特に、ピニオンの回転で往復移動するラック軸を摺動可能に内嵌する中空円筒部を有し、車体フレームに固定されるステアリングギヤを有するステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラック軸を摺動可能に内嵌するステアリングギヤのハウジングは、ラック軸の軸方向に長く形成され、操舵時に車輪から伝達される操舵反力を受けるため、剛性が大きなアルミニウム合金等の金属を鋳造して一体的に成形されている。
【0003】
このようなラックピニオン式のステアリング装置では、ラック軸がストローク端に達すると、ラック軸の車幅方向の両端に固定されたボールジョイントソケットが、ステアリングギヤのハウジングの車幅方向の両端に当接して、ラック軸が停止し、ラック軸の移動距離を制限している。
【0004】
両端のボールジョイントソケットの車幅方向の間隔が広いため、ステアリングギヤのハウジングは車幅方向に長くなる。従って、車幅方向に長いステアリングギヤのハウジングの両端で、ボールジョイントソケットを当接した時のスラスト荷重を支持するため、ハウジングは大きな強度が必要で、肉厚を厚くしたり、強度の大きな金属製にするため、重量が増大し、製造コストも増大する問題があった。
【0005】
特許文献1、特許文献2に開示されたステアリングギヤのハウジングは、ハウジングを分割して成形することにより、鋳造や加工を容易にしている。しかし、ハウジングの車幅方向の両端で、ボールジョイントソケットを当接した時の荷重を支持する構造は同一であるため、ハウジングは大きな強度が必要で、肉厚を厚くしたり、強度の大きな金属製にすることが必要で、重量が増大し、製造コストが増大する問題は解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61−129670号公報
【特許文献2】特開2009−56827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、軽量で製造コストを低減することが可能なステアリングギヤのハウジングを有するステアリング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、ステアリングシャフトの下端に取り付けられたピニオンの回転で往復移動するラック軸を摺動可能に内嵌し、タイロッドを介して車輪の操舵角を変えるステアリングギヤ、上記ステアリングギヤのピニオン側端部に形成され、上記ラック軸のピニオン側端部を摺動可能に軸支し、車体フレームに固定可能な金属製のピニオン側ハウジング、上記ラック軸のピニオン側端部にラック軸よりも大径に形成され、上記ピニオン側ハウジングの一端に当接してラック軸の反ピニオン側への移動端を規制するボールジョイントソケット、上記ラック軸のピニオン側端部と反ピニオン側端部との間の軸方向位置にラック軸よりも大径に形成され、上記ピニオン側ハウジングの他端に当接してラック軸のピニオン側への移動端を規制する係合凸部を備えたことを特徴とするステアリング装置である。
【0009】
第2番目の発明は、第1番目の発明のステアリング装置において、上記ステアリングギヤの反ピニオン側端部に形成され、上記ラック軸の反ピニオン側端部を摺動可能に軸支し、車体フレームに固定可能な金属製の反ピニオン側ハウジング、上記ラック軸の中間部を覆う中空円筒部を有し、一端が上記ピニオン側ハウジングに接続され他端が上記反ピニオン側ハウジングに接続されて、合成樹脂またはゴムで成形された中間筒部を備えたことを特徴とするステアリング装置である。
【0010】
第3番目の発明は、第2番目の発明のステアリング装置において、上記反ピニオン側ハウジングは上記ラック軸の反ピニオン側端部を弾性部材を介して摺動可能に軸支していることを特徴とするステアリング装置である。
【0011】
第4番目の発明は、第2番目の発明のステアリング装置において、上記ラック軸は、ラックが形成された中実軸とラックが形成されていない中空軸を接合して形成され、上記中実軸と中空軸との接合部に上記係合凸部が形成されていることを特徴とするステアリング装置である。
【0012】
第5番目の発明は、第2番目の発明のステアリング装置において、上記係合凸部には、上記ピニオン側ハウジングの他端との当接面に弾性部材製のダンパーが取り付けられていることを特徴とするステアリング装置である。
【0013】
第6番目の発明は、第2番目の発明のステアリング装置において、上記中間筒部が上記ラック軸の軸方向に伸縮可能であることを特徴とするステアリング装置である。
【0014】
第7番目の発明は、第6番目の発明のステアリング装置において、上記中間筒部の一端とピニオン側ハウジング、及び中間筒部の他端と反ピニオン側ハウジングとの接続部がバンドまたはワイヤーで固定されていることを特徴とするステアリング装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のステアリング装置は、ステアリングギヤのピニオン側端部に形成され、ラック軸のピニオン側端部を摺動可能に軸支し、車体フレームに固定可能な金属製のピニオン側ハウジングと、ラック軸のピニオン側端部にラック軸よりも大径に形成され、ピニオン側ハウジングの一端に当接してラック軸の反ピニオン側への移動端を規制するボールジョイントソケットと、ラック軸のピニオン側端部と反ピニオン側端部との間の軸方向位置にラック軸よりも大径に形成され、ピニオン側ハウジングの他端に当接してラック軸のピニオン側への移動端を規制する係合凸部を備えている。従って、ラック軸が移動端で当接した時の荷重を、車幅方向の長さが短いピニオン側ハウジングの左右両端で支持するため、材料が軽量化されるとともに、加工が容易になるため、製造コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のステアリング装置の全体斜視図である。
【図2】本発明の実施例1のステアリング装置のステアリングギヤの要部を示す一部を断面した正面図である。
【図3】本発明の実施例2のステアリング装置のステアリングギヤの要部を示す一部を断面した正面図である。
【図4】ラック軸に形成された係合凸部の変形例を示す一部を断面した正面図である。
【図5】ラック軸に形成された係合凸部の変形例を示す一部を断面した正面図である。
【図6】ラック軸に形成された係合凸部の変形例を示す一部を断面した正面図である。
【図7】ラック軸に形成された係合凸部の変形例を示す一部を断面した正面図である。
【図8】ラック軸に形成された係合凸部の変形例を示す一部を断面した正面図である。
【図9】ラック軸に形成された係合凸部の変形例を示す一部を断面した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施例1から実施例2を説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の実施例のステアリング装置を示し、コラムアシスト型ラックピニオン式パワーステアリング装置の全体斜視図である。図1に示すように、本発明の実施例のコラムアシスト型ラックピニオン式パワーステアリング装置は、ステアリングホイール101の操作力を軽減するために、コラム105の中間部に取付けたモータ102の操舵補助力をステアリングシャフトに付与している。そして、ステアリングシャフトの回転を中間シャフト106に伝達し、ピニオン軸107を介してラックピニオン式のステアリングギヤ103のラック軸を往復移動させ、タイロッド104を介して舵輪を操舵している。
【0019】
図2は、本発明の実施例1のステアリング装置のステアリングギヤ103の要部を示す一部を断面した正面図である。本発明の実施例1のステアリングギヤ103は、フロントサブフレーム等の図示しない車体フレームに取り付けられている。図2の紙面に直交する手前側が車体上方側、図2の紙面に直交する奥側が車体下方側、図2の左右方向が車幅方向、図2の上方向が車体後方側、図2の下方向が車体前方側である。
【0020】
ステアリングギヤ103は、図2の右側のピニオン側ハウジング10、図2の左側の反ピニオン側ハウジング20、ピニオン側ハウジング10と反ピニオン側ハウジング20を接続する中間筒部30を備えている。ピニオン側ハウジング10と反ピニオン側ハウジング20はアルミニウム合金等の金属を鋳造して成形されている。
【0021】
中空円筒状の中間筒部30は合成樹脂を使用し、射出成形やブロー成型で成形している。ピニオン側ハウジング10の左端の雌ねじ11に中間筒部30の右端の雄ねじ31がねじ込まれて、ピニオン側ハウジング10に中間筒部30の右端が固定されている。ピニオン側ハウジング10の左端の内周面と中間筒部30の右端の外周面との間にはOリング32が介挿されて、ピニオン側ハウジング10と中間筒部30との接続部の気密性を保持している。また、反ピニオン側ハウジング20の内周面に中間筒部30の左端のフランジ部33が、弾性部材製のダンパー34を介して固定されている。
【0022】
中間筒部30の内周35には、図2の左右方向に摺動可能にラック軸40が内嵌している。中間筒部30の内周35の左端には、軸受ブッシュ36が内嵌され、ラック軸40の左端を摺動可能に軸支している。ラック軸40の左右両端にはボールジョイントソケット51、52が各々形成され、、ボールジョイントソケット51、52に連結されたタイロッド104、104が、図示しないナックルアームを介して車輪に接続されている。ボールジョイントソケット51、52は、ラック軸40よりも大径に形成されている。
【0023】
ピニオン側ハウジング10には、ピニオン挿入用の円柱状ボス12が一体的に形成され、このピニオン挿入用の円柱状ボス12に挿入されたピニオン軸107の下端には、ラック軸40に噛み合う図示しないピニオンが形成されている。ピニオン軸107の上端は、ステアリングホイール101に連結された図1の中間シャフト106の下端に連結されている。
【0024】
運転者がステアリングホイール101を回転すると、ピニオン軸107のピニオンが回転し、ピニオンの回転に応じて、ラック軸40が左右に摺動して、車輪の操舵角を変えることができる。
【0025】
ピニオン側ハウジング10及び反ピニオン側ハウジング20には、車体取り付け用ボス部13、13、21、21が各々形成されている。車体取り付け用ボス部13、13、21、21には、円形の取り付け孔131、211が車体上下方向(図2の紙面に直交する方向)に各々一箇所形成されている。
【0026】
取り付け孔131、211に図示しないボルトを挿入し、このボルトを車体フレームに締め付けることで、ピニオン側ハウジング10及び反ピニオン側ハウジング20は車体フレームにリジッド構造(剛体構造)で取り付けられている。本発明の実施例1の中間筒部30は合成樹脂で形成され、車輪からの操舵反力を支持する能力が小さい。
【0027】
従って、金属製のピニオン側ハウジング10及び反ピニオン側ハウジング20を車体フレームにリジッド構造で取り付け、車輪からの操舵反力は、ピニオン側ハウジング10及び反ピニオン側ハウジング20が支持する。反ピニオン側ハウジング20は、軸受ブッシュ36に加わるラジアル荷重を弾性部材製のダンパー34を介して支持し、中間筒部30に加わるラジアル荷重を軽減している。
【0028】
ラック軸40は、ラックが形成された図2の右側の中実軸41と、ラックが形成されていない図2の左側の中空軸42を摩擦溶接で接合して形成され、中実軸41と中空軸42との接合部に係合凸部43が形成されている。係合凸部43は、ラック軸40のピニオン側端部と反ピニオン側端部との間の軸方向位置に形成され、中実軸41及び中空軸42よりも大径の円盤状に形成されている。
【0029】
従って、運転者がステアリングホイール101を回転し、ラック軸40が左側に移動すると、ピニオン側ハウジング10の右端の当接面14に右側のボールジョイントソケット51が当接して、ラック軸40の反ピニオン側への移動端が規制される。
【0030】
また、運転者がステアリングホイール101を回転し、ラック軸40が右側に移動すると、ピニオン側ハウジング10の左端の当接面15にラック軸40の係合凸部43が当接して、ラック軸40のピニオン側への移動端が規制される。
【0031】
本発明の実施例1では、ラック軸40が移動端で当接した時の荷重を、ピニオン側ハウジング10の左右両端で支持するようにしている。従って、大きな強度が必要な部分を、車幅方向の長さが短いピニオン側ハウジング10に限定することが可能となるため、材料が軽量化されるとともに、加工が容易になるため、製造コストを低減することが可能となる。
【0032】
本発明の実施例1の中間筒部30は、ラック軸40が移動端で当接した時の荷重を受けず、車輪からのラジアル方向の操舵反力をあまり受けないため、ラック軸40の防水防塵機能に限定することが可能となる。そのため、薄肉で軽量な合成樹脂を使用することが可能となり、材料費が安く、二次加工が不要なため加工費を軽減することができる。
【実施例2】
【0033】
図3は本発明の実施例2のステアリング装置のステアリングギヤの要部を示す一部を断面した正面図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。実施例2は実施例1の変形例であって、中間筒部30の材質を柔軟な材質にした例である。
【0034】
実施例2のステアリングギヤ103は、実施例1と同様に、図3の右側のピニオン側ハウジング10、図3の左側の反ピニオン側ハウジング20、ピニオン側ハウジング10と反ピニオン側ハウジング20を接続する中間筒部30を備えている。ピニオン側ハウジング10と反ピニオン側ハウジング20はアルミニウム合金等の金属を鋳造して成形されている。
【0035】
中空円筒状の中間筒部30はゴムを使用し、射出成形やブロー成型で成形している。ピニオン側ハウジング10の左端の円筒部16の外周に、中間筒部30の内周35の右端を外嵌し、バンドまたはワイヤーで締め付けて、ピニオン側ハウジング10と中間筒部30との接続部の気密性を保持し、ピニオン側ハウジング10に中間筒部30の右端を固定している。ピニオン側ハウジング10の左端の円筒部16の外周にシール剤を兼ねた接着剤を塗布した後、中間筒部30の内周35の右端を外嵌し、ピニオン側ハウジング10に中間筒部30の右端を接着して固定してもよい。
【0036】
また、反ピニオン側ハウジング20の内周面に、フランジ部を有するブッシュホルダー37が弾性部材製のダンパー34を介して固定されている。このブッシュホルダー37の外周の右端側に、中間筒部30の内周35の左端を外嵌し、バンドで締め付けて、ブッシュホルダー37と中間筒部30との接続部の気密性を保持し、ブッシュホルダー37に中間筒部30の左端を固定している。
【0037】
中間筒部30の全長または一部を、伸縮可能な蛇腹形状にしてもよい。蛇腹を形成すれば、各部の製造誤差を蛇腹が伸縮して吸収し、ピニオン側ハウジング10及び反ピニオン側ハウジング20を車体フレームに取り付ける作業が容易になる。また、蛇腹が伸縮するため、取り付け孔131、211をラック軸40の軸方向に長い長孔にする必要がなく、取り付け孔131、211が単純な丸孔で済む。また、ラック軸40の長さが異なるモデルであっても、中間筒部30の全長を柔軟に伸縮させることにより、共通に使用することが可能となる。
【0038】
中間筒部30の内周35には、図3の左右方向に摺動可能にラック軸40が内嵌している。ブッシュホルダー37の内周には、軸受ブッシュ36が内嵌され、ラック軸40の左端を摺動可能に軸支している。ラック軸40の左右両端にはボールジョイントソケット51、52が各々形成され、、ボールジョイントソケット51、52に連結されたタイロッド104、104が、図示しないナックルアームを介して車輪に接続されている。ボールジョイントソケット51、52は、ラック軸40よりも大径に形成されている。ボールジョイントソケット51、52は、防水と防塵のために、蛇腹状のボールジョイントブーツ53、54で覆われている。このボールジョイントブーツ53、54と蛇腹状に形成した中間筒部30を一体的に形成してもよい。
【0039】
ピニオン側ハウジング10には、ピニオン挿入用の円柱状ボス12が一体的に形成され、このピニオン挿入用の円柱状ボス12に挿入されたピニオン軸107の下端には、ラック軸40に噛み合う図示しないピニオンが形成されている。ピニオン軸107の上端は、ステアリングホイール101に連結された図1の中間シャフト106の下端に連結されている。
【0040】
運転者がステアリングホイール101を回転すると、ピニオン軸107のピニオンが回転し、ピニオンの回転に応じて、ラック軸40が左右に摺動して、車輪の操舵角を変えることができる。
【0041】
ピニオン側ハウジング10及び反ピニオン側ハウジング20には、車体取り付け用ボス部13、13、21、21が各々形成されている。車体取り付け用ボス部13、13、21、21には、円形の取り付け孔131、211が車体上下方向(図3の紙面に直交する方向)に各々一箇所形成されている。
【0042】
取り付け孔131、211に図示しないボルトを挿入し、このボルトを車体フレームに締め付けることで、ピニオン側ハウジング10及び反ピニオン側ハウジング20は車体フレームにリジッド構造(剛体構造)で取り付けられている。本発明の実施例2の中間筒部30はゴムで形成され、車輪からの操舵反力を支持することができない。従って、金属製のピニオン側ハウジング10及び反ピニオン側ハウジング20を車体フレームにリジッド構造で取り付け、車輪からの操舵反力は、ピニオン側ハウジング10及び反ピニオン側ハウジング20が支持する。反ピニオン側ハウジング20は、軸受ブッシュ36に加わるラジアル荷重を、ブッシュホルダー37及び弾性部材製のダンパー34を介して支持している。
【0043】
ラック軸40は、ラックが形成された図3の右側の中実軸41と、ラックが形成されていない図3の左側の中空軸42を摩擦溶接で接合して形成され、中実軸41と中空軸42との接合部に係合凸部43が形成されている。係合凸部43は、ラック軸40のピニオン側端部と反ピニオン側端部との間の軸方向位置に形成され、中実軸41及び中空軸42よりも大径の円盤状に形成されている。
【0044】
従って、運転者がステアリングホイール101を回転し、ラック軸40が左側に移動すると、ピニオン側ハウジング10の右端の当接面14に右側のボールジョイントソケット51が当接して、ラック軸40の反ピニオン側への移動端が規制される。
【0045】
また、運転者がステアリングホイール101を回転し、ラック軸40が右側に移動すると、ピニオン側ハウジング10の左端の当接面15にラック軸40の係合凸部43が当接して、ラック軸40のピニオン側への移動端が規制される。
【0046】
本発明の実施例2では、ラック軸40が移動端で当接した時の荷重を、ピニオン側ハウジング10の左右両端で支持するようにしている。従って、大きな強度が必要な部分を、車幅方向の長さが短いピニオン側ハウジング10に限定することが可能となるため、材料が軽量化されるとともに、加工が容易になるため、製造コストを低減することが可能となる。
【0047】
本発明の実施例2の中間筒部30は、ラック軸40が移動端で当接した時の荷重を受けず、車輪からの操舵反力を支持する必要がないため、ラック軸40の防水防塵機能だけに限定することが可能となる。そのため、薄肉軽量で柔軟性のあるゴムを使用することが可能となり、材料費が安く、二次加工が不要なため加工費を軽減することができる。
【0048】
図4から図9に、ラック軸に形成された係合凸部の変形例を示す。図4は中実軸よりも大径の中空軸に中実軸を溶接し、別部品の係合凸部を固定した例である。図4に示すように、大径の中空軸42の内周421に中実軸41を内嵌し、中空軸42の右端面422と中実軸41の外周411を溶接して固定する。次に、中実軸41の外周411に別部品の係合凸部43の内周431を外嵌した後、係合凸部43を中実軸41の外周411にかしめ加工して固定する。係合凸部43の右端面の凹部432に、弾性部材製のダンパー433を取り付けている。
【0049】
ラック軸40が右側に移動し、ピニオン側ハウジング10の左端の当接面15に、弾性部材製のダンパー433を介して係合凸部43が当接するため、当接時の衝撃荷重が緩和される。従って、ラック軸40やピニオン軸107等の部品を小型軽量化することが可能となる。
【0050】
図5は右端側を拡径した中空軸に中実軸を溶接し、別部品の係合凸部を固定した例である。図5に示すように、中空軸42の左側を小径中空部423にし、右端側だけに大径中空部424を形成する。大径中空部424の内周4241に中実軸41を内嵌し、大径中空部424の右端面4242と中実軸41の外周411を溶接して固定する。次に、中実軸41の外周411に別部品の係合凸部43の内周431を外嵌した後、係合凸部43を中実軸41の外周411にかしめ加工して固定する。
【0051】
中空軸42は、ラック軸402が移動端で当接した時の荷重を受けず、車輪からの操舵反力を支持するだけでよいため、小径で薄肉軽量な中空材を使用することが可能となり、材料費が安く、軽量化することができる。
【0052】
図6は中空軸に中実軸を溶接し、中空軸に係合凸部を一体的に形成した例である。図6に示すように、中空軸42の右端にフランジ状に一体的に係合凸部43を形成する。この中空軸42の内周421に、中実軸41左端の小径中実部414を内嵌し、係合凸部43の右端面434と中実軸41の外周411を溶接して固定する。中空軸42に一体的に係合凸部43を形成するため、部品点数が削減されて、製造コストを低減することができる。
【0053】
図7は中実軸の外周に形成した環状溝に、別部品の係合凸部を挿入して固定した例である。図7に示すように、中実軸41の外周411に環状溝412を形成し、この環状溝412に、止め輪状に形成した係合凸部43を挿入して、係合凸部43を中実軸41に固定する。
【0054】
図8は中空軸に中実軸を外嵌して溶接し、中実軸に係合凸部を一体的に形成した例である。図8に示すように、中実軸41の左端にフランジ状に一体的に係合凸部43を形成する。中空軸42の右端に小径中空部425を形成し、中実軸41の左端の内周413に中空軸42の小径中空部425を内嵌する。その後、係合凸部43の左端面435と中空軸42の外周426を溶接して固定する。
【0055】
ラック軸40が右側に移動し、ピニオン側ハウジング10の左端の当接面15に係合凸部43が当接すると、溶接部44が係合凸部43を背後から支持して、係合凸部43の倒れを防止する。従って、係合凸部43の剛性を大きくすることが可能となる。また、中実軸41に一体的に係合凸部43を形成するため、部品点数が削減されて、製造コストを低減することができる。
【0056】
図9は中空軸の端面に中実軸の端面を突き当てて溶接し、中実軸に係合凸部を一体的に形成した例である。図9に示すように、中実軸41の左端にフランジ状に一体的に係合凸部43を形成する。中空軸42の右端面422を係合凸部43の左端面435に突き当てる。その後、係合凸部43の左端面435と中空軸42の外周426を溶接して固定する。
【0057】
ラック軸40が右側に移動し、ピニオン側ハウジング10の左端の当接面15に係合凸部43が当接すると、溶接部44が係合凸部43を背後から支持して、係合凸部43の倒れを防止する。従って、係合凸部43の剛性を大きくすることが可能となる。また、中実軸41に一体的に係合凸部43を形成するため、部品点数が削減されて、製造コストを低減することができる。
【0058】
上記実施例では、コラムアシスト型ラックピニオン式パワーステアリング装置に適用した例について説明したが、ピニオンアシスト型ラックピニオン式パワーステアリング装置やマニュアル型ラックピニオン式ステアリング装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
101 ステアリングホイール
102 モータ
103 ステアリングギヤ
104 タイロッド
105 コラム
106 中間シャフト
107 ピニオン軸
10 ピニオン側ハウジング
11 雌ねじ
12 円柱状ボス
13 車体取り付け用ボス部
131 取り付け孔
14 当接面
15 当接面
16 円筒部
20 反ピニオン側ハウジング
21 車体取り付け用ボス部
211 取り付け孔
30 中間筒部
31 雄ねじ
32 Oリング
33 フランジ部
34 ダンパー
35 内周
36 軸受ブッシュ
37 ブッシュホルダー
40 ラック軸
41 中実軸
411 外周
412 環状溝
413 内周
414 小径中実部
42 中空軸
421 内周
422 右端面
423 小径中空部
424 大径中空部
4241 内周
4242 右端面
425 小径中空部
426 外周
43 係合凸部
431 内周
432 凹部
433 ダンパー
434 右端面
435 左端面
44 溶接部
51、52 ボールジョイントソケット
53、54 ボールジョイントブーツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトの下端に取り付けられたピニオンの回転で往復移動するラック軸を摺動可能に内嵌し、タイロッドを介して車輪の操舵角を変えるステアリングギヤ、
上記ステアリングギヤのピニオン側端部に形成され、上記ラック軸のピニオン側端部を摺動可能に軸支し、車体フレームに固定可能な金属製のピニオン側ハウジング、
上記ラック軸のピニオン側端部にラック軸よりも大径に形成され、上記ピニオン側ハウジングの一端に当接してラック軸の反ピニオン側への移動端を規制するボールジョイントソケット、
上記ラック軸のピニオン側端部と反ピニオン側端部との間の軸方向位置にラック軸よりも大径に形成され、上記ピニオン側ハウジングの他端に当接してラック軸のピニオン側への移動端を規制する係合凸部を備えたこと
を特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたステアリング装置において、
上記ステアリングギヤの反ピニオン側端部に形成され、上記ラック軸の反ピニオン側端部を摺動可能に軸支し、車体フレームに固定可能な金属製の反ピニオン側ハウジング、
上記ラック軸の中間部を覆う中空円筒部を有し、一端が上記ピニオン側ハウジングに接続され他端が上記反ピニオン側ハウジングに接続されて、合成樹脂またはゴムで成形された中間筒部を備えたこと
を特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたステアリング装置において、
上記反ピニオン側ハウジングは上記ラック軸の反ピニオン側端部を弾性部材を介して摺動可能に軸支していること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項2に記載されたステアリング装置において、
上記ラック軸は、
ラックが形成された中実軸とラックが形成されていない中空軸を接合して形成され、
上記中実軸と中空軸との接合部に上記係合凸部が形成されていること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
請求項2に記載されたステアリング装置において、
上記係合凸部には、上記ピニオン側ハウジングの他端との当接面に弾性部材製のダンパーが取り付けられていること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
請求項2に記載されたステアリング装置において、
上記中間筒部が上記ラック軸の軸方向に伸縮可能であること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたステアリング装置において、
上記中間筒部の一端とピニオン側ハウジング、及び中間筒部の他端と反ピニオン側ハウジングとの接続部がバンドまたはワイヤーで固定されていること
を特徴とするステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−240563(P2012−240563A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113242(P2011−113242)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】