説明

スティック状包装袋

【目的】それほど力を加えることなく開封可能なスティック状包装袋を提供する。
【構成】スティック状包装袋1の正面2A(背シール部4が形成された背面2Bと反対側の面)において,長手方向の中央部付近に,幅方向のほぼ中央で接する弧状の2つの切込み5L,5Rが入れられている。スティック状包装袋1の端部を持ち,その中央部付近に背面から力を加えると,切込み5L,5Rが破れ,スティック状包装袋1を開封できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は包装袋,特に細長いスティック状の包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
スティック状包装袋には,たとえばインスタント・コーヒー粉末,砂糖などが,一般には一人分の容量で小分けされて封入される。
【0003】
紙を素材とするスティック状包装袋は,典型的には包装袋の一端部付近を引裂く(ひきちぎる)ことによって開封される。しかしながら,樹脂(ポリエチレン,ポリプロピレン等)を素材とするスティック状包装袋の場合,紙を素材とする包装袋と比べて引裂くのは必ずしも容易ではない。このため,スティック状包装袋の一端部にミシン目を形成する(特許文献1),包装袋の一端部に熱処理を施す(特許文献2,3)など,開封を容易にするための提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−305952号公報
【特許文献2】実開昭59−87445号公報
【特許文献3】特開2002−103328号公報
【0005】
しかしながら,特許文献1〜3に記載の包装袋は,いずれも一方の手(たとえば左手)で包装袋を掴み,他方の手の指(たとえば右手の親指と人差指)で包装袋の端部を摘んで開封するので,ある程度の指の力(親指と人差指とで物を摘む力)が必要とされる。
【発明の開示】
【0006】
この発明は,それ程の力を必要とすることなく開封可能なスティック状包装袋を提供することを目的とする。
【0007】
この発明はまた,スティック状包装袋の開封に伴なって生じるゴミ(切れ端)を無くすことを目的とする。
【0008】
この発明によるスティック状包装袋は,帯状フィルムを筒状に背貼りし,かつ両端開口を閉じたものであって,上記帯状フィルムが複数層の積層構造で,上記背貼りされている面とは反対側の面の長手方向の中央部付近に,幅方向にのびる一または複数の切込みが,少なくとも最内層を除き,少なくとも最外層を含む層に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
帯状フィルムを筒状に背貼りして形成される筒状体(背貼りにより貼合わされ外方に突出した部分を背貼りシール部または背シール部という)をやや扁平にして,筒状体の全周面を,背シール部を中心とする面(これを背面または裏面という)と,これとは反対側の面(これを正面または表面という)の2つの等しい面積の面に分けて考えることができる。筒状体の両端開口は正面と背面とを溶着または接着して閉じられる。帯状フィルムは複数層の積層構造である。一般には異なる種類の複数層の合成樹脂層から構成されるが,金属薄膜層,金属酸化物薄膜層,その他の合成樹脂以外の材料による層が介装されることがある。背シール部がのびる方向(閉じた両端を結ぶ方向)が長手方向,これに垂直な方向が幅方向である。製品としてのスティック状包装袋内には当然に内容物が封入(充填)されている。
【0010】
このようなスティック状包装袋の正面の長手方向中央部付近に,その幅方向にのびる一または複数の切込みが形成される。切込みは後述するように一直線状のみならす,弧状の部分,折れ線の部分を含んでいてもよいが,スティック状包装袋の正面のほぼ全幅にわたっている(全幅よりも少し短くてもよいが,背面まで及んでいることは必ずしも必要ない)。これらの切込みは,複数層の層構造のうち,最も内側の層までは達していない。これによって内容物が出ることはない。切込みは最も外側の層には形成されていなければならない。一実施態様では,上記切込みは,レーザー加工,たとえば炭酸ガスレーザー加工によって形成される。
【0011】
このようなスティック状包装袋を開封して内容物を取出すには,スティック状包装袋の両端部を両手でそれぞれ持つ。一般には背シール部のある背面を上に向け,切込みがある正面を下に向ける。そうして,スティック状包装袋の背面中央部付近を指で押すか,スティック状包装袋をその正面側が凸状になるように折り曲げるか,または上記の動作を同時に行うことにより,スティック状包装袋の正面側が長手方向に緊張するから,切込み部分でスティック状包装袋が破れる。スティック状包装袋から内容物が外に出る。
【0012】
この発明によると,スティック状包装袋の両端部を持って折り曲げるか,中央部に力を加えるだけで,開封することができる(指の力がある人は片手でも開封できる)。スティック状包装袋の一部を摘んで引き裂く場合に比べれば,小さな力でスティック状包装袋を開封することができる。また,スティック状包装袋が切込みの部分で破かれて開封されるので,スティック状包装袋から切れ端がでず,ゴミを減らすことができる。
【0013】
スティック状包装袋の両端部のいずれかの近くに切込みがあると,スティック状包装袋の折曲げ(開封)が難しくなるので,切込みは,スティック状包装袋の長手方向の中央部付近に形成されている。この趣旨から考えれば,切込みは厳密に中央(スティック状包装袋の両端から等距離の位置)でなくてもよく,その近傍(中央部付近)にあればよい。
【0014】
2つの切込みが形成される場合,好ましくは,これらの切込みは上記幅方向(上記長手方向に垂直な方向)に関して線対称に形成される。スティック状包装袋を開封するときに,切込みに均等に力を配分することができる。
【0015】
一実施態様では,2つの切込みが形成される場合,これらの切込みは上記幅方向の中央付近において接している。スティック状包装袋の正面の長手方向の中央でかつ幅方向の中央において,ほぼ確実にスティック状包装袋を開封することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)はスティック状包装袋の正面図を,(B)はその背面図をそれぞれ示す。
【図2】スティック状包装袋を構成するフィルム材の拡大端面図を示す。
【図3】スティック状包装袋を開封する様子を示す。
【図4】スティック状包装袋を開封する様子を示す。
【図5】スティック状包装袋を構成するフィルム材の他の実施例の拡大端面図を示す。
【図6】スティック状包装袋を構成するフィルム材の他の実施例の拡大端面図を示す。
【図7】スティック状包装袋を構成するフィルム材の他の実施例の拡大端面図を示す。
【図8】切込み形状が異なる,他の実施例のスティック状包装袋の正面図を示す。
【図9】切込み形状が異なる,他の実施例のスティック状包装袋の正面図を示す。
【図10】切込み形状が異なる,他の実施例のスティック状包装袋の正面図を示す。
【実施例】
【0017】
図1(A)はスティック状包装袋1の正面を,図1(B)はその背面をそれぞれ示している。図2は,スティック状包装袋1を構成するフィルム材の図1(A)のII−II線に沿う拡大端面図である。
【0018】
スティック状包装袋1は,帯状のフィルム材(シート材)の長手方向の両側縁同士を貼り合わせて(溶着,接着)筒状体を形成し,この筒状体の両端部をそれぞれ貼り合わせる(溶着,接着)ことによってつくられる。フィルム材の両側縁を貼り合わせて形成された部分を背シール部4という。また,筒状体の張り合わせて閉じられた両端部を,符号3L,3Rで示す。両端部3L,3Rを貼り合わせるときに筒状体は扁平になる。この扁平になった状態において,筒状体の全周面を2つに分けて考え,一方の面を正面(表面)2A,他方の面を背面(裏面)2Bとする。そして,背シール部4は背面2Bにおいて幅方向の中央にくるようにする。逆に言えば,上記のような正面2Aと背面2Bとを重ね合わせて両端部3L,3Rを貼り合わせることになる。
【0019】
スティック状包装袋1の製造および内容物の封入工程においては,フィルム材の長手方向両側縁を貼り合わせて筒状体を形成した後,鉛直に配置して筒状体の下端部(たとえば端部3L)を貼り合わせて下端開口を閉じ,上端開口から筒状体内に内容物を入れ,その後,筒状体の上端開口を貼り合わせて閉じる(たとえば端部3Rを形成する)ことによって,内容物が封入されたスティック状包装袋1が完成する。スティック状包装袋1には粉状,粒状または液状の内容物が封入される。
【0020】
図2を参照して,スティック状包装袋1を構成するフィルム材は,最外樹脂層11,最内樹脂層13,これらの間に挟まれたバリア層(中間層)12からなる3層構造を持つ。最外樹脂層11にはPET(ポリエチレンテレフタラート),ONY(延伸ナイロン)などが用いられる。最内樹脂層13にはLLDPE(リニア低密度ポリエチレン),CPP(無延伸ポリプロピレン)などが用いられる。バリア層12には,AL(アルミニウム),VMPET(金属蒸着ポリエチレンテレフタラート),EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体),透明蒸着PETなどが用いられる。
【0021】
このようなスティック状包装袋1の正面2Aに,切込み5L,5Rが入れられている。スティック状包装袋1の背面2Bに切込みはない。切込み5L,5Rはスティック状包装袋1の正面2Aの長手方向のほぼ中央において,互いの方向に凸となる弧状の形状を持って形成され,スティック状包装袋1の正面2Aの幅方向のほぼ全幅にわたってのびている。2つの弧状の切込み5L,5Rの頂点がスティック状包装袋1の幅方向のほぼ中央において接しており,スティック状包装袋1の幅方向に関して2つの切込み5L,5Rは線対称である。切込み5L,5Rの形成は,上記のスティック状包装袋1の製造および内封物の封入工程において,背シール部4を形成する前,背シール部4を形成した後,または下端部(3L)を貼り合わせた後(内容物の封入前)に行うことが好ましい。
【0022】
スティック状包装袋1に用いられるフィルム材を構成する樹脂層の素材(種類)および積層数,ならびにバリア層の有無および素材は,スティック状包装袋1に封入される内容物の特性に応じて,透明性,防湿性,酸素透過度,ガス遮断性,光遮断性等の観点から適宜決定される。
【0023】
フィルム材の最外樹脂層11に2つの切込み5L,5Rがいれられている。最外樹脂層11の下層のバリア層12および最内樹脂層13に,切込み5L,5Rはいれられていない。切込み5L,5Rは,レーザー,たとえば炭酸ガスレーザーを最外樹脂層11の表面に照射して最外樹脂層11の表面を融解することによっていれられる。切込み5L,5Rの形成に用いられるレーザーの種類(波長)は,切込み5L,5Rをいれる最外樹脂層11に用いられている樹脂素材に応じて選択される。
【0024】
図3および図4はスティック状包装袋1を開封する様子を示している。開封面,すなわちスティック状包装袋1の正面2Aを下に向け,背シール部4のある背面2Bを上に向け,スティック状包装袋1の両端部を両手でそれぞれ持ち,背面2Bの中央部付近を指で押しながら,その正面2A側が凸状になるように折り曲げる(図3)。スティック状包装袋1の背面2Bの中央部付近が指で下方に押されるので,その押圧力はスティック状包装袋1の内容物を通してその正面2A側に加わり,スティック状包装袋1がその正面2A側が凸状になるように折り曲げられることにより正面2A側に張力が働き(テンションがかかり),遂には,切込み5L,5Rの部分でスティック状包装袋1が破れ,スティック状包装袋1から内容物が外に出る(図4)。スティック状包装袋1の両端部を両手でそれぞれ持った状態で,背面2Bの中央部付近を指で下方に押すだけでも(結果的にスティック状包装袋1は正面2A側が凸状になるように折れ曲がる),またはスティック状包装袋1をその正面2A側が凸状になるように折り曲げるだけでも,スティック状包装袋1をその切込み5L,5Rの部分で開封できる場合もある。
【0025】
スティック状包装袋1は,中央部に力を加えるか,その両端部を持って折り曲げるだけで開封することができる。スティック状包装袋1の一部を摘んで引き裂く場合に比べれば,小さな力でスティック状包装袋1を開封することができる。また,スティック状包装袋1は切込み5L,5Rの部分で破かれて開封されるので,スティック状包装袋1から切れ端がでず,ゴミを減らすことができる。
【0026】
図5から図7は,スティック状包装袋1を構成するフィルム材の他の実施例を,図2に相当する拡大端面によって示している。
【0027】
図5に示すフィルム材は最外樹脂層11および最内樹脂層13の2層構造のもので,バリア層12(図2参照)を持たないタイプのものである。切込み5L,5Rは最外樹脂層11に形成され,最内樹脂層13に切込みは形成されない。
【0028】
図6および図7にはバリア層12を含む4層構造のフィルム材が示されている。図6に示すフィルム材ではバリア層12の外側表面に2種類の樹脂層11a,11b(PETおよびONY,PETおよびPEなど)が積層されており,図7に示すフィルム材ではバリア層12の内側表面に2種類の樹脂層13a,13b(ONYおよびLLDPE,ONYおよびCPP,PEおよびLLDPEなど)が積層されている。
【0029】
バリア層12を含むフィルム材の場合には,最も内側の樹脂層のみならず,一般にはバリア層12にも切込みは入れられない。バリア層12および最も内側の樹脂層13にいれなければ,切込み5L,5Rは最も外側の樹脂層のみならず二層目にわたっていれてもよい。図6に示すフィルム材では,最も外側の樹脂層11aのみならず,二層目の樹脂層11bにまでわたって,切込み5L,5Rが入れられている。図7に示すフィルム材では,最外樹脂層11にのみ切込み5L,5Rが入れられている。
【0030】
図8から図10は,切込み形状が異なる他の実施例のスティック状包装袋の正面を示している。
【0031】
図8を参照して,スティック状包装袋1Aの正面には,直線状の1本の切込み6がいれられている。切込み6はスティック状包装袋1Aの長手方向のほぼ中央に,幅方向のほぼ全幅にわたって,幅方向(長手方向に垂直な方向)にのびるように形成されている。
【0032】
図9を参照して,スティック状包装袋1Bの正面2Aには,折れ線状の2つの切込み7L,7Rが形成されている。切込み7L,7Rも,スティック状包装袋1Bの長手方向のほぼ中央に位置し,幅方向の全幅にわたって形成されている。2つの折れ線状切込み7L,7Rの頂点がスティック状包装袋1Bの幅方向のほぼ中央において接しており,スティック状包装袋1Bの幅方向に関して2つの切込み7L,7Rは線対称である。これは,別の表現をすれば,2つの直線状の切込みが×字状に交差しているということもできる。
【0033】
図10を参照して,スティック状包装袋1Cの正面2Aには,2つの切込み8L,8Rが入れられている。切込み8L,8Rもスティック状包装袋1Cの長手方向のほぼ中央に位置し,幅方向の全幅にわたって形成されている。切込み8L,8Rは互いの方向に凸となる弧状部分と,弧状部分の両端から幅方向にのびる直線状部分を持つ。切込み8L,8Rも,スティック状包装袋1Cの幅方向のほぼ中央において弧状部分の頂点が互いに接しており,幅方向に関して線対称である。
【0034】
図8から図10に示す形状の切込みを持つスティック状包装袋1A〜1Cについても,その両端部を持って折り曲げるか,中央部に力を加えるだけで開封することができる。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,1B,1C スティック状包装袋
5L,5R,6,7L,7R,8L,8R 切込み
11 最外樹脂層
12 バリア層
13 最内樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状フィルムを筒状に背貼りし,かつ両端開口を閉じたスティック状包装袋において,
上記帯状フィルムが複数層の積層構造で,上記背貼りされている面とは反対側の面の長手方向の中央部付近に,幅方向にのびる一または複数の切込みが,少なくとも最内層を除き,少なくとも最外層を含む層に形成されていることを特徴とする,スティック状包装袋。
【請求項2】
2つの切込みが形成され,これらの切込みは上記幅方向に関して線対称に形成されている,請求項1に記載のスティック状包装袋。
【請求項3】
2つの切込みが形成され,これらの切込みは上記幅方向の中央付近において接している,請求項1または2に記載のスティック状包装袋。
【請求項4】
上記2つの切込みは弧状部分または折れ線部分を含む,請求項2または3のいずれか一項に記載のスティック状包装袋。
【請求項5】
上記切込みはレーザー加工によって形成されている,請求項1から4のいずれか一項に記載のスティック状包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−46393(P2011−46393A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195040(P2009−195040)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】