説明

ステレオ画像作成方法及び3次元データ作成装置

【課題】
ステレオ画像の作成、関連付けを容易にし、又ステレオ画像に基づく3次元測定作業の簡略化を図る。
【解決手段】
視準方向の画像を取得する撮像手段11と、視準点の測距、測角が可能な測距測角手段12,13,14を具備する測量装置を用い、該測量装置を既知点に設置して少なくとも3の視準点について測距、測角を行い、次に前記測量装置を未知点に設置して前記3の視準点について測角を行い、前記3の視準点の測量データから前記未知点の座標を演算し、前記3の視準点の少なくとも1つについては既知点、未知点それぞれから画像を取得し、前記既知点の座標データ、測距データ、測角データ、前記未知点の演算した座標データ、及び測角データに基づき前記既知点と未知点の画像からステレオ画像を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は対象物を少なくとも2方向から撮像し、複数の撮像画像からステレオ画像を作成する方法、及びステレオ画像と測定データとを関連付けステレオ画像に基づき3次元データを作成する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステレオ画像は対象物を立体的に捕える画像であり、同一対象物を撮影方向を変えて撮影して得られた画像である。それぞれの画像上の点を関連付けることで、画像を構成する点の3次元データを求めることができる。
【0003】
ステレオ画像から3次元データを得る為には、2つの画像の対応付け(ステレオマッチング)が必要であり、又ステレオマッチングを可能とする条件(外部標定要素)が必要である。外部標定要素としては、2つの撮影箇所(カメラ位置)の3次元データ、撮影方向、傾き、倍率等が必要である。
【0004】
2つの画像のステレオマッチングを行うには、左右のカメラ間の基線ベクトルに対する左右のカメラの相対的な回転、即ち相互標定要素が必要であり、該相互標定要素は前記外部標定要素を基に算出される。
【0005】
従来、ステレオ画像を作成する場合は、既知の2つの地点からカメラにより対象物を撮像し、相互標定要素の算出に必要な外部標定要素を求める為、対象物に基準点を設置し、基準点を別途トータルステーション等で計測し、基準点の3次元位置情報に基づきカメラの位置、傾きが求められていた。
【0006】
この為、ステレオ画像を求める写真測量と、写真測量後、画像内に基準点(パスポイント)を設定し、該基準点を画像を撮像した既知の2地点からそれぞれトータルステーション等の測量機による測定が必要であり、而もパスポイントは6以上を必要とする等、煩雑な測定作業となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は斯かる実情に鑑み、相互標定作業を簡略化し、ステレオ画像の作成も関連付けを容易にし、又ステレオ画像に基づく3次元測定作業の簡略化を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、視準方向の画像を取得する撮像手段と、視準点の測距、測角が可能な測距測角手段を具備する測量装置を用い、該測量装置を既知点に設置して少なくとも3の視準点について測距、測角を行い、次に前記測量装置を未知点に設置して前記3の視準点について測角を行い、前記3の視準点の測量データから前記未知点の座標を演算し、前記3の視準点の少なくとも1つについては既知点、未知点それぞれから画像を取得し、前記既知点の座標データ、測距データ、測角データ、前記未知点の演算した座標データ、及び測角データに基づき前記既知点と未知点の画像からステレオ画像を作成するステレオ画像作成方法に係り、又少なくとも3の視準点は、既知点と未知点から視準可能であり、既知点と未知点から取得した画像は画像上のずれを基に既知点と未知点からの視準点が一致されるステレオ画像作成方法に係り、又既知点と未知点から全ての視準点の画像を取得し、それぞれ対応する画像の視準点を一致させるステレオ画像作成方法に係るものである。
【0009】
又本発明は、視準方向の画像を取得する撮像手段と、視準点の測距が可能な測距手段と、視準点の測角が可能な測角手段と、測距データ、測角データ及び撮像画像を記録する記憶部と、制御演算部とを具備し、前記撮像手段は少なくとも3の視準点の少なくとも1つの視準点に対して既知点、未知点からの画像を撮像し、前記制御演算部は既知点の座標データ、既知点からの少なくとも3の視準点の測距データ、測角データ、未知点からの前記3の視準点の測角データを基に未知点の座標データを演算し、既知点の座標データ、測距データ、測角データ、未知点の演算された座標データ、測角データに基づき前記画像からステレオ画像を作成する様構成した3次元データ作成装置に係り、更に又既知点の座標データ、既知点からの少なくとも3の視準点の測距データ、測角データ、未知点の座標データ、測角データを基に2つの前記ステレオ画像の関連付けを行い、関連付けた画像から3次元データを演算する様にした3次元データ作成装置に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、視準方向の画像を取得する撮像手段と、視準点の測距、測角が可能な測距測角手段を具備する測量装置を用い、該測量装置を既知点に設置して少なくとも3の視準点について測距、測角を行い、次に前記測量装置を未知点に設置して前記3の視準点について測角を行い、前記3の視準点の測量データから前記未知点の座標を演算し、前記3の視準点の少なくとも1つについては既知点、未知点それぞれから画像を取得し、前記既知点の座標データ、測距データ、測角データ、前記未知点の演算した座標データ、及び測角データに基づき前記既知点と未知点の画像からステレオ画像を作成するので、写真測量とパスポイントの測量が省略でき、ステレオ画像の作成が大幅に簡略化できる。
【0011】
又本発明によれば、視準方向の画像を取得する撮像手段と、視準点の測距が可能な測距手段と、視準点の測角が可能な測角手段と、測距データ、測角データ及び撮像画像を記録する記憶部と、制御演算部とを具備し、前記撮像手段は少なくとも3の視準点の少なくとも1つの視準点に対して既知点、未知点からの画像を撮像し、前記制御演算部は既知点の座標データ、既知点からの少なくとも3の視準点の測距データ、測角データ、未知点からの前記3の視準点の測角データを基に未知点の座標データを演算し、既知点の座標データ、測距データ、測角データ、未知点の演算された座標データ、測角データに基づき前記画像からステレオ画像を作成する様構成したので、写真測量に必要な装置とトータルステーション等の測量装置が必要なく、単一の装置による測定作業でよく、又測定作業自体も大幅に簡略化できるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0013】
先ず、図1に於いて本発明に係る測量装置について概略を説明する。図1は該測量装置の本体部1を示している。
【0014】
該本体部1は主に、三脚(図示せず)に取付けられる整準部2、該整準部2に設けられた基盤部3、該基盤部3に鉛直軸心を中心に回転可能に設けられた托架部4、該托架部4に水平軸心を中心に回転可能に設けられた望遠鏡部5から構成されている。
【0015】
前記托架部4は表示部6、操作部7を具備し、前記望遠鏡部5は、測定対象物8(図2参照)を視準する視準望遠鏡9と、該視準望遠鏡9に対して平行な光軸を有し、視準方向の画像を撮像する撮像部11を有している。該撮像部11は、例えば内蔵されたデジタルカメラ等であり、該デジタルカメラの撮像素子としてはCCD等の画像センサが用いられる。
【0016】
図2により、前記本体部1の基本構成について説明する。
【0017】
前記托架部4には前記望遠鏡部5の鉛直角を検出し、視準方向の鉛直角を測角する鉛直角測角部12が設けられ、又前記托架部4の前記基盤部3に対する回転角を検出し、視準方向の水平角を検出する水平角測角部13が設けられる。又、前記望遠鏡部5には測距光学系を含む測距部14が設けられている。該測距部14は、発光部15から発した測距光が測定対象物8で反射され、受光部16で受光した際の位相差、或は時間差を求めて測定対象物8迄の測距を行う。前記托架部4には更に制御演算部17、画像処理部18、記憶部19等から構成される制御装置が内蔵されている。
【0018】
該記憶部19には測量に必要な計算プログラム例えば後方交会による座標計算プログラムが格納され、或は後述する画像処理或は画像情報の取得に必要な画像処理プログラムが格納されている。前記制御演算部17には前記画像処理部18からの画像信号、前記測距部14、前記鉛直角測角部12、前記水平角測角部13からの測定結果が入力され、視準方向の画像の取得、距離測量、鉛直角、水平角の測量が行われると共に画像信号、測量結果は前記記憶部19に記録されると共に前記表示部6に表示される様になっている。
【0019】
上記測量装置を用いたステレオ画像作成方法及び3次元データ作成方法について、図3〜図6を参照して説明する。
【0020】
既知点、即ち地上座標系の3次元データが既知の点(A地点)に測量装置21を設置し(STEP:01)、ステレオ画像を作成する測定対象物を視準し、視準可能な視準点P1 の測距、測角を実施する。測角は、水平角は基準方向D0 、例えば方位角を基準とした測角を行い、鉛直角は例えば水平角を基準とした測角を行う。測距、測角の実施と共に視準点P1 を含む視準方向の所要範囲の画像を前記撮像部11により撮像する。
【0021】
次に、前記測量装置21により、任意に選択した既知点P2 、既知点P3 に対して測距、測角を実施する(STEP:02)。尚、既知点P2 、既知点P3 は測定対象内であっても、それ以外の位置であってもよい。図3は測定対象外にある場合を示している。
【0022】
未知点(求点)Bに前記測量装置21を移動し(STEP:03)、前記視準点P1 、及び既知点となった前記点P2 、前記点P3 を視準し、3点P1 、P2 、P3 に対する測角を実施し、任意の点、例えば前記点P1 について前記撮像部11により画像を取得する。A地点で撮像したP1 に関する像P1Aと、B地点で撮像したP1 に関する像P1Bとを一対の画像(以下左右の画像)として前記記憶部19に記録する(STEP:04)。
【0023】
尚、図5に見られる様に、A地点からP1 を視準した場合の画像P1Aと、B地点からP1 を視準した場合の画像P1Bとを比較すると、両画像の光軸(画像中心:A地点からの画像中心a(Xa,Ya)とB地点からの画像中心b(X0,Y0))が一致しているとは限らない。画像中心b(X0,Y0)と画像中心a(Xa,Ya)とのずれは画面上より算出でき、演算により画像中心a(Xa,Ya)と画像中心b(X0,Y0)とを一致させることができる。
【0024】
前記制御演算部17が既知点となった前記視準点P1 、前記点P2 、前記点P3 、及び前記視準点P1 、前記点P2 、前記点P3 に対するB地点からの測角データを読込み、これらデータからB地点の座標計算(後方交会)を行い、B地点の3次元座標データが得られる。B地点の座標データは前記画像P1Bに関連付けられて前記記憶部19に記録される(STEP:05)。
【0025】
前記記憶部19から左右の画像の外部標定要素である測量装置(撮像部)の位置、傾きを読込み、該外部標定要素を基に左右の撮像部の相対関係を求める相互標定要素を計算する(STEP:06,STEP:07)。
【0026】
相互標定要素より左右画像を再配列して左右それぞれのステレオ画像を作成する(STEP:08)。
【0027】
更に対応点を抽出して、ステレオ画像のマッチング(左右ステレオ画像の対応付け)を行う(STEP:09)。
【0028】
マッチング後のステレオ画像は画像上の3次元データを含んでおり、例えば画面上の画素を指定することで、画素に対応した3次元データを得ることができる(STEP:10)。
【0029】
更に、既知座標データ、例えば前記視準点P1 の持つ画像上の3次元データと測量して得られた地上での3次元データ(地上座標データ)との関係から画像上の各点についての3次元データを地上座標系のデータに変換する(STEP:11)。
【0030】
次に、大型な建築物等について測量装置の位置を連続的に移動して行うステレオ画像の作成、ステレオ画像に基づく3次元データ作成について、図7により説明する。例えば点P1 、点P2 、点P3 、点P4 は測定対象物を方向を変えて連続的に撮影した画像の測定点であり、少なくとも3点から測量装置の位置を求めることができる。
【0031】
点P1 、点P2 、点P3 それぞれに関してA地点(既知点)、B地点(未知点)から画像を取得する。
【0032】
上記した様に、点P1 、点P2 、点P3 についてA地点から測距、測角を行い、B地点から測角を行い、得られた測量データからB地点の3次元座標データが得られる。従って、B地点が既知点となる。
【0033】
次に、B地点から点P1 、点P3 、点P4 について測距、測角を行い、C地点から点P1 、点P3 、点P4 について測角を行うことで、C地点の座標計算(後方交会)を行う為のデータが得られ、C地点の3次元座標データが得られる。
【0034】
而して、B地点、C地点のから撮像した画像についての外部標定要素が得られ、更に2画像の外部標定要素から相互標定要素が演算され、ステレオ画像、ステレオ画像の関連付け、更に3次元データの作成が可能となる。
【0035】
以上述べた如く、撮像部付の測量装置にて最初の測量点A点を既知点に設定すれば、少なくとも3点からその後は未知の点を順次既知点とすることができ、広範囲のステレオ画像の作成、3次元データの作成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係る測量装置の外観図である。
【図2】同前測量装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に於ける測量作業を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に於ける測量作業を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に於ける2画像の視準点のずれを補正する場合の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に於ける作用を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に於ける他の測量作業を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 本体部
5 望遠鏡部
6 表示部
7 操作部
9 視準望遠鏡
11 撮像部
12 鉛直角測角部
13 水平角測角部
14 測距部
17 制御演算部
19 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視準方向の画像を取得する撮像手段と、視準点の測距、測角が可能な測距測角手段を具備する測量装置を用い、該測量装置を既知点に設置して少なくとも3の視準点について測距、測角を行い、次に前記測量装置を未知点に設置して前記3の視準点について測角を行い、前記3の視準点の測量データから前記未知点の座標を演算し、前記3の視準点の少なくとも1つについては既知点、未知点それぞれから画像を取得し、前記既知点の座標データ、測距データ、測角データ、前記未知点の演算した座標データ、及び測角データに基づき前記既知点と未知点の画像からステレオ画像を作成することを特徴とするステレオ画像作成方法。
【請求項2】
少なくとも3の視準点は、既知点と未知点から視準可能であり、既知点と未知点から取得した画像は画像上のずれを基に既知点と未知点からの視準点が一致される請求項1のステレオ画像作成方法。
【請求項3】
既知点と未知点から全ての視準点の画像を取得し、それぞれ対応する画像の視準点を一致させる請求項2のステレオ画像作成方法。
【請求項4】
視準方向の画像を取得する撮像手段と、視準点の測距が可能な測距手段と、視準点の測角が可能な測角手段と、測距データ、測角データ及び撮像画像を記録する記憶部と、制御演算部とを具備し、前記撮像手段は少なくとも3の視準点の少なくとも1つの視準点に対して既知点、未知点からの画像を撮像し、前記制御演算部は既知点の座標データ、既知点からの少なくとも3の視準点の測距データ、測角データ、未知点からの前記3の視準点の測角データを基に未知点の座標データを演算し、既知点の座標データ、測距データ、測角データ、未知点の演算された座標データ、測角データに基づき前記画像からステレオ画像を作成する様構成したことを特徴とする3次元データ作成装置。
【請求項5】
既知点の座標データ、既知点からの少なくとも3の視準点の測距データ、測角データ、未知点の座標データ、測角データを基に2つの前記ステレオ画像の関連付けを行い、関連付けた画像から3次元データを演算する様にした請求項4の3次元データ作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−170688(P2006−170688A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361068(P2004−361068)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】