説明

ステロイド及びフルオレンカルボン酸エステルを含有する吸入用医薬品

本発明は、ステロイド及び新規な抗コリン作用薬の塩を基礎とした新規な医薬組成物、その製造方法ならびに呼吸器疾患の治療における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ステロイド及び新規な抗コリン作用薬の塩を基礎とした新規な医薬組成物、その製造方法ならびに呼吸器疾患の治療における使用に関する。
(発明の説明)
本発明は、ステロイド及び新規な抗コリン作用薬1の塩を基礎とした新規な医薬組成物、その製造方法ならびに呼吸器疾患の治療における使用に関する。
本発明の範囲において、使用する抗コリン作用薬は式1で表される塩である。
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、X-は1個の負電荷を有するアニオンを示し、好ましくは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、スルフェート、ホスフェート、メタンスルホネート、ニトレート、マレエート、アセテート、シトレート、フマレート、タルトレート、オキサレート、スクシネート、ベンゾエート及びp−トルエンスルホネートからなる群から選択されるアニオンを示す。)
式1の塩は、好ましくは式中のX-が、フッ化物、塩化物、臭化物、4−トルエンスルホネート及びメタンスルホネートからなる群から選択される1個の負電荷を有するアニオンを示し、好ましくは臭化物を示す塩が用いられる。
より好ましくは、式中、X-が塩化物、臭化物及びメタンスルホネートからなる群から選択される1個の負電荷を有するアニオンを示し、好ましくは臭化物を示す式1の塩が用いられる。
式中、X-が臭化物を示す式1の塩が、本発明ではとりわけ好ましい。
驚いたことに、式1の抗コリン作用薬を1種以上のステロイド2と一緒に使用すると、気道の炎症性及び/又は閉塞性疾患の治療において、予期しなかった有利な治療効果をみることができる。
前述の有利な治療効果は、2つの有効成分を単一の有効成分処方にして同時に投与する場合、また、これらを別々の処方にして順次投与する場合のどちらにもみることができる。本発明では2つの有効成分を単一処方にして同時に投与する方が好ましい。
本発明の範囲において、化合物1’に言及する際は塩1に含まれる下記式の薬理学的に有効なカチオンを指すものとする。



【0004】
【化2】

【0005】
本発明の範囲において、式1の化合物において、例えば負電荷のアニオンXが臭化物を表す化合物である場合、「1’−臭化物」と呼ぶこともある。
前記医薬組合せにおいては有効成分が単一調剤中に混合されていてもよいし、または2つの別々の処方に含有されていてもよい。
本発明では、有効成分1及び2を単一調剤中に含む医薬組成物の方が好ましい。
本発明による好ましいステロイド2はコルチコステロイドと呼ぶこともあるが、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プロピオン酸ブチクソコート(butixocort)、RPR−106541、フルニソリド、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド、ロフレポニド、ST−126、デキサメタゾン、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(S)-フルオロメチルエステル及び6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-プロピオニルオキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(S)-(2-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3S-イル)エステルから選択される化合物を指す。
好ましくは、化合物2は、フルニソリド、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド、ロフレポニド、ST−126、デキサメタゾン、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(S)-フルオロメチルエステル及び6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-プロピオニルオキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(S)-(2-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3S-イル)エステルから選択される。より好ましくは、化合物2は、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド及び6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(S)-フルオロメチルエステルから選択される。
【0006】
好ましい組合せの例としては、a)1’−臭化物とブデソニド、b)1’−臭化物とフルチカゾン、とりわけフルチカゾンプロピオン酸エステル、c)1’−臭化物とモメタゾン、例えばモメタゾンのフロン酸エステル、d)1’−臭化物とシクレソニド、e)1’−臭化物と6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(S)-フルオロメチルエステル、f)1’−臭化物と6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-プロピオニルオキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(S)-(2-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3S-イル)エステルが挙げられる。
本発明の範囲においてステロイド2に言及する際は、ステロイドから形成することができる塩又は誘導体も含む。可能な塩又は誘導体の例として、ナトリウム塩、スルホベンゾエート、ホスフェート、イソニコチネート、アセテート、プロピオネート、ニ水素リン酸塩、パルミテート、ピバレート又はフロエートが挙げられる。また、場合によっては、式2の化合物は水和物の形で存在してもよい。また、本発明の範囲においてステロイド2に言及する際は、ジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物又はラセミ体状態の化合物2も含むものである。
本発明の態様の1つは、治療上有効量の1及び2に加えて、医薬的に許容される担体も含む前記医薬組成物に関するものである。本発明の別の態様は、治療上有効量の1及び2の他に医薬的に許容される担体を含まない前記医薬組成物に関するものである。
また、本発明は、炎症性又は閉塞性の気道疾患の治療用として、ステロイド2も含有する医薬組成物を製造するための治療上有効量の塩1の使用に関する。好ましくは、本発明は、喘息又はCOPD治療用の医薬組成物を製造するための前記使用に関する。
【0007】
本発明の範囲において、化合物1及び2は同時に投与してもよいし、あるいは順次投与してもよいが、本発明では化合物1及び2の同時投与が好ましい。
また、本発明は、炎症性又は閉塞性呼吸器疾患、とりわけ喘息又はCOPDの治療のための、塩1及びステロイド2の治療有効量の使用に関するものである。
本発明の有効成分組合せ中で用いることができる有効成分1及び2の比率は様々である。有効成分1及び2は、溶媒和物又は水和物の形で存在してもよい。化合物1及び2の選択によって、様々な化合物の分子量や効力の違いから本発明の範囲内で用いることができる質量比が異なる。本発明の医薬組合せは、概して、カチオン1’及びステロイド2を質量比で1:250〜250:1、好ましくは1:150〜150:1の範囲で含んでいるとよい。1’に加えて、ステロイド2として例えばブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン及びシクレソニドからなる群から選択される化合物を含むとりわけ好ましい医薬組合せにおいて、質量比1’:2はおよそ1:40〜40:1が非常に好ましく、さらに1:30〜30:1の範囲が好ましい。
本発明を限定するものではないが、例えば、本発明による1及び2の好ましい組合せには、カチオン1’及び上記推奨ステロイド2の中の1個が以下の質量比で含まれるとよい。1:20、1:19、1:18、1:17、1:16、1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1。
1と2の組合せを含む本発明の医薬組成物は、通常、1回の投与につき、5〜5000μg、好ましくは10〜2000μg、より好ましくは15〜1000μg、さらに好ましくは20〜800μg、本発明でより好ましいのは30〜700μg、より好ましくは40〜600μg、さらには50〜550μg、より好ましくは40〜500μg、最も好ましくは50〜400μgの投与量中に、1’及び2が一緒に存在するようにして投与する。例えば、本発明の1と2の組合せには、一回の投与での投与量の合計が約35μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg、260μg、265μg、270μg、275μg、280μg、285μg、290μg、295μg、300μg、305μg、310μg、315μg、320μg、325μg、330μg、335μg、340μg、345μg、350μg、355μg、360μg、365μg、370μg、375μg、380μg、385μg、390μg、395μg、400μg、405μg、410μg、415μg、420μg、425μg、430μg、435μg、440μg、445μg、450μg、455μg、460μg、465μg、470μg、475μg、480μg、485μg、490μg、495μg、500μg、505μg、510μg、515μg、520μg、525μg、530μg、535μg、540μg、545μg、550μg、555μg、560μg、565μg、570μg、575μg、580μg、585μg、590μg、595μg、600μg、605μg、610μg等となるように、1’とステロイド2の量が含有される。前記記載の1回の投与での推奨投与量は実際に記載されている数値に限定されるものではないということは当業者であれば明らかである。また、およそ±2.5μgの範囲内の増減、とりわけ小数範囲の増減が含まれることも当業者であれば明らかであろう。このような投与量範囲において、有効成分1’及び2が上記記載の質量比で存在するとよい。
【0008】
本発明の範囲をこれに限定するものではないが、例えば、本発明による1と2との組み合わせにおいて、カチオン1’とステロイド2が1回の投与ごとに以下の量で含まれているとよい。16.5μgの1’と25μgの2、16.5μgの1’と50μgの2、16.5μgの1’と100μgの2、16.5μgの1’と150μgの2、16.5μgの1’と200μgの2、16.5μgの1’と250μgの2、33.0μgの1’と25μgの2、33.0μgの1’と50μgの2、33.0μgの1’と100μgの2、33.0μgの1’と150μgの2、33.0μgの1’と200μgの2、33.0μgの1’と250μgの2、49.5μgの1’と25μgの2、49.5μgの1’と50μgの2、49.5μgの1’と100μgの2、49.5μgの1’と150μgの2、49.5μgの1’と200μgの2、49.5μgの1’と250μgの2、82.5μgの1’と25μgの2、82.5μgの1’と50μgの2、82.5μgの1’と100μgの2、82.5μgの1’と150μgの2、82.5μgの1’と200μgの2、82.5μgの1’と250μgの2、165.0μgの1’と25μgの2、165.0μgの1’と50μgの2、165.0μgの1’と50μgの2、165.0μgの1’と100μgの2、165.0μgの1’と150μgの2、165.0μgの1’と200μgの2、165.0μgの1’と250μgの2、206.2μgの1’と25μgの2、206.2μgの1’と50μgの2、206.2μgの1’と100μgの2、206.2μgの1’と150μgの2、206.2μgの1’と200μgの2、206.2μgの1’と250μgの2、412.5μgの1’と25μgの2、412.5μgの1’と50μgの2、412.5μgの1’と100μgの2、412.5μgの1’と150μgの2、412.5μgの1’と200μgの2、412.5μgの1’と250μgの2。
塩1として臭化物を用い、2は上記の推奨ステロイド中の1つを表す有効成分の組み合わせを、本発明による1と2の好ましい組み合わせとして用いる場合、1回の投与で与えられる前記の一例として挙げた有効成分1’と2の投与量は、以下の1と2の1回の投与量に対応する。20μgの1と25μgの2、20μgの1と50μgの2、20μgの1と100μgの2、20μgの1と150μgの2、20μgの1と200μgの2、20μgの1と250μgの2、40μgの1と25μgの2、40μgの1と25μgの2、40μgの1と50μgの2、40μgの1と100μgの2、40μgの1と150μgの2、40μgの1と200μgの2、40μgの1と250μgの2、60μgの1と25μgの2、60μgの1と50μgの2、60μgの1と100μgの2、60μgの1と150μgの2、60μgの1と200μgの2、60μgの1と250μgの2、100μgの1と25μgの2、100μgの1と50μgの2、100μgの1と100μgの2、100μgの1と150μgの2、100μgの1と200μgの2、100μgの1と250μgの2、200μgの1と25μgの2、200μgの1と50μgの2、200μgの1と100μgの2、200μgの1と150μgの2、200μgの1と200μgの2、200μgの1と250μgの2、250μgの1と25μgの2、250μgの1と50μgの2、250μgの1と100μgの2、250μgの1と150μgの2、250μgの1と200μgの2、250μgの1と250μgの2、500μgの1と25μgの2、500μgの1と50μgの2、500μgの1と100μgの2、500μgの1と150μgの2、500μgの1と200μgの2、500μgの1と250μgの2。
【0009】
本発明の組合せに適切な可能投与量の例を記載したが、これらは1回の投与における投与量を指すと理解すべきである。しかしながら、これらの例によって、本発明の組合せを多数回投与する可能性が排斥されるとして理解すべきではない。医療上の必要性に応じて患者は多数回吸入投与を受けることもできる。一例を挙げると、患者に本発明の組合せを例えば治療日ごとに午前中2〜3回施す(例えば、粉末用吸入器、MDI等を用いて2〜3回吸入)ことができる。前記記載の投与量例は、1回の投与(即ち1回の吸入)ごとの投与量の例として単に理解すべきであり、本発明の組合せを多数回投与するのであれば、前記例の倍数の投与量になる。例えば、本発明の組合せの投与は1日1回、あるいは抗コリン薬の有効時間によっては1日2回あるいは2日又は3日に1回とすることができる。
さらに、前記の投与量例は定量化された投与量の例としてのみ理解すべきであることも強調しておく。言い換えれば、前記の投与量例は、本発明の組合せが実際に肺に到達する有効投与量であると理解すべきではない。定量化して投与された有効成分投与量よりも肺に送達される量の方が通常少ないことは、この分野の当業者であれば明らかであろう。
【0010】
本発明による1と2との有効成分の組合せは、吸入による投与が好ましい。そのためには、成分1及び2は、吸入に適した形態で利用できなければならない。本発明によると、吸入可能な調剤としては、吸入可能な粉末、噴射剤を含有する定量化エアロゾル、噴射剤を含有しない吸入可能な溶液が挙げられる。有効成分1及び2の組合せを含有する本発明による吸入粉末は、該有効成分のみからなるもの、または有効成分と医薬的に許容される賦形剤との混合物からなるものでもよい。本発明の範囲において、担体という用語は賦形剤という用語の代わりとして使うことができる。また、本発明の範囲において噴射剤を含有しない吸入可能溶液という用語には、濃縮物又は直ぐに使用できる無菌吸入溶液も含まれる。本発明の調剤は、有効成分1及び2の組合せを一緒にして1つの処方としてもよいし、または2つの別々の処方として含有させてもよい。本発明の範囲において使用可能な処方については、本願明細書の次のパートでさらに詳細に説明する。
【0011】
A)本発明による有効成分1及び2の組合せを含む吸入粉末:
本発明による吸入粉末は1及び2のみを含むか、あるいは、1及び2を医薬的に許容される適当な賦形剤と混合させて含むかのいずれでもよい。
有効成分1及び2が医薬的に許容される賦形剤との混合物として存在する場合、以下の医薬的に許容される賦形剤を使用して本発明の吸入粉末を調製することができる。単糖類(例えば、グルコース又はアラビノース)、二糖類(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース、トレハロース)、オリゴ糖類および多糖類(例えば、デキストラン)、多価アルコール類(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、シクロデキストリン類(例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、χ−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、あるいはこれら賦形剤相互の混合物。好ましくは、単糖類又は二糖類が使用され、ラクトース、トレハロース又はグルコースの使用が好ましく、限定はされないが、その水和物の形が特に好ましい。
本発明による吸入粉末の範囲において、賦形剤の最大平均粒径は250μmまで、好ましくは10〜150μm、最も好ましくは15〜80μmの範囲である。上記賦形剤に、平均粒径1〜9μmのより微細な賦形剤画分を添加することが適切と考えられる場合もあろう。より微細な賦形剤も、本願明細書中で前記に列挙した使用可能な賦形剤の群から選択される。最終的には、本発明の吸入粉末を調製するために、好ましくは平均粒径0.5〜10μm、さらに好ましくは1〜6μmの微粉化した有効成分1及び2を、賦形剤混合物に添加する。粉砕、微粉化し、最終的に各成分を混合することによる本発明の吸入粉末の製造方法は、従来技術より公知である。本発明の吸入粉末は、1及び2の両方を含む単一の粉体混合物、あるいは、それぞれに1又は2のみを含有する別個の吸入粉末の形態のいずれかに調製して投与することができる。
【0012】
本発明の吸入粉末は、従来技術から公知の吸入器を用いて投与することができる。1及び2に加えて医薬的に許容される1種以上の賦形剤を含む本発明の吸入粉末は、例えば、US4570630Aに記載されているような計量チャンバーを用いた供給源から一回分の投与量を放出する吸入器によって、あるいは、DE3625685Aに記載されているような他の手段によって投与することができる。1及び2、さらに医薬的に許容される賦形剤を一緒に含有してもよい本発明の吸入粉末は、例えば「タービュヘイラー(Turbuhaler)(登録商標)」という名称で知られている吸入器を用いて、あるいは、例えばEP237507Aに開示されているような吸入器を用いて投与することができる。好ましくは、1と2の他に医薬的に許容される賦形剤を含む本発明の吸入粉末は、例えばWO94/28958に記載の吸入器で使用するカプセル内に充填(所謂インハレット(inhalettes)を形成)する。
図1に、インハレット状態の本発明の医薬組合せを使用するための特に好ましい吸入器を示す。
カプセルから粉末状の医薬組成物を吸入するためのこの吸入器(「ハンディヘラー」)は、2個の窓2を含むハウジング1と、空気導入口を有し、スクリーンハウジング4を介して固定されたスクリーン5を備えたデッキ3と、デッキ3に連結し、2本の尖ったピン7を備えバネ8に対して可動する押しボタン9を有する吸入チャンバー6と、スピンドル10を介してハウジング1、デッキ3及びカバー11と連結し、跳ね上げ式で開閉可能なマウスピース12と、流動抵抗を調整するための空気穴13とによって特徴づけられる。
上記の好ましい使用のために本発明の吸入粉末をカプセル(吸入器)に充填する場合、各カプセルに充填する量は1カプセルにつき1〜30mgであるとよい。本発明では、これらのカプセルに本願明細書前記記載の1又は1’及び2の1回の投与ごとの投与量が一緒に又は別々に含まれる。
【0013】
B)有効成分1及び2の組合せを含む、噴射剤ガス駆動型吸入エアロゾル:
本発明による噴射剤ガス含有吸入エアロゾルには、有効成分1及び2が噴射剤ガス中に溶解されているか、あるいは分散状態で含まれる。1及び2は別々の処方又は単一調剤中に存在させることができ、その中で1及び2は、両方が溶解または分散されているか、あるいは一方の成分が溶解され他方が分散されているかのいずれかである。本発明の吸入エアロゾルの調製に使用できる噴射剤ガスについては従来技術から既知である。n−プロパン、n−ブタン又はイソブタン等の炭化水素化合物、及び、メタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンのフッ素化誘導体等のハロ炭化水素化合物から、適当な噴射剤ガスが選択される。上記噴射剤ガスは単独で、又はその混合物として使用できる。特に好ましい噴射剤ガスは、TG11、TG12、TG134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)及びTG227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)ならびにこれらの混合物から選択されるハロゲン化アルカン誘導体であり、この中でもTG134a、TG227及びそれらの混合物の噴射剤ガスが好ましい。
また、本発明の噴射剤駆動型吸入エアロゾルには、補助溶剤、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、滑剤及びpH調節剤等の他の成分も含ませることができる。これらの成分はすべて、当分野において公知である。
本発明による噴射剤ガス含有吸入エアロゾルには、有効成分1及び/又は2を5質量%まで含有させるとよい。例えば、本発明のエアロゾルは、有効成分1及び/又は2を0.002〜5質量%、0.01〜3質量%、0.015〜2質量%、0.1〜2質量%、0.5〜2質量%又は0.5〜1質量%含む。
有効成分1及び/又は2が分散状態で存在する場合は、該有効成分粒子の平均粒子径は10μmまでが好ましく、さらに好ましくは0.1〜6μm、より好ましくは1〜5μmである。
前述の本発明による噴射剤駆動型吸入エアロゾルは、当該分野において公知の吸入器(定量噴霧吸入器(MDI))を用いて投与することができる。従って、本発明の別の態様としては、噴射剤駆動型エアロゾルを投与するのに適した1種以上の吸入器と組み合わせた、前述の噴射剤駆動型エアロゾル状態の医薬組成物に関する。更に、本発明は、本発明による前記噴射剤ガス含有エアロゾルを収容することを特徴とする吸入器に関するものである。また、本発明は、適切なバルブが設けられ、適当な吸入器内で使用可能であり、かつ、本発明による上記噴射剤ガス含有吸入エアロゾルの1種を収容する、カートリッジに関する。好適なカートリッジ、さらには本発明による噴射剤ガス含有吸入エアロゾルをカートリッジに充填する方法については、従来技術から公知である。
【0014】
C)本発明の有効成分1及び2の組合せを含む、噴射剤を含有しない吸入可能な溶液又は懸濁液:
本発明による噴射剤を含有しない吸入可能な溶液及び懸濁液は、例えば水性又はアルコール系溶媒、好ましくはエタノール性溶媒を含有するが、エタノール性溶媒と水性溶媒とを混合してもよい。水性溶媒とエタノール性溶媒との混合物を使用する場合、水に対するエタノールの相対的割合は限定されないが、最大でエタノールが70容量%まで、より好ましくは60容量%までである。残りの容量を水で構成する。1及び2を別個に又は一緒に含有する溶液又は懸濁液は、適当な酸を用いてpH値を2〜7、好ましくは2〜5に調整する。pH値は無機酸又は有機酸から選択される酸を用いて調整すればよい。特に好適な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸及び/又はリン酸が挙げられる。特に好適な有機酸の例としては、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、ギ酸及び/又はプロピオン酸等が挙げられる。推奨される無機酸は塩酸及び硫酸である。また、有効成分の1つとともに酸付加塩を形成した酸を使用することも可能である。有機酸の中では、アスコルビン酸、フマル酸及びクエン酸が好ましい。所望であれば、上記の酸の混合物を用いることもでき、特に、酸性化特性に加えて、例えば香料、酸化防止剤又は錯化剤としての特性を有する酸、例えばクエン酸又はアスコルビン酸等の場合は、混合して用いるとよい。本発明によると、塩酸を用いてpH値を調整することが特に好ましい。
【0015】
本発明では、エデト酸(EDTA)又はその公知の塩の1つであるエデト酸ナトリウムを安定剤又は錯化剤として添加することは、本発明の処方においては不要である。実施形態によっては、この化合物を1種以上含んでもよい。推奨実施形態としては、エデト酸ナトリウムを基準とした含有量は、100mg/100ml未満、好ましくは50mg/100ml未満、さらに好ましくは20mg/100ml未満である。一般に、エデト酸ナトリウムの含有量が0〜10mg/100mlの範囲となる吸入溶液が好ましい。
本発明による噴射剤を含有しない吸入溶液には、補助溶剤及び/又は他の賦形剤を添加することができる。好ましい補助溶剤は、ヒドロキシル基又は他の極性基を含むもので、例えばアルコール類、特にイソプロピルアルコール、グリコール類、特にプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール類及びポリオキシエチレン脂肪酸エステル類である。本明細書における賦形剤及び添加剤という用語は、それ自体は活性物質ではないが、薬理学的に好適な溶媒中で1種またはそれより多くの活性物質と共に処方することができ、活性物質を含む処方物の定性的特性を改善することができる、薬理学的に許容される任意の物質を意味する。これらの物質は薬理的作用を持たないことが好ましい。あるいは、所望の療法との関連において容易に認識できるような薬理作用は持たないか、少なくとも望ましくない薬理作用を有していないことが好ましい。賦形剤及び添加剤としては、例えば、大豆レシチン、オレイン酸、ポリソルベート等のソルビタンエステル類、ポリビニルピロリドンなどの界面活性剤、他の安定剤、錯化剤、最終的な医薬処方物の品質保持期間を保証又は延長する酸化防止剤及び/又は防腐剤、香味付与剤、ビタミン類及び/又は当分野において公知の他の添加剤が挙げられる。また、該添加剤として、例えば塩化ナトリウム等の薬理学的に許容される塩も等張剤として挙げられる。
好ましい賦形剤としては、例えばpHの調整に使用されていない場合のアスコルビン酸、さらにはビタミンA、ビタミンE、トコフェロール類及び人体で産生する類似のビタミン類及びプロビタミン類等の酸化防止剤が挙げられる。
【0016】
防腐剤を使用して病原体による汚染から該処方物を保護することができる。適当な防腐剤は当該分野において公知のものであり、特に当該分野において公知の濃度の塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム又は安息香酸もしくは安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩である。上記防腐剤は、好ましくは50mg/100mlまで、より好ましくは5〜20mg/100mlの範囲の濃度で存在していることが好ましい。
好ましい処方物は、溶剤としての水及び有効成分1と2との組合せの他に、塩化ベンザルコニウム及びエデト酸ナトリウムのみを含むものである。エデト酸ナトリウムを含有させない推奨実施形態もある。
本発明の噴射剤を含有しない吸入溶液は、特に、治療投与量の少量の液体処方物を数秒間以内で霧状にして治療用の吸入に適したエアロゾルを生成することができるタイプの吸入器を用いて投与される。本発明の範囲内において、100μL未満、好ましくは50μL未満、より好ましくは20〜30μLの量の有効成分溶液を、好ましくは1回のスプレー操作で霧状にすることができ、その結果、平均粒径が20μm未満、好ましくは10μm未満のエアロゾルを生成させ、エアロゾルの吸入可能な量が治療上の有効量に相当するように生成させることのできる吸入器が好ましい吸入器である。
液状医薬組成物の定量を噴射剤無しで放出するタイプの吸入用装置については、例えば国際特許出願WO91/14468及びWO97/12687(特に図6a及び図6b参照)に記載されている。これらに記載されているネブライザー(装置)は、「Respimat(登録商標)」という名称で知られている。
【0017】
このネブライザー(「Respimat(登録商標)」)を効果的に利用して、有効成分1及び2の組合せを含む本発明の吸入エアロゾルを生成することができる。
この装置が円筒状で、長さ9〜15cm及び幅2〜4cm未満の取り扱い易いサイズであるため、患者は常に携行することができる。このネブライザーは、高圧を用いて小さなノズルから所定量の医薬処方物を噴霧して、吸入エアロゾルを生成するものである。
好ましい噴霧器は、上部ハウジング部分と、ポンプハウジングと、ノズルと、ロック機構と、バネハウジングと、バネと、貯蔵容器のみから実質的になり、
− 上部ハウジング部分に固定され、その一端にはノズル又はノズル装置を備えたノズル本体を含むポンプハウジング、
− バルブ本体を備えた中空プランジャー、
− 中空プランジャーが中に固定され、上部ハウジング部分に配置された動力取り出しフランジ、
− 上部ハウジング部分に位置するロック機構、
− 内部にバネを収容し、回転軸受けによって上部ハウジング部分に回動可能に取り付けられているバネハウジング、
− バネハウジング上に軸方向に取り付けられている下部ハウジング部分、とによって特徴づけられる。
バルブ本体を備えた中空プランジャーは、WO97/12687に開示の装置に対応する。中空プランジャーは、ポンプハウジングのシリンダ内に一部が突き出ており、シリンダ内を軸方向に移動可能である。特に図1乃至図4、とりわけ図3、及びそれに関連する説明部分に記載されている。バルブ本体を備えた中空プランジャーは、バネが作動した瞬間に、その高圧末端において、流体、即ち定量の有効成分溶液に対して5〜60Mpa(約50〜600bar)、好ましくは10〜60Mpa(約100〜600bar)の圧力を及ぼす。1回のスプレーによる量は、好ましくは10〜50μL、特に好ましくは10〜20μLで、最も好ましくは15μLである。
【0018】
バルブ本体は、好ましくは、バルブ本体に面した中空プランジャーの端部に取り付けられる。
ノズル本体内のノズルは微細構造を有することが好ましく、即ち、マイクロテクノロジーによって作製されたものであることが好ましい。微細構造を有するノズル本体については、例えばWO94/07607に開示されており、本願明細書の内容、特に図1及びその関連説明について言及されている。
ノズル本体は、例えば、強固に結合した2枚のガラス及び/又はシリコンシートからなり、2枚のうちの少なくとも1枚には、1本以上の微細構造により作製された溝があり、この溝によってノズル入口端部がノズル出口端部と連結している。ノズル出口端部には、深さ2〜10μmで幅5〜15μm、好ましくは深さが4.5〜6.5μmで、長さが7〜9μmの少なくとも1個の円形又は非円形開口部がある。
ノズル開口部が複数個、好ましくは2個ある場合、ノズル本体内におけるノズルのスプレー方向は互いに平行に伸びてもよいし、あるいはノズル開口方向に互いに対して傾斜させることも可能である。出口端部に少なくとも2つのノズル開口部を有するノズル本体において、スプレーの方向は、互いに対して20〜160°、好ましくは60〜150°、最も好ましくは80〜100°の角度がよい。ノズル開口部は、好ましくは10〜200μm、より好ましくは10〜100μm、最も好ましくは30〜70μmの間隔をおいて配置される。50μmの間隔が最も好ましい。したがって、スプレー方向はノズル開口部近傍で一致することになる。
【0019】
液状医薬調剤は、600barまでの入口圧力、好ましくは200〜300barの入口圧力でノズル本体に突き当たり、ノズル開口部を通って霧化され吸入エアロゾル状態になる。エアロゾルの好ましい粒径または液滴の径は、20μmまで、好ましくは3〜10μmである。
ロック機構は、力学的エネルギーを保存するためのバネ、好ましくは円筒状の圧縮コイルバネを有する。このバネは作動部材としての動力取出しフランジに作用するが、フランジの移動はロック部材の位置によって決まる。この動力取出しフランジの移動は、上部および下部の止め(stop)によって正確に定められている。上部ハウジング部分が下部ハウジング部分内のバネハウジングと反対に回転する際に発生する外部トルクによって、バネは、動力増速機、例えば螺旋状スラストギアを介して好ましくは偏向される。この場合、上部ハウジング部分及び動力取出しフランジは、単一又は多数のV字型ギアを有する。
噛合するロック面を有するロック部材は、動力取出しフランジの回りにリング状に配置されている。ロック部材は、例えば、本質的に径方向に弾性変形しうるプラスチックまたは金属のリングからなる。このリングは、噴霧器の軸に対して直角をなす面に配置される。バネを偏向させた後、ロック部材のロック面は動力取出しフランジの通路内に移動し、バネが緩まないようにする。ロック部材はボタンによって作動する。この作動ボタンはロック部材に接続又は連結している。ロック機構を作動するためには、作動ボタンをリング状平面に対して平行に移動させ、好ましくは噴霧器内に移動させ、これによって変形性リングはリング状平面で変形させられる。ロック機構の構成に関する詳細は、WO97/20590に記載されている。
【0020】
バネハウジングの上から下部ハウジング部分が軸方向にはめこまれ、マウント(mounting)、スピンドルの駆動装置及び流体用貯蔵容器を収容する。
噴霧器を作動させると、上部ハウジング部分は下部ハウジング部分に対して相対的に回転し、下部ハウジング部分はバネハウジングを一緒に回転させる。結果として、バネは螺旋状スラストギアによって圧縮、偏向され、ロック機構が自動的に嵌合する。回転角は360度分の整数度、例えば180度が好ましい。バネが偏向されると同時に、上部ハウジング部分における動力取出し部分が所定の距離だけ移動し、中空プランジャーがポンプハウジング内のシリンダ内部に引き戻され、その結果として、流体の一部が貯蔵容器から吸い出され、ノズル前方の高圧チャンバーに送りこまれる。
所望であれば、噴霧する流体を収容する交換可能な多数の貯蔵容器を順番に噴霧器に押し込み、連続的に使用することもできる。貯蔵容器には、本発明による水性エアロゾル調剤が収容される。
噴霧工程は作動ボタンを軽く押すことにより開始される。この結果、ロック機構が動力取出し部材用の通路を開ける。偏向されたバネによって、ポンプハウジングのシリンダ内にプランジャーが押し込まれる。流体が霧状態となって噴霧器のノズルから放出される。
構造についての更なる詳細については、PCT出願WO97/12683及びWO97/20590に開示されており、これらを本願明細書に引用する。
【0021】
噴霧器(ネブライザー)の構成部品は、その目的に適した材料で作られる。噴霧器のハウジング、さらには操作上許されるならば他の部品も同様に、例えば射出成型によって好ましくはプラスチックで作製される。医薬的な目的から生理学的に安全な材料が用いられる。
WO97/12687の図6a/図6bは、本発明による水性エアロゾル調剤の吸入に有利に使用できるネブライザー(「Respimat(登録商標)」)を示す。
WO97/12687の図6aは、バネが偏向した状態の噴霧器の長手方向断面図であり、一方、WO97/12687の図6bは、バネが緩んだ状態の噴霧器の長手方向断面図である。
上部ハウジング部分(51)はポンプハウジング(52)を収容し、その端部には噴霧器ノズル用のホルダ(53)が取付けられている。ホルダにはノズル本体(54)及びフィルタ(55)がある。ロック機構の動力取出しフランジ(56)内に固定された中空プランジャー(57)は、ポンプハウジングのシリンダ内にその一部が突き出している。中空プランジャーは、その端部においてバルブ本体(58)を担持している。中空プランジャーは、封止手段(59)によって封止される。上部ハウジング部分内部には止め(60)があり、バネが緩んでいる状態の時には動力取出しフランジが止めに突き合わさっている。動力取出しフランジ上には止め(61)があり、バネが偏向すると動力取出しフランジがこの止めに突き合わさる。バネの偏向後、ロック部材(62)は、上部ハウジング部分内の止め(61)と支持体(63)との間を移動する。作動ボタン(64)が、ロック部材に連結している。上部ハウジング部分は、マウスピース(65)で終端しており、またその上に配置できる保護カバー(66)によって封止される。
【0022】
圧縮バネ(68)を備えたバネハウジング(67)は、カチッとはまる爪(69)及び回転軸受けによって上部ハウジング部分に回動自在に取付けられている。下部ハウジング部分(70)はバネハウジングの上からかぶせられている。バネハウジング内部には、噴霧される流体(72)用の交換可能な貯蔵容器(71)がある。貯蔵容器はストッパー(73)により封止され、ストッパーを介して中空プランジャーは貯蔵容器内に突き出し、かつその端部が流体中に浸漬される(有効成分溶液の供給)。
機械的カウンタ用のスピンドル(74)は、バネハウジングのカバー内に取付けられている。上部ハウジング部分に面したスピンドルの端部には、駆動ピニオン(75)がある。スライダ(76)がスピンドル上に配置されている。
上記ネブライザーは、本発明のエアロゾル調剤を噴霧するのに好適で、吸入に適したエアロゾルを生成する。
本発明の処方物を、上記方法(「Respimat(登録商標)」)を用いて噴霧する場合、吸入器の全操作(スプレー作動)の少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%の達成で、放出される量は規定量に対して許容差25%以下、好ましくは20%以下に相当する量であるとよい。好ましくは、5〜30mg、最も好ましくは5〜20mgの処方物が、規定量として1回ごとのスプレー動作で放出されることが好ましい。
【0023】
しかしながら、本発明の処方物は、上記以外の吸入器、例えば、ジェット流吸入器又は他の据え置き型噴霧器によって噴霧することもできる。
従って、本発明の更なる態様は、上記のような噴射剤を含有しない吸入可能な溶液又は懸濁液状態の医薬処方物であって、この処方物の投与に適した装置、好ましくは「Respimat(登録商標)」と組み合わせた、噴射剤を含有しない吸入溶液又は懸濁液状態の医薬処方物に関する。好ましくは、本発明による有効成分1及び2の組合せを特徴とする噴射剤を含有しない吸入溶液又は懸濁液であって、「Respimat(登録商標)」という名称で知られている装置と組み合わせた前記吸入溶液又は懸濁液に関する。さらに、本発明は、本願明細書で前述したような本発明の噴射剤を含有しない吸入溶液又は懸濁液を収容していることを特徴とする、前記吸入用装置、好ましくは「Respimat(登録商標)」に関する。
本発明によると、有効成分1及び2を単一調剤中に含有する吸入可能な溶液が好ましい。「単一調剤」という用語には、例えばWO00/23037に開示されているような2つのチャンバーを有するカートリッジに2種の成分1及び2が収納されている調剤も含むものとする。この公報全体を本願明細書に引用する。
【0024】
本発明による噴射剤を含有しない吸入可能な溶液又は懸濁液は、濃縮物又は直ぐに使用できる無菌吸入溶液もしくは懸濁液、ならびに「Respimat(登録商標)」用に設計された上記溶液及び懸濁液の状態とすることができる。濃縮物の場合、例えば等張性の生理食塩水を添加することによって直ぐに使用可能な処方物が作成できる。直ぐに使用できる無菌処方物は、ベンチュリの原理又は他の原理によって超音波又は圧縮空気を用いて吸入性エアロゾルを生成するエネルギー駆動型の自立型又は持運び可能なネブライザーを使用して投与することができる。
従って、本発明の別の態様は、濃縮物又は直ぐに使用可能な無菌処方物の形態をとる前述のような噴射剤を含有しない吸入溶液又は懸濁液状態の医薬組成物に関するもので、これらの溶液を投与するのに適した装置、即ち、ベンチュリの原理または他の方法によって超音波又は圧縮空気を用いて吸入性エアロゾルを生成する、エネルギー駆動式の自立型又は持運び可能なネブライザーであることを特徴とする装置と組み合わせた医薬組成物に関する。
以下の実施例は本発明をより詳細に説明することを意図するもので、本発明の範囲を一例として以下の実施形態に限定するものではない。最初に、この分野では公知ではない化合物1の調製について説明する。
【0025】
1)式1の化合物の調製(臭化物塩の状態)
1.1:9-メチル-フルオレン-9-カルボン酸
a)9-メチル-フルオレン-9-カルボン酸メチル:
7.6g(0.33mol)のナトリウムと300mlのエタノールからナトリウムエトキシド溶液を調製し、そこに69.6g(0.33mol)の9-フルオレンカルボン酸を少量ずつ添加する。添加終了後、混合物を周囲温度で2.5時間攪拌する。その後、蒸発乾固させて残渣を600mlのジメチルホルムアミドに懸濁させ、93.96g(0.662mol)のヨウ化メチルを滴下する。混合物を一定の温度で3時間攪拌する。得られた濁った溶液を冷却しながら500mlの水及び300mlのジエチルエーテル中に注ぎ入れ、抽出を行う。有機相を水及び10%炭酸ナトリウム溶液で洗い、乾燥させ蒸発乾固させる。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製する。溶離液:シクロヘキサン/酢酸エチル=96:4
収量:12.61gの白色結晶(=理論値の16%)、融点:108〜109℃
b)9-メチル-フルオレン-9-カルボン酸
12.6g(0.053mol)の9-メチル-フルオレン-9-カルボン酸メチルと、53mlの2モルの水酸化ナトリウム水溶液とを周囲温度で120mlの1,4-ジオキサン中で24時間攪拌する。ジオキサンを留去し、水を加えて全容積を300mlにしてジエチルエーテルで抽出する。水相を3モルの塩化水素水溶液で酸性化させ、結晶化させて濾過する。
収量:11.25gの白色結晶(=理論値の95%)、融点:168〜169℃
【0026】
1.2:9-メチル-フルオレン-9-カルボン酸トロペノール
6.73g(0.03mol)の9-メチル-フルオレン-9-カルボン酸を60mlのジクロロメタン中に懸濁させ、5.0gの塩化オキサリルと1滴のジメチルホルムアミドと混合した後、周囲温度で1時間攪拌し、最後に溶媒を留去する。残留している酸性塩化物はさらに精製せずに次の工程で使用する。4.18g(0.03mol)のトロペノールと4.27g(0.033mol)のジイソプロピルエチルアミンとを、100mlのジクロロエタンに懸濁させ、前記酸性塩化物を35〜40℃で30mlのジクロロエタンに滴下する。その後、40℃で24時間攪拌する。懸濁液をジクロロメタンで希釈し、希塩酸で抽出する。有機相を水で洗った後MgSO4で乾燥させ、生成物をジエチルエーテル中で塩化水素水溶液を用いて塩酸塩に変換する。溶媒分を除去する。精製するために、析出した塩酸塩を水に溶かし、ジエチルエーテルで抽出する。水相を10%炭酸ナトリウム水溶液で塩基性にし、ジクロロメタンで抽出する。有機相をMgSO4で乾燥させ、溶媒を留去する。
収量:4.40gの黄色い油(=理論値の42%)
1.3:9-メチル-フルオレン-9-カルボン酸スコピン
2.5g(0.007mol)の9-メチル-フルオレン-9-カルボン酸トロペノールを約25mlのジメチルホルムアミドに懸濁させ、0.13g(0.001mol)の五酸化バナジウムと混合する。1.43g(0.015mol)のH2O2-尿素を約5.5mlの水に溶解させた溶液を60℃で滴下し、60℃で6時間攪拌する。20℃に冷却後、形成された析出物を吸引濾過し、濾液を4N塩酸でpH2に調整し、水に溶解したNa2S2O5と混合する。得られた溶液を蒸発乾固させ、残渣をジクロロメタン/水で抽出する。酸性の水相をNa2CO3で塩基性にした後、ジクロロメタンで抽出し有機相をNa2SO4で乾燥濃縮する。さらに、約0.4mlの塩化アセチルを周囲温度で添加し、混合物を1時間攪拌する。1N塩酸で抽出した後、水相を塩基性にしジクロロメタンで抽出する。有機相を水で洗いNa2SO4で乾燥させる。その後、溶媒を留去する。粗生成物をジエチルエーテルで再結晶させて精製する。
収量:1.8gの白色結晶(=理論値の71%)
【0027】
1.4:9-メチル-フルオレン-9-カルボン酸スコピンメトブロミド(scopin 9-methyl-fluorene-0-carboxylate methobromide)
1.8g(0.005mol)の9-メチル-フルオレン-9-カルボン酸スコピンを30mlのアセトニトリルに溶解させ、2.848g(0.015mol)の50%臭化メチル溶液とアセトニトリル中で反応させる。反応混合物を周囲温度で3日間放置し、その間に生成物が結晶化させる。析出した結晶を分取しジエチルエーテルで再結晶させて精製する。
収量:1.6gの白色結晶(= 理論値の70%)、融点:214℃
元素分析
計算値 C (62.13) H (5.93) N (4.26)
実測値 C (62.23) H (6.05) N (4.32).
【0028】
2)処方例
以下の処方例はこの分野で公知の方法と同様にして得ることができるが、これらは本発明をより詳細に説明するためのものであり、これらの実施例の内容に本発明が限定されるものではない。
吸入可能な粉末:
1)
【表1】

【0029】
2)
【表2】

【0030】
3)
【表3】




【0031】
4)
【表4】

【0032】
5)
【表5】

【0033】
6)
【表6】

【0034】
7)
【表7】

【0035】
8)
【表8】

B)噴射剤含有吸入用エアロゾル



【0036】
1)懸濁液エアロゾル
【表9】

【0037】
2)懸濁液エアロゾル
【表10】

【0038】
3)懸濁液エアロゾル
【表11】

【0039】
4)懸濁液エアロゾル
【表12】

【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】インハレットに充填した本発明の医薬組合せを投与するための特に好ましい吸入器を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表わされる1種以上の塩と
【化1】

(式中、X-は1個の負電荷を有するアニオンを示し、好ましくは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、スルフェート、ホスフェート、メタンスルホネート、ニトレート、マレエート、アセテート、シトレート、フマレート、タルトレート、オキサレート、スクシネート、ベンゾエート及びp−トルエンスルホネートからなる群から選択されるアニオンを示す。)
1種以上のステロイド(2)とを組み合わせて含む医薬組成物であって、
鏡像異性体、鏡像異性体の混合物、ラセミ化合物、溶媒和物又は水和物の形であってもよく、医薬的に許容できる賦形剤と一緒であってもよい医薬組成物。
【請求項2】
前記有効成分1及び2が単一処方中に存在するか、あるいは別個の2種の処方に含有されている請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ステロイド2が、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プロピオン酸ブチクソコート(butixocort)、RPR−106541、フルニソリド、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド、ロフレポニド、ST−126、デキサメタゾン、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(S)-フルオロメチルエステル及び6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-プロピオニルオキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(S)-(2-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3S-イル)エステルから選択される、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記化合物2が、ナトリウム塩、スルホベンゾエート、ホスフェート、イソニコチネート、アセテート、プロピオネート、ニ水素リン酸塩、パルミテート、ピバレート又はフロエートを含む塩又は誘導体の形で存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記化合物2が、フルニソリド、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド、ロフレポニド、ST−126、デキサメタゾン、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(S)-フルオロメチルエステル及び6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-プロピオニルオキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(S)-(2-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3S-イル)エステルから選択される、請求項1〜4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記化合物2が、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド及び6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(S)-フルオロメチルエステルから選択される、請求項1〜5のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記2に対する1’:
【化2】

の質量比が、約1:250〜250:1、好ましくは1:150〜150:1の範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が吸入に適した調剤形態であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、吸入可能な粉末、噴射剤含有定量エアロゾル及び噴射剤を含有しない吸入可能な溶液から選択される調剤であることを特徴とする請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が、単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類、多価アルコール類、塩類又はこれら賦形剤を互いに混合したものから選択される医薬的に許容できる好適な賦形剤と混合して前記1及び2を含有する吸入可能な粉末であることを特徴とする請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記賦形剤の最大平均粒径が250μmまで、好ましくは10〜150μmの範囲であることを特徴とする請求項10記載の吸入可能な粉末。
【請求項12】
前記医薬組成物が、前記有効成分1及び2を唯一の成分として含有する吸入可能な粉末であることを特徴とする請求項9記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が、前記1及び2を溶解又は分散状態で含む噴射剤含有吸入エアロゾルであることを特徴とする請求項9記載の医薬組成物。
【請求項14】
噴射剤ガスとして、n−プロパン、n−ブタン又はイソブタン等の炭化水素化合物あるいはメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンの塩素化誘導体及び/又はフッ素化誘導体等のハロ炭化水素化合物を含む、請求項13記載の噴射剤含有吸入エアロゾル。
【請求項15】
前記噴射剤ガスが、TG11、TG12、TG134a、TG227又はこれらの混合物であり、好ましくはTG134a、TG227又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項14記載の噴射剤含有吸入エアロゾル。
【請求項16】
前記噴射剤含有吸入エアロゾルが、有効成分1’及び/又は2を5質量%まで含有してもよいことを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項記載の噴射剤含有吸入エアロゾル。
【請求項17】
前記医薬組成物が、水、エタノール又は水とエタノールとの混合物を溶媒として含む噴射剤を含有しない吸入可能な溶液であることを特徴とする請求項9記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記吸入可能な溶液が、他の補助溶剤及び/又は賦形剤を含んでいてもよいことを特徴とする請求項17記載の吸入液。
【請求項19】
前記吸入可能な溶液が、ヒドロキシル基又は他の極性基を含む補助溶剤成分として、例えばアルコール類、特にイソプロピルアルコール、グリコール類、特にプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール類及びポリオキシエチレン脂肪酸エステル類を含むことを特徴とする請求項18記載の吸入液。
【請求項20】
前記吸入可能な溶液が、賦形剤として界面活性剤、安定剤、錯化剤、酸化防止剤及び/又は防腐剤、香味付与剤、薬理学的に許容できる塩類及び/又はビタミン類を含むことを特徴とする請求項18又は19記載の吸入液。
【請求項21】
前記吸入可能な溶液が、錯化剤としてエデト酸又はエデト酸塩、好ましくはエデト酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項20記載の吸入液。
【請求項22】
炎症性又は閉塞性呼吸器疾患、とりわけ喘息又はCOPDの治療用医薬品を製造するための請求項1〜21のいずれか1項記載の組成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2007−500147(P2007−500147A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521452(P2006−521452)
【出願日】平成16年7月17日(2004.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007999
【国際公開番号】WO2005/013999
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】