説明

ステロイド系のチゴゲニンを基に合成した安息香酸ヒドラゾンの医学的適用

植物であるアツバキミガヨラン(Yucca gloriosa)のステロイド系のチゴゲニンを基に、5α−アンドロスタン−3,17−ジオンの新規の安息香酸ヒドラゾンを調製した。添付の図面の図で示す一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)のヒドラゾンを合成する。ヒドラゾンは、抗T.B.、抗癌、及び抗HIVの有望な活性を示し、望ましくない副作用がより少ない、より有効で、毒性のより低い薬として非常に潜在性のあることが明らかになった。また、ヒドラゾンは、重度の健康問題を引き起こすホルモン異常の治療においても有益であることを証明することができた。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
近年、ステロイドの分野における化学的研究は、特有の生理作用及び医学的適用を有する、天然には見られない、幅広い種類のステロイド誘導体を開発する化学的調査と共に進んできた。ステロイドの分子構造の小さな変化は、しばしば生理活性に大きな変化をもたらし、有効性が改善され、適用がより広く、毒性がより低く、望ましくない副作用がより少ない新薬の探索に役立つ。ステロイド療法は、現代の医学においてますます重要になり、流産の防止からある種の癌の抑止まで、妊娠の管理から関節炎治療まで、ホルモン異常の治療から皮膚炎治療まで、あらゆる範囲にわたる。フッ素含有ステロイドであるデキサメタゾンは炎症の治療に用いられ、アセチレン誘導体である19−ノルエチステロンは月経周期を管理、経口避妊薬として用いられ、トリケトンプレドニゾンはコルチゾン療法の分野で一般的な適用が見出される。
【0002】
ステロイドは、コレステロール中に存在するシクロペンタノペルヒドロフェナントレン環系を含有する、広範な種類の天然物を含む。
【発明の目的】
【0003】
結核
1990年代の始め以降の結核の発症率及び死亡率の著しい上昇によって、世界保健機関は結核を世界的な脅威と見なすようになった。発症率上昇をもたらす因子の1つは、結核菌における耐性の発現である。現在、世界中の新たなTB症例の20例中1例が、2種類以上の薬に耐性である。50万例の新たなMDR−TB、及び4万例の新たなXDR−TBが、世界中で毎年現れている。81カ国におけるTB患者について2002〜2006年に収集したデータによると、11万人のMDR−TB患者が、結核により毎年死亡している。したがって、新規の有効な抗結核化合物の研究が急務になってきた。
【0004】

癌の化学療法では、正常な組織細胞と癌細胞とをある程度識別することのできる化合物が用いられる。ある特定の抗新生物薬を用いる決断は、腫瘍の種類及び部位による。したがって、新規の化合物を探索し続けることが責務である。
【0005】
HIV
現在、ヒトにおけるHIV感染症は、世界的流行である。2006年1月の時点で、国際連合合同エイズ計画(UNAIDS)、及び世界保健機関(WHO)は、AIDSが初めて認められた1981年12月1日以降、2500万人より多くのヒトがAIDSにより死亡したと推定しており、2005年だけでAIDSが推定で240万〜330万人の生命を奪っており、記録のある歴史の中で最も破壊的な世界的流行の1つであったとしている。世界の生存人口の約0.6%がHIVに感染している。抗レトロウイルス薬によって、HIV感染症の死亡率及び罹患率の両方が減少しているが、抗レトロウイルス療法は、全ての国で利用できるわけではない。
【発明の従来技術】
【0006】
C−17位にNH、N−アルキル、N−アルキルオキシ、N,N−ジアルキル等の置換基を有し、広範な生物活性を示す、多くのステロイド系化合物が、チゴゲニンを基に合成されてきた。5α−アンドロスタン−3β,17−β−ジオールの合成が、潜在的な抗癌化合物として報告された。新規のステロイド系のイソニコチンヒドラゾン及びチオセミカルバゾンが、潜在的な抗T.B.薬剤として報告された。
【0007】
いくつかの著作権化合物
【0008】
(A)式:C20H31N3S
CA索引名:アンドロスト−2−エン−17−オン(アミノチオキソメチル)ヒドラゾン
登録番号 487039−91−8
著作権 2007年 米国化学会
【化1】

【0009】
(B)式:C26H36O3S
CA索引名:アンドロスト−2−エン−17−オール,4−メチルベンゼンスルホナート
登録番号 913816−27−0
著作権 2007年 米国化学会
【0010】
(C)式:C19H30O
CA索引名:アンドロスト−2−エン−17−オール
登録番号 6699−64−5
著作権 2007年 ACS
【0011】
(C)式:C19H33NO
CA索引名:5β−アンドロスタン−3−オール,17−アミノ−,
登録番号 32911−76−5
著作権 2007年 ACS
【0012】
参考文献
1. Camoutis C., Trafalis D., Int. New Drugs 2003 21 47
2. Amiranashvili L., Merlani M., Menshova N., Suvorov N., Bull. Georg. Acad. Sci. 1998 158 (2) 2
3. Merlani M. I., Kemertelidze E. P., Papadopoulos K., Menshova N. I., Bioorg Khim. 2004 30 552 [Engl. transl. Russ. J. Bioorg. Chem. 2004 30 000].
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の化合物の構造式を表す図である。
【発明の詳細】
【0014】
ステロイド系のサポゲニン−チゴゲニンは、5α系の合成のための出発物質として提案されている。チゴゲニンは、ジョージア州で栽培される植物であるアツバキミガヨラン(Yucca gloriosa)から単離される[1]。本発明者らは、チゴゲニン(1)を酢酸プレグネノロン(2)に転換し、2を酢酸エピアンドロステロンに転換することを含む、1を基に酢酸エピアンドロステロンを得るための合成スキームを開発した。本発明者らは、1から2への転換の際、触媒としてTiClを用いる酸化脱水を選択した。1から2への収率は、69.5%であった[2]。化合物2をシュミット−トーメ法を用いて酢酸エピアンドロステロンに転換し[3]、これによって、酢酸プレグネノロンオキシム(3)をピリジン中でPOClでベックマン転位させた。中間体である17−アセチルアミノ誘導体4を酸加水分解して、収率65%で酢酸エピアンドロステロン(5)を得た[4]。
【0015】
3β−アセトキシ−5α−プレグン−16−エン−20−オン(2)。1(50g、120.0mmol)、(CHCO)O(150mL)、及びCN(10mL)の混合物を1時間沸騰させ、100℃まで冷却し、撹拌し、(CHCO)O(2.5mL)中のTiCl(2.5g、13.16mmol)で処理し、さらに2時間沸騰させ、40℃まで冷却し、水(25mL)に溶解したCHCOONa(10g)で徐々に処理し、20分間撹拌し、室温まで冷却し、CHCOCH(220mL)及びCHCOOH(220mL)中に注ぎ、15〜18℃で水(7.5mL)中のCrO(15g)を添加して酸化し、さらに1時間撹拌し、イソプロパノール(7.5mL)で処理し、徐々に加熱してアセトンを留去し115〜117℃の温度とし、1.5時間沸騰させ、室温まで冷却し、水(425mL)で処理した。得られた沈殿物をろ別し、水で洗浄し、メタノール:アセトン(3:1)で再結晶させて、2(29g、69.5%)、mp158〜162℃、lit.mp158〜162℃を得た[2]。
【0016】
5α−プレグン−16−エン−3β−オール−20−オン酢酸オキシム(3)。2(2.5g、6.97mmol)、NHOH・HCl(0.55g、7.91mmol)、及び乾燥CN(12mL)の混合物を65〜68℃で2時間加熱し、室温まで冷却し、水(45mL)で処理し、30分間撹拌した。得られた沈殿物をろ別し、水で洗浄して、3(2.5g、98.07%)、mp196〜198℃、lit.mp195.5〜98.5℃を得た[4]。
【0017】
3β−アセトキシ−5α−アンドロスタン−17−オン(5)。18〜20℃の3(1g、2.67mmol)、乾燥CN(3.2mL)、及び乾燥CHCOCH(3.2mL)の混合物を、POCl(1.2mL)で処理し、30分間撹拌し、−5℃まで冷却し、希HCl(水で1:1、28mL)で処理し、30分間撹拌し、中性になるまで水で処理した。得られた沈殿物をろ別し、水で洗浄して、粗生成物(0.83g)を得た。粗生成物をシリカゲルカラム(L100〜160)で、低沸点の石油エーテル:エーテル(20:1)で溶出するクロマトグラフィーにかけ、5(0.58g、65%)、mp111〜113℃、lit.mp111〜13℃を得た[4]。
【0018】
3β−ヒドロキシ−5α−アンドロスタン−17−オン(6)。メタノール中の5(1g、3.00mmol)、及びNaOH 0.12g(3.44mmol)の混合物を、10分間還流し、室温まで冷却し、水で処理した。得られた沈殿物をろ別し、水で洗浄して、6の粗生成物(0.82g、95%)を得た。
【0019】
5α−アンドロスタン−3,17−ジオン(7)。6(5g、17.2mmol)、及び75mlのアセトンの室温の混合物に、1.5mlのジョーンズ試薬(CrO、HSO、HO)を滴加した。反応が完了した後、NaOHを加え、液体相を分離し、次いで90mlの水を加えた。得られた沈殿物をろ別して、7の生成物(4.72g、94%)、M.p.134〜137℃を得た。
【化2】

【0020】
新規の安息香酸ヒドラゾン系の調製 ビス−{3−ブロモ安息香酸[(5α)−アンドロスタン−3,17−イリデン]}−ヒドラジド 5α−アンドロスタン−3,17−ジオンのビス−m−ブロモ安息香酸ヒドラゾン。エタノール(10ml)中の5α−アンドロスタン−3,17−ジオン(1g、3.46mmol)、m−ブロモ安息香酸ヒドラジド(1.49g、6.93mmol)、及び酢酸(1ml)の混合物を、2時間還流し、室温まで冷却した。沈殿した固形物をろ過し、水で洗浄し、エタノールから再結晶化して、構造式(I)の所望のヒドラゾン;収率93%;mp165〜167℃を得た。
IR(KBr,cm−1):3475(NH)、1700(NHC=O)、1643(C=N)、1550(芳香環)、
H NMR(500MHz,CDCl)、δ:0.83(3H,s,C18−H3)、0.90(3H,s,19−CH3)、7.64−7.89(10H,m,芳香族プロトン)、8.17(1H,br s,NH)、8.31(1H,br s,NH)
13C NMR(500MHz,CDCl)、δ:11,11(CH)、16.95(CH)、122.91−150.11(芳香環)161.21(C=N)、162,22(C=N)、171.22(C=O)
【0021】
ビスニトロ安息香酸[(5α)−アンドロスタン−3,17−イリデン]}−ヒドラジド 5α−アンドロスタン−3,17−ジオンのビス−m−ニトロ安息香酸ヒドラゾン。エタノール(10ml)中の5α−アンドロスタン−3,17−ジオン(1g、3.46mmol)、m−ニトロ安息香酸ヒドラジド(1.25g、6.93mmol)、及び酢酸(1ml)の混合物を、2時間還流し、室温まで冷却した。沈殿した固形物をろ過し、水で洗浄し、エタノールから再結晶化して、構造式(II)の所望のヒドラゾン;収率90%;mp202〜205℃を得た。
IR(KBr,cm−1):3484(NH)、1700(NHC=O)、1639(C=N)、1528(芳香環)、
H NMR(500MHz,CDCl)、δ:0.83(3H,s,C18−H3)、0.90(3H,s,19−CH3)、7.64−7.89(10H,m,芳香族プロトン)、8.17(1H,br s,NH)、8.31(1H,br s,NH)
13C NMR(500MHz,CDCl)、δ:11,23(CH)、17.26 CH)、122.91−147.11(芳香環)、161.21(C=N)、162,22(C=N)、176.22(C=O)
【0022】
3−ニトロ安息香酸[(3α,5α)−3−ヒドロキシアンドロスタン−17−イリデン]−ヒドラジド
【0023】
3α−ヒドロキシ−5α−アンドロスタン−17−オンのm−ニトロ安息香酸ヒドラゾン。エタノール(5ml)中の3α−ヒドロキシ−5α−アンドロスタン−17−オン(100mg、0.34mmol)、m−ニトロ安息香酸ヒドラジド(0.74mg、0.41mmol)、及び酢酸(1ml)の混合物を、12時間還流し、室温まで冷却した。沈殿した固形物をろ過し、水で洗浄し、エタノールから再結晶化して、所望のヒドラゾン;収率85%;mp305.〜07℃を得た。
【0024】
参考文献
1. E. P. Kemertelidze and T. A. Pkheidze, Khim-Farm. Zh., 6, 44 (1972).
2. L. K. Kavtaradze, R. I. Dabrundashvili, N. I. Men'shova, N. A. Korzinkina, and E. P. Kemertelidze, Soobshch. Akad. Nauk Gruz. SSR, 132, No. 3, 537 (1988).
3. J. Schmidt-Thome, Chem. Ber., 88, 895 (1955).
4. N. I. Men'shova, N. A. Korzinkina, E. P. Kemertelidze, N. Sh. Nadaraia, M. G. Davitishvili, L. I. Lishcheta, and V. S. Grosheva, Sb. Nauchn. Tr. VNIKhFi im. S. Ordzhonikidze, 10, 83 (1982).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物、及び製造方法。
【化1】

[式中、
Xは、
【化2】

であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、NO、NH、F、Cl、Br、OCH、CH、H等である]。
【請求項2】
所望の化合物が、酢酸及びエタノール中で5α−アンドロスタン−3,17−ジオンを適切な安息香酸ヒドラジドと共に還流することにより得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(II)の化合物、及び調製方法
【化3】

[式中、
Rは、OH、OCH、F、CH等であり、
Xは、
【化4】

であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、NO、NH、F、Cl、Br、OCH、CH、H等である]。
【請求項4】
所望の化合物が、酢酸及びエタノール中で3α−ヒドロキシ−5α−アンドロスタン−17−オン(又は3β−ヒドロキシ−)を適切な安息香酸ヒドラジドと共に還流することにより得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
一般式(III)の化合物、及び調製方法
【化5】

Rは、OH、OCH、F、CH等であり、
Xは、
【化6】

であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、NO、NH、F、Cl、Br、OCH、CH、H等である]。
【請求項6】
所望の化合物が、酢酸及びエタノール中で17α−ヒドロキシ−5α−アンドロスタン−3−オン(又は17β−ヒドロキシ−)を適切な安息香酸ヒドラジドと共に還流することにより得られる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
化学療法剤が、一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)の化合物、その塩、又は一般式(I)、(II)、及び(III)の薬学的に許容されるその形態のいずれかである、任意の種類の癌の増殖/複製を阻害する方法、並びに任意のその他のヒトの疾患の治癒/治療の方法。
【請求項8】
化学療法剤が、一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)の化合物、その塩、又は一般式(I)、(II)、及び(III)の薬学的に許容されるその形態のいずれかである、ウイルス(例、HIV等)及びその他の病原生物(例、細菌等)の増殖/複製を阻害する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−521005(P2011−521005A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511166(P2011−511166)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000139
【国際公開番号】WO2009/144738
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(510299293)
【出願人】(510299307)
【出願人】(510299318)
【出願人】(510299329)
【出願人】(510299330)
【Fターム(参考)】