説明

ステンシル塗装方法

【課題】アミノアルキド樹脂系塗料の塗装面に、良好な付着性を有し、耐久性にも優れるステンシルを塗装する方法を提供する。
【解決手段】アミノアルキド樹脂系塗料の焼付塗装面に、二液重合乾燥型塗料を用いてステンシルを塗装する。前記塗装後、40〜180℃で乾燥することとすれば、塗料中の樹脂の重合反応速度を速め、塗膜形成を促進することができる。二液重合乾燥型塗料としては、ポリウレタン樹脂塗料、けい素樹脂塗料(シリコーン樹脂塗料)またはふっ素樹脂塗料が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアルキド樹脂系塗料の焼付塗装面にステンシルを塗装するステンシル塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧ガス容器等の外面は、一般に、塗膜が強靱で、塗膜硬度、付着性、耐衝撃性や、耐食性、耐湿性、耐候性などの耐久性に優れているアミノアルキド樹脂系エナメル塗料等が塗装され、その上に、ガスの名称、ガスの性質を示す文字(毒・燃)、容器所有者の氏名または名称等のステンシル塗装がなされる。ステンシル塗装は、通常、前記ガスの名称等を示す文字や記号を打ち抜いてマーキング孔を設けたマーキング板を使用し、その上から塗料を吹き付けることにより行われる。
【0003】
ステンシル用塗料としては、塗布後の塗料の乾燥形態が酸化乾燥型のフタル酸樹脂塗料、あるいは揮発乾燥型のラッカー系塗料などの汎用塗料が使用されている。これらの塗料はほとんど全ての被塗物に適用でき、はけ、ローラー、スプレー等で手軽に塗装できることから一般に広く使用されており、ステンシル用塗料としてもこれらの塗料が従来から用いられてきた。
【0004】
しかし、酸化乾燥型塗料は、塗膜の付着性(被塗物に対する密着性)があまり良くないという難点があり、十分な付着性を確保しようとすると、一般的には、塗装後一週間程度放置する必要がある。これは、酸化乾燥型塗料では、樹脂が空気中の酸素を吸収して酸化重合が進むことにより網目構造が形成され塗膜となるが、この網目構造が粗く、また、酸化重合が完成するまでに長期間を要するからである。
【0005】
一方、揮発乾燥型のラッカー系塗料では塗布された塗料中の溶剤が蒸発し硬化して塗膜となるもので、樹脂を構成する分子の結合(網目構造の形成)は起こらない。したがって、塗膜の付着性が良いとはいえず、シンナーで拭くと塗膜は容易に溶解してしまう。
【0006】
このように、フタル酸樹脂塗料やラッカー系塗料を用いて塗装したステンシルは、その一部が、運搬中あるいは長期間にわたる屋内外での使用中に剥離し、ステンシルの識別が困難になる場合が往々にして生じる。
【0007】
また、例えば高圧ガスボンベでは高圧ガス保安法により5年に1回の再検査が義務づけられており、この場合、再検査時に再塗装を行うので、それに合わせてステンシル塗装を行えばメンテナンス上合理的である。しかし、従来のステンシル塗装では5年間識別可能な状態に保つことが難しく、それまでの間にステンシル塗装を再度行うか、それに代わる識別のための何らかの処置を講じなければならないという欠点がある。
【0008】
外面に塗装を施した高圧ガス容器の周面へのガスの名称等のマーキングについては、例えば特許文献1、2に、マーキング作業を自動化し、作業に必要であった労働力を大幅に削減できるマーキング装置が提案されている。ここには、マーキングガンにより速乾性の赤色塗料を直接ガス容器の上側周面に吹き付け、遅乾性の白色塗料についてはステンシル(前記のマーキング板を指す)を使用するか、速乾性のものに改質するためアトマイズエアで霧状にして直接吹き付けることが記載されている。しかし、吹き付けにより形成されたマークの付着性や剥離等については何も記載されていない。
【0009】
【特許文献1】特開平7−163920号公報
【特許文献2】特開平8−100899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、フタル酸樹脂塗料やラッカー系塗料を用いる従来のステンシルの塗装方法では、アミノアルキド樹脂系塗料の焼付塗装面に適用した場合、ステンシルが剥離しやすいという問題を解決し、前記アミノアルキド樹脂系塗料の塗装面に対する付着性および耐久性を向上させ、ステンシルの剥離を防止するとともに、それに起因する保守管理面での支障を回避し得るステンシル塗装方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記の課題を解決するため、ステンシル用塗料として使用されているフタル酸樹脂塗料やラッカー系塗料などの代わりに、建築用、自動車用、その他ユーザーの要求性能に応じて供給されるいわば特定用途向けの塗料である二液重合乾燥型塗料の適用について検討した。この塗料は、使用直前に二液、すなわち主剤(樹脂、顔料など)と硬化剤とを混合するという取扱い上の煩わしさはあるが、塗膜性能が優れており、アミノアルキド樹脂系塗料の塗装面に対する付着性に問題がなければ、ステンシル用塗料として適用可能で、課題解決のための有効な手段になりうると考えられる。
【0012】
検討の結果、この二液重合乾燥型塗料はアミノアルキド樹脂系塗料の塗装面に対して優れた付着性を有し、耐食性、耐湿性などの耐久性も良好であり、また温度を上げると硬化を促進できるという利点もあって、十分適用可能であることが判明した。
【0013】
二液重合乾燥型塗料としては、ポリウレタン樹脂塗料が好適であり、けい素樹脂塗料(シリコーン樹脂塗料)またはふっ素樹脂塗料も十分適用できることを確認した。
【0014】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その要旨は、下記のステンシル塗装方法にある。
【0015】
すなわち、アミノアルキド樹脂系塗料の焼付塗装面にステンシルを塗装する方法であって、二液重合乾燥型塗料を用いるステンシル塗装方法である。
【0016】
なお、ここでいう「ステンシル」とは、例えば鉄板、厚紙などに文字や記号を表すマーキング孔を打ち抜いたマーキング板(型板)を用い、その上から塗料を塗布することによって、その下の被塗物表面に、前記マーキング孔に対応して形成された塗装をいう。「ステンシル塗装」とは、ステンシル用塗料を塗布して「ステンシル」を被塗物の表面に塗装することをいう。
【0017】
また、前記の「二液重合乾燥型塗料」とは、樹脂、顔料などからなる主剤と硬化剤とからなり、両者を混合することにより樹脂の重合反応が起こって強固な網目構造の塗膜が形成される塗料である。
【0018】
前記ステンシル塗装方法において、二液重合乾燥型塗料を塗布した後、40〜180℃で乾燥することとすれば、重合反応速度を速め、塗膜形成を促進することができる。
【0019】
前記ステンシル塗装方法において、二液重合乾燥型塗料としては、ポリウレタン樹脂塗料、けい素樹脂塗料(シリコーン樹脂塗料)またはふっ素樹脂塗料が好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のステンシル塗装方法によれば、アミノアルキド樹脂系塗料の塗装面(例えば、高圧ガス容器等の外面に塗布された前記塗料による塗装面)にステンシル塗装を行うに際し、その付着性、ならびに、耐食性(耐候性を含む)、耐湿性などの耐久性を向上させ、ステンシルの剥離を防止し、誤認を防ぐとともに、剥離に起因して起こり得る保守管理面等での様々な支障を排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のステンシル塗装方法は、アミノアルキド樹脂系塗料の焼付塗装面に二液重合乾燥型塗料を用いてステンシルを塗装する方法である。
【0022】
一般に、材料表面に塗料を塗布した際、塗料は、(a)揮発乾燥型、(b)酸化乾燥型、(c)熱重合乾燥型、(d)二液重合乾燥型、などの乾燥形態(硬化機構)により乾燥(硬化)し、塗膜が形成される。(a)、(b)については前述したとおりである。(c)の熱重合乾燥型は、加熱することにより樹脂の重合反応が起こって緻密な網目構造が形成される乾燥形態で、優れた性能を有する塗膜が形成される。本発明のステンシル塗装方法が適用される塗装面を形成するアミノアルキド樹脂系塗料はこの熱重合乾燥型塗料である。
【0023】
また、(d)の二液重合乾燥型は、主剤(樹脂、顔料など)と硬化剤とを混合することにより樹脂の重合反応が起こり、(c)の乾燥形態と同様に緻密な網目構造が形成され、優れた塗膜性能が得られる乾燥形態である。反応は常温でも進行するが、温度を高めると促進される。
【0024】
アミノアルキド樹脂系塗料の塗装面に塗布するステンシル用の塗料として、従来は、(b)の乾燥形態で塗膜が形成されるフタル酸樹脂塗料や、(a)の乾燥形態で塗膜形成が行われるラッカー系塗料が用いられてきた。しかし、前述のように、フタル酸樹脂塗料では、空気中の酸素による酸化重合で形成される網目構造が粗く、酸化重合の完成に長期間を要する。また、ラッカー系塗料では、塗膜を強固にする網目構造が形成されず、いずれも塗膜(すなわち、ステンシル)の付着性が不十分である。
【0025】
これに対し、本発明のステンシル塗装方法では(d)の乾燥形態で塗膜が形成される二液重合乾燥型の塗料を使用する。これにより、緻密な網目構造をなし、優れた塗膜性能を有するとともに、後述する実施例に示すように、付着性にも優れた塗膜が形成される。
【0026】
この二液重合乾燥型塗料は、アミノアルキド樹脂系塗料が焼付塗装された面、例えば高圧ガス容器等の外面の前記塗料が塗布された面、に塗布される。
【0027】
アミノアルキド樹脂系塗料は、前記(c)の熱重合乾燥型塗料で、多塩基酸(無水フタル酸等)と多価アルコール(グリセリン等)との縮合反応によって生成するアルキド樹脂をアマニ油、大豆油などの植物性油で変性した塗料用の油変性アルキド樹脂に、アミノ樹脂(尿素樹脂、メラミン樹脂など)を混合して得られた塗料である。必要とされる塗膜性能によって、前記変性の方法(油の種類と含有量)、塗料用アルキド樹脂とアミノ樹脂との配合割合等が異なり、それに応じて塗装面の特性が変化する。したがって、本発明のステンシル塗装方法で使用する二液重合乾燥型塗料は、高圧ガス容器等の使用条件に応じて様々な特性を示すアミノアルキド樹脂系塗料による塗装面に塗布される。
【0028】
二液重合乾燥型塗料としては、各種の二液形ポリウレタン樹脂塗料、けい素樹脂塗料(シリコーン樹脂塗料)、ふっ素樹脂塗料、さらには各種の二液形エポキシ樹脂塗料などがあげられる。
【0029】
これら二液重合乾燥型塗料のうち、ポリウレタン樹脂塗料、けい素樹脂塗料(シリコーン樹脂塗料)およびふっ素樹脂塗料が好適である。エポキシ樹脂塗料は、耐候性以外の耐久性、耐塩水性、耐薬品性などは極めて良好であるが、耐候性は必ずしも良くはない。したがって、前記エポキシ樹脂塗料(二液形)を使用するに当たっては、ステンシル塗装が施される高圧ガス容器等の使用環境についての配慮が必要である。
【0030】
ポリウレタン樹脂塗料は、イソシアネート基をもつ化合物(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなど)とポリオール化合物(ポリエステルポリオールなど)との反応により生成するウレタン結合(−NH−CO−O−)を有する樹脂を基体とする塗料である。ウレタン結合を得るために用いる反応によって種々のポリウレタン樹脂塗料(それらの変性樹脂塗料を含む)が得られる。
【0031】
一液形の塗料もあるが、本発明の塗装方法では二液形の塗料を用いる。例えば、ポリエステル、ポリプロピレングリコール等のポリオール、顔料、溶剤などを原料とする主剤と、ポリイソシアネートなどを原料とする硬化剤からなる二液形の塗料が使用できる。実施例に示すように、アクリル変性ポリウレタン樹脂や、セラミック変性ポリウレタン樹脂などが好適である。
【0032】
ポリウレタン樹脂塗料は、耐摩耗性が大きく、たわみ性に富んでおり、優れた耐候性を有している。緻密な塗膜が形成されるので、耐水性、耐薬品性にも優れている。
【0033】
けい素樹脂塗料(シリコーン樹脂塗料)は、クロロシラン誘導体の加水分解、重縮合によってつくられるシロキサン結合(−Si−O−Si−)を主鎖とし、側鎖にメチル基やフェニル基などの有機基を有する有機けい素高分子化合物(シリコーン)を主体とする塗料である。メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンなどの純シリコーン樹脂を原料とする塗料と、アクリル、メラミンなどで変性した変性シリコーン樹脂を原料とする塗料とが使用されている。
【0034】
本発明の塗装方法では、例えば、シリコーンとアクリル樹脂とを反応させて得られる変性シリコーン樹脂を主体とする主剤と、ポリイソシアネートなどを原料とする硬化剤からなる二液形の塗料(アクリルシリコーン樹脂塗料)が使用できる。また、セラミック変性アクリルシリコーン樹脂塗料なども好適である。
【0035】
この塗料は、二液形のポリウレタン樹脂塗料と同様に高耐候性を有しており、塗装後の表面乾燥が速いという利点もある。
【0036】
ふっ素樹脂塗料は、ふっ素を含むオレフィンの重合により得られるC−F結合を有するふっ素樹脂を主体とする塗料で、耐候性、耐熱性、耐摩耗性等に非常に優れた塗膜が形成される。
【0037】
この塗料は、ふっ素樹脂、顔料、溶剤などを原料とする主剤と、ポリイソシアネートなどを原料とする硬化剤からなる二液形の塗料であり、本発明の塗装方法では、このふっ素樹脂塗料を二液重合乾燥型塗料として使用することができ、好適である。
【0038】
前記二液重合乾燥型の塗料を用いてステンシル塗装を行うに際しては、塗装の直前に二液(主剤と硬化剤)を混合する工程が必要である。両者を混合すると重合反応が進み、次第に硬化する。したがって、使用時に必要量を混合して用いる。その他の工程については、従来のフタル酸樹脂塗料やラッカー系塗料を用いる場合と同じで、通常用いられている方法により塗装を行うことができる。
【0039】
前述した本発明のステンシル塗装方法においては、二液重合乾燥型塗料を塗布した後、40〜180℃で乾燥するのが望ましい。二液重合乾燥型塗料では、樹脂の重合反応は常温でも進行するが、温度を高めると重合反応速度が速くなるので、塗膜形成を促進し塗装効率を向上させることができるからである。
【0040】
180℃を望ましい上限とするのは、塗膜の黄変色を防止するためである。また、40℃未満では顕著な反応促進効果が得られ難いので、望ましい下限は40℃とする。
【0041】
乾燥には、赤外線乾燥設備、熱風乾燥設備を用いるのがよい。
【0042】
赤外線乾燥設備は赤外線のエネルギーを利用するもので、近赤外線乾燥設備と遠赤外線乾燥設備とがある。近赤外線乾燥設備では熱源として赤外線電球が用いられる。構造が簡単で組み立てが容易であり、赤外線の放射角度が自由に変えられるという利点がある。一方、遠赤外線乾燥設備はガス、電気などにより加熱した管状またはプレート状の赤外線ヒータを熱源とし、加熱面から放射される遠赤外線により塗膜を乾燥させるものである。本発明の塗装方法では、これらのいずれも使用できる。
【0043】
熱風乾燥設備は加熱した空気、燃焼ガスを利用するもので、熱源として重油、灯油、ガス(気体燃料)、電気などが用いられる。燃焼ガスまたはそれに空気を混合したガスを乾燥室に送って直接乾燥する方式と、熱交換器を用いて加熱した空気を乾燥室に送り間接的に乾燥する方式があるが、いずれも使用できる。
【0044】
以上説明した二液重合乾燥型の塗料を用いる本発明のステンシル塗装方法によれば、アミノアルキド樹脂系塗料が塗装された面に対して優れた付着性を有するステンシル塗装を施すことができる。
【0045】
すなわち、本発明の塗装方法で得られるステンシルは、JIS K 5600−5−6:1999に規定される付着性を評価するクロスカット法による試験において、後述する実施例に示すように、「分類2」以上の付着性を示す。
【0046】
また、塗料を塗布した後に前述の乾燥処理を行う工程を付加すれば、例えば高圧ガス容器の塗装ラインで、ステンシル用塗料を塗布した後30分以内に前記「分類2」以上の付着性を確保することができる。
【0047】
さらに、本発明の塗装方法で得られるステンシルは、JIS K 5600−7−1:1999に規定される塩水噴霧試験およびJIS K 5600−7−2:1999に規定される耐湿性試験でも「異常なし」と評価され(後述する実施例参照)、耐久性にも優れている。
【実施例】
【0048】
厚さ0.8mmの炭素鋼鋼板の表面にアミノアルキド樹脂系塗料を焼付塗装し、その塗装面に、表1に示す各種の塗料をステンシル用として塗装したものを試験片とし、このステンシル用として塗装したそれぞれの塗膜について、アミノアルキド樹脂系塗料の塗装面に対する付着性(以下、単に「付着性」という)、および耐久性を調査した。耐久性の調査では、塩水噴霧試験および耐湿性試験を実施した。
【0049】
付着性については、JIS K 5600−5−6:1999に規定される方法に準じて試験を行い、同規定の表1「試験結果の分類」に基づいて評価した。
【0050】
塩水噴霧試験は、JIS K 5600−7−1:1999に規定される方法に基づき、試験片に35℃の5%NaCl水溶液を72時間連続的にスプレーする試験を行い、異常の有無を判定した。
【0051】
また、耐湿性試験は、JIS K 5600−7−2:1999に規定される方法に基づき、試験片を温度50℃、相対湿度95%以上の雰囲気中で72時間保持する試験を行い、異常の有無を判定した。
【0052】
表1に付着性の評価結果を示す。同表において、「評価結果」の「室温(23℃)」の欄は、ステンシル塗装後(すなわち、ステンシル用塗料を塗布した後)、30分、24時間、48時間または240時間経過した後に規定の方法で試験を行って付着性を評価した結果を示し、「乾燥(70℃×10分)後」の欄は、ステンシル塗装後、10分間室温で養生し、続いて70℃×10分の乾燥処理を行い、その後、30分、24時間、または240時間経過した後に同様に評価した結果を示す。
【0053】
また、評価の「○印」は塗膜の剥離がないか、あっても少なく、JIS K 5600−5−6:1999の表1「試験結果の分類」における「分類2」以上の評価が得られた場合である。「分類2」とは、クロスカット部分で影響を受ける(剥離が生じている)のは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない、ということを表すので、前記の「分類2」以上とは、剥離部分が15%以下であることを意味する。一方、「×印」は「分類2」の状態よりも悪いと評価された場合で、クロスカット部分での塗膜の剥離が15%を超えていることを表す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示した結果から明らかなように、二液重合乾燥型塗料であるポリウレタン樹脂塗料(試験No.1〜3)、シリコーン樹脂塗料(試験No.4)またはふっ素樹脂塗料(試験No.5)を用いた場合、室温(23℃)では、塗布後24時間または48時間経過時点で前記「分類2」以上の評価が得られた。さらに、70℃で10分間の乾燥処理をした場合は、重合反応が促進され、短時間で緻密な網目構造が形成された結果、付着性も向上し、いずれも30分経過時点で「分類2」以上という優れた付着性を示した。
【0056】
これに対し、フタル酸樹脂塗料を用いた場合(試験No.6および7)は、「室温(23℃)」、「乾燥(70℃×10分)後」のいずれにおいても30分経過時点で良好な評価が得られたが、その後「分類2」の状態よりも悪化した。また、ラッカー系塗料、アクリル系水性ペイント、マーキング用インキを用いた場合(試験No.8〜10)は、「室温(23℃)」、「乾燥(70℃×10分)後」のいずれの場合も「分類2」以上の評価は得られなかった。
【0057】
表2に、ステンシル塗装後の乾燥処理において、乾燥温度を変化させた場合の付着性および塗膜の外観に及ぼす影響を調査した結果を示す。「乾燥温度(℃)」の欄は、ステンシル塗装後、10分間室温で養生し、続いて、同欄に示した各温度で10分間保持した後に、規定の方法で付着性の試験を行うとともに、塗膜の外観を目視検査して異常の有無を評価した結果である。なお、調査は、ステンシル用としてポリウレタン樹脂塗料(試験No.3)およびシリコーン樹脂塗料(試験No.4)を用いた試験片について実施した。
【0058】
【表2】

【0059】
表2に示すように、ポリウレタン樹脂塗料およびシリコーン樹脂塗料のいずれを用いた場合であっても、乾燥温度が40℃以上であれば、付着性は「分類2」以上という良好な結果が得られた。一方、外観については、乾燥温度が200℃になると黄変色が認められた。
【0060】
この調査結果から、ステンシル塗装後、乾燥処理を行う場合は、乾燥温度を40〜180℃の範囲内とするのが望ましいことがわかる。
【0061】
表3に、ステンシル塗装後の耐久性を調査した結果(塩水噴霧試験および耐湿性試験の評価結果)を示す。試験片作製条件は、ステンシル塗装後、室温で10分間養生し、続いて70℃で10分間保持した後、更に室温で24時間養生したものを試験片とした。
【0062】
【表3】

【0063】
ポリウレタン樹脂塗料(試験No.1〜3)、シリコーン樹脂塗料(試験No.4)またはふっ素樹脂塗料(試験No.5)を用いた場合、塩水噴霧試験、耐湿性試験のいずれについても「異常なし」という評価が得られ、これらの塗料が耐久性にも優れていることが確認できた。
【0064】
一方、フタル酸樹脂塗料を用いた場合(試験No.6および7)は、塩水噴霧試験、耐湿性試験のいずれにおいても「塗膜ふくれ」が認められ、耐久性についても満足できる評価は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のステンシル塗装方法は、アミノアルキド樹脂系塗料の焼付塗装面に二液重合乾燥型塗料を用いてステンシルを塗装する方法で、その付着性および耐久性を向上させ、ステンシルの剥離を防止し、剥離に起因して起こり得る保守管理面等での様々な支障を排除することができる。
【0066】
このステンシル塗装方法は、アミノアルキド樹脂系塗料の塗装面(例えば、高圧ガス容器等の外面に塗布された前記塗料による塗装面)にステンシルを塗装する際に、好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノアルキド樹脂系塗料の焼付塗装面にステンシルを塗装する方法であって、二液重合乾燥型塗料を用いることを特徴とするステンシル塗装方法。
【請求項2】
前記二液重合乾燥型塗料を塗布した後、40〜180℃で乾燥することを特徴とする請求項1に記載のステンシル塗装方法。
【請求項3】
前記二液重合乾燥型塗料がポリウレタン樹脂塗料、けい素樹脂塗料またはふっ素樹脂塗料であることを特徴とする請求項1または2に記載のステンシル塗装方法。

【公開番号】特開2006−239558(P2006−239558A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58408(P2005−58408)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000182926)住金機工株式会社 (7)
【Fターム(参考)】