説明

ステントグラフトデリバリー装置

【課題】術者の技量に依存せず、ステントグラフトを本来の長さと異なる長さで容易に展開することができるステントグラフトデリバリー装置を提供する。
【解決手段】ステントグラフトデリバリー装置10Aは、先端側でステントグラフト12を載置したシャフト14と、シャフト14の外側で摺動可能なシース16と、シャフト14及びシース16の基端側に設けられるハンドル17と、シース16の基端方向への移動に伴ってシャフト14を先端方向へと従動的に移動させる歯車機構50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ状のグラフトに金属骨格を設けたステントグラフトを体腔内へと送達するステントグラフトデリバリー装置に関し、より詳細には、ステントグラフトを本来の長さと異なる長さで展開するためのステントグラフトデリバリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大動脈瘤や大動脈解離等の治療には人工血管を用いた外科手術が行われてきたが、近年、ステントグラフトを用いた低侵襲治療が広がっている(例えば、特許文献1参照)。一般的なステントグラフトは、ポリエステル等の樹脂の糸で織られた織物(ファブリック)を円筒状に形成したチューブ(グラフト)の内面又は外面に、ニッケルチタン合金やステンレス等の針金をZ状やリング状に形成した骨格(ステント)を縫合固定して構成されており、体腔内で展開・拡張されることで所望の血管内等に留置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−512863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ステントグラフトで大動脈瘤の治療を行う場合には、その両端が病体血管近傍の正常血管に留置される必要がある。従って、テントグラフト治療における最低限必要な留置長さは病体血管の前後の正常血管間の長さとなる。
【0005】
通常、ステントグラフトの留置位置や必要長さは、手術前に取得したX線造影像やCT画像等から予測するが、複数の屈曲部を持つ血管に留置する場合等では、前記留置位置や必要長さの予測が難しく、必要な留置長さに届かず、新たなステントグラフトを追加挿入しなければならないことがある。また、血管の屈曲部に発生した瘤をステントグラフト留置で治療した場合、治癒の過程で血管の屈曲が変化し、留置したステントグラフトの端部が脱落する可能性がある。
【0006】
このような問題の解決手法としては、留置に必要な長さよりも長いステントグラフトを選択し、必要に応じて該ステントグラフトを長さ方向に縮めながら留置することが考えられる。従来では、シャフト外面に配置されたステントグラフトを収納するシースを引き下げることでステントグラフト中枢端側から徐々に展開しつつ、術者のテクニックによりデリバリー装置全体を押し上げることでステントグラフトを縮めて全長を短縮化している。
【0007】
しかしながら、このような従来の手技は、術者のテクニックに依存するものであり、例えばデリバリー装置の押上げ具合が大きいとグラフトがめくれたり、骨格同士が重なり合ったりする可能性がある。
【0008】
本発明はこのような従来技術の課題を考慮してなされたものであり、術者の技量に依存せず、ステントグラフトを本来の長さと異なる長さで容易に展開することができるステントグラフトデリバリー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係るステントグラフトデリバリー装置は、チューブ状のグラフトに骨格を設けたステントグラフトを、先端側に設けられたマウント部に載置したシャフトと、前記シャフトの外側で前記シャフトの長手方向に沿って摺動可能に配置され、前記ステントグラフトを内腔内に収納可能なシースと、前記シャフト及び前記シースの基端側に設けられるハンドルと、を備え、前記シースは、前記ハンドルを基準として基端方向に移動可能に設けられ、前記シャフトは、前記ハンドルを基準として先端方向に移動可能に設けられることを特徴とする。
【0010】
上記の本発明の構成によれば、シースをハンドルに対して基端方向に移動させてステントグラフトを拡張・展開させる際に、ハンドルの位置を保持したまま、シャフトをハンドルに対して基端方向に移動させることで、ステントグラフトの全長を簡単且つ確実に短縮することができる。よって、デリバリー装置全体を押し上げてステントグラフトの全長を縮める従来の手技と比較して、術者のテクニックに対する依存度が少なく、簡単にステントグラフトの全長を縮める手技を遂行することができる。
【0011】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記シースの基端方向への移動に伴って、前記シャフトを前記先端方向へと従動的に移動させる移動機構を備えるとよい。
【0012】
上記の構成によれば、シースを基端方向に移動させる操作に伴って、移動機構の作用によりシャフトが自動的に先端方向に移動するので、ステントグラフトを拡張させながら短縮化する手技を、操作者の技量によらず簡単且つ確実に実施することができる。また、シースの移動量に対するシャフトの移動量を任意に設定した割合に固定できるため、ステントグラフトの骨格同士が重なったり、グラフトがめくれたりすることを確実に防止することができる。
【0013】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、ハンドルは、前記シャフトが前記シースに従動する従動状態と、シャフトのシースに対する従動を解除する解除状態とを選択的に切り替えるスイッチ機構をさらに有するとよい。
【0014】
このようなスイッチ機構により、シャフトのシースに対する従動状態と解除状態とを切り換えることができるので、患者の血管の長さや蛇行具合に応じて、ステントグラフトをどれだけ縮めるかを容易に調整し、且つ、本来長さよりも短い任意の(所望の)長さでステントグラフトを血管内に留置できる。
【0015】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記シースは、先端側で前記ステントグラフトを収納するシース本体と、該シース本体の基端部に設けられるシースパイプとを有し、前記シースパイプは、前記ハンドルに連結されると共に、該シースパイプの外面にはシース側ラックギアが形成され、前記シャフトは、先端側に前記ステントグラフトが配置されるシャフト本体と、該シャフト本体の基端側に設けられるシャフトパイプとを有し、前記シャフトパイプは、前記ハンドルに連結されると共に、該シャフトパイプの外面にはシャフト側ラックが形成され、前記シースパイプの少なくとも一部は、シャフトパイプ内に挿通され、前記移動機構は、前記シース側ラックギアに噛み合うシース側第1歯車と、該シース側第1歯車に連動するシース側第2歯車とを有するシース側歯車機構と、前記シャフト側ラックに噛み合うシャフト側第1歯車と該シャフト側第1歯車に連動するシャフト側第2歯車とを有するシャフト側歯車機構と、前記シース側第2歯車及び前記シャフト側第2歯車に噛み合い、前記ハンドルに対して回転可能に軸支された中間歯車とを備えるとよい。このように、複数の歯車を組み合わせることにより、シースの基端方向への移動に伴ってシャフトを先端方向に移動させる機構を実現することができる。
【0016】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記ハンドルは、シャフト側第2歯車と中間歯車とが係合する係合状態と、シャフト側第2歯車と中間歯車とが係合しない非係合状態とを選択的に切り換えるスイッチ機構をさらに有するとよい。このようなスイッチ機構により、係合状態と非係合状態とを切り換えることができるので、患者の血管の長さや蛇行具合に応じて、ステントグラフトをどれだけ縮めるかを容易に調整し、且つ、本来長さよりも短い任意の(所望の)長さでステントグラフトを血管内に留置できる。
【0017】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記シャフト側歯車機構は、前記シャフト側第1歯車と前記シャフト側第2歯車とが互いに同軸上で一体的に回転するように設けられたシャフト側歯車軸であり、前記シャフト側歯車軸は、前記中間歯車に対して傾動可能であり、前記シャフト側歯車軸の傾動により、前記係合状態と前記非係合状態とが切り換り、前記シャフト側第1歯車と前記シャフト側ラックとの噛み合いは、前記シャフト側歯車軸の傾動状態に関わらず保持され、前記ハンドルには、前記非係合状態のとき前記シャフト側第2歯車に係合してシャフト側第2歯車の回転を阻止する回転阻止係合部が設けられるとよい。
【0018】
上記の構成によれば、シャフト側第2歯車と中間歯車との噛み合いが解除された状態では、シャフトのシースに対する連動が解除される一方、シャフト側歯車軸に設けられたシャフト側第1歯車がシャフトパイプに設けられたシャフト側ラックと噛み合うとともに、シャフト側第2歯車は回転阻止係合部によって回転が阻止される。したがって、シースに対するシャフトの連動が解除された状態で、シャフトのハンドルに対する移動が阻止され、シャフトの位置を確実に保持することができる。
【0019】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、ハンドルには、中間歯車又はシース側歯車機構に連結され、人手によって回転させる回転操作部が設けられるとよい。このような回転操作部を設けることで、シースを基端方向に移動させる操作を簡単に実施することができる。
【0020】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記シースは、先端側で前記ステントグラフトを収納するシース本体と、該シース本体の基端側に設けられるシースハブとを有し、前記シャフトは、先端側に前記ステントグラフトが配置されるシャフト本体と、該シャフト本体の基端側に設けられるシャフトハブとを有し、前記ハンドルの先端側には、前記シースハブ及び前記シャフトハブを軸線方向に移動可能にガイドするガイドパイプが連結固定され、前記移動機構は、前記ハンドル内で回転可能に配置され、第1プーリを有する第1回転体と、前記ハンドル内で回転可能に配置され、第2プーリを有する第2回転体と、前記シースハブに連結されるとともに前記第1プーリに巻き掛けられ、且つ、前記ガイドパイプに沿って延在するとともに前記ガイドパイプにおける前記シースハブの可動範囲よりも先端側で折り返すように配設された第1ワイヤと、前記シャフトハブに連結されるとともに前記第2プーリに巻き掛けられ、且つ、前記ガイドパイプに沿って延在するとともに前記ガイドパイプにおける前記シャフトハブの可動範囲よりも先端側で折り返すように配設された第2ワイヤとを備え、前記第1プーリと前記第2プーリの機械的連動によって、前記シースの基端方向への移動に伴って、前記シャフトが先端方向に移動するとよい。
【0021】
このように、複数のプーリ及び複数のワイヤにより、シースの基端方向への移動に伴ってシャフトを先端方向に移動させる機構を実現することができる。
【0022】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記第1回転体と前記第2回転体とは、回転を伝達するように互いに係合可能であり、前記ハンドルは、前記第1回転体と前記第2回転体とが係合する係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが係合しない非係合状態とを選択的に切り換えるスイッチ機構をさらに有するとよい。
【0023】
このようなスイッチ機構により、係合状態と非係合状態とを切り換えることができるので、患者の血管の長さや蛇行具合に応じて、ステントグラフトをどれだけ縮めるかを容易に調整し、且つ、本来長さよりも短い任意の(所望の)長さでステントグラフトを血管内に留置できる。
【0024】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記第2回転体は、前記第1回転体と同軸上に配置されるとともに、前記第1回転体に対して近接及び離間する方向に移動可能であり、前記第1回転体と前記第2回転体とは互いに相対回転不可能に係合可能であり、前記第2回転体の移動により、前記係合状態と前記非係合状態とが切り換るとよい。これにより、スイッチ機構をコンパクトに構成することができる。
【0025】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記第1回転体は、前記第1プーリと同軸に一体的に回転する第1歯車を有し、前記第2回転体は、前記第2プーリと同軸に一体的に回転する第2歯車を有し、前記第1回転体に対して並列に配置され、且つ、前記第1回転体に対して近接及び離間する方向に移動可能であり、前記第2回転体の移動により、前記係合状態と前記非係合状態とが切り換る構成としてもよい。このように、第1回転体と第2回転体とを並列に配置した場合でも、係合状態と非係合状態とを切り換えるスイッチ機構を実現できる。
【0026】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記ハンドルには、前記非係合状態のとき前記第2回転体に係合して前記第2回転体の回転を阻止する回転阻止係合部が設けられるとよい。
【0027】
上記の構成によれば、第1回転体と第2回転体との係合が解除された状態では、シャフトのシースに対する連動が解除される一方、第2回転体は回転阻止係合部によって回転が阻止さる。したがって、シースに対するシャフトの連動が解除された状態で、シャフトのハンドルに対する移動が阻止され、シャフトの位置を確実に保持することができる。
【0028】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記ガイドパイプには、軸線方向に沿って延在するガイド孔が設けられ、前記シースハブには、前記ガイド孔を通って前記ガイドパイプの外側に突出したガイド突起が設けられるとよい。この構成によれば、ガイド突起を直接把持して基端方向に引くことで、シースを基端方向に容易に移動させることができる。
【0029】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記ハンドルには、前記第1回転体に連結され、人手によって回転させる回転操作部が設けられるとよい。このような回転操作部を設けることで、シースを基端方向に移動させる操作を簡単に実施することができる。
【0030】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記ガイドパイプの先端部には、前記第1ワイヤが巻き掛けられた先端側プーリと、前記先端側プーリと一体的に回転可能であり人手によって回転操作する先端側回転操作部とが設けられるとよい。この構成によれば、ガイドパイプの先端側に設けられた先端側回転操作部を回転することで、シースを移動させることができる。したがって、術者は、一方の手で自身に近い側にあるハンドルを保持し、他方の手で先端側回転操作部を操作するという使い方ができる。
【0031】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを表示するインジケータをさらに備えるとよい。このようなインジケータを備えることにより、ステントグラフトデリバリー装置の操作途中において、ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを簡単且つ迅速に把握することができる。
【0032】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを表示するインジケータと、前記インジケータを動作させるインジケータ動作機構とをさらに備え、前記インジケータは、前記シースパイプと前記シャフトパイプとの間に、前記シースパイプの軸線方向に沿って配置された棒状部材であり、前記インジケータのうち、前記シャフトパイプに覆われず、前記シースパイプ上に露出する部分の長さが、前記ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを示すとよい。
【0033】
上記の構成によれば、シースパイプ上に露出したインジケータの長さを見るだけで、ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを簡単且つ迅速に把握することができる。
【0034】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記インジケータ動作機構は、前記ガイドパイプに対して前記シースが基端方向に移動し且つシャフトがハンドルに対して位置を保持する場合に、前記シースの移動量に対して所定の割合で、前記ハンドルに対して前記インジケータを基端方向に移動させ、前記ハンドルに対して前記シースが基端方向に移動しつつ前記シャフトが先端方向に移動する場合に、前記ハンドルに対して前記インジケータを静止させるとよい。このようにインジケータを動かすので、ステントグラフトの残り縮め可能量を適切に表示することができる。
【0035】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記インジケータ動作機構は、前記ハンドルに回転可能に軸支されるとともに中間歯車に係合可能なインジケータ側歯車を有し、前記インジケータ側歯車の回転に基づいて前記インジケータが動作し、前記ハンドルには、さらに、前記シャフト側第2歯車と前記中間歯車とが噛み合わず且つ前記インジケータ側歯車と前記中間歯車とが噛み合う第1の切換状態と、前記シャフト側第2歯車と前記中間歯車とが噛み合い且つ前記インジケータ側歯車と前記中間歯車とが噛み合わない第2の切換状態とを選択的に切り換えるスイッチ機構が設けられるとよい。
【0036】
このような構成によれば、シャフト側第2歯車とインジケータ側歯車のうち一方だけが中間歯車に係合するので、スイッチを第1の切換状態に設定してシースを基端方向に移動させると、シャフトは動かない一方で、インジケータを基端方向に移動させることができる。また、スイッチを第2の切換状態に設定してシースを基端方向に移動させると、シャフトは先端方向に移動する一方で、インジケータの位置を保持できる。よって、インジケータを適切に動作させることができる。
【0037】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記スイッチ機構は、スイッチ軸部を中心として揺動可動なスイッチ部材を備え、前記スイッチ部材には、前記スイッチ軸部を基準として互いに反対側に設けられた第1係合孔及び第2係合孔を有し、前記シャフト側第2歯車に設けられた軸部が、前記第1係合孔に係合し、前記インジケータ側歯車に設けられた軸部が、前記第2係合孔に係合するとよい。
【0038】
このようにスイッチ部材が構成されることにより、シャフト側第2歯車とインジケータ側歯車のうち一方が中間歯車に近接する方向に移動するとき、常に他方は中間歯車から離間する方向に移動するので、シャフト側第2歯車とインジケータ側歯車のうち一方だけを選択的に歯車機構に係合させる切換操作を確実に行うことができる。
【0039】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記シャフト側歯車機構は、前記シャフト側第1歯車と前記シャフト側第2歯車とが互いに同軸上で一体的に回転するように設けられたシャフト側歯車軸であり、前記シャフト側歯車軸は、前記中間歯車に対して傾動可能であり、前記シャフト側歯車軸の傾動により、前記係合状態と前記非係合状態とが切り換り、前記シャフト側第1歯車と前記シャフト側ラックとの噛み合いは、前記シャフト側歯車軸の傾動状態に関わらず保持され、前記インジケータ側歯車は、前記中間歯車に対して傾動可能なインジケータ側歯車軸に設けられ、前記ハンドルには、前記シャフト側第2歯車と前記中間歯車とが噛み合っていないとき、前記シャフト側第2歯車に係合してシャフト側第2歯車の回転を阻止する第1回転阻止係合部と、前記インジケータ側歯車と前記中間歯車とが噛み合っていないとき、前記インジケータ側歯車に係合して前記インジケータ側歯車の回転を阻止する第2回転阻止係合部とが設けられるとよい。
【0040】
上記の構成によれば、シャフト側第2歯車と中間歯車とが噛み合っていないとき、第1回転阻止係合部によってシャフト側第2歯車の回転が阻止されるので、シャフトのハンドルに対する移動が阻止(ロック)され、シャフトの位置を確実に保持することができる。一方、インジケータ側歯車と中間歯車とが噛み合っていないとき、第2回転阻止係合部によってインジケータ側歯車の回転が阻止されるので、シースパイプに対するインジケータの位置を確実に保持することができる。
【0041】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを表示するインジケータと、インジケータを動作させるインジケータ動作機構とをさらに備え、前記インジケータは、前記シースハブと前記シャフトハブとの間で前記ガイドパイプに対して軸線方向に移動可能なマーカ部材として構成され、前記マーカ部材は、外部から視認可能な状態で配設されており、前記シャフトハブと前記マーカ部材との距離が、前記ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを示すとよい。
【0042】
上記の構成によれば、シャフトハブとマーカ部材との距離を見るだけで、ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを簡単且つ迅速に把握することができる。
【0043】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記インジケータ動作機構は、前記ハンドルに対して前記シースが基端方向に移動し且つ前記シャフトが静止する場合に、前記シースの移動量に対して所定の割合で前記ガイドパイプに対して前記インジケータを基端方向に移動させ、前記ハンドルに対して前記シースが基端方向に移動しつつ前記シャフトが先端方向に移動する場合に、前記ガイドパイプに対して前記インジケータの位置を静止させるとよい。このようにマーカ部材を動かすので、ステントグラフトの残り縮め可能量を適切に表示することができる。
【0044】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記インジケータ動作機構は、前記ハンドル内に回転可能に配置され、第3プーリを有する第3回転体と、前記マーカ部材に連結されるとともに前記第3プーリに巻き掛けられ、且つ、前記ガイドパイプに沿って延在するとともに前記ガイドパイプにおける前記マーカ部材の可動範囲よりも先端側で折り返すように配設された第3ワイヤとを備え、前記第2回転体及び前記第3回転体の各々は、前記第1回転体に対して近接及び離間する方向に移動可能であるとともに、前記第1回転体の回転が伝達されるように前記第1回転体と係合可能であり、前記ハンドルには、前記第1回転体と前記第2回転体とが係合せず且つ前記第1回転体と前記第3回転体とが係合する第1の切換状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが係合し且つ前記第1回転体と前記第3回転体とが係合しない第2の切換状態とを選択的に切り換えるスイッチ機構が設けられるとよい。
【0045】
このような構成によれば、第2回転体と第3回転体のうち一方だけが第1回転体に係合するので、スイッチを第1の切換状態に設定してシースを基端方向に移動させると、シャフトは動かない一方で、インジケータを基端方向に移動させることができる。また、スイッチを第2の切換状態に設定してシースを基端方向に移動させると、シャフトは先端方向に移動する一方で、インジケータの位置を保持できる。よって、インジケータを適切に動作させることができる。
【0046】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記第1回転体、前記第2回転体及び前記第3回転体は、前記ハンドルの軸線方向に沿って一列に配置され、前記第1回転体は、前記第2回転体と前記第3回転体との間に配置され、前記スイッチ機構は、人手によって移動操作されるスイッチ部材を有し、前記スイッチ部材は、前記第2回転体及び前記第3回転体に連結され、前記ハンドルに対して、前記第2回転体及び前記第3回転体と一体的に軸線方向に移動可能である、ことを特徴とする。このような構成によれば、スイッチ部材を前後に移動させるだけで、簡単に第1の切換状態と第2の切換状態のいずれかに切り換えることができる。
【0047】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記ハンドルには、前記第2回転体と前記第1回転体とが係合していないとき、前記第2回転体に係合して前記第2回転体の回転を阻止する第1回転阻止係合部と、前記第3回転体と前記第1回転体とが係合していないとき、前記第3回転体に係合して前記第3回転体の回転を阻止する第2回転阻止係合部とが設けられるとよい。
【0048】
上記の構成によれば、第1回転体と第2回転体とが係合していないとき、第1回転阻止係合部によって第2回転体の回転が阻止されるので、シャフトのハンドルに対する移動が阻止(ロック)され、シャフトの位置を確実に保持することができる。一方、第1回転体と第3回転体とが係合していないとき、第2回転阻止係合部によって第3回転体の回転が阻止されるので、ガイドパイプに対するインジケータの位置を確実に保持することができる。
【0049】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記ハンドルには、前記スイッチ機構を前記第1の切換状態にする方向に前記スイッチ部材を直接的に又は間接的に常に付勢する弾性部材が設けられるとよい。この構成によれば、シースを基端方向に移動させる際に同時にシャフトを先端方向に移動させたいときだけ、すなわちステントグラフトの長さを縮めたいときだけ、スイッチを第2の切換状態とする方向に操作すればよい。
【発明の効果】
【0050】
本発明に係るステントグラフトデリバリー装置によれば、術者の技量に依存せず、ステントグラフトを本来の長さと異なる長さで容易に展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置の一部省略平面図である。
【図2】図1に示したステントグラフトデリバリー装置のハンドル及びその周辺部位の一部省略斜視図である。
【図3】初期状態(ステントグラフトをシャフトにマウントした状態)におけるシャフト及びシースの先端部及びその近傍の一部省略拡大断面図である。
【図4】図4Aは、シャフトパイプの左側面が見える斜視図であり、図4Bは、シャフトパイプの右側面が見える斜視図である。
【図5】シースパイプの左側面が見える斜視図である。
【図6】ギアボックス及びその周辺部位を示す一部省略斜視図である。
【図7】図7Aは、シャフト側第2歯車と中間歯車との係合が解除された状態の歯車機構及びその周辺部位の一部断面平面図であり、図7Bは、シャフト側第2歯車と中間歯車との係合が解除された状態の歯車機構及びその周辺部位の一部断面正面図である。
【図8】図8Aは、シャフト側第2歯車と中間歯車とが係合した状態の歯車機構及びその周辺部位の一部断面平面図であり、図8Bは、シャフト側第2歯車と中間歯車とが係合した状態の歯車機構及びその周辺部位の一部断面正面図である。
【図9】図9Aは、初期状態のステントグラフトデリバリー装置を示す一部省略側面図であり、図9Bは、シースを基端方向に移動させ、シャフトの位置を保持したときのステントグラフトデリバリー装置を示す一部省略側面図である。
【図10】図10Aは、初期状態のステントグラフトデリバリー装置を示す一部省略側面図であり、図10Bは、シースを基端方向に移動させるとともにシャフトを先端方向に移動させたときのステントグラフトデリバリー装置を示す一部省略側面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置の一部省略斜視図である。
【図12】図11に示すステントグラフトデリバリー装置に設けられたインジケータ動作機構の模式的説明図である。
【図13】図13Aは、ギアボックス及びその周辺部位を示す一部省略斜視図であり、図13Bは、図13AにおけるXIIIB−XIIIB線に沿った断面図である。
【図14】図14Aは、シャフト側第2歯車と中間歯車とが噛み合わず且つインジケータ側歯車と中間歯車とが噛み合った状態の歯車機構及びその周辺部位の一部断面平面図であり、図14Bは、シャフト側第2歯車と中間歯車とが噛み合い且つインジケータ側歯車と中間歯車とが噛み合わない状態の歯車機構及びその周辺部位の一部断面平面図である。
【図15】図15Aは、通常動作の場合のシースパイプ、シャフトパイプ及びインジケータの動き(位置)を説明する図であり、図15Bは、短縮動作の場合のシースパイプ、シャフトパイプ及びインジケータの動き(位置)を説明する図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置の一部省略斜視図である。
【図17】図16に示したステントグラフトデリバリー装置の一部省略平面図である。
【図18】図16に示したステントグラフトデリバリー装置の一部省略側面図である。
【図19】図19Aは、シャフトの一部省略斜視図であり、図19Bは、シースの一部省略斜視図である。
【図20】ガイドパイプ及びその周辺部位を示す一部省略斜視図である。
【図21】図21Aは、第1回転体と第2回転体とが係合していない状態を示す斜視図であり、図21Bは、第1回転体と第2回転体とが係合していない状態を示す側面図である。
【図22】図22Aは、第1回転体と第2回転体とが係合している状態を示す斜視図であり、図22Bは、第1回転体と第2回転体とが係合している状態を示す側面図である。
【図23】図23Aは、初期状態のステントグラフトデリバリー装置を示す一部省略側面図であり、図23Bは、シースを基端方向に移動させ、シャフトの位置を保持したときのステントグラフトデリバリー装置を示す一部省略側面図である。
【図24】図24Aは、初期状態のステントグラフトデリバリー装置を示す一部省略側面図であり、図24Bは、シースを基端方向に移動させるとともにシャフトを先端方向に移動させたときのステントグラフトデリバリー装置を示す一部省略側面図である。
【図25】第3実施形態の変形例を示す一部省略側面図である。
【図26】本発明の第4実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置の一部省略斜視図である。
【図27】図26に示すステントグラフトデリバリー装置の一部省略側面断面図である。
【図28】図26に示すステントグラフトデリバリー装置のハンドルの斜視図である。
【図29】図26に示すステントグラフトデリバリー装置における第1ワイヤ、第2ワイヤ及び第3ワイヤの配設構造を示す模式図である。
【図30】ガイドパイプの先端に設けられた回転操作部及びその周辺部位を示す一部省略斜視図である。
【図31】回転操作部の分解斜視図である。
【図32】図32Aは、第4実施形態の変形例を示す一部省略側面図であり、図32Bは、図32AにおけるXXXIIB−XXXIIB線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明に係るステントグラフトデリバリー装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0053】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置10A(以下、単に「デリバリー装置10A」ともいう)の全体構成図である。図1では、理解の容易のため、長尺なデリバリー装置10Aの長手方向の途中部分(先端側部分と基端側部分との間)を一部省略している。
【0054】
デリバリー装置10Aは、その先端側に載置・収納(マウント)したステントグラフト12を、血管を通して大動脈瘤等の病変部(治療部位)に到達させ、ステントグラフト12を展開・留置することで病変部の治療を行うための医療用デバイスである。
【0055】
以下、デリバリー装置10Aの各構成要素について説明する。なお、以下の説明では、図1におけるデリバリー装置10Aの右側(ハンドル17側)を「基端(後端)」側、デリバリー装置10Aの左側(ステントグラフト12側)を「先端」側と呼んで説明する。
【0056】
デリバリー装置10Aは、先端側でステントグラフト12をマウントした長尺なシャフト14と、シャフト14の外側で摺動可能な長尺なシース16と、装置の基端部を構成するハンドル17とを備える。
【0057】
シャフト14は、長尺で細径のシャフト本体20と、シャフト本体20の基端側に連結されたシャフトパイプ21(図4A参照)とを有する。シース16は、長尺で細径のシース本体22と、シース本体22の基端部に結合したシースパイプ24(図5参照)とを有する。図3は、初期状態(ステントグラフト12をシャフト14にマウントした状態)におけるシャフト14及びシース16の先端部及びその近傍の一部省略拡大断面図である。
【0058】
図3に示すように、シャフト本体20は、全長にわたって、図示しないガイドワイヤが挿通されるガイドワイヤルーメン24aが貫通形成された可撓性を有する柔軟なチューブ状部材である。シャフト14のシャフト本体20の先端側(先端部近傍)には、ステントグラフト12を載置(マウント)するためのマウント部26が設けられている。マウント部26は、その前後部位よりも縮径した部位であり、ステントグラフト12の自然状態での全長と略同じ長さに設定されている。マウント部26は、その前後に設けられた前段部26aと後段部26bとの間で、シース本体22によって縮径状態にあるステントグラフト12の先端縁部と基端縁部とをそれぞれ位置決め保持することができる。
【0059】
シース本体22は、シャフト本体20の外面側に摺動可能に配置される可撓性を有する薄肉且つ柔軟なチューブ状部材である。初期状態において、シース本体22は、シャフト本体20に対して、マウント部26を完全に覆う位置にあり、マウント部26にステントグラフト12が収納される。この状態で、ステントグラフト12はその外側にあるシース本体22によって拡張が阻止されている。
【0060】
ステントグラフト12は、チューブ状のグラフトの内面又は外面に拡張用の金属骨格であるステントを固定した構成からなる一般的なステントグラフトを用いることができるが、本実施形態の場合、好ましくは、ステントとして、Z状等の骨格ではなく、リング状の骨格を複数列配列した構成とするとよい。従って、例えば、グラフトは、ポリエステル等の樹脂の糸で織られた織物(ファブリック)や、ePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)のフィルムをチューブ状に形成して構成するとよく、ステントは、Ti−Ni合金等の超弾性合金等からなる針金をリング状やZ状に形成するとよく、これにより当該ステントグラフト12は自己拡張性能を有する。
【0061】
図4Aは、シャフトパイプ21の左側面が見える斜視図であり、図4Bは、シャフトパイプ21の右側面が見える斜視図である。図4A及び図4Bに示すように、シャフトパイプ21は、シャフト本体20より大径且つ短尺に形成され、シャフト本体20の基端側に同軸上に外嵌固定された硬質なパイプである。
【0062】
シャフト本体20には、固定リング28が外嵌固定されており、この固定リング28が、上下のピン(スライドガイド、抜け止め部材)30、31によって、シャフトパイプ21内で、シャフトパイプ21の内周面との間に隙間を空けた吊下げ状態で固定されている。これにより、シャフトパイプ21の内周面とシャフト本体20との間には、シャフトパイプ21の全長にわたって延在するリング状の空間33が形成されている。
【0063】
図4Aに示すように、シャフトパイプ21の一側面には、その軸方向に沿ってシャフト側ラックギア34が延在形成されている。図4Bに示すように、シャフトパイプ21において、シャフト側ラックギア34の反対側の他側面には、その軸方向に沿って延びて該シャフトパイプ21の内腔に連通する開口部36が形成されている。
【0064】
図5は、シースパイプ24の右側面が見える斜視図である。シースパイプ24は、シース本体22の基端部に結合されており、シース本体22より大径且つ短尺に形成され、且つシャフトパイプ21より小径且つ長尺に形成され、シース本体22の基端部に対して同軸上に連結固定されたパイプ状の部材である。シースパイプ24は、硬質な材料により構成され、シース本体22の内腔と連通する内腔を有する。
【0065】
図1及び図5に示すように、シースパイプ24において、デリバリー装置10Aの軸線を基準として、シャフトパイプ21のシャフト側ラックギア34が設けられた側とは反対側(図示した構成例では、シースパイプ24の右側面)には、その軸方向に沿ってシース側ラックギア38が形成されている。また、シースパイプ24の周方向でシース側ラックギア38から略90°の位置となる上面及び下面には、その内腔に連通するスリット42、42が延在形成されている。
【0066】
シースパイプ24は、シャフト本体20とシャフトパイプ21との間に形成された前記リング状の空間33(図4A及び図4B参照)に挿入され、その全長にわたってシャフト本体20を覆っている。シャフトパイプ21は、シースパイプ24の一部を覆っている。
【0067】
シースパイプ24に設けられた各スリット42に上下の各ピン30、31が摺動可能に貫通配置され、シースパイプ24のシース側ラックギア38がシャフトパイプ21の開口部36から臨む位置に配置される(図7B参照)。つまり、シャフト14とシース16とを組み付けた組立体の一側面には、シャフトパイプ21のシャフト側ラックギア34が配置され、その反対側の他側面には、シースパイプ24のシース側ラックギア38が開口部36から臨んで配置される。
【0068】
スリット42とピン30、31との係合作用下に、シースパイプ24はシャフトパイプ21に対して回り止めがなされた状態で、互いに軸方向に相対的に移動可能な状態でシャフト14とシース16とが連結される。このため、シャフト14とシース16とが相対的に移動される際にも、上記した各ラックギア34、38の周方向の位置関係は維持される。なお、スリット42の先端縁部及び基端縁部がそれぞれシャフトパイプ21に対するシースパイプ24の移動可能範囲を規定している。
【0069】
次に、ハンドル17について説明する。シャフト14及びシース16は、図1に示す初期位置(使用開始前位置)から、ハンドル17の位置を基準として、シャフト14が先端方向(遠位方向)に移動可能に支持され、シース16が基端方向(近位方向)に移動可能に支持される。
【0070】
なお、図1に示す初期位置では、ハンドル17の位置を基準として、シャフト14がその可動範囲の最も基端側に配置され、シース16がその可動範囲の最も先端側に配置されている。そして、当該デリバリー装置10Aでは、この初期位置において、シース16のシース本体22がシャフト14のシャフト本体20のマウント部26を完全に覆い、マウント部26に配置されたステントグラフト12を全長にわたって圧縮収納している。
【0071】
図2に示すように、ハンドル17は、シャフト14及びシース16の基端側、つまりシャフトパイプ21及びシースパイプ24に対して連結配置され、使用者(術者)が手で把持して操作する操作部である。具体的には、ハンドル17は、略円筒形状のパイプ部44と、パイプ部44の先端部に結合された(設けられた)略矩形箱状のギアボックス46と、ギアボックス46に取付けられた回転操作部48とを備える。
【0072】
パイプ部44は、使用者が握るグリップとして機能する部分であり、その中空部には、シャフト本体20、シャフトパイプ21及びシースパイプ24が挿通配置されている。ギアボックス46は、ハンドル17を基準としてシャフト14及びシース16を移動させる歯車機構50と、この歯車機構50を収容するハウジング52とを有する。
【0073】
図6に示すように、歯車機構50は、シース16の基端方向への移動に伴ってシャフト14を先端方向へと従動的に移動させる移動機構50Aを構成するものであり、シース側歯車軸54と、シャフト側歯車軸56と、シース側歯車軸54とシャフト側歯車軸56との間に配置された中間歯車58とを備えている。
【0074】
シース側歯車軸54は、シース側歯車軸機構54Aを構成するものであり、シース側ラックギア38に噛み合うシース側第1歯車54aと、該シース側第1歯車54aに連動するシース側第2歯車54bとを有する。図示した構成例では、シース側第1歯車54aとシース側第2歯車54bとは、軸部54cに互いに同軸上に一体で回転するように設けられている。シース側歯車軸54は、図示しない軸受やブラケット等を介して、ハウジング52の内部に回転可能な状態で軸支される。
【0075】
シャフト側歯車軸56は、シャフト側歯車機構56Aを構成するものであり、前記シャフト側ラックギア34に噛み合うシャフト側第1歯車56aと該シャフト側第1歯車56aに連動するシャフト側第2歯車56bとを有する。図示した構成例では、シャフト側第1歯車56aとシャフト側第2歯車56bとは、軸部56cに互いに同軸上に一体で回転するように設けられている。シャフト側歯車軸56は、図示しない軸受やブラケット等を介して、ハウジング52に回転可能に軸支され、且つ傾動可能である。
【0076】
中間歯車58は、図示しない軸受やブラケット等を介して、ハウジング52内でハウジング52に対して回転可能に軸支されている。本実施形態の場合、中間歯車58を有する中間歯車軸58aの上端には、ハウジング52の上壁を貫通して外部に露出し、術者がつまんで回転操作可能な回転操作部48(図2参照)が取り付けられている。
【0077】
本実施形態の場合、シース側第2歯車54bは、中間歯車58と常に噛み合うが、シャフト側第2歯車56bは、中間歯車58と噛み合う位置と、中間歯車58との噛み合いが解除される位置(中間歯車58から離間した位置)との間を移動可能に構成されている。具体的には、シャフト側歯車軸56は、シャフト側第2歯車56bが中間歯車58から離間する方向に傾動中心a1(図7B参照)を基準として傾動(回動)可能であり、シャフト側歯車軸56の傾動により、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とが係合する「係合状態」と、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とが係合しない「非係合状態」とが切り換る。
【0078】
図6に示すように、ギアボックス46には、この係合状態と非係合状態とを切り換えるためのスイッチ機構60が設けられている。スイッチ機構60は、シャフト側歯車軸56を傾動方向に移動可能にガイドするガイドプレート62と、シャフト側歯車軸56に係合してシャフト側歯車軸56を傾動方向に移動させるスイッチ部材64とを有する。
【0079】
ガイドプレート62は、傾動可能なシャフト側歯車軸56の上端部が係合する切換孔66aを有しており、ハウジング52に対して固定されている。切換孔66aは、シャフトパイプ21の軸線方向に略直交する方向に延在する長孔であり、その長軸方向の長さは、上端部の直径より大きく、その短軸方向の幅は、上端部の直径よりも僅かに大きい。シャフト側歯車軸56の上端部は、切換孔66a内でガイドされて、シャフトパイプ21の軸線方向に略直交する方向に移動可能である。
【0080】
スイッチ部材64は、ガイドプレート62に対して回転可能(揺動可能)に設けられたスイッチプレート67と、スイッチプレート67の端部に設けられたレバー部68とを有する。
【0081】
スイッチプレート67は、スイッチ軸部69を中心として揺動可能であるとともに、シャフト側歯車軸56の上端部が貫通する係合孔67aを有している。この係合孔67aは、シャフトパイプ21の軸線方向に沿って延びた略長円形状であり、その短辺幅がシャフト側歯車軸56の上端部の外径と略同一又は僅かに大きい寸法で設定されている。すなわち、係合孔67aは、ガイドプレート62の切換孔66aに対して交差する方向に延在している。レバー部68は、ハウジング52から外部に露出し、ハウジング52の外壁面に沿って垂下するように配設されている。
【0082】
次に、上記のように構成されたスイッチ機構60の動作を説明する。図7A及び図7Bは、それぞれ、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58との係合が解除された状態の歯車機構50及びその周辺部位の一部断面平面図及び一部断面正面図である。図8A及び図8Bは、それぞれ、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とが係合した状態の歯車機構50及びその周辺部位の一部断面平面図及び一部断面正面図である。
【0083】
ハウジング52には、スイッチ部材64のレバー部68が配設された側のハウジング52の側面から突出した抵抗突起部70が設けられている。この抵抗突起部70は、先端部が弾性的に後退可能に構成されており、先端部が最も突出した状態では、当該先端部はレバー部68の移動経路上に位置する。
【0084】
また、ハウジング52を構成する壁部のうち、シャフトパイプ21に設けられたシャフト側ラックギア34に対向する壁部52aの内面には、シャフト側第2歯車56bに対向する回転阻止係合部72aが設けられている。図示例の回転阻止係合部72aは、シャフト側第2歯車56bが噛み合い可能な歯状の突起として構成されている。なお、回転阻止係合部72aは、壁部52aに一体形成されてもよく、あるいは、壁部52aとは別の部材として構成されてもよい。
【0085】
図7A及び図7Bは、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58との係合を解除した状態を示している。このとき、スイッチ部材64のレバー部68は、抵抗突起部70を基準として、シャフトパイプ21の軸線方向に関して、シャフト側第2歯車56bと反対側に位置している。このときのスイッチ部材64の位置を「第1の位置」とよぶ。スイッチ部材64が第1の位置にあるとき、抵抗突起部70が突出状態であるため、意図的にレバー部68を移動操作しない限り、レバー部68は抵抗突起部70により係止され、その位置が保持される。
【0086】
スイッチ部材64が第1の位置にある場合、シース16の基端方向への移動に際して中間歯車58が図7Aで時計方向に回転しても、中間歯車58とシャフト側第2歯車56bとは噛み合っていないため、中間歯車58の回転はシャフト側第2歯車56bに伝達されない。また、シャフト側第2歯車56bは、回転阻止係合部72aと係合しているため、その回転が阻止される。
【0087】
すなわち、この状態では、回転阻止係合部72aによってシャフト側歯車軸56の回転が阻止されてロック状態となり、このロック状態となったシャフト側歯車軸56のシャフト側第1歯車56aがシャフトパイプ21のシャフト側ラックギア34と噛み合っていることから、シャフト14のハンドル17に対する移動が阻止された状態となる。
【0088】
図7A及び図7Bの状態から、スイッチ軸部69を中心としてスイッチ部材64を時計方向に回転させる。すると、シャフト側歯車軸56が、スイッチ部材64に設けられた係合孔67aによって中間歯車58側に押されることで、切換孔66aに沿って中間歯車58側に移動し、歯車機構50は図8A及び図8Bに示すように、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とが係合した状態に切り替わる。このときのスイッチ部材64の位置を「第2の位置」とよぶ。
【0089】
スイッチ部材64が第1の位置から第2の位置に移動する際、スイッチ部材64のレバー部68が、抵抗突起部70を弾性的に後退させながら乗り越える。この結果、レバー部68は、抵抗突起部70を基準として、シャフトパイプ21の軸線方向に関して、シャフト側第2歯車56bと同じ側に位置するとともに、抵抗突起部70により係止され、第2の位置に保持される。
【0090】
シース16の基端方向への移動に際して中間歯車58が図8Aで時計回りに回転すると、中間歯車58と噛み合うシャフト側第2歯車56bが回転する。このとき、シャフト側第1歯車56aが回転するので、シャフト側第1歯車56aに噛み合うシャフト側ラックギア34が設けられたシャフト14が先端方向に移動する。
【0091】
このように、スイッチ機構60は、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とが係合する「係合状態」と、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とが係合しない「非係合状態」とを切り換える機構であると同時に、シャフト14がシース16に従動する「従動状態」と、シャフト14のシース16に対する従動が解除された「解除状態」とを選択的に切り換える機構ということもできる。
【0092】
図6乃至図8から了解されるように、歯車機構50では、シャフト側第2歯車56b及びシース側第2歯車54bよりも、これに噛み合う中間歯車58を大径で歯数の多いもので構成している。これにより、術者が回転操作部48(図2参照)を把持して回転させる際に、中間歯車軸58aへの回転入力を増速してシャフト側歯車軸56及びシース側歯車軸54に伝達することができ、術者は手元で回転操作部48を僅かに回転させるだけでシャフト14及びシース16を円滑に移動させることができる。
【0093】
なお、歯車機構50では、シャフト側第1歯車56aよりもシャフト側第2歯車56bを大径とし、シース側第1歯車54aよりもシース側第2歯車54bを小径とし、これら各歯車よりも中間歯車58を大径として構成しているが、これら各歯車の噛み合い比(ギア比)は、当該デリバリー装置10Aの仕様、例えばシャフト14やシース16の移動距離や、シャフト側ラックギア34、シース側ラックギア38の歯数等との関係から、適宜設定変更可能であることは勿論である。
【0094】
なお、回転操作部48はなくてもよい。この場合であっても、シース16を手で直接把持して移動操作することができる。
【0095】
本実施形態に係るデリバリー装置10Aは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0096】
まず、以上のように構成されるデリバリー装置10Aについて、シャフト14を移動させず、シース16のみをハンドル17に対して基端方向に移動(退動)させ、先端側で縮径収納しているステントグラフト12を体腔内で本体の長さで展開・留置する動作、つまりステントグラフト12を設計仕様通りの長さで展開し、血管内等に留置する動作(通常動作)について説明する。
【0097】
この通常動作では、シャフト14及びシース16を患者の体内に挿入する前又は挿入した後、スイッチ部材64のレバー部68を操作して、スイッチ部材64を第1の位置にセットする(図7A及び図7B参照)。これにより、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58との噛み合いを解除する。
【0098】
まず、大動脈等に発生した瘤等の病変部の形態を、血管内造影法や血管内超音波診断法により特定する。次に、例えばセルジンガー法によって大腿部等から血管内に図示しないガイドワイヤを先行して導入すると共に、該ガイドワイヤをシャフト本体20のガイドワイヤルーメン24a(図3参照)の先端から基端へと挿通させ、シャフト14及びシース16を大動脈内へと挿入する。そして、X線造影下で、シース16の先端側に収納したステントグラフト12をシャフト14やシース16の先端側に設けた図示しないX線不透過マーカを利用したX線造影下で、目的とする位置に送達する。
【0099】
この状態で、回転操作部48を把持して所定方向に回転させることにより、又はシース16を直接把持して基端方向に引くことにより、シース16を基端方向に移動させる。これにより、ステントグラフト12が体腔内(血管内)で開放・展開されて自己拡張し、当該ステントグラフト12の仕様による本来長さで血管内に留置することができる。これを図9A及び図9Bを参照して説明する。なお、図9A及び図9Bでは、理解の容易のため、ステントグラフト12を収容したデリバリー装置10Aの先端部を、ハンドル17側よりも拡大して示すとともに、長手方向の途中部分を省略した図となっている。
【0100】
図9Aに示すように、ハンドル17に対してシース16のシースパイプ24が可動範囲の最も先端方向に移動され、ステントグラフト12はシース本体22の先端側で完全に収納された初期位置から、図9Bに示すように、シース16を基端方向に移動させる。これにより、シースパイプ24がシャフトパイプ21内を基端方向に移動し、シース16が可動範囲の最も基端方向に移動された全展開位置となり、ステントグラフト12は本来長さで確実に展開される。
【0101】
この際、図7A及び図7Bに示したようにシースパイプ24に形成されたシース側ラックギア38ギアと、シース側第1歯車54aとが噛み合っているため、シース16の後退と共にシース側歯車軸54が回転し、シース側第2歯車54bを介して中間歯車58も回転する。ところが、この通常動作では、上記のように、シャフト側第2歯車56bが中間歯車58から離間しているため、中間歯車58の回転に伴ってシャフト側歯車軸56が連動して回転することはない。
【0102】
しかも、この状態では、傾動位置に設定されたシャフト側第2歯車56bが、ハウジング52内で回転阻止係合部72aに係合してシャフト側歯車軸56が回り止めされたロック状態となると共に、このロック状態のシャフト側歯車軸56のシャフト側第1歯車56aが、シャフトパイプ21のシャフト側ラックギア34と噛み合っている。よって、シャフト14はハンドル17に対する移動が確実に規制(ロック)された状態となっており、シース16の移動時に、シャフト14が移動し又はガタツキを生じることが防止される。
【0103】
次に、デリバリー装置10Aについて、シース16をハンドル17に対して基端方向に移動(後退)させると同時に、シャフト14をハンドル17に対して先端方向に移動(前進)させ、先端側で縮径収納しているステントグラフト12を体腔内で本体の長さよりも短く展開・留置する動作、つまりステントグラフト12を設計仕様よりも短い長さで展開し、血管内等に留置する動作(短縮動作)について説明する。
【0104】
この短縮動作は、例えば、複数の屈曲部を持つ血管のように手術前に取得したX線造影像やCT画像等からでは、留置に必要な長さが正確に予測できず、予測長さよりも長い仕様のステントグラフト12を縮めながら展開・留置する場合等に行われる。
【0105】
まず、通常動作と同様に、ガイドワイヤを先行させた状態で、シャフト14及びシース16を大動脈内へと挿入し、シャフト14及びシース16の先端側(ステントグラフト12を収納した位置)を目的とする位置に送達する。そして、スイッチ機構60のスイッチ部材64を操作して、第2の位置にセットする(図8A及び図8B参照)。これによりシャフト側第2歯車56bと中間歯車58とを噛み合わせる。なお、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とを係合させるタイミングは、シャフト本体20及びシース本体22を患者の体内に挿入する前でもよい。
【0106】
シャフト14及びシース16の先端側を目的部位に到達させたら、回転操作部48を把持して所定方向に回転させることにより、又はシース16を直接把持して基端方向に引くことにより、シース16を基端方向に移動させる。この場合、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とが噛み合っているので、シース16の基端方向への移動に際して中間歯車58が回転することにより、シャフト側第2歯車56bが設けられたシャフト側歯車軸56が回転し、シャフト側第1歯車56aに噛み合うシャフト側ラックギア34が設けられたシャフト14が先端方向に移動する。
【0107】
シース16を基端方向に移動させることにより、ステントグラフト12は展開していくが、同時に、先端方向に移動するシャフト14によって、シース16内に収容されているステントグラフト12が押し出される。この結果、シース16が基端方向に移動する長さよりもステントグラフト12がシース16から押し出された長さが長くなり、図10Bに示すように、体腔内で本体の長さよりも短く展開・留置されるに至る。
【0108】
以上説明したように、デリバリー装置10Aによれば、シース16をハンドル17に対して基端方向に移動させてステントグラフト12を拡張展開させる際に、ハンドル17の位置を保持したまま、シャフト14をハンドル17に対して先端方向に移動させることで、ステントグラフト12の全長を簡単且つ確実に短縮化することができる。よって、デリバリー装置10A全体を押し上げてステントグラフト12の全長を縮める従来の手技と比較して、術者のテクニックに対する依存度が少なく、簡単にステントグラフト12の全長を縮める手技を遂行することができる。
【0109】
本実施形態の場合、ステントグラフト12を拡張・展開させるためにシース16を基端方向に移動させる操作に伴って、歯車機構50の作用によりシャフト14が自動的に先端方向に移動するので、ステントグラフト12を拡張させながら短縮化する手技を、操作者の技量によらず簡単且つ確実に実施することができる。また、シース16の移動量に対するシャフト14の移動量を任意に設定した割合に固定できるため、ステントグラフトの骨格同士が重なったり、グラフトがめくれたりすることを確実に防止することができる。
【0110】
本実施形態に係るデリバリー装置10Aによれば、スイッチ機構60により、シャフト14のシース16に対する従動状態を切り換えることができる。よって、患者の血管の長さや蛇行具合に応じて、ステントグラフト12をどれだけ縮めるかを容易に調整し、且つ、本来長さよりも短い任意の(所望の)長さでステントグラフト12を血管内に留置できる。
【0111】
また、本実施形態に係るデリバリー装置10Aによれば、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58との噛み合いが解除された状態では、シャフト14のシース16に対する連動が解除される一方、シャフト側歯車軸56に設けられたシャフト側第1歯車56aがシャフトパイプ21に設けられたシャフト側ラックギア34と噛み合うとともに、シャフト側第2歯車56bは回転阻止係合部72aによって回転が阻止さる。したがって、シース16に対するシャフト14の連動が解除された状態で、シャフト14のハンドル17に対する移動が阻止され、シャフト14の位置を確実に保持することができる。
【0112】
[第2実施形態]
次に、図11〜図15を参照し、第2実施形態に係るデリバリー装置10Bについて説明する。なお、第2実施形態に係るデリバリー装置10Bにおいて、第1実施形態にデリバリー装置10Aと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0113】
デリバリー装置10Bは、主として、ステントグラフト12(図3等参照)の残りの押し縮め可能な長さを表示するインジケータ74と、このインジケータ74を動作させるインジケータ動作機構76とを備える点で、第1実施形態に係るデリバリー装置10Aと異なる。図11は、ハンドル17、インジケータ74及びその周辺部位を示す一部省略斜視図であり、図12は、インジケータ動作機構76を模式的に説明する図であり、図13は、本実施形態における歯車機構90及びその周辺部位の一部省略斜視図である。
【0114】
図11〜図13に示すように、インジケータ74は、シースパイプ24とシャフトパイプ21との間に、シースパイプ24の軸線方向に沿って配置された棒状部材である。具体的には、シースパイプ24の外周部には、軸線方向に延在した溝部78が設けられ、この溝部78にインジケータ74がシース16の軸線方向に沿って摺動可能に配置されている。溝部78は、インジケータ74よりも長く設定されており、その一部がシャフトパイプ21の内部の位置まで延在している。
【0115】
インジケータ74のうち、シャフトパイプ21に覆われず、シースパイプ24上に露出する部分の長さL2(図12参照)が、ステントグラフト12の残りの押し縮め可能な長さを示している。なお、使用者がインジケータ74を容易に視認できるように、インジケータ74には、シースパイプ24の色に対してコントラストが大きい色が付されているのがよい。
【0116】
図12及び図13に示すように、インジケータ動作機構76は、インジケータ側歯車軸80と、途中部位がインジケータ側歯車軸80に巻き掛けられ且つ両端がインジケータ74の一端部及び他端部に固定されたワイヤ82とを有する。
【0117】
インジケータ側歯車軸80は、図示しない軸受やブラケット等を介して、ハンドル17に回転可能に軸支され、且つ傾動可能に構成されており、その一旦側(図示例では上端側)には、中間歯車58に係合可能なインジケータ側歯車80aが設けられている。本実施形態では、このインジケータ側歯車軸80、シース側歯車軸54、シャフト側歯車軸56及び中間歯車58により、歯車機構90が構成されている。
【0118】
インジケータ側歯車軸80は、インジケータ側歯車80aが設けられた側とは反対側(図示例では下端側)に設定された傾動中心a2(図13A参照)を支点として、インジケータ側歯車80aが中間歯車58から離間する方向に傾動(回動)可能である。インジケータ側歯車軸80の傾動により、インジケータ側歯車軸80aと中間歯車58とが係合する「係合状態」と、インジケータ側歯車80aと中間歯車58とが係合しない「非係合状態」とが切り換る。
【0119】
シャフトパイプ21には、シャフトパイプ21の内外を連通し且つ軸線方向に延在するスリット21aが設けられている。このスリット21aは、シースパイプ24に設けられた溝部の位置に対応する周方向位置に設けられている。このため、溝部及び当該溝部内に配置されたインジケータ74が、スリット21aを通してシャフトパイプ21の外側に露出している。両端がインジケータ74に固定されたワイヤ82は、このスリット21aを通して、シャフトパイプ21の外側に引き出され、引き出された部分でインジケータ側歯車軸80に巻き掛けられている。なお、ワイヤ82は、シャフトパイプ21の外側に引き出された位置で、ハウジング52内に設けられたガイド部84によってガイドされている(図13A及び図13B参照)。
【0120】
本実施形態におけるスイッチ機構60aは、ガイドプレート62aとスイッチ部材64aとを備えており、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とが係合せず且つインジケータ側歯車80aと中間歯車58とが係合する第1の切換状態と、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とが係合し且つインジケータ側歯車80aと中間歯車58とが係合しない第2の切換状態とを選択的に切り換えるように構成されている。
【0121】
ガイドプレート62aは、第1実施形態におけるガイドプレート62に対して、インジケータ側歯車軸80の上端部が係合する切換孔66bを追加したものである。以下、2つの切換孔66a、66bを区別するために、シャフト側歯車軸56の上端部56cが係合する切換孔66aを「第1切換孔66a」とよび、インジケータ側歯車軸80の上端部が係合する切換孔66bを「第2切換孔66b」とよぶ。第1切換孔66a及び第2切換孔66bは、シャフトパイプ21の軸線方向にスイッチ軸部69を基準として、互いに反対側に配設されている。
【0122】
第2切換孔66bは、シャフトパイプ21の軸線方向に略直交する方向に延在する長孔であり、その長軸方向の長さは、上端部の直径より大きく、その短軸方向の幅は、上端部の直径よりも僅かに大きい。インジケータ側歯車軸80の上端部は、第2切換孔66b内でガイドされて、シャフトパイプ21の軸線方向に略直交する方向に移動可能である。
【0123】
スイッチ部材64aは、第1実施形態におけるスイッチ部材64に対して、インジケータ側歯車軸80の上端部が貫通及び係合する係合孔67bを追加したものである。以下、2つの係合孔67a、67bを区別するために、シャフト側歯車軸56が係合する係合孔67aを「第1係合孔67a」とよび、インジケータ側歯車軸80が係合する係合孔67bを「第2係合孔67b」とよぶ。
【0124】
第2係合孔67bは、シャフトパイプ21の軸線方向に沿って延びた略長円形状であり、その短辺幅がシャフト側歯車軸56の上端部56cの外径と略同一又は僅かに大きい寸法で設定されている。すなわち、第2係合孔67bは、ガイドプレート62aの第2切換孔66bに対して交差する方向に延在している。
【0125】
ハウジング52を構成する壁部のうち、シャフトパイプ21に設けられたシャフト側ラックギア34に対向する壁部52aの内面には、インジケータ側歯車80aに対向する回転阻止係合部72bが設けられている(図14A参照)。以下では、2つの回転阻止係合部72a、72bを区別するため、シャフト側第2歯車56bに対向する回転阻止係合部72を「第1回転阻止係合部72a」とよび、インジケータ側歯車80aに対向する回転阻止係合部72を「第2回転阻止係合部72b」とよぶ。図示例の第2回転阻止係合部72bは、インジケータ側歯車80aが噛み合い可能な歯状の突起として構成されている。なお、回転阻止係合部72は、壁部52aに一体形成されてもよく、あるいは、壁部52aとは別の部材として構成されてもよい。
【0126】
次に、上記のように構成されたスイッチ機構60aの動作を説明する。
【0127】
図14Aは、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58との係合を解除した状態を示している。このとき、スイッチ部材64aは、第1の位置にあり、レバー部68は、シャフトパイプ21の軸線方向に関して、抵抗突起部70を基準として、シャフト側第2歯車56bと反対側に位置している。スイッチ部材64aが第1の位置にあるとき、抵抗突起部70が突出状態であるため、意図的にレバー部68を移動操作しない限り、レバー部68は抵抗突起部70により係止され、その位置が保持される。
【0128】
シース16の基端方向への移動に際して中間歯車58が図14Aで時計回りに回転すると、中間歯車58と噛み合うインジケータ側歯車軸80も回転する。そして、インジケータ側歯車軸80が回転すると、これに巻き掛けられたワイヤ82がインジケータ74を基端方向に引っ張るので、インジケータ74が基端方向に移動する。
【0129】
一方、シャフト側第2歯車56bは、中間歯車58と噛み合っていないため、中間歯車58と連動して回転することはない。また、シャフト側第2歯車56bが中間歯車58と噛み合わないとき、シャフト側第2歯車56bは、第1回転阻止係合部72aによって回転が阻止されるため、シャフト14の移動が確実に阻止される。
【0130】
図14Aの状態から、スイッチ軸部69を中心としてスイッチ部材64aを時計方向に回転させ、図14Bに示すように第2の位置にセットする。このとき、シャフト側歯車軸56は、第1係合孔67aによって中間歯車58側に押されることで第1切換孔66aに沿って中間歯車58側に移動すると同時に、インジケータ側歯車軸80は、第2係合孔67bによって中間歯車58から離間する方向に押されることで第2切換孔66bに沿って中間歯車58から離間する方向に移動する。
【0131】
この結果、歯車機構90は、図14Bに示すように、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とが噛み合い且つインジケータ側歯車80aと中間歯車58とが噛み合わない状態に切り替わる。シース16の基端方向への移動に際して中間歯車58が図14Bで時計回りに回転すると、中間歯車58と噛み合うシャフト側第2歯車56bが回転する。このとき、シャフト側第1歯車56aが回転するので、シャフト側第1歯車56aに噛み合うシャフト側ラックギア34が設けられたシャフト14が先端方向に移動する。
【0132】
一方、インジケータ側歯車80aは、中間歯車58と噛み合っていないため、中間歯車58と連動して回転することはない。また、インジケータ側歯車80aが中間歯車58と噛み合わないとき、インジケータ側歯車80aは、第2回転阻止係合部72bによって回転が阻止されるため、インジケータ74の移動が確実に阻止される。
【0133】
次に、インジケータ74の動作について説明する。ハンドル17に対してシース16だけを基端方向に移動させる場合(シース16がハンドル17に対して基端方向に移動し且つシャフト14がハンドル17に対して位置を保持する場合)、シース16の移動量に対して所定の割合でハンドル17に対してインジケータ74を基端方向に移動させる。一方、シース16が基端方向に移動しつつシャフト14が先端方向に移動する場合、ハンドル17に対するインジケータ74の位置を保持する。このようなインジケータ74の動作は、以下の理論に基づく。
【0134】
図9Aにおいて、ステントグラフト12の本来の長さをL1とし、使用前のステントグラフト12の最大短縮長をDとする。また、シース16の引下げ速度をV1とし、シース16引下げに同期したときのシャフト14の押上げ速度をV2とする。この場合、上記L、D、V1、V2の間には、以下の式(1)の関係があり、当該式(1)より、式(2)が導かれる。
(L−D)/V1=D/V2 ・・・(1)
D=L*(V2/(V2+V1)) ・・・(2)
【0135】
よって、Dは、シース16とシャフト14の速度、すなわち、第2実施形態の場合、歯車機構90のギア比で決定される。なお、後述する第4実施形態の場合、Dは、プーリ径の比率で決定される。
【0136】
ここで、使用時にその時その時の残りのステントグラフト12の最大短縮可能量をdとする。シャフトパイプ21から露出するインジケータ74の長さ、すなわち、インジケータ74の最先端位置からシャフトパイプ21の最先端位置までの距離が、dを表すようにするためには、ハンドル17に対してシース16だけを基端方向に移動させる動作(通常動作)の場合と、ハンドル17に対してシース16を基端方向に移動させるとともにシャフト14を先端方向に移動させる動作(短縮動作)の場合とで、インジケータ74の動作を異ならせることが必要である。
【0137】
図15Aは、通常動作の場合のシースパイプ24、シャフトパイプ21及びインジケータ74の動き(位置)を説明する図であり、x軸は時間を示し、y軸は、初期状態(使用前の状態)におけるシャフトパイプ21の最先端部位置を基準としたデリバリー装置10Bの軸線方向の位置を示している。P1はシースパイプ24の先端位置を示す直線であり、P2はインジケータ74の先端位置を示す直線であり、P3はシャフトパイプ21の先端位置を示す直線である。
【0138】
通常動作の場合、シャフト14はハンドル17に対して位置を保持している。シース16だけを基端方向に移動させた場合、インジケータ74の最先端位置は、d=Dとなる位置から移動しはじめ、シースパイプ24の移動に比例して移動を続け、最終的にはd=0の位置で終わる。
【0139】
ここで、インジケータ74の移動速度をV3とすると,シースパイプ24とインジケータ74の移動直線はそれぞれ、式(3)、(4)で表される。
y=−V1*x+L ・・・(3)
y=−V3*x+D ・・・(4)
【0140】
図15A中のx1は、シースパイプ24がy=0のときであり、
x1=L/V1 ・・・(5)
である。これよりV3を求めると、
V3=D*(V1/L)
=(V2*V1)/(V2+V1)・・・(6)
となる。
【0141】
よって、(V2*V1)/(V2+V1)の速度でインジケータ74が移動するように設定すればよい。
【0142】
図15Bは、短縮動作の場合のシースパイプ24、シャフトパイプ21及びインジケータ74の動き(位置)を説明する図である。短縮動作の場合、シャフト14が先端方向に移動するが、図10Bから了解されるように、シャフト14の移動量は、ステントグラフト12の押し縮め量そのものであり、押し縮めた量だけdは短くなる。よって、図15Bに示すように、インジケータ74の最先端位置とシャフトパイプ21の最先端位置との距離がdを表すためには、インジケータ74は、シャフトパイプ21が先端方向に移動する間、ハンドル17に対して静止していればよい。
【0143】
次に、上記のように構成されたデリバリー装置10Bの動作を説明する。シャフト14を移動させず、シース16だけをハンドル17に対して基端方向に移動させたい場合、スイッチ機構60aを第1の切換状態に設定する。そこで、回転操作部48を把持して所定方向に回転させることにより、又はシースパイプ24を直接把持して、シース16を基端方向に移動させる。そうすると、シース16が基端方向に移動する過程で、ステントグラフト12が体腔内(血管内)で開放・展開されて自己拡張していく。このとき、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58は噛み合っていないため、シャフト14はハンドル17に対して静止したままである。
【0144】
一方、インジケータ側歯車80aと中間歯車58とは噛み合っているため、シース16が基端方向に移動する際の中間歯車58の回転に伴って、インジケータ側歯車80aが回転する。よって、インジケータ側歯車軸80に巻き掛けられたワイヤ82により、インジケータ74が引っ張られて基端方向に移動する。シース16が基端方向に移動する間、シャフトパイプ21はハンドル17に対して静止したままであるが、インジケータ74が基端方向に移動することにより、インジケータ74のシャフトパイプ21からの露出長は短くなっていく。このとき、当該露出長は、ステントグラフト12の残りの押し縮め可能な長さを示している。よって、術者は、インジケータ74を見ることで、ステントグラフト12のその時その時の残りの押し縮め可能な長さを容易に把握することができる。
【0145】
シース16を十分に後退させてステントグラフト12の全長を露出させると、ステントグラフト12の全体が本来長さで拡張・展開する。これにより、ステントグラフト12は本来の長さで血管内に留置される。
【0146】
シース16をハンドル17に対して基端方向に移動させると同時に、シャフト14をハンドル17に対して先端方向に移動させたい場合、スイッチ機構60aを第2の切換状態に設定する。回転操作部48を把持して所定方向に回転させることにより、又はシースパイプ24を直接把持して、シース16を基端方向に移動させる。そうすると、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とが噛み合っているため、シース16が基端方向に移動する際の中間歯車58の回転に伴って、シャフト側第2歯車56bも回転する。よって、シャフト側第1歯車56aの回転により、シャフト14が先端方向に移動する。
【0147】
この場合、シース16の基端方向への移動距離の増大に伴って、ステントグラフト12は、先端側から後端側に向かって徐々に展開していくが、同時に、先端方向に移動するシャフト14によっても押し出される。このため、ステントグラフト12は、シース16が基端方向に移動する長さよりもシース16から押し出される長さが長くなり、体腔内で本体長さよりも短く留置・展開される。
【0148】
シース16が基端方向に移動している間、インジケータ側歯車80aと中間歯車58とは噛み合っていないため、インジケータ74はハンドル17に対して静止したままである。しかし、シャフトパイプ21は先端方向に移動するため、インジケータ74のシャフトパイプ21からの露出長は、シース16の基端方向への移動と同期して短くなっていく。このとき、当該露出長は、ステントグラフト12の残りの押し縮め可能な長さを示している。よって、術者は、マーカ部材を見ることで、ステントグラフト12のその時その時の残りの押し縮め可能な長さを容易に把握することができる。
【0149】
上記のようにシース16を基端方向に移動させるとともにシャフト14を先端方向に移動させることにより、ステントグラフト12は、血管内で本体の長さよりも短く展開・留置される。
【0150】
以上説明したように、本実施形態に係るデリバリー装置10Bによれば、インジケータ74を備えることにより、デリバリー装置10Aの操作途中において、ステントグラフト12の残りの押し縮め可能な長さを簡単に把握することができる。本実施形態の場合、シースパイプ24上に露出したインジケータ74の長さを見るだけで、ステントグラフト12の残りの押し縮め可能な長さを簡単且つ迅速に把握することができる。
【0151】
インジケータ動作機構76は、シース16を基端方向に移動させ且つシャフト14をハンドル17に対して静止させる通常動作の場合に、シース16の移動量に対して所定の割合でハンドル17に対してマーカ部材を基端方向に移動させ、シース16を基端方向に移動させるとともにシャフト14を先端方向に移動させる短縮動作の場合に、インジケータ74をハンドル17に対して静止させるように構成されているので、ステントグラフト12の残り縮め可能量を適切に示すことができる。
【0152】
デリバリー装置10Bによれば、シャフト側第2歯車56bとインジケータ側歯車80aのうち一方だけが中間歯車58に係合するので、スイッチ機構60aを第2の切換状態に設定してシース16を基端方向に移動させると、シャフト14は先端方向に移動する一方で、インジケータ74の位置を保持できる。また、スイッチを第1の切換状態に設定してシース16を基端方向に移動させると、シャフト14は動かない一方で、インジケータ74を基端方向に移動させることができる。よって、インジケータ74を適切に動作させることができる。
【0153】
また、デリバリー装置10Bによれば、スイッチ部材64aには、スイッチ軸部69を基準として互いに反対側に第1係合孔67aと第2係合孔67bが設けられているので、シャフト側第2歯車56bとインジケータ側歯車80aのうち一方が中間歯車58に近接する方向に移動するとき、常に他方は中間歯車58から離間する方向に移動する。よって、シャフト側第2歯車56bとインジケータ側歯車80aのうち一方のみを中間歯車58に係合させるスイッチ機構60aを簡単な構成で実現できる。
【0154】
さらに、デリバリー装置10Bによれば、シャフト側第2歯車56bと中間歯車58とが係合しない第1の切換状態のとき、シャフト側第2歯車56bが第1回転阻止係合部72aと係合することで、シャフト14のハンドル17に対する移動が阻止(ロック)されるので、シャフト14の位置を確実に保持することができる。一方、インジケータ側歯車80aと中間歯車58とが係合しない第2の切換状態のとき、インジケータ側歯車80aが第2回転阻止係合部72bと係合することで、ハンドル17に対するインジケータ74の位置を確実に保持することができる。
【0155】
なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0156】
[第3実施形態]
次に、図16〜図25を参照し、第3実施形態(変形例を含む)に係るステントグラフトデリバリー装置10C(以下、単に「デリバリー装置10C」ともいう)について説明する。図16は、デリバリー装置10Cの一部省略斜視図であり、図17は、デリバリー装置10Cの一部省略平面図であり、図18は、デリバリー装置10Cの一部省略側面断面図である。なお、図16及び図18では、理解の容易のため、一部の部品を取り外した状態を示している。
【0157】
デリバリー装置10Cは、その先端側に載置・収納(マウント)した自己拡張機能を有するステントグラフト12を、血管を通して大動脈瘤等の病変部(治療部位)に到達させ、この到達させたステントグラフト12を病変部の内側で展開・留置することで当該病変部の治療を行うための医療用デバイスである。
【0158】
デリバリー装置10Cは、先端側でステントグラフト12を載置した長尺なシャフト102と、シャフト102の外側で摺動可能な長尺なシース104と、デリバリー装置10Cの基端部を構成するハンドル106と、ハンドル106の先端部に連結されたガイドパイプ108とを備えている。このようなデリバリー装置10Cにおいて、シース104は、ハンドル106を基準として基端方向に移動可能であり、シャフト102は、ハンドル106を基準として先端方向に移動可能となっている。
【0159】
図19Aは、シャフト102の一部省略斜視図である。シャフト102は、長尺で細径のシャフト本体109と、該シャフト本体109の基端側(基端部寄りの位置)に設けられるシャフトハブ110とを有する。シャフト本体109は、可撓性を有する柔軟なチューブ状部材であり、全長にわたって、ガイドワイヤが挿通されるガイドワイヤルーメン109aが貫通形成されている。シャフトハブ110は、ブロック状に形成された硬質の樹脂あるいは金属等により構成された部材であり、シャフト本体109に固定されており、互いに反対方向(図示例では上下方向)に突出するガイド突起112を有する。
【0160】
図18及び図19Aに示すように、シャフト本体109の先端側(先端部近傍)には、ステントグラフト12を載置(マウント)するためのマウント部114が設けられている。このマウント部114は、図3に示したマウント部26と同様の構成である。マウント部114に載置されるステントグラフト12は、図3に示したステントグラフト12と同様の構成である。
【0161】
図19Bは、シース104の長手方向の途中部分を省略した一部省略斜視図である。シース104は、先端側(先端部近傍)でステントグラフト12をその内側に収納するシース本体116と、シース本体116の基端側に設けられるシースハブ118とを有する。シース本体116は、可撓性を有する薄肉且つ柔軟なチューブ状部材であり、シャフト本体109の外面側に摺動可能に配置される。
【0162】
初期状態において、シース本体116は、シャフト本体109に対して、マウント部114を完全に覆う位置にあり、マウント部114にステントグラフト12が配置される。この状態で、ステントグラフト12はその外側にあるシース本体116によって拡張・展開が阻止されている。シースハブ118は、ブロック状に形成された硬質の樹脂あるいは金属等により構成された部材であり、シース本体116の基端部に固定されており、互いに反対方向(図示例では上下方向)に突出するガイド突起120を有する。
【0163】
図20は、ガイドパイプ108及びその周辺部位を示す一部省略斜視図である。なお、図20では、ハンドル106の図示を省略している。ガイドパイプ108は、シースハブ118及びシャフトハブ110を軸線方向に移動可能にガイドするものであり、互いに反対側の部位(図示例では、上部及び下部)には、当該ガイドパイプ108の内外を連通し且つ軸線方向に沿って延在する長尺なガイド孔122が設けられている。図示例のガイドパイプ108は、左右の部品108a、108bが結合されることで、構成さている。シャフトハブ110及びシースハブ118のガイド突起112、120は、ガイドパイプ108のガイド孔122によってガイドされる。
【0164】
シャフトハブ110及びシースハブ118は、シースハブ118がシャフトハブ110より先端側にある位置関係で、ガイドパイプ108内に配置されるとともに、ガイド孔122の最先端部及び最後端部によって規制された範囲内で軸線方向に移動可能であり、且つ、ガイドパイプ108に対して相対回転不可能となっている。この状態で、シャフト本体109は、シース本体116及びシースハブ118に挿通されている。
【0165】
図20では、シースハブ118及びシャフトハブ110が初期位置(使用開始前位置)にある状態を示している。この初期位置では、シースハブ118は、その可動範囲の最先端位置(ガイド孔122の最先端部)にあり、シャフトハブ110は、その可動範囲の最後端位置(ガイド孔122の最後端部)にある。デリバリー装置10Cでは、この初期位置において、シース104のシース本体116がシャフト本体109のマウント部114を完全に覆い、マウント部114に配置されたステントグラフト12を全長にわたって圧縮収納している。
【0166】
図16〜図18に示すように、ハンドル106は、ガイドパイプ108の基端部に連結配置されている。このハンドル106は、使用者(術者)が手で把持する部分であり、外郭を構成する中空構造のハウジング124と、ハウジング124内で回転可能に設けられた第1回転体126及び第2回転体128と、第1回転体126の基端に連結固定された回転操作部130と、第2回転体128に作用するスイッチ機構132とを備える。なお、図16では、スイッチ機構132の図示を省略している。
【0167】
ハウジング124は、ガイドパイプ108の基端部に外嵌して連結固定された先端連結部124Aと、先端連結部124Aの後端から基端方向に延在するグリップ部124Bとを有する。ハウジング124内には、先端連結部124Aとグリップ部124Bを跨いで軸線方向に延在する中空状のサポートシャフト127が配設され、先端連結部124A内には、サポートシャフト127に連結固定されたガイドブロック134が配置され、グリップ部124B内には、第1回転体126及び第2回転体128が配置され、回転操作部130の基端部がグリップ部124Bに設けられた後端開口部125を通して外部に出ている。
【0168】
先端連結部124A内に設けられたガイドブロック134は、軸線方向に貫通した複数の孔部136を有する。これらの孔部136には、後述する第1ワイヤ138及び第2ワイヤ140が摺動自在に挿通される。サポートシャフト127は、ガイドブロック134に対して軸線方向に相対移動不可能且つ回転不可能に固定されるとともに、ガイドブロック134から、ハウジング124の軸線方向に沿ってハウジング124(グリップ部124B)の後端開口部125まで延在している。サポートシャフト127の内腔には、シャフト本体109が挿通され、後端開口部125からシャフト本体109の基端部が突出している。
【0169】
図21A及び図21Bは、第1回転体126及び第2回転体128を示す斜視図及び平面図である。第1回転体126及び第2回転体128は、ハウジング124内において直列に配置され、且つ同軸状に互いに独立に回転可能である。具体的には、第1回転体126及び第2回転体128は、グリップ部124B内で、サポートシャフト127によって同軸状に回転自在に支持されている。図示した構成例では、第2回転体128が第1回転体126よりも先端側に配置されている。
【0170】
第1回転体126は、サポートシャフト127に対して回転可能であるが、軸線方向の移動は阻止されている。第1回転体126は、第1ワイヤ138が巻き掛けられた円筒状の第1プーリ139と、この第1プーリ139の先端面に設けられた係合部141aとを有する。図示した構成例の係合部141aは、周方向に間隔を置いて配設されるとともに半径方向に延在する複数の突起により構成されている。
【0171】
図16〜図18に示すように、第1回転体126の基端には、回転操作部130の先端部が連結固定されている。回転操作部130は、ハウジング124(グリップ部124B)に挿通された伝達軸部142と、伝達軸部142の基端部に拡径して設けられ、ハウジング124の外側に位置する操作子(ノブ)143とを有する。使用者は、この操作子143を手で握って回転操作部130を回転させることができる。
【0172】
第2回転体128は、サポートシャフト127に対して回転可能であるとともに、軸線方向にも移動可能である。したがって、第2回転体128は、ハウジング124内で、第1回転体126に対して、近接及び離間する方向に移動可能となっている。図21Bに示すように、第2回転体128は、第2ワイヤ140が巻き掛けられた円筒状の第2プーリ146と、この第2プーリ146の先端側に設けられた第1係合部148aと、第2プーリ146の基端側に設けられた第2係合部148bとを有する。
【0173】
図16〜図18に示すように、グリップ部124B内において、第2回転体128の前方には、回転阻止係合部150aが第2回転体128に対抗するように配置されている。この回転阻止係合部150aは、サポートシャフト127に対して軸線方向に移動不可能且つ回転不可能に固定されており、その基端面には、周方向に間隔を置いて複数の溝部(突部)151が設けられている(図22A及び図22B参照)。第2回転体128の第1係合部148aは、回転阻止係合部150aに係合可能であり、図示例では、半径方向に延在する複数の突起153が周方向に間隔を置いて配設されている。第2回転体128は、その第1係合部148aが回転阻止係合部150aと係合したとき、回転阻止係合部150aによって回転が阻止される。
【0174】
第2回転体128の第2係合部148bは、第1回転体126の係合部141aと対向するように配置され、図示例では、当該係合部141aに係合可能な複数の突起により構成されている。図21A及び図21Bに示すように、第1回転体126の係合部141aと第2回転体128の第2係合部148bとの係合が外れた状態では、第1回転体126の回転は、第2回転体128に伝達されない。一方、図22A及び図22Bに示すように、第1回転体126の係合部141aと第2回転体128の第2係合部148bとが係合した状態では、第1回転体126の回転は、第2回転体128に伝達される。
【0175】
図18に示すように、第1回転体126とシースハブ118とは、第1ワイヤ138によって繋がれている。すなわち、ループ状になった第1ワイヤ138の一部が、第1回転体126の第1プーリ139に巻き掛けられ、ループ状になった第1ワイヤ138の他の部分が、シースハブ118に連結固定されている。これにより、第1回転体126の回転と、シースハブ118の軸線方向の移動が同期するようになっている。
【0176】
本実施形態において、具体的には、第1ワイヤ138は以下のように配設されている。すなわち、第1ワイヤ138は、グリップ部124B内で第1プーリ139に巻き掛けられるとともに、ガイドパイプ108内でシースハブ118に連結固定されている。また、第1ワイヤ138は、ガイドパイプ108内で軸線方向に沿って延在するとともにガイドパイプ108の先端部で折り返されている。
【0177】
本実施形態の場合、図17に示すように、第1ワイヤ138のうち、第1プーリ139とガイドパイプ108との間の部分138aは、ハンドル106の外側に引き出されて、ハウジング124の外面に沿って摺動するように配設されている。このため、第1ワイヤ138は、ハンドル106の第1プーリ139に対応する箇所に設けられた側孔154a、154bと、先端連結部124Aの基端面に設けられた複数の孔部158(図18参照)に挿通されており、側孔154a、154bと孔部158との間の部分でハンドル106の外側に位置している。なお、第1ワイヤ138が外部に露出しないように、ハンドル106の外側に出る部分を覆うカバーを設けてもよい。
【0178】
また、本実施形態の場合、図17及び図18に示すように、第1ワイヤ138は、ガイドパイプ108の先端部に設けられた側孔159a、159bを通して、ガイドパイプ108の外側に引き出されている。この引き出された部分は、ガイドパイプ108の先端部の外周面に沿って360度未満の範囲で周方向に延在している。第1ワイヤ138が折り返される位置は、ガイドパイプ108の先端部に限らず、シースハブ118の可動範囲よりも先端側であればよい。あるいは、第1ワイヤ138は、ガイドパイプ108内に配置されたピンに引っ掛けられて折り返されてもよい。
【0179】
図18に示すように、第2回転体128とシャフトハブ110とは、第2ワイヤ140によって繋がれている。すなわち、ループ状になった第2ワイヤ140の一部が、第2回転体128の第2プーリ146に巻き掛けられ、ループ状になった第2ワイヤ140の他の部分が、シャフトハブ110に連結固定されている。これにより、第2回転体128の回転と、シャフトハブ110の軸線方向の移動が同期するようになっている。
【0180】
本実施形態において、具体的には、第2ワイヤ140は以下のように配設されている。すなわち、第2ワイヤ140は、グリップ部124B内で第2プーリ146に巻き掛けられるとともに、ガイドパイプ108内でシャフトハブ110に連結固定されている。また、第2ワイヤ140は、ガイドパイプ108内で軸線方向に沿って延在するとともにガイドパイプ108の先端部で折り返されている。
【0181】
本実施形態の場合、図17に示すように、第2ワイヤ140のうち、第2プーリ146とガイドパイプ108との間の部分140aは、ハンドル106の外側に引き出されて、ハウジング124の外面に沿って摺動するように配設されている。このため、第2ワイヤ140は、ハンドル106の第2プーリ146に対応する箇所に設けられた側孔160a、160bと、先端連結部124Aの基端面に設けられた複数の孔部158に挿通されており、側孔160a、160bと孔部158との間の部分でハンドル106の外側に位置している。なお、第2ワイヤ140が外部に露出しないように、ハンドル106の外側に出る部分を覆うカバーを設けてもよい。
【0182】
また、本実施形態の場合、図17及び図18に示すように、第2ワイヤ140は、ガイドパイプ108の先端部に設けられた側孔161a、161bを通して、ガイドパイプ108の外側に引き出されている。この引き出された部分は、ガイドパイプ108の先端部の外周面に沿って360度未満の範囲で周方向に延在している。第2ワイヤ140が折り返される位置は、ガイドパイプ108の先端部に限らず、シャフトハブ110の可動範囲よりも先端側であればよい。あるいは、第2ワイヤ140は、ガイドパイプ108内に配置されたピンに引っ掛けられて折り返されてもよい。
【0183】
第3実施形態に係るデリバリー装置10Cでは、第1回転体126、第2回転体128、第1ワイヤ138及び第2ワイヤ140により、シース16の基端方向への移動に伴ってシャフト14を先端方向へと従動的に移動させる移動機構50Bが構成されている。
【0184】
上述したように、第1回転体126と第2回転体128とは、回転を伝達するように互いに係合可能であり、第2回転体128の軸線方向の移動により、第1回転体126と第2回転体128とが係合する「係合状態」と、第1回転体126と第2回転体128とが係合しない「非係合状態」とが切り換るようになっている。そこで、ハンドル106には、この係合状態と非係合状態とを切り換えるためのスイッチ機構132が設けられている。図17及び図18に示すように、スイッチ機構132は、ハウジング124に対して軸線方向に移動可能に設けられたスイッチ部材164と、スイッチ部材164を先端方向に弾性的に付勢する弾性部材166とを有する。
【0185】
スイッチ部材164は、ハウジング124の外側に配設された操作プレート167と、操作プレート167からハウジング124内に突出した一対のアーム部168a、168bとを有し、第1回転体126と第2回転体128との係合を解除する「第1の位置」と、第1回転体126と第2回転体128とを係合させる「第2の位置」とに選択的に変位可能である。
【0186】
操作プレート167は使用者が指で触って操作する部分である。一対のアーム部168a、168bは、ハウジング124の軸線方向に間隔をおいて対向している。一方のアーム部168aは、第2回転体128に係合している。具体的には、第2回転体128を軸線方向に移動できるように、第2回転体128の基端側に設けられた2つのフランジ部170a、170b間に挿入されている。他方のアーム部168bは第1回転体126よりも基端側に位置している。
【0187】
弾性部材166は、ハウジング124内に配置され、スイッチ部材164の他方のアーム部168bを先端方向に押圧している。図示した構成例の弾性部材166は、コイルバネである。第2回転体128は、弾性部材166により、スイッチ部材164を介して常に第1回転体126から離間する方向(図示例では、先端方向)に弾性的に付勢されている。このため、使用者が操作プレート167に対して何らの操作力も作用させない場合、弾性部材166の付勢力により、第2回転体128は第1回転体126から離間した位置を保持する。すなわち、第2回転体128と第1回転体126との係合が解除された状態(非係合状態)を維持する。
【0188】
一方、弾性部材166の弾発力に抗して、スイッチ部材164を基端方向に移動させた場合、スイッチ部材164の一方のアーム部168aに係合した第2回転体128がスイッチ部材164と一体となって基端方向に移動する。これにより、スイッチ部材164は第2の位置に移動し、第2回転体128と第1回転体126とが係合する状態(係合状態)となる。
【0189】
本実施形態に係るデリバリー装置10Cは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0190】
まず、以上のように構成されるデリバリー装置10Cについて、シャフト102を移動させず、シース104のみをハンドル106に対して基端方向に移動させ、先端側で縮径収納しているステントグラフト12を体腔内で本体の長さで展開・留置する動作、つまりステントグラフト12を設計仕様通りの長さで展開し、血管内等に留置する動作(通常動作)について説明する。
【0191】
この通常動作では、終始、スイッチ部材164に対する操作を行わない。したがって、ハンドル106内に配置された弾性部材166の作用下にスイッチ部材164は先端方向に押圧されて第1の位置を保持し、第1回転体126と第2回転体128との係合が解除された状態(図21A及び図21B参照)が維持される。
【0192】
血管内に挿入する前のデリバリー装置10Cにおいては、図23Aに示すように、シース104がその可動範囲の最先端位置あり、シャフト102がその可動範囲の最基端位置にある。そうして、まず、大動脈等に発生した瘤等の病変部の形態を、血管内造影法や血管内超音波診断法により特定する。
【0193】
次に、例えばセルジンガー法によって大腿部等から血管内に図示しないガイドワイヤを先行して導入すると共に、該ガイドワイヤをシャフト本体109のガイドワイヤルーメン109a(図18参照)の先端から基端へと挿通させ、シャフト102及びシース104を大動脈内へと挿入する。そして、X線造影下で、シース104の先端側に収納したステントグラフト12をシャフト102やシース104の先端側に設けた図示しないX線不透過マーカを利用したX線造影下で、目的とする位置に送達する。
【0194】
この状態で、図16等に示した回転操作部130を把持して回転させることでシース104を基端方向に移動させるか、又は、シースハブ118を直接把持して基端方向に引き寄せる。回転操作部130を把持して回転させた場合、その回転により第1回転体126が回転し、第1回転体126の回転により第1プーリ139に巻き掛けられた第1ワイヤ138が押し引きされ、シース104が基端方向に移動する。
【0195】
このようにシース104が基端方向に移動する過程で、ステントグラフト12が体腔内(血管内)で開放・展開されて自己拡張していく。そうして、図23Bに示すように、シース104が可動範囲の最基端位置に到達した時点では、ステントグラフト12の全体が本来長さで拡張・展開する。これにより、ステントグラフト12を本来の長さで体腔内に留置することができる。
【0196】
この場合、第1回転体126と第2回転体128とが係合していないため、第1回転体126が回転した際に第2回転体128が回転することはない。しかも、第2回転体128は、図17に示した弾性部材166により先端側に押圧されたスイッチ部材164により先端方向に押圧され、回転阻止係合部150aと係合するため、その回転が阻止される。そして、第2回転体128は、第2ワイヤ140を介してシャフトハブ110に連結固定されているため、シャフト102はハンドル106に対する移動が確実に規制(ロック)された状態となっている。よって、シース104の移動時に、シャフト102が移動し又はガタツキを生じることが防止される。
【0197】
次に、デリバリー装置10Cについて、シース104をハンドル106に対して基端方向に移動(後退)させると同時に、シャフト102をハンドル106に対して先端方向に移動(前進)させ、先端側で縮径収納しているステントグラフト12を血管内で本体の長さよりも短く展開・留置する動作、つまりステントグラフト12を設計仕様よりも短い長さで展開し、血管内等に留置する動作(短縮動作)について説明する。
【0198】
この短縮動作は、例えば、複数の屈曲部を持つ血管のように手術前に取得したX線造影像やCT画像等からでは、留置に必要な長さが正確に予測できず、予測長さよりも長い仕様のステントグラフト12を縮めながら展開・留置する場合等に行われる。
【0199】
血管内に挿入する前のデリバリー装置10Cにおいては、図24Aに示すように、シース104がその可動範囲の最先端位置あり、シャフト102がその可動範囲の最基端位置にある。そうして、まず、大動脈等に発生した瘤等の病変部の形態を、血管内造影法や血管内超音波診断法により特定する。
【0200】
病変部を特定したら、通常動作と同様に、ガイドワイヤを先行させた状態で、シャフト102及びシース104を大動脈内へと挿入し、シャフト102及びシース104の先端側(ステントグラフト12を収納した位置)を目的とする位置に到達させる。
【0201】
そして、シャフト102及びシース104の先端側を目的部位に到達させたら、シース104を基端方向に移動させるとともに、シャフト102を先端方向に移動させる。このようにシース104及びシャフト102を移動させるためには、まず、図17に示したスイッチ部材164を操作して第2の位置に移動させ、第1回転体126の係合部と第2回転体128の第2係合部とを係合させる(図22A及び図22B参照)。これにより、第1回転体126の回転が第2回転体128にそのまま伝達される状態となる。
【0202】
そして、図17に示したスイッチ部材164の位置を保持したまま、回転操作部130を把持して回転させることでシース104を基端方向に移動させるか、又は、シースハブ118を直接把持して基端方向に引き寄せる。そうすると、第1回転体126によって第2回転体128が回転させられ、第2回転体128に巻き掛けられた第2ワイヤ140が押し引きされ、第2ワイヤ140に連結固定されたシャフトハブ110が先端方向に移動する。すなわち、シース104の基端方向への移動に伴って、シャフト102が先端方向に移動する。
【0203】
この場合、シース104の基端方向への移動距離の増大に伴って、ステントグラフト12は先端側から後端側に向かって徐々に展開していくが、同時に、先端方向に移動するシャフト102によっても押し出される。このため、ステントグラフト12は、シース104が基端方向に移動する長さよりもシース104から押し出される長さが長くなる。この結果、図24Bに示すように、体腔内で本体の長さよりも短く展開・留置されるに至る。
【0204】
以上の説明から了解されるように、スイッチ機構132は、第1回転体126と第2回転体128とが係合する「係合状態」と、第1回転体126と第2回転体128とが係合しない「非係合状態」とを切り換る機構であると同時に、シャフト102がシース104に従動する従動状態と、シャフト102のシース104に対する従動を解除する解除状態とを選択的に切り替える機構ということもできる。
【0205】
以上説明したように、デリバリー装置10Cによれば、シース104をハンドル106に対して基端方向に移動させてステントグラフト12を拡張展開させる際に、ハンドル106の位置を保持したまま、シャフト102をハンドル106に対して基端方向に移動させることで、ステントグラフト12の全長を簡単且つ確実に短縮化することができる。よって、デリバリー装置10C全体を押し上げてステントグラフト12の全長を縮める従来の手技と比較して、術者のテクニックに対する依存度が少なく、簡単にステントグラフト12の全長を縮める手技を遂行することができる。
【0206】
本実施形態の場合、スイッチ部材164を操作して、シースハブ118に連結固定された第1ワイヤ138に巻き掛けられた第1回転体126と、シャフトハブ110に連結固定された第2ワイヤ140に巻き掛けられた第2回転体128とを、相対回転不可能に係合させる構成を備えるので、シース104の基端方向への移動に機械的に連動させて、シャフト102を先端方向に移動させることができる。よって、ステントグラフト12を拡張させながら短縮化する手技を、操作者の技量によらず簡単且つ確実に実施することができる。また、シース104の移動量に対するシャフト102の移動量を任意に設定した割合に固定できるため、ステントグラフト12の骨格同士が重なったり、グラフトがめくれたりすることを確実に防止することができる。
【0207】
さらに、本実施形態に係るデリバリー装置10Cによれば、スイッチ機構132により、シャフト102のシース104に対する従動状態を切り換えることができる。よって、患者の血管の長さや蛇行具合に応じて、ステントグラフト12をどれだけ縮めるかを容易に調整し、且つ、本来長さよりも短い任意の(所望の)長さでステントグラフト12を血管内に留置できる。
【0208】
またさらに、本実施形態に係るデリバリー装置10Cによれば、第2回転体128が第1回転体126から離間した状態(図21A及び図21B参照)のとき、第2回転体128はその前方に設けられた回転阻止係合部150aと係合し、回転が阻止されてロック状態となるので、第2回転体128の第2プーリ146に巻き掛けられた第2ワイヤ140も移動せず、第2ワイヤ140に連結固定されたシャフトハブ110の移動も阻止される。よって、シース104に対するシャフト102の連動が解除された状態で、シャフト102のハンドル106に対する移動が阻止され、シャフト102の位置を確実に保持することができる。
【0209】
上述したデリバリー装置10Cでは、第1回転体126と同軸上に回転操作部130を設けたが、図25に示す構成のように、第1回転体126の基端部にフェースギア172を設けるとともに、このフェースギア172に噛み合うピニオン174を有する変形例に係る回転操作部130aを設けてもよい。この場合、回転操作部130aの軸部175は、ハウジング124を貫通し、ハウジング124によって回転可能に支持される。回転操作部130aの操作子(ノブ)176は、ハウジング124の外側に配設され、使用者が手で直接把持することにより回転操作が可能となっている。
【0210】
なお、図16等に示した構成例では、ハウジング124内で第1回転体126よりも先端方向に第2回転体128が配置されたが、第1回転体126と第2回転体128の位置関係はこれに限らず第1回転体126よりも基端側に第2回転体128が配置されてもよい。この場合、第1回転体126、第2回転体128及びスイッチ機構132の向きを図16等に示した向きに対してそれぞれ前後逆にすることは勿論である。
【0211】
[第4実施形態]
次に、図26〜図32を参照し、第4実施形態(変形例を含む)に係るデリバリー装置10D(以下、単に「デリバリー装置10D」ともいう)について説明する。なお、第4実施形態に係るデリバリー装置10Dにおいて、第3実施形態に係るデリバリー装置10Cと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0212】
図26は、デリバリー装置10Dの一部省略斜視図であり、図27は、デリバリー装置10Dの一部省略側面図であり、図28は、デリバリー装置10Dのハンドル106の斜視図である。なお、図26〜図28では、理解の容易のため、一部の部品を取り外した状態を示している。
【0213】
第4実施形態に係るデリバリー装置10Dと、第3実施形態に係るデリバリー装置10Cとの主な違いは、第4実施形態に係るデリバリー装置10Dが、ステントグラフト12の残りの押し縮め可能な長さを表示するインジケータ180と、このインジケータ180を動作させるインジケータ動作機構182とを備えることである。また、本実施形態における第1回転体126aは、図16等に示した第3実施形態における第1回転体126に対して、基端面に第2係合部141bを設けたものである。以下、第1回転体126aの先端面に設けられた係合部141aを「第1係合部141a」とよぶ。また、本実施形態では、ハンドル106に回転操作部が設けられていない。
【0214】
インジケータ180は、シースハブ118とシャフトハブ110との間でガイドパイプ108に対して軸線方向に移動可能なマーカ部材181として構成されている。具体的には、ガイドパイプ108の内周部には、軸線方向に延在した溝部183が設けられ、この溝部にマーカ部材181がガイドパイプ108の軸線方向に沿って摺動可能に配置されている。溝部183の底部には、ガイドパイプ108の内外を連通する窓部184が軸線方向に沿って形成され、この窓部184を通して、マーカ部材181が外部から視認できるようになっている。
【0215】
本実施形態では、マーカ部材181とシャフトハブ110との距離(軸線方向の距離)が、ステントグラフト12のその時点での残りの押し縮め可能な長さを示している。使用者がインジケータ180を容易に視認できるように、マーカ部材181には、ガイドパイプ108の色に対してコントラストが大きい色が付されているのがよい。
【0216】
ここで、マーカ部材181の動作について説明する。第2実施形態におけるインジケータ74(図12参照)の説明と同様に、使用時にその時その時の残りのステントグラフト12の最大短縮可能量をdとする。マーカ部材181とシャフトハブ110との距離がdを表すようにするためには、ハンドル106に対してシース104だけを基端方向に移動させる動作(通常動作)の場合と、ハンドル106に対してシース104を基端方向に移動させるとともにシャフト102を先端方向に移動させる動作(短縮動作)の場合とで、マーカ部材181の動作を異ならせることが必要である。そして、この場合のマーカ部材181の動きは、上述した第2実施形態におけるインジケータ74に求められる動きと同様に考えることができる。
【0217】
すなわち、ハンドル106に対してシース104だけを基端方向に移動させる場合(シース104がハンドル106に対して基端方向に移動し且つシャフト102がハンドル106に対して位置を保持する場合)、インジケータ動作機構182は、シース104の移動量に対して所定の割合で、ハンドル106に対してマーカ部材181を基端方向に移動させる。この場合、マーカ部材181の移動速度は、上述した式(6)に基づいて決定される。
【0218】
一方、シース104が基端方向に移動しつつシャフト102が先端方向に移動する短縮動作の場合、シャフト102の移動量は、ステントグラフト12の押し縮め可能量そのものであり、押し縮めた量だけdは短くなる。したがって、マーカ部材181は、シャフトハブ110が先端方向に移動する間、ハンドル106に対して静止していればよい。そこで、インジケータ動作機構182は、シース104が基端方向に移動しつつシャフト102が先端方向に移動する短縮動作の場合、ハンドル106に対するマーカ部材181の位置を保持する。
【0219】
次に、上記のようなマーカ部材181の動きを実現するインジケータ動作機構182及びスイッチ機構132aの構成について説明する。
【0220】
図27及び図28に示すように、インジケータ動作機構182は、ハウジング124内に配置された第3回転体186と、第3回転体186に巻き掛けられ且つマーカ部材181に連結固定されたループ状の第3ワイヤ188とを有する。第3回転体186は、第1回転体126aを基準として第2回転体128とは反対側(図示例では、第1回転体126aの後方)に配置されるとともに、第1回転体126a及び第2回転体128と同様に、サポートシャフト127によって支持されている。
【0221】
第3回転体186は、サポートシャフト127に対して回転可能であるとともに、軸線方向にも移動可能である。したがって、第3回転体186は、ハウジング124内で、第1回転体126に対して、近接及び離間する方向に移動可能となっている。このように配置された第3回転体186は、第3ワイヤ188が巻き掛けられた円筒状の第3プーリ190と、この第3プーリ190の先端側に設けられた第1係合部192aと、第3プーリ190の基端側に設けられた第2係合部192bとを有する。
【0222】
第3回転体186の第1係合部192aは、第1回転体126aの第2係合部141bと対向するように配置され、当該第2係合部141bに係合可能な複数の突起を有する。第1回転体126aの第2係合部141bと第3回転体186の第1係合部192aとが係合した状態では、第1回転体126aの回転は、第3回転体186に伝達される。一方、第1回転体126aの第2係合部141bと第3回転体186の第1係合部192aとの係合が外れた状態では、第1回転体126aの回転は、第3回転体186に伝達されない。
【0223】
グリップ部124B内において、第3回転体186の後方には、第2回転阻止係合部150bが第3回転体186に対向するように配置されている。以下、第2回転体128の前方に設けられた回転阻止係合部150aを「第1回転阻止係合部150a」とよぶ。第2回転阻止係合部150bは、サポートシャフト127に対して軸線方向に移動不可能且つ回転不可能に固定されており、その先端面には、周方向に間隔を置いて複数の溝部(突部)が設けられている。
【0224】
第3回転体186の第2係合部192bは、第2回転阻止係合部150bに係合可能であり、図示例では、半径方向に延在する複数の突起が周方向に間隔を置いて配設されている。第3回転体186は、その第2係合部192bが第2回転阻止係合部150bと係合したとき、第2回転阻止係合部150bによって回転が阻止される。第3回転体186とマーカ部材181とは、第3ワイヤ188によって繋がれている。これにより、第3回転体186の回転と、マーカ部材181の軸線方向の移動が同期するようになっている。
【0225】
ここで、図29は、デリバリー装置10Dにおける第1ワイヤ138、第2ワイヤ140及び第3ワイヤ188の配設構造を示す模式図である。
【0226】
図29に示すように、第1ワイヤ138は、グリップ部124B内で第1プーリ139に巻き掛けられるとともに、ガイドパイプ108内でシースハブ118に連結固定されている。また、第1ワイヤ138は、ガイドパイプ108内で軸線方向に沿って延在するとともにガイドパイプ108の先端部(後述するトップホルダ212)に巻き掛けられて折り返されている。第1ワイヤ138は、ハンドル106のグリップ部124Bに設けられた側孔154a、154bと、先端連結部124Aの基端面に設けられた複数の孔部158に挿通されており、側孔154と孔部158との間の部分でハンドル106の外側に位置している。なお、第1ワイヤ138が外部に露出しないように、ハウジング124の外側に出る部分を覆うカバーを設けてもよい。
【0227】
第2ワイヤ140は、グリップ部124B内で第2プーリ146に巻き掛けられ、ガイドパイプ108内でシャフトハブ110に連結固定され、ガイドパイプ108内で軸線方向に沿って延在し、さらに、ガイドパイプ108の先端で折り返されている。また、第2ワイヤ140は、ハンドル124のグリップ部124Bに設けられた側孔160a、160bと、先端連結部124Aの基端面に設けられた複数の孔部158に挿通されており、側孔160a、160bと孔部158との間の部分でハンドル106の外側に位置している。なお、第2ワイヤ140が外部に露出しないように、ハウジング124の外側に出る部分を覆うカバーを設けてもよい。さらに、第2ワイヤ140は、ガイドパイプ108の先端部(トップホルダ212)に設けられた側孔220a、220bを通して、トップホルダ212の外側に引き出されている。第2ワイヤ140が折り返される位置は、ガイドパイプ108の先端部に限らず、シャフトハブ110の可動範囲よりも先端側であればよい。あるいは、第2ワイヤ140は、ガイドパイプ108内に配置されたピンに引っ掛けられて折り返されてもよい。
【0228】
第3ワイヤ188は、グリップ部124B内で第3プーリ186に巻き掛けられ、ガイドパイプ108内で軸線方向に沿って延在し、ガイドパイプ108内でマーカ部材181に連結固定され、ガイドパイプ108の先端部で折り返されている。本実施形態の場合、第3ワイヤ188のうち、第3プーリ190とガイドパイプ108との間の部分188aは、ハンドル106の外側に引き出されて、ハウジング124の外面に沿って摺動するように配設されている。このため、第1ワイヤ138は、ハウジング124の第3プーリ190に対応する箇所に設けられた側孔194a、194bと、先端連結部124Aの基端面に設けられた複数の孔部158に挿通されており、側孔194a、194bと孔部158との間の部分188aでハンドル106の外側に位置している。なお、第3ワイヤ188が外部に露出しないように、ハウジング124の外側に出る部分を覆うカバーを設けてもよい。
【0229】
さらに、第3ワイヤ188は、ガイドパイプ108の先端部(トップホルダ212)に設けられた側孔222a、222bを通して、トップホルダ212の外側に引き出されている。第3ワイヤ188が折り返される位置は、ガイドパイプ108の先端部に限らず、マーカ部材181の可動範囲よりも先端側であればよい。あるいは、第3ワイヤ188は、ガイドパイプ108内に配置されたピンに引っ掛けられて折り返されてもよい。
【0230】
図28に示すように、本実施形態におけるスイッチ機構132aは、スイッチ部材198と弾性部材200とを備えており、第1回転体126と第2回転体128とが係合せず且つ第1回転体126と第3回転体186とが係合する第1の切換状態と、第1回転体126と第2回転体128とが係合し且つ第1回転体126と第3回転体186とが係合しない第2の切換状態とを選択的に切り換えるように構成されている。
【0231】
スイッチ部材198は、ハウジング124の外側に配設された操作プレート202と、操作プレート202からハウジング124内に突出した一対のアーム部204a、204bとを有し、第1回転体126aと第2回転体128との係合を解除し且つ第1回転体126aと第3回転体186とを係合させる「第1の位置」と、第1回転体126aと第2回転体128と係合させ且つ第1回転体126aと第3回転体186との係合を解除する「第2の位置」とに選択的に変位可能である。
【0232】
操作プレート202は、使用者が指で触って操作する部分である。一対のアーム部204a、204bは、ハウジング124の軸線方向に間隔をおいて対向している。一方のアーム部204aは、第2回転体128に係合している。他方のアーム部204bは第3回転体186に係合している。
【0233】
具体的には、一方のアーム部204aは、第2回転体128を軸線方向に移動できるように、第2回転体128の基端側に設けられた2つのフランジ部170a、170b間に挿入されている。また、他方のアーム部204bは、第3回転体186を軸線方向に移動できるように、第3回転体186の先端側に設けられた2つのフランジ部206a、206b間に挿入されている。
【0234】
弾性部材200は、第3回転体186の基端側で第3回転体186を先端方向に常に押圧するように配置されている。具体的には、ハウジング124の基端開口部にストッパ部材208が固定され、このストッパ部材208と第3回転体186との間に弾性部材200が配置されている。これにより、第3回転体186が先端方向に常に弾性的に付勢されるとともに、スイッチ部材198を介して第2回転体128も先端方向に常に弾性的に付勢される。図示した構成例の弾性部材200は、コイルバネである。
【0235】
上記のように構成されたインジケータ動作機構182及びスイッチ機構132aにより、マーカ部材181は、以下のように動作する。
【0236】
使用者が操作プレート202に対して何らの操作力も作用させない場合、弾性部材200の付勢力により、スイッチ部材198は可動範囲の先端側(第1の位置)にある。スイッチ部材198がこの位置にあるとき、第3回転体186は、第1回転体126aに係合し、第2回転体128は、第1回転体126aから離間している。以下、このときのスイッチ機構132aの状態を「第1の切換状態」とよぶ。
【0237】
スイッチ機構132aが第1の切換状態に設定されているとき、第1回転体126の回転は、第3回転体186には伝達されるが、第2回転体128には伝達されない。このため、シース104を基端方向に移動させる際の第1回転体126の回転に同期して、第3回転体186が回転するとともに、第3回転体186に巻き掛けられた第3ワイヤ188によってマーカ部材181が基端方向に移動する。一方、第2回転体128は、第1回転体126から離間しているため、回転せず、シャフト102はハンドル106及びガイドパイプ108に対して静止したままである。このとき、第2回転体128は、その前方に配置された第1回転阻止係合部150aと係合するため、シャフト102の移動が確実に阻止される。
【0238】
一方、弾性部材200の弾発力に抗して、スイッチ部材198を基端方向に引き寄せて第2の位置に移動させた場合、操作プレート202の一方のアーム部204aに係合した第2回転体128と、他方のアーム部204bに係合した第3回転体186とが操作プレート202と一体となって基端方向に移動し、これにより、第1回転体126と第2回転体128とが係合し且つ第1回転体126と第3回転体186とが係合しない状態となる。以下、このときのスイッチ機構132aの状態を「第2の切換状態」とよぶ。
【0239】
スイッチ機構132aが第2の切換状態に設定されているとき、第1回転体126の回転は、第2回転体128には伝達されるが、第3回転体186には伝達されない。このため、シース104を基端方向に移動させる際の第1回転体126の回転に同期して、第2回転体128が回転するとともに、第2回転体128に巻き掛けられた第2ワイヤ140によってシャフト102が先端方向に移動する。一方、第3回転体186は、第1回転体126から離間しているため、回転せず、マーカ部材181はハンドル106及びガイドパイプ108に対して静止したままである。このとき、第3回転体186は、その後方に配置された第2回転阻止係合部150bと係合するため、ハンドル106及びガイドパイプ108に対するマーカ部材181の移動が確実に阻止される。
【0240】
図30は、ガイドパイプ108の先端に設けられた回転操作部210(先端側回転操作部、第2回転操作部)及びその周辺部位を示す一部省略斜視図であり、図31は、回転操作部210の分解斜視図である。回転操作部210は、ガイドパイプ108の先端に固定されたトップホルダ212と、トップホルダ212に対して回転可能に支持されたプーリ(先端側プーリ、第4プーリ)214と、プーリ214に対して相対回転不可能に固定されたトップカバー216とを備える。
【0241】
トップホルダ212は、中空円筒状の部材であり、基端側の大径部212Aと、先端側の小径部212Bとを有する。大径部212Aの外周部には、周方向に延在する2つのワイヤ案内溝217、218が軸線方向に間隔をおいて形成されており、一方のワイヤ案内溝217に、第2ワイヤ140が摺動可能に挿通される一対の側孔220a、220bが設けられ、他方のワイヤ案内溝218に、第3ワイヤ188が摺動可能に挿通される一対の側孔222a、222bが形成されている。
【0242】
第2ワイヤ140が挿通される一対の側孔220a、220bは、一方のワイヤ案内溝217の一端側と他端側に設けられている。第3ワイヤ188が挿通される一対の側孔222a、222bは、他方のワイヤ案内溝218の一端側と他端側に設けられている。第2ワイヤ140が挿通される一対の側孔220a、220bと、第3ワイヤ188が挿通される一対の側孔222a、222bとは、互いに周方向の位置がずれている。このため、ガイドパイプ108内で第2ワイヤ140と第3ワイヤ188との相互干渉が防止されている。
【0243】
大径部212Aの先端面には、第1ワイヤ138が摺動可能に挿通される一対の挿通孔224a、224bが設けられている。小径部212Bにおいて、一対の挿通孔224a、224bに対応する周方向位置には、小径部212Bの内外を連通する一対の開口部226a、226bが形成されており、その開口部226a、226bを通して、第1ワイヤ138がプーリ214に巻き掛けられている。プーリ214は、中空円筒形に形成されており、軸線方向に沿ってシャフト本体109が挿通される内腔214aを有している。
【0244】
トップカバー216は、使用者が手でつまんで把持する部分であり、中空円筒形に形成され、プーリ214を覆っている。トップカバー216は、プーリ214に対して回転不可能に嵌合しているため、トップカバー216を回転させることより、プーリ214を一体的に回転させることができる。このとき、トップホルダ212は、ガイドパイプ108に回転不可能に固定されているため、トップカバー216を回転させても回転することはない。このように構成されたトップカバー216を所定方向(例えば、右方向)に回転させることにより、第1ワイヤ138が押し引きされ、第1ワイヤ138に連結固定されたシースハブ118(シース104)が基端方向に移動する。
【0245】
次に、上記のように構成されたデリバリー装置10Dの動作を説明する。シャフト102を移動させず、シース104のみをハンドル106に対して基端方向に移動させたい場合、図28等に示したスイッチ機構132aを第1の切換状態に設定する。本実施形態の場合、弾性部材200によりスイッチ部材198が可動範囲の先端側に移動するように付勢されているので、スイッチ部材198を意図的に操作しない限り、スイッチ機構132aは第1の切換状態となっている。
【0246】
そこで、図30等に示したトップカバー216を把持して所定方向に回転させることにより、又は図26等に示したシースハブ118を直接把持して、シース104を基端方向に移動させる。そうすると、シース104が基端方向に移動する過程で、ステントグラフト12が体腔内(血管内)で開放・展開されて自己拡張していく。このとき、第2回転体128は第1回転体126と係合していないため、シャフト102はハンドル106及びガイドパイプ108に対して静止したままである。
【0247】
一方、第3回転体186は、第1回転体126aと係合しているため、シース104が基端方向に移動する際の第1回転体126aの回転に伴って回転する。よって、第3回転体186に巻き掛けられた第3ワイヤ188により、マーカ部材181が引っ張られて基端方向に移動する。シース104が基端方向に移動する間、シャフトハブ110はガイドパイプ108に対して静止したままであるが、マーカ部材181が基端方向に移動することにより、マーカ部材181とシャフトハブ110との距離は短くなっていく。このとき、マーカ部材181とシャフトハブ110との距離は、ステントグラフト12の残りの押し縮め可能な長さを示している。よって、術者は、マーカ部材181を見ることで、ステントグラフト12のその時その時の残りの押し縮め可能な長さを容易に把握することができる。
【0248】
シース104を十分に後退させてステントグラフト12の全長を露出させると、図23Bに示した場合と同様に、ステントグラフト12の全体が本来長さで拡張・展開する。これにより、ステントグラフト12は本来の長さで血管内に留置される。
【0249】
シース104をハンドル106に対して基端方向に移動させると同時に、シャフト102をハンドル106に対して先端方向に移動(前進)させたい場合、図28に示したスイッチ機構132aを第2の切換状態に設定する。本実施形態の場合、スイッチ部材198を基端方向に移動操作し、その位置を保持する。
【0250】
そこで、図30に示したトップカバー216を把持して所定方向に回転させることにより、又は図26に示したシースハブ118を直接把持して、シース104を基端方向に移動させる。そうすると、第2回転体128は、第1回転体126と係合しているため、シース104が基端方向に移動する際の第1回転体126の回転に伴って第2回転体128も回転する。よって、第2回転体128に巻き掛けられた第2ワイヤ140により、シャフト102が先端方向に移動する。
【0251】
この場合、シース104の基端方向への移動距離の増大に伴って、ステントグラフト12は、先端側から後端側に向かって徐々に展開していくが、同時に、先端方向に移動するシャフト102によって、シース104内に収納されているステントグラフト12が押し出される。このため、シース104が基端方向に移動する長さよりもステントグラフト12がシース104から押し出された長さが長くなり、体腔内で本体の長さよりも短く展開・留置されるに至る。
【0252】
シース104が基端方向に移動している間、第3回転体186は第1回転体126と係合していないため、マーカ部材181はハンドル106及びガイドパイプ108に対して静止したままである。しかし、シャフトハブ110は先端方向に移動するため、マーカ部材181とシャフトハブ110との距離は、シース104の基端方向への移動と同期して短くなっていく。このとき、マーカ部材181とシャフトハブ110との距離は、ステントグラフト12の残りの押し縮め可能な長さを示している。よって、術者は、マーカ部材181を見ることで、ステントグラフト12のその時その時の残りの押し縮め可能な長さを容易に把握することができる。
【0253】
上記のようにシース104を基端方向に移動させるとともにシャフト102を先端方向に移動させることにより、図24Bに示した場合と同様に、ステントグラフト12は、血管内で本体の長さよりも短く展開・留置される。
【0254】
以上説明したように、デリバリー装置10Dによれば、インジケータ180(図26及び図29参照)を備えることにより、デリバリー装置10Dの操作途中において、ステントグラフト12の残りの押し縮め可能な長さを簡単に把握することができる。本実施形態の場合、シャフトハブ110とインジケータ180との距離を見るだけで、ステントグラフト12のその時その時の残りの押し縮め可能な長さを簡単且つ迅速に把握することができる。
【0255】
インジケータ動作機構182は、シース104を基端方向に移動させ且つシャフト102をガイドパイプ108に対して静止させる通常動作の場合に、シース104の移動量に対して所定の割合でガイドパイプ108に対してマーカ部材181を基端方向に移動させ、シース104を基端方向に移動させるとともにシャフト102を先端方向に移動させる短縮動作の場合に、マーカ部材181をガイドパイプ108に対して静止させるように構成されているので、ステントグラフト12の残り縮め可能量を適切に示すことができる。
【0256】
デリバリー装置10Dによれば、第2回転体128と第3回転体186の一方が選択的に第1回転体126に係合するので、図28等に示したスイッチ機構132aを第1の切換状態に設定してシース104を基端方向に移動させると、シャフト102は動かない一方で、マーカ部材181を基端方向に移動させることができる。また、スイッチ機構132aを第2の切換状態に設定してシース104を基端方向に移動させると、シャフト102は先端方向に移動する一方で、マーカ部材181の位置を保持できる。よって、マーカ部材181を適切に動作させることができる。
【0257】
また、デリバリー装置10Dによれば、第2回転体128及び第3回転体186に係合し、これらと軸線方向に一体的に移動可能なスイッチ部材198を備えるので、スイッチ部材198を前後に移動させるだけで、簡単に第1の切換状態と第2の切換状態のいずれかに切り換えることができる。
【0258】
さらに、デリバリー装置10Dによれば、第1回転体126と第2回転体128とが係合しない第1の切換状態のとき、第2回転体128が第1回転阻止係合部150aと係合することで、シャフト102のハンドル106に対する移動が阻止(ロック)されるので、シャフト102の位置を確実に保持することができる。一方、第1回転体126と第3回転体186とが係合しない第2の切換状態のとき、第3回転体186が第2回転阻止係合部150bと係合することで、ガイドパイプ108に対するマーカ部材181の位置を確実に保持することができる。
【0259】
また、デリバリー装置10Dによれば、第3回転体186を介してスイッチ部材198を付勢する弾性部材200(図28参照)を備えるので、使用者がスイッチ部材198を第2の切換状態とする方向に操作しないときは、弾性部材200の弾性力によってスイッチ機構132aが第1の切換状態を維持するので、シャフト102を先端方向に移動させたいときだけ、すなわちステントグラフト12の全長を縮めたいときだけ、スイッチ機構132aを第2の切換状態とする方向に操作すればよい。
【0260】
図28等に示した構成例では、ハウジング124内で第1回転体126よりも先端方向に第2回転体128が配置されるとともに第1回転体126よりも基端側に第3回転体186が配置されたが、第1回転体126と第2回転体128の位置関係はこれに限らない。すなわち、第1回転体126よりも基端側に第2回転体128が配置されるとともに第1回転体126よりも先端側に第3回転体186が配置されてもよい。この場合、第1回転体126、第2回転体128、第3回転体186及びスイッチ機構132aの向きを図28等に示した向きに対してそれぞれ前後逆にすることは勿論である。
【0261】
上述したデリバリー装置10Dでは、第1回転体126、第2回転体128及び第3回転体186を同軸上に直列に配置したが、図32A及び図32Bに示す構成を採用してもよい。図32A及び図32Bにおいて、ハウジング124内には、上述した第1回転体126aの変形例である第1回転体230、第2回転体128の変形例である第2回転体232及び第3回転体186の変形例である第3回転体234が、ハウジング124の軸線方向に沿って配列されている。第1回転体230、第2回転体232及び第3回転体234は、互いの回転軸心が平行である。
【0262】
第1回転体230は、ハウジング124に回転可能に支持された軸部236と、軸部236に固定され第1ワイヤ138が巻き掛けられた第1プーリ237と、軸部236に固定された第1歯車238とを有し、軸部236の一端部には回転操作部240が設けられている。第2回転体232は、ハウジング124の軸線方向に移動可能に配置されており、第2ワイヤ140が巻き掛けられた第2プーリ242と、第2プーリ242と一体で回転する第2歯車244とを有する。第3回転体234は、ハウジング124の軸線方向に移動可能に配置されており、第3ワイヤ188が巻き掛けられた第3プーリ246と、第3プーリ246と一体で回転する第3歯車248とを有する。
【0263】
第2歯車244の前方には、第1回転阻止係合部250aが配置されている。このため、第2歯車244が第1歯車238から離間した状態では、第2歯車244と第1回転阻止係合部250aとが噛み合うため、第2回転体232の回転が阻止される。第3歯車248の後方には、第2回転阻止係合部250bが配置されている。このため、第3歯車248が第1歯車238から離間した状態では、第3歯車248と第2回転阻止係合部250bとが噛み合うため、第3回転体234の回転が阻止される。
【0264】
スイッチ部材252に設けられた一方のアーム部254aは、第2回転体232に係合し、他方のアーム部254bは、第3回転体234に係合している。これにより、スイッチ部材252をハウジング124の軸線方向に移動すると、第2回転体232及び第3回転体234もスイッチ部材252と一体となって同一の軸線方向に移動する。弾性部材256は、第1歯車238と第2歯車244とを離間させ且つ第1歯車238と第3歯車248とを噛み合わせる方向にスイッチ部材252を弾性的に付勢している。
【0265】
このようなスイッチ部材252と弾性部材256により、第1回転体230と第2回転体232とが係合する係合状態と、第1回転体230と第2回転体232とが係合しない非係合状態とを選択的に切り換えるスイッチ機構260が構成されている。なお、スイッチ機構260において、弾性部材256を省略してもよい。
【0266】
図32A及び図32Bに示した構成によっても、図28に示した構成と同様の機能を達成できる。
【0267】
第4実施形態(変形例を含む)において、第3実施形態と共通する各構成部分については、第3実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0268】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0269】
10A、10B、10C、10D…ステントグラフトデリバリー装置
12…ステントグラフト 14、102…シャフト
16、104…シース 17、106…ハンドル
20、109…シャフト本体 21…シャフトパイプ
22、116…シース本体 24…シースパイプ
50、90…歯車機構 50A、50B…移動機構
60、60a、132、132a、260…スイッチ機構
108…ガイドパイプ 110…シャフトハブ
118…シースハブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状のグラフトに骨格を設けたステントグラフトを、先端側に設けられたマウント部に載置したシャフトと、
前記シャフトの外側で前記シャフトの長手方向に沿って摺動可能に配置され、前記ステントグラフトを内腔内に収納可能なシースと、
前記シャフト及び前記シースの基端側に設けられるハンドルと、を備え、
前記シースは、前記ハンドルを基準として基端方向に移動可能に設けられ、
前記シャフトは、前記ハンドルを基準として先端方向に移動可能に設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項2】
請求項1記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記シースの基端方向への移動に伴って、前記シャフトを前記先端方向へと従動的に移動させる移動機構を備える、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項3】
請求項2記載のステントグラフトデリバリー装置において、
ハンドルは、前記シャフトが前記シースに従動する従動状態と、シャフトのシースに対する従動を解除する解除状態とを選択的に切り替えるスイッチ機構をさらに有する、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項4】
請求項2記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記シースは、先端側で前記ステントグラフトを収納するシース本体と、該シース本体の基端部に設けられるシースパイプとを有し、
前記シースパイプは、前記ハンドルに連結されると共に、該シースパイプの外面にはシース側ラックギアが形成され、
前記シャフトは、先端側に前記ステントグラフトが配置されるシャフト本体と、該シャフト本体の基端側に設けられるシャフトパイプとを有し、
前記シャフトパイプは、前記ハンドルに連結されると共に、該シャフトパイプの外面にはシャフト側ラックが形成され、
前記シースパイプの少なくとも一部は、シャフトパイプ内に挿通され、
前記移動機構は、
前記シース側ラックギアに噛み合うシース側第1歯車と、該シース側第1歯車に連動するシース側第2歯車とを有するシース側歯車機構と、
前記シャフト側ラックに噛み合うシャフト側第1歯車と該シャフト側第1歯車に連動するシャフト側第2歯車とを有するシャフト側歯車機構と、
前記シース側第2歯車及び前記シャフト側第2歯車に噛み合い、前記ハンドルに対して回転可能に軸支された中間歯車とを備える、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項5】
請求項4記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記ハンドルは、シャフト側第2歯車と中間歯車とが係合する係合状態と、シャフト側第2歯車と中間歯車とが係合しない非係合状態とを選択的に切り換えるスイッチ機構をさらに有する、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項6】
請求項5記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記シャフト側歯車機構は、前記シャフト側第1歯車と前記シャフト側第2歯車とが互いに同軸上で一体的に回転するように設けられたシャフト側歯車軸であり、
前記シャフト側歯車軸は、前記中間歯車に対して傾動可能であり、前記シャフト側歯車軸の傾動により、前記係合状態と前記非係合状態とが切り換り、
前記シャフト側第1歯車と前記シャフト側ラックとの噛み合いは、前記シャフト側歯車軸の傾動状態に関わらず保持され、
前記ハンドルには、前記非係合状態のとき前記シャフト側第2歯車に係合してシャフト側第2歯車の回転を阻止する回転阻止係合部が設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項7】
請求項4〜5のいずれか1項に記載のステントグラフトデリバリー装置において、
ハンドルには、中間歯車又はシース側歯車機構に連結され、人手によって回転させる回転操作部が設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項8】
請求項2記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記シースは、先端側で前記ステントグラフトを収納するシース本体と、該シース本体の基端側に設けられるシースハブとを有し、
前記シャフトは、先端側に前記ステントグラフトが配置されるシャフト本体と、該シャフト本体の基端側に設けられるシャフトハブとを有し、
前記ハンドルの先端側には、前記シースハブ及び前記シャフトハブを軸線方向に移動可能にガイドするガイドパイプが連結固定され、
前記移動機構は、
前記ハンドル内で回転可能に配置され、第1プーリを有する第1回転体と、
前記ハンドル内で回転可能に配置され、第2プーリを有する第2回転体と、
前記シースハブに連結されるとともに前記第1プーリに巻き掛けられ、且つ、前記ガイドパイプに沿って延在するとともに前記ガイドパイプにおける前記シースハブの可動範囲よりも先端側で折り返すように配設された第1ワイヤと、
前記シャフトハブに連結されるとともに前記第2プーリに巻き掛けられ、且つ、前記ガイドパイプに沿って延在するとともに前記ガイドパイプにおける前記シャフトハブの可動範囲よりも先端側で折り返すように配設された第2ワイヤとを備え、
前記第1プーリと前記第2プーリの機械的連動によって、前記シースの基端方向への移動に伴って、前記シャフトが先端方向に移動する、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項9】
請求項8記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記第1回転体と前記第2回転体とは、回転を伝達するように互いに係合可能であり、
前記ハンドルは、前記第1回転体と前記第2回転体とが係合する係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが係合しない非係合状態とを選択的に切り換えるスイッチ機構をさらに有する、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項10】
請求項9記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記第2回転体は、前記第1回転体と同軸上に配置されるとともに、前記第1回転体に対して近接及び離間する方向に移動可能であり、
前記第1回転体と前記第2回転体とは互いに相対回転不可能に係合可能であり、
前記第2回転体の移動により、前記係合状態と前記非係合状態とが切り換る、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項11】
請求項9記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記第1回転体は、前記第1プーリと同軸に一体的に回転する第1歯車を有し、
前記第2回転体は、前記第2プーリと同軸に一体的に回転する第2歯車を有し、前記第1回転体に対して並列に配置され、且つ、前記第1回転体に対して近接及び離間する方向に移動可能であり、
前記第2回転体の移動により、前記係合状態と前記非係合状態とが切り換る、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項12】
請求項9記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記ハンドルには、前記非係合状態のとき前記第2回転体に係合して前記第2回転体の回転を阻止する回転阻止係合部が設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか1項に記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記ガイドパイプには、軸線方向に沿って延在するガイド孔が設けられ、
前記シースハブには、前記ガイド孔を通って前記ガイドパイプの外側に突出したガイド突起が設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか1項に記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記ハンドルには、前記第1回転体に連結され、人手によって回転させる回転操作部が設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれか1項に記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記ガイドパイプの先端部には、前記第1ワイヤが巻き掛けられた先端側プーリと、前記先端側プーリと一体的に回転可能であり人手によって回転操作する先端側回転操作部とが設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項16】
請求項1〜4及び8のいずれか1項に記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを表示するインジケータをさらに備える、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項17】
請求項4記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを表示するインジケータと、前記インジケータを動作させるインジケータ動作機構とをさらに備え、
前記インジケータは、前記シースパイプと前記シャフトパイプとの間に、前記シースパイプの軸線方向に沿って配置された棒状部材であり、
前記インジケータのうち、前記シャフトパイプに覆われず、前記シースパイプ上に露出する部分の長さが、前記ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを示す、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項18】
請求項17記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記インジケータ動作機構は、
前記ガイドパイプに対して前記シースが基端方向に移動し且つシャフトがハンドルに対して位置を保持する場合に、前記シースの移動量に対して所定の割合で、前記ガイドパイプに対して前記インジケータを基端方向に移動させ、
前記ガイドパイプに対して前記シースが基端方向に移動しつつ前記シャフトが先端方向に移動する場合に、前記ガイドパイプに対して前記インジケータを静止させる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項19】
請求項18記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記インジケータ動作機構は、前記ハンドルに回転可能に軸支されるとともに中間歯車に係合可能なインジケータ側歯車を有し、前記インジケータ側歯車の回転に基づいて前記インジケータが動作し、
前記ハンドルには、さらに、前記シース側第2歯車と前記中間歯車とが噛み合わず且つ前記インジケータ側歯車と前記中間歯車とが噛み合う第1の切換状態と、前記シース側第2歯車と前記中間歯車とが噛み合い且つ前記インジケータ側歯車と前記中間歯車とが噛み合わない第2の切換状態とを選択的に切り換えるスイッチ機構が設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項20】
請求項19記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記スイッチ機構は、スイッチ軸部を中心として揺動可動なスイッチ部材を備え、
前記スイッチ部材には、前記スイッチ軸部を基準として互いに反対側に設けられた第1係合孔及び第2係合孔を有し、
前記シャフト側第2歯車に設けられた軸部が、前記第1係合孔に係合し、
前記インジケータ側歯車に設けられた軸部が、前記第2係合孔に係合する、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項21】
請求項19又は20記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記シャフト側歯車機構は、前記シャフト側第1歯車と前記シャフト側第2歯車とが互いに同軸上で一体的に回転するように設けられたシャフト側歯車軸であり、
前記シャフト側歯車軸は、前記中間歯車に対して傾動可能であり、前記シャフト側歯車軸の傾動により、前記係合状態と前記非係合状態とが切り換り、
前記シャフト側第1歯車と前記シャフト側ラックとの噛み合いは、前記シャフト側歯車軸の傾動状態に関わらず保持され、
前記インジケータ側歯車は、前記中間歯車に対して傾動可能なインジケータ側歯車軸に設けられ、
前記ハンドルには、
前記シャフト側第2歯車と前記中間歯車とが噛み合っていないとき、前記シャフト側第2歯車に係合してシャフト側第2歯車の回転を阻止する第1回転阻止係合部と、
前記インジケータ側歯車と前記中間歯車とが噛み合っていないとき、前記インジケータ側歯車に係合して前記インジケータ側歯車の回転を阻止する第2回転阻止係合部とが設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項22】
請求項8記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを表示するインジケータと、インジケータを動作させるインジケータ動作機構とをさらに備え、
前記インジケータは、前記シースハブと前記シャフトハブとの間で前記ガイドパイプに対して軸線方向に移動可能なマーカ部材として構成され、
前記マーカ部材は、外部から視認可能な状態で配設されており、前記シャフトハブと前記マーカ部材との距離が、前記ステントグラフトの残りの押し縮め可能な長さを示す、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項23】
請求項22記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記インジケータ動作機構は、
前記ハンドルに対して前記シースが基端方向に移動し且つ前記シャフトが静止する場合に、前記シースの移動量に対して所定の割合で前記ガイドパイプに対して前記インジケータを基端方向に移動させ、
前記ハンドルに対して前記シースが基端方向に移動しつつ前記シャフトが先端方向に移動する場合に、前記ガイドパイプに対して前記インジケータの位置を静止させる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項24】
請求項23記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記インジケータ動作機構は、
前記ハンドル内に回転可能に配置され、第3プーリを有する第3回転体と、
前記マーカ部材に連結されるとともに前記第3プーリに巻き掛けられ、且つ、前記ガイドパイプに沿って延在するとともに前記ガイドパイプにおける前記マーカ部材の可動範囲よりも先端側で折り返すように配設された第3ワイヤとを備え、
前記第2回転体及び前記第3回転体の各々は、前記第1回転体に対して近接及び離間する方向に移動可能であるとともに、前記第1回転体の回転が伝達されるように前記第1回転体と係合可能であり、
前記ハンドルには、前記第1回転体と前記第2回転体とが係合せず且つ前記第1回転体と前記第3回転体とが係合する第1の切換状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが係合し且つ前記第1回転体と前記第3回転体とが係合しない第2の切換状態とを選択的に切り換えるスイッチ機構が設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項25】
請求項24記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記第1回転体、前記第2回転体及び前記第3回転体は、前記ハンドルの軸線方向に沿って一列に配置され、
前記第1回転体は、前記第2回転体と前記第3回転体との間に配置され、
前記スイッチ機構は、人手によって移動操作されるスイッチ部材を有し、
前記スイッチ部材は、前記第2回転体及び前記第3回転体に連結され、前記ハンドルに対して、前記第2回転体及び前記第3回転体と一体的に軸線方向に移動可能である、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項26】
請求項24又は25記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記ハンドルには、
前記第2回転体と前記第1回転体とが係合していないとき、前記第2回転体に係合して前記第2回転体の回転を阻止する第1回転阻止係合部と、
前記第3回転体と前記第1回転体とが係合していないとき、前記第3回転体に係合して前記第3回転体の回転を阻止する第2回転阻止係合部とが設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項27】
請求項25又は26記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記ハンドルには、前記スイッチ機構を前記第1の切換状態にする方向に前記スイッチ部材を直接的に又は間接的に常に付勢する弾性部材が設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−205623(P2012−205623A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71581(P2011−71581)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】