ステントグラフト組み付け方法及び組み付け用治具
【課題】ステントグラフトをシース内に適切に収納することができるステントグラフト組み付け方法及び組み付け用治具を提供する。
【解決手段】このステントグラフト組み付け方法は、管状のシャフト12と、該シャフト12の外面側に配置される管状のシース14との間にステントグラフト18を圧縮して収納するステントグラフト組み付け方法であって、前記シース14の内腔内へと前記ステントグラフト18を圧縮しながら引き込み収納する工程を有し、前記引き込み収納する工程では、前記シース14の開口端14aに向かって縮径するテーパ状の内面34a及びテーパ状の外面30aを備える治具10を用い、前記ステントグラフト18の外面及び内面を、前記治具10の前記テーパ状の内面34a及び前記テーパ状の外面30aによってそれぞれガイドする。
【解決手段】このステントグラフト組み付け方法は、管状のシャフト12と、該シャフト12の外面側に配置される管状のシース14との間にステントグラフト18を圧縮して収納するステントグラフト組み付け方法であって、前記シース14の内腔内へと前記ステントグラフト18を圧縮しながら引き込み収納する工程を有し、前記引き込み収納する工程では、前記シース14の開口端14aに向かって縮径するテーパ状の内面34a及びテーパ状の外面30aを備える治具10を用い、前記ステントグラフト18の外面及び内面を、前記治具10の前記テーパ状の内面34a及び前記テーパ状の外面30aによってそれぞれガイドする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状のシース内へとステントグラフトを圧縮して収納するステントグラフト組み付け方法及び組み付け用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大動脈瘤や大動脈解離等の治療には人工血管を用いた外科手術が行われてきたが、近年、ステントグラフトを用いた低侵襲治療が広がっている。一般的なステントグラフトは、ポリエステル等の樹脂の糸で織られた織物(ファブリック)を円筒状に形成したチューブ(グラフト)の内面又は外面に、ニッケルチタン合金やステンレス等の針金をリング状やZ状に形成した骨格(ステント)を縫合固定して構成されており、所定のデリバリー装置(デリバリーカテーテル)によって体腔内へと送達され、展開・拡張されることで所望の血管内等に留置される。
【0003】
通常、このようなステントグラフトを体腔内に送達するデリバリー装置は、細径なシャフトと、該シャフトの外面側に配置されるシースとを備え、これらシースとシャフトの間にステントグラフトを圧縮収納して構成される。
【0004】
この圧縮収納時、つまり、ステントグラフトをデリバリー装置に組み付ける際に、ステントグラフトが適切に折り畳まれず、例えば、三日月状やハート状に潰れてしまうと、体腔内での円滑な展開や拡張がなされず、さらにはグラフトやステントに破損を生じる可能性もある。そこで、従来より、ステントグラフトをデリバリー装置に組み付けるための各種の方法や装置(治具)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6981982号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の治具を用いた組み付け方法では、ステントグラフトをシースの内腔内に引き込み収納する際に、該ステントグラフトの外周面のみをガイドする。このため、ステントグラフトをシース内に圧縮して収納する際に、例えば、該ステントグラフトの周方向で一部のみが陥没し、ステントグラフトがシャフトと共に内側に潰れ、上記の三日月状やハート状に設置される可能性があり、ステントグラフトをより細径のシース内に収納する場合には、これらの問題が一層顕著となる。
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を考慮してなされたものであり、ステントグラフトをシース内に適切に収納することができるステントグラフト組み付け方法及び組み付け用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るステントグラフト組み付け方法は、管状のシャフトと、該シャフトの外面側に配置される管状のシースとの間にステントグラフトを圧縮して収納するステントグラフト組み付け方法であって、前記シースの内腔内へと前記ステントグラフトを圧縮しながら引き込み収納する工程を有し、前記引き込み収納する工程では、前記シースの開口端に向かって縮径するテーパ状の内面及びテーパ状の外面を備える治具を用い、前記ステントグラフトの外面及び内面を、前記治具の前記テーパ状の内面及び前記テーパ状の外面によってそれぞれガイドすることを特徴とする。
【0009】
このような方法によれば、ステントグラフトの外面及び内面をそれぞれテーパ状の内面及び外面によってガイドしながらシース内へと圧縮収納することにより、ステントグラフトをその径方向で均等に圧縮しながら徐々に折り畳むことができ、シース内へと円滑に且つバランスよく収納することができる。特に、ステントグラフトの外面側だけでなく、内面側もガイドすることにより、当該ステントグラフトを両テーパ面の傾斜を利用して円滑にシース内へと導入することができるため、より細い径を持つシース等に対しても容易に収納することができる。
【0010】
前記ステントグラフトが、筒状のグラフトと、該グラフトの周方向に延在し且つ該グラフトの軸方向に複数配列されたリング状の骨格とを有する構成の場合であっても、当該ステントグラフトの外面側と共に内面側もガイドすることにより、リング状の骨格の内外面が十分にガイドされるため、適切な折り畳み形状に円滑に圧縮することができる。
【0011】
前記テーパ状の内面及び前記テーパ状の外面を平行に設置し、又は、前記テーパ状の内面及び前記テーパ状の外面の間に、前記ステントグラフトが通過可能な隙間を形成しておくとよい。そうすると、ステントグラフトを一層円滑にガイドすることができる。
【0012】
前記引き込み収納する工程では、糸又は線材を折り返し、その折り返し部を前記ステントグラフトに引っ掛けた後、該糸又は該線材を引き寄せることにより、前記シースの内腔内へと前記ステントグラフトを圧縮しながら引き込み収納すると、糸又は線材の両端部を把持して折り返し部によってステントグラフトを確実に引っ張ることができ、さらに引き寄せが完了した後は、前記両端部のうち、一方の端部のみを把持して糸又は線材を引っ張ることにより、該糸をステントグラフトから容易に抜去することができる。
【0013】
本発明に係るステントグラフト組み付け用治具は、管状のシャフトと、該シャフトの外面側に配置される管状のシースとの間にステントグラフトを圧縮して収納する際に用いるステントグラフト組み付け用治具であって、前記シースの開口端を位置決め保持するシース位置決め部、及び、該シース位置決め部によって保持された前記シースの開口端に向かって縮径する内面を設けたテーパ孔を有し、該テーパ孔の内面によって前記ステントグラフトの外面側を前記シース内へとガイドする外側ガイド部材と、前記テーパ孔内に配置され、前記シースの開口端に向かって縮径する外面を設けたテーパ部を有し、前記圧縮収納前の前記ステントグラフトが外挿配置されると共に、前記テーパ部の外面によって前記外挿配置されたステントグラフトの内面側を前記シース内へとガイドする内側ガイド部材とを備えることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、ステントグラフトの外面及び内面をそれぞれテーパ孔の内面及びテーパ部の外面によってガイドしながらシース内へと圧縮収納することができ、ステントグラフトをその径方向で均等に圧縮しながら徐々に折り畳み、シース内へと円滑に且つバランスよく収納することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ステントグラフトの外面及び内面をそれぞれテーパ状の内面及び外面によってガイドしながらシース内へと圧縮収納することにより、ステントグラフトをその径方向で均等に圧縮しながら徐々に折り畳むことができ、シース内へと円滑に且つバランスよく収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る治具の全体構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す治具を構成する各部品を連結した状態での斜視図である。
【図3】図3Aは、図1中のIIIA−IIIA線に沿う断面図であり、図3Bは、図1中のIIIB−IIIB線に沿う断面図である。
【図4】ステントグラフトを組み付けた状態でのデリバリー装置の一構成例を示す側面断面図である。
【図5】図5Aは、ステントグラフトを折り畳んだ状態での側面図であり、図5Bは、図5Aに示すステントグラフトの軸方向に直交する方向での断面形状を示す模式図である。
【図6】図6Aは、従来の治具を用いてデリバリー装置に収納したステントグラフトの断面形状の一例を示す模式図であり、図6Bは、従来の治具を用いてデリバリー装置に収納したステントグラフトの断面形状の他の一例を示す模式図である。
【図7】ステントグラフトのデリバリー装置への組み付け手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】内側ガイド部材にステントグラフトを外挿配置した状態を示す一部省略斜視図である。
【図9】ステントグラフトを外挿配置した内側ガイド部材を外側ガイド部材に連結した状態での側面断面図である。
【図10】図9に示す状態からステントグラフトをシース側へと引き寄せた状態を示す側面断面図である。
【図11】図10に示す状態からステントグラフトをさらにシース側へと引き寄せて、シース内へと収納した状態を示す側面断面図である。
【図12】外側ガイド部材の変形例を示す一部分解斜視図である。
【図13】図12中のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るステントグラフト組み付け方法について、この方法に用いる治具との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る治具10の全体構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1に示す治具10を構成する各部品を連結した状態での斜視図である。本実施形態に係る治具10は、細径で長尺なシャフト(内管)12及びシース(外管)14を備えるデリバリー装置16(図4参照)にステントグラフト18を設置する際に用いられるステントグラフト組み付け用治具である。
【0019】
先ず、治具10の説明に先立ち、主に図4〜図6Bを参照して、デリバリー装置16及びステントグラフト18について説明する。図4は、ステントグラフト18を組み付けた状態でのデリバリー装置16の一構成例を示す側面断面図である。また、図5Aは、ステントグラフト18を折り畳んだ状態での側面図であり、図5Bは、図5Aに示すステントグラフト18の軸方向に直交する方向での断面形状を示す模式図である。
【0020】
図4に示すように、デリバリー装置16は、管状のシャフト12と、該シャフト12の外面側に同軸上に配置される管状のシース14とを備える。デリバリー装置16は、ステントグラフト18をシャフト12の先端側外面上に配置した状態でその周囲をシース14の内腔によって囲繞することで、ステントグラフト18をシース14内に圧縮収納した細径且つ長尺なカテーテル(デリバリーカテーテル)である。
【0021】
デリバリー装置16において、シャフト12は、先端に設けられた先端チップ20と、基端に設けられたハブ22とを備え、その外面上をシース14が摺動可能に設置される。このため、術者は、図4に示す状態で体腔内の所望の位置にステントグラフト18を送達した後、例えばハブ22を把持してシース14の基端側を引き寄せることにより、シャフト12に対して相対的にシース14を後退させることができ、ステントグラフト18を体腔内で展開・拡張し、留置することができる。
【0022】
一方、ステントグラフト18は、例えば図8に示されるように、ポリエステル等の樹脂の糸で織られた織物(ファブリック)を円筒状(管状)に形成したグラフト24と、該グラフト24に対してニッケルチタン合金やステンレス等の針金を縫合等によって固定したステント(骨格)26とから構成される。図8から諒解されるように、本実施形態では、グラフト24の周方向に延在し且つ該グラフト24の軸方向に複数配列されたリング状のステント26を備えるリング骨格ステントグラフトを例示するが、Z状等のステント(骨格)で構成されるステントグラフトを用いてもよいことは勿論である。
【0023】
デリバリー装置16に設置された状態において、ステントグラフト18は、例えば、図5Aに示されるように、その両端部に少なくとも一対の突出片と一対の埋没片とが形成されてサドル状に折り畳まれることが好ましい。このように折り畳まれることにより、ステントグラフト18は、径方向に略均等に圧縮され、その断面形状が略円形の状態でシース14内に収納され、体腔内では円滑に展開・拡張することができる。
【0024】
勿論、ステントグラフト18のシース14への収納形状は、図5Aに示す折り畳み形状以外であってもよいが、その断面形状は図5Bに示すように可及的に円形に近い方が望ましい。例えば、シース14内に圧縮収納された状態で、ステントグラフト18の断面形状が、ハート状(図6A参照)や三日月状(図6B参照)の場合には、デリバリー装置16への組み付け時、配列されたステント26同士が互いに嵌合したり、グラフト24が軸方向で不均等に収縮されたりしていることがあって適切な収納状態であるとは言い難く、その展開が円滑に行われない可能性がある。さらに、ステントグラフト18が不均等に折り畳まれることにより、その内側に配置されるシャフト12も変形して潰れ、屈曲(キンク)を生じたり、その内腔にガイドワイヤ等を円滑に挿通させることができなくなったりする可能性もある。
【0025】
次に、デリバリー装置16へとステントグラフト18を組み付ける際に使用される治具10について説明する。
【0026】
図1及び図2に示すように、治具10は、矩形ブロック状のベース28と、ベース28の一側面に突設され、先端にテーパ部30が形成された棒状の内側ガイド部材32と、内側ガイド部材32の少なくとも一部を挿入可能なテーパ孔34が形成された円筒状の外側ガイド部材36と、外側ガイド部材36の一側面に固定される円板状のコネクタ部材35と、内側ガイド部材32と外側ガイド部材36の位置関係を調整及び規定するスライダ部40とを備える。
【0027】
ベース28は、その一側面に内側ガイド部材32の基端が連結固定されることで該内側ガイド部材32と一体に用いられる。ベース28には、当該ベース28から内側ガイド部材32まで軸方向に延在し、上方に開口するスリット42の一部分を構成するスリット42aが幅方向略中心上部に形成される。さらに、ベース28の幅方向両側部近傍には、スライダ部40を構成する円形棒状の一対のレール44a、44bが挿通する一対の貫通孔46a、46bが形成される(図3A参照)。
【0028】
図3Aに示すように、スリット42a(42)は、シャフト12を円滑に挿脱可能であると共に、該シャフト12を安定して支持することができるように、シャフト12の外形よりも僅かに大きな寸法の幅に設定されることが好ましい。
【0029】
次に、内側ガイド部材32は、図示しないボルト等により、その基端面がベース28の前記一側面に固定されることで、該一側面から垂直方向に突出する棒状部材であり、一定の外径からなる円柱形状のロッド部48と、ロッド部48の先端に形成されたテーパ状の外面を有するテーパ部30とを有する。内側ガイド部材32には、スリット42の一部分を構成するスリット42bが軸方向に延在し、上方に向けて開口形成される。
【0030】
図3Bに示すように、スリット42bについてもスリット42aと同様に、シャフト12を円滑に挿脱可能であると共に、該シャフト12を安定して支持することができるように、シャフト12の外形よりも僅かに大きな寸法の幅に設定されることが好ましい。この際、スリット42bは、その内部にシャフト12を設置した状態で、該シャフト12の軸心がロッド部48(及びテーパ部30)の軸心Oに一致する深さで形成され、スリット42aも同様に設定される(図3A参照)。これにより、スリット42(42a、42b)内では、シャフト12を、内側ガイド部材32(ロッド部48及びテーパ部30)の軸心に一致した状態で、直線状に延在配置することができる(図9参照)。
【0031】
ロッド部48の外径は、組み付け対象となるステントグラフト18の拡張時の内径と同一又は略同一の寸法に設定するとよい(図8参照)。すなわち、ステントグラフト18のデリバリー装置16への組み付け時、ロッド部48には、拡張状態にあるステントグラフト18が外挿される。そして、内側ガイド部材32を構成するロッド部48及びテーパ部30は、シース14内へと圧縮されつつ引き込まれるステントグラフト18の内面をガイドする機能を果たす。
【0032】
外側ガイド部材36は、内側ガイド部材32のテーパ部30及びロッド部48の少なくとも一部が挿入されるテーパ孔34と、テーパ孔34の短径側から連続するガイド孔50とが貫通形成された円筒状の筐体52を備える。筐体52は、その底面側が当該外側ガイド部材36を図示しない支持台等に固定するための平坦な設置面52aとして構成される。設置面52aには、例えば、前記支持台等に外側ガイド部材36を固定するためのボルト54が左右一対設けられる。
【0033】
テーパ孔34は、内側ガイド部材32を構成するテーパ部30と同一又は略同一の傾斜角度で構成される(図2及び9参照)。つまり、スライダ部40を介して内側ガイド部材32が外側ガイド部材36に位置決めされると、テーパ孔34のテーパ状の内面34aと、テーパ部30のテーパ状の外面30aとは、互いに平行して対面し、その間にステントグラフト18の摺動をガイドするためのテーパ状の空間を形成する(図2及び図9参照)。
【0034】
ガイド孔50は、テーパ孔34の出口側である短径側から連続し、筐体52を軸方向に貫通する一定の内径を持った孔である。ガイド孔50の内径は、シース14の内径と同一又は略同一の寸法に設定される(図9参照)。ガイド孔50の出口が形成される筐体52の一側面である連結面52bには、コネクタ部材35を連結固定するためのねじ穴56が複数(本実施形態では3個)設置される。
【0035】
コネクタ部材35は、円板の中心を板厚方向に貫通する保持孔58を有し、保持孔58の周辺には、当該コネクタ部材35を外側ガイド部材36の連結面52bに連結固定する際にボルト(図示せず)等が挿通される複数(本実施形態では3個)の孔部60とが設置される。
【0036】
保持孔58は、当該コネクタ部材35が外側ガイド部材36に連結固定された状態で、ガイド孔50に連通する貫通孔であり、その内径がシース14の外径と同一又は略同一に設定され、つまり、保持孔58の内径はガイド孔50の内径より多少大径、好ましくは、半径がシース14の肉厚分大きい寸法で設定される(図9参照)。これにより、図9に示すように、保持孔58に開口端14aを先端として挿入されたシース14は、該開口端14aが保持孔58の内側に位置した連結面52bに当接して位置決め保持され、この状態で当該シース14の内腔がガイド孔50に一致する。つまり、保持孔58及び設置面52bがシース14の開口端14aを当該治具10(外側ガイド部材36)に対して位置決め保持する位置決め部(シース位置決め部)63として機能する。
【0037】
次に、スライダ部40は、ベース28及び内側ガイド部材32の結合体と、外側ガイド部材36及びコネクタ部材35の結合体と、の間を所定の位置関係で位置決め保持するためのものである。
【0038】
図1及び図2に示すように、スライダ部40は、外側ガイド部材36を構成する筐体52の連結面52bとは反対側の側面から垂直方向に突出固定される左右一対のレール44a、44bと、レール44a、44b間から突出するストッパ64とを備える。レール44a、44bは、ベース28の貫通孔46a、46bを摺動可能に挿通する長尺な棒状部材である。ストッパ64は、筐体52からの突出長を設定変更可能であることが好ましく、例えば筐体52に螺入されるボルトで構成される。
【0039】
これにより、レール44a、44bが貫通孔46a、46bに挿通することで、ベース28及び内側ガイド部材32の結合体と、外側ガイド部材36及びコネクタ部材35の結合体と、の軸方向での位置関係を両者を軸方向にスライドさせて円滑に調整及び規定することができる。すなわち、内側ガイド部材32のテーパ部30と外側ガイド部材36のテーパ孔34の軸方向での位置関係を所望の位置に調整し、この位置でストッパ64の頂面がベース28の一側面に当接するように設定しておくことにより、両者を位置決め規定しておくことができる。
【0040】
なお、ストッパ64は、図1及び図2に示すようにボルトで構成する以外にも、例えば、図1中に2点鎖線で示すように、レール44a、44bの途中で所望の位置に固定可能なリング部材65(例えば、ナット)によって構成してもよい。
【0041】
次に、以上のように構成される治具10を用いたステントグラフト18のデリバリー装置16への組み付け方法について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0042】
先ず、ステントグラフト18のデリバリー装置16への組み付けに先立ち、図1に示すように、ベース28と内側ガイド部材32とを連結し、外側ガイド部材36とコネクタ部材35とを連結し、必要に応じて、外側ガイド部材36を適切な支持台(図示せず)に固定しておく。
【0043】
そこで、図7のステップS1において、ステントグラフト18をシース14内へと引き寄せる際に作業者(又は引き寄せ装置)が把持する糸(線材)70を、ステントグラフト18の端部(先端部近傍)にくくり付ける。糸70は、後述する各工程において、作業者(又は引き寄せ装置)が十分な力を持ってステントグラフト18を引き寄せることが可能なように、且つ、引き寄せ作業が終了した後、ステントグラフト18から容易に取り外すことができるようにくくり付けることが好ましい。
【0044】
例えば、図8に示すように、糸70は、1本の糸70をステントグラフト18のグラフト24の端部近傍に通して折り返してくくり付け、両端部を引き寄せ側に引き出すように設置するとよい。そうすると、糸70の前記両端部を把持してステントグラフト18を引き寄せる際には、折り返し部70aで確実にステントグラフト18を引っ張ることができ、さらに引き寄せが完了した後は、前記両端部のうち、一方の端部のみを把持して糸70を引っ張ることにより、該糸70をステントグラフト18から容易に抜去することができる。
【0045】
ステップS2では、図8に示すように、糸70をくくり付けたステントグラフト18を展開・拡張させた状態で内側ガイド部材32のロッド部48に外挿配置する。続いて、ステップS3において、シャフト12を内側ガイド部材32のスリット42に挿通させる。これにより、内側ガイド部材32には、ステントグラフト18が外挿され、シャフト12が内挿された状態となる(図9参照)。なお、これらステップS2、S3の工程順は、適宜変更してもよい。
【0046】
ステップS4では、スライダ部40を構成するレール44a、44bをベース28の貫通孔46a、46bに挿通させると共に、ストッパ64をベース28に突き当てることにより(図2参照)、図9に示すように、内側ガイド部材32と外側ガイド部材36とを所定の位置関係で連結し、さらに糸70を保持孔58に通しておく。この際、ストッパ64の筐体52からの突出長を予め所定長さに規定しておき、テーパ部30の先端がテーパ孔34の出口近傍(ガイド孔50の入口近傍)に設置されることが好ましい(図9参照)。
【0047】
ステップS5では、図9に示すように、シース14の開口端14aを位置決め部63によって位置決め保持する。すなわち、保持孔58から突出しているシャフト12をシース14内に通しつつ、該シース14の開口端14aを保持孔58に挿入して筐体52の連結面52bに突き当てる。これにより、ガイド孔50とシース14の内腔とが略一致して連通すると共に、シース14の内側にシャフト12が挿通され、シース14の外側且つ保持孔58の内側に糸70が挿通された状態となる。なお、シャフト12は、次のステップS6においてステントグラフト18と共にシース14内に引き込まれるため、当該ステップS5の段階では、ガイド孔50から突出していなくてもよく、この場合には、シース14にシャフト12を挿通する工程は不要となる。
【0048】
ステップS6では、図10に示すように、シース14の外面と保持孔58の内面との間から突出している糸70の両端部を図10中の矢印方向、つまりステントグラフト18がシース14側へと向かう方向に引き寄せる。そうすると、ステントグラフト18は、その内面側が内側ガイド部材32を構成するテーパ部30の外面30aによってガイドされ、その外面側が外側ガイド部材36を構成するテーパ孔34の内面34aによってガイドされつつ、これらテーパ部30及びテーパ孔34の傾斜(縮径形状)に伴って次第に縮径(圧縮)され、ガイド孔50から保持孔58へと引き込まれる。最終的には、図11に示すように、ステントグラフト18がシース14内に完全に引き込まれて圧縮収納された状態となるまで糸70を引き寄せる。
【0049】
この際、ステントグラフト18の内面が、テーパ部30の先端からシャフト12の外面へと移動すると、その密着作用により、ステントグラフト18と同時にシャフト12も糸70によって引き寄せられる。このため、シース14内には、シャフト12に外挿配置されたステントグラフト18が適切に圧縮収納された状態となる(図11参照)。
【0050】
このようにしてステントグラフト18のシース14内への収納工程、つまりステントグラフト18のデリバリー装置16への設置工程が終了するため、次のステップS7では、組み付けが完了したデリバリー装置16から治具10を取り外す。例えば、ステップS7では、内側ガイド部材32を外側ガイド部材36から引き離した後、スリット42を介してシャフト12を内側ガイド部材32から抜去させ、さらに、外側ガイド部材36からデリバリー装置16を取り外すことにより、当該ステントグラフト18の取り付け工程が完了する。勿論、ステップS7でのデリバリー装置16からの治具10の取り外しの手順は、適宜変更可能である。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るステントグラフト取り付け方法では、シース14の内腔内へとステントグラフト18を圧縮しながら引き込み収納する工程において、シース14の開口端14aに向かって縮径するテーパ状の内面34a及びテーパ状の外面30aを備える治具10を用いると共に、ステントグラフト18の外面及び内面を、該治具10の前記テーパ状の内面34a及び前記テーパ状の外面30aによってそれぞれガイドする。
【0052】
このように、ステントグラフト18の外面及び内面をそれぞれテーパ状の内面34a及び外面30aによってガイドしながらシース14内へと圧縮収納することにより、ステントグラフト18をその径方向で均等に圧縮しながら徐々に折り畳むことができ、シース14内へと円滑に且つバランスよく収納することができるため、ステントグラフト18及びその内側に配置されたシャフト12が不均等に変形し、潰れることを防止できる。特に、ステントグラフト18の外面側だけでなく、内面側もガイドすることにより、当該ステントグラフト18を両テーパ面の傾斜を利用して円滑にシース14内へと導入することができるため、より細い径を持つシース14等に対しても容易に収納することができる。
【0053】
なお、従来の構成では、ステントグラフト18の外面側のみをガイドするため、シース14内へと収納するステントグラフト18が、上記のように、リング状の骨格であるステント26を持った構成の場合、軸方向で前後に並ぶステント26同士がシース14内への引き込み時に互いに嵌合することがあった。これに対して、本実施形態に係る方法では、ステントグラフト18の内面側もガイドすることにより、リング状のステント26の内外面が十分にガイドされるため、図5A及び図5Bに示されるような適切な折り畳み形状に円滑に圧縮することができる。
【0054】
また、前記引き込み収納する工程において、図9に示すように、テーパ孔34の内面34a及びテーパ部30の外面30aを平行又は略平行に設置しておくと、ステントグラフト18を一層円滑にガイドすることができる。なお、テーパ孔34の内面34a及びテーパ部30の外面30aの間には、ステントグラフト18が通過可能な隙間を形成する必要があり、該隙間は、ステントグラフト18の肉厚より僅かに大きな程度の寸法に規定しておくと、内面34a及び外面30aによるガイドを一層効果的に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態に係る治具10では、シース14の開口端14aを位置決め保持する位置決め部63、及び、該位置決め部63によって保持されたシース14の開口端14aに向かって縮径する内面34aを設けたテーパ孔34を有し、該テーパ孔34の内面34aによってステントグラフト18の外面側をシース14内へとガイドする外側ガイド部材36と、テーパ孔34内に配置され、シース14の開口端14aに向かって縮径する外面30aを設けたテーパ部30を有し、圧縮収納前、つまり拡張状態にあるステントグラフト18が外挿配置されると共に、テーパ部30の外面30aによって前記外挿配置されたステントグラフト18の内面側をシース14内へとガイドする内側ガイド部材32とを備える。これにより、ステントグラフト18の外面及び内面をそれぞれテーパ孔34の内面34a及びテーパ部30の外面30aによってガイドしながらシース14内へと圧縮収納することができ、ステントグラフト18をその径方向で均等に圧縮しながら徐々に折り畳み、シース14内へと円滑に且つバランスよく収納することができる。
【0056】
しかも、治具10では、内側ガイド部材32と外側ガイド部材36との間の位置関係をスライダ部40によって容易に且つ精度よく位置決め保持することができる。換言すれば、内側ガイド部材32と外側ガイド部材36とが容易に分離可能な別体の部品で構成されているため、例えば、内側ガイド部材32をロッド部48の外径や長さによって複数種類準備しておけば、複数種類のステントグラフト18の組み付けに当該治具10を容易に使い回すことができ、汎用性が向上する。
【0057】
治具10では、図12及び図13に示すように、外側ガイド部材36及びコネクタ部材35に代えて、分割構造を有する外側ガイド部材80を用いてもよい。外側ガイド部材80は、互いに対称な2分割構造からなる内側筐体82、84と、これら内側筐体82、84の連結状態を固定する外側筐体86とを備える。
【0058】
図13に示すように、一方の内側筐体82の内面には、2本のピン88a、88bが突設されると共に、2個のピン穴90a、90bが形成される。略同様に、他方の内側筐体84の内面には、内側筐体82のピン穴90a、90bに嵌入可能な2本のピン92a、92bが突設されると共に、内側筐体82のピン88a、88bが嵌入可能な2個のピン穴94a、94bが形成される。
【0059】
各内側筐体82、84の内面には、前記テーパ孔34を2分割した形状からなるテーパ溝96a、96bがそれぞれ形成され、これらテーパ溝96a、96bが連結されることで、前記テーパ孔34と同様なテーパ孔96を形成可能である。さらに、各内側筐体82、84の内面には、前記ガイド孔50を2分割した形状からなる円形溝98a、98bがそれぞれ形成され、これら円形溝98a、98bが連結されることで、前記ガイド孔50と同様なガイド孔98を形成可能である。
【0060】
また、各内側筐体82、84の外面には、これら内側筐体82、84が互いに貼り合わされ連結された状態で1本の雄ねじ100を形成するねじ溝100a、100bがそれぞれ形成されている。
【0061】
一方、外側筐体86は、内面に前記雄ねじ100が螺入可能な雌ねじ102が形成された円筒状部材であり、該雌ねじ102の一端側は雄ねじ100を挿入可能なように大径で開口し、他端側は小径の保持孔104に連通している。保持孔104は、前記保持孔58と同様な構成からなり、その内径はシース14の外径と同一又は略同一に設定される。また、保持孔104の内側縁部は、連結された内側筐体82、84の先端側に突出する突出面106に当接することで、該突出面106と共にシース14の位置決め部63を構成することができる。
【0062】
従って、図13に示すように、内側筐体82、84をピン88a、88b、92a、02b及びピン穴90a、90b、94a、94bの係合作用下に互いに貼り合せて係合させ、この状態で形成される雄ねじ100に外側筐体86の雌ねじ102を螺合させることにより、上記したテーパ孔34、ガイド孔50及び保持孔58と同様な構成からなるテーパ孔96、ガイド孔98及び保持孔104が構成されると共に、シース14を位置決め保持する位置決め部63も形成することができる。そして、この外側ガイド部材80では、上記のステップS7に相当する工程時、つまりステントグラフト18の組み付けが完了したデリバリー装置16から治具10を取り外す工程時、シャフト12を内側ガイド部材32から抜去した後、外側筐体86を内側筐体82、84から取り外すと共に、該内側筐体82、84を分割するだけで当該外側ガイド部材80をデリバリー装置16から取り外すことができるため、生産効率が向上する。
【0063】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
10…治具 12…シャフト
14…シース 16…デリバリー装置
18…ステントグラフト 30…テーパ部
30a…外面 32…内側ガイド部材
34、96…テーパ孔 34a…内面
36、80…外側ガイド部材 63…位置決め部
70…糸
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状のシース内へとステントグラフトを圧縮して収納するステントグラフト組み付け方法及び組み付け用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大動脈瘤や大動脈解離等の治療には人工血管を用いた外科手術が行われてきたが、近年、ステントグラフトを用いた低侵襲治療が広がっている。一般的なステントグラフトは、ポリエステル等の樹脂の糸で織られた織物(ファブリック)を円筒状に形成したチューブ(グラフト)の内面又は外面に、ニッケルチタン合金やステンレス等の針金をリング状やZ状に形成した骨格(ステント)を縫合固定して構成されており、所定のデリバリー装置(デリバリーカテーテル)によって体腔内へと送達され、展開・拡張されることで所望の血管内等に留置される。
【0003】
通常、このようなステントグラフトを体腔内に送達するデリバリー装置は、細径なシャフトと、該シャフトの外面側に配置されるシースとを備え、これらシースとシャフトの間にステントグラフトを圧縮収納して構成される。
【0004】
この圧縮収納時、つまり、ステントグラフトをデリバリー装置に組み付ける際に、ステントグラフトが適切に折り畳まれず、例えば、三日月状やハート状に潰れてしまうと、体腔内での円滑な展開や拡張がなされず、さらにはグラフトやステントに破損を生じる可能性もある。そこで、従来より、ステントグラフトをデリバリー装置に組み付けるための各種の方法や装置(治具)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6981982号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の治具を用いた組み付け方法では、ステントグラフトをシースの内腔内に引き込み収納する際に、該ステントグラフトの外周面のみをガイドする。このため、ステントグラフトをシース内に圧縮して収納する際に、例えば、該ステントグラフトの周方向で一部のみが陥没し、ステントグラフトがシャフトと共に内側に潰れ、上記の三日月状やハート状に設置される可能性があり、ステントグラフトをより細径のシース内に収納する場合には、これらの問題が一層顕著となる。
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を考慮してなされたものであり、ステントグラフトをシース内に適切に収納することができるステントグラフト組み付け方法及び組み付け用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るステントグラフト組み付け方法は、管状のシャフトと、該シャフトの外面側に配置される管状のシースとの間にステントグラフトを圧縮して収納するステントグラフト組み付け方法であって、前記シースの内腔内へと前記ステントグラフトを圧縮しながら引き込み収納する工程を有し、前記引き込み収納する工程では、前記シースの開口端に向かって縮径するテーパ状の内面及びテーパ状の外面を備える治具を用い、前記ステントグラフトの外面及び内面を、前記治具の前記テーパ状の内面及び前記テーパ状の外面によってそれぞれガイドすることを特徴とする。
【0009】
このような方法によれば、ステントグラフトの外面及び内面をそれぞれテーパ状の内面及び外面によってガイドしながらシース内へと圧縮収納することにより、ステントグラフトをその径方向で均等に圧縮しながら徐々に折り畳むことができ、シース内へと円滑に且つバランスよく収納することができる。特に、ステントグラフトの外面側だけでなく、内面側もガイドすることにより、当該ステントグラフトを両テーパ面の傾斜を利用して円滑にシース内へと導入することができるため、より細い径を持つシース等に対しても容易に収納することができる。
【0010】
前記ステントグラフトが、筒状のグラフトと、該グラフトの周方向に延在し且つ該グラフトの軸方向に複数配列されたリング状の骨格とを有する構成の場合であっても、当該ステントグラフトの外面側と共に内面側もガイドすることにより、リング状の骨格の内外面が十分にガイドされるため、適切な折り畳み形状に円滑に圧縮することができる。
【0011】
前記テーパ状の内面及び前記テーパ状の外面を平行に設置し、又は、前記テーパ状の内面及び前記テーパ状の外面の間に、前記ステントグラフトが通過可能な隙間を形成しておくとよい。そうすると、ステントグラフトを一層円滑にガイドすることができる。
【0012】
前記引き込み収納する工程では、糸又は線材を折り返し、その折り返し部を前記ステントグラフトに引っ掛けた後、該糸又は該線材を引き寄せることにより、前記シースの内腔内へと前記ステントグラフトを圧縮しながら引き込み収納すると、糸又は線材の両端部を把持して折り返し部によってステントグラフトを確実に引っ張ることができ、さらに引き寄せが完了した後は、前記両端部のうち、一方の端部のみを把持して糸又は線材を引っ張ることにより、該糸をステントグラフトから容易に抜去することができる。
【0013】
本発明に係るステントグラフト組み付け用治具は、管状のシャフトと、該シャフトの外面側に配置される管状のシースとの間にステントグラフトを圧縮して収納する際に用いるステントグラフト組み付け用治具であって、前記シースの開口端を位置決め保持するシース位置決め部、及び、該シース位置決め部によって保持された前記シースの開口端に向かって縮径する内面を設けたテーパ孔を有し、該テーパ孔の内面によって前記ステントグラフトの外面側を前記シース内へとガイドする外側ガイド部材と、前記テーパ孔内に配置され、前記シースの開口端に向かって縮径する外面を設けたテーパ部を有し、前記圧縮収納前の前記ステントグラフトが外挿配置されると共に、前記テーパ部の外面によって前記外挿配置されたステントグラフトの内面側を前記シース内へとガイドする内側ガイド部材とを備えることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、ステントグラフトの外面及び内面をそれぞれテーパ孔の内面及びテーパ部の外面によってガイドしながらシース内へと圧縮収納することができ、ステントグラフトをその径方向で均等に圧縮しながら徐々に折り畳み、シース内へと円滑に且つバランスよく収納することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ステントグラフトの外面及び内面をそれぞれテーパ状の内面及び外面によってガイドしながらシース内へと圧縮収納することにより、ステントグラフトをその径方向で均等に圧縮しながら徐々に折り畳むことができ、シース内へと円滑に且つバランスよく収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る治具の全体構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す治具を構成する各部品を連結した状態での斜視図である。
【図3】図3Aは、図1中のIIIA−IIIA線に沿う断面図であり、図3Bは、図1中のIIIB−IIIB線に沿う断面図である。
【図4】ステントグラフトを組み付けた状態でのデリバリー装置の一構成例を示す側面断面図である。
【図5】図5Aは、ステントグラフトを折り畳んだ状態での側面図であり、図5Bは、図5Aに示すステントグラフトの軸方向に直交する方向での断面形状を示す模式図である。
【図6】図6Aは、従来の治具を用いてデリバリー装置に収納したステントグラフトの断面形状の一例を示す模式図であり、図6Bは、従来の治具を用いてデリバリー装置に収納したステントグラフトの断面形状の他の一例を示す模式図である。
【図7】ステントグラフトのデリバリー装置への組み付け手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】内側ガイド部材にステントグラフトを外挿配置した状態を示す一部省略斜視図である。
【図9】ステントグラフトを外挿配置した内側ガイド部材を外側ガイド部材に連結した状態での側面断面図である。
【図10】図9に示す状態からステントグラフトをシース側へと引き寄せた状態を示す側面断面図である。
【図11】図10に示す状態からステントグラフトをさらにシース側へと引き寄せて、シース内へと収納した状態を示す側面断面図である。
【図12】外側ガイド部材の変形例を示す一部分解斜視図である。
【図13】図12中のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るステントグラフト組み付け方法について、この方法に用いる治具との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る治具10の全体構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1に示す治具10を構成する各部品を連結した状態での斜視図である。本実施形態に係る治具10は、細径で長尺なシャフト(内管)12及びシース(外管)14を備えるデリバリー装置16(図4参照)にステントグラフト18を設置する際に用いられるステントグラフト組み付け用治具である。
【0019】
先ず、治具10の説明に先立ち、主に図4〜図6Bを参照して、デリバリー装置16及びステントグラフト18について説明する。図4は、ステントグラフト18を組み付けた状態でのデリバリー装置16の一構成例を示す側面断面図である。また、図5Aは、ステントグラフト18を折り畳んだ状態での側面図であり、図5Bは、図5Aに示すステントグラフト18の軸方向に直交する方向での断面形状を示す模式図である。
【0020】
図4に示すように、デリバリー装置16は、管状のシャフト12と、該シャフト12の外面側に同軸上に配置される管状のシース14とを備える。デリバリー装置16は、ステントグラフト18をシャフト12の先端側外面上に配置した状態でその周囲をシース14の内腔によって囲繞することで、ステントグラフト18をシース14内に圧縮収納した細径且つ長尺なカテーテル(デリバリーカテーテル)である。
【0021】
デリバリー装置16において、シャフト12は、先端に設けられた先端チップ20と、基端に設けられたハブ22とを備え、その外面上をシース14が摺動可能に設置される。このため、術者は、図4に示す状態で体腔内の所望の位置にステントグラフト18を送達した後、例えばハブ22を把持してシース14の基端側を引き寄せることにより、シャフト12に対して相対的にシース14を後退させることができ、ステントグラフト18を体腔内で展開・拡張し、留置することができる。
【0022】
一方、ステントグラフト18は、例えば図8に示されるように、ポリエステル等の樹脂の糸で織られた織物(ファブリック)を円筒状(管状)に形成したグラフト24と、該グラフト24に対してニッケルチタン合金やステンレス等の針金を縫合等によって固定したステント(骨格)26とから構成される。図8から諒解されるように、本実施形態では、グラフト24の周方向に延在し且つ該グラフト24の軸方向に複数配列されたリング状のステント26を備えるリング骨格ステントグラフトを例示するが、Z状等のステント(骨格)で構成されるステントグラフトを用いてもよいことは勿論である。
【0023】
デリバリー装置16に設置された状態において、ステントグラフト18は、例えば、図5Aに示されるように、その両端部に少なくとも一対の突出片と一対の埋没片とが形成されてサドル状に折り畳まれることが好ましい。このように折り畳まれることにより、ステントグラフト18は、径方向に略均等に圧縮され、その断面形状が略円形の状態でシース14内に収納され、体腔内では円滑に展開・拡張することができる。
【0024】
勿論、ステントグラフト18のシース14への収納形状は、図5Aに示す折り畳み形状以外であってもよいが、その断面形状は図5Bに示すように可及的に円形に近い方が望ましい。例えば、シース14内に圧縮収納された状態で、ステントグラフト18の断面形状が、ハート状(図6A参照)や三日月状(図6B参照)の場合には、デリバリー装置16への組み付け時、配列されたステント26同士が互いに嵌合したり、グラフト24が軸方向で不均等に収縮されたりしていることがあって適切な収納状態であるとは言い難く、その展開が円滑に行われない可能性がある。さらに、ステントグラフト18が不均等に折り畳まれることにより、その内側に配置されるシャフト12も変形して潰れ、屈曲(キンク)を生じたり、その内腔にガイドワイヤ等を円滑に挿通させることができなくなったりする可能性もある。
【0025】
次に、デリバリー装置16へとステントグラフト18を組み付ける際に使用される治具10について説明する。
【0026】
図1及び図2に示すように、治具10は、矩形ブロック状のベース28と、ベース28の一側面に突設され、先端にテーパ部30が形成された棒状の内側ガイド部材32と、内側ガイド部材32の少なくとも一部を挿入可能なテーパ孔34が形成された円筒状の外側ガイド部材36と、外側ガイド部材36の一側面に固定される円板状のコネクタ部材35と、内側ガイド部材32と外側ガイド部材36の位置関係を調整及び規定するスライダ部40とを備える。
【0027】
ベース28は、その一側面に内側ガイド部材32の基端が連結固定されることで該内側ガイド部材32と一体に用いられる。ベース28には、当該ベース28から内側ガイド部材32まで軸方向に延在し、上方に開口するスリット42の一部分を構成するスリット42aが幅方向略中心上部に形成される。さらに、ベース28の幅方向両側部近傍には、スライダ部40を構成する円形棒状の一対のレール44a、44bが挿通する一対の貫通孔46a、46bが形成される(図3A参照)。
【0028】
図3Aに示すように、スリット42a(42)は、シャフト12を円滑に挿脱可能であると共に、該シャフト12を安定して支持することができるように、シャフト12の外形よりも僅かに大きな寸法の幅に設定されることが好ましい。
【0029】
次に、内側ガイド部材32は、図示しないボルト等により、その基端面がベース28の前記一側面に固定されることで、該一側面から垂直方向に突出する棒状部材であり、一定の外径からなる円柱形状のロッド部48と、ロッド部48の先端に形成されたテーパ状の外面を有するテーパ部30とを有する。内側ガイド部材32には、スリット42の一部分を構成するスリット42bが軸方向に延在し、上方に向けて開口形成される。
【0030】
図3Bに示すように、スリット42bについてもスリット42aと同様に、シャフト12を円滑に挿脱可能であると共に、該シャフト12を安定して支持することができるように、シャフト12の外形よりも僅かに大きな寸法の幅に設定されることが好ましい。この際、スリット42bは、その内部にシャフト12を設置した状態で、該シャフト12の軸心がロッド部48(及びテーパ部30)の軸心Oに一致する深さで形成され、スリット42aも同様に設定される(図3A参照)。これにより、スリット42(42a、42b)内では、シャフト12を、内側ガイド部材32(ロッド部48及びテーパ部30)の軸心に一致した状態で、直線状に延在配置することができる(図9参照)。
【0031】
ロッド部48の外径は、組み付け対象となるステントグラフト18の拡張時の内径と同一又は略同一の寸法に設定するとよい(図8参照)。すなわち、ステントグラフト18のデリバリー装置16への組み付け時、ロッド部48には、拡張状態にあるステントグラフト18が外挿される。そして、内側ガイド部材32を構成するロッド部48及びテーパ部30は、シース14内へと圧縮されつつ引き込まれるステントグラフト18の内面をガイドする機能を果たす。
【0032】
外側ガイド部材36は、内側ガイド部材32のテーパ部30及びロッド部48の少なくとも一部が挿入されるテーパ孔34と、テーパ孔34の短径側から連続するガイド孔50とが貫通形成された円筒状の筐体52を備える。筐体52は、その底面側が当該外側ガイド部材36を図示しない支持台等に固定するための平坦な設置面52aとして構成される。設置面52aには、例えば、前記支持台等に外側ガイド部材36を固定するためのボルト54が左右一対設けられる。
【0033】
テーパ孔34は、内側ガイド部材32を構成するテーパ部30と同一又は略同一の傾斜角度で構成される(図2及び9参照)。つまり、スライダ部40を介して内側ガイド部材32が外側ガイド部材36に位置決めされると、テーパ孔34のテーパ状の内面34aと、テーパ部30のテーパ状の外面30aとは、互いに平行して対面し、その間にステントグラフト18の摺動をガイドするためのテーパ状の空間を形成する(図2及び図9参照)。
【0034】
ガイド孔50は、テーパ孔34の出口側である短径側から連続し、筐体52を軸方向に貫通する一定の内径を持った孔である。ガイド孔50の内径は、シース14の内径と同一又は略同一の寸法に設定される(図9参照)。ガイド孔50の出口が形成される筐体52の一側面である連結面52bには、コネクタ部材35を連結固定するためのねじ穴56が複数(本実施形態では3個)設置される。
【0035】
コネクタ部材35は、円板の中心を板厚方向に貫通する保持孔58を有し、保持孔58の周辺には、当該コネクタ部材35を外側ガイド部材36の連結面52bに連結固定する際にボルト(図示せず)等が挿通される複数(本実施形態では3個)の孔部60とが設置される。
【0036】
保持孔58は、当該コネクタ部材35が外側ガイド部材36に連結固定された状態で、ガイド孔50に連通する貫通孔であり、その内径がシース14の外径と同一又は略同一に設定され、つまり、保持孔58の内径はガイド孔50の内径より多少大径、好ましくは、半径がシース14の肉厚分大きい寸法で設定される(図9参照)。これにより、図9に示すように、保持孔58に開口端14aを先端として挿入されたシース14は、該開口端14aが保持孔58の内側に位置した連結面52bに当接して位置決め保持され、この状態で当該シース14の内腔がガイド孔50に一致する。つまり、保持孔58及び設置面52bがシース14の開口端14aを当該治具10(外側ガイド部材36)に対して位置決め保持する位置決め部(シース位置決め部)63として機能する。
【0037】
次に、スライダ部40は、ベース28及び内側ガイド部材32の結合体と、外側ガイド部材36及びコネクタ部材35の結合体と、の間を所定の位置関係で位置決め保持するためのものである。
【0038】
図1及び図2に示すように、スライダ部40は、外側ガイド部材36を構成する筐体52の連結面52bとは反対側の側面から垂直方向に突出固定される左右一対のレール44a、44bと、レール44a、44b間から突出するストッパ64とを備える。レール44a、44bは、ベース28の貫通孔46a、46bを摺動可能に挿通する長尺な棒状部材である。ストッパ64は、筐体52からの突出長を設定変更可能であることが好ましく、例えば筐体52に螺入されるボルトで構成される。
【0039】
これにより、レール44a、44bが貫通孔46a、46bに挿通することで、ベース28及び内側ガイド部材32の結合体と、外側ガイド部材36及びコネクタ部材35の結合体と、の軸方向での位置関係を両者を軸方向にスライドさせて円滑に調整及び規定することができる。すなわち、内側ガイド部材32のテーパ部30と外側ガイド部材36のテーパ孔34の軸方向での位置関係を所望の位置に調整し、この位置でストッパ64の頂面がベース28の一側面に当接するように設定しておくことにより、両者を位置決め規定しておくことができる。
【0040】
なお、ストッパ64は、図1及び図2に示すようにボルトで構成する以外にも、例えば、図1中に2点鎖線で示すように、レール44a、44bの途中で所望の位置に固定可能なリング部材65(例えば、ナット)によって構成してもよい。
【0041】
次に、以上のように構成される治具10を用いたステントグラフト18のデリバリー装置16への組み付け方法について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0042】
先ず、ステントグラフト18のデリバリー装置16への組み付けに先立ち、図1に示すように、ベース28と内側ガイド部材32とを連結し、外側ガイド部材36とコネクタ部材35とを連結し、必要に応じて、外側ガイド部材36を適切な支持台(図示せず)に固定しておく。
【0043】
そこで、図7のステップS1において、ステントグラフト18をシース14内へと引き寄せる際に作業者(又は引き寄せ装置)が把持する糸(線材)70を、ステントグラフト18の端部(先端部近傍)にくくり付ける。糸70は、後述する各工程において、作業者(又は引き寄せ装置)が十分な力を持ってステントグラフト18を引き寄せることが可能なように、且つ、引き寄せ作業が終了した後、ステントグラフト18から容易に取り外すことができるようにくくり付けることが好ましい。
【0044】
例えば、図8に示すように、糸70は、1本の糸70をステントグラフト18のグラフト24の端部近傍に通して折り返してくくり付け、両端部を引き寄せ側に引き出すように設置するとよい。そうすると、糸70の前記両端部を把持してステントグラフト18を引き寄せる際には、折り返し部70aで確実にステントグラフト18を引っ張ることができ、さらに引き寄せが完了した後は、前記両端部のうち、一方の端部のみを把持して糸70を引っ張ることにより、該糸70をステントグラフト18から容易に抜去することができる。
【0045】
ステップS2では、図8に示すように、糸70をくくり付けたステントグラフト18を展開・拡張させた状態で内側ガイド部材32のロッド部48に外挿配置する。続いて、ステップS3において、シャフト12を内側ガイド部材32のスリット42に挿通させる。これにより、内側ガイド部材32には、ステントグラフト18が外挿され、シャフト12が内挿された状態となる(図9参照)。なお、これらステップS2、S3の工程順は、適宜変更してもよい。
【0046】
ステップS4では、スライダ部40を構成するレール44a、44bをベース28の貫通孔46a、46bに挿通させると共に、ストッパ64をベース28に突き当てることにより(図2参照)、図9に示すように、内側ガイド部材32と外側ガイド部材36とを所定の位置関係で連結し、さらに糸70を保持孔58に通しておく。この際、ストッパ64の筐体52からの突出長を予め所定長さに規定しておき、テーパ部30の先端がテーパ孔34の出口近傍(ガイド孔50の入口近傍)に設置されることが好ましい(図9参照)。
【0047】
ステップS5では、図9に示すように、シース14の開口端14aを位置決め部63によって位置決め保持する。すなわち、保持孔58から突出しているシャフト12をシース14内に通しつつ、該シース14の開口端14aを保持孔58に挿入して筐体52の連結面52bに突き当てる。これにより、ガイド孔50とシース14の内腔とが略一致して連通すると共に、シース14の内側にシャフト12が挿通され、シース14の外側且つ保持孔58の内側に糸70が挿通された状態となる。なお、シャフト12は、次のステップS6においてステントグラフト18と共にシース14内に引き込まれるため、当該ステップS5の段階では、ガイド孔50から突出していなくてもよく、この場合には、シース14にシャフト12を挿通する工程は不要となる。
【0048】
ステップS6では、図10に示すように、シース14の外面と保持孔58の内面との間から突出している糸70の両端部を図10中の矢印方向、つまりステントグラフト18がシース14側へと向かう方向に引き寄せる。そうすると、ステントグラフト18は、その内面側が内側ガイド部材32を構成するテーパ部30の外面30aによってガイドされ、その外面側が外側ガイド部材36を構成するテーパ孔34の内面34aによってガイドされつつ、これらテーパ部30及びテーパ孔34の傾斜(縮径形状)に伴って次第に縮径(圧縮)され、ガイド孔50から保持孔58へと引き込まれる。最終的には、図11に示すように、ステントグラフト18がシース14内に完全に引き込まれて圧縮収納された状態となるまで糸70を引き寄せる。
【0049】
この際、ステントグラフト18の内面が、テーパ部30の先端からシャフト12の外面へと移動すると、その密着作用により、ステントグラフト18と同時にシャフト12も糸70によって引き寄せられる。このため、シース14内には、シャフト12に外挿配置されたステントグラフト18が適切に圧縮収納された状態となる(図11参照)。
【0050】
このようにしてステントグラフト18のシース14内への収納工程、つまりステントグラフト18のデリバリー装置16への設置工程が終了するため、次のステップS7では、組み付けが完了したデリバリー装置16から治具10を取り外す。例えば、ステップS7では、内側ガイド部材32を外側ガイド部材36から引き離した後、スリット42を介してシャフト12を内側ガイド部材32から抜去させ、さらに、外側ガイド部材36からデリバリー装置16を取り外すことにより、当該ステントグラフト18の取り付け工程が完了する。勿論、ステップS7でのデリバリー装置16からの治具10の取り外しの手順は、適宜変更可能である。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るステントグラフト取り付け方法では、シース14の内腔内へとステントグラフト18を圧縮しながら引き込み収納する工程において、シース14の開口端14aに向かって縮径するテーパ状の内面34a及びテーパ状の外面30aを備える治具10を用いると共に、ステントグラフト18の外面及び内面を、該治具10の前記テーパ状の内面34a及び前記テーパ状の外面30aによってそれぞれガイドする。
【0052】
このように、ステントグラフト18の外面及び内面をそれぞれテーパ状の内面34a及び外面30aによってガイドしながらシース14内へと圧縮収納することにより、ステントグラフト18をその径方向で均等に圧縮しながら徐々に折り畳むことができ、シース14内へと円滑に且つバランスよく収納することができるため、ステントグラフト18及びその内側に配置されたシャフト12が不均等に変形し、潰れることを防止できる。特に、ステントグラフト18の外面側だけでなく、内面側もガイドすることにより、当該ステントグラフト18を両テーパ面の傾斜を利用して円滑にシース14内へと導入することができるため、より細い径を持つシース14等に対しても容易に収納することができる。
【0053】
なお、従来の構成では、ステントグラフト18の外面側のみをガイドするため、シース14内へと収納するステントグラフト18が、上記のように、リング状の骨格であるステント26を持った構成の場合、軸方向で前後に並ぶステント26同士がシース14内への引き込み時に互いに嵌合することがあった。これに対して、本実施形態に係る方法では、ステントグラフト18の内面側もガイドすることにより、リング状のステント26の内外面が十分にガイドされるため、図5A及び図5Bに示されるような適切な折り畳み形状に円滑に圧縮することができる。
【0054】
また、前記引き込み収納する工程において、図9に示すように、テーパ孔34の内面34a及びテーパ部30の外面30aを平行又は略平行に設置しておくと、ステントグラフト18を一層円滑にガイドすることができる。なお、テーパ孔34の内面34a及びテーパ部30の外面30aの間には、ステントグラフト18が通過可能な隙間を形成する必要があり、該隙間は、ステントグラフト18の肉厚より僅かに大きな程度の寸法に規定しておくと、内面34a及び外面30aによるガイドを一層効果的に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態に係る治具10では、シース14の開口端14aを位置決め保持する位置決め部63、及び、該位置決め部63によって保持されたシース14の開口端14aに向かって縮径する内面34aを設けたテーパ孔34を有し、該テーパ孔34の内面34aによってステントグラフト18の外面側をシース14内へとガイドする外側ガイド部材36と、テーパ孔34内に配置され、シース14の開口端14aに向かって縮径する外面30aを設けたテーパ部30を有し、圧縮収納前、つまり拡張状態にあるステントグラフト18が外挿配置されると共に、テーパ部30の外面30aによって前記外挿配置されたステントグラフト18の内面側をシース14内へとガイドする内側ガイド部材32とを備える。これにより、ステントグラフト18の外面及び内面をそれぞれテーパ孔34の内面34a及びテーパ部30の外面30aによってガイドしながらシース14内へと圧縮収納することができ、ステントグラフト18をその径方向で均等に圧縮しながら徐々に折り畳み、シース14内へと円滑に且つバランスよく収納することができる。
【0056】
しかも、治具10では、内側ガイド部材32と外側ガイド部材36との間の位置関係をスライダ部40によって容易に且つ精度よく位置決め保持することができる。換言すれば、内側ガイド部材32と外側ガイド部材36とが容易に分離可能な別体の部品で構成されているため、例えば、内側ガイド部材32をロッド部48の外径や長さによって複数種類準備しておけば、複数種類のステントグラフト18の組み付けに当該治具10を容易に使い回すことができ、汎用性が向上する。
【0057】
治具10では、図12及び図13に示すように、外側ガイド部材36及びコネクタ部材35に代えて、分割構造を有する外側ガイド部材80を用いてもよい。外側ガイド部材80は、互いに対称な2分割構造からなる内側筐体82、84と、これら内側筐体82、84の連結状態を固定する外側筐体86とを備える。
【0058】
図13に示すように、一方の内側筐体82の内面には、2本のピン88a、88bが突設されると共に、2個のピン穴90a、90bが形成される。略同様に、他方の内側筐体84の内面には、内側筐体82のピン穴90a、90bに嵌入可能な2本のピン92a、92bが突設されると共に、内側筐体82のピン88a、88bが嵌入可能な2個のピン穴94a、94bが形成される。
【0059】
各内側筐体82、84の内面には、前記テーパ孔34を2分割した形状からなるテーパ溝96a、96bがそれぞれ形成され、これらテーパ溝96a、96bが連結されることで、前記テーパ孔34と同様なテーパ孔96を形成可能である。さらに、各内側筐体82、84の内面には、前記ガイド孔50を2分割した形状からなる円形溝98a、98bがそれぞれ形成され、これら円形溝98a、98bが連結されることで、前記ガイド孔50と同様なガイド孔98を形成可能である。
【0060】
また、各内側筐体82、84の外面には、これら内側筐体82、84が互いに貼り合わされ連結された状態で1本の雄ねじ100を形成するねじ溝100a、100bがそれぞれ形成されている。
【0061】
一方、外側筐体86は、内面に前記雄ねじ100が螺入可能な雌ねじ102が形成された円筒状部材であり、該雌ねじ102の一端側は雄ねじ100を挿入可能なように大径で開口し、他端側は小径の保持孔104に連通している。保持孔104は、前記保持孔58と同様な構成からなり、その内径はシース14の外径と同一又は略同一に設定される。また、保持孔104の内側縁部は、連結された内側筐体82、84の先端側に突出する突出面106に当接することで、該突出面106と共にシース14の位置決め部63を構成することができる。
【0062】
従って、図13に示すように、内側筐体82、84をピン88a、88b、92a、02b及びピン穴90a、90b、94a、94bの係合作用下に互いに貼り合せて係合させ、この状態で形成される雄ねじ100に外側筐体86の雌ねじ102を螺合させることにより、上記したテーパ孔34、ガイド孔50及び保持孔58と同様な構成からなるテーパ孔96、ガイド孔98及び保持孔104が構成されると共に、シース14を位置決め保持する位置決め部63も形成することができる。そして、この外側ガイド部材80では、上記のステップS7に相当する工程時、つまりステントグラフト18の組み付けが完了したデリバリー装置16から治具10を取り外す工程時、シャフト12を内側ガイド部材32から抜去した後、外側筐体86を内側筐体82、84から取り外すと共に、該内側筐体82、84を分割するだけで当該外側ガイド部材80をデリバリー装置16から取り外すことができるため、生産効率が向上する。
【0063】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
10…治具 12…シャフト
14…シース 16…デリバリー装置
18…ステントグラフト 30…テーパ部
30a…外面 32…内側ガイド部材
34、96…テーパ孔 34a…内面
36、80…外側ガイド部材 63…位置決め部
70…糸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のシャフトと、該シャフトの外面側に配置される管状のシースとの間にステントグラフトを圧縮して収納するステントグラフト組み付け方法であって、
前記シースの内腔内へと前記ステントグラフトを圧縮しながら引き込み収納する工程を有し、
前記引き込み収納する工程では、前記シースの開口端に向かって縮径するテーパ状の内面及びテーパ状の外面を備える治具を用い、前記ステントグラフトの外面及び内面を、前記治具の前記テーパ状の内面及び前記テーパ状の外面によってそれぞれガイドすることを特徴とするステントグラフト組み付け方法。
【請求項2】
請求項1記載のステントグラフト組み付け方法において、
前記ステントグラフトは、筒状のグラフトと、該グラフトの周方向に延在し且つ該グラフトの軸方向に複数配列されたリング状の骨格とを有することを特徴とするステントグラフト組み付け方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のステントグラフト組み付け方法において、
前記テーパ状の内面及び前記テーパ状の外面を平行に設置することを特徴とするステントグラフト組み付け方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のステントグラフト組み付け方法において、
前記テーパ状の内面及び前記テーパ状の外面の間に、前記ステントグラフトが通過可能な隙間を形成することを特徴とするステントグラフト組み付け方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のステントグラフト組み付け方法において、
前記引き込み収納する工程では、糸又は線材を折り返し、その折り返し部を前記ステントグラフトに引っ掛けた後、該糸又は該線材を引き寄せることにより、前記シースの内腔内へと前記ステントグラフトを圧縮しながら引き込み収納することを特徴とするステントグラフト組み付け方法。
【請求項6】
管状のシャフトと、該シャフトの外面側に配置される管状のシースとの間にステントグラフトを圧縮して収納する際に用いるステントグラフト組み付け用治具であって、
前記シースの開口端を位置決め保持するシース位置決め部、及び、該シース位置決め部によって保持された前記シースの開口端に向かって縮径する内面を設けたテーパ孔を有し、該テーパ孔の内面によって前記ステントグラフトの外面側を前記シース内へとガイドする外側ガイド部材と、
前記テーパ孔内に配置され、前記シースの開口端に向かって縮径する外面を設けたテーパ部を有し、前記圧縮収納前の前記ステントグラフトが外挿配置されると共に、前記テーパ部の外面によって前記外挿配置されたステントグラフトの内面側を前記シース内へとガイドする内側ガイド部材と、
を備えることを特徴とするステントグラフト組み付け用治具。
【請求項1】
管状のシャフトと、該シャフトの外面側に配置される管状のシースとの間にステントグラフトを圧縮して収納するステントグラフト組み付け方法であって、
前記シースの内腔内へと前記ステントグラフトを圧縮しながら引き込み収納する工程を有し、
前記引き込み収納する工程では、前記シースの開口端に向かって縮径するテーパ状の内面及びテーパ状の外面を備える治具を用い、前記ステントグラフトの外面及び内面を、前記治具の前記テーパ状の内面及び前記テーパ状の外面によってそれぞれガイドすることを特徴とするステントグラフト組み付け方法。
【請求項2】
請求項1記載のステントグラフト組み付け方法において、
前記ステントグラフトは、筒状のグラフトと、該グラフトの周方向に延在し且つ該グラフトの軸方向に複数配列されたリング状の骨格とを有することを特徴とするステントグラフト組み付け方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のステントグラフト組み付け方法において、
前記テーパ状の内面及び前記テーパ状の外面を平行に設置することを特徴とするステントグラフト組み付け方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のステントグラフト組み付け方法において、
前記テーパ状の内面及び前記テーパ状の外面の間に、前記ステントグラフトが通過可能な隙間を形成することを特徴とするステントグラフト組み付け方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のステントグラフト組み付け方法において、
前記引き込み収納する工程では、糸又は線材を折り返し、その折り返し部を前記ステントグラフトに引っ掛けた後、該糸又は該線材を引き寄せることにより、前記シースの内腔内へと前記ステントグラフトを圧縮しながら引き込み収納することを特徴とするステントグラフト組み付け方法。
【請求項6】
管状のシャフトと、該シャフトの外面側に配置される管状のシースとの間にステントグラフトを圧縮して収納する際に用いるステントグラフト組み付け用治具であって、
前記シースの開口端を位置決め保持するシース位置決め部、及び、該シース位置決め部によって保持された前記シースの開口端に向かって縮径する内面を設けたテーパ孔を有し、該テーパ孔の内面によって前記ステントグラフトの外面側を前記シース内へとガイドする外側ガイド部材と、
前記テーパ孔内に配置され、前記シースの開口端に向かって縮径する外面を設けたテーパ部を有し、前記圧縮収納前の前記ステントグラフトが外挿配置されると共に、前記テーパ部の外面によって前記外挿配置されたステントグラフトの内面側を前記シース内へとガイドする内側ガイド部材と、
を備えることを特徴とするステントグラフト組み付け用治具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−183092(P2012−183092A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46368(P2011−46368)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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