説明

ステントデリバリーカテーテル、アウターシャフトの製造方法、および、ステントデリバリーカテーテルの製造方法

【課題】 インナーシャフトのアウターシャフトに対する回転を防止させたステントデリバリーカテーテルを提供する。
【解決手段】 ステントデリバリーカテーテル59では、インナーシャフト29にて並列するガイドワイヤ誘導チューブ21およびプッシャワイヤ24が、個別に、アウターシャフト19のデュアルルーメン10A・10Bに挿入される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントデリバリーカテーテル、アウターシャフトの製造方法、および、ステントデリバリーカテーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、血管または他の生体内管腔が狭窄または閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するための医療用具である。具体的には、ステントは、狭窄部位または閉塞部位(病変部位)を拡張し、拡張された管腔サイズを維持するために、病変部位に留置される。
【0003】
ステントは、例えば、2種類のタイプ(型)が挙げられる。1つは、バルーンカテーテルにおけるバルーンによって拡張されるバルーン拡張型であり、もう1つは、拡張しようとするステントを外部から抑える部材が除去されることで、自ら拡張していく自己拡張型である。
【0004】
そして、自己拡張型のステントを搬送する自己拡張型ステントデリバリーカテーテルは、遠位端及び近位端を有した円筒構造であり、自己拡張型ステントを内腔に保持するアウターシャフトと、アウターシャフト内腔に挿入されるインナーシャフトとを含む。
【0005】
詳説すると、アウターシャフトとインナーシャフトとは、それぞれ独立しており、アウターシャフトの内腔に、インナーシャフトが挿入されることで、両シャフトは同軸上に配置される。そして、アウターシャフトが、インナーシャフトに対して、スライドすることで、アウターシャフトにおける内腔の先端付近に縮径状態で取り付けられている自己拡張型ステントが、インナーシャフトの一部に接触し、アウターシャフトの内腔から押し出され、経皮的に患者の体管腔内の治療部位に留置される。
【0006】
また、このようなステントデリバリーカテーテルには、オーバー・ザ・ワイヤ型とラピッド・エクスチェンジ型との2種類が存在する。
【0007】
通常、医療従事者は、ステントデリバリーカテーテルを用いて脈管にステントを留置させる場合、治療部位付近まで、ガイドワイヤを進入させる。このガイドワイヤは、金属製の円筒状ワイヤであり、ステントデリバリーカテーテルの少なくとも一部(例えば、インナーシャフトに含まれるガイドワイヤ誘導チューブ)における内部に挿入される。そのため、ステントデリバリーカテーテルは、ガイドワイヤに沿って、経皮的に患者の病変までスムーズに誘導される。
【0008】
オーバー・ザ・ワイヤ型のステントデリバリーカテーテルの内部には、遠位端から近位端まで、ガイドワイヤ誘導チューブが配置される。
【0009】
一方、ラピッド・エクスチェンジ型のステントデリバリーカテーテル(例えば、特許文献1)の内部には、遠位端から近位端に至るまでの中間部に、ガイドワイヤ用ポートを有した構造が含まれ、ガイドワイヤ誘導チューブが遠位端からガイドワイヤ用ポートにまで配置される。
【0010】
すなわち、ラピッド・エクスチェンジ型は、オーバー・ザ・ワイヤ型に比べてガイドワイヤ誘導チューブを短くしている。そのため、治療の場合、ラピッド・エクスチェンジ型のステントデリバリーカテーテルの交換は、容易である。
【0011】
このようなラピッド・エクスチェンジ型のステントデリバリーカテーテルで、ステントが留置される場合、シースが患者の病変付近まで挿入された後に、ガイドワイヤが配置され、シース内腔に、ステントデリバリーカテーテルがガイドワイヤに沿って挿入されることで、ステントが患者の治療部位にまで搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2008-536639号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のようなステントデリバリーカテーテルの課題として、安全で正確なステントの留置が挙げられる。しかし、アウターシャフトとインナーシャフトとが、それぞれ独立していると、シース内で、インナーシャフトがアウターシャフトに対して回転することがある。
【0014】
例えば、特許文献1に記載されているような、ラピッド・エクスチェンジ型のステントデリバリーカテーテルでは、アウターシャフトとインナーシャフトとが、それぞれ独立しているため、インナーシャフトがアウターシャフトに対して回転する可能性がある。
【0015】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものである。そして、その目的は、インナーシャフトのアウターシャフトに対する回転を防止させたステントデリバリーカテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ステントを搬送するステントデリバリーカテーテルでは、アウターシャフト、及び、インナーシャフトが含まれる。アウターシャフトは、デュアルルーメンを有し、インナーシャフトは、ガイドワイヤ用誘導チューブ及びプッシャワイヤを並列させて有する。ガイドワイヤ用誘導チューブ及びプッシャワイヤは、アウターシャフトのデュアルルーメンに、分けて挿入される。
【0017】
このようになっていると、アウターシャフトの有するデュアルルーメンが、インナーシャフトの複数部材を、それぞれ独立して保持する。そのため、アウターシャフトの内部で、インナーシャフトの回転及び絡まりが防止される。
【0018】
また、インナーシャフトでは、ガイドワイヤーチューブの長手方向の中間に、プッシャワイヤがつなげられていると好ましい。
【0019】
また、プッシャワイヤの横断面形状と、アウターシャフトのデュアルルーメンのうち、プッシャワイヤを挿入されるルーメンの横断面形状と、が相似関係にあると好ましい。
【0020】
また、アウターシャフトには、アウターシャフトの操作部が含まれ、インナーシャフトには、インナーシャフトの操作部が含まれると好ましい。
【0021】
また、アウターシャフトの両側における一方側を遠位側、他方側を近位側とする場合、アウターシャフトにおける遠位側の一部および近位側の一部の少なくとも一方が、金属と樹脂とを含む多層チューブであると好ましい。
【0022】
また、ステントが、自己拡張型ステント、または、自己拡張型ステントグラフトであると好ましい。
【0023】
ところで、ステントデリバリーカテーテルに含まれるアウターシャフトの製造方法では、第1チューブ、第2チューブ、および第3チューブの順番に並べて、隣同士を接触させる工程と、接触させるチューブ同士を接合させる工程と、が含まれる。
【0024】
また、アウターシャフトの両側における一方側を遠位側、他方側を近位側とする場合、第1チューブは、内層及び外層を含む多層チューブであり、第1チューブの近位側において、外層が内層に対して延長されており、第2チューブ及び第3チューブの外径は、第1チューブの内径よりも小さく、以下の工程が含まれると好ましい。
(1)第2チューブ及び第3チューブを差し込まれた第1芯材において、遠位側に第2チューブ、近位側に第3チューブが配置され、第2チューブの近位側の端と、第3チューブの遠位側の端とが接触させられる工程
(2)第2チューブ及び第3チューブを配置させた第1芯材に対して、第2芯材が平行に配置されつつ、第1芯材及び第2芯材が、第1チューブに挿入され、第2チューブが、第1チューブの内層に接触させられ、第3チューブが、第1チューブにて延長された外層に接触させられる工程
(3)第1チューブ、第2チューブ、及び第3チューブに重なるように熱収縮チューブが配置される工程
(4)熱収縮チューブが熱せられることで、第1チューブ、第2チューブ、及び第3チューブにて接触するチューブ同士が溶着させられる工程
また、アウターシャフトの両側における一方側を遠位側、他方側を近位側とする場合、第1チューブは内層及び外層を含む多層チューブであり、第1チューブの近位側において、外層が内層に対して延長されており、第2チューブは、2つのルーメンを有し、第2チューブの外径は、第1チューブの内径よりも小さく、第3チューブの外径は、第2チューブのルーメンの少なくとも1つのルーメン径より小さく、以下の工程が含まれると好ましい。
(1)第2チューブの一方のルーメンに第1芯材、他方のルーメンに第2芯材が挿入される工程
(2)第1チューブの近位側に、第1芯材及び第2芯材を配置した第2チューブが挿入され、第2チューブの遠位側が、第1チューブの内層に接触させられる工程
(3)芯材において、第2チューブの近位側の端に、第3チューブが挿入させられる、または、第2チューブの近位側の端と、第3チューブの遠位側の端とが接触させられる工程
(4)第1チューブ、第2チューブ、及び第3チューブにて接触するチューブ同士が溶着させられる工程
また、(4)の工程では、接触箇所に熱収縮チューブが重なるように配置させられ、熱収縮チューブが熱せられることで、チューブ同士が溶着させられると好ましい。
【0025】
また、第4チューブが、第1チューブに被せられ、かつ、第1チューブ、第2チューブ、および第3チューブでの、それらチューブ同士の接触箇所に重なるように配置されて、第1チューブに接合される工程、が含まれると好ましい。
【0026】
また、アウターシャフトの両側における一方側を遠位側、他方側を近位側とする場合、第1チューブは、内層及び外層を含む多層チューブであり、第1チューブの近位側において、外層が内層に対して延長されており、第2チューブ及び第3チューブの外径は、第1チューブの内径よりも小さく、第4チューブの内径は、第1チューブの外径より大きく、以下の工程が含まれると好ましい。
(1)第2チューブ及び第3チューブを差し込まれた第1芯材において、遠位側に第2チューブ、近位側に第3チューブが配置され、第2チューブの近位側の端と、第3チューブの遠位側の端とが接触させられる工程
(2)第2チューブ及び第3チューブを配置させた第1芯材に対して、第2芯材が平行に配置されつつ、第1芯材及び第2芯材が、第1チューブに挿入され、第2チューブが、第1チューブの内層に接触させられ、第3チューブが、第1チューブにて延長された外層に接触させられる工程
(3)第4チューブが、第1チューブと同軸に配置される工程
(4)第1チューブ、第2チューブ、第3チューブ、及び第4チューブに重なるように熱収縮チューブが配置される工程
(5)熱収縮チューブが熱せられることで、第1チューブ、第2チューブ、第3チューブ、及び第4チューブにて接触するチューブ同士が溶着させられる工程
また、アウターシャフトの両側における一方側を遠位側、他方側を近位側とする場合、第1チューブは内層及び外層を含む多層チューブであり、第1チューブの近位側において、外層が内層に対して延長されており、第2チューブは、2つのルーメンを有し、第2チューブの外径は、第1チューブの内径よりも小さく、第3チューブの外径は、第2チューブのルーメンの少なくとも1つのルーメン径より小さく、第4チューブの内径は、第1チューブの外径よりも大きく、以下の工程が含まれると好ましい。
(1)第2チューブの一方のルーメンに第1芯材、他方のルーメンに第2芯材が挿入される工程
(2)第1チューブの近位側に、第1芯材及び第2芯材を配置した第2チューブが挿入され、第2チューブ遠位側が、第1チューブの内層に接触させられる工程
(3)第1芯材において、第2チューブの近位側の端に、第3チューブが挿入させられる、または、第2チューブの近位側の端と、第3チューブの遠位側の端とが接触させられる工程
(4)第4チューブが、第1チューブと同軸に配置される工程
(5)第1チューブ、第2チューブ、第3チューブ、及び第4チューブにて接触するチューブ同士が溶着させられる工程
また、(5)の工程では、接触箇所に熱収縮チューブが重なるように配置させられ、熱収縮チューブが熱せられることで、チューブ同士が溶着させられると好ましい。
【0027】
なお、以上のアウターシャフトの製造方法を含むステントデリバリーカテーテルの製造方法も本発明といえる。
【0028】
また、ステントデリバリーカテーテルが、自己拡張型ステントまたは自己拡張型ステントグラフトを搬送するステントデリバリーカテーテルであると好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、アウターシャフトに対して回転しないインナーシャフトを含むステントデリバリーカテーテルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図2】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図3】は、ステントの斜視図である。
【図4】は、アウターシャフトの説明図である。
【図5】は、インナーシャフトの説明図である。
【図6】は、ステントデリバリーカテーテルの断面図である。
【図7】は、ステントデリバリーカテーテルの断面図である。
【図8】は、ステントデリバリーカテーテルの断面図である。
【図9】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図10】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図11】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図12】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図13】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図14】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図15】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図16】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図17】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図18】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図19】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図20】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図21】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図22】は、アウターシャフトの製造工程を示す説明図である。
【図23】は、ステントデリバリーカテーテルの評価工程を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、ステントデリバリーカテーテルの種々の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。なお、便宜上、ハッチング、部材符号、部材の有するルーメン等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0032】
また、ステントデリバリーカテーテルの両側において、ステントを収容する側を遠位側と称し、この遠位端側に対する反対側を近位側と称する。また、ステントを装着したデリバリーカテーテルを、ステントデリバリーカテーテルと称する場合もあるし、デリバリーカテーテル自体をステントデリバリーカテーテルと称する場合もある。
【0033】
図1及び図2は、自己拡張型ステントを搬送する、高速交換型(RX型;Rapid Exchange型)のステントデリバリーカテーテル59の一例である(なお、図1はステント39を搭載したステントデリバリーカテーテル59を示し、図2はステント39を外部に留置させようとするステントデリバリーカテーテル59を示す)。
【0034】
図3は自己拡張型のステント39を示す。図4は自己拡張型ステントデリバリーカテーテル59に含まれるアウターシャフト19を示す。図5は自己拡張型ステントデリバリーカテーテル59に含まれるインナーシャフト29を示す(なお、インナーシャフト29は、アウターシャフト19のルーメンに収容される)。
【0035】
図3に示されるステント39は、環状の略波形構成要素32を一方向(軸方向;矢印参照)に沿って連続的に配置させることで形成される。略波形構成要素32は伸長するストラット31をつなげることで形成される。そして、このステント39は、アウターシャフト19の先端に収容される。なお、自己拡張型ステントに樹脂製チューブを被覆させた場合、そのステント39はステントグラフトと称される。
【0036】
図4に示されるアウターシャフト19は、ステント39を留置する場合に生じる力に耐え得る強度を有しており、血管追従時に折れない柔軟性及び耐キンク性を有する材料で形成される。
【0037】
そして、このアウターシャフト19は、遠位側に配置される遠位チューブ13、遠位チューブ13につなげられる中間チューブ11、中間チューブ11につなげられる近位チューブ15、アウター操作部16、及びハブ17を含む。なお、これら部材は、同軸上に配置される。また、遠位チューブ13、中間チューブ11、及び近位チューブ15を、アウターチューブ(13・11・15)とも称される。
【0038】
遠位チューブ13(アウターシャフト19の遠位側の一部)は、自己拡張するステント39を縮径した状態で保持する。そして、この遠位チューブ13は、引張強度20N以上、キンク時曲げ半径15mm以下の物性値を有すると好ましい。そのため、このような物性を担保するため、遠位チューブ13は、内層40N、補強層40M、及び外層40Tを含む多層チューブ(金属と樹脂とを含む多層チューブ)であると好ましい。
【0039】
内層40Nは、低摩擦材料で形成されると好ましい。なぜなら、内層40Nが低摩擦材料であると、遠位チューブ13のルーメン10Cに収容されるステント39が、体内に留置される場合、アウターシャフト19が、低摩擦でなるべく荷重を生じさせずに、インナーシャフト29に対してスライドするためである。なお、低摩擦材料としては、例えば、フッ素系樹脂または高密度ポリエチレンが挙げられる。
【0040】
補強層40Mは、柔軟性または耐キンク性を有するように、金属性の素線または樹脂の素線で形成されると好ましい。これら素線の一例としては、例えば、ステンレス鋼性素線またはナイチノール製素線が挙げられる。また、補強層40Mはブレード構造またはコイル構造になっている。
【0041】
なお、遠位チューブ13が多層チューブの場合、この多層チューブを作製する工程で、補強層40Mを内層40Nに固定するために、ブレード構造またはコイル構造の補強層40Mの遠位端及び近位端に、例えばPt/Ir合製のリング状の編組マーカ40Sが配置される。
【0042】
外層40Tは、アウターシャフト19の製造時に、溶着または接着可能な材料で形成されると好ましい。このような材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー、ナイロン、またはポリエチレンが挙げられる。
【0043】
中間チューブ11は、デュアルルーメン10A・10Bを有し、製造時に溶着または接着可能な材料で形成されると好ましい。このような材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー、ナイロン、またはポリエチレンが挙げられる。なお、中間チューブ11は、単層でも、遠位チューブのような多層チューブでも構わない。また、ルーメン10Aの近位端付近は、ガイドワイヤ用ポート10APとなる。
【0044】
近位チューブ15(アウターシャフト19の近位側の一部)は、製造時に溶接または接着可能な材料で形成されると好ましい。このような材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー、ナイロン、またはポリエチレンが挙げられる。なお、近位チューブ15は、単層でも、遠位チューブのような多層チューブでも構わない。
【0045】
アウター操作部16は、近位チューブ15の近位側の端(近位端)に連結されており、アウター操作部16の近位端には、ハブ17が連結される。そして、ハブ17と不図示のY型コネクタとが接続されてもよい(なお、Y型コネクタを通じて、造影剤は、ステントデリバリーカテーテル59の遠位端にまで放出できる)。また、アウター操作部16は、近位チューブ15のルーメン10Dに連なるルーメン10Eを含み、ハブ17は、ルーメン10Dに連なるルーメン10Fを含む(なお、ルーメン10E・10Fは、ルーメン10Dとほぼ同じ内径を有する)。
【0046】
図5に示されるインナーシャフト29は、ステント39を遠位側に保持したアウターシャフト19のスライドによって、ステント39を相対的に押し出す役割を有する。そのため、インナーシャフト29は、撓まずにステント39を正確に押し出し、かつ、押し出す軸方向に対して撓まない強度を有する。
【0047】
インナーシャフト29は、ガイドワイヤW(図6参照)を通すためのガイドワイヤ誘導チューブ21、血管損傷を防止する先端チップ22、ステント39を押し出すステント圧迫部材23、ステント39の留置時にアウターシャフト19を支えるプッシャワイヤ24、ガイドワイヤ誘導チューブ21とプッシャワイヤ24とを平行な配置でつなげる接合チューブ25、およびインナー操作部27を含む。
【0048】
ガイドワイヤ誘導チューブ21は、ガイドワイヤ(不図示)を通過させられるサイズのルーメンを有するチューブである。ガイドワイヤ誘導チューブ21の材料は、ポリイミド、ポリアミド系エラストマー、ナイロン、ポリエチレン、またはポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。また、ガイドワイヤ誘導チューブ21は、単層チューブでも多層チューブでも構わない。
【0049】
先端チップ22は、ガイドワイヤ誘導チューブ21の遠位側の端(遠位端)に配置される。なお、先端チップ22は、血管損傷を防止するために、エッジを含まない形状である。また、先端チップ22とステント圧迫部材23との間に、アウターシャフト19における縮径されたステント39が配置される。
【0050】
ステント圧迫部材23は、金属チューブであり、ガイドワイヤ誘導チューブ21の中間付近に配置される{なお、ステント圧迫部材23と、ガイドワイヤ誘導チューブ21との接続(固定)は、接着、圧着、または溶着等、特に限定されない}。そして、このステント圧迫部材23は、アウターシャフト19の近位側へのスライドに応じて移動するステント39の手元端(近位端)に接し、作用点として押し出す役割を有する。なお、ステント圧迫部材として使用される金属は、例えば、ステンレス鋼、またはPt/Irが挙げられる。
【0051】
プッシャワイヤ24は、ステント圧迫部材23の近位端付近に、接合チューブ25を介して、ガイドワイヤ誘導チューブ21に接続される。このプッシャワイヤ24は、ステンレス鋼またはニッケルチタン等の金属材料で形成されている。
【0052】
また、プッシャワイヤ24の形状は、例えば、中実円筒形状が挙げられる。ただし、これに限定されず、プッシャワイヤ24の軸方向と直交する横断面が、中実楕円形状担っていてもよい。また、プッシャワイヤ24の遠位側が、テーパー状になっていたり、コイル状になっていたり、またはスリット加工を施されたりしてもよい。
【0053】
接合チューブ25は、ガイドワイヤ誘導チューブ21とプッシャワイヤ24とを並列させた状態で接合させる{ただし、接合チューブ25の遠位端と、プッシャワイヤ24の遠位端とは、一方向(インナーシャフト29の軸方向)において、ほぼ揃うように配置される}。
【0054】
例えば、接合チューブ25が1つのルーメンを含む円筒状のチューブの場合、そのルーメンに、ガイドワイヤ誘導チューブ21とプッシャワイヤ24とが収容されることで、接合チューブ25は、両部材21・24を並列させた状態で接合させる。また、接合チューブ25が並列する2つのルーメンを含む円筒状のチューブの場合、一方のルーメンにガイドワイヤ誘導チューブ21が収容され、他方のルーメンにプッシャワイヤ24が収容されることで、接合チューブ25は、両部材21・24を並列させた状態で接合させる。
【0055】
インナー操作部27は、プッシャワイヤ24の近位端に連結された線状(棒状)の操作部であり、インナーシャフト29の操作のために、例えば、術者によって把持される。なお、インナー操作部27の外径は、プッシャワイヤ24の外径とほぼ同じである。
【0056】
ここで、アウターシャフト19のルーメン10(10A〜10F)に対して、どのようにインナーシャフト29が挿入されているか詳説する。
【0057】
図4に示すように、アウターシャフト19では、遠位チューブ13には、1つのルーメン10C、中間チューブ11には、ルーメン10Cに連なる2つのルーメン10A・10B(なお、デュアルルーメン10A・10Bの内径は、ルーメン10Cの内径よりも小径である)、近位チューブ15には、デュアルルーメン10A・10Bの一方のルーメン10Bに連なるルーメン10D、が含まれる。
【0058】
一方、インナーシャフト29は、図5に示すように、遠位側に先端チップ22とガイドワイヤ誘導チューブ21の一部、近位側にインナー操作部27を配置させるとともに、遠位側と近位側との中間付近にガイドワイヤ誘導チューブ21の一部とプッシャワイヤ24とを配置させる。
【0059】
そして、インナーシャフト29における厚み、詳説すると、インナーシャフト29の軸方向に対する直交方向でのインナーシャフト29の長さは、アウターシャフト19のルーメン10の内径よりも小さい。さらに、アウターシャフト19におけるデュアルルーメン10A・10Bの一方のルーメン10Aに、ガイドワイヤ誘導チューブ21が挿入されるように設計され、他方のルーメン10Bに、プッシャワイヤ24が挿入されるように設計される。
【0060】
すなわち、ガイドワイヤ誘導チューブ21及びプッシャワイヤ24は、デュアルルーメン10A・10Bに、分けて挿入される(なお、プッシャワイヤ24につなげられたインナー操作部27も、ルーメン10Bに挿入可能である)。
【0061】
このようなアウターシャフト19とインナーシャフト29であれば、インナーシャフト29の近位端が、アウターシャフト19の遠位側からルーメン10Cに挿入され、さらに進められると、プッシャワイヤ24は、ルーメン10B・10D・10E・10Fに進入し、ガイドワイヤ誘導チューブ21は、ルーメン10Aに進入する。すると、図1に示すように、アウターシャフト19とインナーシャフト29とが配置される。
【0062】
そして、図1の横断面図である図6〜図8では、図6は遠位チューブ13、図7は中間チューブ11、図8は近位チューブ15を示す。なお、横断面とは、ステントデリバーカテーテル59の軸方向に対して垂直方向の断面である。
【0063】
遠位チューブ13では、図6に示すように、ガイドワイヤ誘導チューブ21を囲むように位置する自己拡張型ステント39は、縮径した状態で、アウターシャフト19の遠位チューブ13のルーメン10Cに保持される。
【0064】
中間チューブ11では、図7に示すように、ルーメン10Aにはガイドワイヤ誘導チューブ21が挿入され、ルーメン10Bにはプッシャワイヤ24が挿入される。すなわち、ガイドワイヤ誘導チューブ21とプッシャワイヤ24とが、完全に独立した状態で、中間チューブ11のデュアルルーメン10A・10Bにそれぞれ配置される。
【0065】
近位チューブ15では、自身のルーメン10Dは、中間チューブ11のルーメン10Bに連なっており、プッシャワイヤ24は、図8に示すように、近位チューブ15のルーメン10Dに配置される。
【0066】
そして、これらの図における図7に示すように、インナーシャフト29にて並列する複数(例えば2本)の線状部材であるガイドワイヤ誘導チューブ21およびプッシャワイヤ24が、個別に、アウターシャフト19のデュアルルーメン10A・10Bに挿入されるようになっていると、インナーシャフト29は、アウターシャフト19の内部にて回転しない。
【0067】
そのため、治療部位まで、ステントデリバリーカテーテル59の先端が移動させられたり、ステント39が体内へ留置させられたりする場合に、ガイドワイヤ誘導チューブ21とプッシャワイヤ24とが、ねじれず、さらには、破損も防止される(すなわち、デュアルルーメン10A・10Bと、それらルーメン10A・10Bに個別に挿入されるガイドワイヤ誘導チューブ21およびプッシャワイヤ24は、インナーシャフト29のねじれ防止構造といえる)。この結果、このステントデリバリーカテーテル59は、安全にステント39を体内に留置させられる。
【0068】
要は、自己拡張型ステント39を留置しているステントデリバリーカテーテル59の一例である図2に示すように、インナーシャフト29が不動のまま、アウターシャフト19のみが近位側にスライドさせられることで、相対的にインナーシャフト29がステント39を押し出し、アウターシャフト19に保持されていたステント39が解放されることで、自己拡張し、目的の病変血管に留置される。そして、上述したように、アウターシャフト19のデュアルルーメン10A・10Bにそれぞれガイドワイヤ誘導チューブ21及びプッシャワイヤ24を配置させたねじれ防止構造(回転防止構造)は、安全に、ステント39のデリバリーや留置を実現させる。
【0069】
その上、ガイドワイヤ誘導チューブ21が、ガイドワイヤ用ポート10APを有するルーメン10Aに収まっていると、ガイドワイヤ誘導チューブ21に挿入されたガイドワイヤWが、確実にガイドワイヤ用ポート10APを経て外部に露出する。すなわち、ガイドワイヤWに、ステントデリバリーカテーテル59が、容易に差し込まれ、そのステントデリバリーカテーテル59が確実にガイドワイヤWに沿って移動させられる。
【0070】
また、プッシャワイヤ24の横断面形状と、アウターシャフト19のデュアルルーメン10A・10Bのうち、プッシャワイヤ24を挿入されるルーメン10Bの横断面形状と、が相似関係になっていれば真円形状以外でも構わない。例えば、真円形状以外では、楕円形状または半円形状が挙げられる。そして、このような真円形状以外の横断面形状を有するプッシャワイヤ24であれば、真円形状の横断面形状を有するプッシャワイヤに比べて、回転しにくくなるので、よりインナーシャフトの捩れが防止される。
【0071】
ところで、インナー操作部27は、プッシャワイヤ24の近位端につなげられることで、インナーシャフト29の近位側に配置され、アウター操作部16は、アウターチューブ(13・11・15)の近位端につなげられることで、アウターシャフト19の近位側に配置される。
【0072】
インナー操作部27は、例えば金属製中空管であると好ましい。また、ステント39を留置させる場合に、術者の手でデリバリーカテーテルを支えやすい大きさをしていると好ましい。
【0073】
アウター操作部16は、インナー操作部27の外側に同軸状に配置され、手でアウターシャフト19を引きやすい大きさの円筒チューブであり、アウターシャフト19の近位側に配置される。このようにアウターシャフト19の構造が簡単であると、アウター操作部16の動きと、ステント39を放出させる場合のアウターシャフト19の動きとは、同じになるため、不慣れな医療従事者(術者)でも、ステントデリバリーカテーテル59を容易に操作できる。
【0074】
なお、現在、医療機関で用いられている自己拡張型ステントデリバリーカテーテルは、手元部(近位側)に、大きなコントローラを設けられていることが多い。これは、ステント39を留置させる場合に、ステント39の位置の微調整を可能にするためである。なお、コントローラの一例としては、駆動部を設けダイヤルを回したり、グリップを握ったりすることで、アウターシャフトをスライドさせ、ステントを留置させるものが挙げられる。
【0075】
また、このコントローラは、アウターシャフトとインナーシャフトとを固定する役割も担っている。すると、このような複雑な操作を要するコントローラでは、不慣れな医療従事者は、構造を理解できずに、的確に操作を行えず、ステントの留置ミスに繋がり得る。
【0076】
その点、アウターシャフト19のデュアルルーメン10A・10Bに、ガイドワイヤ誘導チューブ21及びプッシャワイヤ24を、個別に配置させたねじれ防止構造が、ステントデリバリーカテーテル59に含まれていると、ステントデリバリーカテーテル59の本体で、アウターシャフト19とインナーシャフト29とを固定させられる。そのため、操作部(インナー操作部27・アウター操作部16)の構造が簡易になり、その結果、不慣れな医療従事者でも、ステントデリバリーカテーテル59を安全に操作しやすい。
【0077】
次に、ステントデリバリーカテーテル59に含まれるアウターシャフト19(詳説するとアウターチューブ)の製造方法について、図9〜図22を用いて説明する。
【0078】
図9に示すように、アウターシャフト19は、第1チューブ41、第2チューブ42、および第3チューブ43より組み立てられ、製造される{なお、第1チューブ41〜第3チューブ43および後述の第4チューブ44は、中空(ルーメン)を有するチューブである}。
【0079】
詳説すると、図10に示すように、第1チューブ41は、多層チューブで、編組マーカ40Sで、補強層40Mを内層40Nに固定させている(なお、便宜上、リング状の編組マーカ40Sのルーメンは省略している)。そして、第1チューブ41の手元側(近位側)において、外層40Tのみが、単層で、内層40Nおよび補強層40Mに対して延長されている(詳説すると、編組マーカ40Sを基準にして、外層40Tが内層40Nおよび補強層40Mに対して近位側に延びている。なお、この延びた外層40Tを、外層延長部40TEとも称する)。
【0080】
また、図9に示すように、第2チューブ42の外径及び第3チューブ43の外径は、第1チューブ41の内径よりも小さい上に、図11に示すように、第2チューブ42の内径及び第3チューブ43の内径は同じである(なお、図中の第2チューブ42の遠位側の端は、先細っているが、これに限定されるものではない)。
【0081】
そして、まず、図11に示すように、第1芯材51に、第2チューブ42と第3チューブ43とが差し込まれる。詳説すると、第2チューブ42及び第3チューブ43を差し込まれた第1芯材51において、遠位側に第2チューブ42、近位側に第3チューブ43が配置され、第2チューブの近位端と、第3チューブ43の遠位端とが接触させられる。
【0082】
次に、図12に示すように、第2チューブ42及び第3チューブ43を差し込まれた第1芯材51に対して、第2芯材52が平行に配置されつつ、図13に示すように、第1芯材51及び第2芯材52が、第1チューブ41に挿入され、第2チューブ42の外面が、第1チューブ41の内層40Nに接触させられ、第3チューブ43の外面が、第1チューブ41にて延長された外層40Tに接触させられる。
【0083】
その後、図9に示すように、第1チューブ41、第2チューブ42、及び第3チューブ43に重なるように熱収縮チューブ55が配置される。そして、この熱収縮チューブ55が熱せられることで、第1チューブ41、第2チューブ42、及び第3チューブ43にて接触するチューブ同士(41・42・43)が溶着させられる。
【0084】
この後、熱収縮チューブ55は除去され、第1芯材51および第2芯材52は引き抜かれる。
【0085】
すると、第1芯材51の引き抜かれた後の部分で、第2チューブ42の付近が、中間チューブ11のルーメン10Bとなり、第2芯材52の引き抜かれた部分で、第2チューブ42の付近が、中間チューブ11のルーメン10Aとなる。
【0086】
このような製造方法であれば、デュアルルーメン10A・10Bを含むアウターシャフト19が簡単に製造される。
【0087】
その上、第2チューブ42の外面が、第1チューブ41の内層40Nに接触させられることから、第2チューブ42の外面と第1チューブ41の内層40Nとが溶着する。そして、この溶着部分が、遠位チューブ13と中間チューブ11との境界付近になる。また、第3チューブ43の外面が、第1チューブ41にて延長された外層40Tに接触させられることから、第3チューブ43の外面と第1チューブ41にて延長された外層40Tとが溶着する。そして、この溶着部分が、中間チューブ11と近位チューブ15との境界付近になる。
【0088】
これらの境界付近は、チューブ同士の構造の違い(遠位チューブ13と中間チューブ11との構造の相違、および、中間チューブ11と近位チューブ15との構造の相違)から、曲げまたは引っ張りに弱い脆弱な部分になりやすい。しかしながら、この脆弱な部分が多層構造になるため、曲げまたは引っ張りに対する耐性が向上する(例えば、アウターシャフト19が破断しにくくなる)。
【0089】
なお、以上そして以下では、熱収縮チューブ55を用いた溶着(熱溶着)を例に挙げるが、これに限定されず、例えば、レーザを用いたレーザ溶着、突き当て溶着、または接着剤を用いた接着であっても構わない(要は、アウターシャフト19に含まれるチューブがつなげられれば、その接続の仕方は、特に限定されない)。
【0090】
また、図14に示すようなアウターシャフト19の製造方法を流用した製造方法もある。すなわち、図14に示すような、第4のチューブ44を用いたアウターシャフト19の製造方法である。この製造方法では、第1チューブ41の外径よりも大きな内径を有する第4チューブ44が用いられる。具体的には、以下の通りである。
【0091】
まず、図11に示すように、第2チューブ42及び第3チューブ43を差し込まれた第1芯材51において、遠位側に第2チューブ42、近位側に第3チューブ43が配置され、第2チューブ42の近位側の端と、第3チューブ43の遠位側の端とが接触させられる。
【0092】
次に、図12・図13に示すように、第2チューブ42及び第3チューブ43を配置させた第1芯材51に対して、第2芯材52が平行に配置されつつ、第1芯材51及び第2芯材52が、第1チューブ41に挿入され、第2チューブ42が、第1チューブ41の内層40Nに接触させられ、第3チューブ43が、第1チューブ41にて延長された外層に接触させられる。
【0093】
その後、図15に示すように、第4チューブ44が、第1チューブ41の外面を被いつつ、同軸に配置される。特に、この第4チューブ44は、第1チューブ41と第2チューブ42との接触箇所、および、第2チューブ42と第3チューブ43との接触箇所に重なるように配置される。
【0094】
そして、図14に示すように、第1チューブ41、第2チューブ42、第3チューブ43、及び第4チューブ44に重なるように熱収縮チューブ55が配置される。その後、この熱収縮チューブ55が熱せられることで、第1チューブ41、第2チューブ42、第3チューブ43、及び第4チューブ44にて接触するチューブ同士(41・42・43・44)が溶着させられる。
【0095】
この後、熱収縮チューブ55は除去され、第1芯材51および第2芯材52は引き抜かれる。
【0096】
すると、第1芯材51の引き抜かれた後の部分で、第2チューブ42の付近が、中間チューブ11のルーメン10Bとなり、第2芯材52の引き抜かれた部分で、第2チューブ42の付近が、中間チューブ11のルーメン10Aとなる。
【0097】
このような製造方法であれば、デュアルルーメン10A・10Bを含むアウターシャフト19が簡単に製造される。
【0098】
その上、上述したように、第2チューブ42の外面が、第1チューブ41の内層40Nに接触することから、これらが溶着し、この溶着部分が、遠位チューブ13と中間チューブ11との境界付近になる。また、第3チューブ43の外面が、第1チューブ41にて延長された外層40Tに接触することから、これらが溶着し、この溶着部分が、中間チューブ11と近位チューブ15との境界付近になる。そして、これらの脆弱な境界付近を、第4チューブ44が補強することになる。そのため、この脆弱な部分がさらに多層構造になるため、曲げまたは引っ張りに対する耐性が向上する。
【0099】
また、図16に示すように、2つのルーメン42A・42Bを含む第2チューブ42を用いたアウターシャフト19の製造方法もある。なお、第1チューブ41は、多層チューブであり、第1チューブ41の近位側において、外層40Tが内層40Nに対して延長されている。第2チューブ42は、2つのルーメン42A・42Bを有するとともに、第2チューブ42の外径は、第1チューブ41の内径よりも小さい。また、第3チューブ43の外径は、第2チューブ42のルーメン42A・42Bの少なくとも1つのルーメン(例えば、ルーメン42B)の内径(ルーメン径)より小さい。
【0100】
まず、図17に示すように、第2チューブ42の一方のルーメン42Bに第1芯材51、他方のルーメン42Aに第2芯材52が挿入される。次に、図18に示すように、第1チューブ41の近位側に、第1芯材51及び第2芯材52を配置した第2チューブ42が挿入され、第2チューブ42の遠位側が、第1チューブ41の内層40Nに接触させられる。
【0101】
続いて、図19に示すように、第1芯材51において、第2チューブ42の近位側の端に、第3チューブ43が挿入させられる。ただし、これに限らず、図20に示すように、第2チューブ42の近位側の端と、第3チューブ43の遠位側の端とが接触されてもよい。
【0102】
そして、この後、第1チューブ41、第2チューブ42、及び第3チューブ43にて接触するチューブ同士(41・42・43)が溶着させられる。
【0103】
例えば、図16に示すように、チューブ同士(41・42・43)の接触箇所に、個別に、熱収縮チューブ55が重なるように配置させられ、その熱収縮チューブ55が熱せられることで、チューブ同士(41・42・43)が溶着させられると好ましい。
【0104】
なお、熱収縮チューブ55は除去され、第1芯材51および第2芯材52は引き抜かれる。すると、第1芯材51の引き抜かれた後の部分で、第2チューブ42の付近が、中間チューブ11のルーメン10Bとなり、第2芯材52の引き抜かれた部分で、第2チューブ42の付近が、中間チューブ11のルーメン10Aとなる。
【0105】
このような製造方法であれば、デュアルルーメン10A・10Bを含むアウターシャフト19が簡単に製造される。
【0106】
また、上述してきたように、アウターシャフト19では、チューブ同士の構造の違い(遠位チューブ13と中間チューブ11との構造の相違、および、中間チューブ11と近位チューブ15との構造の相違)から、曲げまたは引っ張りに弱くなりやすいが、このような脆弱になりそうな部分が、多層構造になるため、曲げまたは引っ張りに対する耐性が向上する。
【0107】
その上、図16のアウターシャフト19の製造方法は、図9のアウターシャフト19の製造方法に比べて、チューブ同士(41・42・43)における接合面積が狭くなるので、製造工程は簡易で、製造時間も短縮される。
【0108】
また、図21に示すようなアウターシャフト19の製造方法を流用した製造方法もある。すなわち、図21に示すような、第4のチューブ44を用いたアウターシャフト19の製造方法である。この製造方法では、第1チューブ41の外径よりも大きな内径を有する第4チューブ44が用いられる。具体的には、以下の通りである。
【0109】
まず、図17に示すように、第2チューブ42の一方のルーメン42Bに第1芯材51、他方のルーメン42Aに第2芯材52が挿入される。
【0110】
次に、図18に示すように、第1チューブ41の近位側に、第1芯材51及び第2芯材52を配置した第2チューブ42が挿入され、第2チューブ42の遠位側が、第1チューブ41の内層40Nに接触させられる。
【0111】
さらに、図19に示すように、第1芯材51において、第2チューブの近位側の端に、第3チューブ43が挿入させられる、または、図20に示すように、第2チューブ42の近位側の端と、第3チューブ43の遠位側の端とが接触させられる。
【0112】
その後、第4チューブ44が、第1チューブ41と同軸に配置される。例えば、図22に示すように、1つの第4チューブ44が、第1チューブ41と第2チューブ42との接触箇所に重なるように配置され、もう1つの第4チューブ44が、第2チューブ42と第3チューブ43との接触箇所に重なるように配置される。
【0113】
そして、第1チューブ41、第2チューブ42、第3チューブ43、及び第4チューブ44にて接触するチューブ同士(41・42・43・44)が溶着させられる。
【0114】
例えば、図21に示すように、チューブ同士(41・42・43・44)の接触箇所に、個別に、熱収縮チューブ55が重なるように配置させられ、その熱収縮チューブ55が熱せられることで、チューブ同士(41・42・43・44)が溶着させられると好ましい。
【0115】
なお、熱収縮チューブ55は除去され、第1芯材51および第2芯材52は引き抜かれる。すると、第1芯材51の引き抜かれた後の部分で、第2チューブ42の付近が、中間チューブ11のルーメン10Bとなり、第2芯材52の引き抜かれた部分で、第2チューブ42の付近が、中間チューブ11のルーメン10Aとなる。
【0116】
このような製造方法であれば、デュアルルーメン10A・10Bを含むアウターシャフト19が簡単に製造される。
【0117】
また、上述してきたように、アウターシャフト19では、チューブ同士の構造の違いから、曲げまたは引っ張りに弱くなりやすいが、このような脆弱になりそうな部分が、さらに多層構造になるため、曲げまたは引っ張りに対する耐性が向上する。
【0118】
その上、図21のアウターシャフト19の製造方法は、図14のアウターシャフト19の製造方法に比べて、チューブ同士(41・42・43・44)における接合面積が狭くなるので、製造工程は簡易で、製造時間も短縮される。
【実施例】
【0119】
以下に、自己拡張型ステント39を搬送するステントデリバリーカテーテル59の数値実施例について説明するが、これらに制限されるものではない。
【0120】
[実施例1]
自己拡張型ステント39は、拡張径8mm、軸方向長さ45mmとして作製される。なお、φ2.2mmのニッケルチタン合金のパイプが、レーザカットされ、φ8mmにまで拡張され、さらに、熱処理を施されることで、ステント39は完成する。
【0121】
第1チューブ41は、外径2.08mm、内径1.78mmとして作製される。作製方法は以下の通りである。
【0122】
日星電気社製の厚み40μmのPTFE被覆線(芯材はφ1.78mm軟銅線)と、幅100μm、厚み25μmのSUS製素線と、厚み50μm、外径2.05mmのPt/Ir製リングマーカ(なお、このマーカは、アクセレント社製の造影マーカで、Pt:Ir=9:1の比率である)と、ダイセルデクサー社製の外径2.23mm、内径2.05mmのナイロン12製外層チューブ(商品名;ダイアミド)と、タイコエレクトロニクス社製の架橋ポリエチレンの熱収縮チューブ(商品名;RNF-100-3/32 )と、が用いられる。
【0123】
そして、PTFE被覆線に、16本のSUS素線が等間隔に配置され、4mm間隔で、ブレード加工される。さらに、2つのリングマーカが250mm離れて、ブレーディングされた被覆線の外側に、同軸状に配置された後に固定される。
【0124】
次に、YAGレーザにて、SUS素線の端部切断し、端部の鋭利な部分は、電解研磨にて溶解される。外層チューブ310mmは、250mmほどブレード化された被覆線の周囲に配置され、熱収縮チューブを用いて、被覆線に被覆される。なお、10mmリングマーカ両外側に、外層チューブのみが50mm延長する(なお、この部分を、外層延長部と称してもよい)。
【0125】
第2チューブ42(外径1.10mm、内径0.60mm、長さ50mm)は、押し出し成型法により、3層チューブとして作製される。なお、3層における外層は、ダイセルデクサー社製のナイロン12(商品名;ダイアミド)、中間層はLyondelBasel社製の低密度ポリエチレン(商品名;Plexar3080)、内層は日本ポリエチレン社製の高密度ポリエチレン(商品名;ノバテックHB530)である。
【0126】
第3チューブ43(外径1.20mm、内径0.60mm、長さ510mm)は、押し出し成型法により、3層チューブとして作製された。なお、3層における外層は、ダイセルデクサー社製のナイロン12(商品名;ダイアミド)、中間層がLyondelBasel社製の低密度ポリエチレン(商品名;Plexar3080)、内層が日本ポリエチレン社製の高密度ポリエチレン(商品名;ノバテックHB530)である。
【0127】
そして、以上のチューブ41・42・43と、プレシジョンワイヤ社製のパリレンコーティングされた第1芯材51(φ0.60mm)および第2芯材52(φ0.85mm)と、ペンニットー社製の熱収縮チューブ(商品名;AWG−15E)とを用いて、アウターシャフト19が作製される。
【0128】
詳説すると、第2チューブ42及び第3チューブ43を差し込まれる第1芯材51において、遠位側に第2チューブ42、近位側に第3チューブ43が配置される(なお、第2チューブ42の近位側の端と、第3チューブ43の遠位側の端とが接触させられる)。
【0129】
第2チューブ42及び第3チューブ43を配置した第1芯材51と、この第1芯材51に並列する第2芯材52とを、第1チューブ41の内部に配置させる。なお、第2チューブ42は第1チューブ41の内層40Nと接触し、第3チューブ43の遠位側では、遠位側の端(遠位端)から10mm、第1チューブ41の外層延長部40TEに接触する。
【0130】
そして、熱収縮チューブ55が、外層延長部40TEを覆うように配置され、熱風溶着機によって熱溶着させられる。すると、遠位チューブ13が200mm、中間チューブ11が50mm、近位チューブ15が550mm、有効長800mmのアウターシャフト19が作製される。なお、アウターシャフト19の近位側の端には、ダイセルデクサー社のナイロン12(商品名;ダイアミド)で形成されたアウター操作部16(外径2.13mm、内径2.05mm)が、熱溶着によって接合され、さらに、アウター操作部16の近位側の端には、ハブ17が、ウレタンによって接着されている。これによりアウターシャフト19が完成する。
【0131】
インナーシャフト29は、マイクロルーメン社製のポリイミドで形成されたガイドワイヤ誘導チューブ21(外径0.73mm、内径0.53mm、長さ260mm)と、ヨコヲ社製のプッシャワイヤ24(φ0.50mm、長さ1000mm、先端0.30mmにテーパー加工)と、アルケマ社製のポリアミドエラストマーで形成される接合チューブ25(外径1.26mm、内径1.05mm、長さ20mm)と、SUS304製のステント圧迫部材23(外径1.61mm、内径1.25mm、長さ2mm)と、熱収縮チューブ(商品名;ペンニットーAWG−20)と、プレシジョンワイヤ社製のパリレンコーティングされた第3芯材(φ0.52mm)と、2液混合ウレタン接着材と、を用いて作製される。
【0132】
詳説すると、ガイドワイヤ誘導チューブ21の遠位側の端から近位側に向かって70mmの箇所に、そのガイドワイヤ誘導チューブ21と、プッシャワイヤ24の遠位側とが、並行に配置される。そして、ガイドワイヤ誘導チューブとプッシャワイヤ24とが接した状態で、接合チューブ25内へ挿入される。
【0133】
そして、プッシャワイヤ24の遠位側の端と、接合チューブ25の遠位側の端との位置が揃えられる。さらに、接合チューブ25内に、ウレタン接着剤が1滴流し入れられ、1時間放置された後に、熱収縮チューブを用いて、熱溶着される。
【0134】
また、ステント圧迫部材23は、そのステント圧迫部材23の遠位側の端と、接合チューブ25の遠位側の端とが揃えられた後に、両者は接着される。これによりインナーシャフト29(ただし、インナー操作部27を除く)が完成する。
【0135】
以上のアウターシャフト19とインナーシャフト29とであれば、インナーシャフト29の近位端が、アウターシャフト19の遠位側からルーメン10Cに挿入され、さらに進められると、プッシャワイヤ24は、ルーメン10B・10D・10E・10Fに進入し、ガイドワイヤ誘導チューブ21は、ルーメン10Aに進入する。そして、この後、インナーシャフト29の近位側に、SUS304製のインナー操作部27(外径1.61mm、内径0.51mm、長さ300mm)が接着され、自己拡張型ステントを搬送させるステントデリバリーカテーテル59が完成する。
【0136】
なお、ステント39は、デリバリーカテーテル内に縮径させた状態でマウントされる。
【0137】
[比較例1]
この比較例1のステントデリバリーカテーテル159は、実施例1のステントデリバリーカテーテル59と異なり、アウターシャフト119にて、第2チューブ42が含まれない。詳細は、以下の通りである(なお、便宜上、比較例1での部材番号は、実施例1の部材番号と異ならせている)。
【0138】
自己拡張型ステント139は、拡張径8mm、軸方向長さ45mmとして作製される。なお、φ2.2mmのニッケルチタン合金のパイプが、レーザカットされ、φ8mmにまで拡張され、さらに、熱処理を施されることで、ステント139は完成する。
【0139】
第1チューブ141は、外径2.08mm、内径1.78mmとして作製される。作製方法は以下の通りである。
【0140】
日星電気社製の厚み40μmのPTFE被覆線(芯材はφ1.78mm軟銅線)と、幅100μm、厚み25μmのSUS製素線と、厚み50μm、外径2.05mmのPt/Ir製リングマーカ(なお、このマーカは、アクセレント社製の造影マーカで、Pt:Ir=9:1の比率である)と、ダイセルデクサー社製の外径2.23mm、内径2.05mmのナイロン12製外層チューブ(商品名;ダイアミド)と、タイコエレクトロニクス社製の架橋ポリエチレンの熱収縮チューブ(商品名;RNF-100-3/32 )と、が用いられる。
【0141】
そして、PTFE被覆線に、16本のSUS素線が等間隔に配置され、4mm間隔で、ブレード加工されている。さらに、2つのリングマーカが250mm離れて、ブレーディングされた被覆線の外側に、同軸状に配置された後に固定される。
【0142】
次に、YAGレーザにて、SUS素線の端部切断し、端部の鋭利な部分は、電解研磨にて溶解される。外層チューブ270mmは、250mmほどブレード化された被覆線の周囲に配置され、熱収縮チューブを用いて、被覆線に被覆される。なお、10mmリングマーカ両外側に、外層チューブのみが10mm延長する。
【0143】
第3チューブ143(外径1.20mm、内径0.60mm、長さ510mm)は、押し出し成型法により、3層チューブとして作製された。なお、3層における外層は、ダイセルデクサー社製のナイロン12(商品名;ダイアミド)、中間層がLyondelBasel社製の低密度ポリエチレン(商品名;Plexar3080)、内層が日本ポリエチレン社製の高密度ポリエチレン(商品名;ノバテックHB530)である。
【0144】
そして、以上のチューブ141・143と、プレシジョンワイヤ社製のパリレンコーティングされた第1芯材151(φ0.60mm)および第2芯材152(φ0.85mm)と、ペンニットー社製の熱収縮チューブ(商品名;AWG−15E)とを用いて、アウターシャフト119が作製される。
【0145】
詳説すると、第1芯材151において、第3チューブ143が配置される。第3チューブ143を配置した第1芯材151と、この第1芯材151に並列する第2芯材152とを、第1チューブ141の内部に配置させる。なお、第3チューブ143は第1チューブ141の内層140Nと接触し、その第3チューブ143における遠位側の端(遠位端)から10mm、第1チューブ141の外層延長部140TEに接触する。
【0146】
そして、熱収縮チューブ155が、外層延長部140TEを覆うように配置され、熱風溶着機によって熱溶着させられる。すると、遠位チューブ113が200mm、中間チューブ111が10mm、近位チューブ115が590mm、有効長800mmのアウターシャフト119が作製される。なお、アウターシャフト119の近位側の端には、ダイセルデクサー社のナイロン12(商品名;ダイアミド)で形成されたアウター操作部116(外径2.13mm、内径2.05mm)が、熱溶着によって接合され、さらに、アウター操作部116の近位側の端には、ハブ117が、ウレタンによって接着されている。これによりアウターシャフト119が完成する。
【0147】
インナーシャフト129は、マイクロルーメン社製のポリイミドで形成されたガイドワイヤ誘導チューブ121(外径0.73mm、内径0.53mm、長さ200mm)と、ヨコヲ社製のプッシャワイヤ124(φ0.50mm、長さ1000mm、先端0.30mmにテーパー加工)と、アルケマ社製のポリアミドエラストマーで形成された接合チューブ125(外径1.26mm、内径1.05mm、長さ20mm)と、SUS304製のステント圧迫部材123(外径1.61mm、内径1.25mm、長さ2mm)と、熱収縮チューブ(商品名;ペンニットーAWG−20)と、プレシジョンワイヤ社製のパリレンコーティングされた第3芯材(φ0.52mm)と、2液混合ウレタン接着材と、を用いて作製される。
【0148】
詳説すると、ガイドワイヤ誘導チューブ121の遠位側の端から近位側に向かって70mmの箇所に、そのガイドワイヤ誘導チューブ121と、プッシャワイヤ124の遠位側とが、並行に配置される。そして、ガイドワイヤ誘導チューブ121とプッシャワイヤ124とが接した状態で、接合チューブ125内へ挿入される。
【0149】
そして、プッシャワイヤ124の遠位側の端と、接合チューブ125の遠位側の端との位置が揃えられる。さらに、接合チューブ125内に、ウレタン接着剤が1滴流し入れられ、1時間放置された後に、熱収縮チューブを用いて、熱溶着される。
【0150】
また、ステント圧迫部材123は、そのステント圧迫部材123の遠位側の端と、接合チューブ125の遠位側の端とが揃えられた後に、両者は接着される。これによりインナーシャフト129(ただし、インナー操作部127を除く)が完成する。
【0151】
以上のアウターシャフト119とインナーシャフト129であれば、インナーシャフト129の近位端が、アウターシャフト119の遠位側からルーメン10Cに挿入され、さらに進められると、プッシャワイヤ124は、ルーメン110B・110D・110E・110Fに進入されるが、ガイドワイヤ誘導チューブ121は、中間部チューブが10mmであるため、ルーメン110Aに進入しない構造になる。そして、この後、インナーシャフト129の近位側に、SUS304製のインナー操作部127(外径1.61mm、内径0.51mm、長さ300mm)が接着され、自己拡張型ステントを搬送させるステントデリバリーカテーテル159が完成する。
【0152】
なお、ステント139は、デリバリーカテーテル内に縮径させた状態でマウントされる。
【0153】
[評価]
〈評価1〉
上述の実施例1と比較例1とに関して、以下の評価1を実施した。詳説すると、図23に示すように、ガイドワイヤWを挿入したステントデリバリーカテーテル59が、37℃の温水を入れた水槽71内に浸される。そして、ステントデリバリーカテーテル59が温水に浸された状態で、アウターシャフト19が固定され、インナーシャフト29のみが、3分間、例えば、手操作にて回転される(黒色太矢印参照)。その後、ステント39が放出されるか否かの確認が行われた。実施例1のサンプル数と比較例1のサンプル数とは、各々1本である。
【0154】
〈評価1の結果〉
実施例1では、インナーシャフト29は回転せず、そのままステント39が放出された。一方、比較例1では、インナーシャフト129が回転することで、アウターシャフト119の内部で、ガイドワイヤ誘導チューブ121及びプッシャワイヤ124がよじれ、ステント139の放出がされなかった。
【0155】
〈評価2〉
上述の実施例1と比較例1とに関して、以下の評価2を実施した。詳説すると、十分含水させたガイドワイヤと、ガイドワイヤルーメン及びアウターシャフト内を十分含水させたステントデリバリーカテーテルとを用意する。そして、ガイドワイヤの近位側の端に、ガイドワイヤ誘導チューブの遠位端のルーメンがあてがわれ、ステントデリバリーカテーテルは、ガイドワイヤに差し込まれる。ここで、アウターシャフトにおける中間チューブのガイドワイヤ用ポートにまで、ガイドワイヤが進出するか否かの確認が行われた。実施例1のサンプル数と比較例1のサンプル数とは、各々1本であり、各サンプルにて3回評価を行った。
【0156】
〈評価2の結果〉
実施例1では、3回の評価の全てで、ステントデリバリーカテーテル59は、ガイドワイヤWを、中間チューブ11のガイドワイヤ用ポート10APにまで導けた。一方、比較例1では、3回の評価中において1回だけ、ステントデリバリーカテーテル59は、ガイドワイヤWを、中間チューブ11のガイドワイヤ用ポート10APにまで導けた。すなわち、3回の評価において2回は、ガイドワイヤWが、中間チューブ11のガイドワイヤ用ポート10APにまで到達しなかった。
【符号の説明】
【0157】
10 アウターシャフトのルーメン
10A 中間チューブのルーメン
10B 中間チューブのルーメン
10C 遠位チューブのルーメン
10D 近位チューブのルーメン
10E インナー操作部のルーメン
10F ハブのルーメン
11 中間チューブ
13 遠位チューブ
15 近位チューブ
16 インナー操作部
17 ハブ
19 アウターシャフト
21 ガイドワイヤ誘導チューブ
22 先端チップ
23 ステント圧迫部材
24 プッシャワイヤ
25 接合チューブ
27 アウター操作部
29 インナーシャフト
39 ステント
40N 内層
40M 補強層
40T 外層
40TE 外層延長部
41 第1チューブ
42 第2チューブ
42A 第2チューブのルーメン
42B 第2チューブのルーメン
43 第3チューブ
44 第4チューブ
51 第1芯材
52 第2芯材
55 熱収縮チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントを搬送するステントデリバリーカテーテルにおいて、
アウターシャフト、及び、インナーシャフトが含まれ、
上記アウターシャフトは、デュアルルーメンを有し、
上記インナーシャフトは、ガイドワイヤ用誘導チューブ及びプッシャワイヤを並列させて有し、
上記ガイドワイヤ用誘導チューブ及び上記プッシャワイヤは、上記アウターシャフトの上記デュアルルーメンに、分けて挿入されるステントデリバリーカテーテル。
【請求項2】
上記インナーシャフトでは、上記ガイドワイヤーチューブの長手方向の中間に、上記プッシャワイヤがつなげられている請求項1に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項3】
上記プッシャワイヤの横断面形状と、
上記アウターシャフトの上記デュアルルーメンのうち、上記プッシャワイヤを挿入される上記ルーメンの横断面形状と、が相似関係にある請求項1または2に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項4】
上記アウターシャフトには、上記アウターシャフトの操作部が含まれ、上記インナーシャフトには、上記インナーシャフトの操作部が含まれる請求項1〜3のいずれか1項に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項5】
上記アウターシャフトの両側における一方側を遠位側、他方側を近位側とする場合、
上記アウターシャフトにおける遠位側の一部および近位側の一部の少なくとも一方が、金属と樹脂とを含む多層チューブである請求項1〜4のいずれか1項に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項6】
上記ステントが、自己拡張型ステント、または、自己拡張型ステントグラフトである請求項1〜5のいずれか1項に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項7】
ステントデリバリーカテーテルに含まれるアウターシャフトの製造方法において、
第1チューブ、第2チューブ、および第3チューブの順番に並べて、隣同士を接触させる工程と、
接触させる上記チューブ同士を接合させる工程と
が含まれるアウターシャフトの製造方法
【請求項8】
上記アウターシャフトの両側における一方側を遠位側、他方側を近位側とする場合、
上記第1チューブは、内層及び外層を含む多層チューブであり、
上記第1チューブの近位側において、上記外層が上記内層に対して延長されており、
上記第2チューブ及び上記第3チューブの外径は、上記第1チューブの内径よりも小さく、
以下の工程が含まれる請求項7に記載のアウターシャフトの製造方法。
(1)上記第2チューブ及び上記第3チューブを差し込まれた第1芯材において、遠位側に上記第2チューブ、近位側に上記第3チューブが配置され、上記第2チューブの近位側の端と、上記第3チューブの遠位側の端とが接触させられる工程
(2)上記第2チューブ及び上記第3チューブを配置させた上記第1芯材に対して、第2芯材が平行に配置されつつ、上記第1芯材及び上記第2芯材が、上記第1チューブに挿入され、上記第2チューブが、上記第1チューブの内層に接触させられ、上記第3チューブが、上記第1チューブにて延長された外層に接触させられる工程
(3)上記第1チューブ、上記第2チューブ、及び上記第3チューブに重なるように熱収縮チューブが配置される工程
(4)上記熱収縮チューブが熱せられることで、上記第1チューブ、上記第2チューブ、及び上記第3チューブにて接触する上記チューブ同士が溶着させられる工程
【請求項9】
上記アウターシャフトの両側における一方側を遠位側、他方側を近位側とする場合、
上記第1チューブは内層及び外層を含む多層チューブであり、
上記第1チューブの近位側において、上記外層が上記内層に対して延長されており、
上記第2チューブは、2つのルーメンを有し、
上記第2チューブの外径は、第1チューブの内径よりも小さく、
上記第3チューブの外径は、第2チューブのルーメンの少なくとも1つのルーメン径より小さく、
以下の工程が含まれる請求項7に記載のアウターシャフトの製造方法。
(1)上記第2チューブの一方のルーメンに第1芯材、他方のルーメンに第2芯材が挿入される工程
(2)上記第1チューブの近位側に、上記第1芯材及び上記第2芯材を配置した第2チューブが挿入され、上記第2チューブの遠位側が、上記第1チューブの内層に接触させられる工程
(3)上記芯材において、上記第2チューブの近位側の端に、上記第3チューブが挿入させられる、または、上記第2チューブの近位側の端と、上記第3チューブの遠位側の端とが接触させられる工程
(4)上記第1チューブ、上記第2チューブ、及び上記第3チューブにて接触する上記チューブ同士が溶着させられる工程
【請求項10】
上記(4)の工程では、上記接触箇所に熱収縮チューブが重なるように配置させられ、上記熱収縮チューブが熱せられることで、上記チューブ同士が溶着させられる請求項9に記載のアウターシャフトの製造方法。
【請求項11】
第4チューブが、上記第1チューブに被せられ、かつ、上記第1チューブ、上記第2チューブ、および上記第3チューブでの、それらチューブ同士の接触箇所に重なるように配置されて、上記第1チューブに接合される工程、
が含まれる請求項7に記載のアウターシャフトの製造方法。
【請求項12】
上記アウターシャフトの両側における一方側を遠位側、他方側を近位側とする場合、
上記第1チューブは、内層及び外層を含む多層チューブであり、
上記第1チューブの近位側において、上記外層が上記内層に対して延長されており、
上記第2チューブ及び上記第3チューブの外径は、上記第1チューブの内径よりも小さく、
上記第4チューブの内径は、上記第1チューブの外径より大きく、
以下の工程が含まれる請求項11に記載のアウターシャフトの製造方法。
(1)上記第2チューブ及び第3チューブを差し込まれた第1芯材において、遠位側に上記第2チューブ、近位側に上記第3チューブが配置され、上記第2チューブの近位側の端と、上記第3チューブの遠位側の端とが接触させられる工程
(2)上記第2チューブ及び上記第3チューブを配置させた上記第1芯材に対して、第2芯材が平行に配置されつつ、上記第1芯材及び上記第2芯材が、上記第1チューブに挿入され、上記第2チューブが、上記第1チューブの内層に接触させられ、上記第3チューブが、上記第1チューブにて延長された外層に接触させられる工程
(3)上記第4チューブが、上記第1チューブと同軸に配置される工程
(4)上記第1チューブ、上記第2チューブ、上記第3チューブ、及び上記第4チューブに重なるように熱収縮チューブが配置される工程
(5)上記熱収縮チューブが熱せられることで、上記第1チューブ、上記第2チューブ、上記第3チューブ、及び上記第4チューブにて接触する上記チューブ同士が溶着させられる工程
【請求項13】
上記アウターシャフトの両側における一方側を遠位側、他方側を近位側とする場合、
上記第1チューブは内層及び外層を含む多層チューブであり、
上記第1チューブの近位側において、上記外層が上記内層に対して延長されており、
上記第2チューブは、2つのルーメンを有し、
上記第2チューブの外径は、上記第1チューブの内径よりも小さく、
上記第3チューブの外径は、上記第2チューブのルーメンの少なくとも1つのルーメン径より小さく、
上記第4チューブの内径は、上記第1チューブの外径よりも大きく、
以下の工程が含まれる請求項11に記載のアウターシャフトの製造方法。
(1)上記第2チューブの一方のルーメンに第1芯材、他方のルーメンに第2芯材が挿入される工程
(2)上記第1チューブの近位側に、上記第1芯材及び上記第2芯材を配置した上記第2チューブが挿入され、上記第2チューブ遠位側が、上記第1チューブの上記内層に接触させられる工程
(3)上記第1芯材において、上記第2チューブの近位側の端に、上記第3チューブが挿入させられる、または、上記第2チューブの近位側の端と、上記第3チューブの遠位側の端とが接触させられる工程
(4)上記第4チューブが、上記第1チューブと同軸に配置される工程
(5)上記第1チューブ、上記第2チューブ、上記第3チューブ、及び上記第4チューブにて接触する上記チューブ同士が溶着させられる工程
【請求項14】
上記(5)の工程では、上記接触箇所に熱収縮チューブが重なるように配置させられ、上記熱収縮チューブが熱せられることで、上記チューブ同士が溶着させられる請求項13に記載のアウターシャフトの製造方法。
【請求項15】
請求項7〜14のいずれか1項に記載のアウターシャフトの製造方法を含むステントデリバリーカテーテルの製造方法。
【請求項16】
上記ステントデリバリーカテーテルが、自己拡張型ステントまたは自己拡張型ステントグラフトを搬送するステントデリバリーカテーテルである請求項15に記載のステントデリバリーカテーテルの製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2012−55470(P2012−55470A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200830(P2010−200830)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】