説明

ステンレス箔およびその製造方法

【課題】自動車排ガス浄化用触媒担体および触媒コンバータ燃焼ガス排気系の機器、装置に好適で、ロウ付けの際、意図しない箇所で拡散接合しにくいステンレス箔およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%あるいは質量ppmでC:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:13.0〜30.0%、Al:3.0〜10.0%、N:0.10%以下、Ti:0.02%以下、Zr:0.005〜0.20%、REM:0.03〜0.20%、必要に応じて、Hf:0.01〜0.20%、Ca:10ppm〜300ppm、Mg:15ppm〜300ppmの一種または二種以上を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ表面がアルミナを主体とする酸化皮膜で覆われているステンレス箔。上記記載の成分組成を有するステンレス箔を露点−20℃以上の雰囲気で500℃〜1000℃に10〜600秒間加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温酸化性雰囲気下で激しい振動、熱衝撃を受ける自動車排ガス浄化用触媒担体および触媒コンバータ燃焼ガス排気系の機器、装置に好適なステンレス箔に関し、ロウ付けの際、意図しない箇所で拡散接合しにくいものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車排ガス浄化装置用触媒担体(触媒コンバータ)をセラミックス製から金属製ハニカム(例えば、特許文献1)に換えると、触媒コンバータの小型化や、エンジン性能の向上などが可能となるため、近年、金属製ハニカムの適用範囲が増大している。
【0003】
触媒コンバータに用いられる素材は、主に、高温環境における耐酸化性に優れたAl添加系ステンレス鋼で、触媒コンバータのメタル坦体の壁厚を薄くすると、熱容量が減少してエンジン始動から短時間で触媒が活性になり、排気抵抗も小さくなるため、厚みが20〜100μmのステンレス箔として用いられている。
【0004】
一方、自動車排ガス規制は地球環境保護の立場から今後更に強化されることが予想され、ガソリン車などから排出される窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素(HC)を低減させるため、自動車排ガス浄化触媒装置(触媒コンバータ)を燃焼環境に近いエンジン直下位置に設置し、高温の排ガスで触媒反応を起こさせて排ガス中の有害物質を低減させる技術が開発されている。
【0005】
また、燃費向上のため、エンジンの燃焼効率が高められ、排ガス自体の温度も、上昇していることより、触媒コンバータは、エンジンの激しい振動を従来より更に高温の環境でうけるようになり、使用環境は苛酷化する。
【0006】
このような状況に対応するため、種々の特性を有する触媒コンバータ用ステンレス箔が提案されている。特許文献2は、耐高温酸化特性と高温強度に優れる高Al含有フェライト系ステンレス鋼に関し、高温強度に優れる低熱容量、低背圧の素材として、肉厚が40μm未満で、肉厚に対応させてAl含有量、Cr含有量を変化させ、さらにNb,Mo、Ta,Wなどを添加したステンレス箔が開示されている。
【0007】
特許文献3は、耐拡散接合性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼板および製造方法に関し、触媒コンバータを、平板と波板(コルゲート加工をした箔)を重ねて、一定の張力で巻き取り、平板と波板の接点の一部を除いてロウ付け熱処理してハニカム構造とする際、昇温、降温時に発生する熱応力を逃がす際、当該一部の接点が拡散接合しがたいものに関する。
【特許文献1】特開昭56−96726号公報
【特許文献2】特許第3210535号公報
【特許文献3】特開2001−32051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2記載の高Al含有フェライト系ステンレス鋼において、Nbなどは高温での強度を向上させるが、耐酸化性を著しく劣化させ、触媒コンバーターに要求される、高温耐酸化性を満たすことができない。
【0009】
また、特許文献3記載の耐拡散接合性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼板は、熱処理によりAl,Crの窒化物を生成させて、拡散接合を防止するものであるが、鋼板表面に窒化物が生成すると耐酸化性が著しく劣化し、特に1000℃以上における高温耐酸化性を満足できなかった。
【0010】
そこで、本発明は、触媒コンバータを、平板と波板の接点のロウ剤塗布した一部を除いてロウ付け熱処理してハニカム構造とし、昇温、降温時に発生する熱応力を逃がす構造とする際、当該一部のロウ剤を塗布しない接点が拡散接合により接合されることを防止する難拡散接合性ステンレス箔およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、Al含有フェライト系ステンレス鋼板を対象に、拡散接合性、ロウ剤を塗布した場合のロウ付け接合性、および耐酸化性に及ぼす、鋼板の表面状態と成分元素の影響を詳細に検討し、特定成分とした厚さ20〜120μm程度の金属箔の表面にアルミナ主体の酸化皮膜を生成させることにより、ロウ剤を塗布した場合のロウ付け接合性、耐酸化性を落とさず、意図しない箇所で拡散接合性しにくい、難拡散接合性の金属箔が得られることを知見した。
【0012】
すなわち、金属面同士が接触し、高温で熱処理された場合は金属表面同士間で、元素の拡散が起こり、容易に接合するが、初期の状態で、片方、もしくは両方の面に酸化皮膜が適量生成している場合、元素同士の拡散が起こらず、拡散接合が抑制される。
【0013】
一般にFe−Cr−Al系合金を高温に保持して長時間酸化した場合、AlはFe、Crより優先酸化されて合金表面に保護性の高いAl皮膜を生成する。
【0014】
しかし、初期の段階、酸化皮膜がある程度の厚みに生成する前の状態において、酸素ポテンシャルが、これら元素の平行解離圧よりも高い場合には、酸化の速度から、むしろFeや特にCr、Ti系の酸化物が生成する。
【0015】
そして、Cr系、Al系、Fe系の酸化物がある程度生成した後では、地鉄と酸化物界面の酸素ポテンシャルが下がりCr、Fe、Tiが酸化されなくなり、Alのみが酸化されてAl皮膜のみが生成するようになる。
【0016】
これらのFe、Cr、Tiの酸化物が最外層に生成すると、拡散接合性は低下するが、同時にロウ付け性も著しく悪化する。 したがって、ロウ付けを意図した部分も、ロウ付けが阻害される。
【0017】
しかし、本発明者らが、酸化皮膜の性状とロウ付け性、拡散接合性を詳細に検討した結果、特定厚み範囲内でのAl主体の酸化皮膜をロウ付け前に生成させると、ロウ付け性を劣化させることなく、拡散接合性を低下させることが出来ることを知見した。本発明は得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.質量%で
Cr:13.0〜30.0%、
Al:3.0〜10.0%、
Zr:0.005〜0.20%、
REM:0.03〜0.20%、
を含み、アルミナを主体とする酸化皮膜で覆われていることを特徴とするステンレス箔。
2.質量%で
C:0.05%以下、
Si:2.0%以下、
Mn:1.0%以下、
Cr:13.0〜30.0%、
Al:3.0〜10.0%、
N:0.10%以下、
Ti:0.02%以下、
Zr:0.005〜0.20%、
REM:0.03〜0.20%、
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ表面がアルミナを主体とする酸化皮膜で覆われていることを特徴とするステンレス箔。
3.成分組成に、さらに質量%あるいは質量ppmで、
Hf:0.01〜0.20%
Ca:10ppm〜300ppm
Mg:15ppm〜300ppm
の一種または二種以上を含有することを特徴とする1または2記載のステンレス箔。
4.表面を覆うアルミナ主体の酸化皮膜の厚みが20nm〜200nmであることを特徴とする1乃至3の何れか一つに記載のステンレス箔。
5.1乃至3の何れか一つに記載の成分組成を有するステンレス箔を露点−20℃以上の雰囲気で500℃〜1000℃に10〜600秒間加熱することを特徴とするステンレス箔の製造方法。
6.露点−20℃以上の雰囲気での加熱の前に、更に、露点−30℃以下の雰囲気で700℃〜1000℃に30秒以上加熱することを特徴とする5記載のステンレス箔の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るステンレス箔は、鋼中のREM,Zr,Tiなどの含有量を適正範囲に制御し、さらに表層をAl主体の酸化皮膜で覆うことにより、ロウ付け性、耐酸化性を劣化させずに、拡散接合性のみを低下させるので、ロウ付け熱処理により、高温での耐久性に優れるハニカム構造触媒コンバータが製造可能で、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明鋼の成分組成、表面状態の作用および限定理由を述べる。
[成分組成]説明において%は質量%とする。
【0020】

Cは過剰になると高温強度を劣化させ、耐酸化性および靭性も低下させるので、極力低減させることが望ましく、0.05%以下とする。好ましくは0.02%以下とする。
【0021】
Si
SiはAl同様、耐酸化性を向上させる元素であるが多量に含有すると靭性を低下させ、製造性を低下させるので2.0%以下とする。好ましくは1.0%以下とする。
【0022】
Mn
MnはAl脱酸の予備脱酸剤として添加された場合、鋼中に残存することがあるが、耐酸化性および耐食性を劣化させるので少ない方がよい。工業的および経済的な溶製技術を考慮して1.0%以下とする。好ましくは、0.5%以下とする。
【0023】
Cr
Crは高温の排気ガスが多量に流れる触媒コンバータにおいて、高温強度を確保するために必要不可欠な元素である。13.0%未満では、800℃以上の温度域において触媒コンバータ用として十分な高温強度が得られない。
【0024】
また、鋼中Cr量が少ないと、酸化進行時にAl等のフェライト相形成元素が消費されて、組織の一部に高温でオーステナイト組織が生成し、形状変化が大きくなるため、13.0%以上とする。
【0025】
一方、30.0%を超えると靭性が低下し冷間圧延が困難となるため、13.0%以上30.0%以下,好ましくは、15.0%以上25.0%以下とする。
【0026】

NはCと同様、過剰に含有されると靭性を低下させ、また、冷間圧延性、加工性を低下させるため、0.10%以下、好ましくは、0.05%以下とする。
【0027】
Ti
Tiは鋼中のC、Nと結合し、高温強度を上昇させ、クリープ特性を改善する。同時に冷間圧延性、熱間圧延性、さらに靭性を向上させる元素であり、特にAl含有量の高い鋼には積極的に添加される。
【0028】
一方、Tiは酸化され易く、後述する予備処理においてTi酸化物が初期酸化皮膜のAl皮膜中に多量に混入すると、ロウ付け性が著しく悪くなる。 また、Alが枯渇した後の酸化の段階において酸化物として生成し、耐酸化性を劣化させるため、ロウ付け接合による触媒コンバータ用鋼では、経済性を損なわない範囲で極限まで減らすことが重要である。
【0029】
鋼中Ti量が0.02%を超えると、アルミナ皮膜中に混入するTiの影響が無視できなくなることから、0.02%以下、好ましくは、0.01%以下とする。
【0030】
Zr
Zrも添加すると鋼中のC、Nと結合し、Tiと同様に高温強度を上昇させ、クリープ特性を改善する。同時に冷間圧延性、熱間圧延性、さらに靭性を向上させる元素であり、特にAl含有量の高い鋼には積極的に添加される。
【0031】
また、Zrは、初期酸化皮膜中に生成するアルミナ皮膜中において、ロウ付け性を著しく悪化させるCr、Fe、Tiの酸化物がアルミナ中に混入するのを防いでロウ付け性を向上させるため0.005%以上添加する。
【0032】
一方、鋼中Zr量が過剰となると、鉄などと金属間化合物をつくり、靭性を低下させ、生産性を劣化させるため、0.20%以下、好ましくは0.02〜0.06%以下とする。
なお、ロウ付け性に及ぼす鋼中のZrとTi添加の作用効果の違いの原因は必ずしも明らかではないが、酸化物の生成自由エネルギーの違いによるものと推察される。
【0033】
REM
本発明でREMは、La、Ce、Nd、Smその他原子番号51から71までの15種の金属元素とする。一般にREMはAl皮膜の密着性を改善し、繰り返し酸化された場合のAl皮膜の耐剥離性向上に極めて顕著な効果を有する。
【0034】
本発明鋼が想定する用途においては、後述する担持の前処理として、拡散接合性を支配する表層にAl皮膜をある程度生成させることが重要で、生成したAl皮膜を剥離させないように、REMは必須添加とする。
【0035】
0.03%より少ないと、鋼板表層において一部でAl皮膜の剥離が起こり、拡散接合性ばかりか、耐酸化性にも悪影響を与えるため、0.03%以上とする。
【0036】
一方、REMが過剰に添加されると、鋼の靭性を低下させ、製造性を劣化させるため、 0.20%以下とし、好ましくは0.05%以上0.10%以下とする。
【0037】
以上が本発明の基本成分組成で、更に、耐酸化性を向上させる場合、Hf,Ca,Mgの一種または二種以上を添加する。
【0038】
Hf
Hfは、特にAlの酸化消耗を抑制し、Al皮膜を形成する時間を延ばし、合金の耐酸化性を向上させる。この効果は0.01%以上の含有で顕著となる。
【0039】
一方、0.20%を超えるとAl皮膜中にHfOとして混入して酸素の拡散経路となってAlの消耗を速め、また、Feと金属間化合物を作り靭性を劣化させるため、添加する場合は0.01%以上0.20%以下、好ましくは製造性を考慮して0.01%以上0.10%以下とする。
【0040】
Ca、Mg
Ca、Mgは、耐酸化性に理想的なAl被膜の生成を助長する働きがあり、この効果はCaは10ppm以上、Mgは15ppm以上で顕著となる。しかし過剰に添加すると靭性が悪化し、耐酸化性も悪化させるため、Ca、Mgを添加する場合は、Caは10ppm以上、300ppm以下、好ましくは20ppm以上、70ppm以下とする。
【0041】
Mgは15ppm以上、300ppm以下、好ましくは20ppm以上、100ppm以下とする。
[鋼板表面のAl主体皮膜]
本発明鋼では、Al主体の酸化皮膜を地鉄表層に20nm以上、200nm以下の厚みで生成させる。Al主体の酸化皮膜とは薄膜X線回折でAl単独または、Alおよび(Fe,Cr)が同定される皮膜を指す。
【0042】
ロウ付け接合のための加熱の初期に生成させておくAl皮膜の厚が20nmより小さいと、金属下地の元素の拡散を完全には防ぐことが出来ず、拡散接合を十分抑制することができない。
【0043】
一方、Al皮膜の厚が200nmより大きくなると、ロウ付け性を著しく劣化させるため、ステンレス箔表面のAl主体の酸化皮膜は20nm以上、200nm以下、好ましくは、50nm以上、150nm以下とする。
【0044】
このようなステンレス箔表面の酸化皮膜は、ロウ付け接合の前に、露点−20℃以上の雰囲気で500℃〜1000℃の温度で、10〜600秒の熱処理を行なうことで得られる。
【0045】
また、当該処理の前に低酸素ポテンシャルで熱処理することにより、より純粋なAl主体の酸化皮膜を得ることが可能で、ロウ付け性への影響を少なくし、強固な初期皮膜をつけたことによる酸化特性の向上も得られる。
【0046】
低酸素ポテンシャルでの熱処理として、露点−30℃以下の雰囲気、700℃〜1000℃の温度で、30秒以上の熱処理を行うと、より純粋なAl主体の酸化皮膜を得ることができる。以下、実施例を用いて本発明の作用効果を具体的に示す。
【実施例】
【0047】
表1に供試材の化学組成および得られた箔の厚みを示す。これらの素材は真空溶解によって溶製され、1200℃に加熱後1200〜900℃の温度域で板厚4mmまでの熱間圧延を行った。その後、続いて大気中、1000℃で焼鈍、酸洗を行い、冷間圧延を行なって板厚1.0mmtの冷延鋼板とした。
【0048】
得られた鋼板を、大気中で、950℃×1分の焼鈍をした後、酸洗を行い、冷間圧延を行って厚さ50μmとした後、100mm幅でスリットし、箔(幅100mmのラボコイル)とした。
【0049】
次に、これらの箔を、平板(平箔)用と波板(波箔)用(コルゲート加工用)にわけ、平板は全量、波板(コルゲート加工用)は一部、種々の条件で熱処理を行い、Al主体の酸化皮膜を生成させた後、オージェ分析、および薄膜X線でその構造、厚みなどを調査した。表2に熱処理条件、酸化皮膜を生成させる条件を示す。
【0050】
作製した波板用ステンレス箔を幅70mmにカットし、歯車状の波板ロールで、図1(a)に示すような形状の波高さ0.95mm,ピッチ3.0mmのコルゲート加工を施した。
【0051】
その後、幅70mmにそろえた平箔と波箔を重ね合わせて、端部を図1(b)に示すようにスポット溶接でとめ、ハニカム状にまき、最外層の平板のみ3回余分にまき、最外層の平箔同士のみをスポット溶接で固定してハニカム構造試験体を製作した。巻取り時の平箔のバックテンションは、4kgf/mm(39MPa)とした。
【0052】
図2(a)にハニカム構造試験体3の製造方法を、図2(b)に得られたハニカム構造試験体3の寸法(外径:40mm(中空軸径:5mm)、全長70mm)、外観を模式的に示す。
【0053】
作成したハニカム構造試験体3は、1200℃の真空炉で真空度5×10−4Torr(6.7×10−2Pa)で1時間保持した後、スポット溶接部をはずし、波箔と平箔の接触部の接合状態を観察し、波箔と平箔の全接触部分に対して、(一部でも)拡散接合している箇所の割合を調査し、拡散接合性を評価した。
【0054】
また、同様にして作成した平箔と波箔のステンレス箔を重ね合わせて、波箔と平箔の接触面全てにロウ剤(BNi−5:ASTM)を塗布し、図2と同様の形状のハニカム状にまき、最外層の平板のみ3回余分にまき、最外層の平箔同士のみをスポット溶接で固定した。巻取り時の平箔のバックテンションは、4kgf/mm(39MPa)とした。
【0055】
作成したハニカム構造試験体3は、1200℃の真空炉で真空度5×10−4Torr(6.7×10−2Pa)で1時間保持した後、スポット溶接部をはずし、波箔と平箔の接触部の接合状態を観察し、波箔と平箔の全接触面に対して、ロウ付け接合している面の割合を調査し、ロウ付け性を評価した。
【0056】
一方、平箔は50mm×50mmサイズのクーポン試験片にカットし、大気中、1100℃、200時間後の酸化増量を計測し、酸化特性を評価した。これらの試験結果を表3に示す。
【0057】
No.1〜18は本発明例で、本発明範囲内の成分で、本発明範囲内のAl主体の皮膜をつけたステンレス箔では、ロウ付け性、耐食性を劣化させることなく、拡散接合性を低下させるが可能である。
【0058】
一方、N0.19〜25は比較例で、拡散接合性に劣るものは、ロウ付け性が劣り(No.19〜21、24、25)、ロウ付け性に優れるものは、拡散接合性を低下させることができなかった(No.22,23)。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】波板断面の模式図。
【図2】(a)はハニカム構造試験体の製造方法、(b)はハニカム構造試験体の寸法(外径:40mm(中空軸径:5mm)、全長70mm)、外観を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0063】
1 波板
2 平板
3 ハニカム構造試験体
4 スポット溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で
Cr:13.0〜30.0%、
Al:3.0〜10.0%、
Zr:0.005〜0.20%、
REM:0.03〜0.20%、
を含み、アルミナを主体とする酸化皮膜で覆われていることを特徴とするステンレス箔。
【請求項2】
質量%で
C:0.05%以下、
Si:2.0%以下、
Mn:1.0%以下、
Cr:13.0〜30.0%、
Al:3.0〜10.0%、
N:0.10%以下、
Ti:0.02%以下、
Zr:0.005〜0.20%、
REM:0.03〜0.20%、
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ表面がアルミナを主体とする酸化皮膜で覆われていることを特徴とするステンレス箔。
【請求項3】
成分組成に、さらに質量%あるいは質量ppmで、
Hf:0.01〜0.20%
Ca:10ppm〜300ppm
Mg:15ppm〜300ppm
の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1または2記載のステンレス箔。
【請求項4】
表面を覆うアルミナ主体の酸化皮膜の厚みが20nm〜200nmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載のステンレス箔。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一つに記載の成分組成を有するステンレス箔を露点−20℃以上の雰囲気で500℃〜1000℃に10〜600秒間加熱することを特徴とするステンレス箔の製造方法。
【請求項6】
露点−20℃以上の雰囲気での加熱の前に、更に、露点−30℃以下の雰囲気で700℃〜1000℃に30秒以上加熱することを特徴とする請求項5記載のステンレス箔の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−32524(P2011−32524A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179174(P2009−179174)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】