ステンレス鋼の電気防食方法及び装置
【課題】海洋環境や汽水など、塩化物イオンを多く含む環境であっても、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食する方法を提供する。
【解決手段】塩化物イオンを含む水溶液10中で、防食対象のステンレス鋼(例えばフェライト系ステンレス鋼、SUS304系ステンレス鋼、又はマルテンサイト系ステンレス鋼)12の電位を−0.05〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に外部電源(18)方式で保持する。ここで、ステンレス鋼12の流出電流の無い範囲で交流を重畳させる。
【解決手段】塩化物イオンを含む水溶液10中で、防食対象のステンレス鋼(例えばフェライト系ステンレス鋼、SUS304系ステンレス鋼、又はマルテンサイト系ステンレス鋼)12の電位を−0.05〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に外部電源(18)方式で保持する。ここで、ステンレス鋼12の流出電流の無い範囲で交流を重畳させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼の電気防食方法及び装置に係り、特に、海洋環境や汽水などで用いられるステンレス製品に適用するのに好適な、塩化物イオンを含む水溶液中で、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することが可能な、ステンレス鋼の電気防食方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海洋環境や汽水など塩化物イオンを多く含む環境では、耐孔食性指標PI(Pitting Index)値(耐食性に寄与するクロム、モリブデン、窒素の含有量(wt%)に係数を乗じて合計した値、例えば、PI=Cr+3.3Mo+16N)が40未満の汎用ステンレス鋼は、すき間腐食が発生する。そこで、PI値が40以上の耐海水性ステンレス鋼が用いられている。
【0003】
電気防食の方式には、金属のイオン化傾向の大小を利用して、図1に例示する如く、アルミニウム合金や亜鉛などの、鉄よりイオン化傾向の高い金属でなる犠牲陽極14を、防食対象鋼材12の海水10に触れる部位に溶接等により電気的に接続して電池を完成させ、犠牲陽極14と鋼材12間の電位差により発生する電流を、防食電流として、鉄がイオン化(腐食)するのに代わって、犠牲陽極14の金属がイオン化することにより、鋼材12を防食状態に保つ流電陽極法と、図2に例示する如く、陽極(対極とも称する)16となる不溶性電極を海水10中に浸し、外部(直流)電源18を介して防食対象鋼材12と電気的に接続して、鋼材12が防食電位に保たれるように外部電源18により強制的に電流を流す外部電源法がある。
【0004】
流電陽極法は、アルミニウム合金や亜鉛などの犠牲陽極14を、設置するだけで防食できるため、外部電源法のように電源の確保が必要でなく、また電源のメンテナンスなども不必要であるため、コストが安価である。そのため、流電陽極法は海洋鋼構造物に広く用いられていた。
【0005】
例えばアルミニウム合金陽極の自然浸漬電位はおよそ−1.1V(vs.Ag/AgCl)、亜鉛陽極の自然浸漬電位はおよそ−1.0V(vs.Ag/AgCl)である。
【0006】
カソード反応の起こる金属表面では溶存酸素の還元反応が起こるため、金属表面は水酸化物イオンが生成して高pH環境となる。海水中にはカルシウムイオンやマグネシウムイオン、炭酸イオンなどが含まれるため、高pH環境で溶解度の低下する炭酸カルシウムや水酸化マグネシウムが沈殿し、防食対象となる金属表面にエレクトロコーティングと呼ばれる電着物が付着する。また、アルミニウム合金や亜鉛が金属イオンとなって溶解し、閉鎖空間では海水中の水酸化物イオンと結合して、これらの水酸化物も沈殿を生じる。
【0007】
エレクトロコーティングが付着すると、防食電流は低減するため、従来はエレクトロコーティングを積極的に付着させることが行われていた(特許文献1参照)。
【0008】
海洋鋼構造物は、ほとんどの部材を炭素鋼で製作し、潮の干満により周期的な浸水と露出を繰り返す干満帯など腐食の激しい一部に耐食性の高い耐海水性ステンレス鋼を用いていた。炭素鋼を防食するため、電気的に接続しているステンレス鋼も炭素鋼と同じ電位まで卑化し、エレクトロコーティングが付着していた。
【0009】
アルミニウム合金や亜鉛などの犠牲陽極を用いると、炭素鋼の腐食を停止させるために必要な防食電位である−0.77V(vs.Ag/AgCl)よりも卑な電位となり、炭素鋼とステンレス鋼を防食することが可能であり、広く用いられていた。海洋鋼構造物では、これらの金属の水酸化物が沈殿しても、フジツボやカキ、ホヤなどの海洋生物が付着するため、エレクトロコーティングは外観では判別し難く大きな問題になることは無かった。
【0010】
しかし、汽水部では海洋生物の付着が少なく、水門などに付着したエレクトロコーティングが表面に露出することがあった。また、メッシュや網、フィルター、細管などには、これらの水酸化物が沈殿したり、エレクトロコーティングと一緒に付着することがあった。
【0011】
代表的な汎用ステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼とフェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、二相系ステンレス鋼がある。オーステナイト系ステンレス鋼にはSUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS317、SUS317L、SUS321、SUS310S、SUS347、フェライト系ステンレス鋼にはSUS430、SUS444、SUS445J1、SUS443J1、二相系ステンレス鋼にはSUS329J4L、SUS329J3L、マルテンサイト系ステンレス鋼にはSUS420J2などがある。これらはクロムやニッケル、モリブデン、窒素を多く含む耐海水性ステンレス鋼よりも安価であり、また加工も容易である。そのため、汎用ステンレス鋼製メッシュや網、フィルター、細管などを海水中や汽水中で使用するニーズが高い。ここで、メッシュは、ステンレス線を組み、水中のごみを除去するのに用いられる。網は海水取水管の前に取り付け、くらげなどの侵入を防止するのに用いられる。フィルターは、パンチングメタルなどを用いて、水中のごみを除去するのに用いられる。細管は、熱交換器などに用いられる。
【0012】
正常時には外部電源方式により、停電時には犠牲陽極方式による防食を行うステンレス鋼熱交換器の防食方法が特許文献2に記載されており、外部電源による電位の設定は−0.7〜−1.0V(vs.SCE)と記載されている。
【0013】
又、酸化性の金属イオンあるいは、重金属やその化合物を含有する硝酸溶液中で、ステンレス鋼に外部電源方式で電気防食する方法が特許文献3に記載されており、電位の範囲が−0.8〜−1.0V(vs.Ag/AgCl)と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平11−323486号公報(段落0008〜0009)
【特許文献2】特開平4−247887号公報
【特許文献3】特開昭62−278286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献2に記載された範囲では、まだエレクトロコーティングの付着の防止が十分でなかった。また、特許文献3では、エレクトロコーティングの付着について考慮されていなかった。従って、通常の電気防食をした水門、ステンレスを被覆した杭や鋼矢板にエレクトロコーティングが付着して表面が汚れたり、ステンレス鋼製メッシュや網、フィルター、細管などに、エレクトロコーティングや金属水酸化物が付着することで、これらが閉塞する問題があった。
【0016】
又、海水中には炭素鋼の防食のため、脱気したり、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムを添加することがある。従って、添加した亜硫酸ナトリウムやチオ硫酸ナトリウムの酸化により生じた硫酸イオンを含むことがある。また、海水中では殺菌のため次亜塩素酸ナトリウムが添加されることがある。しかし、従来はこれらについても考慮されていなかった。
【0017】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、海洋環境や汽水など、塩化物イオンを多く含む環境であっても、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、塩化物イオンを含む水溶液中で、防食対象のステンレス鋼の電位を−0.05〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に外部電源方式で保持することにより、前記課題を解決したものである。
【0019】
本発明は、又、塩化物イオンを含む水溶液中に浸漬される陽極と、防食対象のステンレス鋼の電位を−0.05〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に保持する外部電源と、を備えたことを特徴とするステンレス鋼の電気防食装置を提供するものである。
【0020】
ここで、ステンレス鋼の流出電流の無い範囲で交流を重畳させることができる。
【0021】
又、塩化物イオンを含む水溶液中で、フェライト系ステンレス鋼、SUS304系ステンレス鋼、又はマルテンサイト系ステンレス鋼の電位を−0.35〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に外部電源方式で保持することで、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することができる。
【0022】
又、前記塩化物イオンを含む水溶液が次亜塩素酸ナトリウムを含む場合は、前記ステンレス鋼の電位を−0.50〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に保持することができる。
【0023】
又、前記ステンレス鋼のPI値を40未満とすることができる。
【0024】
又、前記塩化物イオンを含む水溶液は、硫酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムを含むことができる。
【0025】
又、前記塩化物イオンを含む水溶液は、脱気されていることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、海洋環境や汽水など、塩化物イオンを多く含む環境であっても、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することが可能になる。
【0027】
また、フェライト系や二相系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼は、アルミニウム合金陽極で防食すると水素を吸蔵して水素脆化が発生することがあるが、このフェライト系や二相系ステンレス鋼の水素脆化も電位制御により防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】流電陽極方式の電気防食の概念図
【図2】外部電源方式の電気防食の概念図
【図3】本発明に係るステンレス鋼の電気防食装置の実施形態を示す図
【図4】実施例の試験に用いた装置の構成図
【図5】海水における保持電位と付着量の関係の例を示す図
【図6】海水における保持電位と付着量の関係の他の例を示す図
【図7】次亜塩素酸ナトリウムで脱気した海水における保持電位と付着量の関係の例を示す図
【図8】窒素で脱気した海水における保持電位と付着量の関係の例を示す図
【図9】亜硫酸ナトリウムで脱気した海水における保持電位と付着量の関係の例を示す図
【図10】チオ硫酸ナトリウムで脱気した海水における保持電位と付着量の関係の例を示す図
【図11】硫酸ナトリウムを添加した海水における保持電位と付着量の関係の例を示す図
【図12】比較例の試験に用いた装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0030】
本発明を実施するための電気防食装置の実施形態は、図3に示す如く、塩化物イオンを含む水溶液10中に浸漬される陽極(対極とも称する)16と、防食対象のステンレス鋼(鋼材)12の電位を−0.30〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に保持する外部電源18と、基準となる照合電極(参照電極又は基準電極とも称する)20と、該照合電極20の状態に合わせて前記外部電源18を制御するための制御装置22と、を備えている。
【0031】
前記陽極16の材料としては、珪素鋳鉄や磁性酸化鉄(Fe3O4)、鋳鉄、炭素鋼、鉛、鉛合金、銀、銀合金、白金、白金メッキチタン、黒鉛、MMO(Mix Metal Oxide)などがある。これらの電極は、アルミニウム合金や亜鉛を用いた犠牲陽極と異なり、金属イオンの溶出が少なく、水酸化物の沈殿も生じにくいという特徴があり、防食対象となる金属表面に沈殿が生じにくいという特徴がある。
【0032】
外部電源方式では電位管理を行うことができる。なお、(流電陽極から出る生成物が問題にならない程度の範囲で)構造物の一部を外部電源方式、残りを流電陽極方式とすることも可能である。
【0033】
外部電源18を用いた場合、照合電極20により電位をフィードバック信号とし、制御装置22により陽極16から出る出力の制御を行う。なお、この電位制御は経年的な被覆の剥離による防食電流の増加や、溶存酸素の増加や水温上昇に伴う防食電流の急激な変化にも対応できる。
【0034】
照合電極20としては、Ag/AgCl電極や飽和カロメル電極(SCE)、海水/塩化銀電極、亜鉛などが用いられる。
【0035】
電気防食を効率よく行うためには、電気防食の対象となるステンレス鋼部材以外を塗装したり、ステンレス鋼部材とその他の金属部材を絶縁する。これらの措置によりステンレス鋼部材に集中して電気が流れるため、効率よく電気防食ができる。
【0036】
また、小さな円形の陽極を用いると、その周囲のみが電気防食されるものの、遠方には電気が到達せずステンレス鋼が腐食することがあった。円筒形など長細い部材に対しては、白金めっきチタン製ワイヤーや棒状のMMO電極を用い、大面積には白金めっきチタン製ワイヤーや棒状のMMO電極をメッシュ状にした電極を用いると、陽極コストを低減して、大面積を防食することができる。
【0037】
(実施例1)
図4に示す如く、防食対象となるステンレス鋼の試験片30には、SUS329J4Lステンレス鋼製の間隔0.5mmの50×50mmの大きさのメッシュを用い、水溶液10として横浜市鶴見区沖で採取した海水を大気開放で用いた。陽極16には10×10mmの白金めっきチタンを用い、室温で14日間実験を行った。電位の制御はポテンショスタット(北斗電工製HA−151A)24を用いた。照合電極20にはAg/AgCl電極を用いた。
実施例1として、ステンレス鋼の電位を−0.05〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。比較例1として電位を貴側の−0.00〜−0.15V(vs.Ag/AgCl)に保持した。また、電位を卑側の−0.70〜−1.00V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。
【0038】
実験終了後、付着物を機械的に除去し、その重量を測定した。結果を図5に示す。
【0039】
図5から明らかなように、本発明に係る実施例1の保持電位−0.05〜−0.65Vの範囲では、腐食が発生せず、付着量も少ないことが確認できた。
【0040】
(実施例2)
実施例2として、SUS329J4Lステンレス鋼の電位を−0.50V(vs.Ag/AgCl)に保持し、実効値50mVの交流を流した。実験終了後、付着物を機械的に除去し、その重量を測定した。本発明に係る実施例2のカソード電流に交流を重畳してもステンレス鋼の電流、腐食が発生せず、付着量も少ないことが確認できた。
【0041】
(実施例3)
実施例3として、SUS304ステンレス鋼の電位を−0.35〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。比較例3として電位を貴側の−0.20〜−0.30V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。また、電位を卑側の−0.70〜−1.00V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。
【0042】
実験終了後、付着物を機械的に除去し、その重量を測定した。結果を図6に示す。
【0043】
図6から明らかなように、本発明に係る実施例3の保持電位−0.35〜−0.65Vの範囲では、腐食が発生せず、付着量も少ないことが確認できた。
【0044】
(実施例4)
水溶液10として次亜塩素酸ナトリウムを100ppm添加した溶液を用いた。
【0045】
実施例4として、ステンレス鋼の試験片30の電位を−0.50〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。比較例4として試験片30の電位を貴側の−0.20〜−0.45V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。また、試験片30の電位を卑側の−0.70〜−1.00V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。
【0046】
実験終了後、付着物を機械的に除去し、その重量を測定した。結果を図7に示す。
【0047】
図7から明らかなように、本発明に係る実施例4の保持電位−0.50〜−0.65Vの範囲では、腐食が発生せず、付着量も少ないことが確認できた。
(実施例5〜8)
水溶液10として窒素で暴気して脱気した海水(実施例5)、亜硫酸ナトリウムを500ppm添加した溶液(実施例6)、チオ硫酸ナトリウムを500ppm添加した溶液(実施例7)、硫酸ナトリウムを500ppm添加した溶液(実施例8)を用いた。
【0048】
実施例5〜8として、ステンレス鋼の試験片30の電位を−0.35〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。比較例5〜8として試験片30の電位を貴側の−0.20〜−0.30V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。また、試験片30の電位を卑側の−0.70〜−1.00V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。
【0049】
実験終了後、付着物を機械的に除去し、その重量を測定した。結果を図8〜図11に示す。
【0050】
図8〜図11から明らかなように、本発明に係る実施例5〜8の保持電位−0.35〜−0.65Vの範囲では、腐食が発生せず、付着量も少ないことが確認できた。
【0051】
(比較例)
比較例として、図12に示す如く、犠牲陽極14を用いた。犠牲陽極14として、一般的に海水中の電気防食に使用されているアルミニウム合金陽極と亜鉛、そして電位を一般的な犠牲陽極よりも貴な炭素鋼(SS400)を用いた。水溶液10は海水を大気開放状態で用いた。
【0052】
アルミニウム合金陽極と亜鉛は白色の付着物、炭素鋼は付着物が無いものの、一般的にさびと呼ばれる茶褐色の沈殿物が発生した。
【0053】
実験終了後、沈殿物の重量を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
なお、実施例では、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムなどナトリウム塩を用いたが、ナトリウム塩以外にカリウムなどの塩を用いても同様の効果がある。
【符号の説明】
【0056】
10…水溶液
12…(ステンレス)鋼材
16…陽極
18…外部(直流)電源
20…照合電極
22…制御装置
24…ポテンショスタット
30…試験片
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼の電気防食方法及び装置に係り、特に、海洋環境や汽水などで用いられるステンレス製品に適用するのに好適な、塩化物イオンを含む水溶液中で、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することが可能な、ステンレス鋼の電気防食方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海洋環境や汽水など塩化物イオンを多く含む環境では、耐孔食性指標PI(Pitting Index)値(耐食性に寄与するクロム、モリブデン、窒素の含有量(wt%)に係数を乗じて合計した値、例えば、PI=Cr+3.3Mo+16N)が40未満の汎用ステンレス鋼は、すき間腐食が発生する。そこで、PI値が40以上の耐海水性ステンレス鋼が用いられている。
【0003】
電気防食の方式には、金属のイオン化傾向の大小を利用して、図1に例示する如く、アルミニウム合金や亜鉛などの、鉄よりイオン化傾向の高い金属でなる犠牲陽極14を、防食対象鋼材12の海水10に触れる部位に溶接等により電気的に接続して電池を完成させ、犠牲陽極14と鋼材12間の電位差により発生する電流を、防食電流として、鉄がイオン化(腐食)するのに代わって、犠牲陽極14の金属がイオン化することにより、鋼材12を防食状態に保つ流電陽極法と、図2に例示する如く、陽極(対極とも称する)16となる不溶性電極を海水10中に浸し、外部(直流)電源18を介して防食対象鋼材12と電気的に接続して、鋼材12が防食電位に保たれるように外部電源18により強制的に電流を流す外部電源法がある。
【0004】
流電陽極法は、アルミニウム合金や亜鉛などの犠牲陽極14を、設置するだけで防食できるため、外部電源法のように電源の確保が必要でなく、また電源のメンテナンスなども不必要であるため、コストが安価である。そのため、流電陽極法は海洋鋼構造物に広く用いられていた。
【0005】
例えばアルミニウム合金陽極の自然浸漬電位はおよそ−1.1V(vs.Ag/AgCl)、亜鉛陽極の自然浸漬電位はおよそ−1.0V(vs.Ag/AgCl)である。
【0006】
カソード反応の起こる金属表面では溶存酸素の還元反応が起こるため、金属表面は水酸化物イオンが生成して高pH環境となる。海水中にはカルシウムイオンやマグネシウムイオン、炭酸イオンなどが含まれるため、高pH環境で溶解度の低下する炭酸カルシウムや水酸化マグネシウムが沈殿し、防食対象となる金属表面にエレクトロコーティングと呼ばれる電着物が付着する。また、アルミニウム合金や亜鉛が金属イオンとなって溶解し、閉鎖空間では海水中の水酸化物イオンと結合して、これらの水酸化物も沈殿を生じる。
【0007】
エレクトロコーティングが付着すると、防食電流は低減するため、従来はエレクトロコーティングを積極的に付着させることが行われていた(特許文献1参照)。
【0008】
海洋鋼構造物は、ほとんどの部材を炭素鋼で製作し、潮の干満により周期的な浸水と露出を繰り返す干満帯など腐食の激しい一部に耐食性の高い耐海水性ステンレス鋼を用いていた。炭素鋼を防食するため、電気的に接続しているステンレス鋼も炭素鋼と同じ電位まで卑化し、エレクトロコーティングが付着していた。
【0009】
アルミニウム合金や亜鉛などの犠牲陽極を用いると、炭素鋼の腐食を停止させるために必要な防食電位である−0.77V(vs.Ag/AgCl)よりも卑な電位となり、炭素鋼とステンレス鋼を防食することが可能であり、広く用いられていた。海洋鋼構造物では、これらの金属の水酸化物が沈殿しても、フジツボやカキ、ホヤなどの海洋生物が付着するため、エレクトロコーティングは外観では判別し難く大きな問題になることは無かった。
【0010】
しかし、汽水部では海洋生物の付着が少なく、水門などに付着したエレクトロコーティングが表面に露出することがあった。また、メッシュや網、フィルター、細管などには、これらの水酸化物が沈殿したり、エレクトロコーティングと一緒に付着することがあった。
【0011】
代表的な汎用ステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼とフェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、二相系ステンレス鋼がある。オーステナイト系ステンレス鋼にはSUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS317、SUS317L、SUS321、SUS310S、SUS347、フェライト系ステンレス鋼にはSUS430、SUS444、SUS445J1、SUS443J1、二相系ステンレス鋼にはSUS329J4L、SUS329J3L、マルテンサイト系ステンレス鋼にはSUS420J2などがある。これらはクロムやニッケル、モリブデン、窒素を多く含む耐海水性ステンレス鋼よりも安価であり、また加工も容易である。そのため、汎用ステンレス鋼製メッシュや網、フィルター、細管などを海水中や汽水中で使用するニーズが高い。ここで、メッシュは、ステンレス線を組み、水中のごみを除去するのに用いられる。網は海水取水管の前に取り付け、くらげなどの侵入を防止するのに用いられる。フィルターは、パンチングメタルなどを用いて、水中のごみを除去するのに用いられる。細管は、熱交換器などに用いられる。
【0012】
正常時には外部電源方式により、停電時には犠牲陽極方式による防食を行うステンレス鋼熱交換器の防食方法が特許文献2に記載されており、外部電源による電位の設定は−0.7〜−1.0V(vs.SCE)と記載されている。
【0013】
又、酸化性の金属イオンあるいは、重金属やその化合物を含有する硝酸溶液中で、ステンレス鋼に外部電源方式で電気防食する方法が特許文献3に記載されており、電位の範囲が−0.8〜−1.0V(vs.Ag/AgCl)と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平11−323486号公報(段落0008〜0009)
【特許文献2】特開平4−247887号公報
【特許文献3】特開昭62−278286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献2に記載された範囲では、まだエレクトロコーティングの付着の防止が十分でなかった。また、特許文献3では、エレクトロコーティングの付着について考慮されていなかった。従って、通常の電気防食をした水門、ステンレスを被覆した杭や鋼矢板にエレクトロコーティングが付着して表面が汚れたり、ステンレス鋼製メッシュや網、フィルター、細管などに、エレクトロコーティングや金属水酸化物が付着することで、これらが閉塞する問題があった。
【0016】
又、海水中には炭素鋼の防食のため、脱気したり、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムを添加することがある。従って、添加した亜硫酸ナトリウムやチオ硫酸ナトリウムの酸化により生じた硫酸イオンを含むことがある。また、海水中では殺菌のため次亜塩素酸ナトリウムが添加されることがある。しかし、従来はこれらについても考慮されていなかった。
【0017】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、海洋環境や汽水など、塩化物イオンを多く含む環境であっても、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、塩化物イオンを含む水溶液中で、防食対象のステンレス鋼の電位を−0.05〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に外部電源方式で保持することにより、前記課題を解決したものである。
【0019】
本発明は、又、塩化物イオンを含む水溶液中に浸漬される陽極と、防食対象のステンレス鋼の電位を−0.05〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に保持する外部電源と、を備えたことを特徴とするステンレス鋼の電気防食装置を提供するものである。
【0020】
ここで、ステンレス鋼の流出電流の無い範囲で交流を重畳させることができる。
【0021】
又、塩化物イオンを含む水溶液中で、フェライト系ステンレス鋼、SUS304系ステンレス鋼、又はマルテンサイト系ステンレス鋼の電位を−0.35〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に外部電源方式で保持することで、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することができる。
【0022】
又、前記塩化物イオンを含む水溶液が次亜塩素酸ナトリウムを含む場合は、前記ステンレス鋼の電位を−0.50〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に保持することができる。
【0023】
又、前記ステンレス鋼のPI値を40未満とすることができる。
【0024】
又、前記塩化物イオンを含む水溶液は、硫酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムを含むことができる。
【0025】
又、前記塩化物イオンを含む水溶液は、脱気されていることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、海洋環境や汽水など、塩化物イオンを多く含む環境であっても、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することが可能になる。
【0027】
また、フェライト系や二相系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼は、アルミニウム合金陽極で防食すると水素を吸蔵して水素脆化が発生することがあるが、このフェライト系や二相系ステンレス鋼の水素脆化も電位制御により防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】流電陽極方式の電気防食の概念図
【図2】外部電源方式の電気防食の概念図
【図3】本発明に係るステンレス鋼の電気防食装置の実施形態を示す図
【図4】実施例の試験に用いた装置の構成図
【図5】海水における保持電位と付着量の関係の例を示す図
【図6】海水における保持電位と付着量の関係の他の例を示す図
【図7】次亜塩素酸ナトリウムで脱気した海水における保持電位と付着量の関係の例を示す図
【図8】窒素で脱気した海水における保持電位と付着量の関係の例を示す図
【図9】亜硫酸ナトリウムで脱気した海水における保持電位と付着量の関係の例を示す図
【図10】チオ硫酸ナトリウムで脱気した海水における保持電位と付着量の関係の例を示す図
【図11】硫酸ナトリウムを添加した海水における保持電位と付着量の関係の例を示す図
【図12】比較例の試験に用いた装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0030】
本発明を実施するための電気防食装置の実施形態は、図3に示す如く、塩化物イオンを含む水溶液10中に浸漬される陽極(対極とも称する)16と、防食対象のステンレス鋼(鋼材)12の電位を−0.30〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に保持する外部電源18と、基準となる照合電極(参照電極又は基準電極とも称する)20と、該照合電極20の状態に合わせて前記外部電源18を制御するための制御装置22と、を備えている。
【0031】
前記陽極16の材料としては、珪素鋳鉄や磁性酸化鉄(Fe3O4)、鋳鉄、炭素鋼、鉛、鉛合金、銀、銀合金、白金、白金メッキチタン、黒鉛、MMO(Mix Metal Oxide)などがある。これらの電極は、アルミニウム合金や亜鉛を用いた犠牲陽極と異なり、金属イオンの溶出が少なく、水酸化物の沈殿も生じにくいという特徴があり、防食対象となる金属表面に沈殿が生じにくいという特徴がある。
【0032】
外部電源方式では電位管理を行うことができる。なお、(流電陽極から出る生成物が問題にならない程度の範囲で)構造物の一部を外部電源方式、残りを流電陽極方式とすることも可能である。
【0033】
外部電源18を用いた場合、照合電極20により電位をフィードバック信号とし、制御装置22により陽極16から出る出力の制御を行う。なお、この電位制御は経年的な被覆の剥離による防食電流の増加や、溶存酸素の増加や水温上昇に伴う防食電流の急激な変化にも対応できる。
【0034】
照合電極20としては、Ag/AgCl電極や飽和カロメル電極(SCE)、海水/塩化銀電極、亜鉛などが用いられる。
【0035】
電気防食を効率よく行うためには、電気防食の対象となるステンレス鋼部材以外を塗装したり、ステンレス鋼部材とその他の金属部材を絶縁する。これらの措置によりステンレス鋼部材に集中して電気が流れるため、効率よく電気防食ができる。
【0036】
また、小さな円形の陽極を用いると、その周囲のみが電気防食されるものの、遠方には電気が到達せずステンレス鋼が腐食することがあった。円筒形など長細い部材に対しては、白金めっきチタン製ワイヤーや棒状のMMO電極を用い、大面積には白金めっきチタン製ワイヤーや棒状のMMO電極をメッシュ状にした電極を用いると、陽極コストを低減して、大面積を防食することができる。
【0037】
(実施例1)
図4に示す如く、防食対象となるステンレス鋼の試験片30には、SUS329J4Lステンレス鋼製の間隔0.5mmの50×50mmの大きさのメッシュを用い、水溶液10として横浜市鶴見区沖で採取した海水を大気開放で用いた。陽極16には10×10mmの白金めっきチタンを用い、室温で14日間実験を行った。電位の制御はポテンショスタット(北斗電工製HA−151A)24を用いた。照合電極20にはAg/AgCl電極を用いた。
実施例1として、ステンレス鋼の電位を−0.05〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。比較例1として電位を貴側の−0.00〜−0.15V(vs.Ag/AgCl)に保持した。また、電位を卑側の−0.70〜−1.00V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。
【0038】
実験終了後、付着物を機械的に除去し、その重量を測定した。結果を図5に示す。
【0039】
図5から明らかなように、本発明に係る実施例1の保持電位−0.05〜−0.65Vの範囲では、腐食が発生せず、付着量も少ないことが確認できた。
【0040】
(実施例2)
実施例2として、SUS329J4Lステンレス鋼の電位を−0.50V(vs.Ag/AgCl)に保持し、実効値50mVの交流を流した。実験終了後、付着物を機械的に除去し、その重量を測定した。本発明に係る実施例2のカソード電流に交流を重畳してもステンレス鋼の電流、腐食が発生せず、付着量も少ないことが確認できた。
【0041】
(実施例3)
実施例3として、SUS304ステンレス鋼の電位を−0.35〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。比較例3として電位を貴側の−0.20〜−0.30V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。また、電位を卑側の−0.70〜−1.00V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。
【0042】
実験終了後、付着物を機械的に除去し、その重量を測定した。結果を図6に示す。
【0043】
図6から明らかなように、本発明に係る実施例3の保持電位−0.35〜−0.65Vの範囲では、腐食が発生せず、付着量も少ないことが確認できた。
【0044】
(実施例4)
水溶液10として次亜塩素酸ナトリウムを100ppm添加した溶液を用いた。
【0045】
実施例4として、ステンレス鋼の試験片30の電位を−0.50〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。比較例4として試験片30の電位を貴側の−0.20〜−0.45V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。また、試験片30の電位を卑側の−0.70〜−1.00V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。
【0046】
実験終了後、付着物を機械的に除去し、その重量を測定した。結果を図7に示す。
【0047】
図7から明らかなように、本発明に係る実施例4の保持電位−0.50〜−0.65Vの範囲では、腐食が発生せず、付着量も少ないことが確認できた。
(実施例5〜8)
水溶液10として窒素で暴気して脱気した海水(実施例5)、亜硫酸ナトリウムを500ppm添加した溶液(実施例6)、チオ硫酸ナトリウムを500ppm添加した溶液(実施例7)、硫酸ナトリウムを500ppm添加した溶液(実施例8)を用いた。
【0048】
実施例5〜8として、ステンレス鋼の試験片30の電位を−0.35〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。比較例5〜8として試験片30の電位を貴側の−0.20〜−0.30V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。また、試験片30の電位を卑側の−0.70〜−1.00V(vs.Ag/AgCl)に0.05V間隔で保持した。
【0049】
実験終了後、付着物を機械的に除去し、その重量を測定した。結果を図8〜図11に示す。
【0050】
図8〜図11から明らかなように、本発明に係る実施例5〜8の保持電位−0.35〜−0.65Vの範囲では、腐食が発生せず、付着量も少ないことが確認できた。
【0051】
(比較例)
比較例として、図12に示す如く、犠牲陽極14を用いた。犠牲陽極14として、一般的に海水中の電気防食に使用されているアルミニウム合金陽極と亜鉛、そして電位を一般的な犠牲陽極よりも貴な炭素鋼(SS400)を用いた。水溶液10は海水を大気開放状態で用いた。
【0052】
アルミニウム合金陽極と亜鉛は白色の付着物、炭素鋼は付着物が無いものの、一般的にさびと呼ばれる茶褐色の沈殿物が発生した。
【0053】
実験終了後、沈殿物の重量を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
なお、実施例では、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムなどナトリウム塩を用いたが、ナトリウム塩以外にカリウムなどの塩を用いても同様の効果がある。
【符号の説明】
【0056】
10…水溶液
12…(ステンレス)鋼材
16…陽極
18…外部(直流)電源
20…照合電極
22…制御装置
24…ポテンショスタット
30…試験片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化物イオンを含む水溶液中で、防食対象のステンレス鋼の電位を−0.05〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に外部電源方式で保持することで、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することを特徴とするステンレス鋼の電気防食方法。
【請求項2】
ステンレス鋼の流出電流の無い範囲で交流を重畳させることを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼の電気防食方法。
【請求項3】
塩化物イオンを含む水溶液中で、フェライト系ステンレス鋼、SUS304系ステンレス鋼、又はマルテンサイト系ステンレス鋼の電位を−0.35〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に外部電源方式で保持することで、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することを特徴とする請求項1又は2に記載のステンレス鋼の電気防食方法。
【請求項4】
前記塩化物イオンを含む水溶液が次亜塩素酸ナトリウムを含む場合は、前記ステンレス鋼の電位を−0.50〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に保持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電気防食方法。
【請求項5】
前記ステンレス鋼のPI値が40未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食方法。
【請求項6】
前記塩化物イオンを含む水溶液が、硫酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食方法。
【請求項7】
前記塩化物イオンを含む水溶液が、脱気されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食方法。
【請求項8】
塩化物イオンを含む水溶液中に浸漬される陽極と、
防食対象のステンレス鋼の電位を−0.05〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に保持する外部電源と、
を備えたことを特徴とするステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項9】
ステンレス鋼の流出電流の無い範囲で交流を重畳させることを特徴とする請求項8に記載のステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項10】
塩化物イオンを含む水溶液中で、フェライト系ステンレス鋼、SUS304系ステンレス鋼、又はマルテンサイト系ステンレス鋼の電位を−0.35〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に外部電源方式で保持することで、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することを特徴とする請求項8又は9に記載のステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項11】
前記塩化物イオンを含む水溶液が次亜塩素酸ナトリウムを含む場合は、前記ステンレス鋼の電位を−0.50〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に保持することを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項12】
前記ステンレス鋼のPI値が40未満であることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項13】
前記塩化物イオンを含む水溶液が、硫酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項14】
前記塩化物イオンを含む水溶液が、脱気されていることを特徴とする請求項8乃至13
のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項1】
塩化物イオンを含む水溶液中で、防食対象のステンレス鋼の電位を−0.05〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に外部電源方式で保持することで、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することを特徴とするステンレス鋼の電気防食方法。
【請求項2】
ステンレス鋼の流出電流の無い範囲で交流を重畳させることを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼の電気防食方法。
【請求項3】
塩化物イオンを含む水溶液中で、フェライト系ステンレス鋼、SUS304系ステンレス鋼、又はマルテンサイト系ステンレス鋼の電位を−0.35〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に外部電源方式で保持することで、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することを特徴とする請求項1又は2に記載のステンレス鋼の電気防食方法。
【請求項4】
前記塩化物イオンを含む水溶液が次亜塩素酸ナトリウムを含む場合は、前記ステンレス鋼の電位を−0.50〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に保持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電気防食方法。
【請求項5】
前記ステンレス鋼のPI値が40未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食方法。
【請求項6】
前記塩化物イオンを含む水溶液が、硫酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食方法。
【請求項7】
前記塩化物イオンを含む水溶液が、脱気されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食方法。
【請求項8】
塩化物イオンを含む水溶液中に浸漬される陽極と、
防食対象のステンレス鋼の電位を−0.05〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に保持する外部電源と、
を備えたことを特徴とするステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項9】
ステンレス鋼の流出電流の無い範囲で交流を重畳させることを特徴とする請求項8に記載のステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項10】
塩化物イオンを含む水溶液中で、フェライト系ステンレス鋼、SUS304系ステンレス鋼、又はマルテンサイト系ステンレス鋼の電位を−0.35〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に外部電源方式で保持することで、エレクトロコーティングの付着を防止しながらステンレス鋼を防食することを特徴とする請求項8又は9に記載のステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項11】
前記塩化物イオンを含む水溶液が次亜塩素酸ナトリウムを含む場合は、前記ステンレス鋼の電位を−0.50〜−0.65V(vs.Ag/AgCl)に保持することを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項12】
前記ステンレス鋼のPI値が40未満であることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項13】
前記塩化物イオンを含む水溶液が、硫酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食装置。
【請求項14】
前記塩化物イオンを含む水溶液が、脱気されていることを特徴とする請求項8乃至13
のいずれかに記載のステンレス鋼の電気防食装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−197502(P2012−197502A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141934(P2011−141934)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】
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