説明

ステータ

【課題】集合線を用いた場合の性能を維持しつつ、コスト削減を図ることができるステータを提供すること。
【解決手段】本発明にかかるステータ1は、ステータコア11と、コイル12とを備える。ステータコア11は、コイル12が挿入されるスロット111を備える。コイル12は、複数の線状導体からなる集合線20と、集合線20の線状導体よりも少ない本数の線状導体からなる単線30とが、長手方向に接合された導線からなる。スロット111内部に位置するコイル12の少なくとも一部が集合線20であり、スロット111外部に位置するコイル12の少なくとも一部が単線30である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータのステータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ステータコイルの導線として複数の線状導体を一体化した集合線が用いられている。集合線を用いることにより、単線に比べて、渦電流の影響により生じる導体損失(渦損失)を低減することができる。
【0003】
集合線として様々な形態の導線が提案されている。例えば、絶縁された複数の導線を撚り合せたリッツ線が知られている。また、特許文献1には、絶縁性の高い物質で被覆された複数の導線を撚らずに一体化させた集合線が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−227266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した集合線は、各導線に対して絶縁処理が施されている。また、占積率の向上を図るため、絶縁膜を薄膜とし、各導線を密に集合させる必要がある。このため、集合線は、単線に比べて高価となる。その結果、集合線からなるコイルを用いると、渦損失低減等の性能向上を実現できるものの、製造コストがかかってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、集合線を用いた場合の性能を維持しつつ、コスト削減を図ることができるステータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるステータは、複数の線状導体からなる第1の導線と、前記第1の導線の前記線状導体よりも少ない本数の線状導体からなる第2の導線とが、長手方向に接合された導線からなるコイルと、前記コイルが挿入されるスロットを有するステータコアと、を備え、 前記スロット内部に位置する前記コイルの少なくとも一部が前記第1の導線であり、前記スロット外部に位置する前記コイルの少なくとも一部が前記第2の導線であるものである。これにより、モータの性能に寄与するスロット内部のコイルの少なくとも一部は第1の導線(集合線)となる。一方、モータの性能に寄与しないスロット外部のコイルの少なくとも一部は集合線よりも少ない本数の線状導体からなる第2の導線(単線)となる。その結果、集合線を用いた場合の性能を維持しつつ、コスト削減を図ることができる。
【0008】
また、前記スロット外部において前記コイルが屈曲した屈曲部を有しており、当該屈曲部が前記第2の導線で形成されていてもよい。これにより、曲げ加工に対する強度が弱い集合線が屈曲することを回避できる。そのため、集合線の断線を防止できる。
【0009】
また、前記コイルの前記スロット内部に位置する部分が、前記第1の導線で形成されていてもよい。これにより、モータの性能に寄与するスロット内部のコイルが集合線となるため、十分に集合線の効果を発揮でき、モータの性能が向上する。
【0010】
また、前記コイルの前記スロット外部に位置する部分が、前記第2の導線で形成されていてもよい。これにより、モータの性能に寄与しないコイルエンドが集合線よりも線状導体の本数が少ない第2の導線になるため、製造コストの削減を図ることができる。
【0011】
また、前記コイルは、複数の前記第1の導線が前記第2の導線を介して連結されており、それぞれの前記第1の導線の長さが、ロータの回転軸方向における前記ステータコアの厚さ以上であってもよい。これにより、少なくともスロット内部に位置するコイルが集合線となるため、十分に集合線の効果を発揮でき、モータの性能が向上する。
【0012】
また、前記第1の導線と前記第2の導線は、レーザ溶接、Tig溶接、ろう接、摩擦圧接、冷間圧接等を用いて接合されていてもよい。
【0013】
また、前記第2の導線は断面略矩形状の単線であってもよい。これにより、製造コストの削減、屈曲部における加工性の向上を実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、集合線を用いた場合の性能を維持しつつ、コスト削減を図ることができるステータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態にかかるステータの外観斜視図である。
【図2】実施の形態にかかるステータコアの側面図である。
【図3】実施の形態にかかるコイルの外観斜視図である。
【図4】関連するステータコアの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかるステータ1の外観斜視図である。ステータ1は、ステータコア11と、コイル12と、を備える。
【0017】
ステータコア11は、円筒形状であり、例えば電磁鋼板を積層して形成される。ステータコア11は、内周面側にコイル12を挿入するための複数のスロット111を有している。図1は、複数のスロット111に複数のコイル12が挿入された状態を示している。コイル12のうち、スロット111の外部に出ている部分が、コイルエンド121、122である。コイルエンド121は、いわゆる非リード側であり、巻回されてコイル12を形成している。コイルエンド122は、いわゆるリード側であり、隣接するコイル12との接続に用いられる。なお、実際には、ステータコア11の中央の空洞部にはロータが配置されるが、説明のため図示は省略する。
【0018】
図2は、図1のステータコア11の空洞部からステータコア11の径方向にコイル12を見た図である。言い換えると、ステータコア11の内周面側から外周面側に向けてコイル12を見た図である。図2は、コイル12がステータコア11のスロット111に挿入されている状態を示す図である。なお、ステータコア11の空洞部からステータコア11の径方向にコイル12を見た場合、実際には、複数のコイル12が含まれるが、説明のため、図2においては1つのコイルのみを示している。
【0019】
コイルエンド121は、ロータの回転軸方向(図2の矢印方向)に突出している突出部123を有する。また、コイルエンド121は、突出部123の左右に、コイル12がスロット111に収まるように曲げ加工された屈曲部124、125を有する。
【0020】
一方、コイルエンド122は、隣接するコイル12(図示省略)との接触を回避するために曲げ加工された屈曲部126、127を有する。コイルエンド122は、隣接するコイル(図示省略)に接続されている。
【0021】
このとき、スロット111内部に位置するコイル12は、集合線20(第1の導線)からなる導線である(斜線部)。集合線20とは、複数の線状導体(細線)を一体化させた導線である。ステータ1において、スロット111内部に位置するコイル12がモータの動作や性能に寄与する。そのため、スロット111内部に位置するコイル12を集合線20とすることにより、渦損失の低減を図ることができ、単線と比べてモータの性能が向上する。
【0022】
一方、コイルエンド121、122は、単線30(第2の導線)からなる導線である。単線30は、集合線20のように、細線への絶縁処理や、一体化させるための束ね処理が不要である。そのため、単線30は、集合線20に比べて製造コストが低い。
【0023】
ここで、コイル12の導線について図3を参照して詳細に説明する。図3は、スロット111に挿入前(折り曲げ加工前)のコイル12を示す。図3に示すように、コイル12は、長手方向に集合線20と単線30とが連結されている。より詳細には、集合線20は、単線30を介して連結される。同様に、単線30も集合線20を介して連結される。集合線20と単線30との連結部は、レーザ溶接、Tig(Tungsten Inert Gas)溶接、ろう接、摩擦圧接、冷間圧接等を用いて接合されている。
【0024】
このとき、集合線20は、スロット111全体を占める長さであることが好ましい。言い換えると、集合線20は、ロータの回転軸方向におけるステータコア11の厚み以上であることが好ましい。これにより、モータの動作や性能に寄与するコイル12の部分、つまり、スロット111内部に位置するコイル12の部分が集合線20となるため、モータの性能を向上させることができる。したがって、コイル12は、曲げ加工してスロット111に挿入した際に、スロット111内部に集合線20が位置し、図2の屈曲部124〜127に単線30が位置する寸法関係となるように形成される。
【0025】
図3に示すように、本実施の形態においては、単線30として断面が矩形状の平角線を用いている。このため、丸線に比べてコイル12の導線間の隙間が減少し、占積率が向上する。なお、集合線20を構成する複数の細線も平角線としてもよい。勿論、平角線に替えて丸線を用いてもよい。
【0026】
以上のように、本実施の形態にかかるステータ1においては、スロット111内部に位置するコイル12の少なくとも一部を集合線20とし、スロット111外部に位置するコイル12(コイルエンド121、122)の少なくとも一部を単線とする。つまり、モータの動作や性能に寄与する部分を集合線20とし、モータの動作や性能に寄与しない部分を単線30とする。そのため、コイル12の全てに集合線20を用いた場合(図4参照)に比べて、集合線20の使用量を削減できる。したがって、集合線20を用いた場合の性能を維持しつつ、ステータ1の製造コストを削減することができる。
【0027】
また、近年、モータの小型化が要求され、ステータ1に挿入されるコイル12にも厳しい曲げ加工が要求される。このとき、集合線20は、細線の集合体であるため、曲げ加工に対する強度が単線に比べて低い。そのため、コイル12の全てに集合線を用いると、屈曲部124〜127において、集合線20が断線する恐れがある(図4参照)。
【0028】
これに対して、本実施の形態にかかるステータ1は、曲げ加工が施されるコイルエンド121、122は、集合線20ではなく、単線30が用いられている。そのため、集合線20における曲げ加工を回避することができる。さらに、単線30は、集合線20に比べて曲げ加工に対する強度が高く、加工性も高まる。加えて、コイルエンド122に単線30を用いることにより、コイルエンド122を介して隣接するコイル12同士を接合する際に、Tig溶接等を使用できる。そのため、接合処理が容易となる。
【0029】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更及び組み合わせをすることが可能である。例えば、図2においては、スロット111内部に位置するコイル12は、集合線20であり、スロット111外部に位置するコイル12は、単線30であったが、これに限られるものではない。スロット111内部に位置するコイル12の一部に単線30が含まれていてもよいし、スロット111外部に位置するコイル12の一部に集合線20が含まれていてもよい。また、単線30は、単一の導線(平角線)に限られず、集合線20よりも少ない本数であれば集合線であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 ステータ
11 ステータコア
12 コイル
20 集合線
30 単線
111 スロット
121、122 コイルエンド
123 突出部
124〜127 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線状導体からなる第1の導線と、前記第1の導線の前記線状導体よりも少ない本数の線状導体からなる第2の導線とが、長手方向に接合された導線からなるコイルと、
前記コイルが挿入されるスロットを有するステータコアと、を備え、
前記スロット内部に位置する前記コイルの少なくとも一部が前記第1の導線であり、前記スロット外部に位置する前記コイルの少なくとも一部が前記第2の導線であるステータ。
【請求項2】
前記スロット外部において前記コイルが屈曲した屈曲部を有しており、当該屈曲部が前記第2の導線で形成されている請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記コイルの前記スロット内部に位置する部分が、前記第1の導線で形成されている請求項1または2に記載のステータ。
【請求項4】
前記コイルの前記スロット外部に位置する部分が、前記第2の導線で形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項5】
前記コイルは、複数の前記第1の導線が前記第2の導線を介して連結して形成されており、それぞれの前記第1の導線の長さが、ロータの回転軸方向における前記ステータコアの厚さ以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項6】
前記第1の導線と前記第2の導線は、レーザ溶接を用いて接合されている請求項1〜5のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項7】
前記第2の導線は断面略矩形状の単線である請求項1〜6のいずれか一項に記載のステータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−39000(P2013−39000A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175200(P2011−175200)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】