説明

ストック設備

【課題】広いスペースを確保することなく多くの大型カーテンウォール材を適正にストックすることができるストック設備を提供することを目的とする。
【解決手段】版状のカーテンウォール材2を工事現場内にストックするためのストック設備1であって、工事中の多層構造物Xに形成された鉛直方向に複数層に亘って延在する空間S内に、多層構造物Xの躯体G、G間に架設されたストック架台3が設置され、ストック架台3に、鉛直に配置されたカーテンウォール材2が複数並べて吊持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォール材を工事現場内にストックするためのストック設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築工事において、工場で製作されたプレキャストコンクリートカーテンウォールやアルミカーテンウォール等の版状のカーテンウォール材によって建築構造物の外壁を構築する工法が知られている。この工法によれば、現場での作業を減らすことができ、生産性を高めることができる。
【0003】
ところが、上記した工法では、工場で製作したカーテンウォール材をトラックやトレーラー等の大型運搬車輌で建設現場に搬入することになるため、輸送コストが嵩むという問題がある。そこで、近年、建設現場内にカーテンウォール材を製作する場所を確保し、現場内でカーテンウォール材の製作を行うサイトヤード方式が提案されている。例えば、アルミカーテンウォール材をサイトヤード方式で製作する場合、現場内に製作ラインを展開する場所(サイトヤードスペース)を確保し、そこに、(1)資材ストックエリア、(2)フレームユニット組立てエリア、(3)ガラス嵌め込みエリア、(4)シール/ガスケット取付けエリア、(5)養生/完成品ストックエリア、といった各作業エリアを設置する。そして、アルミカーテンウォールの材料を小さな部材で現場に搬入し、上記した各作業エリアでそれぞれの作業を行って版状のアルミカーテンウォール材を製作する。完成したアルミカーテンウォール材をタワークレーン等の揚重機を用いて順次設置していき、建築構造物の外壁を構築する。このような工法によれば、小さな部材で搬入することで輸送コストを抑えることができるとともに、取付け作業の前段階でユニット化することで取付け作業の効率を上げて工期の短縮を図ることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
上記したサイトヤード方式の工法では、上記した各作業に必要なスペースが一日当たりの必要製作枚数からある程度決まり、その広さは数百m〜千mにもなる。特に、(5)養生/完成品ストックエリアでは、シールの固化などでカーテンウォール材が4〜6日の養生されるので、少なくとも4〜6日分のカーテンウォール材をストックできる程度のスペースが必要である。ところが、そのような広さの場所を現場内に長期間に亘って確保するのは現実的に難しい。そこで、完成したカーテンウォール材を台車の上に横に寝かしたまま積み重ねてストック養生する方法(積み重ねストック方法)や、完成したカーテンウォール材を縦に起こして台車の上に隙間なく並べてストック養生する方法(立て置きストック方法)がある。これらのストック方法により、養生/完成品ストックエリアを圧縮することができ、狭いエリアでより多くのカーテンウォール材をストック養生することができる。
【特許文献1】特開2001−323662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、カーテンウォール材の大型化が進んでいるが、大型のカーテンウォール材の場合、カーテンウォール材は相当な重量となり、完成したカーテンウォール材を積み重ねるとフレーム強度不足で下のカーテンウォール材が破損するおそれがある。このため、大型のカーテンウォール材を容易に積み重ねられず、上記した積み重ねストック方法では問題がある。さらに、大型のカーテンウォール材を縦にするとカーテンウォール材の上部が梁等にぶつかる場合がある。このため、台車上に縦にして並べられたカーテンウォール材を横移動させることができず、上記した立て置きストック方法でも問題がある。このように、大型のカーテンウォール材の場合、従来のようなストック方法を採用することができず、カーテンウォール材をストックするのに広いスペースを要するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、広いスペースを確保することなく多くの大型カーテンウォール材を適正にストックすることができるストック設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るストック設備は、版状のカーテンウォール材を工事現場内にストックするためのストック設備であって、工事中の多層構造物に形成された鉛直方向に複数層に亘って延在する空間内に、前記多層構造物の躯体間に架設されたストック架台が設置され、該ストック架台に、鉛直に配置された前記カーテンウォール材が複数並べて吊持されることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、複数層に亘って延在する空間の中にストック架台を設置するとともに、このストック架台に複数のカーテンウォール材を吊持させることで、複数のカーテンウォール材は、鉛直に吊り下げられた状態で上記空間内に並べてストックされる。
【0009】
また、前記ストック架台は、前記多層構造物の躯体間に架け渡されて支持されているとともに間隔をあけて並列に配設された複数の支持架材と、該複数の支持架材の間に架け渡されて支持されているとともに吊り具を介して前記カーテンウォール材を吊持する複数の吊り架材と、を備える構成からなることが好ましい。
【0010】
これにより、躯体間に複数の支持架材を並列に架設させた後、それらの支持架材間に、カーテンウォール材を吊持する吊り架材を複数架設させていくことで、複数のカーテンウォール材が吊り下げられた状態でストックされる。また、複数の支持架材を一体的に移動させると、支持架材間に架け渡された複数の吊り架材も一緒に移動し、複数のカーテンウォール材が一度にまとめて移動される。また、支持架材と切り離して吊り架材を移動させると、1つ1つのカーテンウォール材が個別的に移動される。
【0011】
また、本発明に係るストック設備は、前記カーテンウォールを前記ストック架台にセットするセット層よりも上の層の前記空間内に、前記セット層よりも下の層の前記空間内に搬入された前記カーテンウォール材を前記ストック架台まで吊り上げる吊上げ手段が設置されていることが好ましい。
【0012】
これにより、セット層に設置されたストック架台の下方の空間内に運び込まれたカーテンウォール材は、吊上げ手段によって吊り上げられてストック架台のところまで運ばれ、ストック架台に吊り下げられる。
【0013】
また、前記吊上げ手段は、前記多層構造物の躯体に固定された平行する複数の固定レールと、該複数の固定レール間に架設されているとともに該固定レールに沿って走行する走行レールと、該走行レールに沿って走行する走行体と、該走行体に設けられ、前記カーテンウォール材を吊り上げるカーテンウォール材用揚重装置と、を備えた構成からなることが好ましい。
【0014】
これにより、吊上げ手段によるカーテンウォール材の吊り上げ作業を行なう際、まず、走行レール及び走行体を適宜走行させることで、揚重装置を上記空間の平面内で水平方向に移動させ、任意の位置に配置させる。そして、ストック架台の下方の空間内に運び込まれたカーテンウォール材を取り付けた後、揚重装置によってカーテンウォール材を吊り上げていくとともに、走行レール及び走行体を適宜走行させてカーテンウォール材を水平方向に移動させて水平方向の位置調整を行い、ストック架台の所定位置にカーテンウォール材を吊り下げる。
【0015】
また、本発明に係るストック設備は、前記複数のカーテンウォール材を前記ストック架台に吊持させた状態でストックするストック層よりも上の層の前記空間内に、前記複数のカーテンウォール材を吊持した前記ストック架台を前記空間内で昇降させる昇降手段が設置されていることが好ましい。
【0016】
これにより、躯体間に架設されたストック架台を昇降手段によって複数のカーテンウォール材ごと上記空間内で昇降させ、カーテンウォール材を吊持させたストック架台を他の層に盛替える。
【0017】
また、前記昇降手段は、前記多層構造物の躯体から前記空間側に張り出して設けられた支持アームと、該支持アームに設けられ、前記ストック架台を吊り上げるストック架台用揚重装置と、を備えた構成からなることが好ましい。
【0018】
これにより、ストック架台を上の層に盛替える際、揚重装置によってストック架台が吊り上げられ、ストック架台が盛替え元から盛替え先まで運ばれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るストック設備によれば、鉛直方向に延在する空間の中に、複数のカーテンウォール材が吊り下げられた状態で並べてストックされるので、カーテンウォール材をストックするために広いスペースを確保する必要がない。また、積み重ねていないため、大型のカーテンウォール材であっても破損せず、鉛直方向に延在する空間に配置しているため、大型のカーテンウォール材であっても多層構造物の躯体にぶつかったりすることがなく、大型のカーテンウォール材を適正にストックすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るストック設備の実施の形態について、図面に基いて説明する。なお、図1は、本実施の形態におけるストック設備1を表す立面図である。
【0021】
図1に示すように、ストック設備1は、多層構造物Xの新築工事或いは改修工事において工事現場内にカーテンウォール材2を複数ストックするための設備であり、工事中の多層構造物Xに形成されたエレベータシャフト空間S(空間)内に設置されている。カーテンウォール材2は、多層構造物Xの外壁を形成する版状の部材であり、例えば、矩形平板状のものである。カーテンウォール材2としては、例えば、アルミ製の枠にガラスが嵌め込まれた構成からなるアルミカーテンウォール材や、コンクリート造のプレキャストコンクリートカーテンウォール材等がある。また、エレベータシャフト空間Sは、図示せぬ本設のエレベータの昇降路となる空間であって、多層構造物Xの各階のフロアを貫通して形成された鉛直方向に複数層に亘って延在する空間である。また、ストック設備1は、図示せぬ本設エレベータを設置する前の工事期間中にエレベータシャフト空間Sに設置される仮設物であり、本設エレベータを設置する際には撤去されるものである。
【0022】
ストック設備1は、鉛直に配置した複数のカーテンウォール材2…を複数並べて吊持するストック架台3と、エレベータシャフト空間S内に搬入されたカーテンウォール材2をストック架台3まで吊り上げる吊上げユニット4(吊上げ手段)と、複数のカーテンウォール材2…を吊持したストック架台3をエレベータシャフト空間S内で昇降させる昇降ユニット5(昇降手段)とから構成されている。
【0023】
上記した工事中の多層構造物Xでは、多層構造物Xの最下層内でカーテンウォール材2を製作しており、製作されたカーテンウォール材2やストック架台3の部材(支持ビーム30や吊ビーム31等)はこの最下層のところからエレベータシャフト空間S内に搬入される。この最下層(搬入層F1)の上には、ストック架台3に複数のカーテンウォール材2…をセットするセット層F2があり、そのセット層F2の更に上には、吊上げユニット4を設置する吊上げユニット設置層F3がある。また、吊上げユニット設置層F3の上には、複数のカーテンウォール材2…が吊持されたストック架台3をストックするストック層F4〜F6が複数層ある。最も上のストック層F6の上には、昇降ユニット5を設置する昇降ユニット設置層F7がある。
【0024】
図2は、ストック架台3を表す平面図であり、図3は、図2に示すA−A間の断面図であってストック架台3を表す図である。
図1、図2、図3に示すように、ストック架台3は、多層構造物Xの梁G、G(躯体)間に架け渡されて支持された2本の支持ビーム30、30(支持架材)と、2本の支持ビーム30、30間に架け渡されて支持された吊ビーム31…とから構成されている。
【0025】
支持ビーム30は、筒状の本体部32の両端にロッド状の伸縮脚部33、33がそれぞれ挿装された構成からなるアウトリガー方式のビーム材であり、両端の伸縮脚部33、33が本体部32から出し入れ可能な構成からなる。支持ビーム30は、伸縮脚部33、33が伸びた状態で梁G、G上面にそれぞれ載せられることで支持され、梁G、G間に架設されている。また、2本の支持ビーム30、30は、カーテンウォール材2の横寸法Wよりも大きい間隔Lをあけて並列に配設されている。
【0026】
吊ビーム31は、支持ビーム30に直交する方向に延在するビーム材であり、その両端が支持ビーム30の上面にそれぞれ載せられることで支持され、2本の支持ビーム30、30間に架設されている。吊ビーム31は、ワイヤやシャックルなどの吊り具34によりカーテンウォール材2を懸垂支持できるようになっており、各吊ビーム31には、鉛直に配置されたカーテンウォール材2が各々1枚づつそれぞれ吊持されている。このとき、カーテンウォール材2は、吊ビーム31の軸方向に沿って延在する向きで配置されている。また、上記した吊ビーム31は、支持ビーム30の軸方向に間隔を置いて複数(図2では6本)並列に配設されており、各吊ビーム31…にそれぞれ吊持されたカーテンウォール材2…は、平行に並べて配置されている。
【0027】
また、ストック架台3の側方には、作業員が作業するための足場6、6が設けられている。この足場6は、梁G、G間に架設されてエレベータシャフト空間Sを横断する渡り足場であり、支持ビーム30と平行に延在させている。
【0028】
図4は、吊上げユニット4を表す見上げ図であり、図5は、図4に示すB−B間の断面図であって吊上げユニット4を表す図である。
図1、図4、図5に示すように、吊上げユニット4は、吊上げユニット設置層F3の梁G、Gに固定された平行する2本の固定レール40、40と、2本の固定レール40、40間に架設されているとともに固定レール40、40に沿って走行する走行レール41と、走行レール41に取り付けられて走行レール41に沿って走行するトロリ42(走行体)と、トロリ42に設けられたカーテンウォール材用揚重装置43とから構成されている。なお、吊上げユニット4には、走行レール41やトロリ42をそれぞれ走行駆動させる図示せぬ駆動機構が備えられている。
【0029】
固定レール40は、梁Gの底面に固定されており、梁Gの軸方向に沿って延在されている。なお、本実施の形態では、固定レール40が上記した吊ビーム31に平行する方向に延在されているが、吊ビーム31に直交する方向(支持ビーム30に平行する方向)に延在されていてもよい。走行レール41は、固定レール40、40の下方に配置されており、固定レール40、40に対して摺動可能に取り付けられている。走行レール41の下面には、軸方向に延在する溝が形成されており、この溝にトロリ42が嵌合されている。トロリ42は、走行レール41に対して摺動可能に取り付けられている。トロリ42の下面には、カーテンウォール材用揚重装置43が垂設されている。このカーテンウォール材用揚重装置43は、電動チェーンブロック等の公知の揚重装置であり、カーテンウォール材2を吊持する吊ビーム31を吊り上げることでカーテンウォール材2を吊り上げたりストック架台3の支持ビーム30を吊り上げたりする装置である。例えば、カーテンウォール材2を吊持する吊ビーム31を吊り上げる場合、吊ビーム31にワイヤ44を玉掛けするとともにこのワイヤ44をカーテンウォール材用揚重装置43の吊りフック43aに引っ掛ける。その後、カーテンウォール材用揚重装置43を巻き上げて吊りフック43aを上昇させる。これにより、吊り具34を介してカーテンウォール材2が懸垂支持された状態で吊ビーム31が吊り上げられる。
【0030】
図6は、昇降ユニット5を表す平面図であり、図7は、図6に示すC−C間の断面図であって昇降ユニット5を表す図である。
図1、図6、図7に示すように、昇降ユニット5は、昇降ユニット設置層7の梁G、Gの上面からエレベータシャフト空間Sの内方側に張り出された複数の支持アーム50…と、各支持アーム50…の先端にそれぞれ懸垂支持された複数のストック架台用揚重装置51…と、複数のストック架台用揚重装置51…により揚重される2本のストック架台用吊ビーム52、52とから構成されている。
【0031】
支持アーム50は、L字状に組み立てられた部材であり、上記した吊ビーム31に平行に延在する梁G、Gの上面にそれぞれ対向させて設けられている。また、支持アーム50は、各梁G、Gの上面に複数台(図6では2台)づつ設けられており、これらの支持アーム50、50は間隔を置いて配設されている。また、ストック架台用揚重装置51は、電動チェーンブロック等の公知の揚重装置であり、ワイヤ54を介して支持アーム50から吊り下げられた状態で設けられている。ストック架台用吊ビーム52は、支持ビーム30、30に直交する方向に延在するビーム材であり、複数台のストック架台用揚重装置51、51の吊りワイヤ51a、51aによって吊持されている。ストック架台用吊ビーム52は、2台のストック架台用揚重装置51によって適宜昇降可能とされている。また、ストック架台用吊ビーム52は、支持ビーム30、30の両端部上方に配置され、連結部材53、53を介して2本の支持ビーム30、30の各本体部32、32にそれぞれ連結される。
【0032】
次に、上記した構成からなるストック設備1を用いたカーテンウォール材2のストック方法について説明する。
【0033】
まず、吊上げユニット設置層Fのエレベータシャフト空間S内に吊上げユニット4を設置するとともに、昇降ユニット設置層F7のエレベータシャフト空間S内に昇降ユニット5を設置する。
【0034】
次に、搬入層F1のエレベータシャフト空間S内にストック架台3の支持ビーム30、30を搬入する。そして、搬入された支持ビーム30を吊上げユニット4によりセット層F2まで吊り上げて、セット層F2の梁G、G間に2本の支持ビーム30、30をそれぞれ架設させる。具体的に説明すると、固定レール40に沿って走行レール41を適宜走行させるとともに走行レール41に沿ってトロリ42を適宜走行させ、トロリ42に設けられたカーテンウォール材用揚重装置43を所定位置まで水平移動させる。また、カーテンウォール材用揚重装置43を巻き出して吊りフック43aを搬入層F1まで降ろす。そして、支持ビーム30をワイヤ等で玉掛けするとともに、吊りフック43aに引っ掛ける。その後、カーテンウォール材用揚重装置43を巻き上げて吊りフック43aを上昇させ、支持ビーム30をセット層F2まで吊り上げる。また、走行レール41及びトロリ42を動かすことでカーテンウォール材用揚重装置43を水平移動させ、支持ビーム30を所定の位置まで運んで梁G、G間の所定位置に配設させる。
【0035】
次に、搬入層F1のエレベータシャフト空間S内に、現場内で製作したカーテンウォール材2および吊ビーム31を搬入する。そして、吊り具34を介して吊ビーム31とカーテンウォール材2の一方の辺とを連結させる。一方、支持ビーム30を設置する場合と同様に、カーテンウォール材用揚重装置43を所定位置まで水平移動させるとともに、カーテンウォール材用揚重装置43の吊りフック43aを搬入層F1まで降ろす。そして、ワイヤー44を吊ビーム31に玉掛けするとともにこのワイヤー44を吊りフック43aに引っ掛ける。その後、カーテンウォール材用揚重装置43を巻き上げて吊りフック43aを上昇させ、吊ビーム31をセット層F2まで吊り上げる。また、走行レール41及びトロリ42を動かすことでカーテンウォール材用揚重装置43を水平移動させ、吊ビーム31を所定の位置まで運んで支持ビーム30、30間の所定位置に架設させる。吊ビーム31が吊り上げられると、カーテンウォール材2は吊り具34を介して吊ビーム31から吊り下げられ、支持ビーム30、30(ストック架台3)にカーテンウォール材2がセットされる。なお、図2に示すように、吊ビーム31を吊り上げる際に、吊ビーム31が支持ビーム30の直交方向に延在していると、吊ビーム31の両端が支持ビーム30、30に引っ掛かるため、吊ビーム31の向きを支持ビーム30に対して斜めにする。これにより、吊ビーム31の両端が支持ビーム30、30に引っ掛からないようになり、吊ビーム31が支持ビーム30、30の上方まで吊り上げられる。
【0036】
上記したカーテンウォール材2のセット作業を、複数(図2では6つ)のカーテンウォール材2…に対してそれぞれ行い、支持ビーム30、30間に一日分(一日で取り付けることができる数)のカーテンウォール材2…をセットする。これにより、ストック架台3に、鉛直に配置されたカーテンウォール材2が複数並べて吊持される。
【0037】
次に、複数のカーテンウォール材2がセットされたストック架台3を、昇降ユニット5によって最も上にある第3ストック層F6まで吊り上げ、第3ストック層F6のエレベータシャフト空間S内に設置する。具体的に説明すると、まず、各ストック架台用揚重装置51…の吊りワイヤ51a…をそれぞれ降ろしていき、ストック架台用吊ビーム52、52をセット層F2のストック架台3のところまで降ろす。そして、ストック架台用吊ビーム52、52に懸垂された連結部材53、53を支持ビーム30、30にそれぞれ取り付ける。その後、各ストック架台用揚重装置51…の吊りワイヤ51a…をそれぞれ巻き上げていき、複数のカーテンウォール材2…がセットされたストック架台3を吊り上げていく。このとき、2本の支持ビーム30、30の両側の伸縮脚部33…をそれぞれ縮めておく。また、ストック架台3が傾かないように、複数台のストック架台用揚重装置51…の駆動を同期させて各吊りワイヤ51a…を同じ速度で巻き上げ、ストック架台用吊ビーム52、52を水平状態のまま並行に上昇させる。昇降ユニット5によりストック架台3を第3ストック層F6まで上昇させた後、2本の支持ビーム30、30の両側の伸縮脚部33…をそれぞれ延ばして第3ストック層F6の梁G、Gに載せて支持させる。
【0038】
続いて、セット層F2のエレベータシャフト空間S内で、上述したカーテンウォール材2…のセット方法により、新たなストック架台3に複数のカーテンウォール材2…をセットする。そして、このストック架台3を、上述した第3ストック層F6への設置方法と同様のして、真中の第2ストック層F5のエレベータシャフト空間S内に設置する。その後、セット層F2のエレベータシャフト空間S内で、上述したカーテンウォール材2…のセット方法により、再度、新たなストック架台3に複数のカーテンウォール材2…をセットする。そして、このストック架台3を、上述した第3ストック層F6への設置方法と同様のして、最も下の第1ストック層F4のエレベータシャフト空間S内に設置する。これにより、エレベータシャフト空間S内に、複数のカーテンウォール材2…がセットされたストック架台3が複数台設置され、多数のカーテンウォール材2がストックされる。
【0039】
次に、エレベータシャフト空間S内に設置された複数台のストック架台3…のうち、最も上の第3ストック層F6に設置されたストック架台3を、タワークレーン等の揚重機7を用いて吊り上げ、支持ビーム30の伸縮脚部33、33を躯体施工層F8の梁G、G間に載せて支持させ、2本の支持ビーム30、30を躯体施工層F8の梁G、G間に架設させる。このように、ストック架台3を躯体施工層F8に盛替えた後、そのストック架台3に架設された吊ビーム31…のうちの1つに玉掛けして揚重機7を用いて吊り上げ、カーテンウォール材2の取付け位置まで運ぶ。このように、吊ビーム31ごとカーテンウォール材2を揚重し、カーテンウォール材2の取付け作業を行う。
【0040】
一方、第3ストック層F6のエレベータシャフト空間Sに設置されたストック架台3を躯体施工層F8に盛替えた後、昇降ユニット5を用いて、第2ストック層F5のエレベータシャフト空間Sに設置されたストック架台3を第3ストック層F6に盛替える。その後、第1ストック層F4のエレベータシャフト空間Sに設置されたストック架台3を第2ストック層F5に盛替える。このように、各ストック層F4〜F6にそれぞれストックされたストック架台3…を上から順に上の層にそれぞれ盛替えていき、最も下の第1ストック層F4を空ける。なお、昇降ユニット5を用いたストック架台3の盛替え作業は、上述したセット層F2のストック架台3を各ストック層F4〜F6に設置する場合と同様にして行う。
【0041】
また、セット層F2のエレベータシャフト空間S内では、上述したカーテンウォール材2…のセット方法により、新たなストック架台3に複数のカーテンウォール材2…をセットする作業を行う。そして、複数のカーテンウォール材2…がセットされたストック架台3を、昇降ユニット5を用いて、空けられた第1ストック層F4に設置する。
その後、セット層F2のエレベータシャフト空間S内では、上述したカーテンウォール材2…のセット方法により、新たなストック架台3に複数のカーテンウォール材2…をセットする作業を再び行う。
【0042】
なお、上述したように、昇降ユニット5によって上側のストック架台3の盛替えを行った後、下側のストック架台3の盛替えを行うべく、ストック架台用吊ビーム52、52を吊り降ろす際、図8に示すように、ストック架台用吊ビーム52を鉛直方向に傾けて吊り降ろす。具体的に説明すると、ストック架台用吊ビーム52を吊持する2台のストック架台用揚重装置51、51のうち、一方のストック架台用揚重装置51だけを巻き下げたり巻き上げたりして、ストック架台用吊ビーム52は斜めに傾ける。これによって、ストック架台用吊ビーム52を吊り降ろす際に、支持ビーム30に干渉させずにストック架台用吊ビーム52を吊り降ろすことができる。
【0043】
上記した構成からなるストック設備1によれば、一日分のカーテンウォール材2…がセットされたストック架台3が、セット層F2、第1ストック層F4、第2ストック層F5、及び第3ストック層F6のそれぞれに1台づつストックされているため、4日分のカーテンウォール材2…をストックすることが可能である。勿論、ストック層F4〜F6の数を増減させることで、ストックするカーテンウォール材2…の数を増減させることができ、例えば、6日分のカーテンウォール材2…をストックする場合には、ストック層の数を5つにすればよい。
【0044】
また、上記した構成からなるストック設備1によれば、エレベータシャフト空間Sの中に、複数のカーテンウォール材2…が吊り下げられた状態で並べてストックされるので、カーテンウォール材2…をストックするために広いスペースを確保する必要がない。つまり、カーテンウォール材2のストック/養生スペースを大幅に削減することができる。
【0045】
また、カーテンウォール材2を積み重ねていないので、大型のカーテンウォール材2…であっても破損することがない。また、鉛直に配置されたカーテンウォール材2は、複数層に亘って鉛直方向に延在するエレベータシャフト空間S内に配置されているため、大型のカーテンウォール材2…であっても多層構造物の躯体にぶつかったりすることがない。このように、大型のカーテンウォール材2であっても問題無くストックすることができる。
【0046】
また、上記したストック架台3は、2本の支持架材30、30と、これらの支持架材30、30の間に架け渡されて支持されているとともにカーテンウォール材2を吊持する吊り架材31…とからなるため、エレベータシャフト空間S内に、鉛直に配置された複数のカーテンウォール材2…を並べてストックさせることができる。また、支持ビーム30、30を移動させるだけで、並べられた複数のカーテンウォール材2…を一度にまとめて移動させることができる。さらに、吊ビーム31を吊り上げて支持ビーム30、30から分離させるだけで、カーテンウォール材2…を個別的に移動させることもできる。このため、ストック架台3にカーテンウォール材2をセットする作業や、複数のカーテンウォール材2…がセットされたストック架台3を盛替える作業や、ストック架台3にセットされたカーテンウォール材2を取り付ける作業を容易に行うことができる。
【0047】
また、上記した構成からなるストック設備1によれば、吊上げユニット4が備えられているため、ストック架台3にカーテンウォール材2をセットする作業を容易に行うことができる。
【0048】
また、上記した吊上げユニット4は、2本の固定レール40、40と、固定レール40、40間に架設されているとともに固定レール40、40に沿って走行する走行レール41と、走行レール41に沿って走行するトロリ42と、トロリ42に設けられたカーテンウォール材用揚重装置43とからなるため、吊上げユニット4を用いてカーテンウォール材2を任意の位置に運ぶことができ、カーテンウォール材2を容易に所定位置に配設させることができる。
【0049】
また、上記した構成からなるストック設備1によれば、昇降ユニット5が備えられているため、複数のカーテンウォール材2…が吊持された状態のストック架台3を他の層に容易に盛替えることができる。
【0050】
また、上記した昇降ユニット5は、支持アーム50…と、支持アーム50…にそれぞれ設けられたストック架台用揚重装置51とが備えられた構成からなるため、複雑な機械を用いることなく、容易にストック架台3を盛替えることができる。
【0051】
さらに、上記した構成からなるストック設備1によれば、ストック設備1の設置及び盛替えを容易に行うことができる。例えば、仕上げ工程の関係で、カーテンウォール材2を製作するフロアを替えなければならない場合、吊上げユニット4及び昇降ユニット5を盛替えるだけで対応することが可能であり、より適用性が高い。
【0052】
以上、本発明に係るストック設備の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、支持ビーム30、30の上面に吊ビーム31の両端を載せるようにして吊ビーム31を架設させているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図9、図10に示すように、両側の支持ビーム30に側方に突出する受け部材35を突設させ、この受け部材35の上に吊ビーム31の端部を載せることで吊ビーム31を支持させてもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態では、ストック架台3に2本の支持ビーム30、30が備えられているが、本発明は、3本以上の支持ビームが備えるストック架台を用いることも可能である。
また、上記した実施の形態では、吊上げユニット4に2本の固定レール40、40が備えられているが、本発明は、3本以上の固定レールが備える吊上げ手段を用いることも可能である。
【0054】
また、上記した実施の形態では、現場で製作されたカーテンウォール材2…をストックするストック設備1について説明しているが、本発明に係るストック設備は、工場で製作されたカーテンウォール材をストックすることも可能である。
【0055】
また、上記した実施の形態では、エレベータシャフト空間S内にストック設備1が設置されているが、本発明は、エレベータシャフト以外の上下方向に複数層に亘って延在する空間の中にストック設備1を設置することも可能であり、例えば、構造物内に形成された吹き抜け空間の中に本発明に係るストック設備を設置することも可能である。
【0056】
また、上記した実施の形態では、支持ビーム30の両端が伸縮脚部33、33により伸縮可能なアウトリガー方式の構成となっているが、本発明は、支持ビームの両端が回動可能な構成になっていてもよい。例えば、支持ビームの両端部が、回転軸を介して本体部に対して回動可能に取り付けられていてもよい。さらに、支持ビームの両端部が伸縮したり回動したりしない構成であってもよい。これにより、安価な支持ビーム30を使用することができる。
【0057】
また、上記した実施の形態では、固定レール40、走行レール41、トロリ42及びカーテンウォール材用揚重装置43からなる吊上げユニット4が備えられているが、本発明は、上記した構成以外の吊上げユニットが備えられていてもよい。例えば、梁G、G間に架設されたビーム材の中間部分にカーテンウォール材用揚重装置43が垂設された構成からなる吊上げユニットであってもよい。これにより、吊り上げたカーテンウォール材を水平方向に移動させることはできないが、より簡易的で盛替え作業が簡単な吊上げユニットとすることができる。さらに、本発明は、吊上げユニット4が備えられていない構成とすることも可能である。例えば、現場に設置された揚重機7等を利用してカーテンウォール材2を吊り上げることも可能である。
【0058】
また、上記した実施の形態では、昇降ユニット5を用いてストック架台3を上昇させて上層に盛替えているが、本発明は、昇降ユニット5を用いてストック架台3を下降させて下層に盛替えることも可能である。
【0059】
また、上記した実施の形態では、支持アーム50、ストック架台用揚重装置51、ストック架台用吊ビーム52とからなる昇降ユニット5が備えられているが、本発明は、上記した構成以外の昇降ユニットが備えられていてもよい。例えば、梁G、G間に架設されたビーム材にストック架台用吊ビーム52が垂設された構成からなる昇降ユニットであってもよい。さらに、本発明は、昇降ユニット5が備えられていない構成とすることも可能である。例えば、現場に設置された揚重機7等を利用してストック架台3を昇降させることも可能である。
【0060】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る実施の形態を説明するためのストック設備を表す立面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態を説明するためのストック架台を表す平面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態を説明するためのストック架台を表す断面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態を説明するための吊上げ手段を表す平面図である。
【図5】本発明に係る実施の形態を説明するための吊上げ手段を表す断面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態を説明するための昇降手段を表す平面図である。
【図7】本発明に係る実施の形態を説明するための昇降手段を表す断面図である。
【図8】本発明に係る実施の形態を説明するための昇降手段を表す断面図である。
【図9】本発明に係る他の実施の形態を説明するための吊上げ手段の部分断面図である。
【図10】本発明に係る他の実施の形態を説明するための吊上げ手段の部分側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 ストック設備
2 カーテンウォール材
3 ストック架台
4 吊上げユニット(吊上げ手段)
5 昇降ユニット(昇降手段)
30 支持ビーム(支持架材)
31 吊ビーム(吊り架材)
34 吊り具
40 固定レール
41 走行レール
42 トロリ(走行体)
43 カーテンウォール材用揚重装置
50 支持アーム
51 ストック架台用揚重装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版状のカーテンウォール材を工事現場内にストックするためのストック設備であって、
工事中の多層構造物に形成された鉛直方向に複数層に亘って延在する空間内に、前記多層構造物の躯体間に架設されたストック架台が設置され、該ストック架台に、鉛直に配置された前記カーテンウォール材が複数並べて吊持されることを特徴とするストック設備。
【請求項2】
請求項1記載のストック設備において、
前記ストック架台が、前記多層構造物の躯体間に架け渡されて支持されているとともに間隔をあけて並列に配設された複数の支持架材と、該複数の支持架材の間に架け渡されて支持されているとともに吊り具を介して前記カーテンウォール材を吊持する複数の吊り架材と、を備える構成からなることを特徴とするストック設備。
【請求項3】
請求項1または2の何れか一項に記載のストック設備において、
前記カーテンウォール材を前記ストック架台にセットするセット層よりも上の層の前記空間内に、前記セット層よりも下の層の前記空間内に搬入された前記カーテンウォール材を前記ストック架台まで吊り上げる吊上げ手段が設置されていることを特徴とするストック設備。
【請求項4】
請求項3記載のストック設備において、
前記吊上げ手段が、前記多層構造物の躯体に固定された平行する複数の固定レールと、該複数の固定レール間に架設されているとともに該固定レールに沿って走行する走行レールと、該走行レールに沿って走行する走行体と、該走行体に設けられ、前記カーテンウォール材を吊り上げるカーテンウォール材用揚重装置と、を備えた構成からなることを特徴とするストック設備。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のストック設備において、
前記複数のカーテンウォール材を前記ストック架台に吊持させた状態でストックするストック層よりも上の層の前記空間内に、前記複数のカーテンウォール材を吊持した前記ストック架台を前記空間内で昇降させる昇降手段が設置されていることを特徴とするストック設備。
【請求項6】
請求項5記載のストック設備において、
前記昇降手段が、前記多層構造物の躯体から前記空間側に張り出して設けられた支持アームと、該支持アームに設けられ、前記ストック架台を吊り上げるストック架台用揚重装置と、を備えた構成からなることを特徴とするストック設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−190149(P2008−190149A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23483(P2007−23483)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】