説明

ストッパ機構

【課題】回転体の暴走を止めたり回転角度の規制をしたりすることができるようにする。
【解決手段】円筒管形状の固定部5の内部に設置され、同軸上の円筒形状の回転体17の回転を停止させるストッパ機構において、自身の中心点からずれた偏心点を中心に固定部5の外周を回転する円盤形状を有するカム8と、自身の外周の一部を半径方向外側に突出して設置された回転側ストッパ10を有し、カム8の中心点を中心に回転するストッパリング9と、片側が回転体17に固着され、他の片側がストッパリング9の半径方向に摺動自在に接続され、回転体17を回転させたときに、所定の位置からカム8をも連動して回転させる回転体アーム部11と、初期位置では回転側ストッパ10とは当接せず、回転体17が略360度回転したときに、カム8の中心点と偏心点との二倍の距離だけ外側に伸びた回転側ストッパ10と当接する位置に固着された固定側ストッパ2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストッパ機構に関し、特に回転体のストッパ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周囲に置いた部品をハンドにより掴み、組立対象の装置の位置までハンドを回転してこの装置に部品を組み付ける組立ロボットや、ハンドにレ−ザ装置を保持し、周囲に置いた溶接対象の装置の位置までハンドを回転しこの装置を溶接する溶接用ロボット等の産業用ロボットがある。これらの産業用ロボットは、回転体の上に載り回転体を回転することにより産業用ロボット自体を回転させて作業する。 また、人口衛星や航空機等の飛行体を追跡するアンテナ装置がある。このアンテナ装置は、アンテナを回転体に載せ回転体を回転させることによりアンテナを飛行体の方向に向けて飛行体を追跡する。このような回転体は、回転体の暴走や、産業用ロボットやアンテナ装置に接続するケーブルの長さ等による規制のため、回転範囲を規制する必要がある。
【0003】
回転体の回転範囲を規制する技術の一例が特許文献1に記載されている。 特許文献1に記載された回転軸のメカニカルストッパは図6又は図7に示すように、円筒状をした固定部21と、固定部21の側面に設けた軸24を中心にして回転する二個の突起25、26をL字形にもつ可動ストッパ20と、固定部21の側面に水平方向に設けた二個のストッパ27、28と、二個の突起の何れかが二個のストッパの何れかに当接するよう設けられたばね29と、固定部21の上部にあり中心を同じくする回転部23と、回転部23の下側側面に設けた一個の突出した固定ストッパ22と、を備えている。そして、回転部23の回転により固定ストッパ22が固定部21の可動ストッパ20の突起部に当たり、回転部23の回転を停止するようにしている。
【0004】
回転部23の通常の動作は、図6の(A)の状態(初期位置:Lの字形が左に45度程度傾いた状態)から+方向に進むときには、固定ストッパ22がL字型の可動ストッパ20の突起25を押し、この突起25がストッパ27でとまる(図6の(B)の状態)。このまま、+方向に進むと、固定ストッパ22がL字型の可動ストッパ20の突起26に当たり、回転部23の回転を停止する(図6の(C)の状態)。従って、初期位置から概ね+360度回転して停止する。 また、回転部23が図7の(A)の状態(初期位置)から−方向に進むときには、固定ストッパ22がL字型の可動ストッパ20の突起26を押し、この突起26がストッパ28でとまる(図7の(D)の状態)。このまま、−方向に進むと、固定ストッパ22がL字型の可動ストッパ20の突起25に当たり、回転部23の回転を停止する(図7の(E)の状態)。従って、初期位置から概ね−360度回転して停止する。
【0005】
しかし、初期位置で、この図7の(A)のように、突起26の位置が固定ストッパ22の回転軌跡の線より下になっている場合がある。これは、固定ストッパ22、可動ストッパ20、突起25,26及びばね29等の寸法や取り付け位置の設計ミス、各部品の取り付けの不具合等による。あるいは、振動等による経年変化で固定ストッパ22可動ストッパ20の取り付け位置が変化したこと等による。
【0006】
この場合には、回転部23が、初期位置から−方向に回転したときに、固定ストッパ22がL字型の可動ストッパ20の突起26を押さず突起26位置を通りすぎてしまう。このとき図7の(A)に示すように固定部21の側面側から見てバネ29が軸24のほぼ真上にあるので、L字型の可動ストッパ20を右あるいは左に倒す力がバランスし、L字型の可動ストッパ20の状態は次の(1)から(3)のうちのいずれかの状態になる。(1)L字型の可動ストッパ20が、この位置にとどまろうとする。(2)バネ29等にかかる振動などにより可動ストッパ20は、ストッパ27の方向に倒れる。(3)バネ29等にかかる振動などにより可動ストッパ20は、ストッパ28の方向に戻る。
【0007】
回転部23が、初期位置から−方向に回転したときに、例えば、上記(1)の状態になった場合、すなわち、可動ストッパ20がその位置にとどまった場合、その後に振動等により可動ストッパ20がストッパ27の方向に倒れたときには、回転部23がそのまま−方向に回転を続けると、図6の(B)の状態になる。そして、更に回転部が回転をつづけて図7の(D)の状態になった後に、回転部23は図7の(E)の状態で停止する。このときには、回転部23は初期位置から概ね720度回転することになる。このため、上記のような場合には、予定している角度とは大幅に異なる角度を回転することになるので、回転部23の暴走を止めたり、回転角度の規制をしたりすることができない。
【0008】
回転部23が、初期位置から−方向に回転したときに、例えば、上記(2)の状態になった場合、すなわち、可動ストッパ22がストッパ27の方向に倒れたときには、回転部23がそのまま−方向に回転を続けると、図6の(B)の状態になる。そして、上記(1)の場合と同様に、回転部23は初期位置から概ね720度回転することになる。このため、この場合も、予定している角度とは大幅に異なる角度を回転することになるので、回転部23の暴走を止めたり、回転角度の規制をしたりすることができない。
【0009】
回転部23が初期位置から−方向に回転したときに、例えば、上記(3)の状態になった場合、すなわち、可動ストッパ22がストッパ28の方向に倒れたときには、回転部は、上記した通常の動作を行う。このため、回転部に対し暴走の停止や回転角度の規制が行われる。
【0010】
【特許文献1】特開平5−289763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1で記載された回転体の回転範囲を規制する技術は、円筒状をした固定部と、固定部の側面に設けた軸を中心にして回転する二個の突起をL字形にもつ可動ストッパと、固定部の側面に水平方向に設けた二個のストッパと、二個の突起の何れかが二個のストッパの何れかに当接するよう設けられたばねと、固定部の上部にあり中心を同じくする回転部と、回転部の下側側面に設けた一個の突出した固定ストッパと、を備えている。そして、回転部の回転により固定ストッパが固定部の可動ストッパの突起部に当たり、回転部の回転を停止するようにしている。 しかし、初期位置で突起の位置が固定ストッパの回転軌跡の線より下になっている場合には、回転部が、初期位置から−方向に回転したときに、固定ストッパがL字型の可動ストッパの突起を押さず突起の位置を通りすぎてしまう。このときには、回転部は初期位置から概ね720度回転することになる。このため、上記のような場合には、予定している角度とは大幅に異なる角度を回転することになるので、回転部の暴走を止めたり、回転角度の規制をしたりすることができない、という問題がある。
【0012】
本発明の目的は、上述の課題を解決するストッパ機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のストッパ機構は、円筒管形状の固定部の円筒管内に設置され、当該固定部の中心軸を回転軸として回転する円筒形状の回転体の回転を停止させるストッパ機構において、自身の中心点からずれた偏心点を中心に前記固定部の外周を回転する円盤形状を有するカムと、自身の外周の一部の半径方向外側に突出して設置された回転側ストッパを有し、前記カムの外周を前記カムの中心点を中心に回転するストッパリングと、片側が前記回転体に固着され、他の片側が前記ストッパリングの半径方向に摺動自在に接続され、前記回転体の回転と連動して前記ストッパリングを回転させるとともに、所定の位置から前記カムも連動して回転させる回転体アーム部と、初期位置では前記回転側ストッパとは当接せず、前記回転体が略360度回転したときに、前記カムの前記中心点と前記偏心点との偏心距離の二倍の距離だけ外側に伸びた前記回転側ストッパと当接する位置に固着された固定側ストッパと、を備えて構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、偏心点を中心に回転するカムと、カムの中心点を回転する回転側ストッパを有するストッパリングとにより、回転体と連動して回転するストッパリングを所定の位置からカムも連動して回転させる。これにより、カムの偏心距離の二倍の距離だけ回転側ストッパの位置が外側に出てくるので、確実に固定側ストッパに当接させて回転体の回転を停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明のストッパ機構一つの実施の形態を示す斜視図である。
【0017】
図1に示す実施の形態を、この実施の形態のA−B断面図を示す図2を参照して説明する。 図1及び図2には、本実施の形態のストッパ機構とともに、このストッパ機構により回転を停止する回転体17も図示している。
【0018】
本実施の形態は、ベース(基盤)1と、固定側ストッパ2と、回転側ストッパ機構3とにより構成する。
【0019】
回転側ストッパ機構3は、固定台4と、固定部5と、第1リング6と、第2リング7と、カム8と、ストッパリング9と、回転側ストッパ10と、回転体アーム部11と、ピン12と、第1レバー13と、第2レバー14と、第1バネ15と、第2バネ16とにより構成する。
【0020】
直方体形状の固定側ストッパ2と回転側ストッパ機構3とは、平板形状のベース1に固定する。
【0021】
回転側ストッパ機構3は、その下部に円柱形状の固定台4を有し、この固定台4の底面をベース1に当接して固定する。
【0022】
固定部5は円筒管形状を有し、円筒管の中心軸を固定台4の円柱の中心軸に一致させて固定台4に固定する。
【0023】
回転体17は、固定部5の内側の円筒形状と略同一の直径を有する円筒形状を有し、固定部5の円筒管内に、固定部5の中心軸と一致する中心軸(第1回転軸)周りに回転自在に設置する。回転体17の上面には、例えば産業用ロボット、アンテナ等の回転対象を設置し、この回転対象を回転体17の回転に応じて回転する。
【0024】
回転体アーム部11は、回転体17の円筒の側曲面上部の一部に接続され、回転体17の円筒の半径方向に外側に延び、回転体17の回転とともに回転する。
【0025】
カム8は円盤形状をなし、この円盤の中心点からずれた位置(偏心点)を中心点とする小円盤をくり抜いた形状である。この小円盤の半径は固定部5の外側の円筒形状と略同一の半径であって、カム8は、このくり抜いた小円盤部分を固定部5の円筒の外側にはめ込み、固定部5の円筒の外周を回転自在に設置されている。このように、カム8は、カム8の円盤の中心点ではなく、偏心点を中心にして回転するように設置されている。
【0026】
ピン12は、カム8の円盤の固定台4と反対側の表面(円盤の上面)に設置し、この円盤の、カム8の回転軸となる第1回転軸からみてカム8の中心軸方向の延長線上の端部近傍に固定する。
【0027】
ストッパリング9は、カム8の円盤とほぼ同じ厚さのリングであり、カム8の周囲を回転自在に設置される。つまり、ストッパリング9は、カム8の円盤の中心点を回転軸(第2回転軸)として回転する。
【0028】
回転側ストッパ10は、ストッパリング9と同じ厚さの直方体であり、ストッパリング9の外周の一部に設置され、ストッパリング9の半径方向外側に延び、ストッパリング9の回転とともに回転する。回転側ストッパ10の直方体には、ストッパリング9の半径方向に長径を有する長穴が開いている。
【0029】
なお、回転体アーム部11は、例えば直方体であり、先端部分を折り曲げて回転側ストッパ10の長穴に入れる。この折り曲げた先端部分は、長穴の長手方向に摺動可能な状態で回転側ストッパ10と接続される。
【0030】
第1リング6は、固定部5の円筒の外周に回転自在に設置したリングであり、固定部5の円筒管の外曲面にはめ込み、カム8の上部に設置する。 第1リング6は、回転体17の第1回転軸を中心にして回転する。
【0031】
第2リング7は、固定部5の円筒の外周に回転自在に設置したリングであり、固定部5の円筒管の外曲面にはめ込み、第1リング6の上部に設置する。 第2リング7は、回転体17の第1回転軸を中心にして回転する。
【0032】
第1レバー13は、第1リング6の外周の一部に設置され、第1リング6の半径方向外側に延び、その中腹に穴が開いている。
【0033】
第2レバー14は、第2リング7の外周の一部に設置され、第2リング7の半径方向外側に延び、その中腹に穴が開いている。
【0034】
第1レバー13と第2レバー14は、ピン12を挟んで対峙する。
【0035】
第1バネ15は、一端が第2リング7の上側で、固定部5の一部に固定され、他端が第1レバー13の穴に接続される。
【0036】
第2バネ16は、一端が、第1バネ15が固定された部分と同一の固定部5の部分に固定され、他端が第2レバー14の穴に接続される。
【0037】
次に、以上のように構成された本実施の形態のストッパ機構の動作を図1乃至図5を参照して詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明のストッパ機構の一つの実施の形態を示す斜視図である。 この図は、本発明のストッパ機構の初期位置の状態を示している。
【0039】
図2は、図1で示す本実施の形態のA−B断面図を示す。
【0040】
図3は、本発明のストッパ機構の初期位置の一例を説明する図である。 ストッパ機構の初期位置とは、ストッパリング9の回転軸となるカム8の円盤の中心点(第2回転軸)と回転体17の回転軸となる中心点(第1回転軸)とを結んだ直線(第1の線)の第1回転軸方向に延長した直線上に、固定側ストッパ2の中心線C、回転側ストッパの中心線D及び回転体アーム部11の中心線Eのそれぞれが重なる位置を言う。そして、回転側ストッパ10と固定側ストッパ2とをわずかな隙間を持って当たらないように設置する。また、ピン12は、第1の線の第2回転軸方向に延長した直線上に位置する。
【0041】
図4は、図1に示す回転体17がマイナス方向(時計周り)に概ね180度回転したときの状態を示す斜視図である。この回転の過程で、回転体17の回転に連動して回転体アーム部11で接続されたストッパリング9が回転側ストッパ10とともに回転する。ストッパリング9は第2回転軸を中心に回転するので、第1回転軸から見たときの回転側ストッパ10の位置は、初期位置よりも外側に移動しているが、この移動は、回転体アーム部11の先端部分が回転側ストッパ10に設けられた長穴を半径方向に摺動することにより吸収されている。したがって、第1回転軸を中心とする回転体17の回転と連動してストッパリング9が第2回転軸を中心として回転することになる。図4の状態で回転体アーム部11は、カム8に設置されたピン12に初めて当接する。つまり、このときまでカム8は回転せずに、ストッパリング9が第2回転軸を中心として回転する。
【0042】
図5は、図4に示す状態から回転体17が更にマイナス方向に概ね180度回転したときの状態を示す斜視図である。この回転の過程では、回転体アーム部11がカム8に設置されたピン12に当接したまま回転するので、カム8が回転体17の回転に連動して回転するようになる。カム8の第1回転軸を中心とした回転がはじまると、ストッパリング9の第2回転軸を中心とした回転は停止してカム8とともに第1回転軸を中心として回転することになる。そのため、図4の状態で、第1回転軸から見たときの初期位置よりも外側に移動した回転側ストッパ10の位置は、そのまま保たれた状態で回転して図5に示す状態となる。つまり、初期位置よりも外側に移動した回転側ストッパ10が固定側ストッパ2に当接して回転体17の回転を停止させる。
【0043】
以上のように構成された本実施の形態を詳細に説明する。
【0044】
最初に、回転体17を初期位置から−360度の位置まで回転し、その後に、逆回転することにより初期位置に戻る場合の説明をする。
【0045】
図1において、回転体17を初期位置から概ね−180度回転させると、回転体17の回転に基づいて回転体アーム部11が第1回転軸を中心に回転する。回転体アーム部11は、その先端部分が回転側ストッパ10の長穴に入っているので、前述したように、回転体アーム部11の回転に連動して回転側ストッパ10がストッパリング9と共にカム8の周囲を第2回転軸を中心に回転する。このときカム8は回転しないので、図4に示すように、ストッパリング9の回転にともない回転側ストッパ10の第1回転軸からの距離が、概ね、初期位置のときの距離より第1回転軸と前記第2回転軸との間隔(偏心距離)の二倍分多くなる。この回転位置で回転体アーム部11がピン12に引っ掛かる。
【0046】
回転体17を、回転体アーム部11がピン12に引っ掛かった図4で示す位置から更に−方向に回転させると、回転体アーム部11がピン12を引っ掛けたまま第1回転軸を中心に回転しこの回転に応じてカム8も第1回転軸を中心に回転する。このように、回転体アーム部11がピン12に引っ掛かった状態になった以降の動作は、回転体アーム部11の回転に連動してカム8とストッパリング9とが一体となって回転する。カム8の第1回転軸を中心にした回転は、その偏心距離により第2回転軸を固定側ストッパ2に近づける方向に動かすので、ストッパリング9に取り付けられている回転側ストッパ10は、第1回転軸から偏心距離の二倍の距離の分だけ伸びた状態で固定側ストッパ2に近づく。そして、図5に示すように、回転側ストッパ10は、初期位置から−360度の位置の近傍で固定側ストッパ2に当たり、回転体17は停止する。ここで−360度の位置の近傍とは、−360度の位置より約(((W+w)/2)/2Lπ)×360)度手前である。ここで、Wは、回転側ストッパ10の回転体アーム部11の回転方向の巾、wは、固定側ストッパ2の回転体アーム部11の回転方向の巾、Lは、第1回転軸から固定側ストッパ2までの距離である。ところで、図4で示す位置から−360度の近傍まで、回転体アーム部11がピン12を引っ掛けたまま回転すると、回転体アーム部11の回転に応じて第1レバー13がピン12に押されて第1リング6とともに回転し、第1レバー13に接続した第1バネ15は、固定部5に一端を固定した箇所から第1レバー13の現在位置まで伸びる。
【0047】
回転体17を、回転側ストッパ10が固定側ストッパ2に当たった位置から回転体アーム部11がピン12に引っ掛かった位置まで逆回転させると、回転体アーム部11の回転に応じて、伸びていた第1バネ15の付勢により第1レバー13がピン12を押して、カム8が第1回転軸を中心に逆回転する。このとき、回転側ストッパ10の第1回転軸からの距離は偏心距離の二倍分多くなったまま回転する。そして、図4で示す回転体アーム部11がピン12に引っ掛かった位置で第1バネ15が元の長さになり付勢がなくなりカム8の回転が停止する。
【0048】
回転体17を、図4で示す回転体アーム部11がピン12に引っ掛かった位置から初期位置に更に逆回転させると、回転体17の回転に基づいて第1回転軸を中心に回転する回転体アーム部11の回転に連動して回転側ストッパ10がストッパリング9と共にカム8の周囲を第2回転軸を中心に回転するようになる。このときカム8は回転しないので、図1に示すように、ストッパリング9の回転にともない回転側ストッパ10の第1回転軸からの距離が、初期位置における距離になり、回転体17及びストッパ機構が初期位置の状態に戻る。
【0049】
以上により、回転体17は初期位置から概ね−360度の位置まで回転し、その後逆回転することにより初期位置に戻ることができる。

【0050】
次ぎに、回転体17を初期位置から+360度の位置まで回転し、その後に、逆回転することにより初期位置に戻る場合の説明をする。
【0051】
ところで、図1で示す、本実施の形態のストッパ機構は、上空から見たときに第1の線に対し完全に左右対称である。このため、最初に説明した、“回転体17を初期位置から−360度の位置まで回転し、その後に、逆回転することにより初期位置に戻る場合”を次のように読み替えれば良い。 すなわち、“−”を“+”に読み替える。“第1リング“を“第2リング“に読み替える。“第1レバー”を“第2レバー”に読み替える。“第1バネ”を“第2バネ”に読み替える。図4を左右対称に読み替える(すなわち、図4を初期位置の第1の線と第1回転軸とを含む面に平行な位置に図4全体が写るように置いた鏡により写した図として読み替える)。図5を左右対称に読み替える(すなわち、図5を初期位置の第1の線と第1回転軸とを含む面に平行な位置に図5全体が写るように置いた鏡により写した図として読み替える)。
【0052】
これにより、回転体17は初期位置から概ね+360度の位置まで回転し、その後逆回転することにより初期位置に戻ることができる。
【0053】
以上の実施の形態においては、カム8の盤面上に設置するピン12を第1の線の第2回転軸方向に延長した直線上に配置するとして説明したが、初期位置における回転側ストッパと固定側ストッパとの位置関係(隙間の間隔)と、カム8が回転軸とする第1回転軸のカム8の円盤の中心点からの偏心距離との関係において、回転体が初期位置から略360度回転したときに、回転側ストッパが固定側ストッパに当接する位置に達するように設定されている限りにおいて、ピン12をカム8の円盤上に配置する位置は任意に決めてもかまわない。
【0054】
以上の説明では、第1リング6と第2リング7の二つのリング、第1レバー13と第2レバー14の二つのレバー、及び、第1バネ15と第2バネ16の二つのバネをそれぞれ使用している。しかし、二つのリング、二つのレバー及び二つのバネをそれぞれ統合して、一つのリング、一つのレバー及び一つのバネとしても良い。
【0055】
このときには、例えば、リングを、固定部5の円筒管の外周曲面に当接させて固定部5にはめ込み、カム8の上部に設置し、第1回転軸を中心にして回転させるようにする。レバーは、リングの外周の一部に設置しリングの半径方向外側に延ばし、その中腹に穴を空け先端を二股にしてピン12を挟持する。バネは、一端を、リングの上側で、回転体17を第1回転軸の方向から見たときの第1の線上の固定部5の一部に固定し、他端がレバーの穴に接続するようにする。 また、一つのリング、一つのレバー及び一つのバネに統合する他の例として、次のようにしても良い。例えば、リングを、固定部5の円筒管の外周曲面に当接させて固定部5にはめ込み、カム8の上部に設置し、第1回転軸を中心にして回転させるようにする。レバーは、リングの外周の一部に設置しリングの半径方向外側に延ばし、その中腹に穴を空け先端を細く加工する。バネは、一端を、リングの上側で、回転体17を第1回転軸の方向から見たときの第1の線上の固定部5の一部に固定し、他端がレバーの穴に接続するようにする。そして、ピン12の中腹に穴を空け、レバーの先端をこの穴に入れて、ピン12とレバーを連動して動作させる。 これらにより、回転体17が初期位置から概ね−360度の位置まで回転しその後逆回転したときに使用していた第1リング6、第1レバー13及び第1バネ15と、回転体17が初期位置から概ね+360度の位置まで回転しその後逆回転したときに使用していた、第2リング7、第2レバー14及び第2バネ16を、それぞれ一つのリング、一つのレバー、及び一つのバネに統合することができる。
【0056】
また、以上の説明では、固定台4と固定部5を別のものとして固定部5を固定台4の上に置くようにしたが、固定台4と固定部5を一体的に形成し固定部の下部が固定台になっていても良い。
【0057】
以上のように、本発明によれば、 図1の初期位置から、概ね+/−360度の位置まで回転することができる。この回転範囲内であれば、回転体17をどの回転位置からどちらの方向に向かって回転させても、概ね+/−360度の位置で、回転側ストッパ10が固定側ストッパ2に当たり、回転体17の回転を止めることができる。このため、回転体17の暴走を止めたり、回転角度の規制をしたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のストッパ機構一つの実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1で示す本実施の形態のA−B断面図を示す。
【図3】本発明のストッパ機構の初期位置の一例を説明する図である。
【図4】図1に示す本実施の形態の回転体が−方向(時計回り)に概ね180度回転したときの状態を示す斜視図である。
【図5】図4に示す状態にある回転体が、更に−方向に回転し、回転側ストッパが固定側ストッパに当たった時の状態を示す斜視図である。
【図6】回転体の回転範囲を規制する技術の一例を示すメカニカルストッパの+方向の動作を示す図である。
【図7】回転体の回転範囲を規制する技術の一例を示すメカニカルストッパの−方向の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ベース
2 固定側ストッパ
3 回転側ストッパ機構
4 固定台
5 固定部
6 第1リング
7 第2リング
8 カム
9 ストッパリング
10 回転側ストッパ
11 回転体アーム部
12 ピン
13 第1レバー
14 第2レバー
15 第1バネ
16 第2バネ
17 回転体
20 可動ストッパ
21 固定部
22 固定ストッパ
23 回転部
24 軸
25 突起
26 突起
27 ストッパ
28 ストッパ
29ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒管形状の固定部の円筒管内に設置され、当該固定部の中心軸を回転軸として回転する円筒形状の回転体の回転を停止させるストッパ機構において、
自身の中心点からずれた偏心点を中心に前記固定部の外周を回転する円盤形状を有するカムと、
自身の外周の一部の半径方向外側に突出して設置された回転側ストッパを有し、前記カムの外周を前記カムの中心点を中心に回転するストッパリングと、
片側が前記回転体に固着され、他の片側が前記ストッパリングの半径方向に摺動自在に接続され、前記回転体の回転と連動して前記ストッパリングを回転させるとともに、所定の位置から前記カムも連動して回転させる回転体アーム部と、
初期位置では前記回転側ストッパとは当接せず、前記回転体が略360度回転したときに、前記カムの前記中心点と前記偏心点との偏心距離の二倍の距離だけ外側に伸びた前記回転側ストッパと当接する位置に固着された固定側ストッパと、
を備えたことを特徴とするストッパ機構。
【請求項2】
前記カムは、当該円盤の半径方向外側の位置に当該円盤面から突出して配置されたピンを有し、当該ピンは前記回転体アーム部と当接した以降は前記回転体の回転と連動して前記カムを回転させることを特徴とする請求項1記載のストッパ機構。
【請求項3】
前記初期位置における前記回転側ストッパと前記固定側ストッパの位置と、前記カムの前記中心点と前記偏心点との位置と、前記ピンの前記カムの円盤上における配置位置とは、前記回転体が前記初期位置から+方向又は−方向に略360度回転したときに、前記回転側ストッパが前記固定側ストッパに当接する位置に達するように設定されていることを特徴とする請求項2記載のストッパ機構。
【請求項4】
前記回転体が+方向又は−方向に略360度回転して前記回転側ストッパが前記固定側ストッパに当接した以降、前記回転体を逆方向に回転させた際に、前記回転体アーム部が前記ピンと最初に当接した位置に前記カムを当該逆方向に回転させる付勢手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかの請求項に記載のストッパ機構。
【請求項5】
前記付勢手段は、前記固定部の外周円に接して回転自在なリングに固着したレバー部と、前記固定部と前記レバー部とに接続された付勢部とを有し、当該付勢部は、前記ピンが前記レバー部と当接して回動して前記リングを回転させると前記回動に応じて付勢力を有し、前記ピンの回動力がなくなると前記付勢力により当該リングを逆方向に回転させて前記レバー部で前記ピンを押し戻すことを特徴とする請求項4記載のストッパ機構。
【請求項6】
前記付勢手段は、前記回転体が+方向に回転したときに機能するものと、前記回転体が−方向に回転したときに機能するものとの二つがあり、二つの前記レバー部は前記初期位置で前記ピンを互いに挟んで対峙することを特徴とする請求項5記載のストッパ機構。
【請求項7】
前記レバー部は、先端が二股になり前記ピンを挟持し、前記ピンと一体で回動することを特徴とする請求項5記載のストッパ機構。
【請求項8】
前記ピンは穴部を有し、前記レバー部の先端が前記穴部に挿入されて前記ピンと一体で回動することを特徴とする請求項5記載のストッパ機構。
【請求項9】
円筒管形状の固定部の円筒管内に設置され、当該固定部の中心軸を回転軸として回転する円筒形状の回転体の回転を停止させるストッパ機構において、
前記固定部の外周に設置され、円盤形状を有し、当該円盤の中心とは異なる偏心点を中心とした前記固定部の外周円に接して回転自在な円形状のくり抜き部と、
当該円盤の中心点と前記偏心点を結ぶ直線上の当該円盤の中心点側で半径方向外側の当該円盤面から突出して配置されたピンを有するカムと、
前記カムの外周に設置され、当該外周円に接して回転自在なストッパリングと、
前記ストッパリングの外周の一部に前記ストッパリングの半径方向外側に突出して設置された回転側ストッパと、
片側が前記回転体に固着され、他の片側が前記ストッパリングの半径方向に摺動自在に前記回転側ストッパと接続され、前記回転体の回転と連動して前記ストッパリングを回転させ、前記ピンと当接した以降は、前記回転体の回転と連動して前記カムを回転させる回転体アーム部と、
前記回転側ストッパと当接することにより前記回転体の回転を止める固定側ストッパと
を備え、
前記カムの円盤の中心点と前記偏心点を結ぶ直線上の当該円盤の偏心点側に前記回転側ストッパが位置する状態を初期位置として、前記回転側ストッパが回動自在な状態で、前記固定側ストッパが前記回転側ストッパと対向する位置で基盤に固着されていることを特徴とするストッパ機構。
【請求項10】
前記初期位置における前記回転側ストッパと前記固定側ストッパの位置、及び前記カムの円盤の中心点と前記偏心点との位置は、前記回転体が前記初期位置から略360度回転したときに、前記回転側ストッパが前記固定側ストッパに当接するように設定されていることを特徴とする請求項9記載のストッパ機構。
【請求項11】
前記回転体が略360度回転して前記回転側ストッパが前記固定側ストッパに当接した以降、前記回転体を逆方向に回転させた際に、前記回転体アーム部が前記ピンと最初に当接した位置に前記カムを当該逆方向に回転させる付勢手段を有することを特徴とする請求項9又は請求項10記載のストッパ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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