説明

ストリーム分割装置及び受信装置

【課題】入力されたトランスポートストリーム(TS)を主伝送路と副伝送路の2つの伝送路用に分割するストリーム分割装置、及び、分割されたTSPを受信して、当該1つのTSに再構成する受信装置を提供する。
【解決手段】ストリーム分割装置は、TSPを予め定めた種別に識別し、識別結果を当該TSPとともに出力するストリーム弁別部と、前記識別結果と伝送ブロックにおける予め規定したTSスロットの種類の順序を判別する構造情報を用いて、TSPを、連続するPCRタイムスタンプを持つTSPの間で、主伝送路で送るTSPの数の割合が常に一定となるように修正を行い、該修正に伴うPCRタイムスタンプの補正を行うストリーム構造化部と、構造化したTSのTSPについて3種類に分離し、主伝送路用及び副伝送路用に出力するストリーム分離部230とを備える。受信装置は、ストリーム合成部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信側でMPEG−2 TS(Transport Stream)を2つに分割し、独立した2つの伝送路に分けて伝送し、受信側で再び1つのMPEG−2 TSに合成するためのストリーム分割装置及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MPEG−2 TSは、クロック情報および情報源符号化技術により圧縮された映像信号や音声信号、データ放送のデータ、PSI/SIなどの複数のコンポーネントを1本のストリームに多重して伝送することができる。各コンポーネントはpidという識別子で識別される固定長のパケット(以下、「TSP」と称する)に格納される。MPEG−2 TSでは、映像信号や音声信号に対して符号化を行い圧縮した信号を作成するエンコーダと、この信号を復号し映像信号や音声信号を再生するデコーダを同期して動作させる機能を有する。エンコーダは、間歇的にエンコーダが参照するクロックのサンプル値をPCR (Program Clock Reference)としてTSPに格納し伝送する。受信側は、受信したPCRを用いてデコーダのクロックをエンコーダのクロックに同期させる。PCRによりエンコーダとデコーダを同期させることができるが、デコーダのクロックを安定に保つためには、PCRを伝送するTSPの伝送遅延ジッタを小さくする必要がある。
【0003】
MPEG−2 TSでは同時に複数の映像や音声信号を1本のMPEG−2 TSに多重して伝送することができる。例えば、衛星デジタル放送では2つのチャンネルの映像音声が一つのTSに多重されて伝送されている。
【0004】
この複数のコンポーネントが多重されたMPEG−2 TSのストリームを2つの伝送路で分けて伝送するには、MPEG−2 TSの分割および合成が必要となる。
【0005】
複数のコンポーネントが含まれるMPEG−2 TSから、特定のコンポーネントだけをとりだして、ビットレートの小さな2つのMPEG−2 TSをつくることで、ストリームを分割することができる。ストリームの分割の例としては、2つのチャンネルの映像音声信号が含まれるMPEG−2 TSから、不要なチャンネルの映像音声信号を格納するTSPを削除した部分的なTS(パーシャルTS)を作成し、記録することが行われている。
【0006】
このように一部のTSPを削除して作成したMPEG−2 TSは、一般にビットレートが大きく変動するVBR(Variable Bit Rate)の性質を持つ。VBRストリームの伝送には最大ビットレート分の伝送路を確保する必要があり、帯域利用効率が悪いという問題がある。
【0007】
そこで、帯域利用効率を上げるためにMPEG−2 TSのビットレートを平滑化するCBR(Constant Bit Rate)信号への変換が行われる。平滑化処理にともないTSPの伝送時刻が変化し伝送ジッタが発生するので、平滑化に当たってはPCRタイムスタンプの値の修正が必要となる。
【0008】
逆に、複数のMPEG−2 TSを足し合わせ1つのMPEG−2 TSにする場合にも、合流に伴うジッタが発生するため、ジッタの吸収もしくはタイムスタンプの値の修正が必要である。また、それぞれのMPEG−2 TSで伝送されるコンポーネントのタイミングもデコード時間が一致するようにタイミングをあわせる必要がある。このためPCRタイムスタンプの値の修正と、合成する2つのストリームに属するTSPの時間的順序が反転しないようにタイミングを合わせる必要がある。
【0009】
このように、MPEG−2 TSを2つに分割し、2つの伝送路に分けて伝送し、受信側で再び1つのMPEG−2 TSに合成する場合には、タイミング合わせと、分割・合成処理の後でのPCRタイムスタンプの値の修正が必要であった。
【0010】
1つのMPEG−2 TSのストリームを複数の階層にわけて伝送するシステムに地上デジタル放送ISDB−Tのシステムがある。ISDB−Tでは、MPEG−2 TSを複数の階層に分割して伝送する能力を持っている(例えば、非特許文献1参照)。
【0011】
ISDB−Tでは、MPEG−2 TSを、モードおよびガードインターバル比で定められた個数のトランスポートストリームパケット(TSP)で構成された多重フレームを基本単位として伝送する。ISDB−Tではこの多重フレーム上のTSPの配置は伝送される階層毎に予め固定的に定めている。
【0012】
ワンセグの受信機のように一部の階層だけを受信すると、パーシャルTSと同様にTSPの時間間隔が変わり、伝送ジッタが発生する。
【0013】
そこで、地上デジタル放送では、PCRタイムスタンプを持つTSPは、1多重フレーム期間において1サービスにつきモード1では1個、モード2では2個、モード3では4個のみを同一周期で多重する運用制限を行うことにより、一部の階層だけを受信してもPCRタイムスタンプを持つTSPの伝送周期を一定としている。この運用制限により、必ず多重フレーム毎に決められた数のPCRタイムスタンプを伝送しなければならないが、一部の階層のみを受信を行う場合にもPCRタイムスタンプの値の修正を不要としている。
【0014】
このように2つに分割されて伝送されたストリームを1つのストリームに多重し直すかわりに、それぞれのストリームを独立して再生しその再生タイミングをあわせて再生することにより、同等の効果をもたらす技法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0015】
この技法では、それぞれのコンポーネントのデコーダを同期して動作するように外部から制御する必要があるが、一般的なデコーダのLSIではこのような外部同期動作のための機能が提供されていないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【非特許文献1】ARIB STD−B31 1.8版 地上デジタルテレビジョン方法の伝送方式、2009年
【非特許文献2】K. Matsumura, “Personalization of Broadcast Programs using Synchronized Internet Content”, IEEE International Conference on Consumer Electronics 2010,2010年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
地上デジタル放送では、複数の階層を一体として伝送するシステムであるため、MPEG−2 TSが分けて伝送されるそれぞれの階層の伝送路は、送信側と受信側が同期した同期回線であり、また、それらが共通のクロックに同期した伝送路で、それらの遅延も完全に一致している伝送路である。このため、別々の階層で伝送されるTSPを1つの多重フレームとして扱うことができる。
【0018】
しかしながら、1つのMPEG−2 TSについて、一方はデジタル放送の伝送路、他方はインターネットの伝送路というように独立した2つの伝送路で伝送する場合には、いわば片方は同期回線、他方は非同期のパケット通信網となり、これらの遅延も異なる上に、インターネットは大きなジッタが発生しうる伝送路でもある。このため、ISDB−Tの技法をそのまま適用することはできない。
【0019】
そこで、MPEG−2 TSを独立した2つの伝送路に分けて伝送し、受信側で再び1つのMPEG−2 TSに合成するには、2つの伝送路間のタイミング合わせと、分割・合成処理の後でのPCRタイムスタンプの値の修正が必要であった。
【0020】
本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、送信側でMPEG−2 TS(Transport Stream)を2つに分割し、独立した2つの伝送路に分けて伝送し、受信側で再び1つのMPEG−2 TSに合成するためのストリーム分割装置及び受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
即ち、本発明のストリーム分割装置は、入力されたトランスポートストリーム(TS)を主伝送路と副伝送路の2つの伝送路用に分割するストリーム分割装置であって、入力されたTSのパケット(TSP)を予め定めた種別に識別し、識別結果を当該TSPとともにストリーム構造化部に出力するストリーム弁別部と、前記識別結果と伝送ブロックにおける予め規定したTSスロットの種類の順序を判別する構造情報を用いて、前記ストリーム弁別部から入力されたTSPを、連続するPCRタイムスタンプを持つTSPの間で、主伝送路で送るTSPの数の割合が常に一定となるように該TSPの順序変更及びヌルパケットの加除を含む修正を行い、該修正に伴うPCRタイムスタンプの補正を行って、予め定めた構造情報に従うTSの構造化を行うストリーム構造化部と、前記ストリーム構造化部によって構造化したTSのTSPについて、前記構造情報に従って、PCRタイムスタンプをもたずに主伝送路で伝送されるTSP(TYPE_m)と、PCRタイムスタンプの有無によらず主伝送路で伝送されるTSP(TYPE_t)と、副伝送路で伝送されるTSP(TYPE_s)の3種類に分離し、前記TYPE_mのTSP及び前記TYPE_tのTSPに対してTSP間隔の均一化を施して主伝送路用に出力するとともに、前記TYPE_sのTSPと伝送ブロックの識別を行うための伝送ブロックの識別情報を副伝送路用に出力するストリーム分離部と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
また、本発明のストリーム分割装置において、前記ストリーム分離部は、当該伝送ブロックにおけるPCRタイムスタンプを持つTSPのPCRタイムスタンプの値と当該伝送ブロックにおけるTSスロットの位置を示す位置情報とを出力する手段を更に有することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の受信装置は、1つのトランスポートストリーム(TS)を主伝送路と副伝送路の2つの伝送路用に分割されたTSPを受信して、当該1つのTSに再構成する受信装置であって、当該1つのTSが、PCRタイムスタンプをもたずに主伝送路で伝送されるTSP(TYPE_m)と、PCRタイムスタンプの有無によらず主伝送路で伝送されるTSP(TYPE_t)と、副伝送路で伝送されるTSP(TYPE_s)の3種類に分離され、前記TYPE_mのTSP及び前記TYPE_tのTSPに対してTSP間隔の均一化を施して主伝送路にて伝送され、前記TYPE_sのTSPと伝送ブロックの識別を行うための伝送ブロックの識別情報が副伝送路にて伝送されるように規定されており、主伝送路で送るTSPの数の割合が常に一定となるように該TSPの順序変更及びヌルパケットの加除を含む修正を行い、該修正に伴うPCRタイムスタンプの補正を行う予め定めた構造情報に従って当該1つのTSが構造化されており、主伝送路で伝送されたTSPを受信する主信号用受信部と、副伝送路で伝送されたTSP及び伝送ブロックの識別を行うための伝送ブロックの識別情報を受信する副主信号用受信部と、前記構造情報に従って、主伝送路を介して受信したTSPについて、前記TYPE_tのTSスロット及びTYPE_mのTSスロットに格納し、PCRタイムスタンプを含むTSPを格納するときのTSスロットの種類がTYPE_tでない場合に、当該TSPの格納位置のTSスロットがTYPE_tとなるように伝送ブロックの配置を修正し、副伝送路を介して受信したTSPについて、伝送ブロックの前記TYPE_sのTSスロットに順番に格納するストリーム合成部とを備え、該ストリーム合成部は、前記伝送ブロックの識別情報に従って、伝送ブロックの前記TYPE_sのTSスロットが全て格納される前に、副伝送路から受信するTSPの伝送ブロックの区切りに到達すると判断した場合には、この伝送ブロック内の以後のTYPE_sのTSスロットにヌルパケットを格納し、当該1つのTSを合成することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の受信装置において、前記ストリーム合成部は、主伝送路から受信したTSPに対する伝送ブロックの識別情報を抽出して、伝送ブロックごとに所定の伝送バッファに格納する手段と、副伝送路から伝送ブロックの識別情報を受信して抽出し、前記伝送バッファ内の伝送ブロックの識別情報と一致する伝送ブロックの格納領域に、副伝送路から受信したTSPを格納する手段と、を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の受信装置において、前記ストリーム合成部は、副伝送路から得られた伝送ブロックにおけるPCRタイムスタンプをもつTSPのPCRタイムスタンプの値と送信側によって予め規定された当該伝送ブロックにおけるTSスロットの位置情報を抽出する手段と、主伝送路から受信したTSPが副伝送路から入力されたこのPCRタイムスタンプ値と同じ値を持つか否かを判別し、同じ値を持つと判別した場合には、当該TSPを格納するTSスロットが、当該伝送ブロックにおけるTSスロットの位置情報と合致するように、伝送ブロックの配置を修正する手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるストリーム分割装置は、独立した2つの伝送路で伝送する場合においても、主伝送路で伝送するTSPと副伝送路で伝送するTSPとを対応づけて伝送することができる。
【0027】
また、連続するPCRタイムスタンプをもつTSPの間で、主伝送路で送るTSPと副伝送路で送るべきTSPの数の割合を一定に保つことができることから、主伝送路から受信したTSPだけをデコードする受信装置も、両方の伝送路から受信したTSPを合成してデコードする受信装置もPCRタイムスタンプの修正が不要となるストリームを生成することができる。また、PCRタイムスタンプの伝送頻度を固定する運用制限を不要にすることができる。
【0028】
また、本発明による受信装置は、独立した2つの伝送路である、主伝送路および副伝送路からそれぞれTSPを受信し、これらを1つのMPEG−2 TSに合成し利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムにおける構造情報を例示する図である。
【図3】本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムにおける伝送ブロックのTSスロットの配置例を示す図である。
【図4】本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムにおけるストリーム分割装置のストリーム構造化部のブロック図である。
【図5】本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムにおけるストリーム分割装置のストリーム構造化部によって構造化するストリームの例を示す図である。
【図6】本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムにおけるストリーム分割装置のストリーム分離部のブロック図である。
【図7】本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムにおける受信装置のストリーム合成部のブロック図である。
【図8】本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムにおけるストリーム分割装置のストリーム構造化部の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明による各実施例のストリーム分割伝送システムについて説明する。本実施例のストリーム分割伝送システムの説明から、本発明に係るストリーム分割装置及び受信装置も明らかになる。まず、実施例1のストリーム分割伝送システムについて説明する。
【0031】
(実施例1)
図1は、本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムの構成例を示す図である。本実施例のストリーム分割伝送システムは、ストリーム分割装置200と、主伝送路用送信装置310と、副伝送路用送信装置311と、受信装置400から構成される。
【0032】
ストリーム分割装置200は、MPEG−2 TSの符号化データを入力し、送信装置310及び送信装置311にMPEG−2 TSを分割して出力する装置であり、ストリーム弁別部210と、ストリーム構造化部220と、ストリーム分離部230と、弁別情報設定部240と、構造情報設定部250とを備える。
【0033】
ストリーム弁別部210は、入力されたTSのTSPの種別を識別し、識別結果をTSPとともにストリーム構造化部220に出力する。ストリーム弁別部210が識別するTSPの種類は、ヌルパケット(以下、「TYPE_N」と称する)、PCRタイムスタンプを持つTSP(以下、「TYPE_T」と称する)、PMT(Program Map Table)のpcr_pidで指定されたpidを持つがPCRタイムスタンプを持たないTSP(以下、「TYPE_P」と称する)、ヌルパケットでもPMTのpcr_pidで指定されたpidでもないが主伝送路で送るTSP(以下、「TYPE_M」と称する)、副伝送路で送るTSP(以下、「TYPE_S」と称する)の5種類である。
【0034】
弁別情報設定部240は、ヌルパケットでなく、PMTのpcr_pidで指定されたpidでもないTSPを主伝送路に送るか、又は副伝送路に送るかを指定して識別するための情報であり、pidが同じTSPについては、同じ伝送路で送るように指定する。
【0035】
弁別情報の例としては、例えば主伝送路に送るTSPのpidの範囲を特定する情報とすることができる。或いは又、副伝送路に送るTSPのpidの条件を設定して伝送路を指定するように構成してもよい。また、これらを組み合わせたものであってもよく、pidの代わりにPMTのコンポーネントタグの値を判定条件として伝送路を指定するように構成してもよい。
【0036】
例えば、弁別情報によって、副伝送路で伝送するpidの最小値を0x200とし、副伝送路で伝送するpidの最大値を0x3FFとして条件を設定し、伝送路を指定することができる。
【0037】
ストリーム構造化部220は、ストリーム弁別部210から入力されたTSPを、識別結果に基づいて、構造情報設定部250からの構造情報を用いて、PCRタイムスタンプをもつTSPの間にあるTSPにおいては主伝送路で送るTSPの数の割合が常に一定となるようにTSPの順序変更及びヌルパケットの加除を行う修正を行い、これに伴うPCRタイムスタンプの補正を行って、ストリーム分離部230にMPEG−2 TSを出力する。このストリーム構造化部220におけるストリームの順序変更及びヌルパケットの加除を行う修正とPCRタイムスタンプの補正を「ストリーム構造化」と称することにする。
【0038】
構造情報は、伝送ブロックにおける予め規定したTSスロットの種類の順序を判別する情報である。伝送ブロックは、一定数(NB)のTSスロットで構成され、各TSスロットはTSPを1つだけ格納することができる。TSスロットには3つの種類があり、即ち、PCRタイムスタンプをもたず主伝送路で伝送されるTSPか、又はヌルパケットしか格納できないTSスロット(以下、「TYPE_m」と称する)、PCRタイムスタンプの有無によらず主伝送路で伝送されるTSPか、又はヌルパケットしか格納できないTSスロット(以下、「TYPE_t」と称する)、副伝送路で伝送されるTSPか、又はヌルパケットしか格納できないTSスロット(以下、「TYPE_s」と称する)のいずれかである。
【0039】
伝送ブロックにおけるTYPE_m, TYPE_t, TYPE_sの数及び位置は、変化しない。この構造化を表現する構造情報の例として、文字tをTYPE_t、文字mをTYPE_m、文字sをTYPE_sのTSスロットに対応するとして文字列で表す。この表現方法を用いると、図2に示す構造情報の伝送ブロックは、“tmss”で表すことができる。また、図3に示す構造情報の伝送ブロックは、“mtmssmtsmsmtssm”で表すことができる。
【0040】
ストリーム構造化部220のストリーム構造化は、入力されたTSPを伝送ブロックに格納して、一定の時間間隔のTSPを生成する。
【0041】
図3に示すように、TYPE_tのTSスロットを1つの伝送ブロック内に2つ以上設ける場合には、ストリーム構造化部220は、或るTYPE_tとその次に伝送されるTYPE_tのTSスロットとの区間におけるTYPE_mのTSスロット数及びTYPE_sのTSスロット数が、どの区間でも等しくなるようにTYPE_tのTSスロットを配置する。ここで、ストリーム構造化部220は、伝送ブロックの最初のTSスロットから最初TYPE_tのTSスロットまでの区間と伝送ブロックの最後のTYPE_tのTSスロットの後から伝送ブロックの最後のTSスロットまでの区間については、合算したTYPE_mのTSスロット数及びTYPE_sのTSスロット数が他の伝送ブロックの区間と等しくなるようにTYPE_tのTSスロットを配置する。
【0042】
この配置により、任意のTYPE_tのTSスロットの位置からそれ以降の任意のTYPE_tのTSスロットの直前までのTSスロットの区間をみると、TYPE_tのTSスロット数とTYPE_mの総TSスロット数の比率が一定になる。すなわち、連続するPCRタイムスタンプをもつTSPの間で、主伝送路で送るTSPの数の割合が一定になる。
【0043】
例えば、図3に示す例では、TSスロット15個からなる伝送ブロックにおけるTSスロットの配置例が示されており、図3における「t」,「m」,「s」は、それぞれTYPE_t, TYPE_m, TYPE_sのTSスロットであることを示している。この例では、TYPE_tのTSスロット間にはTYPE_m及びTYPE_sのTSスロットが2個ずつ含まれている。ここで、伝送フレームにおけるTYPE_tのTSスロット数、TYPE_mのTSスロット数、TYPE_sのTSスロットの数をそれぞれNt,Nm,Nsとし、伝送フレームの伝送周期をTbとすると、ストリーム構造化部220の出力するTSは、毎秒(Nt+Nm+Ns)/Tb個のTSPからなる一定速度のTSとなる。
【0044】
図4は、本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムにおけるストリーム分割装置のストリーム構造化部のブロック図である。ストリーム構造化部220は、TSPの種類に応じたFIFOメモリ2201,2202,2203を備えており、それぞれTYPE_SのTSPを格納するFIFOsと、TYPE_MのTSPを格納するFIFOmと、TYPE_T及びTYPE_PのTSPを格納するFIFOtpからなる。さらに、ストリーム構造化部220は、入力されたヌルパケット(TYPE_N)は廃棄するが、その他の種類の入力されたTSP(TYPE_S,TYPE_M,TYPE_T,TYPE_P)については、入力された順序でその種類に応じてFIFOs, FIFOm, FIFOtpに格納する。
【0045】
また、ストリーム構造化部220は、構造情報に基づく予め規定したTSスロットの種類の順序に従って、一定の時間間隔でFIFOs, FIFOm, FIFOtpに格納される最も古いTSPか、又はヌルパケット生成部2204によって生成されるヌルパケットを選択して伝送バッファ2206に格納するよう切り換え制御を行うTSP切り換え部2205を備える。
【0046】
TSP切り換え部2205は、伝送バッファ2206に格納するTSスロットの種類がTYPE_sの場合には、FIFOsに格納される最も古いTSPを選択するが、FIFOsが空であればヌルパケット生成部2204によって生成されるヌルパケットを選択する。同様に、TSP切り換え部2205は、伝送バッファ2206に格納するTSスロットの種類がTYPE_tの場合には、FIFOtpに格納される最も古いTSPを選択するが、FIFOtpが空の場合には、FIFOmに格納される最も古いTSP(FIFOmが空の場合には、ヌルパケット)を選択する。また、TSP切り換え部2205は、伝送バッファ2206に格納するTSスロットの種類がTYPE_mの場合には、FIFOtpに格納される最も古いTSP(FIFOtpが空の場合には、FIFOmに格納される最も古いTSP)を選択するが、FIFOtp及びFIFOmの両方が空であれば、ヌルパケットを選択する。
【0047】
ここで、ストリーム構造化部220は、タイムスタンプをもつTYPE_TのTSPについては、FIFOtpに入力されてから出力される時間だけタイムスタンプの値の補正を行うタイムスタンプ補正手段(図示せず)を有する。
【0048】
図5は、本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムにおけるストリーム分割装置のストリーム構造化部によって構造化するストリームの例を示す図である。図5では、伝送ブロックごとに主伝送路に送るTSPを3個、副伝送路に送るTSPを2個含み、PCRタイムスタンプを持つTSPを伝送ブロックの先頭に配置するストリーム構造化の例が示されている。尚、図5では、TYPE_TのTSPを「T」、TYPE_PのTSPを「P」、TYPE_MのTSPを「M」、TYPE_SのTSPを「S」で表している。伝送ブロック中のTSPは5個であり、タイムスタンプの間隔はこの2倍のTSP10個分となっている。したがって、ストリーム構造化部220は、入力されたTSPを伝送ブロックに格納して、一定の時間間隔のTSPを生成し、ストリーム分離部230に出力することができる。
【0049】
図6は、本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムにおけるストリーム分割装置のストリーム分離部のブロック図である。ストリーム分離部230は、伝送ブロックにおける予め規定したTSスロットの種類の順序を判別する構造情報を参照して、ストリーム構造化部220から入力したMPEG−2 TSからTYPE_t又はTYPE_mのTSスロットに格納されているTSPを抽出するTSPフィルタ処理部2301と、TSP間隔の均一化を行って、主伝送路用送信装置310へと出力するTSP間隔均一化処理部2302と、当該構造情報を参照して、ストリーム構造化部220から入力したMPEG−2 TSからTYPE_sのTSスロットのTSPを抽出し、このTSスロットで構成される伝送ブロックの区切りが識別できるように伝送ブロックの識別情報を生成して挿入し、副伝送路用送信装置311に出力する副伝送路信号抽出処理部2303とを備える。
【0050】
より具体的には、TSPフィルタ処理部2301は、ストリーム構造化部220から入力したMPEG−2 TSのTYPE_t又はTYPE_mのTSスロットに格納されているTSPを主伝送路用送信装置310へと出力するために抽出する。ここで、TYPE_sのTSスロットのTSPを削除することに起因するTSPの間隔の変動を除去するため、TSP間隔均一化処理部2302は、TSP間隔均一化処理を行う。TSP間隔均一化処理部2302は、TSPの送出間隔を(Nt+Nm)/TbとしてTSP間隔の均一化を行う。尚、PCRタイムスタンプを持つTSPの時間間隔に変更はないため、PCRタイムスタンプの修正の必要はない。
【0051】
また、副伝送路信号抽出処理部2303は、ストリーム構造化部220から入力したMPEG−2 TSから、TYPE_sのTSスロットのTSPを取り出し、副伝送路用送信装置311に出力する。この処理において、副伝送路信号抽出処理部2303は、伝送ブロックの区切りが識別できるように伝送ブロックの識別情報を挿入するため、TYPE_sのTSスロットに格納されたヌルパケットを削除してもよい。
【0052】
伝送ブロックの識別情報の例としては、例えば伝送ブロック内に含まれるPCRタイムスタンプを用いることができる。伝送ブロックにPCRタイムスタンプを持つTSPを含む場合にはそのPCRタイムスタンプを用い、伝送ブロックにPCRタイムスタンプを持つTSPを含まない場合には、伝送ブロックを特定できないことを示す特別な符号を伝送ブロックの識別情報とする。
【0053】
また、伝送ブロックの識別情報の別の例としては、例えば伝送ブロックの伝送時刻を用いることができる。伝送ブロックの先頭のTSPの送信時刻を算出し、この値を識別情報とすることができる。
【0054】
このようにして、ストリーム分離部230は、ストリーム構造化部220から入力したMPEG−2 TSからTYPE_t又はTYPE_mのTSスロットに格納されているTSPを抽出し、TSP間隔の均一化を行って、主伝送路用送信装置310へと出力するとともに、MPEG−2 TSからTYPE_sのTSスロットのTSPを抽出し、このTSスロットで構成される伝送ブロックの区切りが識別できるように伝送ブロックの識別情報を生成して挿入し、副伝送路用送信装置311に出力する。
【0055】
主伝送路用送信装置310は、ストリーム分離部230からTSPを受信し、主伝送路を介して受信装置400に出力する。ここで、主伝送路用送信装置310から受信装置400における主伝送路用受信部410の間でのTSPの伝送では、TSPの時間間隔が一定に維持され、TSPの順序も維持される。
【0056】
副伝送路用送信装置311は、ストリーム分離部230から伝送ブロックの識別情報2及びTYPE_sのTSスロットのTSPを受信し、伝送ブロックの識別のための関連付けを維持して副伝送路を介して受信装置400に出力する。副伝送路用送信装置311から受信装置400における副伝送路用受信部411の間でのTSPの伝送では、TSPの時間間隔は必ずしも一定に維持される必要はないが、伝送ブロックにおけるTSPの順序は維持されるものとする。
【0057】
次に、受信装置400について説明する。受信装置400は、ストリーム分割装置200によって分割されたMPEG−2 TSの符号化データを、主伝送路用送信装置310及び副伝送路用送信装置311を経て受信し、各伝送路のMPEG−2 TSを合成して復号し、元のMPEG−2 TSを再構成する装置である。
【0058】
受信装置400は、主伝送路用受信部410及び副伝送路用受信部411と、ストリーム合成部420と、デコーダ430と、送信側と同一の構造情報設定部250とを備える。ただし、受信装置400において、デコーダ430を備える代わりに、ストリーム合成部のMPEG−2TSを出力し、これを直接もしくは一旦蓄積した上で外部のデコーダに入力することで、外部のデコーダにMPEG−2TSの復号を行うように構成することも可能である。
【0059】
主伝送路用受信部410は、主伝送路用送信装置310から送出され主伝送路で伝送されたTSPを受信しストリーム合成部420に出力する。
【0060】
副伝送路用受信部411は、副伝送路用送信装置311から送出され副伝送路で伝送されたTSP及び伝送ブロックの識別情報を受信し、これらの関連付けを維持したままストリーム合成部420に出力する。
【0061】
ストリーム合成部420は、主伝送路を介して受信したTSPと副伝送路を介して受信したTSPから、伝送ブロックの識別情報に基づいて伝送ブロックを識別するとともに、構造情報を用いて1つのMPEG−2 TSを合成し、デコーダ430もしくは、外部に出力する。ストリームの合成のために、予めストリーム分割装置200と受信装置400で同じ構造情報を共有しているものとする。
【0062】
図7は、本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムにおける受信装置のストリーム合成部のブロック図である。ストリーム合成部420は、構造情報に基づき伝送ブロックを作成し、主伝送路用受信部410から入力されるTSPを、伝送バッファ4201が保持する対応するTYPE_t及びTYPE_mのTSスロットに入力順に格納するとともに、副伝送路用受信部411から入力されるTSPを、伝送バッファ4201が保持するTYPE_sのTSスロットに入力順に格納する。
【0063】
尚、ストリーム合成部420は、主伝送路から受信したTSPについて、ヌルパケットを含めて、TYPE_t, TYPE_mのTSスロットに格納し、PCRタイムスタンプを含むTSPを格納するときのTSスロットの種類がTYPE_tでない場合に、当該TSPの格納位置のTSスロットがTYPE_tとなるように、伝送ブロックの配置(タイミング)を修正することができる。
【0064】
また、ストリーム合成部420は、副伝送路から受信したTSPが入力されると、伝送ブロックのTYPE_sのTSスロットに順番に格納し、伝送ブロック識別情報抽出部4202によって抽出した伝送ブロックの識別情報に従って、伝送ブロックのTYPE_sのTSスロットが全て格納される前に副伝送路から受信するTSPの伝送ブロックの区切りに到達すると判断した場合には、この伝送ブロックにおける以後のTYPE_sのTSスロットにヌルパケットを格納するようにする。
【0065】
これにより、主伝送路で伝送したMPEG−2 TSに対して、副伝送路で伝送したTSPが新たに挿入されることに起因してTSPの時間間隔が変更されることになるが、PCRタイムスタンプを持つTSPが挿入されるTYPE_tの間に挿入されるTSPの数は常に一定で維持できるため、PCRタイムスタンプを持つTSP時間間隔は変化しないで済む。このため、受信装置400におけるPCRタイムスタンプの修正が不要となる。
【0066】
デコーダ460は、ストリーム合成部420から入力されたMPEG−2 TSを復号し、例えば符号化データを構成していた映像・音声信号を出力することができる。
【0067】
この結果、送信側では、主伝送路のMPEG−2 TSだけを受信する従来の受信装置に対しても、副伝送路で伝送されるTSPを用いて合成する本実施例に係る受信装置400に対しても、共通にMPEG−2 TSを提供でき、受信装置400についてはPCRタイムスタンプの修正を不要にできるようになる。
【0068】
次に、実施例2のストリーム分割伝送システムについて説明する。
【0069】
(実施例2)
実施例2のストリーム分割伝送システムは、実施例1と同様に、図1に示すストリーム分割装置200と、主伝送路用送信装置310と、副伝送路用送信装置311と、受信装置400から構成される。
【0070】
ただし、実施例1においては、ストリーム合成部420は、副伝送路からの伝送ブロックの識別情報が抽出できる場合を想定してストリーム合成を行う例を説明したが、実施例2では、ストリーム合成部420は、副伝送路からの伝送ブロックの識別情報がないもしくは伝送ブロックを特定できないことを示す場合を想定して、主伝送路から受信したTSPに対する伝送ブロックの識別情報を抽出して、伝送ブロックごとに伝送バッファ4201へ格納する。つまり、主伝送路から受信したTSPに対する伝送ブロックの識別情報によって、伝送バッファ420内の伝送ブロックを特定可能にする。
【0071】
主伝送路から受信したTSPに対する伝送ブロックの識別情報の抽出の方法は、どのような情報を識別情報として用いるかに依存するが、例えば、識別情報として伝送ブロック内に含まれるPCRタイムスタンプを用いる場合、伝送ブロックにPCRタイムスタンプを持つTSPがあればそのPCRタイムスタンプを以て識別情報の値とし、伝送ブロックにPCRタイムスタンプを持つTSPがなければ伝送ブロックを特定できないことを示す特別な符号を以て識別情報の値とする。
【0072】
また、識別情報として伝送ブロックの伝送時刻を用いる場合、PCRタイムスタンプから再生したSTC(System Time Clock)により、伝送ブロックの先頭のTSPの受信時刻を計測し、この値を識別情報の値とすることができる。
【0073】
即ち、実施例2では、副伝送路から伝送ブロックの識別情報を受信して抽出し、伝送バッファ4201内の伝送ブロックの識別情報と一致する伝送ブロックの格納領域に、副伝送路から受信したTSPを格納する。
【0074】
ストリーム合成部420は、副伝送路からの伝送ブロックの識別情報がないもしくは伝送ブロックを特定できないことを示す場合に、副伝送路から受信したTSPを直前に格納した伝送ブロックの次の伝送ブロックに順次格納する。
【0075】
この結果、伝送ブロックに2つ以上のTYPE_tのTSスロットがないならば、PCRタイムスタンプをもつTSPを正確に伝送ブロックに格納することができるため、主伝送路で伝送されたTSPと副伝送路で伝送されたTSPから正確に元のMPEG−2 TSを合成することができる。
【0076】
一方、伝送ブロックに2つ以上のTYPE_tのTSスロットがある場合は、伝送ブロックの大きさの範囲内の誤差で、元のMPEG−2 TSを合成することができる。
【0077】
次に、実施例3のストリーム分割伝送システムについて説明する。
【0078】
(実施例3)
実施例3のストリーム分割伝送システムは、実施例1又は2と同様に、図1に示すストリーム分割装置200と、主伝送路用送信装置310と、副伝送路用送信装置311と、受信装置400から構成される。
【0079】
ただし、実施例3では、実施例1又は2と相違して、ストリーム分離部230における副伝送路信号抽出処理部2303が、伝送ブロックにおけるPCRタイムスタンプをもつTSPのPCRタイムスタンプの値と伝送ブロックにおけるTSスロットの位置情報を出力するように構成される(図6参照)。
【0080】
この情報は、副伝送路用送信装置311により副伝送路を用いて受信装置400に伝送され、ストリーム合成部420に入力される。ストリーム合成部420は、主伝送路から受信したTSPが副伝送路から入力されたこのPCRタイムスタンプ値と同じ値を持つか否かを判別し、同じ値を持つと判別した場合には、このTSPを格納するTSスロットが、この伝送ブロックにおけるTSスロットの位置情報と合致するように、伝送ブロックの配置(タイミング)を修正する。
【0081】
例えば、構造情報が“tmmsstmmss”で表される伝送ブロックが用いられている場合、ストリーム分割装置200のストリーム分離部230は、PCRタイムスタンプの値が「T1」であるTYPE_TのTSPが伝送ブロックの6番目に位置するTSスロットに格納されているMPEG−2 TSを入力した場合、TYPE_sのTSスロットに格納されたTSPとともに「T1」及び「6」という情報を、伝送ブロックにおけるTSスロットの位置情報として、副伝送路用送信装置311に出力する。
【0082】
受信装置400側では、例えば伝送ブロック識別情報抽出部4202によって副伝送路用送信装置311からの伝送ブロックにおけるTSスロットの位置情報を抽出することにより、主伝送路から受信したPCRタイムスタンプの値が「T1」であるTSPについては、伝送バッファ4201にて、伝送ブロックの「6」番目のTSスロットに格納し、以後、主伝送路から受信したTSPは7番目のTSスロット以降に順次格納する。
【0083】
この結果、伝送ブロックに2つ以上のTYPE_tのTSスロットがある場合にも、PCRタイムスタンプをもつTSPを伝送ブロックの正確な位置に格納することができるため、主伝送路で伝送されたTSPと副伝送路で伝送されたTSPから正確に元のMPEG−2 TSへと合成することができる。
【0084】
次に、実施例4のストリーム分割伝送システムについて説明する。
【0085】
(実施例4)
実施例4のストリーム分割伝送システムは、実施例1又は2と同様に、図1に示すストリーム分割装置200と、主伝送路用送信装置310と、副伝送路用送信装置311と、受信装置400から構成される。
【0086】
ただし、実施例3では、実施例1又は2と相違して、ストリーム構造化部220が、伝送ブロックの識別情報を書き込んだTSPを主伝送路にて伝送するTSPとして生成して追加する、もしくは、主伝送路にて伝送するTSPを書き換え、伝送ブロックの識別情報を書き込んだTSPを生成して追加する処理を行う。以下、識別情報を書き込んだTSPを識別情報TSPと称する。
【0087】
例えば、図8に、本発明による一実施例のストリーム分割伝送システムにおけるストリーム分割装置のストリーム構造化部の変形例を示す。本実施例のストリーム構造化部220は、識別情報TSPを生成する識別情報TSP生成部2207を更に備えている。
【0088】
受信装置400側では、例えば伝送ブロック識別情報抽出部4202によって、主伝送路から受信したTSPに対する伝送ブロックの識別情報の抽出を行うことができる。
【0089】
この結果、伝送ブロックの識別情報として、ストリーム分割装置200に入力される元のMPEG−2 TS信号にはない信号を生成して用いることとなり、ストリーム分割伝送システムの設計の自由度を増すことができる。
【0090】
例えば、識別情報TSPの例として、伝送ブロック毎に増加し、最大値に達すると最小値に戻るシーケンス番号を用い、この値をTSPのペイロード領域に書き込んだ特定のpidを持つTSPとして作成し、TYPE_tもしくはTYPE_mのTSスロットに挿入する。
【0091】
受信側では、ストリーム合成部420が、この特定のpidを持つTSPを受信するとそのペイロード領域を読み取り、そのTSPが割り当てられた伝送ブロックの識別情報の値として決定し、前述した実施例1又は2と同様に動作する。
【0092】
なお、主伝送路で伝送するTSPのビットレートは、TSPの挿入によるビットレートの増加分だけ小さな値に制限しておくのが好ましい。また、識別情報TSPは、全ての伝送ブロックに含める必要はない。
【0093】
次に、実施例5のストリーム分割伝送システムについて説明する。
【0094】
(実施例5)
実施例5のストリーム分割伝送システムは、実施例4の変形例であり、前述と同様に、図1に示すストリーム分割装置200と、主伝送路用送信装置310と、副伝送路用送信装置311と、受信装置400から構成される。
【0095】
ただし、実施例5では、実施例4とは相違して、識別情報TSP生成部2207が、伝送ブロックの識別情報だけでなく、このTSPが格納されている伝送ブロックのTSスロットの位置情報を含む識別情報TSPを生成する。
【0096】
受信装置400側では、ストリーム合成部420が、主伝送路から識別情報TSPを受信すると、例えば伝送ブロック識別情報抽出部4202によって、このTSPが格納されている伝送ブロックのTSスロットの位置情報を読み取り、このTSPを格納するTSスロットが、この伝送ブロックにおけるTSスロットの位置情報と合致するように、伝送ブロックの配置(タイミング)を修正する。
【0097】
この結果、実施例4と同様に、伝送ブロックに2つ以上のTYPE_tのTSスロットがある場合にも、PCRタイムスタンプをもつTSPを伝送ブロックの正確な位置に格納することができるため、主伝送路で伝送されたTSPと副伝送路で伝送されたTSPから正確に元のMPEG−2 TSへと合成することができる。
【0098】
次に、実施例6のストリーム分割伝送システムについて説明する。
【0099】
(実施例6)
実施例6のストリーム分割伝送システムは、実施例4の変形例であり、前述と同様に、図1に示すストリーム分割装置200と、主伝送路用送信装置310と、副伝送路用送信装置311と、受信装置400から構成される。
【0100】
ただし、実施例6では、ストリーム構造化部220のTSP切り換え部2205が、識別情報TSPを多重する場合には常に伝送ブロックのTSスロットの固定された位置(識別情報多重位置)に配置して格納するよう切り換え制御を行う。
【0101】
受信装置400側では、ストリーム合成部420が、主伝送路から識別情報TSPを受信すると、このTSPを格納するTSスロットが、この伝送ブロックにおける識別情報多重位置と合致するように、伝送ブロックの配置(タイミング)を修正する。
【0102】
この結果、実施例4又は5と同様に、伝送ブロックに2つ以上のTYPE_tのTSスロットがある場合にも、PCRタイムスタンプを持つTSPを伝送ブロックの正確な位置に格納することができるため、主伝送路で伝送されたTSPと副伝送路で伝送されたTSPから正確に元のMPEG−2 TSへと合成することができる。
【0103】
本発明によれば、映像音声提供サービスに適用するのが好適である。例えば、主伝送路に放送を副伝送路に通信回線を用いるのが好適である。サービス提供事業者は、本システムを利用して、映像及び、これに付随する音声Aを放送で提供する。放送の受信装置400は、この放送波を受信することで、映像と音声Aを視聴する。サービス提供事業者は、音声Aとは別の、映像に付随する音声Bと音声Cとを、通信回線を用いて音声Aと同時に提供する。
【0104】
音声A、音声B、音声Cの組み合わせの例としては、例えば、音声Aをマルチチャンネル音声の下層の音声、音声Bを中層の音声、音声Cを上層音声とすることで、放送からの音声にさらに通信回線からの音声を加えることで、より臨場感のあるサービスを提供できる。
【0105】
音声A、音声B、音声Cの組み合わせの別の例としては、音声Bと音声Cに、音声Aとは異なる言語の音声、解説音声を用いることができる。受信装置400で音声Aと音声Bと音声Cとを切り換えて再生することで、より多様なサービスを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、独立した2つの伝送路で伝送する場合においても、主伝送路で伝送するTSPと副伝送路で伝送するTSPとを対応づけて伝送することができるので、符号化データを多重して伝送する際の伝送効率を高めることができ、異なる種類の伝送路を用いて多重データ伝送を行う用途に有用である。
【符号の説明】
【0107】
200 ストリーム分割装置
210 ストリーム弁別部
220 ストリーム構造化部
230 ストリーム分離部
240 弁別情報設定部
250 構造情報設定部
310 主伝送路用送信装置
311 副伝送路用送信装置
400 受信装置
410 主伝送路用受信部
411 副伝送路受信部
420 ストリーム合成部
430 デコーダ
2201 FIFOメモリ(FIFOs)
2202 FIFOメモリ(FIFOm)
2203 FIFOメモリ(FIFOtp)
2204 ヌルパケット生成部
2205 TSP切り換え部
2206 伝送バッファ
2207 識別情報TSP生成部
2301 TSPフィルタ処理部
2302 TSP間隔均一化処理部
2303 副伝送路信号抽出処理部
4201 伝送バッファ
4202 伝送ブロック識別情報抽出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたトランスポートストリーム(TS)を主伝送路と副伝送路の2つの伝送路用に分割するストリーム分割装置であって、
入力されたTSのパケット(TSP)を予め定めた種別に識別し、識別結果を当該TSPとともにストリーム構造化部に出力するストリーム弁別部と、
前記識別結果と伝送ブロックにおける予め規定したTSスロットの種類の順序を判別する構造情報を用いて、前記ストリーム弁別部から入力されたTSPを、連続するPCRタイムスタンプを持つTSPの間で、主伝送路で送るTSPの数の割合が常に一定となるように該TSPの順序変更及びヌルパケットの加除を含む修正を行い、該修正に伴うPCRタイムスタンプの補正を行って、予め定めた構造情報に従うTSの構造化を行うストリーム構造化部と、
前記ストリーム構造化部によって構造化したTSのTSPについて、前記構造情報に従って、PCRタイムスタンプをもたずに主伝送路で伝送されるTSP(TYPE_m)と、PCRタイムスタンプの有無によらず主伝送路で伝送されるTSP(TYPE_t)と、副伝送路で伝送されるTSP(TYPE_s)の3種類に分離し、前記TYPE_mのTSP及び前記TYPE_tのTSPに対してTSP間隔の均一化を施して主伝送路用に出力するとともに、前記TYPE_sのTSPと伝送ブロックの識別を行うための伝送ブロックの識別情報を副伝送路用に出力するストリーム分離部と、
を備えたことを特徴とするストリーム分割装置。
【請求項2】
前記ストリーム分離部は、当該伝送ブロックにおけるPCRタイムスタンプを持つTSPのPCRタイムスタンプの値と当該伝送ブロックにおけるTSスロットの位置を示す位置情報とを出力する手段を更に有することを特徴とする、請求項1に記載のストリーム分割装置。
【請求項3】
1つのトランスポートストリーム(TS)を主伝送路と副伝送路の2つの伝送路用に分割されたTSPを受信して、当該1つのTSに再構成する受信装置であって、
当該1つのTSが、PCRタイムスタンプをもたずに主伝送路で伝送されるTSP(TYPE_m)と、PCRタイムスタンプの有無によらず主伝送路で伝送されるTSP(TYPE_t)と、副伝送路で伝送されるTSP(TYPE_s)の3種類に分離され、前記TYPE_mのTSP及び前記TYPE_tのTSPに対してTSP間隔の均一化を施して主伝送路にて伝送され、前記TYPE_sのTSPと伝送ブロックの識別を行うための伝送ブロックの識別情報が副伝送路にて伝送されるように規定されており、
主伝送路で送るTSPの数の割合が常に一定となるように該TSPの順序変更及びヌルパケットの加除を含む修正を行い、該修正に伴うPCRタイムスタンプの補正を行う予め定めた構造情報に従って当該1つのTSが構造化されており、
主伝送路で伝送されたTSPを受信する主信号用受信部と、
副伝送路で伝送されたTSP及び伝送ブロックの識別を行うための伝送ブロックの識別情報を受信する副主信号用受信部と、
前記構造情報に従って、主伝送路を介して受信したTSPについて、前記TYPE_tのTSスロット及びTYPE_mのTSスロットに格納し、PCRタイムスタンプを含むTSPを格納するときのTSスロットの種類がTYPE_tでない場合に、当該TSPの格納位置のTSスロットがTYPE_tとなるように伝送ブロックの配置を修正し、副伝送路を介して受信したTSPについて、伝送ブロックの前記TYPE_sのTSスロットに順番に格納するストリーム合成部とを備え、
該ストリーム合成部は、前記伝送ブロックの識別情報に従って、伝送ブロックの前記TYPE_sのTSスロットが全て格納される前に、副伝送路から受信するTSPの伝送ブロックの区切りに到達すると判断した場合には、この伝送ブロック内の以後のTYPE_sのTSスロットにヌルパケットを格納し、当該1つのTSを合成することを特徴とする受信装置。
【請求項4】
前記ストリーム合成部は、
主伝送路から受信したTSPに対する伝送ブロックの識別情報を抽出して、伝送ブロックごとに所定の伝送バッファに格納する手段と、
副伝送路から伝送ブロックの識別情報を受信して抽出し、前記伝送バッファ内の伝送ブロックの識別情報と一致する伝送ブロックの格納領域に、副伝送路から受信したTSPを格納する手段と、
を有することを特徴とする、請求項3に記載の受信装置。
【請求項5】
前記ストリーム合成部は、
副伝送路から得られた伝送ブロックにおけるPCRタイムスタンプをもつTSPのPCRタイムスタンプの値と送信側によって予め規定された当該伝送ブロックにおけるTSスロットの位置情報を抽出する手段と、
主伝送路から受信したTSPが副伝送路から入力されたこのPCRタイムスタンプ値と同じ値を持つか否かを判別し、同じ値を持つと判別した場合には、当該TSPを格納するTSスロットが、当該伝送ブロックにおけるTSスロットの位置情報と合致するように、伝送ブロックの配置を修正する手段と、
を有することを特徴とする、請求項3又は4に記載の受信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−60311(P2012−60311A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200035(P2010−200035)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】