説明

ストレッチフィルム

【課題】ストレッチフィルムを提供する。
【解決手段】
ポリオレフィン系共重合体、石油樹脂、及びプロピレン系樹脂を含有する樹脂組成物100質量部及び防曇剤1.5〜5質量部を含有する中間層と、表層を積層してなるストレッチフィルム。本発明のストレッチフィルムは、成型機内での異物発生量が少なく、連続生産性が高く、製造時に表層中の防曇剤量を減らしても良好な防曇性を有する等の効果を奏するため、精肉、鮮魚、青果等を包装する食品包装用ストレッチフィルムとして好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストレッチフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
精肉、鮮魚、青果等を包装する食品包装用のストレッチフィルムとして、ポリ塩化ビニル系のストレッチフィルムに代わり、ポリオレフィン系のストレッチフィルムが使用されるようになってきた。(特許文献1〜4等参照)。
【0003】
ポリオレフィン系のストレッチフィルムは表層/中間層/表層の2種3層構成をとることが多い。表層はEVA樹脂を主体とし、中間層は包装時のシワ等の入りを抑制できるポリオレフィン系共重合体、石油樹脂、及びプロピレン系樹脂等を主体とする構成のものが多い。
【0004】
表層に用いるフィルムを製造する際に、EVA樹脂と防曇剤を混合して溶融し、可塑化させて製造装置を長時間運転すると、押出機内に滞留した原料が炭化し、炭化物が異物としてフィルムに混入しやすいといった課題があった。
【0005】
食品包装用のストレッチフィルムには、成型機内での異物発生量が少なく、連続生産性が高く、製造時に表層中の防曇剤量を減らしても良好な防曇性を有することが求められていた。
【0006】
【特許文献1】特開平10−119205号公報
【特許文献2】特開平08−003384号公報
【特許文献3】特開平08−224842号公報
【特許文献4】特開平08−258230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はストレッチフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はポリオレフィン系共重合体、石油樹脂、及びプロピレン系樹脂からなる樹脂組成物100質量部と防曇剤1.5〜5質量部を含有する中間層と、表層を積層してなるストレッチフィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のストレッチフィルムは、成型機内での異物発生量が少なく、連続生産性が高く、製造時に表層中の防曇剤量を減らしても良好な防曇性を有する等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ストレッチフィルムは、ポリオレフィン系共重合体、石油樹脂、及びプロピレン系樹脂を含有する樹脂組成物100質量部及び防曇剤1.5〜5質量部を含有する中間層と、表層を積層してなることを特徴とする。
【0011】
<ポリオレフィン系共重合体>
ポリオレフィン系共重合体は、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン(エチレンとα−オレフインとの共重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アルキルアクリレート共重合体、エチレン−アルキルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、低密度ポリエチレン等のアイオノマ、プロピレン系エラストマ材料等が使用可能であり、エチレン-酢酸ビニル共重合体が好適に用いられる。
【0012】
<石油樹脂>
石油樹脂とは、ナフサを分解した際の炭素数の多い不飽和化合物を重合したものである。石油樹脂の原料は、イソプレン、テルペン類等の脂肪族を主体とするC留分と、スチレン等の芳香族系を主体とするC留分が挙げられる。石油樹脂は、C(脂肪族)系、C(芳香族)系、C及びCの化合物の共重合体又はシクロペンタジエンの共重合体、イソプレン、テルペン、テルペン誘導体、ロジン、及びロジン誘導体のいずれの化合物の重合体も使用可能である。石油樹脂を構成するこれらの複数の成分に由来する樹脂を使用しても良く、石油樹脂の一部又は全部に水素添加してもよい。
【0013】
表層及び中間層に石油樹脂を含有させることにより、フィルム延伸時の強度を増加させるとともに、フィルムに粘着性を付与することができる。石油樹脂として、部分的又は全部に水素添加した樹脂を用いると、他の樹脂成分との相溶性が良好となり、フィルムの透明性が高くなるのでより好ましい。
【0014】
<プロピレン系樹脂>
プロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーに由来する繰返し構造(プロピレン単位)を有すること以外は特に限定されないが、エチレンとプロピレンとの共重合体やポリプロピレン等が挙げられる。この中でもポリプロピレンは耐熱性に優れており、押出機内で炭化しにくいので好ましい。
【0015】
中間層中のポリオレフィン系共重合体、石油樹脂、及びプロピレン系樹脂の割合は特に限定されないが、ポリオレフィン系共重合体、石油樹脂、及びプロピレン系樹脂の合計100質量部中、ポリオレフィン系共重合体を30〜50質量部、石油樹脂を20〜50質量部、及びプロピレン系樹脂を10〜20質量部とすることが好ましい。中間層の組成を上記範囲内とすることにより、インフレーションション法で製造した場合にバブルが安定するため、安定した操業が可能となる。
【0016】
<防曇剤>
防曇剤は、例えばPL規格(塩化ビニル樹脂製食品容器包装等に関する自主規制基準)に準ずる界面活性剤として、グリセリン脂肪酸(C〜C22)エステル、ソルビタン脂肪酸(C〜C22)エステル、プロピレングリコール脂肪酸(C〜C22)エステル、ショ糖脂肪酸(C〜C22)エステル、クエン酸モノ(ジ又はトリ)ステアリン酸エステル、ペンタエリストール脂肪酸(C〜C22)エステル、ポリグリセリン脂肪酸(C〜C22)エステル、ポリオキシエチレン(C20)グリセリン脂肪酸(C〜C22)エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸(C〜C22)エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸(C〜C22)エステル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C、C、C12)フェニルエーテル、N、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)脂肪酸(C12〜C18)とジエタノールアミンによる縮合生成物、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール(分子量は200〜9500程度が好ましい)、ポリプロピレングリコール等が好ましい。
【0017】
中間層中の防曇剤の含有量は、ポリオレフィン系共重合体、石油樹脂、及びプロピレン系樹脂からなる樹脂組成物100質量部に対して1.5〜5質量部であることが好ましい。防曇剤の含有量が不足すると防曇効果が少なく、フィルム表面につく水滴が不均一となる場合がある。防曇剤の添加量が過剰だとフィルムが白濁し、食品を包装した際に美観が損なわれる場合がある。
【0018】
表層中の防曇剤の含有量は特に限定されないが、表層全体に対して0.5質量%以下とすることが好ましい。防曇剤の使用量が多いと、ラップストレッチフィルム中に異物が発生しやすくなり、ロングラン性が低下する場合がある。
【0019】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体>
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含量が5〜25質量%、好ましくは10〜20質量%のものが好適に用いられる。エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)が、0.2〜2g/10分(JIS K7210法、190℃、2.16 kg荷重)のものが強度や柔軟性、フィルム成形加工性が良いために好適に用いられる。
【0020】
ストレッチフィルムの表層に含まれる防曇剤の添加量は0.5質量%以下であることが好ましい。防曇剤の添加量が過剰だと、フィルム成形装置内で防曇剤が炭化して異物発生の原因になるため、フィルム成型機を停止して掃除することが必要になる場合がある。
【0021】
ストレッチフィルムの層構成は基本的に表層及び中間層からなる構造であれば特に限定されず、表層と中間層の間にはアンカー層等があってもよい。表層と中間層の層構成は、中間層の表裏両側に表層がある構成が好適に採用され、例えば表層/中間層/表層型の2種3層や、表裏の樹脂や厚さ等が異なった表層A/中間層/表層B型の3種3層等が好適に用いられる。これらの中でも、表層/中間層/表層の2種3層構造は製造が容易であり、防曇性が良く好ましい。
【0022】
ストレッチフィルムの各層の厚みの比率は特に限定されないが、表層の厚さ1に対して中間層の厚さを4〜20とすることが好ましい。すなわち、2種3層構造では表層:中間層=1:4〜1:20とすることが好ましい。中間層が薄いと防曇性が低下する場合がある。中間層が厚いと、インフレーションション法で製造した場合にバブルが安定せず製膜できない場合がある。なお、ストレッチフィルムの表裏で、表層の厚さが異なる場合には、表裏の平均値を代表値として用いるものとする。
【0023】
ストレッチフィルムの製造方法は特に限定されないが、吹き上げ及び吹き下げ等のインフレーションション法、Tダイ法が挙げられる。これらの方法によって製造されたフィルムをフィードブロック等で積層してもよい。
【実施例】
【0024】
(実施例1-1)
表層用に55mm単軸押出機2台、中間層用に100mm単軸押出機1台、計3台の押出機からなるインフレーションション押出機を使用し、シリンダー温度及びダイス温度を180〜195℃に調節して押出を行って表層及び中間層に相当するフィルムとした。表層及び中間層はインフレーションション押出機で溶融押出しスパイラル・ダイで積層し、巻取り速度70m/分の条件化で巻取り、表層/中間層/表層の2種3層からなるストレッチフィルムとした。ストレッチフィルムは、厚さ14μm、各層の厚みの比率は表層:中間層:表層=1:11:1であった。
【0025】
<各層の樹脂組成>
表層 :エチレン−酢酸ビニル共重合体。
中間層:ポリオレフィン共重合体としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を37質量%、石油樹脂43質量%、プロピレン系樹脂18質量%及び防曇剤2質量%の樹脂組成物。
【0026】
<フィルム製造装置>
インフレーションション押出機を用いた。
表層 :EXH-55・28・EB型押出機(株式会社プラコー社製)
中間層:ENH-100・32・EB型押出機(株式会社プラコー社製)
【0027】
<使用材料>
エチレン−酢酸ビニル共重合体:市販品、MFR1.0g/10分(JIS K7210法、190℃、2.16 kg荷重)。
エチレン-アクリル酸共重合体:市販品。
ポリオレフィン共重合体:エチレン−ポリプロピレン共重合体を主体、市販品。
石油樹脂 :ポリイソプレンを主体、市販品。
プロピレン系樹脂:エチレン−ポリプロピレン共重合体を主体、エチレン単位95%、プロピレン単位5%、市販品。
防曇剤 :グリセリン脂肪酸エステル系、市販品。
【0028】
ストレッチフィルムの特性・性能及び製膜時の状態は下記の方法により測定、評価した。
1)防曇性
純水100mlを入れた容器500mlのステンレス製ボウルをラップで包装し、室温5℃で相対湿度40%の環境下で30分間保管し、フィルムの曇りの程度を下記の指標により評価した。
1:水滴が不均一でぬれていないで曇り、中が全く見えない。
2:水滴が不均一でぬれていないで曇る。
3:水滴が不均一でぬれていないが、曇らない。
4:水滴が不均一にぬれているが、全く曇らない。
5:水滴が均一にぬれていて、全く曇らない。
【0029】
2)ロングラン性欠点検出器
実施例1と同様の処方で3台のインフレーションション押出機に原料を投入して表層2層及び中間層を溶融押出しを行って積層し、インフレーションション成形によりフィルム状に成形してストレッチフィルムとした。押出成型機をライン速度70メートル/分で最長3日間、リップ部を掃除せずに連続運転し、得られたストレッチフィルムを24時間ごとに、下記の指標により評価した。異物の有無は、欠点検出機により0.6 mm2以上の異物を自動的に検出し、異物数が1mあたり3個以下である場合を合格、異物数が1mあたり3個を超えた場合を不合格とした。
◎:3日以上合格であった。
○:2日以上合格であった。
△:1日以上合格であった。
×:1日目で不合格又は製膜不可能。
【0030】
その他の実験例は、表1〜3に示す点以外は実験No.1-1と同様とした。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】


注:実験No.3-6は、インフレーションション成形時にバブルが不安定で成形できず。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のストレッチフィルムは、成型機内での異物発生量が少なく、連続生産性が高く、製造時に表層中の防曇剤量を減らしても良好な防曇性を有する等の効果を奏するため、精肉、鮮魚、青果等を包装する食品包装用ストレッチフィルムとして好適に用いられる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層の両面に表層を積層してなり、中間層がポリオレフィン系共重合体、石油樹脂、及びプロピレン系樹脂を含有する樹脂組成物100質量部及び防曇剤1.5〜5質量部を含有するストレッチフィルム。
【請求項2】
中間層及び表層の厚みの比率が表層:中間層=1:4〜1:20である請求項1に記載のストレッチフィルム。
【請求項3】
表層がエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有する請求項1又は請求項2に記載のストレッチフィルム。
【請求項4】
表層中に防曇剤を0.5質量%以下含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のストレッチフィルム。
【請求項5】
食品包装用である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のストレッチフィルム。




【公開番号】特開2007−203463(P2007−203463A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21258(P2006−21258)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】