説明

ストレッチ包装用フィルム

【課題】 ヒートシール性に優れ且つ包装時の破れが発生しにくい容器包装に最適なフィルムを提供すること。
【解決手段】 両表面層(S層)と少なくとも1層の耐熱層(H層)からなる少なくとも3層のストレッチ包装用フィルムであって、両表面層(S層)が融点が60〜100℃で重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3以下であるエチレン−α・オレフィン共重合体からなり、耐熱層(H層)はプロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体からなり、融点が150℃以上で、フィルム全重量に対する融解熱量が5〜40J/gである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は食品等のストレッチ包装用フィルムに関し、特に弁当や惣菜等の蓋付容器に入った食品のハンド包装やマシン包装等に適したフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】最近、コンビニエンスストアー等では二軸延伸ポリスチレンシート(OPS)や発泡ポリスチレンシート(PSP)等を成形した容器を用いた弁当や惣菜の売り上げが急速に伸びている。従来、弁当や惣菜の入った容器は可塑化ポリ塩化ビニル樹脂フィルム(以下、塩ビフィルムと略す)で包装されてきたが、環境問題等からポリオレフィン系樹脂フィルム(PO系フィルムと略す)に代替される様になってきた。
【0003】ここで、弁当をフィルムで包装することは毒物や異物を故意に入れても発見出来る(バージン性)というメリットもあり、その為には包装したフィルムに破れが無く完全にヒートシールされている必要がある。従って弁当や惣菜等の容器包装(以下、容器包装と略す)用フィルムに対しては、一般に行われているトレー包装に比べて包装時に破れにくく又優れたヒートシール特性が要求されている。
【0004】ここで、容器包装と一般のトレー包装との違いについて説明する。弁当や惣菜の容器は一般のトレーと異なり蓋がある。この蓋は一般にOPS製で、突き上げ型包装機でストレッチ包装する場合にPO系フィルムはOPS製の蓋とは密着して滑らず、その結果フィルムを容器底部に折り込む時に容器角部のフィルムに力が集中する傾向となり、この角部でのフィルム破れが発生したり、角部近傍の容器底部でフィルムが折り込み板で擦れて破れが発生し易い傾向にある。
【0005】又一般のトレー包装では、ヒートシールが若干不完全でフィルムを破ること無しに引き剥がれる状態であっても問題に無っていないが、バージン性を問題にする弁当包では、ヒートシールに対してより厳しい要求特性レベルにある。具体的には、ヒートシール部を剥がそうとするとシール強度が高い為にフィルムが破れるレベルである必要がある。
【0006】この様な優れたヒートシール性は、ヒートシール出来る温度範囲(ヒートシールレンジ)が広いこととヒートシール強度が高いことが必要である。ヒートシールレンジを広くする為には、融点の低い表面層と融点の高い耐熱層とを有することが有効で、ストレッチ性とヒートシール性とを兼ね備えたフィルムとして、両表面層(S層)に酢酸ビニル含量が15%程度のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を用い、耐熱層(H層)としてプロピレンホモポリマー又はプロピレン−α・オレフィン・ランダム共重合体からなるフィルムが提案されている(例えば、特公平2−1668号公報、特公平4−50904号公報等)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のフィルムは一般のトレー包装用に提案されたストレッチフィルムであり、容器包装では包装時に破れが発生したり、ヒートシールが完全ではない等の問題が発生した。そこで、本発明は従来のフィルムよりも更にヒートシール性に優れ且つ包装時の破れが発生しにくい容器包装に最適なフィルムを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、両表面層(S層)と少なくとも1層の耐熱層(H層)からなる少なくとも3層のストレッチ包装用フィルムにおいて、両表面層(S層)が融点が60〜100℃で重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3以下であるエチレン−α・オレフィン共重合体からなること、及び耐熱層(H層)はプロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体からなり、融点が150℃以上で、フィルム全重量に対する融解熱量が5〜40J/gであることを特徴とする。
【0009】以下に本発明を詳細に説明する。本発明が従来技術と相違する点は、「両表面層(S層)が融点が60〜100℃で重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3以下であるエチレン−α・オレフィン共重合体からなる」ことと、「耐熱層(H層)がプロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体からなり、融点が150℃以上で融解熱量が5〜40J/gである」点にある。
【0010】先ず本発明のフィルムが従来のフィルムに比べ容器包装用フィルムとして優れていることを、表1を用いて説明する。表1において、実施例1、Run.No.1のフィルムが本発明のフィルムであり、比較例1、Run.No.2〜4が従来のフィルムに対応する。表1から明らかな様に、本発明のフィルム(Run.No.1)はヒートシール性(以降、シール性と略す)及び包装性共に優れていた。
【0011】これに対し、Run.No.2はS層にEVAを用い、H層にプロピレン単独重合体を用いたフィルムで、フィルムの破断伸びが縦方向/横方向=200%/300%、引裂強度も縦方向/横方向=4g/5gと脆いフィルムで、包装時にフィルム破れが多発して、容器包装には不向きであることが分かった。尚このフィルムは透明性に劣り、後述する方法で求めたHAZEが30%であった。
【0012】またRun.No.3のフィルムはS層にEVAを用い、H層に融点が151℃のプロピレンとエチレンのランダム共重合体(以降、EPPと略す)を用いたフィルムで、Run.No.2のフィルムよりは改善されているものの、フィルムの破断伸びが縦方向/横方向=250%/450%、引裂強度も縦方向/横方向=8g/80gと脆い為に包装時にフィルム破れが多発して、容器包装には不向きであることが分かった。
【0013】更にRun.No.4のフィルムは、Run.No.3よりもエチレン含量の多いEPPを用いたフィルムで、Run.No.3のフィルムよりも更に改善されているものの、フィルムの破断伸びが縦方向/横方向=270%/450%、引裂強度も縦方向/横方向=8g/120gと脆く、包装時にフィルム破れが多発して容器包装には不向きであることが分かった。又、H層の融点が137℃と低い為にシールレンジが15℃と狭く、ヒートシール性にも劣っていた。
【0014】従ってプロピレン単独重合体やプロピレン系ランダム共重合体をH層に用いる従来のフィルムでは、コモノマー含量を増やして包装性を改良しよとすると、包装性が改良出来ないばかりかシール性が犠牲となる為、容器包装には適さないことが分かる。以上のことから、本発明のフィルムが従来のフィルムに比べ容器包装用ストレッチフィルムとして優れていることが分かる。
【0015】次に、両表面層(S層)が融点が60〜100℃で重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3以下であるエチレン−α・オレフィン共重合体からなることの必要性について説明する。両表面層(S層)のエチレン−α・オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、包装性から3以下とし、且つその融点は、ヒートシール性から100℃以下である必要がある。
【0016】後述する方法で測定されたMw/Mn(分子量分布)が3を越える場合には、上記共重合体中の低分子量成分が多い為に包装時に容器の角底部でのフィルムの擦れ破れが発生し易い傾向にある。尚Mw/Mnは理論上1以下になることはない。又上記融点が100℃を越える場合には、耐熱層の融点との関係でシール可能温度範囲が45℃未満となり実用上問題のあるレベルとなる。尚上記共重合体の融点は60℃以上である必要がある。融解ピークは融点が低くなる程ブロードとなる傾向にあり、通常融点が60℃付近にある共重合体の融解開始から融解終了までの温度範囲は30〜70℃程度となる為、エチレン−α・オレフィン共重合体の融点が60℃以下では室温程度でもベタツキ感があり、包装時に容器や包装機部材との滑り性に劣りフィルム破れが発生し易い傾向にある。
【0017】ここで融点の測定はJIS−K7121に準拠し、パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、フィルム試料を約5mg、昇温速度10℃/分で−30℃〜200℃まで昇温した時のS層のエチレン−α・オレフィン共重合体に由来するピークの内、最も大きい(高い)ピークのピーク温度を採った(詳細な条件は後述する)。
【0018】以上の特性を満たすエチレン−α・オレフィン共重合体は、カミンスキー触媒やブルックハート触媒等のいわゆるシングルサイト触媒やヴァナジウム触媒等で重合されたものである。上記α・オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等が上げられるが、引裂強度の点から炭素数が6以上のα・オレフィンが好ましい。特にオクテン−1が好ましい。尚、α・オレフィン含量は2〜10モル%程度であり、好ましくは3〜8モル%程度である。
【0019】上記エチレン−α・オレフィン共重合体は一般にはメルトフローレート(MI:JIS−K7210に準拠。190℃、2.16kg)は1〜20g/10分程度であり、透明性やストレッチ性の観点からは2〜10g/10分が好ましく、より好ましくは3〜10g/10分である。また、密度は特に制限はないが、一般に0.905〜0.870g/cm3 である。
【0020】又、両表面層(S層)には、上記エチレン−α・オレフィン共重合体に50容量%を越えない範囲で他の樹脂、例えばEVAや他のエチレン−α・オレフィン共重合体等がブレンドされていても良い。次に、耐熱層(H層)はプロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体からなり、融点が150℃以上で融解熱量が5〜40J/gであることの必要性について説明する。
【0021】先ず、耐熱層(H層)はプロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体(以降B−PPと略す)からなる必要がある。前述のごとくプロピレン単独共重合体やプロピレン−α・オレフィンのランダム共重合体(以降、R−PPと略す)では包装性とヒートシール性との両者を満足するフィルムは得られ難い。尚本発明でいう「プロピレンとα・オレフィンとのブロック共重合体」とは、後述するプロピレンとα・オレフィンとのランダム共重合体では成立する融点(mp:℃)と融解熱量(E:J/g)との関係式からはずれるものを言う。
【0022】
E=14.8exp(0.0126mp)±20次に耐熱層(H層)の融点は、優れたシール性、具体的にはシールレンジが45℃以上を達成する為に150℃以上である必要がある。150℃未満では、両表面層の融点との関係でシール可能温度範囲が45℃未満となり実用上問題のあるレベルとなる。尚融点の上限は一般に170℃である。
【0023】ここで、上記融点は両表面層(S層)と同様にJIS−K7121に準拠し、同一の条件で測定を行い、B−PPに起因する融解ピークの内最も高温側に発現するピークのピーク温度を採った。また耐熱層(H層)のフィルム全重量に対する融解熱量は、シール時の耐熱性から5J/g以上である必要があり、包装性から40J/g以下である必要がある。フィルム全重量に対する融解熱量が5J/g未満では、上記B−PPの融点が150℃以上であっても耐熱性が不足してヒートシールレンジが45℃未満となり実用上問題のあるレベルになる傾向にある。又フィルム全重量に対する融解熱量40J/gを越える場合には、上記B−PP中に占める柔軟成分の割合が少ない為に包装時にフィルム破れが発生し易い傾向にある。また包装時にストレッチした際フィルムが白化(クレーズの発生による白化と考えられる)する場合もある。
【0024】ここで融解熱量はJIS−K7122に準拠し、パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、フィルム試料を約10mg、昇温速度10℃/分で−30℃〜200℃まで昇温した時のH層のB−PPに由来する最も高い温度に発現した融解ピークの面積より、フィルム全量に対する融解熱量を求めた。従ってB−PP単独の融解熱量は、少なくとも5J/gである必要がある。好ましくは、B−PP樹脂単独で測定した融解熱量が20J/g以上のものである。20J/g以下のB−PPでは、フィルム全量に対する融解熱量が5J/g以上になる様に全層に対する構成割合を増やしても所望の耐熱性を得られ難い。
【0025】B−PPは2段以上の重合装置を用いて、1段目に融点が150℃以上のプロピレン単独又はプロピレンとα・オレフィンのランダム共重合体成分(高融点成分と呼ぶ)を重合し、2段目移行にプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα・オレフィンによる柔軟成分を重合するものが挙げられる。
【0026】特にリアクターTPOと呼ばれる、柔軟成分が高融点成分中に微細に分散しているもが好ましく、球状や針状等に1μ以下の平均径で分散しているものが好ましい。これ等としては、モンテル−JPO社の「Hifax」や「Adflex」、トクヤマ社の「PER」、チッソ社の「NEWCON」等が挙げられる。尚上記B−PPは一般にはメルトフローレート(MFR:JIS−K7210に準拠。230℃、2.16kg)は0.1〜100g/10分程度であり、ストレッチ性の観点からは0.5〜50g/10分が好ましく、又引き裂き強度の観点からは押出時に流動配向があまり掛からない4〜40g/10分程度であるのが好ましい。また、密度は特に限定はされないが、一般に0.87〜0.90g/cm3 である。
【0027】尚、耐熱層(H層)には上記のB−PPの他に50容量%を越えない範囲でEVA、ポリブテン−1系樹脂、エチレン−α・オレフィン共重合体、ポリスチレン系エラストマー、石油系樹脂、R−PP等がブレンドされていても良い。これ等の内でポリブテン−1系樹脂及びポリスチレン系エラストマーが上記B−PPと相溶性が良い為に好ましい。特にポリブテン−1系樹脂は引裂強度向上及び縦方向と横方向との強度バランス改良に効果がある。又、SBS、SEBS、SIS、SEPS等で表されるポリスチレン系ブロック共重合体の内ポリスチレン含量が5〜20重量%のものは、一般のトレー包装の場合に要求される押込回復性や遅延回復性が付与出来る。
【0028】本発明のフィルムは、両表面層(S層)と少なくとも1層の耐熱層(H層)からなる少なくとも3層からなるが、更に他の層(M層)を含んでも良い。M層は複数層(M1、M2、…)あっても良い。その場合の層構成はS/H/S、S/M/H/S、S/M/H/M/S、S/H/M/H/S、S/M1/H/M2/H/M1/S等が挙げられる。
【0029】M層の例としては、S層に隣接して配置される場合には、防曇剤等が練込易く且つブリードアウトさせ易く、又透明性に優れたEVAやエチレン−α・オレフィン共重合体等が挙げられる。又、フィルムを回収して再利用する場合にもH層に混合して利用するよりもM層として利用した方がシール性や包装性を低下させずにすむので好ましい。
【0030】各層の厚み比率は一般には、S層が各15〜45%、H層が各10〜70%、M層が各5〜60%である。S層が15%未満ではフィルムの透明性が劣る傾向にある。又H層は薄い方が透明性に優れる為、より好ましくはH層が60%以下の場合である。又フィルムの厚みは一般には、7〜20μ程度である。
【0031】次に、本発明のフィルムの好ましい他の物性について示す。先ず、ストレッチ性の目安としての200%のび荷重が、縦方向(MD)が200〜600g/cm幅、横方向(TD)が100〜400g/cm幅であることが好ましく、又破断伸びがMDが300%〜700%、TDが400%〜800%である。更に伸び−荷重曲線(S−Sカーブ)において、MD及びTD共に降伏点やプラトーが見られない、即ち伸び(変形)に対して常に伸び荷重が増加(単純増加)するものが好ましい。降伏点やプラトー(伸びに対して荷重が変化せず一定になる領域)があると包装時にストレッチしてもなかなか皺や弛みがとれず、無理にストレッチするとフィルムが破れてしまうことがある。
【0032】又引裂き強度はMDが10g以上、TDは10〜100gが好ましい。MD、TD共に10g以上でないと包装のカット刃でフィルムをカットした際に出来るノッチが搬送中やフィルムをストレッチした際に伝播してフィルムの破れ屑(カット屑)が発生する傾向にある。尚フィルムの引裂強度は、包装機のカット刃によるカット性を考慮すると、TDとMDとの強度比(TD/MD)が5以下であるのが好ましい。
【0033】突上型包装機で包装する際に問題となるフィルム破れ現象に対しては、フィルムのダート衝撃強度が比較的対応がとれており、後述する方法で測定されたフィルムの破壊エネルギー・ENGが好ましくは0.3J以上、更に好ましくは0.4Jである。次に本発明の製造方法としては、T−ダイキャスト法、ダイレクトインフレーション法(好ましくは水冷インフレーション法)、チューブラーインフレーション法、押出ラミネート法等が挙げられるが、S−Sカーブが単純増加曲線になる傾向にあるチューブラーインフレーション法が好ましい。
【0034】以下に好ましいチューブラーインフレーション法について詳細に説明するがこれに限定されるものではない。先ず、両表面層(S層)耐熱層(H層)、場合によりM層用の樹脂を別々の押出機で溶融混練し、170〜250℃程度に昇温された多層サーキュラーダイ中で積層してチューブ状に押出し、好ましくはこのチューブ内に脂肪酸石鹸等の陰イオン界面活性剤の水溶液やポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の水溶性非イオン界面活性剤の水溶液等を封入して、押出したチューブを40℃以下の水等の冷媒で急冷した後ニップロールで折り畳み原反を作製する。この原反を2対の差動ニップロール間に通し、100〜150℃程度まで加熱して、原反内に空気を吹き込んで15〜30℃程度の冷風を当てながらMDに2〜4倍、TDに2〜5倍にチューブ状に延伸する。延伸したフィルムはデフレータで折り畳まれ、必要であれば、両表面層(S層)の樹脂の融点以下の温度で熱処理を行う。熱処理は緊張状態または緩和状態どちらでも良いが、好ましくはMDに0〜10%程度、TDに2〜10%程度緩和させた状態で熱処理するのが良い。
【0035】以下に本発明における物性の測定方法及び評価方法を示す。
(1)融点前述の通り、JIS−K7121に準拠し、約5mgのフィルムをパーキンエルマー社製DSC−7を用いて測定した。測定は、一度室温から200℃まで10℃/分で昇温した後200℃で5分間保持し十分溶解させ、その後200℃から−30℃まで10℃/分で冷却、又−30℃で5分間保持した後−30℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温して測定した。
(2)融解熱量前述の通りJIS−K7122に準拠し、約10mgのフィルムで上述の融点と同様な温度条件(設定温度、走査速度)で測定した。融解熱量は2度目の昇温カーブから熱量を求め、フィルム全重量に対する融解熱量(J/g)を求めた。
(3)分子量分布(Mw/Mn)
Waters Associates社製の150型高温GPC装置とパーキンエルマー社製のFT−IRを接続し、カラムとして東ソー社製GMH−H6を2本、昭和電工社製AT−807Sを1本使用して測定した。溶剤にはトリクロロベンゼン(TCB)を用い、140℃の条件で測定した。
(4)密度(g/cm3
柴山科学器械製作所製密度勾配管法比重測定装置を用いて、JIS−K7112のD法に準拠して測定を行った。尚比重液にはイソプロピルアルコール/水の系を用いた。
(5)透明性・評価方法ASTM−D1003に準拠して、HAZE(%)を測定した。
・評価基準 尺度 記号 備考HAZE≦1.0% ◎ 透明性に優れる1.0<HAZE≦2.0% ○ 実用上問題の無いレベル(以上合格)
2.0<HAZE≦3.0% △ フィルムの白さが気になるHAZE>3.0% × 実用には不向き(6)200%伸び荷重フィルムサンプルを長辺100mm、短辺10mmの短冊状に、MD及びTDに切り出す。長辺方向を測定方向とし、チャック間を50mmに調整したストレインゲージ(アンプ、レコーダに接続)付き引張試験機に取り付け、23℃、65%RHの雰囲気中で引張速度200mm/分で引張り、伸びが200%に達した時の荷重を200%伸び荷重(g/cm幅)とした。
(7)破断伸び上記200%伸び荷重の測定と同様な装置及び条件で、フィルムが破断した時の歪み量を破断伸び(%)とした。
(8)引裂強度(エルメンドルフ)
JIS−P8116に準拠し、23℃の雰囲気条件で測定した。
(9)ダート強度恒温槽付き東洋精機社製RDT−5000/DARTを用いて、フィルムの破壊エネルギーENG(単位:J)を求めた。ダートの種類はSMALL ALUMINIUM DART(3.75kg)でダート径は5/8インチ(15.88mmφ)、セルの最大荷重が100ポンド(45.53kgf)、受けダイの内径が2.5インチ(63.5mmφ)、ダートの落下速度を3.87m/秒(落下高さが76cm)で、温度は23℃で行った。
(10)シール性・評価方法中央化学社製ポリプロピレン製トレーCH16−10F(160×98×33)に100gの重りを載せ、これを30cm×30cmに切り出したフィルムで包んだ。この場合、トレーの底ではフィルムが1枚の部分、2重に重なる部分、3枚重なる部分、5枚重なる部分が出来る。トレーの底の部分を所定の温度に昇温しておいた熱板に2秒接触させた後、ヒートシールの状態を観察した。5枚重なる部分でも完全にシールされていて、無理に剥がそうとするとフィルムが破れる状態までシールされている最低温度をシール下限温度(T1)とし、又1枚の部分でも穴が開かない最高温度をシール上限温度(T2)として、ΔT=T2−T1をシールレンジとした。
・評価基準 基準 記号 備考ΔT>60℃ ◎ ヒートシール性に優れる45<ΔT≦60℃ ○ 弁当包装に利用可能(以上、合格)
35<ΔT≦45℃ △ 一般トレー包装であれば利用可能35≧ΔT × 実用上問題のあるレベル(11)包装性・評価方法リスパック社製弁当容器・ハイクッカーHF520B(蓋:ランチRF520FC)に米飯を500g詰めて蓋をし、フジキカイ社製突上型包装機A−18Xで500mm幅のフィルムサンプルを用いてストレッチ包装した。包装は100個連続で行い、評価は、容器の角部でのフィルムの破れ、容器底部での折り込み板によるフィルムの擦れ破れ、容器の変形及び潰れ、ヒートシール部がフィルムの破れなしに剥がせる状態にないか等を観察し、全て評価で満足出来るものの数(N)を数えた。
・評価基準 基準 記号 備考N≧98 ◎ 包装性に優れる90≦N<98 ○ 以上合格レベル60≦N<90 △ 現状、市場では許容されているレベルN<60 × 以下、実用不可(12)総合評価・評価方法包装性、シール性、透明性より総合的に評価した。
・評価基準 基準 記号 備考3項目全て「◎」のもの ◎ 弁当包装用フィルムに最も適している3項目全て「○」以上のもの ○ 弁当包装用に利用可能1項目でも「△」があるもの △ 以下、弁当包装用には適さない1項目でも「×」があるもの × 実用上問題のあるレベル
【0036】
【発明の実施の形態】先ず、本発明で用いた重合体を以下に示す。尚以下に示す各樹脂のメルトフローレートは、JIS−K7210に準拠し、MIは条件4(190℃、2.16kgf)、MFRは条件14(230℃、2.16kgf)で測定した値である。
・s1:エチレン−オクテン−1共重合体[オクテン−1含量=15重量%、密度=0.902g/cm3 、MI=3.3g/10分、融点=98℃、Mw/Mn=2.7(ダウケミカル社製「AFFINITY・PL1850」)]
・s2:エチレン−オクテン−1共重合体[オクテン−1含量:13.8重量%、密度=0.902g/cm3 、MI=7.5g/10分、融点=97℃、Mw/Mn=2.7(ダウケミカル社製「AFFINITY・PT1450」)]
・s3:エチレン−オクテン−1共重合体[オクテン−1含量=18重量%、密度=0.885g/cm3 、MI=3.0g/10分、融点=78℃、Mw/Mn=2.7(ダウケミカル社製「AFFINITY・CL8003」)]
・s4:エチレン−オクテン−1共重合体[オクテン−1含量=22重量%、密度=0.875g/cm3 、MI=3.0g/10分、融点=67℃、Mw/Mn=2.7(ダウケミカル社製「AFFINITY・KC8852」)]
・s5:エチレン−オクテン−1共重合体[オクテン−1含量=24重量%、密度=0.870g/cm3 、MI=5.0g/10分、融点=61℃、Mw/Mn=2.7(ダウケミカル社製「AFFINITY・EG8200」)]
・s6:エチレン−オクテン−1共重合体[オクテン−1含量=24重量%、密度=0.870g/cm3 、MI=1.0g/10分、融点=57℃、Mw/Mn=2.7(ダウケミカル社製「AFFINITY・CL8002」)]
・s7:エチレン−ヘキセン−1共重合体[密度=0.905g/cm3 、MI=4.0g/10分、融点=88℃、Mw/Mn=2.2(三井化学社製「EVOLUE・SP0540」)]
・s8:エチレン−ブテン−1−ヘキセン−1共重合体[密度=0.910g/cm3 、MI=1.2g/10分、融点=103℃、Mw/Mn=2.5(EXXON社製「EXACT3025」)]
・s9:エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体[密度=0.910g/cm3 、MI=3.6g/10分、融点=114℃、Mw/Mn=3.2(三井化学社製「ウルトゼックス1030F」)]
・s10:エチレン−酢酸ビニル共重合体[酢酸ビニル=15重量%、密度=0.94g/cm3 、MI=2.2g/10分、融点=94℃(日本ユニカー社製「NUC3758」)]
・h1:プロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体[密度=0.88g/cm3 、MFR=30g/10分、融点=165℃、融解熱量=51.7J/g(モンテル−JPO社製「Adflex・KS084P」)]
・h2:プロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体[密度=0.88g/cm3 、MFR=0.8g/10分、融点=165℃、融解熱量=34.3J/g(モンテル−JPO社製「Adflex・KS081P」)]
・h3:プロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体[密度=0.89g/cm3 、MFR=6g/10分、融点=139℃、融解熱量=61.9J/g(モンテル−JPO社製「Adflex・C200F」)]
・h4:プロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体[密度=0.89g/cm3 、MFR=9g/10分、融点=165℃、融解熱量=33.3J/g(モンテル−JPO社製「Adflex・7149XCP」)]
・h5:プロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体[密度=0.88g/cm3 、MFR=1.5g/10分、融点=153℃、融解熱量=13.9J/g(トクヤマ社製「PER・T310J」)]
・h6:プロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体[密度=0.89g/cm3 、MFR=7g/10分、融点=167℃、融解熱量=64.4J/g(チッソ社製「NEWCON・NF2106」)]
・h7:プロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体[密度=0.89g/cm3 、MFR=20g/10分、融点=165℃、融解熱量=84.7J/g(チッソ社製「NEWCON・NF6120」)]
・h8:プロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体[密度=0.90g/cm3 、MFR=4.7g/10分、融点=154℃、融解熱量=81.9J/g(日本ポリオレフィン社製「J−ALLOMER・MK312C」)]
・h9:プロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体[密度=0.90g/cm3 、MFR=12g/10分、融点=165℃、融解熱量=92.5J/g(日本ポリオレフィン社製「J−ALLOMER・MY412B」)]
・h10:プロピレン単独重合体[密度=0.90g/cm3 、MFR=4g/10分、融点=163℃、融解熱量=102.5J/g(日本ポリオレフィン社製「J−ALLOMER・PL500A」)]
・h11:プロピレン−エチレン・ランダム共重合体[密度=0.90g/cm3 、MFR=1g/10分、融点=151℃、融解熱量=111.7J/g(日本ポリオレフィン社製「J−ALLOMER・EG110」)]
・h12:プロピレン−エチレン・ランダム共重合体[密度=0.90g/cm3 、MFR=7g/10分、融点=137℃、融解熱量=89.3J/g(チッソ社製「F8277」)]
・h13:1−ブテン−プロピレン・ランダム共重合体[密度=0.90g/cm3 、MI=2g/10分、融点=72℃、融解熱量=28.2J/g(三井化学社製「タフマーBL2281」)]
・h14:1−ブテン−エチレン・ランダム共重合体[密度=0.90g/cm3 、MI=4g/10分、融点=98℃、融解熱量=19.1J/g(三井化学社製「タフマーBL3450」)]
【0037】
【実施例1】S層としてs3にジグリセリンラウレート(理研ビタミン社製「L−71D」)を2.0重量%添加した層を、H層としてh2を用いて、各層をS/H/S(=35%/30%/35%)の3層構成に210℃に設定された多層サーキュラーダイ(リップ径=100mm、リップ開度=2.0mm)より押出し(全押出量=20kg/hr)、15℃の冷風で冷却しながら、横倍率(BUR)が3.5倍になるようにエアを注入して、引き取り速度が33.7m/分、開度が60度のロール式デフレータで折り畳み、引き取りロールで引き取り巻き取った。因みにバブルのネックからフロストラインまでの距離は約30cmであった。出来たフィルムの厚みは約12μmであった(Run.No.1)。
【0038】このフィルムを前述の方法で評価した。
【0039】
【比較例1】実施例1において、S層としてEVAにジグリセリンラウレート(理研ビタミン社製「L−71D」)を2.0重量%添加した層を、H層としてh10を用いた(Run.No.2)、同h11を用いた(Run.No.3)、同h12を用いた(Run.No.4)他は、実施例1と同様な実験を繰り返した。
【0040】以上、Run.No.1〜4の評価結果を表1にまとめて示す。先ず本発明のフィルムが従来のフィルムに比べ容器包装用フィルムとして優れていることを、表1を用いて説明する。表1において、実施例1、Run.No.1のフィルムが本発明のフィルムであり、比較例1、Run.No.2〜4が従来のフィルムに対応する。
【0041】表1から明らかな様に、本発明のフィルム(Run.No.1)は、シール性及び包装性共に優れていた。これに対し、S層にEVA、H層にプロピレン単独重合体を用いたフィルム(Run.No.3)及び、同融点が151℃のEPPを用いたフィルム(Run.No.4)とも包装性に劣り、また包装性を少しでも改良しようとしてエチレン含量の高い融点が137℃のEPPをH層に用いたフィルム(Run.No.5)は包装性を改良できないばかりかシール性をも低下させてしまう結果となった。
【0042】以上のことから、本発明のフィルムが従来のフィルムに比べ容器包装用ストレッチフィルムとして優れていることが分かる。
【0043】
【実施例2】実施例1において、S層の樹脂をs1に替えた(Run.No.5)、同s2に替えた(Run.No.6)、同s7に替えた(Run.No.7)、同s4に替えた(Run.No.8)、同s5に替えた(Run.No.9)他は、実施例1と同様な実験を繰り返した。
【0044】
【比較例2】実施例1において、S層の樹脂をs6に替えた(Run.No.10)、同s8に替えた(Run.No.11)、同s9に替えた(Run.No.12)他は、実施例1と同様な実験を繰り返した。以上、Run.No.1及びRun.No.5〜12の評価結果を表2に示す。
【0045】表2において、実施例のフィルムは、シール性、包装性、透明性に優れ、総合評価も全て○以上であった。これに対して、S層に融点が103℃のエチレン−α・オレフィン共重合体を用いたRun.No.11のフィルムは、シール可能な下限温度が135℃でシールレンジは30℃と狭く、又引裂強度が小さき為に包装時にフィルムの破れ屑が多数発生し、又包装時にシールが不完全で、完全にシールしようとするとフィルムにメルトホールが発生した。
【0046】又、Run.No.10のフィルムはS層に融点が57℃のエチレン−α・オレフィン共重合体を用いたフィルムで、フィルムを繰り出す際にもブロッキングぎみで、包装時にも容器底部での折り込み板で擦れ破れが多発した。更にRun.No.12のフィルムのS層には融点が114℃のエチレン−α・オレフィン共重合体を用いたにも係わらず、包装時に容器底部での折り込み板で擦れ破れが多発した。原因は分子量分布(Mw/Mn)が3.0を越えている為に低分子量且つ低融点成分がフィルム表面に、融点が高いのも係わらず滑り性に劣り(一般的に測定している梨地金属製ライダーを移動速度が100/minの条件で測定した動摩擦係数では差が見られない)包装時に破れが多発してたと考えられる。
【0047】ここで、Run.No.1とRun.No.7との比較において、前者はエチレン−α・オレフィン共重合体中のα・オレフィンが1−オクテンの場合であり、後者は1−ヘキセンの場合である。Run.No.1のフィルムは、引裂強度はMD/TD=25g/120g(TD/MD比=4.8)で、包装機のカット刃によるカット性に優れカット屑の発生は無く、又包装時の仕上がりも綺麗だった。
【0048】Run.No.7のフィルムは、引裂強度はMD/TD=15g/150g(TD/MD比=10)と縦方向と横方向の強度バランスが悪く、包装機のカット刃によるカット性にやや劣りカット屑が発生し、又カット時にフィルムが弛んで包装皺が残りやすい傾向にあった。このことから、エチレン−α・オレフィン共重合体中のα・オレフィンは1−ヘキセン(C6)よりも1−オクテン(C8)の方が引裂強度観点からは好ましいことが分かる。
【0049】またRun.No.1のフィルムは、エチレン−α・オレフィン共重合体のMIが1.0g/10分でHAZEが1.5%であったのに対して、Run.No.5〜9のフィルムはエチレン−α・オレフィン共重合体のMIが3.0g/10分以上でHAZEが0.6〜0.9%と透明性に優れていた。このことから、エチレン−α・オレフィン共重合体のMIが透明性の観点から3.0g/10分以上あることが好ましいことが分かる。
【0050】
【実施例3】実施例1において、H層の樹脂及び層厚み比を表3に示す用に替えた他は、実施例1と同様な実験を繰り返した(Run.No.13〜18)。
【0051】
【比較例3】実施例1において、H層の樹脂及び層厚み比を表3に示す用に替えた他は、実施例1と同様な実験を繰り返した(Run.No.19〜21)。以上、Run.No.1及び、Run.No.13〜21の評価結果を表3に示す。
【0052】以下、本発明のフィルムの耐熱層(H層)はプロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体(B−PP)からなり、融点が150℃以上でフィルム全重量に対する融解熱量が5〜40J/gであることの必要性について、表3を用いて説明する。表3から、本発明のフィルムはシール性、包装性、透明性、総合評価全てが○以上で、容器包装に適していることが分かる。
【0053】ここで、上記融点が154℃のRun.No.17のフィルムと上記融点が139℃のRun.No.19のフィルムを比較すると、Run.No.17のフィルムのシールレンジが55℃(シール性は○)で包装機による包装においてもシール性に優れていたのに対して、Run.No.19のフィルムはシールレンジが35℃(シール性は×)で包装機による包装において、底シールが不完全で剥がそうとするとフィルムが破れることなく剥がすことが出来、更に完全にシールしようとするとメルトホールが発生した。以上のことから、H層の融点は150℃以上である必要性が分かる。
【0054】尚、Run.No.20のフィルムの耐熱性を向上してシール性を改善する為に、S層を各10%、H層を80%とすると(フィルム全重量に対する融解熱量=11.1J/g)シール性は改良されたが(シールレンジ=50℃)、HAZEが3.2%と透明性に劣るフィルムとなった。この結果から、樹脂自身の融解熱量が20J/g未満のB−PPでは、シール性と透明性を両立出来る範囲が極めて狭いことが分かる。
【0055】次に、上記フィルム全重量に対する融解熱量が6.7J/gのRun.No.14と上記フィルム全重量に対する融解熱量が4.2J/gのRun.No.20とを比較すると、Run.No.14のフィルムのシールレンジが50℃(シール性は○)で包装機による包装においてもシール性に優れていたのに対して、Run.No.20のフィルムはシールレンジが30℃(シール性は×)で包装機による包装において、底シールが不完全で完全にシール出来る条件が見い出せなかった。以上のことから、H層のフィルム全重量に対する融解熱量は5J/g以上である必要性が分かる。
【0056】又、上記フィルム全重量に対する融解熱量が38.6J/gのRun.No.15と上記フィルム全重量に対する融解熱量が42.4J/gのRun.No.21とを比較すると、Run.No.15のフィルムでは包装破れが少なかった(N=92)のに対して、Run.No.21のフィルムは包装時の破れが多発した(N=5)。このことから、H層のフィルム全重量に対する融解熱量は40J/g以下である必要性が分かる。
【0057】ここで、Run.No.14のフィルムに用いたB−PPは樹脂単独でDSC測定を行うと124℃をピーク温度とするピークと165℃をピーク温度とするピークの2つのピークが見られる。このフィルムは引裂強度がMD/TD=50g/20gと縦方向の引裂強度が高く、包装機のカット刃によるカット性に優れていた。又透明性にも優れHAZEが0.6%であった。
【0058】Run.No.16のフィルムについても透明性に優れ、HAZEは0.5%であった。Run.No.17及びRun.18はゴム分散径が平均径で1〜10μm程度で一般に言われるところのリアクターTPOとは異なる為に、他の実施例に比べると透明性(HAZE≒1.8%)及び引裂強度(MD及びTD共に20g以下)に劣っていた。
【0059】
【実施例4】S層としてs4にジグリセリンラウレート(理研ビタミン社製「L−71D」)を2.0重量%添加した層を、H層としてh2を60容量%とh12を40容量%ブレンドした組成物を用いて、各層をS/H/S(=35%/30%/35%)の3層構成に210℃に設定された多層サーキュラーダイ(リップ径=200mm、リップ開度=1.0mm)より押出し(全押出量=15kg/hr)、押し出した積層体を30℃の冷水で急冷して折り畳み、厚みが100μmの原反を得た。ここで、原反チューブの内面にはポリオキシエチレン(n=10モル)・ラウリル酸エステルの10%水溶液を塗布した(塗布量=有効成分約5mg/m2 )。折り畳んだ原反に空気を注入してチューブ状にし、120℃に加熱して、20℃の冷風で冷却しながらMDに3.3倍、TDに3.3倍にチューブラー延伸し、開度が60度のロール式デフレータで折り畳み、引き取りロールで引き取り巻き取った。最終的には、延伸倍率はMDが3.2倍、TDが3.1倍で、フィルム厚みは約10μmであった(Run.No.22)。
【0060】更に、H層に用いたh2をh1に替えたもの(Run.No.23)、H層をh1を60容量%とh13を40容量%ブレンドした組成物を用いたもの(Run.No24)をRun.No.22と同様に製膜した。以上、Run.No.22〜24の評価結果を表4に示す。Run.No.22〜24のフィルムは、RUn.No.1のフィルムと比べTDのS−Sカーブにプラトーが見られず、包装機による包装においても包装皺が少ない傾向にあった。
【0061】ここで、MFRが0.8g/10分のB−PPを用いたRun.No.22とMFRが30g/10分のB−PPを用いたRun.No.23との比較において、RunNo.22ではMDの破断伸びが430%で、引裂強度がMD/TD=30g/15gであるのに対し、Run.No.23では、同順に480%、MD/TD=50g/30gと強度が大きくなっていた。又、MIが2g/10分のポリブテン−1系樹脂を用いたRun.No.23とMFRが4g/10分のポリブテン−1系樹脂を用いたRun.No.24との比較において、RunNo.23ではMDの破断伸びが480%で、引裂強度がMD/TD=50g/30gであるのに対し、Run.No.24では、同順に500%、MD/TD=100g/80gと更に強度が大きくなっていた。このことから、H層に用いるB−PPや他の樹脂のメルトフローレートは大きくした方が強度が大きくなって好ましいことが分かる。
【0062】
【実施例5】S層としてs4にポリオキシエチレン(n=10モル)・ラウリル酸エステルジグリセリンラウレート(理研ビタミン社製「L−71D」)を0.7重量%添加した層を、H層としてh1を60容量%とh13を40容量%ブレンドした組成物にジグリセリンラウレート(理研ビタミン社製「L−71D」)を1.6重量%添加した層を、M層としてs4にリワーク樹脂を50重量%ブレンドした組成物(s4≒60%、h1≒4.5%、h13≒3.0%)層を用いて、各層をS/H/M/H/S(=15%/15%/40%/15%/15%)の5層構成に210℃に設定された多層サーキュラーダイ(リップ径=200mm、リップ開度=1.0mm)より押出し(全押出量=15kg/hr)、押し出した積層体を30℃の冷水で急冷して折り畳み、厚みが100μmの原反を得た。ここで、原反チューブの内面にはポリオキシエチレン(n=10モル)・ラウリル酸エステルの10%水溶液を塗布した(塗布量=有効成分約5mg/m2 )。折り畳んだ原反に空気を注入してチューブ状にし、120℃に加熱して、20℃の冷風で冷却しながら縦方向に3.3倍、横方向に3.3倍にチューブラー延伸し、開度が60度のロール式デフレータで折り畳み、引き取りロールで引き取り巻き取った。最終的には、延伸倍率は縦方向が3.2倍、横方向が3.1倍で、フィルム厚みは約10μmであった(Run.No.25)。
【0063】上記フィルムの基本物性は200%伸び荷重(g/cm幅)がMD/TD=220/130、破断伸び(%)がMD/TD=480/600、引裂強度(g)がMD/TD=60/50、ダート強度が0.5Jで、実用物性はシール性が◎(シールレンジが65℃)、包装性が◎(N=99)、透明性が◎(HAZEが0.9%)で総合評価も◎であった。
【0064】Run.No.25のフィルムはリワーク樹脂利用を検討した構成であり、リワークを利用しないRun.No.24に比べると若干物性が劣るが十分弁当包装用フィルムとして優れていた。尚、単純にRun.No.24のS層にリワーク樹脂を利用しよとすると、S層に対してリワーク樹脂を10%ブレンドしただけでもHAZEは10%を越えてしまい、実用には適さないフィルムとなった。
【0065】
【表1】


【0066】
【表2】


【0067】
【表3】


【0068】
【表4】


【0069】
【発明の効果】本発明によれば、従来のストレッチフィルムよりも更にヒートシール性に優れ包装時の破れが発生し難いフィルムを提供出来、特に弁当等の容器を包装するのに適したストレッチ包装用フィルムが提供できる。尚本発明のフィルムは弁当等の容器包装に限定されたものではなく、一般のストレッチ包装に利用出来ることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 両表面層(S層)と少なくとも1層の耐熱層(H層)からなる少なくとも3層のストレッチ包装用フィルムにおいて、両表面層(S層)が融点が60〜100℃で重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3以下であるエチレン−α・オレフィン共重合体からなること、及び耐熱層(H層)はプロピレン−α・オレフィン・ブロック共重合体からなり、融点が150℃以上で、フィルム全重量に対する融解熱量が5〜40J/gであることを特徴とするストレッチ包装用フィルム。

【公開番号】特開2000−94611(P2000−94611A)
【公開日】平成12年4月4日(2000.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−265883
【出願日】平成10年9月21日(1998.9.21)
【出願人】(000000033)旭化成工業株式会社 (901)
【Fターム(参考)】