説明

ストレッチ包装用フィルム

【課題】 自動包装機による包装機適性が良好で、長時間低温保管でたるみが発生せず、ハイストレッチ包装によるフィルム白化が生じない包装用フィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも3層から成るストレッチ包装用フィルムであり、両表面層はエチレン系樹脂(A)成分を主成分として含有し、中間層は、以下の(1)及び(2)の条件を満たすプロピレン系樹脂(B)成分と以下の(3)の条件を満たすプロピレン系樹脂(C)成分とを主成分として含有し、結晶化熱量が10〜60J/gであり、貯蔵弾性率が100MPa〜1GPaであることを特徴とするストレッチ包装用フィルム。
(1)DSCにて測定したときの結晶化曲線のピークがシングルである
(2)上記(1)における結晶化ピーク温度が70℃以上、かつ結晶化熱量が10J/g以下である
(3)DSCにて測定したときの結晶化熱量の値がプロピレン系樹脂(B)の結晶化熱量よりも大きな値を有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチ包装用フィルムに関し、詳しくは、食品包装用に好適に用いられるストレッチ包装用フィルム、特に塩素やポリ塩化ビニル用可塑剤を含まないストレッチ包装用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、青果物、精肉、惣菜などを軽量トレイに載せてオーバーラップして使用されるフィルム、いわゆるプリパッケージ用のストレッチ包装用フィルムとして、主にポリ塩化ビニル系フィルムが使用されてきた。ポリ塩化ビニル系フィルムは、包装効率がよく、包装仕上りが綺麗である等の包装適性が好ましいという理由の他、包装後のフィルムを指で押して変形を加えた際に元に戻る弾性回復性に優れており、また、底折り込み安定性も良好であり、しかも輸送陳列中にフィルム剥がれが発生し難い等、商品価値が低下しないという販売者、消費者の双方に認められた品質の優位性を持っていたためである。しかし、近年、ポリ塩化ビニル系フィルムについては、焼却時に発生する塩化水素ガスや、多量に含有する可塑剤の溶出などが問題視されてきている。
【0003】
このため、ポリ塩化ビニル系フィルムに代わる材料が種々検討されており、特にポリオレフィン系樹脂を用いたストレッチ包装用フィルムが各種提案されている。中でも、ストレッチフィルムとして良好な表面特性や、透明性、適度な耐熱性、材料設計の自由度、経済性などの理由から、表裏層にエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分として用い、中間層に各種ポリプロピレン系樹脂を主成分として用いてなる2種3層構成のストレッチ包装用フィルムの検討が活発に行われている。
【0004】
例えば結晶化熱量が10〜60J/gであるプロピレン系樹脂、および石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン樹脂またはこれらの水素添加誘導体の群から選ばれる1種を含有する層を少なくとも一層有し、かつ特定の貯蔵弾性率を有する食品包装用ストレッチフィルムが提案されている(特許文献1)。
【0005】
ストレッチ包装用フィルムを自動包装機にセットして包装する場合、所定の幅のフィルムをトレイの大きさに応じて延伸度を変えて包装することがある。このとき、大きいトレイを包装するためにはオーバーラップする際の延伸度を上げて包装する(ハイストレッチ包装)ことになる。上記特許文献1では、塩素やポリ塩化ビニル用可塑剤を含まない非塩素系ストレッチ包装用フィルムとして、新たなポリオレフィン系ストレッチ包装用フィルムが提案されている。しかしながら、このフィルムは、自動包装機を使用した場合の各種包装機適性(カット性、包装シワ、底折り込み安定性、ちぎれ性)等は良好であるものの、上述のようなハイストレッチ包装をする際に生じる包装後のフィルムの白化が課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−154479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、特定の軟質ポリプロピレン系樹脂を主成分として用い、かつ貯蔵弾性率の値を規定することにより、自動包装機を使用した場合の各種包装機適性(カット性、包装シワ、底折り込み安定性、ちぎれ性)等が良好で、かつ、オーバーラップする際にハイストレッチを施しても包装後フィルムに白化が生じにくい新たな非塩素系ストレッチ包装用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも3層から構成される積層フィルムから成るストレッチ包装用フィルムであって、両表面層はエチレン系樹脂(A)成分を主成分として含有し、また、中間層は、以下の(1)及び(2)の条件を満たすプロピレン系樹脂(B)成分と以下の(3)の条件を満たすプロピレン系樹脂(C)成分とを主成分として含有し、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化熱量(ΔHc)が10〜60J/gであり、そして、積層フィルムについて、動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜1GPaであることを特徴とするストレッチ包装用フィルムに存する。
(1)示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化曲線のピークがシングルである。
(2)上記(1)における結晶化ピーク温度(Tc)が70℃以上、かつ結晶化熱量(ΔHc)が10J/g以下である。
(3)示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化熱量(ΔHc)の値がプロピレン系樹脂(B)の結晶化熱量(ΔHc)よりも大きな値を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動包装機を使用した場合の各種包装機適性(カット性、包装シワ、底折り込み安定性、ちぎれ性)等が良好で、かつ、オーバーラップする際にハイストレッチを施しても包装後フィルムに白化が生じにくい非塩素系ストレッチ包装用フィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例としてのストレッチ包装用フィルムについて説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本発明のフィルムでは、エチレン系樹脂(A)成分を主成分とする表面層を形成し、積層構成とすることで、特に低温でのヒートシール性(底シール性)や、自己粘着性、インフレーションした際の成形性などを高めることができる。
【0013】
ここで、エチレン系樹脂(A)としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられる。その他、エチレンを主成分とする共重合体、例えば、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等の炭素数3〜10のα−オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステルおよびそのアイオノマー、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる一種または2種以上のコモノマーとの共重合体または多元共重合体、あるいは、それらの混合組成物などを挙げることができる。エチレン系重合体中のエチレン単位の含有量は、通常50質量%を超える。
【0014】
これらのエチレン系樹脂(A)の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の群から選ばれる少なくとも一種のエチレン系重合体が好ましい。
【0015】
なお、上記のエチレン−アクリル酸エステル共重合体のアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が挙げられ、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体のメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
【0016】
これらの中でも、エチレン系樹脂(A)としては、酢酸ビニル単位含有量が5〜25質量%で、MFR(メルトフローレート)(JISK7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。MFRは、好ましくは0.5〜8g/10分、更に好ましくは1〜6g/10分である。酢酸ビニル単位含有量が5質量%以上であれば、得られるフィルムが柔らかく、柔軟性や弾性回復性を維持することができるばかりか、表面粘着性を付与することができる。一方、25質量%以下であれば、表面粘着性が強過ぎることがなく巻き出し性や外観を良好に維持することができる。また、MFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持することができる一方、10g/10分以下であれば、製膜安定性を維持することができ、厚み斑や力学強度のバラツキ等が生じるのを抑えることができる。
【0017】
中間層は、所定のプロピレン系樹脂(B)成分と所定のプロピレン系樹脂(C)成分とを主成分として含有する層である。
【0018】
本発明のフィルムに用いるプロピレン系樹脂(B)は、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化曲線のピークがシングルであって、当該結晶化ピーク温度(Tc)が70℃以上、かつ結晶化熱量(ΔHc)が10J/g以下である。
【0019】
一般的に、プロピレン系樹脂においては、結晶化熱量(ΔHc)が小さいほど、当該ピーク温度(Tc)も小さくなる傾向にある。
ここで、上記の結晶化曲線から求められるポリプロピレン系樹脂(B)の結晶化ピーク温度が70℃以上であれば、例えば、ポリプロピレン系樹脂(B)とその他のポリプロピレン系樹脂と混合する際に、該樹脂組成物の相溶性が高まり、ハイストレッチを施しても包装後フィルムに白化が生じにくいフィルムを得ることができる。
【0020】
このような観点から、プロピレン系共重合体(B)において、示差走査熱量計(DSC)で測定したときの結晶化シングルピーク温度は、70℃以上であるが、好ましくは80℃以上である。上限値としては特に限定はないが、実用上は150℃以下である。
【0021】
次に、本発明に用いるプロピレン系樹脂(B)の示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化曲線のピークがシングルでない場合、具体的には、例えばダブルピークの場合について説明する。該結晶化曲線のピークがダブルピークの場合には、樹脂中に結晶化速度が異なる領域が存在する、すなわち、それだけ不均一な状態であるため、透明性の低下、原料ペレットのべとつきや保管中におけるブロッキングの原因となることがあり、本発明には適さない。
【0022】
また、プロピレン系樹脂(B)において、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化熱量(ΔHc)が10J/g以下であれば、柔軟性、ストレッチ包装用フィルムとして要求される包装機適性(カット性、包装シワ、底折り込み安定性、ちぎれ性)等を確保しやすくなる。下限値としては特に限定されるものではないが、ブロッキング防止などを考慮すると1J/g以上であることが好ましい。従って、プロピレン系樹脂(B)の結晶化熱量(ΔHc)は、好ましくは1〜10J/g、更に好ましくは2〜10J/g、特に好ましくは3〜9J/gである。
【0023】
プロピレン系共重合体(B)において、結晶化熱量(ΔHc)や結晶化ピーク温度(Tc)を上記範囲とする手段としては、立体規則性を低減させる方法などが好適に用いられ、当該樹脂としてはプロピレン−エチレン共重合体もしくはプロピレン−α−オレフィン共重合体が好適に用いられる。
【0024】
ここで、α−オレフィンとしては、通常、炭素数4〜20のものが挙げられ、具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等を例示できる。この際、共重合するα−オレフィンは1種のみを単独で、または2種以上を組み合わせて用いても構わない。本発明においては、上記コントロールが比較的容易であること、工業的に比較的安価に入手可能であること等から、プロピレン−エチレン共重合体を選択することが好ましい。
【0025】
上記観点から、α−オレフィン、特にエチレンの含有率は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上である。上限値としては特に限定されるものではないが、実用上は30質量%以下である。30質量%以下であれば、結晶性が低下し過ぎることがなく、原料ペレットがブロッキングし易くなる等の問題を防止することができる。一方、プロピレン成分の含有率は、通常50質量%以上、好ましくは70〜99重量%、更に好ましくは75〜97質量%である。
【0026】
また、プロピレン−α−オレフィン共重合体において、低結晶化熱量(ΔHcが10J/g未満)でありながら、結晶化ピーク温度を高温側(Tcが70℃以上)に設計するためには、プロピレン成分とα−オレフィン成分の重合時の配列において、ランダム配列とブロック配列を共有していることが好ましい。また、それらの配列の割合を制御することにより、エチレン含有率が上記範囲であっても、Tcの極端な低下を引き起こすことなく低結晶化熱量のプロピレン系共重合体(B)を得ることができる。
【0027】
プロピレン系樹脂(B)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法などが挙げられる。
【0028】
プロピレン系樹脂(B)のMFR(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)は、特に制限されるものではないが、通常0.2g/10分以上、好ましくは0.5〜18g/10分、更に好ましくは1〜15g/10分である。MFRが0.2g/10分以上であれば押出加工性は安定し、20g/10分以下であれば成形時に安定した製膜が可能となると共に、厚みムラや力学強度の低下やバラツキ等が少なくなる。
【0029】
上記プロピレン系共重合体(B)としては、例えば、ダウ・ケミカル社製の軟質ポリプロピレン(商品名「バーシファイ」)を挙げることができる。
【0030】
本発明において、中間層の結晶化熱量(ΔHc)は10〜60J/g以下である。結晶化熱量が10J/g未満の場合は、結晶性が低すぎて製膜性が悪くなることに加えて、常温ではフィルムが柔らかすぎたり、強度が不足したりするため実用上問題がある。また、結晶化熱量が60J/gを超える場合は、フィルム伸展時に大きな力を要し、また不均一な伸びしか示さず、ストレッチフィルムに適さない。上記結晶化熱量(ΔHc)を所定の範囲に調整する手法は、特に制限されるものではないが、プロピレン系樹脂(B)と異なる樹脂を混合する手法が好適に用いられる。その中でも、各種包装機適性(カット性、包装シワ、底折り込み安定性、ちぎれ性、パック後の透明性)を付与させる点において、後述するプロピレン系樹脂(C)を混合することがより好ましい。
【0031】
本発明のフィルムに用いるプロピレン系樹脂(C)は、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化熱量(ΔHc)の値がプロピレン系樹脂(B)の結晶化熱量(ΔHc)よりも大きな値を有する。斯かるプロピレン系樹脂(C)としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと「共重合可能な他の単量体」とのランダム共重合体やブロック共重合体などを挙げることができる。
このようなプロピレン系樹脂(C)を配合することで、底折り込みやカット性などの各種包装適性を高めることができ、また、ペレット保管安定性の他、中間層を構成する樹脂組成物の強度や耐熱性を高めることができる。
【0032】
この際、共重合可能な他の単量体としては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン等の炭素数4〜20のα−オレフィン;ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエン類などが挙げられる。これらは2種以上が共重合されていてもよい。
【0033】
ストレッチフィルムに必要な適度な柔軟性を付与するという観点からは、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、およびリアクタータイプのポリプロピレン系エラストマーの群から選ばれる1種または2種類をプロピレン系共重合体(C)として用いるのが好ましい。
【0034】
なお、プロピレン系樹脂(C)において、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化熱量(ΔHc)が30J/g以上であれば、強度やヒートシール性を保持することができる。
ここで、結晶化熱量(ΔHc)は、用いるプロピレン系樹脂(C)の分子量、エチレン含有量(共重合比)、ランダム度(エチレン成分の共重合体中の分散性)や立体規則性などに依存する。一般的に、結晶化熱量が大きいほど、当該ピーク温度も上昇する傾向にあり、総じて耐熱性に優れると言える。このような観点から結晶化熱量(ΔHc)は、好ましくは30J/g以上、更に好ましくは40J/g以上、特に好ましく、50J/g以上である。上限値としては特に限定されるものではないが、実用上は150J/g以下である。
【0035】
プロピレン系樹脂(C)のMFR(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)は、特に制限されるものではないが、通常0.2g/10分以上、好ましくは0.5〜18g/10分、更に好ましくは1〜15g/10分である。MFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、20g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となると共に、厚みムラや力学強度の低下やバラツキ等が少なくなり好ましい。
【0036】
上記プロピレン系樹脂(C)としては、例えば、日本ポリプロ(株)の商品名「ノバテックPP」、「WINTEC」、住友化学(株)の商品名「ノーブレン」、プライムポリマー(株)の商品名「プライムポリプロ」「プライムTPO」等を挙げることができる。
【0037】
中間層を構成する樹脂組成物において、プロピレン系樹脂(B)とプロピレン系樹脂(C)の含有割合は、(B)/(C)の質量比率として、通常20〜80/80〜20、好ましくは30〜70/70〜30、更に好ましくは40〜60/60〜40である。この範囲を超えて(B)成分が多くなると過柔軟となり、フィルムのカット性が悪化したり、耐熱性が劣ったりすることがある。また、(C)成分が過剰に多くなるとストレッチ包装用フィルムとして要求される特性である包装作業性、包装仕上り、弾性回復性、底シール性、透明性などを確保することができない場合がある。
【0038】
中間層を構成する樹脂組成物は、(B)成分および(C)成分の他に、所定の樹脂(D)成分を含有してもよい。樹脂(D)としては、例えば、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、およびそれらの水素添加誘導体の群から選ばれる1種または2種類以上の樹脂(以下、これらを総称して「石油樹脂類」とも称する)を挙げることができる。このような樹脂(D)成分は、フィルムの腰やカット性、底折り込み安定性などの包装適性並びに透明性の更なる向上などに有効に作用する。
【0039】
ここで、石油樹脂としては、シクロペンタジエンまたはその2量体から得られた脂環式石油樹脂、C9成分から得られた芳香族石油樹脂、脂環式と芳香族石油樹脂の共重合系石油樹脂などを挙げることができる。
【0040】
テルペン樹脂としては、β−ピネンから得られたテルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂などを挙げることができる。
【0041】
クマロン−インデン樹脂としては、タールの160〜180℃留分を精製し、炭素数8のクマロンおよび炭素数9のインデンを主要なモノマーとして重合した熱可塑性合成樹脂などを挙げることができる。
【0042】
ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトール等で変性したエステル化ロジン樹脂などを挙げることができる。
【0043】
上記のような石油樹脂は、色調や熱安定性、相溶性といった面から水素添加誘導体を用いることが好ましい。また、上記の石油樹脂は、主に分子量により種々の軟化温度を有するが、軟化温度は、通常100〜150℃、好ましくは110〜140℃である。
【0044】
具体的には、三井化学(株)の商品名「ハイレッツ」、「ペトロジン」、荒川化学工業(株)の商品名「アルコン」、ヤスハラケミカル(株)の商品名「クリアロン」、出光石油化学(株)の商品名「アイマーブ」、イーストマンケミカル(株)の商品名「エスコレッツ」等の市販品を用いることができる。
【0045】
中間層を構成する樹脂組成物において、樹脂(D)の含有量は通常1〜40質量%である。樹脂(D)の含有量が1質量%以上であれば、ストレッチフィルムに必要なカット性および底折り込み安定性を付与させることができる。樹脂(D)の含有量は、好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。また、40質量%以下であればガラス転移温度の上昇に伴ってストレッチフィルムに必要な低温適性が損なわれにくく、また、低分子物のブリードによるフィルムのブロッキングも引き起こしにくい。樹脂(D)の含有量は、好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0046】
中間層を構成する樹脂組成物は、(B)成分、(C)成分、および(D)成分の他に、エチレン系樹脂(E)を含有してもよい。
【0047】
このエチレン系樹脂(E)は、表面層を構成するエチレン系樹脂(A)と同じポエチレン系樹脂であっても、異なるエチレン系樹脂であってもよいが、好ましくは同じエチレン系樹脂である。エチレン系樹脂(E)と表面層を構成するエチレン系樹脂(A)とが同じエチレン系重合体であれば、中間層と表面層との密着性を高めることができ、フィルム全体での力学特性を高めることができる他、例えば製膜したフィルムの両端をカットしてトリミングした際に発生するトリミングロスを、中間層の構成原料として添加するようにして調製できるから、材料の無駄を無くし、材料コストの軽減を図ることができる。
【0048】
最も好適なエチレン系樹脂(E)として、酢酸ビニル単位含有量が5〜25質量%で、MFR(JISK7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体である。、MFRは、好ましくは0.5〜8g/10分、更に好ましくは1〜6g/10分である。ここで、酢酸ビニル単位含有量が5質量%以上であれば、得られるフィルムが柔らかく、柔軟性や弾性回復性を維持することができるばかりか、エチレン系樹脂(E)が表面層である場合には、表面粘着性を付与することができる。一方、25質量%以下であれば、例えばエチレン系樹脂(E)が表面層である場合であっても、表面粘着性が強過ぎることがなく巻き出し性や外観を良好に維持することができる。また、MFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持することができる。一方、10g/10分以下であれば、製膜安定性を維持することができ、厚み斑や力学強度のバラツキ等が生じるのを抑えることができる。
【0049】
中間層を構成する樹脂組成物において、エチレン系樹脂(E)の含有量は通常1〜40質量%である。エチレン系樹脂(E)の含有量が1質量%以上であればストレッチフィルムに必要な低温適性が充分である。エチレン系樹脂(E)の含有量は、好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。また、40質量%以下であれば底折り込み安定性や耐熱性が充分である。エチレン系樹脂(E)の含有量は好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0050】
本発明のフィルムの表面層および/または中間層には、防曇性、帯電防止性、滑り性、粘着性などの性能を付与するために次のような各種添加剤を適宜配合することができる。ここで、各種添加剤としては、例えば、炭素数が通常1〜12、好ましくは1〜6の脂肪酸アルコールと、炭素数が通常0〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステルである。具体的には、モノグリセリンオレート、ポリグリセリンオレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、グリセリンラウレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシノレート、エチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等;ポリアルキルエーテルポリオール(具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等);パラフィン系オイル等を挙げることができる。これらは2種以上を併用することができる。そして、これらの添加剤の配合量は、X層を構成する樹脂成分100質量部に対し、通常0.1〜12質量部、好ましくは1〜8質量部である。
【0051】
本発明のフィルムは、両表面層がエチレン系樹脂(A)であり、中間層が所定のプロピレン系樹脂(B)成分と所定のプロピレン系樹脂(C)成分とを主成分として含有する樹脂組成物である。斯かる3層から構成される積層フィルムであればよく、本発明の趣旨を超えない範囲で、力学特性や層間接着性の改良などに必要に応じて他の層(以下、P層と略することがある)を適宜導入してもよい。ここで、表面層(以下、S層と略することがある)は、両表面層以外に、すなわち、中間層に同様の層を有してもかまわない。また、中間層(以下、M層と略することがある)は、両表面層の間に少なくとも1層有してあればよく、2層以上有してもかまわない。例えば(S層)/(M層)/(S層)からなる3層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(S層)からなる4層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(P層)/(S層)、(S層)/(M層)/(P層)/(M層)/(S層)等からなる5層構成を代表的に挙げることができる。この場合、各層の樹脂組成や厚み比に関しては同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
本発明のフィルムにおいて、表面層と中間層の厚み割合の好適な範囲は、表裏層10〜65%、中間層35〜90%である。厚み割合がかかる範囲内であれば、安定した製膜安定性が得られ、ストレッチフィルムに好適な表面粘着性を付与することができる。
【0053】
さらに、安定した製膜加工性、表面粘着性、ストレッチ包装用フィルムとしての諸物性および経済性を考慮する場合には、表裏層20〜60%、中間層80〜40%であるのがより好ましい。
【0054】
本発明のフィルムの厚さは、通常のストレッチ包装用フィルムとして用いられる範囲、すなわち、通常8〜30μm程度、好ましくは9〜20μm程度である。
【0055】
本発明のフィルムは、例えば、押出機から材料を溶融押出し、インフレーション成形またはTダイ成形によりフィルム状に成形することにより製造することができる。
【0056】
積層フィルムとする場合は、複数の押出機を用いて多層ダイにより共押出するのが好ましい。実用的には、環状ダイから材料樹脂を溶融押出してインフレーション成形するのが好ましく、その際のブローアップ比(チューブ径/ダイ径)は、通常3以上、好ましくは4〜7である。その際の冷却方法としては、チューブの外面から冷却する方法、チューブの外、内面の両面から冷却する方法のどちらでもよい。
さらに、得られたフィルムを樹脂の結晶化温度以下に加熱し、ニップロール間の速度差を利用してフィルムの縦方向に1.2〜5倍程度に延伸、またはフィルムの縦横方向に1.2〜5倍程度に二軸延伸してもよい。これにより、カット性の改良や熱収縮性の付与などを行うことができる。
【0057】
本ストレッチフィルム(積層体)の貯蔵弾性率は、JISK−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜1GPaの範囲にある。フィルムを軟質フィルムとして用いる場合、室温付近における弾性率の値が指標となる。20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上であれば、室温でフィルム同士が密着して作業性が悪くなる等の不具合が起こりにくい。一方、1GPa以下であれば、フィルムが硬すぎることがなく適度に伸びるため、軟質フィルム用途において有利である。
【0058】
本発明のフィルムの柔軟性は、JISZ−1702に準じ、温度20℃、引張速度200mm/分で引張試験を行って測定されるフィルム幅方向の100%伸び引張応力として、通常40〜140kgf/cm2、好ましくは50〜130kgf/cm2である。
【0059】
本発明において「ストレッチ包装用フィルム」とは、伸び性と自己粘着性を有する包装フィルムを広く包含する意味である。典型的には、青果物、精肉、惣菜などを軽量トレイに載せてオーバーラップするプリパッケージ用の包装用フィルム、荷物運搬時に荷物を固定するためにオーバーラップする包装用フィルム等を挙げることができる。
【0060】
本発明において「主成分」とは、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。この際、当該主成分の含有割合(2成分以上が主成分である場合にはこれらの合計量)は、特定されないが、組成物中の割合として、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100質量%を含む)である。
【0061】
また、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さおよび幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。例えば、厚さに関して言えば、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称すことがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明においては、文言上両者を区別する必要がないので、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【実施例】
【0062】
以下に、本発明を実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムおよびその材料についての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直角方向を横方向と呼ぶ。
【0063】
(1)結晶化ピーク温度(Tc)および結晶化熱量(ΔHc):
パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、JISK7121、JISK7122に準じて、測定サンプルを10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、1分間保持した後、10℃/分の降温速度で測定し、得られた結晶化曲線に基づき結晶化温度のピークがシングルであるか否かを判定すると共に、結晶化熱量(ΔHc)と結晶化ピーク温度(Tc)を求めた。
【0064】
(2)貯蔵弾性率(E'):
JISK−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御(株)製動的粘弾性測定装置「DVA−200」を用い、フィルムの横方向(TD)について、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度1℃/分で−50℃から150℃まで測定し、得られたデータから温度20℃での貯蔵弾性率(E’)を求めた。
【0065】
(3)柔軟性:
JIS Z1702に準じて、温度20℃、引張速度200mm/分で引張試験を行い、フィルム幅方向の100%伸び引張応力(kgf/cm2)を測定し、得られたフィルムの柔軟性について下記の基準で評価した。
◎:引張応力値(kgf/cm2)が50以上80未満
○:引張応力値(kgf/cm2)が40以上50未満、または80以上90未満
△:引張応力値(kgf/cm2)が20以上40未満、または90以上140未満
×:引張応力値(kgf/cm2)が20未満、または140以上
【0066】
(4)包装機適性:
フィルム(幅350mm)を用い、自動包装機((株)イシダ製ISHIDA・Wmini−UNI)により既存の規格において最大幅の発泡ポリスチレントレー(長さ280mm、幅240mm、高さ30mm)を包装し、下記1に示す基準で、カット性、包装シワ、底折り込み安定性、ちぎれ性、パック後の透明性について評価し、包装機適性とした。
【0067】
【表1】

【0068】
(5)低温適性:
擬似食品として濡れタオル400gを発泡ポリスチレントレー(長さ250mm、幅180mm、高さ25mm)に入れ、実施例・比較例で得られたフィルムを用いてハンドラッパーにて手包装し、包装体を10個作製した。その包装体を5段重ねにし、段ボースケース(長さ315mm、幅380mm、高さ165mm)に2列となる様にサンプル挿入し、梱包した。ダンボールケースを−25℃で24時間保管し、パック品を冷凍した。冷凍完了後、ダンボールケースごと高さ1mの地点から地面に落下させた後、ダンボールケースを開梱し、包装体の状態(天面のたるみ、フィルムの破れ(割れ)を確認した。
◎:全く問題なし
○:若干天面にたるみがあるが、フィルム破れはなかった。
△:最下段にフィルム破れが発生した。
×:段数に関らずフィルム破れが発生した。
【0069】
実施例1:
両表面層を形成する樹脂組成物については、(A)成分であるエチレン系樹脂としてのEVA(酢酸ビニル含有量:15質量%、結晶化熱量:76.2J/g、結晶化ピーク温度:76.7℃、MFR(JISK7210、温度:190℃、荷重:21.18N)2.0g/10分)97質量部と、添加剤(防曇剤)としてのジグリセリンオレート3質量部とを溶融混練した。
他方、中間層を形成する樹脂組成物については、(B)成分であるプロピレン系樹脂(結晶化ピーク:シングル、結晶化熱量:8.9J/g、結晶化ピーク温度:100.0℃、MFR(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)2g/10分)と、(C)成分であるプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム共重合体、結晶化ピーク:シングル、結晶化熱量:75.8J/g、結晶化ピーク温度:115.9℃、MFR(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)3g/10分)とを、質量比で(B)/(C)=54/46となるように溶融混練し、これらの溶融混練樹脂を環状三層ダイ190℃、ブローアップ比5.0で共押出インフレーション成形して、総厚み12μm(2μm/8μm/2μm)の3層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0070】
実施例2:
実施例1において、中間層を形成する樹脂組成物(B)成分および(C)成分の他に、(D)成分として水素添加石油樹脂(軟化温度125℃、荒川化学工業(株)製、アルコンP125)を、質量比で(B)/(C)/(D)=43/37/20で混合した以外は、実施例1と同様にして厚み12μmの3層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0071】
実施例3:
実施例2において、中間層を形成する樹脂組成物(B)成分、(C)成分および(D)成分の他に、(E)成分としてEVA(酢酸ビニル含有量:15質量%、結晶化熱量:76.2J/g、結晶化ピーク温度:76.7℃、MFR(JISK7210、温度:190℃、荷重:21.18N)2.0g/10分)を、質量比で(B)/(C)/(D)/(E)=34/30/16/20で溶融混練した以外は実施例3と同様にして総厚み12μm(2μm/8μm/2μm)の3層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0072】
比較例1:
実施例1における中間層を形成する樹脂組成物の組成を、実施例1で用いた(B)成分100質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、厚み12μmの3層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0073】
比較例2:
実施例1における中間層を形成する樹脂組成物の組成を、実施例1で用いた(C)成分100質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、厚み12μmの3層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0074】
比較例3:
実施例1で用いた(B)成分の代わりに、プロピレン系共重合体(P−1)(結晶化熱量:20.6J/g、結晶化ピーク:シングル、結晶化ピーク温度:57.6℃、MFR(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N):2.0g/10分)を用い、質量比で(P−1)/(C)=54/46とした以外は、実施例1と同様にして厚み12μmの3層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0075】
比較例4:
実施例1で用いた(B)成分の代わりに、プロピレン系共重合体(P−2)(結晶化熱量:13.2J/g、結晶化ピーク:ダブル、結晶化ピーク温度:77.2℃、104.9℃、MFR(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)1.5g/10分)を用い、質量比で(P−2)/(C)=54/46とした以外は、実施例1と同様にして厚み12μmの3層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0076】
比較例5:
実施例1で用いた(B)成分の代わりに、プロピレン系共重合体(P−3)(結晶化熱量:7.0J/g、結晶化ピーク:シングル、結晶化ピーク温度:21.5℃、MFR(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N):2.0g/10分)を用い、質量比で(P−3)/(C)=54/46とした以外は、実施例1と同様にして厚み12μmの3層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0077】
【表2】






【0078】
表2の結果より、実施例1〜3は、自動包装機において大きなトレイを包装した際のパック後の透明性も良好であり、包装機適性、柔軟性、低温適性のいずれにおいても良好な結果を得ることが確認できる。また、柔軟性、包装機適性、低温適性にも優れる。
【0079】
これに対して、比較例1は、貯蔵弾性率(E' )が本発明の規定範囲外で小さいため、フィルムが柔らかくなりすぎて底折り込み安定性が得られなかった。比較例2は、結晶化熱量(ΔHc)の値が本発明の規定値より大きいため、パック後の透明性が劣る他、包装シワも確認された。比較例3及び比較例5は、貯蔵弾性率(E' )および結晶化熱量(ΔHc)の値は好適な範囲を示すものの、結晶化ピーク温度(Tc)が本発明の規定範囲外であるため、パック後の透明性が劣る結果となった。また、比較例4は、結晶化ピークがダブルである樹脂を使用したため、パック後の透明性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のフィルムは、ストレッチ包装用フィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層から構成される積層フィルムから成るストレッチ包装用フィルムであって、両表面層はエチレン系樹脂(A)成分を主成分として含有し、また、中間層は、以下の(1)及び(2)の条件を満たすプロピレン系樹脂(B)成分と以下の(3)の条件を満たすプロピレン系樹脂(C)成分とを主成分として含有し、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化熱量(ΔHc)が10〜60J/gであり、そして、積層フィルムについて、動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E' )が100MPa〜1GPaであることを特徴とするストレッチ包装用フィルム。
(1)示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化曲線のピークがシングルである。
(2)上記(1)における結晶化ピーク温度(Tc)が70℃以上、かつ結晶化熱量(ΔHc)が10J/g以下である。
(3)示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化熱量(ΔHc)の値がプロピレン系樹脂(B)の結晶化熱量(ΔHc)よりも大きな値を有する。
【請求項2】
前記エチレン系樹脂(A)成分が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリルエステル共重合体およびアイオノマー樹脂の群から選ばれる1種または2種類である、請求項1に記載のストレッチ包装用フィルム。
【請求項3】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が、酢酸ビニル単位含有量が5〜25質量%で、かつMFR(JISK7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体である、請求項2に記載のストレッチ包装用フィルム。
【請求項4】
前記プロピレン系樹脂(C)成分が、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体および、リアクタータイプのポリプロピレン系エラストマーの群から選ばれる1種または2種類以上である、請求項1〜3の何れかに記載のストレッチ包装用フィルム。
【請求項5】
前記中間層が、さらに、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、およびそれらの水素添加誘導体の群から選ばれる少なくとも一種の樹脂からなる(D)成分を1〜40質量%の割合で含む、請求項1〜4の何れかに記載ストレッチ包装用フィルム。

【公開番号】特開2012−162074(P2012−162074A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1729(P2012−1729)
【出願日】平成24年1月9日(2012.1.9)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】