説明

ストレッチ運動装置

【課題】肩(肩胛骨から肩関節)や股関節に充分なストレッチ効果が得られるストレッチ運動装置を提供する。
【解決手段】仰臥姿勢の使用者Hの頭部H1および体幹部の脊髄周辺に接する背すじ支持部2を中央位置に有し、使用者Hが広げた四肢の手足H4,H5が接する四肢接面部3を左右位置に有し、四肢接面部3に対して背すじ支持部2の高さを変化させる昇降手段4を設けて、四肢接面部3に対して背すじ支持部2の高さを高くして、使用者Hの頭部H1および体幹部の脊髄周辺の少なくとも一部と、手足H4,H5の先との位置に高低差を与えることで、肩(肩胛骨から肩関節)や股関節に使用者自身の手足H4,H5の重さがかかる状態を作ることにより、関節周辺が伸び緩みすることで、充分なストレッチ効果が得られるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩(肩胛骨から肩関節)や股関節に充分なストレッチ効果が得られるストレッチ運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枕用、肩部用、背中部用、腰部用、尻部用、大腿部用、脹脛部用の各エアーバッグを設けるとともに、肩部用、背中部用、腰部用のエアーバッグを左右に分割してバイブレータをそれぞれ設けて、上半身のひねりと同期してバイブレータで振動マッサージが行えるようにしたマッサージ機がある(特許文献1参照)。
【0003】
また、背部用と腰部用の各エアーバッグを設けるとともに、腰部用のエアーバッグを左右に分割して、腰部をひねることでストレッチが行えるようにしたストレッチマットがある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−116945号公報
【特許文献2】特開2002−248144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、背景技術は、上半身または腰部にひねりを加えることでストレッチを行うものであるが、身体の関節構造を考えた場合、肩(肩胛骨から肩関節)や股関節は、仰臥姿勢の使用者の体幹部(背部と腰部)の脊髄(身体の中心)からずれて存在するために、上半身または腰部にひねりを加えても肩(肩胛骨から肩関節)や股関節に伝わりにくいので、充分なストレッチ効果が得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、肩(肩胛骨から肩関節)や股関節に充分なストレッチ効果が得られるストレッチ運動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、仰臥姿勢の使用者の頭部および体幹部の脊髄周辺に接する背すじ支持部を中央位置に有し、使用者が広げた四肢の手足が接する四肢接面部を左右位置に有し、四肢接面部に対して背すじ支持部の高さを変化させる昇降手段を設けたことを特徴とするストレッチ運動装置を提供するものである。
【0007】
持ち運びや収納を便利にするために、前記四肢接面部は、背すじ支持部を置く床面である構成とすることができる。
【0008】
肩(肩胛骨から肩関節)や股関節に使用者自身の手足の重さがかかる状態を効果的に作るために、前記背すじ支持部の幅は、使用者の肩関節や股関節の幅よりも狭く設定されている構成とすることができる。
【0009】
使用者が背すじ支持部の中心線に脊髄のラインが乗るように左右のバランスをとりながら身体を横たえるようにするために、前記背すじ支持部の表面は、中央部が幅方向で最も高くなる曲面に形成することができる。
【0010】
腰部のみのストレッチや肩部のみのストレッチを行ったりするために、前記背すじ支持部は、長さ方向を複数個に分割して、各分割部分が独立に動作可能である構成とすることができる。
【0011】
背すじ支持部の幅を変更可能にするために、前記背すじ支持部は、幅方向を複数個に分割して、各分割部分が独立に動作可能である構成とすることができる。
【0012】
様々なストレッチを選択できるようにするために、前記背すじ支持部は、時間変化パターン生成手段で高さ変化のタイミングを制御する構成とすることができる。
【0013】
使用者の身体の凹凸にフィットしやすくするために、前記背すじ支持部は、エアーバッグで構成して、前記昇降手段は、エアーバッグの膨張収縮を制御するエアー制御手段を備えている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、四肢接面部に対して背すじ支持部の高さを高くして、仰臥姿勢の使用者の頭部および体幹部(背部と腰部)の脊髄周辺の少なくとも一部と、手足の先との位置に高低差を与えることで、肩(肩胛骨から肩関節)や股関節に使用者自身の手足の重さがかかる状態を作ることにより、関節周辺が伸び緩みすることで、充分なストレッチ効果が得られるようになる。
【0015】
また、使用者(あるいは使用者の慣れの度合い)によって、緊張が少なくてストレッチ効果が得られやすい背すじ支持部の高さが異なることから、背すじ支持部の高さを昇降手段で変化させて、使用者の頭部および体幹部の脊髄周辺の少なくとも一部を好みの高さにすることで、使用者の好みに合ったストレッチ効果が得られるとともに、使用者は、自身の好みで高くした背すじ支持部から滑り落ちるおそれが少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1(a)は、ストレッチ運動装置1の斜視図、図1(b)はストレッチ運動装置1の平面図である。ストレッチ運動装置1は、仰臥姿勢の使用者Hの頭部H1および体幹部(背部H2と腰部H3)の脊髄周辺に接する背すじ支持部2を中央位置に有し、使用者Hが広げた四肢の手足H4,H5が接する四肢接面部3を左右位置に有している。背すじ支持部2には、四肢接面部3に対して背すじ支持部2の高さを変化させる昇降手段4が設けられている。
【0018】
四肢接面部3は、四角形状の発泡ウレタンフォーム等からなるマットレスを有し、マットレスの幅方向Wの中央位置には、長さ方向Lに延在して、背すじ支持部2の下端部分を収納するための凹溝3a(図3参照)が形成されている。四肢接面部3のマットレスは、凹溝3aに下端部分が収納された背すじ支持部2とともに柔軟なカバー5(図4参照)で覆われている。なお、カバー5の図示は省略することもある。
【0019】
背すじ支持部2は、図2(a)に詳細に示すように、例えば6個のエアーバッグ6a〜6c,7a〜7cで構成されていている。すなわち、背すじ支持部2は、長さ方向Lを2個に分割するとともに、幅方向を3個に分割している。そして、背すじ支持部2の上側3個の上半身用のエアーバッグ6a〜6cは、使用者Hの頭部H1、頸椎、胸椎を支持するものであり、下側3個の腰用のエアーバッグ7a〜7cは、使用者Hの腰椎、仙骨、骨盤を支持するものである。上半身用のエアーバッグ6a〜6cと腰用のエアーバッグ7a〜7cとは、それぞれの支持部位に応じた長さに設定されている。
【0020】
上半身用のエアーバッグ6a〜6cは、仰臥姿勢の使用者Hから見て、中央位置の上半身中央エアーバッグ6aに、左右対称の上半身左エアーバッグ6bと上半身右エアーバッグ6cの一部が上から重なるように配置されている。同様に、腰用のエアーバッグ7a〜7cは、仰臥姿勢の使用者Hから見て、中央位置の腰中央エアーバッグ7aに、左右対称の腰左エアーバッグ7bと腰右エアーバッグ7cの一部が上から重なるように配置されている。そして、背すじ支持部2の表面は、中央部が幅方向Wで最も高くなる曲面に形成されている。
【0021】
図1(a)に示すように、各エアーバッグ6a〜6c,7a〜7cには、四肢接面部3内でエアー給排気用ホース8a〜8c,9a〜9cの一端がそれぞれ接続され、エアー給排気用ホース8a〜8c,9a〜9cの他端部は、四肢接面部3から外方に引き出されて、エアー給排気装置である昇降手段4に接続されている。
【0022】
昇降手段4には、各給排気用ホース8a〜8c,9a〜9c(つまりエアーバッグ6a〜6c,7a〜7c)に独立してエアーを給排するためのエアー制御手段(流量調整弁や流路切換弁等)4Aとエアー生成手段(エアーコンプレッサー等)4Bとが設けられている。また、時間変化パターン生成手段(設定用スイッチやプログラム等)4Cが設けられ、時間変化パターン生成手段4Cでエアー制御手段4Aとエアー生成手段4Bとを制御することにより、各エアーバッグ6a〜6c,7a〜7cのエアー給排量や給排時間、つまり、各エアーバッグ6a〜6c,7a〜7cの高さ変化のタイミングを制御するようになっている。
【0023】
例えば、図2(b)は全てのエアーバッグ6a〜6c,7a〜7cを膨張させた状態、図2(c)は中央のエアーバッグ6a,7aを膨張させて左右のエアーバッグ6b,6c,7b,7cを収縮させた状態、図2(d)は中央と右のエアーバッグ6a,6c,7a,7cを膨張させて左のエアーバッグ6b,7bを収縮させた状態、図2(e)は中央と左のエアーバッグ6a,6b,7a,7bを膨張させて右のエアーバッグ6c,7cを収縮させた状態、図2(f)は全てのエアーバッグ6a〜6c,7a〜7cを収縮させた状態である。
【0024】
次に、前記時間変化パターン生成手段4Cでエアー制御手段4Aとエアー生成手段4Bとを制御することにより、各エアーバッグ6a〜6c,7a〜7cのエアー給排量や給排時間、つまり、各エアーバッグ6a〜6c,7a〜7cの高さ変化のタイミングを制御することで、仰臥姿勢の使用者Hにストレッチ効果が得られる例を説明する。
【0025】
図3は、上半身用のエアーバッグ6a〜6cの内、中央エアーバッグ6aだけを膨張収縮させる場合である。なお、左右エアーバッグ6b,6cは収縮させた状態であるので、図示を省略している。
【0026】
使用者Hは、中央エアーバッグ6aに頭部H1、頸椎、胸椎が接するように仰臥姿勢で横たわり、使用者Hが広げた四肢の手足H4,H5が四肢接面部3に接するようにする。
【0027】
このとき、図3(b)のように、中央エアーバッグ6aを少し膨張させて、四肢接面部3から上方にやや突出した状態に設定しておくと、使用者Hは、背すじが左右にずれることなく中央エアーバッグ6aの上に正確に乗せることができる。
【0028】
この状態で、図3(a)のように、中央エアーバッグ6aをさらに膨張させると、使用者Hの背すじ周辺が持ち上げられる。この持ち上げに伴って、使用者Hは、背すじ周辺を緩めて手足H4,H5を四肢接面部3に沿わせて安定を保とうとするために、自然に背すじから肩胛骨周辺がリラックスして筋がストレッチされるようになる。さらに、背すじ周辺が持ち上げられると、肩関節が持ち上がり始めて、腕の重さによって肩関節周辺の筋が自然にストレッチされるようになる。
【0029】
使用者Hの肩胛骨の動きを含めた肩の可動域は、水平位置から下方に30°(θ参照)程度である。また、肩峰から肘関節までの長さ(上腕)は、成人で平均34±1.8cmであることから、背すじ周辺を持ち上げる高さは34cm×sin30°=17cmで最大ストレッチ状態に達する。個人差を考慮すると、中央エアーバッグ6aの四肢接面部3からの上方突出高さSは、最大で20cm程度に設定し、不慣れな使用者Hの安全性を考慮すると、12〜15cm程度に設定すれば良い。
【0030】
また、図3(c)(d)のように、中央エアーバッグ6aを収縮させて、頭部H1、頸椎、胸椎を四肢接面部3に没入させると、肩関節周辺が屈曲側にストレッチできるようになる。
【0031】
図4は、中央エアーバッグ6aに加えて、左エアーバッグ6bと右エアーバッグ6cとを膨張収縮させる場合である。前述のように、中央エアーバッグ6aだけでも、背すじから肩周辺のストレッチが可能であるが、図4(a)のように、中央エアーバッグ6aを膨張させた状態で、左エアーバッグ6bと右エアーバッグ6cとを膨張させ、図4(b)のように、中央エアーバッグ6aを膨張させた状態で、左エアーバッグ6bと右エアーバッグ6cとを収縮させることを繰り返すようにする。
【0032】
このように、中央エアーバッグ6aを膨張させた状態で、左エアーバッグ6bと右エアーバッグ6cとを膨張収縮させると、肩胛骨から肩関節にかけて、つまり背骨から左右に離れた位置にある関節(帯)のほぐし感が高まり、ストレッチ効果が得られるようになる。
【0033】
具体的には、中央エアーバッグ6aを膨張させた状態で、左エアーバッグ6bと右エアーバッグ6cとを左右均等に膨張させると、使用者Hの接している面(背中)が左右に広がり、持ち上げられていた肩胛骨が伸ばされながら安定的に支持されるとともに、肩関節がより重点的にストレッチされるようになる。このようにして、背骨から離れた位置にある関節(帯)を伸ばす刺激を加えることで、ストレッチ効果が得られるようになる。
【0034】
また、中央エアーバッグ6aと左右エアーバッグ6b,6cとを組み合わせることで、背すじ支持部2の突出高さと突出幅とを変更できることから、肩幅や肩関節の硬さに関する個人差を吸収する手段としても利用することができる。
【0035】
左右エアーバッグ6b,6cが最大に膨張した時の頂点部の左右幅が肩関節に達すると、下がった腕の重みで肩関節にストレスがかかりやすくなるから、頂点部の左右幅は肩関節より狭い方が良い。左右の肩峰間の長さは、成人で平均35±1.5cmであることから、最大膨張時の頂点部の左右幅は最大でも35cm以下に設定することが好ましい。すなわち、背すじ支持部2の幅は、使用者Hの肩関節(股関節も同様)の幅よりも狭く設定することが好ましい。但し、最大膨張時でなく、四肢接面部3からの高さが低い状態の時は、これに限られない。
【0036】
図5は、上半身用のエアーバッグ6a〜6cと腰用のエアーバッグ7a〜7cとを膨張収縮させる場合である。
【0037】
使用者Hは、背すじ支持部2の上半身中央エアーバッグ6aに頭部H1、頸椎、胸椎が接するとともに、腰中央エアーバッグ7aに腰椎、仙骨、骨盤が接するように仰臥姿勢で横たわる。
【0038】
図5(a)は、「体幹ひねりの例」であり、例えば上半身は中央エアーバッグ6aと左エアーバッグ6bとを膨張させ、腰は中央エアーバッグ7aと右エアーバッグ7cとを膨張させる(ハッチング参照)。その後、上半身は左エアーバッグ6bを収縮させるとともに右エアーバッグ6cを膨張させ、腰は右エアーバッグ7cを収縮させるとともに左エアーバッグ7bを膨張させる。これを繰り返す結果、腰椎部分を中心に体幹部を左右にひねる動作が自然に生まれ、腹部や背中の筋をストレッチすることができる。
【0039】
図5(b)は、「腰を持ち上げて腹腰ストレッチの例」であり、例えば上半身の各エアーバッグ6a〜6cは膨張させないで、腰は中央エアーバッグ7aと左右エアーバッグ7b,7cを膨張させる(ハッチング参照)。その結果、腰が安定して持ち上げられ、腹部をストレッチすることができる。また背中の筋の刺激にもなり、さらに腰椎から仙骨にかけてのアライメントに変化を促し、周囲の組織をリラックスさせ、腰にたまった疲労の除去を助ける可能性がある。
【0040】
図5(c)は、「肩を安定させて股関節をストレッチの例」であり、例えば上半身の各エアーバッグ6a〜6cは膨張させ、腰は中央エアーバッグ7aのみを膨張させる(ハッチング参照)。その結果、上半身が安定して持ち上げられるとともに、腰椎に負担をかけずに股関節だけをストレッチすることができる。
【0041】
図6(a)〜(c)は、背すじ支持部2に上下方向の揺らし動作を入れる手法である。図6(a)のように、背すじ支持部2の全てのエアーバッグ6a〜6c,7a〜7c(中央エアーバッグ6a,7aだけでも可)を膨張させて、上方突出高さSが約15cm程度で上昇を一旦止め、その上昇位置を中心にして、全てのエアーバッグ6a〜6c,7a〜7cの膨張収縮を所定時間(数秒)毎に繰り返して、図6(b)(c)のように、背すじ支持部2に数cm程度の高さS´で上下の揺らし動作を入れることで、背すじを中心に全身がほぐれてリラックスすることで効果的なストレッチが可能となる。
【0042】
また、揺らし動作の周期は、呼吸と同じ周波数(0.1〜0.3Hz程度)のゆっくりしたものからやや早い周波数(1Hz程度)等に可変にすることで、使用者Hの好みや身体の状態に合わせることが可能となる。さらに、昇降の途中で左右のエアーバッグ6b,6c,7b,7cの収縮膨張を交互に繰り返すことで身体に揺らぎを加えるようにすれば、呼吸の揺らぎを増幅させるきっかけともなり、より深いストレッチが可能となる。
【0043】
図6(d)は、背すじ支持部2に横方向の広がり動作を入れる手法である。背すじ支持部2の中央エアーバッグ6a,7aだけを膨張させて、上方突出高さSが約10〜15cm程度で上昇を止め、その状態で、左右のエアーバッグ6b,6c,7b,7cの膨張収縮を繰り返すことで(矢印a参照)、背すじの周辺と、肩関節および股関節の周辺がほぐれてリラックスすることで効果的なストレッチが可能となる。
【0044】
この背すじ支持部2の横方向の広がり動作を利用すれば、図5(a)の「体幹ひねりの例」と同様に、例えば上半身は中央エアーバッグ6aと左エアーバッグ6bとを膨張させ、腰は中央エアーバッグ7aと右エアーバッグ7cとを膨張させ、その後、上半身は左エアーバッグ6bを収縮させるとともに右エアーバッグ6cを膨張させ、腰は右エアーバッグ7cを収縮させるとともに左エアーバッグ7bを膨張させることを繰り返す結果、腰椎部分を中心に体幹部を左右にひねる動作が自然に生まれ、腹部や背中の筋をストレッチすることができる。
【0045】
図7は、背すじ支持部2で特定部位のマッサージや局所的なストレッチ感覚が得られる手法である。なお、図6までのエアーバッグ6a〜6c,7a〜7cは、長さ方向Lに2個に分割したものであったが、長さ方向Lにそれ以上で分割、例えば4個に分割したエアーバッグ10a〜10c,11a〜11c,12a〜12c,13a〜13cとすることが好ましい。そして、図7(b)のように、エアーバッグ11a〜11cだけを膨張させ、図7(c)のように、エアーバッグ12a〜12cだけを膨張させ、図7(d)のように、エアーバッグ13a〜13cだけを膨張させる等して、身体の上昇させる部分を変化させることで、特定部位をマッサージしたり、局所的なストレッチ感覚が得られるようになる。また、例えば図7(b)→(d)のように、長さ方向Lに順次に膨張させて身体を順次に上昇させるようにすると、効果的な背すじ伸ばし動作が可能となる。
【0046】
図8(a)のように、エアーバッグ11a〜11c,13a〜13cだけを膨張させ、ついで、図8(b)のように、エアーバッグ10a〜10c,12a〜12cだけを膨張させることを繰り返すと、二点鎖線bで示すような複数の波の動きとなる。また、図8(c)のように、エアーバッグ11a〜11cを最大に膨張させ、エアーバッグ10a〜10c,12a〜12cをやや低く膨張させ、エアーバッグ13a〜13cをさらに低く膨張させ、図8(d)のように、エアーバッグ12a〜12cを最大に膨張させ、エアーバッグ11a〜11c,13a〜13cをやや低く膨張させ、エアーバッグ10a〜10cをさらに低く膨張させ、図8(e)のように、エアーバッグ13a〜13cを最大に膨張させ、エアーバッグ12a〜12cをやや低く膨張させ、エアーバッグ11a〜11cをさらに低く膨張させ、エアーバッグ10a〜10cをさらに低く膨張させることを繰り返すと、二点鎖線cで示すような1つの波の動きとなる。このような波を作ることで、効果的な背すじ伸ばし動作が可能となる。
【0047】
図9(a)のように、エアーバッグ10a〜10c,11a〜11c,12a〜12c,13a〜13cの頭部側ほど大きく膨張させて頂点を高く、腰部側ほど小さく膨張させて頂点を低くすることで、二点鎖線dで示すように、前上がり方向に傾斜させることで、腰関節を中心とするストレッチが可能となる。逆に、図9(b)のように、エアーバッグ10a〜10c,11a〜11c,12a〜12c,13a〜13cの腰部側ほど大きく膨張させて頂点を高く、頭部側ほど小さく膨張させて頂点を低くすることで、二点鎖線eで示すように、後上がり方向に傾斜させることで、肩関節を中心とするストレッチが可能となる。
【0048】
前記時間変化パターン生成手段4Cの時間変化パターンを予め記憶手段等にプログラムしておけば、前述したような様々なストレッチコースをボタン操作だけで選択することができる。
【0049】
前記のようなストレッチ運動装置1であれば、仰臥姿勢の使用者Hの頭部H1および体幹部(背部H2と腰部H3)の脊髄周辺に接する背すじ支持部2を中央位置に有し、使用者Hが広げた四肢の手足H4,H5が接する四肢接面部3を左右位置に有し、四肢接面部3に対して背すじ支持部2の高さを変化させる昇降手段4を設けたから、昇降手段4によって、四肢接面部3に対して背すじ支持部2の高さを高くして、仰臥姿勢の使用者Hの頭部H1および体幹部の脊髄周辺の少なくとも一部と、手足H4,H5の先との位置に高低差を与えることで、肩(肩胛骨から肩関節)や股関節に使用者自身の手足の重さがかかる状態を作ることにより、関節周辺が伸び緩みすることで、充分なストレッチ効果が得られるようになる。
【0050】
また、使用者(あるいは使用者の慣れの度合い)Hによって、緊張が少なくてストレッチ効果が得られやすい背すじ支持部2の高さが異なることから、背すじ支持部2の高さを昇降手段4で変化させて、使用者Hの頭部H1および体幹部の脊髄周辺の少なくとも一部を好みの高さにすることで、使用者Hの好みに合ったストレッチ効果が得られるとともに、使用者Hは、自身の好みで高くした背すじ支持部2から滑り落ちるおそれが少なくなる。
【0051】
さらに、背すじ支持部2の幅を使用者Hの肩関節や股関節の幅よりも狭く(概略35cm以内)設定することで、肩(肩胛骨から肩関節)や股関節に使用者自身の手足の重さがかかる状態を効果的に作ることができる。
【0052】
また、背すじ支持部2の表面は、中央部が幅方向Wで最も高くなる曲面に形成することで、使用者Hは、背すじ支持部2の中心線に脊髄のラインが乗るように左右のバランスをとりながら身体を横たえることができる。また身体の凹凸にフィットするので、狙いのストレッチ効果を的確に得ることができる。
【0053】
さらに、背すじ支持部2のエアーバッグ6a〜6c,7a〜7c(エアーバッグ10a〜10c,11a〜11c,12a〜12c,13a〜13cも同様。)は、長さ方向Lを複数個(実施形態では2個または4個)に分割して、各分割部分(エアーバッグ6a〜6c,7a〜7c)が独立に動作(膨張収縮)可能であるので、例えば肩部を安定させて腰部のみのストレッチを行ったり、腰部を安定させて肩部のみのストレッチを行ったりすることができる。
【0054】
また、背すじ支持部2のエアーバッグ6a〜6c,7a〜7cは、幅方向Wを複数個(実施形態では3個)に分割して、各分割部分(エアーバッグ6a〜6c,7a〜7c)が独立に動作(膨張収縮)可能であるから、背すじ支持部2の幅が変更可能であるので、使用者Hの体格差に対応できるとともに、使用中に幅を連続的に変更させれば、使用者Hの関節にかかる荷重が連続的に変化するので、ストレッチ効果を高めることができるとともに、使用者Hがバランスを崩すおそれが少ないので、身体の左右の関節を安定してストレッチできるようになる。さらに、身体の左右の関節を同時にストレッチすることもできる。また、背すじ支持部2の長さ方向Lを少なくとも2個に分割して、各分割部分が独立に動作可能である構成を併用すると、例えば腰部は右側を高くし肩部は左側を高くして左右逆位相にすると、腰椎を中心としたひねりを加えることができるので、腰背部や腹側部の効果的なストレッチが可能となる。
【0055】
さらに、時間変化パターン生成手段4Cで背すじ支持部2の高さ変化のタイミングを制御することで、様々なストレッチを選択することができる。
【0056】
また、背すじ支持部2であるエアーバッグ6a〜6c,7a〜7cを昇降手段4のエアー制御手段4Bで膨張収縮を制御させれば、エアーバッグ6a〜6c,7a〜7cが使用者Hの身体の凹凸にフィットしやすくなる。また、エアーバッグ6a〜6c,7a〜7cで使用者Hの頭部H1および体幹部の脊髄周辺の少なくとも一部が柔らかく支持されることで、使用者Hがより脱力しやすくなり、効果的にほぐし感やストレッチ効果が得られるようになる。さらにエアーバッグ6a〜6c,7a〜7cは素材が柔らかいために、背すじ支持部2を四肢接面部3とともに不使用時に丸めることも可能となり、持ち運びや収納に便利である。また、背すじ支持部2の幅を変更する場合には使用者Hの身体の凹凸にフィットさせながら滑らかに幅を変更できるようになる。
【0057】
前記実施形態のように、背すじ支持部2は、床面に置くマットレス状の四肢接面部3に設置することもできるが、図10(a)のように、四肢接面部3を省略して、背すじ支持部2を置く床面15を四肢接面部3として利用することで、装置全体を小さく構成できる。特に、図10(b)のように、不使用時には背すじ支持部2だけを丸めることも可能となり、持ち運びや収納に便利であるとともにコスト安になる。
【0058】
前記実施形態の背すじ支持部2は、エアーバッグ6a〜6c,7a〜7cで構成したものであったが、図11および図12に示すように、長さ方向Lに延在するとともに幅方向Wに複数個(本例では8個)に分割された矩形状のブロック16a〜16hで構成することもできる。ブロック16a〜16hの素材としては、クッション性の有る樹脂や固めのウレタンフォーム等が適当である。
【0059】
各ブロック16a〜16hの下面には、図12(a)(c)に示すように、長さ方向Lの両側位置にナット部材17がそれぞれ長さ方向Lに揺動可能に固定されるとともに、このナット部材17に対向する四肢接面部3若しくは床面15には、軸受部材18でねじ軸19が回転自在に支持されて、このねじ軸19がナット部材17にねじ込まれている。ねじ軸19にはウォームホイール20が固定されている。1台の電動モータ21が設けられ、この電動モータ21の出力軸21aには、各ねじ軸19のウォームホイール20に噛み合うウォーム22が固定されている。
【0060】
電動モータ21の正転駆動または逆転駆動で、出力軸21aとともにウォーム22が回転されると、ウォームホイール20とともにねじ軸19が回転され、このねじ軸19の回転によってナット部材17が上方または下方に移動することにより、各ブロック16a〜16hが独立に昇降動されるようになる(矢印f参照)。前記ナット部材17、ねじ軸19、ウォームホイール20、電動モータ21、ウォーム22等は昇降手段を構成する。
【0061】
そして、例えば、図11(a)のように、中央2個のブロック16d,16eだけを僅かに突出させれば、使用者Hの背すじ周辺が軽く(低く)持ち上げられる。また、図11(b)のように、中央2個のブロック16d,16eを高く突出させ、左右のブロック16a〜16cと16f〜16hを階段状に低くなるように突出させれば、使用者Hの背すじ周辺が高く持ち上げられる。さらに、図11(c)のように、中央4個のブロック16c〜16fを高く突出させ、左右のブロック16a,16bと16g,16hを階段状に低くなるように突出させれば、使用者Hの背すじ周辺から肩関節の付近まで高く持ち上げられる。
【0062】
図12(b)に示すように、図12(a)と同様の構成で、2台の電動モータ21A,21Bを設け、各電動モータ21A,21Bの出力軸21aのウォーム22を各ねじ軸19のウォームホイール20に噛み合わせて、各電動モータ21A,21Bを独立で駆動させることもできる。
【0063】
この場合には、各ブロック16a〜16hの長さ方向Lの一方側(図では左側)を高く突出させ、他方側(図では右側)を低く突出させることで、図9の例と同様に、頭部側ほど頂点が高く、腰部側ほど頂点が低くなるように、各ブロック16a〜16hを前上がり方向に傾斜させたり、逆に、腰部側ほど頂点が高く、頭部側ほど頂点を低くなるように、各ブロック16a〜16hを後上がり方向に傾斜させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係るストレッチ運動装置であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図2】エアーバッグであり、(a)は斜視図、(b)〜(f)は膨張収縮状態の態様を示す側面図である。
【図3】(a)〜(d)は上半身中央エアーバッグの膨張収縮状態の態様を示す側面図である。
【図4】(a)(b)は上半身用のエアーバッグの膨張収縮状態の態様を示す側面図である。
【図5】(a)〜(c)はエアーバッグの膨張収縮状態の態様を示す側面図である。
【図6】(a)はストレッチ運動装置の平面図、(b)〜(d)は背すじ支持部の高さ変化のグラフである。
【図7】(a)は4分割したエアーバッグの平面図、(b)〜(d)はエアーバッグの膨張収縮状態の態様を示す側面図である。
【図8】(a)〜(e)は4分割したエアーバッグの膨張収縮状態の態様を示す側面図である。
【図9】(a)(b)は4分割したエアーバッグの膨張収縮状態の態様を示す側面図である。
【図10】(a)は床面を利用した四肢接面部とエアーバッグの側面図、(b)は丸めたエアーバッグの斜視図である。
【図11】(a)〜(c)はブロックを用いた背すじ支持部の突出状態の態様を示す側面図である。
【図12】(a)(b)はブロックを用いた背すじ支持部の斜視図、(b)は昇降動機構の断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 ストレッチ運動装置
2 背すじ支持部
3 四肢接面部
4 昇降手段
4A エアー制御手段
4B エアー生成手段
4C 時間変化パターン生成手段
6a〜6c,7a〜7c エアーバッグ
10a〜10c,11a〜11c,12a〜12c,13a〜13c エアーバッグ
15 床面
16a〜16h ブロック
17 ナット部材
19 ねじ軸
20 ウォームホイール
21(A,B) 電動モータ
22 ウォーム
H 使用者
H1 頭部
H2 背部
H3 腰部
H4 手
H5 足
L 長さ方向
W 幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仰臥姿勢の使用者の頭部および体幹部の脊髄周辺に接する背すじ支持部を中央位置に有し、使用者が広げた四肢の手足が接する四肢接面部を左右位置に有し、四肢接面部に対して背すじ支持部の高さを変化させる昇降手段を設けたことを特徴とするストレッチ運動装置。
【請求項2】
前記四肢接面部は、背すじ支持部を置く床面であることを特徴とする請求項1に記載のストレッチ運動装置。
【請求項3】
前記背すじ支持部の幅は、使用者の肩関節や股関節の幅よりも狭く設定されていることを特徴とする請求項1に記載のストレッチ運動装置。
【請求項4】
前記背すじ支持部の表面は、中央部が幅方向で最も高くなる曲面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のストレッチ運動装置。
【請求項5】
前記背すじ支持部は、長さ方向を複数個に分割して、各分割部分が独立に動作可能であることを特徴とする請求項1に記載のストレッチ運動装置。
【請求項6】
前記背すじ支持部は、幅方向を複数個に分割して、各分割部分が独立に動作可能であることを特徴とする請求項1に記載のストレッチ運動装置。
【請求項7】
前記背すじ支持部は、時間変化パターン生成手段で高さ変化のタイミングを制御することを特徴とする請求項1に記載のストレッチ運動装置。
【請求項8】
前記背すじ支持部は、エアーバッグで構成して、前記昇降手段は、エアーバッグの膨張収縮を制御するエアー制御手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のストレッチ運動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−89629(P2007−89629A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279285(P2005−279285)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】