ストロボ装置
【課題】周辺温度に応じた適切な光量を簡素な回路構成により実現可能なストロボ装置を提供すること。
【解決手段】ストロボ装置1は、閃光放電管13と、閃光放電管を励起するためのトリガ回路14と、閃光放電管に対して直列に接続されたスイッチング素子17と、閃光放電管及びスイッチング素子と並列に接続された容量素子15と、スイッチング素子の導通状態を指示する信号を出力する制御手段12と、外部から供給される発光信号の時間幅を周辺温度の上昇に応じて短縮することにより、スイッチング素子へ供給する制御信号を生成する制御信号生成回路18を含んで構成される。
【解決手段】ストロボ装置1は、閃光放電管13と、閃光放電管を励起するためのトリガ回路14と、閃光放電管に対して直列に接続されたスイッチング素子17と、閃光放電管及びスイッチング素子と並列に接続された容量素子15と、スイッチング素子の導通状態を指示する信号を出力する制御手段12と、外部から供給される発光信号の時間幅を周辺温度の上昇に応じて短縮することにより、スイッチング素子へ供給する制御信号を生成する制御信号生成回路18を含んで構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の撮像装置に用いられるストロボ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の撮像装置の小型化が進んでおり、それに伴いデジタルカメラ等に搭載されるストロボ装置についても小型化の要請が高まっている。小型化を進めたストロボ装置においては、その構成部品である発光部、半導体部品(IC等)、電解コンデンサ等の回路素子、樹脂構造部材などが非常に近接して配置される。このため、発光部から放出される大光量の光が回り込むことによる半導体部品の誤動作や、発光部周囲の樹脂構造部材の劣化などの不都合が生じやすくなる。また、ストロボ装置を高温条件下においた場合、電解コンデンサの容量値が室温下に比べて数%増加するため、室温下に比べて発光部から放出される光の光量がさらに大きくなり、上記の不都合がより顕著になる。電解コンデンサの容量値の増加は、温度上昇に伴って電解コンデンサの電解液の粘度が上昇することや、等価直列抵抗(ESR)の低下によってイオンモビリティが増加すること等に起因するものである。
【0003】
上記の不都合に対しては、電解コンデンサの充電量を周辺温度に応じて調整する手段をストロボ装置に組み込むことが考えられる。これについて、例えば特開2010−16967号公報(特許文献1)には、昇圧トランス、コンデンサ、制御部、温度検出器、演算部等を備えたフラッシュ充電回路において、充電動作時に温度検出器によって検出された周辺温度を制御部へ帰還することにより、コンデンサの充電を最適光量となる条件で停止させるという技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に開示されたフラッシュ充電回路においては、温度検出器とプロセッサ等からなる演算部を用いているため回路構成が複雑になるという点で改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−16967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明に係る具体的態様は、周辺温度に応じた適切な光量を簡素な回路構成により実現可能なストロボ装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様のストロボ装置は、(a)閃光放電管と、(b)上記閃光放電管を励起するためのトリガ回路と、(c)上記閃光放電管に対して直列に接続されたスイッチング素子と、(d)上記閃光放電管及び上記スイッチング素子と並列に接続された容量素子と、(e)上記スイッチング素子の導通状態を指示する信号を出力する制御手段と、(f)前記制御手段に対して外部から供給される発光信号の時間幅を周辺温度の上昇に応じて短縮することにより、前記制御手段へ供給するための制御信号を生成する制御信号生成回路、を含んで構成される。
【0008】
上記のストロボ装置では、周辺温度の上昇に応じて時間幅を短縮した制御信号がスイッチング素子へ供給されて当該スイッチング素子が導通する。したがって、電解コンデンサ等からなる容量素子の容量値が温度上昇に伴って増加した場合でも、閃光放電管へ発光電流が流れる時間を周辺温度に対応して調整することができる。すなわち、上記構成によれば、周辺温度に応じた適切な光量を簡素な回路構成により実現可能なストロボ装置が得られる。
【0009】
上記ストロボ装置における制御信号生成回路は、例えば、容量素子並びに正の温度係数を有する抵抗素子を有し、上記制御手段から出力される上記信号が入力されるRC積分回路と、上記制御手段から出力される上記信号と上記RC積分回路から出力される信号の論理積を上記制御信号として出力するアンド回路とを含んで構成される。
【0010】
上記構成によれば、温度上昇に伴って抵抗素子の抵抗値が増加する性質を利用し、RC積分回路の時定数を温度変化に追随させることができる。このRC積分回路を通した信号と、制御手段から出力される信号の論理積を用いることにより、周辺温度の上昇に応じて時間幅を短縮した制御信号を容易に生成することができる。
【0011】
上記ストロボ装置における制御信号生成回路は、例えば、容量素子並びに負の温度係数を有する抵抗素子を有し、上記制御手段から出力される上記信号が入力されるRC微分回路と、上記RC微分回路の出力側に接続されたバッファ回路とを含んで構成されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、温度上昇に伴って抵抗素子の抵抗値が減少する性質を利用し、RC微分回路の時定数を温度変化に追随させることができる。このRC微分回路を通した信号の電位レベルをバッファ回路によって昇圧することにより、周辺温度の上昇に応じて時間幅を短縮した制御信号を容易に生成することができる。
【0013】
本発明に係る他の態様のストロボ装置は、(a)閃光放電管と、(b)上記閃光放電管を励起するためのトリガ回路と、(c)上記閃光放電管に対して直列に接続されたスイッチング素子と、(d)上記閃光放電管及び上記スイッチング素子と並列に接続された容量素子と、(e)上記容量素子と直接に接続された抵抗素子と、(f)上記スイッチング素子の導通状態を指示する信号を出力する制御手段と、を含む。そして、抵抗素子は、抵抗率の温度係数が他の配線膜と異なる導電膜からなる構造を有する。また、抵抗素子は、抵抗率の温度係数が相互に異なる第1導電膜及び第2導電膜を接続した構造を有してもよい。ここで、抵抗素子は、第1導電膜が第2導電膜の間に設けられていてもよい。
【0014】
上記のストロボ装置では、周辺温度の上昇に応じて抵抗素子の抵抗値が増加するので、電解コンデンサ等からなる容量素子の容量値が温度上昇に伴って増加した場合でも、閃光放電管へ流れる発光電流の大きさを周辺温度に対応して調整することができる。したがって、上記構成によれば、周辺温度に応じた適切な光量を簡素な回路構成により実現可能なストロボ装置が得られる。
【0015】
上記した抵抗素子においては、例えば上記第1導電膜がニッケルを主とする導電膜であり、上記第2導電膜が銅を主とする導電膜である。
【0016】
上記構成によれば、ニッケルと銅の抵抗率の温度係数の差(銅よりニッケルの温度係数が大きいという特性)を利用して、良好な抵抗素子が得られる。
【0017】
また、上記のストロボ装置は、上記容量素子と上記制御手段を接続する配線膜を更に含み、上記第2導電膜が上記配線膜と同種の導電膜からなることも好ましい。
【0018】
これにより、配線膜の少なくとも一部を第1導電膜に置き換え、かつこの第1導電膜の両端に存在する部分を第2導電膜として兼ねることにより、抵抗素子を容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。
【図2】制御信号生成回路の動作を説明するための波形図である。
【図3】閃光放電管に流れる発光電流の一例を示す波形図である。
【図4】第2実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。
【図5】制御信号生成回路の動作を説明するための波形図である。
【図6】第3実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。
【図7】制御信号生成回路の動作を説明するための波形図である。
【図8】第4実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。
【図9】抵抗素子の一例を示す模式的な平面図である。
【図10】抵抗素子の設置状態の一例を示す模式的な斜視図である。
【図11】温度とニッケルおよび銅の抵抗率の関係を示す図である。
【図12】温度と抵抗率の増加率(抵抗増加率)の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。図1に示すストロボ装置1は、充電回路12、閃光放電管13、トリガ回路14、電解コンデンサ(容量素子)15、IGBTドライバ(制御手段)16、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子17、制御信号生成回路18を含んで構成されている。
【0022】
充電回路12は、電池等の電源からの電圧Vatを昇圧することにより、電解コンデンサ15に電荷をチャージするための電圧を生成する。
【0023】
閃光放電管13は、IGBT素子17と直列に接続されており、かつ電解コンデンサ15と並列に接続されている。閃光放電管13は、その一方端子が充電回路12と接続されており、他方端子がIGBT素子17と接続されている。閃光放電管13としては、例えばキセノン放電管が用いられる。
【0024】
トリガ回路14は、閃光放電管13と並列に接続されている。このトリガ回路14は、図示しない外部信号に応じて高電圧を発生し、閃光放電管13に放電を開始させる機能を有する。
【0025】
電解コンデンサ15は、その一方端子が充電回路12と接続されており、他方端子が基準電位端子(接地端子)に接続されている。この電解コンデンサ15は、充電回路12によって電荷をチャージされる。
【0026】
IGBTドライバ16は、IGBT素子17を駆動するための信号を出力する。この信号はIGBT素子17のゲートへ入力される。
【0027】
IGBT素子17は、電流入出力端子が閃光放電管13と直列に接続されており、制御端子がIGBTドライバ16と接続されている。このIGBT素子17は、制御端子に入力される制御信号の電圧レベルに応じて導通状態または非導通状態のいずれかとなる。IGBT素子17を非制御状態とすることにより、発光電流を遮断し、閃光放電管13の発光を停止させることができる。すなわち、IGBT素子17により、閃光放電管13の発光状態を制御することができる。
【0028】
制御信号生成回路18は、IGBTドライバ16と接続されており、外部から供給される発光信号に対して周辺温度に応じた加工を施すことにより、IGBTドライバ16へ供給するための制御信号を生成する。この制御信号生成回路18は、図示のように、正の温度特性を有する抵抗素子31と、コンデンサ(容量素子)32と、アンド回路33を組みあわせて構成される。この制御信号生成回路18は、電解コンデンサ15の温度特性を補正するためのものであるため、電解コンデンサ15に近づけて配置されることが望ましい。特に、少なくとも抵抗素子31は、電解コンデンサ15に近づけて配置されることが望ましい。
【0029】
抵抗素子31は、発光信号の入力端とアンド回路33との間に接続されている。この抵抗素子31は、周辺温度が上昇するとそれに従って抵抗値が増加するという正の温度特性を有するものである。この抵抗素子31としては、例えばポリマーPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタが好適に用いられる。
【0030】
ここで、ポリマーPTCサーミスタとは、有機ポリマー中に導電粒子を分散させた構造を有し、温度上昇によってポリマーが膨張することにより導電粒子の相互間距離が大きくなり、抵抗値が増加する素子である。ストロボ装置の動作温度範囲は一般に−30℃〜+70℃程度とされているところ、ポリマーPTCサーミスタは100℃付近で急激な抵抗値の上昇を迎えるが、上記の動作温度範囲における抵抗値の上昇は数Ω程度であるため、電解コンデンサ15の温度特性を補正する用途において好ましい。
【0031】
コンデンサ32は、抵抗素子31とアンド回路33の接続点と基準電位端子の間に接続されている。このコンデンサ32と上記の抵抗素子31によってRC積分回路が構成されている。
【0032】
アンド回路33は、2つの入力端子(第1入力端子および第2入力端子)を有しており、各入力端子へ入力された信号の論理積に応じた信号を出力端子から出力する。
【0033】
図2は、制御信号生成回路18の動作を説明するための波形図である。図2(a)は、所定の入力端から入力される発光信号を示す。この信号は直接的にアンド回路33の第1入力端子に入力される。図2(b)は、所定の入力端から入力された発光信号が抵抗素子31とコンデンサ32からなるRC積分回路によって周辺温度に応じて遅延された信号を示す(なお、信号の立ち上がり時および立ち下がり時の鈍りについては省略して示す)。この信号はアンド回路33の第2入力端子に入力される。図2(c)は、アンド回路33の出力信号を示す。図示のように、発光信号(図2(a)参照)と、それを遅延した信号(図2(b)参照)がともに高電位であるときに、アンド回路33の出力信号も高電位となる(図2(c)参照)。
【0034】
図3は、閃光放電管13に流れる発光電流の一例を示す波形図である。上記のアンド回路33の出力信号は、IGBTドライバ16を介してIGBT素子17のゲートに入力される。アンド回路33の出力信号が高電位である期間においては、IGBT素子17が導通状態となり、閃光放電管13に発光電流が流れ、閃光放電管13が発光する。すなわち、アンド回路33の出力信号が高電位である期間は、閃光放電管13の発光時間に対応する。アンド回路33の出力信号が高電位である期間が長い場合には、図3(a)に示すように、発光電流の流れる時間が相対的に長くなり、発光時間が長くなる。他方、アンド回路33の出力信号が高電位である期間が短い場合には、図3(b)に示すように、発光電流の流れる時間が相対的に短くなり、発光時間が短くなる。
【0035】
この発光時間は、抵抗素子31とコンデンサ32からなるRC積分回路(遅延回路)による信号遅延量に応じて増減する。そして、信号遅延量(遅延時間)は、抵抗素子31の抵抗値とコンデンサ32の容量値の積である時定数に応じて定まる。具体的には、ストロボ装置1の周辺温度が上昇した場合には抵抗素子31の抵抗値も増加し、その結果として信号遅延量も増加する。すなわち、周辺温度が上昇したときには、閃光放電管13による発光時間を短くすることで、高温下での光量増加を抑えることが可能となる。
【0036】
具体的には、周辺温度の上昇により電解コンデンサ15が活性化されるため、本実施形態のような補正を行わないストロボ装置では、条件にもよるが室温時と比べて約10%程度の光量の増加が生じる。これに対して、本実施形態によれば、周辺温度の上昇に伴って閃光放電管13による発光時間が短縮されるので、高温下での光量増加が抑制される(以下の各実施形態においても同様)。すなわち本実施形態によれば、簡易な回路構成によりストロボ装置における光量の温度補正を実現できる。
【0037】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。図4に示すストロボ装置1aは、充電回路12、閃光放電管13、トリガ回路14、電解コンデンサ15、IGBTドライバ16、IGBT素子17、制御信号生成回路18aを含んで構成されている。第1実施形態のストロボ装置1と本実施形態のストロボ装置1aとは、制御信号生成回路18aの構成のみが相違し、それ以外の構成は共通している。以下では、両者の共通点については説明を省略し、相違点について詳細に説明する。
【0038】
制御信号生成回路18aは、IGBTドライバ16と接続されており、外部から供給される発光信号に対して周辺温度に応じた加工を施すことにより、IGBTドライバ16に供給するための制御信号を生成する。この制御信号生成回路18aは、図示のように、コンデンサ35と、負の温度特性を有する抵抗素子36と、バッファ回路37を組みあわせて構成される。
【0039】
コンデンサ35は、発光信号の入力端とバッファ回路37との間に接続されている。このコンデンサ35と抵抗素子36によってRC微分回路が構成されている。
【0040】
抵抗素子36は、コンデンサ35とバッファ回路37との接続点と基準電位端子の間に接続されている。この抵抗素子36は、周辺温度が上昇するとそれに従って抵抗値が減少するという負の温度特性を有するものである。抵抗素子36としては、例えばチタン酸バリウム(+70℃まではNTC特性)からなる素子またはNTCサーミスタが用いられる。
【0041】
バッファ回路37は、コンデンサ35と抵抗素子36との接続点に生じる信号を所定レベルに増幅する。
【0042】
図5は、制御信号生成回路18aの動作を説明するための波形図である。図5(a)は、発光信号を示す。これに対して、図5(b)は、上記の発光信号がコンデンサ35と抵抗素子36からなるRC微分回路を通過して得られた信号を示す(なお、信号の立ち上がり時および立ち下がり時の鈍りについては省略して示す)。RC微分回路を通過することにより発光信号が徐々に減衰し、元の信号よりも先に所定の論理判断レベルを下回る。すなわち、発光信号のパルス幅を短縮する効果が奏される。この信号はバッファ回路37に入力される。バッファ回路37の出力信号の波形は図5(b)と同様になるため、ここでは図示を省略する。
【0043】
ここで、パルス幅の短縮される量は、コンデンサ35の容量値と抵抗素子36の抵抗値の積に応じて定まる時定数により増減する。具体的には、ストロボ装置1の周辺温度が上昇した場合には抵抗素子36の抵抗値が減少し、その結果としてパルス幅の短縮量が増加する。すなわち、周辺温度が上昇したときには、閃光放電管13による発光時間を短くすることで、高温下での光量増加を抑えることが可能となる(上記図3参照)。すなわち本実施形態によれば、簡易な回路構成によりストロボ装置における光量の温度補正を実現できる。
【0044】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。図6に示すストロボ装置1bは、充電回路12、閃光放電管13、トリガ回路14、電解コンデンサ15、IGBTドライバ16、IGBT素子17、制御信号生成回路18bを含んで構成されている。本実施形態のストロボ装置1bは、上記した第1実施形態の制御信号生成回路18と第2実施形態の制御信号生成回路18aを共存させた構成を有する制御信号生成回路18bを備えている。以下では、制御信号生成回路18bについて詳細に説明する。
【0045】
制御信号生成回路18bは、IGBTドライバ16と接続されており、外部から供給される発光信号に対して周辺温度に応じた加工を施すことにより、IGBTドライバ16に供給するための制御信号を生成する。この制御信号生成回路18は、図示のように、正の温度特性を有する抵抗素子31と、コンデンサ32と、アンド回路33と、コンデンサ35と、正の温度特性を有する抵抗素子36を組みあわせて構成される。
【0046】
コンデンサ35は、発光信号の入力端とアンド回路33の間に接続されている。抵抗素子36は、コンデンサ35とアンド回路33との接続点と基準電位端子の間に接続されている。これらのコンデンサ35と抵抗素子36によってRC微分回路が構成されている。なお、本実施形態においてはアンド回路33がバッファ回路の機能も兼ねるため、第2実施形態において用いられていたバッファ回路37が省略されている。
【0047】
抵抗素子31は、発光信号の入力端とアンド回路33の間に接続されている。コンデンサ32は、抵抗素子31とアンド回路33との接続点と基準電位端子の間に接続されている。これらのコンデンサ32と抵抗素子31によってRC積分回路が構成されている。
【0048】
アンド回路33は、2つの入力端子(第1入力端子および第2入力端子)を有しており、各入力端子へ入力された信号の論理積に応じた信号を出力端子から出力する。
【0049】
図7は、制御信号生成回路18bの動作を説明するための波形図である。図7(a)は、発光信号を示す。図7(b)は、上記の発光信号がコンデンサ35と抵抗素子36からなるRC微分回路を通過して得られた信号を示す(なお、信号の立ち上がり時および立ち下がり時の鈍りについては省略して示す)。この信号はアンド回路33の第1入力端子に入力される。図7(c)は、発光信号が抵抗素子31とコンデンサ32からなるRC積分回路によって周辺温度に応じて遅延された信号を示す(なお、信号の立ち上がり時および立ち下がり時の鈍りについては省略して示す)。この信号はアンド回路33の第2入力端子に入力される。図7(d)は、アンド回路33の出力信号を示す。図示のように、コンデンサ35と抵抗素子36からなるRC微分回路を通過した信号(図7(b)参照)と、抵抗素子31とコンデンサ32からなるRC積分回路を通過した信号(図7(c)参照)がともに高電位であるときに、アンド回路33の出力信号も高電位となる(図7(d)参照)。
【0050】
本実施形態の制御信号生成回路18bにおいては、抵抗素子31とコンデンサ32からなるRC積分回路による信号遅延効果と、コンデンサ35と抵抗素子36からなるRC微分回路によるパルス幅短縮効果とが複合的に得られる。これにより、周辺温度が上昇したときには、閃光放電管13による発光時間を短くすることで、高温下での光量増加を抑えることが可能となる。すなわち本実施形態によれば、簡易な回路構成によりストロボ装置における光量の温度補正を実現できる。
【0051】
(第4実施形態)
上述した第1〜第3実施形態においては、IGBT素子17に供給すべき制御信号の時間幅を周辺温度によって増減することにより、閃光放電管13による発光時間を最適化していた。これに対して、周辺温度の増減に伴って抵抗値が増加する特性を有する素子を電解コンデンサ15と直列に接続することによっても、閃光放電管13による発光時間を最適化することができる。以下に、その実施形態を説明する。なお、第1〜第3実施形態と共通する内容については説明を適宜省略する。
【0052】
図8は、第4実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。図8に示すストロボ装置1bは、充電回路12、閃光放電管13、トリガ回路14、電解コンデンサ15、IGBTドライバ16、IGBT素子17、抵抗素子41を含んで構成されている。図示のストロボ装置1cの基本的な構成は上記第1〜第3実施形態と同様であり、制御信号生成回路18(又は18a、18b)が省略された点と、電解コンデンサ15と直列に抵抗素子41が設けられた点が異なっている。
【0053】
抵抗素子(可変抵抗素子)41は、充電回路12と電解コンデンサ15との間に接続されている。この抵抗素子41は、周辺温度の上昇に伴って抵抗値が増加する特性を有する素子であり、電解コンデンサ15の温度特性を補正する役割を担う。
【0054】
図9は、抵抗素子41の一例を示す模式的な平面図である。図示の抵抗素子41は、ニッケル(第1導電体)を主とする導電膜42と、銅(第2導電体)を主とする導電膜43、44を備える。導電膜42は、導電膜43と導電膜44に挟まれており、各々と物理的および電気的に接続されている。この抵抗素子41は、例えば図10に模式的な斜視図で示すように、電解コンデンサ15と配線膜45との間に設けられる。配線膜45が銅を主とする導電膜によって構成されている場合には、その一部を除去してニッケルを主とする導電膜42に置き換え、導電膜42の両端に接続した部分の配線膜45を上記の導電膜43、44として機能させることにより、本実施形態の抵抗素子41を実現できる。なお、第1導電体としてのニッケルおよび第2導電体としての銅はそれぞれ一例であってこれらに限定されない。例えば、抵抗素子41は全てニッケル(つまり導電膜42のみ)で形成してもよい。
【0055】
上記した抵抗素子41の機能について説明する。ニッケルは、銅に比べると抵抗率の温度係数が大きい。具体的には、銅の温度係数は約4.3×10−3/℃、抵抗率は約1.72×10−9Ωmであるのに対して、ニッケルの温度係数は約6.7×10−3/℃、抵抗率が約7.24×10−9Ωmである。図11に温度とニッケルおよび銅の抵抗率の関係を示し、図12に温度と抵抗率の増加率(抵抗増加率)の関係を示す。図11、図12にも示すように、温度上昇に伴って、ニッケルを主とする導電膜42における抵抗率は、銅を主とする導電膜43、44の抵抗率に比べてより増加する。具体的には、高温域におけるニッケルの抵抗増加率は、銅のおよそ1.5倍となる。したがって、ニッケルを主とする導電膜42や銅を主とする導電膜43、44の各々の厚さ、面積、長さ等のパラメータを適宜設定することにより、抵抗素子41の抵抗値を周辺温度に応じた適切な大きさに設定することができる。それにより、閃光放電管13に流れる発光電流の大きさを制限し、高温下における光量増加を抑制することが可能となる。すなわち本実施形態によれば、簡易な回路構成によりストロボ装置における光量の温度補正を実現できる。
【0056】
(変形実施の態様等)
なお、本発明は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した各実施形態においてはスイッチング素子の一例としてIGBT素子を挙げていたがこれに限定されない。また、上記した各実施形態ではメインコンデンサとして電解コンデンサを例示していたが、電解コンデンサ以外のコンデンサを用いてもよい。また、本実施形態では光源はトリガ回路を有する閃光放電管としたが、発光ダイオード(LED)など他の光源であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…ストロボ装置 12…充電回路 13…閃光放電管 14…トリガ回路 15電解コンデンサ 16…IGBTドライバ(制御IC) 17…IGBT素子 18、18a、18b、18c…制御信号生成回路 31…抵抗素子 32…コンデンサ 33…アンド回路 35…コンデンサ 36…抵抗素子 37…バッファ回路 41…抵抗素子 42、43、44…導電膜 45…配線膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の撮像装置に用いられるストロボ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の撮像装置の小型化が進んでおり、それに伴いデジタルカメラ等に搭載されるストロボ装置についても小型化の要請が高まっている。小型化を進めたストロボ装置においては、その構成部品である発光部、半導体部品(IC等)、電解コンデンサ等の回路素子、樹脂構造部材などが非常に近接して配置される。このため、発光部から放出される大光量の光が回り込むことによる半導体部品の誤動作や、発光部周囲の樹脂構造部材の劣化などの不都合が生じやすくなる。また、ストロボ装置を高温条件下においた場合、電解コンデンサの容量値が室温下に比べて数%増加するため、室温下に比べて発光部から放出される光の光量がさらに大きくなり、上記の不都合がより顕著になる。電解コンデンサの容量値の増加は、温度上昇に伴って電解コンデンサの電解液の粘度が上昇することや、等価直列抵抗(ESR)の低下によってイオンモビリティが増加すること等に起因するものである。
【0003】
上記の不都合に対しては、電解コンデンサの充電量を周辺温度に応じて調整する手段をストロボ装置に組み込むことが考えられる。これについて、例えば特開2010−16967号公報(特許文献1)には、昇圧トランス、コンデンサ、制御部、温度検出器、演算部等を備えたフラッシュ充電回路において、充電動作時に温度検出器によって検出された周辺温度を制御部へ帰還することにより、コンデンサの充電を最適光量となる条件で停止させるという技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に開示されたフラッシュ充電回路においては、温度検出器とプロセッサ等からなる演算部を用いているため回路構成が複雑になるという点で改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−16967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明に係る具体的態様は、周辺温度に応じた適切な光量を簡素な回路構成により実現可能なストロボ装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様のストロボ装置は、(a)閃光放電管と、(b)上記閃光放電管を励起するためのトリガ回路と、(c)上記閃光放電管に対して直列に接続されたスイッチング素子と、(d)上記閃光放電管及び上記スイッチング素子と並列に接続された容量素子と、(e)上記スイッチング素子の導通状態を指示する信号を出力する制御手段と、(f)前記制御手段に対して外部から供給される発光信号の時間幅を周辺温度の上昇に応じて短縮することにより、前記制御手段へ供給するための制御信号を生成する制御信号生成回路、を含んで構成される。
【0008】
上記のストロボ装置では、周辺温度の上昇に応じて時間幅を短縮した制御信号がスイッチング素子へ供給されて当該スイッチング素子が導通する。したがって、電解コンデンサ等からなる容量素子の容量値が温度上昇に伴って増加した場合でも、閃光放電管へ発光電流が流れる時間を周辺温度に対応して調整することができる。すなわち、上記構成によれば、周辺温度に応じた適切な光量を簡素な回路構成により実現可能なストロボ装置が得られる。
【0009】
上記ストロボ装置における制御信号生成回路は、例えば、容量素子並びに正の温度係数を有する抵抗素子を有し、上記制御手段から出力される上記信号が入力されるRC積分回路と、上記制御手段から出力される上記信号と上記RC積分回路から出力される信号の論理積を上記制御信号として出力するアンド回路とを含んで構成される。
【0010】
上記構成によれば、温度上昇に伴って抵抗素子の抵抗値が増加する性質を利用し、RC積分回路の時定数を温度変化に追随させることができる。このRC積分回路を通した信号と、制御手段から出力される信号の論理積を用いることにより、周辺温度の上昇に応じて時間幅を短縮した制御信号を容易に生成することができる。
【0011】
上記ストロボ装置における制御信号生成回路は、例えば、容量素子並びに負の温度係数を有する抵抗素子を有し、上記制御手段から出力される上記信号が入力されるRC微分回路と、上記RC微分回路の出力側に接続されたバッファ回路とを含んで構成されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、温度上昇に伴って抵抗素子の抵抗値が減少する性質を利用し、RC微分回路の時定数を温度変化に追随させることができる。このRC微分回路を通した信号の電位レベルをバッファ回路によって昇圧することにより、周辺温度の上昇に応じて時間幅を短縮した制御信号を容易に生成することができる。
【0013】
本発明に係る他の態様のストロボ装置は、(a)閃光放電管と、(b)上記閃光放電管を励起するためのトリガ回路と、(c)上記閃光放電管に対して直列に接続されたスイッチング素子と、(d)上記閃光放電管及び上記スイッチング素子と並列に接続された容量素子と、(e)上記容量素子と直接に接続された抵抗素子と、(f)上記スイッチング素子の導通状態を指示する信号を出力する制御手段と、を含む。そして、抵抗素子は、抵抗率の温度係数が他の配線膜と異なる導電膜からなる構造を有する。また、抵抗素子は、抵抗率の温度係数が相互に異なる第1導電膜及び第2導電膜を接続した構造を有してもよい。ここで、抵抗素子は、第1導電膜が第2導電膜の間に設けられていてもよい。
【0014】
上記のストロボ装置では、周辺温度の上昇に応じて抵抗素子の抵抗値が増加するので、電解コンデンサ等からなる容量素子の容量値が温度上昇に伴って増加した場合でも、閃光放電管へ流れる発光電流の大きさを周辺温度に対応して調整することができる。したがって、上記構成によれば、周辺温度に応じた適切な光量を簡素な回路構成により実現可能なストロボ装置が得られる。
【0015】
上記した抵抗素子においては、例えば上記第1導電膜がニッケルを主とする導電膜であり、上記第2導電膜が銅を主とする導電膜である。
【0016】
上記構成によれば、ニッケルと銅の抵抗率の温度係数の差(銅よりニッケルの温度係数が大きいという特性)を利用して、良好な抵抗素子が得られる。
【0017】
また、上記のストロボ装置は、上記容量素子と上記制御手段を接続する配線膜を更に含み、上記第2導電膜が上記配線膜と同種の導電膜からなることも好ましい。
【0018】
これにより、配線膜の少なくとも一部を第1導電膜に置き換え、かつこの第1導電膜の両端に存在する部分を第2導電膜として兼ねることにより、抵抗素子を容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。
【図2】制御信号生成回路の動作を説明するための波形図である。
【図3】閃光放電管に流れる発光電流の一例を示す波形図である。
【図4】第2実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。
【図5】制御信号生成回路の動作を説明するための波形図である。
【図6】第3実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。
【図7】制御信号生成回路の動作を説明するための波形図である。
【図8】第4実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。
【図9】抵抗素子の一例を示す模式的な平面図である。
【図10】抵抗素子の設置状態の一例を示す模式的な斜視図である。
【図11】温度とニッケルおよび銅の抵抗率の関係を示す図である。
【図12】温度と抵抗率の増加率(抵抗増加率)の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。図1に示すストロボ装置1は、充電回路12、閃光放電管13、トリガ回路14、電解コンデンサ(容量素子)15、IGBTドライバ(制御手段)16、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子17、制御信号生成回路18を含んで構成されている。
【0022】
充電回路12は、電池等の電源からの電圧Vatを昇圧することにより、電解コンデンサ15に電荷をチャージするための電圧を生成する。
【0023】
閃光放電管13は、IGBT素子17と直列に接続されており、かつ電解コンデンサ15と並列に接続されている。閃光放電管13は、その一方端子が充電回路12と接続されており、他方端子がIGBT素子17と接続されている。閃光放電管13としては、例えばキセノン放電管が用いられる。
【0024】
トリガ回路14は、閃光放電管13と並列に接続されている。このトリガ回路14は、図示しない外部信号に応じて高電圧を発生し、閃光放電管13に放電を開始させる機能を有する。
【0025】
電解コンデンサ15は、その一方端子が充電回路12と接続されており、他方端子が基準電位端子(接地端子)に接続されている。この電解コンデンサ15は、充電回路12によって電荷をチャージされる。
【0026】
IGBTドライバ16は、IGBT素子17を駆動するための信号を出力する。この信号はIGBT素子17のゲートへ入力される。
【0027】
IGBT素子17は、電流入出力端子が閃光放電管13と直列に接続されており、制御端子がIGBTドライバ16と接続されている。このIGBT素子17は、制御端子に入力される制御信号の電圧レベルに応じて導通状態または非導通状態のいずれかとなる。IGBT素子17を非制御状態とすることにより、発光電流を遮断し、閃光放電管13の発光を停止させることができる。すなわち、IGBT素子17により、閃光放電管13の発光状態を制御することができる。
【0028】
制御信号生成回路18は、IGBTドライバ16と接続されており、外部から供給される発光信号に対して周辺温度に応じた加工を施すことにより、IGBTドライバ16へ供給するための制御信号を生成する。この制御信号生成回路18は、図示のように、正の温度特性を有する抵抗素子31と、コンデンサ(容量素子)32と、アンド回路33を組みあわせて構成される。この制御信号生成回路18は、電解コンデンサ15の温度特性を補正するためのものであるため、電解コンデンサ15に近づけて配置されることが望ましい。特に、少なくとも抵抗素子31は、電解コンデンサ15に近づけて配置されることが望ましい。
【0029】
抵抗素子31は、発光信号の入力端とアンド回路33との間に接続されている。この抵抗素子31は、周辺温度が上昇するとそれに従って抵抗値が増加するという正の温度特性を有するものである。この抵抗素子31としては、例えばポリマーPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタが好適に用いられる。
【0030】
ここで、ポリマーPTCサーミスタとは、有機ポリマー中に導電粒子を分散させた構造を有し、温度上昇によってポリマーが膨張することにより導電粒子の相互間距離が大きくなり、抵抗値が増加する素子である。ストロボ装置の動作温度範囲は一般に−30℃〜+70℃程度とされているところ、ポリマーPTCサーミスタは100℃付近で急激な抵抗値の上昇を迎えるが、上記の動作温度範囲における抵抗値の上昇は数Ω程度であるため、電解コンデンサ15の温度特性を補正する用途において好ましい。
【0031】
コンデンサ32は、抵抗素子31とアンド回路33の接続点と基準電位端子の間に接続されている。このコンデンサ32と上記の抵抗素子31によってRC積分回路が構成されている。
【0032】
アンド回路33は、2つの入力端子(第1入力端子および第2入力端子)を有しており、各入力端子へ入力された信号の論理積に応じた信号を出力端子から出力する。
【0033】
図2は、制御信号生成回路18の動作を説明するための波形図である。図2(a)は、所定の入力端から入力される発光信号を示す。この信号は直接的にアンド回路33の第1入力端子に入力される。図2(b)は、所定の入力端から入力された発光信号が抵抗素子31とコンデンサ32からなるRC積分回路によって周辺温度に応じて遅延された信号を示す(なお、信号の立ち上がり時および立ち下がり時の鈍りについては省略して示す)。この信号はアンド回路33の第2入力端子に入力される。図2(c)は、アンド回路33の出力信号を示す。図示のように、発光信号(図2(a)参照)と、それを遅延した信号(図2(b)参照)がともに高電位であるときに、アンド回路33の出力信号も高電位となる(図2(c)参照)。
【0034】
図3は、閃光放電管13に流れる発光電流の一例を示す波形図である。上記のアンド回路33の出力信号は、IGBTドライバ16を介してIGBT素子17のゲートに入力される。アンド回路33の出力信号が高電位である期間においては、IGBT素子17が導通状態となり、閃光放電管13に発光電流が流れ、閃光放電管13が発光する。すなわち、アンド回路33の出力信号が高電位である期間は、閃光放電管13の発光時間に対応する。アンド回路33の出力信号が高電位である期間が長い場合には、図3(a)に示すように、発光電流の流れる時間が相対的に長くなり、発光時間が長くなる。他方、アンド回路33の出力信号が高電位である期間が短い場合には、図3(b)に示すように、発光電流の流れる時間が相対的に短くなり、発光時間が短くなる。
【0035】
この発光時間は、抵抗素子31とコンデンサ32からなるRC積分回路(遅延回路)による信号遅延量に応じて増減する。そして、信号遅延量(遅延時間)は、抵抗素子31の抵抗値とコンデンサ32の容量値の積である時定数に応じて定まる。具体的には、ストロボ装置1の周辺温度が上昇した場合には抵抗素子31の抵抗値も増加し、その結果として信号遅延量も増加する。すなわち、周辺温度が上昇したときには、閃光放電管13による発光時間を短くすることで、高温下での光量増加を抑えることが可能となる。
【0036】
具体的には、周辺温度の上昇により電解コンデンサ15が活性化されるため、本実施形態のような補正を行わないストロボ装置では、条件にもよるが室温時と比べて約10%程度の光量の増加が生じる。これに対して、本実施形態によれば、周辺温度の上昇に伴って閃光放電管13による発光時間が短縮されるので、高温下での光量増加が抑制される(以下の各実施形態においても同様)。すなわち本実施形態によれば、簡易な回路構成によりストロボ装置における光量の温度補正を実現できる。
【0037】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。図4に示すストロボ装置1aは、充電回路12、閃光放電管13、トリガ回路14、電解コンデンサ15、IGBTドライバ16、IGBT素子17、制御信号生成回路18aを含んで構成されている。第1実施形態のストロボ装置1と本実施形態のストロボ装置1aとは、制御信号生成回路18aの構成のみが相違し、それ以外の構成は共通している。以下では、両者の共通点については説明を省略し、相違点について詳細に説明する。
【0038】
制御信号生成回路18aは、IGBTドライバ16と接続されており、外部から供給される発光信号に対して周辺温度に応じた加工を施すことにより、IGBTドライバ16に供給するための制御信号を生成する。この制御信号生成回路18aは、図示のように、コンデンサ35と、負の温度特性を有する抵抗素子36と、バッファ回路37を組みあわせて構成される。
【0039】
コンデンサ35は、発光信号の入力端とバッファ回路37との間に接続されている。このコンデンサ35と抵抗素子36によってRC微分回路が構成されている。
【0040】
抵抗素子36は、コンデンサ35とバッファ回路37との接続点と基準電位端子の間に接続されている。この抵抗素子36は、周辺温度が上昇するとそれに従って抵抗値が減少するという負の温度特性を有するものである。抵抗素子36としては、例えばチタン酸バリウム(+70℃まではNTC特性)からなる素子またはNTCサーミスタが用いられる。
【0041】
バッファ回路37は、コンデンサ35と抵抗素子36との接続点に生じる信号を所定レベルに増幅する。
【0042】
図5は、制御信号生成回路18aの動作を説明するための波形図である。図5(a)は、発光信号を示す。これに対して、図5(b)は、上記の発光信号がコンデンサ35と抵抗素子36からなるRC微分回路を通過して得られた信号を示す(なお、信号の立ち上がり時および立ち下がり時の鈍りについては省略して示す)。RC微分回路を通過することにより発光信号が徐々に減衰し、元の信号よりも先に所定の論理判断レベルを下回る。すなわち、発光信号のパルス幅を短縮する効果が奏される。この信号はバッファ回路37に入力される。バッファ回路37の出力信号の波形は図5(b)と同様になるため、ここでは図示を省略する。
【0043】
ここで、パルス幅の短縮される量は、コンデンサ35の容量値と抵抗素子36の抵抗値の積に応じて定まる時定数により増減する。具体的には、ストロボ装置1の周辺温度が上昇した場合には抵抗素子36の抵抗値が減少し、その結果としてパルス幅の短縮量が増加する。すなわち、周辺温度が上昇したときには、閃光放電管13による発光時間を短くすることで、高温下での光量増加を抑えることが可能となる(上記図3参照)。すなわち本実施形態によれば、簡易な回路構成によりストロボ装置における光量の温度補正を実現できる。
【0044】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。図6に示すストロボ装置1bは、充電回路12、閃光放電管13、トリガ回路14、電解コンデンサ15、IGBTドライバ16、IGBT素子17、制御信号生成回路18bを含んで構成されている。本実施形態のストロボ装置1bは、上記した第1実施形態の制御信号生成回路18と第2実施形態の制御信号生成回路18aを共存させた構成を有する制御信号生成回路18bを備えている。以下では、制御信号生成回路18bについて詳細に説明する。
【0045】
制御信号生成回路18bは、IGBTドライバ16と接続されており、外部から供給される発光信号に対して周辺温度に応じた加工を施すことにより、IGBTドライバ16に供給するための制御信号を生成する。この制御信号生成回路18は、図示のように、正の温度特性を有する抵抗素子31と、コンデンサ32と、アンド回路33と、コンデンサ35と、正の温度特性を有する抵抗素子36を組みあわせて構成される。
【0046】
コンデンサ35は、発光信号の入力端とアンド回路33の間に接続されている。抵抗素子36は、コンデンサ35とアンド回路33との接続点と基準電位端子の間に接続されている。これらのコンデンサ35と抵抗素子36によってRC微分回路が構成されている。なお、本実施形態においてはアンド回路33がバッファ回路の機能も兼ねるため、第2実施形態において用いられていたバッファ回路37が省略されている。
【0047】
抵抗素子31は、発光信号の入力端とアンド回路33の間に接続されている。コンデンサ32は、抵抗素子31とアンド回路33との接続点と基準電位端子の間に接続されている。これらのコンデンサ32と抵抗素子31によってRC積分回路が構成されている。
【0048】
アンド回路33は、2つの入力端子(第1入力端子および第2入力端子)を有しており、各入力端子へ入力された信号の論理積に応じた信号を出力端子から出力する。
【0049】
図7は、制御信号生成回路18bの動作を説明するための波形図である。図7(a)は、発光信号を示す。図7(b)は、上記の発光信号がコンデンサ35と抵抗素子36からなるRC微分回路を通過して得られた信号を示す(なお、信号の立ち上がり時および立ち下がり時の鈍りについては省略して示す)。この信号はアンド回路33の第1入力端子に入力される。図7(c)は、発光信号が抵抗素子31とコンデンサ32からなるRC積分回路によって周辺温度に応じて遅延された信号を示す(なお、信号の立ち上がり時および立ち下がり時の鈍りについては省略して示す)。この信号はアンド回路33の第2入力端子に入力される。図7(d)は、アンド回路33の出力信号を示す。図示のように、コンデンサ35と抵抗素子36からなるRC微分回路を通過した信号(図7(b)参照)と、抵抗素子31とコンデンサ32からなるRC積分回路を通過した信号(図7(c)参照)がともに高電位であるときに、アンド回路33の出力信号も高電位となる(図7(d)参照)。
【0050】
本実施形態の制御信号生成回路18bにおいては、抵抗素子31とコンデンサ32からなるRC積分回路による信号遅延効果と、コンデンサ35と抵抗素子36からなるRC微分回路によるパルス幅短縮効果とが複合的に得られる。これにより、周辺温度が上昇したときには、閃光放電管13による発光時間を短くすることで、高温下での光量増加を抑えることが可能となる。すなわち本実施形態によれば、簡易な回路構成によりストロボ装置における光量の温度補正を実現できる。
【0051】
(第4実施形態)
上述した第1〜第3実施形態においては、IGBT素子17に供給すべき制御信号の時間幅を周辺温度によって増減することにより、閃光放電管13による発光時間を最適化していた。これに対して、周辺温度の増減に伴って抵抗値が増加する特性を有する素子を電解コンデンサ15と直列に接続することによっても、閃光放電管13による発光時間を最適化することができる。以下に、その実施形態を説明する。なお、第1〜第3実施形態と共通する内容については説明を適宜省略する。
【0052】
図8は、第4実施形態のストロボ装置の構成を示す回路図である。図8に示すストロボ装置1bは、充電回路12、閃光放電管13、トリガ回路14、電解コンデンサ15、IGBTドライバ16、IGBT素子17、抵抗素子41を含んで構成されている。図示のストロボ装置1cの基本的な構成は上記第1〜第3実施形態と同様であり、制御信号生成回路18(又は18a、18b)が省略された点と、電解コンデンサ15と直列に抵抗素子41が設けられた点が異なっている。
【0053】
抵抗素子(可変抵抗素子)41は、充電回路12と電解コンデンサ15との間に接続されている。この抵抗素子41は、周辺温度の上昇に伴って抵抗値が増加する特性を有する素子であり、電解コンデンサ15の温度特性を補正する役割を担う。
【0054】
図9は、抵抗素子41の一例を示す模式的な平面図である。図示の抵抗素子41は、ニッケル(第1導電体)を主とする導電膜42と、銅(第2導電体)を主とする導電膜43、44を備える。導電膜42は、導電膜43と導電膜44に挟まれており、各々と物理的および電気的に接続されている。この抵抗素子41は、例えば図10に模式的な斜視図で示すように、電解コンデンサ15と配線膜45との間に設けられる。配線膜45が銅を主とする導電膜によって構成されている場合には、その一部を除去してニッケルを主とする導電膜42に置き換え、導電膜42の両端に接続した部分の配線膜45を上記の導電膜43、44として機能させることにより、本実施形態の抵抗素子41を実現できる。なお、第1導電体としてのニッケルおよび第2導電体としての銅はそれぞれ一例であってこれらに限定されない。例えば、抵抗素子41は全てニッケル(つまり導電膜42のみ)で形成してもよい。
【0055】
上記した抵抗素子41の機能について説明する。ニッケルは、銅に比べると抵抗率の温度係数が大きい。具体的には、銅の温度係数は約4.3×10−3/℃、抵抗率は約1.72×10−9Ωmであるのに対して、ニッケルの温度係数は約6.7×10−3/℃、抵抗率が約7.24×10−9Ωmである。図11に温度とニッケルおよび銅の抵抗率の関係を示し、図12に温度と抵抗率の増加率(抵抗増加率)の関係を示す。図11、図12にも示すように、温度上昇に伴って、ニッケルを主とする導電膜42における抵抗率は、銅を主とする導電膜43、44の抵抗率に比べてより増加する。具体的には、高温域におけるニッケルの抵抗増加率は、銅のおよそ1.5倍となる。したがって、ニッケルを主とする導電膜42や銅を主とする導電膜43、44の各々の厚さ、面積、長さ等のパラメータを適宜設定することにより、抵抗素子41の抵抗値を周辺温度に応じた適切な大きさに設定することができる。それにより、閃光放電管13に流れる発光電流の大きさを制限し、高温下における光量増加を抑制することが可能となる。すなわち本実施形態によれば、簡易な回路構成によりストロボ装置における光量の温度補正を実現できる。
【0056】
(変形実施の態様等)
なお、本発明は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した各実施形態においてはスイッチング素子の一例としてIGBT素子を挙げていたがこれに限定されない。また、上記した各実施形態ではメインコンデンサとして電解コンデンサを例示していたが、電解コンデンサ以外のコンデンサを用いてもよい。また、本実施形態では光源はトリガ回路を有する閃光放電管としたが、発光ダイオード(LED)など他の光源であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…ストロボ装置 12…充電回路 13…閃光放電管 14…トリガ回路 15電解コンデンサ 16…IGBTドライバ(制御IC) 17…IGBT素子 18、18a、18b、18c…制御信号生成回路 31…抵抗素子 32…コンデンサ 33…アンド回路 35…コンデンサ 36…抵抗素子 37…バッファ回路 41…抵抗素子 42、43、44…導電膜 45…配線膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閃光放電管と、
前記閃光放電管を励起するためのトリガ回路と、
前記閃光放電管に対して直列に接続されたスイッチング素子と、
前記閃光放電管及び前記スイッチング素子と並列に接続された容量素子と、
前記スイッチング素子の導通状態を指示する信号を出力する制御手段と、
前記制御手段に対して外部から供給される発光信号の時間幅を周辺温度の上昇に応じて短縮することにより、前記制御手段へ供給するための制御信号を生成する制御信号生成回路、
を含むストロボ装置。
【請求項2】
前記制御信号生成回路は、
容量素子並びに正の温度係数を有する抵抗素子を有し、前記制御手段から出力される前記信号が入力されるRC積分回路と、
前記制御手段から出力される前記信号と前記RC積分回路から出力される信号の論理積を前記制御信号として出力するアンド回路と、
を含む請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項3】
前記制御信号生成回路は、
容量素子並びに負の温度係数を有する抵抗素子を有し、前記制御手段から出力される前記信号が入力されるRC微分回路と、
前記RC微分回路の出力側に接続されたバッファ回路と、
を含む請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項4】
閃光放電管と、
前記閃光放電管を励起するためのトリガ回路と、
前記閃光放電管に対して直列に接続されたスイッチング素子と、
前記閃光放電管及び前記スイッチング素子と並列に接続された容量素子と、
前記容量素子と直接に接続された抵抗素子と、
前記スイッチング素子の導通状態を指示する信号を出力する制御手段と、
を含み、前記抵抗素子は、抵抗率の温度係数が他の配線膜と異なる導電膜からなる構造を有する、ストロボ装置。
【請求項5】
前記抵抗素子が、抵抗率の温度係数が相互に異なる第1導電膜と第2導電膜を接続して構成された、請求項4に記載のストロボ装置。
【請求項6】
前記第1導電膜がニッケルを主とする導電膜であり、前記第2導電膜が銅を主とする導電膜である、請求項4又は5に記載のストロボ装置。
【請求項7】
前記容量素子と前記制御手段を接続する配線膜を更に含み、
前記第2導電膜が前記配線膜と同種の導電膜からなる、請求項5に記載のストロボ装置。
【請求項1】
閃光放電管と、
前記閃光放電管を励起するためのトリガ回路と、
前記閃光放電管に対して直列に接続されたスイッチング素子と、
前記閃光放電管及び前記スイッチング素子と並列に接続された容量素子と、
前記スイッチング素子の導通状態を指示する信号を出力する制御手段と、
前記制御手段に対して外部から供給される発光信号の時間幅を周辺温度の上昇に応じて短縮することにより、前記制御手段へ供給するための制御信号を生成する制御信号生成回路、
を含むストロボ装置。
【請求項2】
前記制御信号生成回路は、
容量素子並びに正の温度係数を有する抵抗素子を有し、前記制御手段から出力される前記信号が入力されるRC積分回路と、
前記制御手段から出力される前記信号と前記RC積分回路から出力される信号の論理積を前記制御信号として出力するアンド回路と、
を含む請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項3】
前記制御信号生成回路は、
容量素子並びに負の温度係数を有する抵抗素子を有し、前記制御手段から出力される前記信号が入力されるRC微分回路と、
前記RC微分回路の出力側に接続されたバッファ回路と、
を含む請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項4】
閃光放電管と、
前記閃光放電管を励起するためのトリガ回路と、
前記閃光放電管に対して直列に接続されたスイッチング素子と、
前記閃光放電管及び前記スイッチング素子と並列に接続された容量素子と、
前記容量素子と直接に接続された抵抗素子と、
前記スイッチング素子の導通状態を指示する信号を出力する制御手段と、
を含み、前記抵抗素子は、抵抗率の温度係数が他の配線膜と異なる導電膜からなる構造を有する、ストロボ装置。
【請求項5】
前記抵抗素子が、抵抗率の温度係数が相互に異なる第1導電膜と第2導電膜を接続して構成された、請求項4に記載のストロボ装置。
【請求項6】
前記第1導電膜がニッケルを主とする導電膜であり、前記第2導電膜が銅を主とする導電膜である、請求項4又は5に記載のストロボ装置。
【請求項7】
前記容量素子と前記制御手段を接続する配線膜を更に含み、
前記第2導電膜が前記配線膜と同種の導電膜からなる、請求項5に記載のストロボ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−257523(P2011−257523A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130775(P2010−130775)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]