説明

スネア除去及び絞りの少なくともいずれかを行う一体型ステント除去ループ

本発明は編組ステント及び編組ステントを形成する方法に関する。編組ステントは一体的な回収/再配置部材を備える。ステントは、第1開口端、第2開口端、及びこれらの間に位置する管状本体を有する。回収/再配置部材は編組された管状本体から延びるとともに管状本体に編み込まれる。回収/再配置部材が、第1開口端から延びる長尺状部分と、第1開口端の外周に沿ってインターループする第2区分とを含むことにより、長尺状部分に力が加えられるとステント端及びステント本体が径方向に収縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植え込まれたステントの回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための器具、方法、及びシステムに関し、より詳細には、植え込まれたステントの回収及び再配置の少なくともいずれかを容易にするためのステント回収部材すなわちループを有する植え込み型ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
管内人工器官は、体内の管腔における患部の治療に用いられる医療器具である。様々な管腔において疾病の治療に用いられる人工器官の一例にステントがある。ステントは生体適合性材料から形成される管状の器具であり、様々な体管の開放及び支持に効果的に用いることができる。ステントは例えば血管系、泌尿器系、食道、気管、気管支、及び胆管等、体内の様々な箇所に使用することができる。このような器具は管内に配置され、体管の閉塞した部分や部分的に狭くなった部分の開放や補強を行う。
【0003】
ステントは、開放されて可撓性に富む形状に構成される。このような形状によりステントは曲がった血管内に挿入可能となっている。さらに、ステントは径方向に収縮可能であり、カテーテルを用いて管腔内に配置される。ステントは患部の近傍に適切に配置された後、径方向に拡張されて管腔を支持及び補強する。この径方向の拡張は、カテーテルに取り付けられたバルーンを膨張させることにより行われる。もしくは、自己拡張式のステントである場合は、配置後に自ら拡張する。
【0004】
例えば特許文献1に記載されるような従来のステント回収システムは容易に操作可能であるように見受けられるが、実際は、特定の回収器具に限定される場合や、ステントの再配置や回収を行うためにはねじりや回転等の操作者の技量に左右される技法を必要とするものである場合が多い。さらに、胆管ステント等の小型ステントにおいては、ステントの区画間のスペースが標準的な鉗子や捕捉器具の寸法よりも小さいため、ステントの一部分を捕捉することがより一層困難になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,821,291号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、スネア除去及び絞りの少なくともいずれかを行う一体型ステント除去ループを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材を有する例えば編組ステント等の植え込み型器具に関する。この植え込み型器具は、管状器具を形成するために巻回又は編組された1つ又は複数の長尺状フィラメントから形成される。管状器具は、互いに対向する第1開口端及び第2開口端、ならびに第1開口端及び第2開口端の間に位置する管状本体を有する。器具は内面及び外面を有する。回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材は第1開口端から延びる長尺状部分を含む。回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材が第1開口端の外周に沿ってインターループすることにより長尺状部分に力が加えられると管状器具が径方向に収縮する。
【0008】
本発明の別の実施形態は、巻回又は編組された1つ又は複数の長尺状フィラメントから形成される管状植え込み型器具又はステントに関する。この管状植え込み型器具又はステントは、回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材と、互いに対向するとともにそれぞれ外周を有する第1開口端及び第2開口端と、第1開放端及び第2開口端の間に位置する管状本体とを有する。第1開口端は一連の閉端ループにより形成され、回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材は、第1開口端から延びる少なくとも1つの長尺状閉端ループを含む第1区分と、編組された前記管状本体から出て一連の閉端ループの少なくとも1つと編み込まれ、かつ、一体的に第1区分に移行すべく延びる第2区分とを含むことにより、長尺状閉端ループに力が加えられると管状器具が径方向に収縮する。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態は、巻回又は編組された管状植え込み型器具又はステントを形成する方法に関する。この管状植え込み型器具又はステントは、互いに対向する第1ステント端及び第2ステント端を有し、かつ、一体的に形成される回収及び再配置の少なくともいずれかを行うためのループを第1ステント端に有する。本方法は、互いに対向する端を有する単一の長尺状をなす生体適合性フィラメントを選択する工程と、単一のフィラメントから回収及び再配置の少なくともいずれかを行うためのループを形成する工程と、単一のフィラメントを任意で他のフィラメントとともに巻回又は編組して器具又はステントを形成する工程とを含む。回収及び再配置の少なくともいずれかを行うためのループは、第1ステント端を越えて第1ステント端から上方に延びる長尺状ループを有し、長尺状ループが操作者に保持されることにより管状編組ステントが径方向に収縮される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来のステントを示す部分拡大図。
【図2】回収器具により引かれた状態の図1の従来ステントを示す図。
【図3】本発明の一実施形態による回収/再配置部材を有するとともに閉端ループ構成を有する編組ワイヤを示す図。
【図4】本発明の一実施形態による回収/再配置部材を有する図3のステントの一端を示す斜視図。
【図5】本発明の一実施形態による回収/再配置部材を示す拡大図。
【図6A】回収器具に引かれた状態における本発明の一実施形態による回収/再配置部材を示す拡大図。
【図6B】回収器具に引かれた状態における本発明の一実施形態による回収/再配置部材を示す拡大図。
【図7】収縮又は圧縮された状態の図6の回収/再配置部材を示す図。
【図8】外側に配向された屈曲部を有する回収/再配置部材を含む本発明の一実施形態によるステントの端を示す拡大図。
【図9】図8のステント端を示す側面図。
【図10】内側に配向された屈曲部を有する回収/再配置部材を含む本発明の一実施形態によるステントの端を示す拡大図。
【図11】外側に配向されてねじれた屈曲部を有する回収/再配置部材を含む本発明の一実施形態によるステントの端を示す拡大図。
【図12】内側に配向されてねじれた屈曲部を有する回収/再配置部材を含む本発明の一実施形態によるステントの端を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、ステントの回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための回収/再配置ループ12を有する従来のステント10を示す。回収/再配置ループ12は、ステント10の端16の周囲に配置される2本のワイヤ14,18を含む。2本のワイヤ14,18はステントの端16から外側に延びているため、施術者がネズミ歯鉗子やフック器具等を用いてステント10に接触できるようになっている。2本のワイヤ14,18は、互いに協働してステント10の端16を絞り、回収器具により引っ張られた際にはステント10の本体を径方向に縮小させる。具体的には、回収/再配置ループ12の2本のワイヤ14,18が引っ張られると、2本のワイヤ14,18が互いの上を摺動し、ステントの端16が絞られる。ステント10の端16が絞られた後、回収/再配置ループ12が引き続き軸方向に引かれることにより、ステントの絞られた端からもう一方の端までステント10の本体が軸方向に圧縮もしくは径方向に収縮された状態となる。しかし、ステント10を径方向に収縮させるためには両方のワイヤ14,18を一緒に引っ張る必要があり、さらに、引っ張られている最中にワイヤ14,18が互いに対して摺動可能であるようでなければならない。従来の回収/再配置ループ12はネズミ歯鉗子又はフック等の回収器具を用いて引っ張る必要があるが、これは他の器具を用いると2本のワイヤの14,18がはさみ掴まれた状態となり、互いに対して摺動できなくなるからである。他の好適な回収器具の例としては、ラジオペンチ、Radial Jaw(登録商標)、及びスネア器具等が挙げられる。回収/再配置ループ12を備えた従来のステント10の詳細については、Bradyらによる米国特許出願公開第2006/0276887号明細書に記載されている。さらに、ステントを形成するために編まれたワイヤとは一体に形成されない回収/再配置ループに関しては、Jordanらによる米国特許出願公開第2006/0190075に記載されている。
【0012】
図2に、回収器具300によってステントの端16から離れる方向(P)に引かれている従来のステント10を示す。回収器具300は両方のワイヤ14,18を固定位置に保持した状態でステント10を引っ張る。回収器具300によりワイヤ14,18の相対移動が阻止されているため、ステント端16が拡がった状態に維持されてワイヤ14,18がステント端16を絞ることができない状態になっている。さらに、図2に示すように、ワイヤ14,18が互いに対して摺動できないため、ステント10の本体が径方向に完全には収縮できていない。従って、ステント端の絞りを効率よく行い、ステント本体の径方向収縮を好適に行うことができる単一のワイヤ回収/再配置部材が必要とされている。さらに、施術者が用いる様々な器具を用いてステントの端の絞り及びステント本体の径方向縮小を行うことができる単一のワイヤ回収/再配置部材が必要とされている。またさらには、ステントの端とステント本体とをほぼ均一に径方向収縮させ、ステントの引っ張り用部材に施術者が容易に到達し得る単一のワイヤ回収/再配置部材が必要とされている。
【0013】
本発明の一実施形態による単一のワイヤ回収/再配置部材は、編組ステントを形成するフィラメント又はワイヤのうちの1本と一体的に形成される。回収/再配置部材は、ステントの回収又は再配置時に力が加えられた際にステントに亀裂や損傷が生じない程度の引張強度を有するように構成される。さらに、回収/再配置部材は、体内への配置の妨げとならず、配置に余計な力を必要とせず、搬送器具に容易に装着可能とすべく搬送時の形状が小さくなるように構成される。回収/再配置部材はステント構造自体の編組又は巻回と一体をなす部分であるため、別に形成されて追加される要素とは異なり、ステント構造に対して回収/再配置部材を溶着、圧着、ねじり等の手段により接合する必要がない。このように、本発明による回収/再配置部材においては引張強度を最大限にしながらも、患者の体内への搬送時における形状寸法を最小限に抑えることができる。少なくとも1つの回収/再配置部材の形成に用いるワイヤは、編組ステントを形成する他のワイヤと同じ種類及び素材のワイヤであってもよいし、別の種類及び素材のワイヤであってもよい。一実施形態においては、回収/再配置部材は編組ステント又は編組ステントの少なくとも一部分の形成に用いられる単一のワイヤから形成される。この場合、回収/再配置部材は継ぎ目を介さずにステント本体に移行する。「回収/再配置部材」という用語は、ステントと一体に形成され、長手方向の引張力が加えられた際にステント全体を均等に径方向に縮小すなわち絞りを行うべく機能して、ステントの移動、回収、及び/又は再配置を容易にする回収部材、再配置部材、又はこれらの組み合わせを指す。
【0014】
ステントには複数の回収/再配置部材を組み込むことができる。例えば、図7に示すように各ステント端に1つ又は複数の回収/再配置部材を設けてもよい。いくつかの実施形態においては、1つ又は複数の端に配置される回収/再配置部材は1つのみである。
【0015】
図3に本発明の一実施形態によるステント30を示す。ステント30は中空の管状構造であり、対向する第1の開口端32及び第2の開口端34、ならびにこれらの間に位置する管状壁36を有する。管状壁36は複数の長尺状ワイヤ38により形成されている。長尺状ワイヤ38はステント30の長手方向を横切る方向においてステント30の全長にわたって延びる。長尺状ワイヤ38は、ワイヤ38の編組、複数のワイヤ38の巻回、一本のワイヤ38の巻回、複数ワイヤ38の接合、又はこれらの組み合わせ等により管状壁36として形成し得る。好適な編組パターンの例としては、ワンオーバーアンドワンアンダー(one over and one under)形パターンが挙げられるが、これに限定されない。
【0016】
図3に示すように、ステント30は好適には非外傷性ステントであり、対向する第1の開口端32及び第2の開口端34の外周を形成する複数の閉端ループ状端40を有する。第1の開口端32に到達した長尺状ワイヤ38はそこから折り返して閉端ループ40を形成し、再度ステントに組み込まれて編組ステントを形成する。編組ステントが形成された後、ワイヤの端は溶着等により互いに連結され、形成されたスタントが開放端、開ループ、又は鋭利な端部を有していないように構成される。また、ステントの形成に複数のワイヤ38を使用し、ワイヤ38を連結して閉端ループを形成し、隣接する連結ワイヤを溶接等の機械的手段により互いに固定してもよい。
【0017】
ステント30は、対向する第1の開口端32及び第2の開口端34の両方又はいずれかに鋭利な終端部分を有しない非外傷性ステントであることが好ましい。第1の開口端32において終端する長尺状ワイヤ38は連結されて閉端ループ40を形成し、連結されたワイヤは溶着等の機械的手段により互いに対して固定される。連結して閉端ループを形成する隣接ワイヤの配置については、米国特許出願公開第2005/0049682号明細書及び米国特許出願公開第2006/0116752号明細書に記載されている。開口端32にて終端する長尺状ワイヤ38は、カテドラル形アーチ状又はループ状であることが好ましい。カテドラル形のアーチ状又は閉端ループ状の形態についての詳細は、米国特許出願公開第2005/0256563号明細書に記載されている。いずれの構成においても、本発明は、非外傷性端を有するものも含めて様々なステント構成とともに実施可能である。
【0018】
ワイヤ38の形成に適した植え込み可能な材料の例としては、ステンレス鋼、Elgiloy (登録商標)等のコバルト系合金、白金、金、チタン、タンタル、ニオブ、ポリマー材料、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ポリマーステント材料の例としては、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L−ラクチド−co−D、L−ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド−co−ポリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHBT)、ポリ(ホソファゼン)ポリ(D,L−ラクチド−co−カプロラクトン)(PLA/PCL)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)(PGA/PCL)、ポリ(ホスフェートエステル)等が挙げられる。ポリマー材料で作られたワイヤは、ポリマー材料中に混入可能な放射性不透過性物質、例えば金属を主成分とする粉末、粒子、又はペーストをさらに含んでいてもよい。例えば、放射線不透過性物質をポリマー製ワイヤの構成材料であるポリマー組成物に混合させてから、本明細書において説明するようなステントの状態に形成することができる。又は、放射性不透過性物質を金属又はポリマー製ステントの表面に被着させてもよい。いずれの実施形態においても、種々の放射線不透過性物質ならびにこれらの塩及び誘導体を用いることができ、かかる物質の例としては、ビスマス、バリウム、硫酸バリウム等のバリウムの塩、タンタル、タングステン、金、白金及びチタンが挙げられるが、これらに限定されない。他の放射線不透過性物質は、米国特許第6,626,936号明細書に記載されている。さらに、放射性不透過性物質として機能し得る金属錯体を用いてもよい。ステントは、所望の最終製品及び用途に応じて、ワイヤ上の所望の領域のみを放射線不透過となるよう形成してもよいし、ステント全体を放射線不透過に形成してもよい。さらに、ワイヤ38は、放射線不透過性又は視認性が向上されている複合ワイヤとして形成すべく、タンタル、金、白金、イリジウム又はこれらの組み合わせからなる内側コア、及びニチノールの外側部材又は外側層を有していてもよい。好適には、内側コアが白金であり、外側層がニチノールである。より好適には、白金の内側コアは、ワイヤの断面全体を100%とすると、その少なくとも約10%を占める。さらに、例えばニチノールをそのマルテンサイト相及びオーステナイト相の状態で加熱、成形、及び冷却することにより形状記憶性を付与する処理が施されていないニチノールも外側層として使用することができる。複合ワイヤの詳細については、米国特許出願公開第2002/0035396号明細書に記載されている。好適には、ワイヤ38はニチノールにより形成され、もしくは、白金の中央コア及びニチノールの外側層を有する複合ワイヤとして形成される。さらに、MIG等の溶接法において充填溶接材料が必要とされる場合には、このような充填溶接材料も、ニチノール、ステンレス鋼、Elgiloy(登録商標)等のコバルト系合金、白金、金、チタン、タンタル、ニオブ及びこれらの組み合わせから形成することができ、好適にはニチノールにより形成される。カソードの材料は重要ではなく、適宜な金属で作ることができる。充填溶接材料とワイヤ38は、同種の材料、例えばニチノールから形成することができる。
【0019】
さらに、ワイヤ38は、例えば米国特許出願公開第2002/0035396号明細書に記載されている複合構造を有していてもよい。例えば、ワイヤ18は、放射線不透過性又は視認性が向上された複合ワイヤとして形成すべく、タンタル、金、白金、イリジウム又はこれらの組み合わせからなる内側コア、ならびにニチノールからなる外側部材又は層を有する。好適には、ワイヤ38はニチノールから形成される。
【0020】
ステント30の互いに対向する開口端32,34の一方又は両方には回収/再配置部材42が設けられる。回収/再配置部材42は、植え込みもしくは配置されたステント30の回収及び再配置の少なくともいずれかを行うために用いられる。この回収/再配置部材42により、ステントが植え込まれた管内(図示しない)において施術者がステント30の収縮、移動、再配置、及び/又は回収を行うことができる。回収/再配置部材42は、ニチノール等前述の材料を含んだ形状記憶合金から形成することができるが、これに限定されない。縫合糸等の従来の材料ではなくワイヤを用いることには様々な利点がある。例えば、ワイヤは自立性を有しているため、回収/再配置部材の配置が容易になる。また、縫合糸ループ、特に天然材料又はポリマー材からなる糸又はフィラメントにより形成された縫合糸ループの潜在的欠点であるもつれがワイヤでは発生しない。さらにワイヤはステント30の開放を容易にする。ワイヤループのさらに別の利点としては、ステント30を再配置又は回収するために引張力が加えられた際に、回収/再配置部材を形成するワイヤループが破断される可能性が、プラスチック製又はポリマー製のループに比べて低いことが挙げられる。
【0021】
図4及び5に示すように、ステント30は回収/再配置部材42を有する。回収/再配置部材42は第1区分44及び第2区分46を含む。回収/再配置部材42は角度をなして屈曲し、ステント端34から離れる方向に延びて第1区分44を形成する。第1区分44はステント端34から離れる方向に上方に延びてループ状、円弧状、又は逆U字状の形状をなす。回収/再配置部材42の第2区分46は、角度をなして屈曲する部分、又は第1区分44のいずれかの端から延びる。第2区分46はステント端34の外周の一部に沿ってのみ延びる。第2区分46は2つの脚部46a,46bを有し、ステント30の編組48から出て互いに上下に交差した後外周に沿って延びて第1区分44のいずれかの端に連結する。換言すると、脚部46a,46bはステント30の編組パターン48の構成内に組み込まれている。ステント30の形成には、1本又は複数本の連続するワイヤ38が用いられる。ワイヤ38は第1区分44の円弧を形成するために屈曲する。第1区分44の両方の側のワイヤ38は、第1区分44がステント端から離れる方向に延びるように角度をなして屈曲する。第2区分46の各脚部46a,46bは第1区分44から直交をなして延びる。各脚部46a,46bは半円状に形成することができる。この2つの半円である脚部46a,46bが回収/再配置部材42の第2区分46を形成し、ステント端34の外周を形成している。そして、第2区分46はステント30の編組パターン48に入り、ステント本体がこの編組パターンより形成される。回収/再配置部材42は角度をなして屈曲し、ステント端34から離れる方向に延びて第1区分44を形成する。第1区分44の長さは、ステント端34の外周を迂回するよう延びる長さを有する。第1区分44は、施術者が回収/再配置部材42を容易に保持し得る外周長さを有する。
【0022】
図4に示すように、回収/再配置部材42は閉端ループ40内を通り、長尺状部分すなわち第1区分44をステント端32に連結して、引張力がかけられた際のステント端32の絞りを容易にしている。回収/再配置部材42の第2区分46を形成するワイヤ38は、ステント端32の一部又は全ての閉端ループ40内を通って延びる。いくつかの閉端ループ40は他の閉端ループ40と長さ方向において偏位して配置され、ワイヤ38はステントの一番端まで到達している閉端ループ40の中を通り、ステント端32よりも内側に配置された閉端ループ40内は通らないようにしてもよい。もしくは、ステント端32にて閉端ループ40の位置が偏位しないようにステント30を構成してもよい。回収/再配置部材42の第2区分46が少なくとも2つの閉端ループ40内を通っていることが好ましい。例えば、脚部46a,46bが少なくとも1つの閉端ループ40内を通過して、長尺状の第1区分44の両側をステント端32に連結して、引張力がかけられた際のステント端32の絞りが容易になるように構成してもよい。
【0023】
図6A〜6Bに示すように、ステント30は、回収/再配置部材42に引張力Pがかけられた時に容易に収縮できるようになっていなければならない。回収/再配置部材42の第1区分44は、回収/再配置部材42の頂点すなわちループ50を介して、施術者が器具を用いて接触及び引っ張ることが可能である。脚部46a,46bは引張力Pによりステント端34から離れる方向に引かれる。ステント端34は、ワイヤ38の外周部分の絞り動作により軸方向に圧縮もしくは径方向に収縮される。脚部46a,46bがステント端34から離れるように引かれるのと同時に、脚部46a,46bが編組されたステント本体内を延びる編組ワイヤ38を引く。ワイヤ38がステント端34から引かれることにより、ステント30の長さ方向においてほぼ均一的な長手方向の収縮が生じる。さらに、第1区分44及び第2区分46の両方を形成するワイヤ38がステント30の編組パターン48と一体に形成されているため、ステントの長さ方向に渡ってほぼ均一な絞りすなわち径方向の収縮を生じさせるとともに、ステントの長さ方向にわたって引張力を伝達することができる。この結果、ステント30の移動、再配置、又は回収を容易に行うことが可能となる。つまり、回収/再配置部材42が引っ張られることにより、ステント30の収縮と引張が同時に生じる。これに対し、回収/再配置部材42を有しないステントの端に引張力Pがかけられた場合、そのスタントの端には絞りすなわち径方向の収縮は発生しない。
【0024】
図4に示すように、回収/再配置部材42は編組ステント本体から長さ方向外側に延び、ステント端32の外周に沿って延びて第2区分46を形成し、外周から離れるように外側へ延びてステント端34の第1区分44を形成する。このように延びる長尺状回収/再配置部材42を形成することにより、施術者が回収/再配置部材42を容易に保持することができる。回収/再配置部材42の第1区分は、施術者により容易に接触され得るとともにステントの長手方向に均一な収縮を可能にし得る様々な形状に形成することができる。図4及び5に示す第1区分44は、ループ形状50を有する。図8〜10に示す実施形態においては、ループ50が自らの上に重なるように下方に屈曲している。図10に示す第1区分76の屈曲部分78は、自らの上に重なるように下方に屈曲し、かつ、ステント管腔の中心に向かって屈曲している。図8及び9に示す屈曲部分56は、自らの上に重なるように下方に屈曲し、かつ、ステント管腔の中心から離れて外側に屈曲している。図11及び12に示すループは閉端ループ状又はプレッツェル状をなすべくねじられている。具体的には、図11に示す第1区分92は、ねじられ、かつステント管腔の中心に向かう方向に屈曲されている。図12に示す第1区分100は、ねじられ、かつステント管腔から離れて外側に屈曲されている。回収/再配置部材42の様々な構成に関しては以下に詳細を述べる。
【0025】
図8及び9に示すステント60は、編組ステント本体及び回収/再配置部材を含む図4及び5に示すステント30と類似した構成を有する。回収/再配置部材68は、角度をなして屈曲してステント端から上方に延びる第1区分54と、第1区分54に対して直交するように第1区分54から延びて編組ステント本体を構成すべく編組ステント本体と一体をなす部分に移行する第2区分62とを有する。ただし、ループ50を有する図4及び5のステント30とは異なり、図8及び9に示す第1区分54は屈曲部分56を含む。屈曲部分56はループ50に似たループ70を形成し、このループ70はステント端に向かう下方に屈曲している。屈曲部分56は、ステントの外側に配向され、ステント60の中心管腔58から離れる方向に下方に延びていてもよい。図9は屈曲部分56の側面図であり、この図においては屈曲部分56が逆J字形すなわちフック状に示されている。図8は第2区分62の正面図であり、2本の脚部62a,62bが示されている。この脚部62a,62bは編組ステント本体64から出て互いに重なり合った後に、外周に沿って延びて第1区分54のいずれかの端に連結する。図8に示す脚部62a,62bは、いくつかの閉端ループ66に対して相互連結もしくは編み込みされている。ステント60は、屈曲部分56に形成されたフックにより施術者が屈曲部分を掴むことができるという効果を奏する。
【0026】
図10に示すステント72は、編組ステント本体及び回収/再配置部材を含む図8及び9に示すステント60に類似した構成を有する。回収/再配置部材は、ステント端から上方に延びるとともに屈曲部分を含む第1区分と、編組ステント本体と一体に形成されるとともに編組ステント本体から延びる第2区分とを有する。ただし、ステント60と異なり、図10に示す第1区分76は、ステント端部に向かって下方に屈曲するとともにステント72の中心管腔80に向かって内側に屈曲する屈曲部分78を有する。図10は屈曲部分78の後面図であり、逆J字形すなわちフック状の屈曲部分が示されている。第2区分82は2本の脚部82a,82bを有する。この脚部82a,82bは編組ステント本体84から出て互いに重なり合った後に、外周に沿って延びて第1区分76のいずれかの端に連結する。脚部82a,82bは、いくつかの閉端ループ86に対して相互連結もしくは編み込みされている。ステント72は、屈曲部分78に形成されたフックにより施術者が屈曲部分78を掴むことができるという効果を奏する。
【0027】
図11に示すステント88及び図12に示すステント90は、編組ステント本体及び回収/再配置部材を含む図9のステント60及び図10のステント72に類似した構成を有する。回収/再配置部材は、ステント端から上方に延びるとともに屈曲部分を含む第1区分と、編組ステント本体と一体に形成されるとともに編組ステント本体から延びる第2区分とを有する。ただし、ステント60及び72と異なり、図11の第1区分92及び図12の第1区分100は、例えばプレッツェルのような形状をなす閉端ループを形成するようねじれて、ねじれ部分を形成している。図11の第1区分92は外側に配向されたねじれ部分94を含む。このねじれ部分は、ステント端に向かう下方に屈曲し、中心管腔96から離れるように外側に配向され、閉端ループ状又はプレッツェル状にねじられたループである。図11は、ねじれ部分94の正面図であり、プレッツェル状をなすよう形成された、ねじれた逆ループを示している。第2区分98は2本の脚部98a,98bを有する。この脚部98a,98bは編組ステント本体から出て互いに重なり合った後に、外周に沿って延びて第1区分92のいずれかの端に連結する。脚部98a,98bは、2つ以上の閉端ループ112に対して相互連結もしくは編み込みされている。図12のステント90は図11のステント88に類似した構成を有する。ただし、ステント88と異なり、ステント90の第1区分100は、内側に配向されたねじれ部分102を含む。このねじれ部分102は、ステント端に向かう下方に屈曲し、中心管腔104に向かって内側に配向されて、閉端ループ状又はプレッツェル状にねじられたループである。図12は、ねじれ部分102の後面図であり、プレッツェル状をなすよう形成された、ねじれた逆ループを示している。第2区分106は2本の脚部106a,106bを有する。この脚部106a,106bは編組ステント本体から出て互いに重なり合った後に、外周に沿って延びて第1区分100のいずれかの端に連結する。脚部106a,106bは、2つ以上の閉端ループに対して相互連結もしくは編み込みされている。ステント88及び90は、施術者がねじれ部分94,102を直接的に掴むことができ、また、ねじれ部分94,102の下の三角部分108,110に器具を通すこともできるという効果を奏する。三角部分108,110に器具を通すことにより、体管内から器具及びステントを除去するために引張力が加えられた際に自動的に器具がねじれ部分94,102に通されることになる。このように、プレッツェル状に形成することにより、ステント88,90を様々な方法にて保持することが可能となる。
【0028】
本発明の一実施形態による回収/再配置部材はマンドレルに固定もしくは着脱可能に配置された基準ピンの周囲に1本のワイヤを巻くことにより形成される。このワイヤはステントの巻回又は編組に先立って巻かれて第1区分及び第2区分を形成する。第1区分は、マンドレルの上に位置する基準ピンのまわりに所望のループ形状をなすべくワイヤを巻くことにより形成し得る。第1区分は、保持領域等の、施術者や医師が容易に掴むことができるように顕著に大きくされた部分である。第1区分は、適宜に屈曲やねじりを加えることにより所望の形状に形成し得る。第1区分は角度をなして屈曲してマンドレルから延びる。第2区分は、第1区画からの角度をなした屈曲から延び、第1区分に対して直交するように第1区分から延びていてもよい。第2区分は引き続きワイヤをマンドレルの周囲に巻くことにより形成できる。第2区分はステントの一端の外周を形成し、通常の場合円形をなす。回収/再配置部材に引張力が加えられることにより、編組の径が小さくなるように絞られ、同時に編組が軸方向に伸張される。その結果、血管壁に対するステントの摩擦が低減し、配置されたステントの回収や再配置が実施可能となる。回収/再配置部材であるワイヤは、本明細書に記載の編組手法により編組ステントの形成に用いられる。ワイヤ編組に関するさらなる詳細は、2009年1月26日に出願された米国特許出願公開第61/147,307号明細書に記載されている。
【0029】
回収/再配置部材は、編組ステントの形成時に近傍の1つ又は複数の閉端ループと交錯させてもよい。回収/再配置部材を1つ又は複数、好適には少なくとも2つの近傍の閉端ループと交錯させることにより、回収/再配置部材に引張力を加えた際にステント端を絞ることができる。
【0030】
本発明によるステントは、連続する1本のより線から形成してもよいし、複数のより線から形成してもよい。さらに、より線は、複数のワイヤが互いに溶着又は接着されて一本の連続するより線として形成されたものであってもよい。例えば、複数のワイヤの端部を連結することにより、連結されていない自由端や角を含まない単一の連続するワイヤを形成することができる。ステントの編組が完成した後に、ワイヤの開始端及び終了端が溶着等の様々な手法により互いに連結されて、閉端ループ編組ステントが形成される。さらに、回収/再配置部材の特性は編組ステントを形成する他のワイヤとの特性と異なるものであってもよいし、同じであってもよい。例えば、剛性や可撓性は同じであっても異なっていてもよく、これらの特性は用途に合わせて適宜変更可能である。ワイヤ及びステント構成の材料、ワイヤ径、形状、及び前処理等の条件は、所望のステント特性をもたらすために適宜選択することができる。さらに、前述したように、少なくとも1つの回収/再配置部材を様々な方法により放射線不透過性とすることができる。このような放射線不透過性をもたらす方法の例としては、コーティング、仕上げ、バントとしての形成、及びステント材料の一部として形成などが挙げられる。回収/再配置部材に色仕上げや他の部分と異なる仕上げを施して、ステントワイヤの他の部分とは視覚的に区別されるように構成してもよい。ポリマー製ワイヤが用いられる実施形態においては、ポリマー製ワイヤを溶解させることによりワイヤを連結してもよい。
【0031】
ステントは溶接継手を有していてもよく、溶接継手を適宜配置することによりステントの径方向強度が向上する。つまり、溶接の破損が生じる虞が無く、強い径方向圧縮力に耐えうるステントを形成することができる。溶接されるワイヤ端部は、マンドレル(図示しない)上の島状部分又は隙間に配置される。溶接の形成時又は形成後に、ステントを形成しないワイヤ部分は切断等の手段によりステントの編組パターンから除去される。
【0032】
さらに、本発明によるステントはコーティングを有していてもよい。一実施形態においては、コーティングはシリコーンの管状被覆である。例えば、ステントはコーティングマンドレル(図示しない)上に配置され、結合材を施された後にアセンブリがシリコーン溶液に浸漬されてコーティングが形成される。一実施形態においては、回収/再配置部材がシリコーンで被覆されない。別の実施形態においては、コーティング又は被覆がシリコーン被覆であるが、他の被覆、特に弾性ポリマーの被覆も好適に用いることができる。コーティングはその内部にステントを埋没させて、ステント被覆を形成する。いくつかの実施形態においては、回収/再配置部材は被覆内に埋め込まず、回収/再配置部材から延びてステント編組を形成する他のワイヤ部分のみにコーティングを施すことが好ましい。回収/再配置部材にコーティングを施さないようにするためには、適宜にマンドレルの頭部を切断するか、形状を変更する。もしくは、コーティング及びポリマー被覆の形成時に回収/再配置部材をマンドレルから離れるように引いてもよい。
【0033】
ステントは、ポリマー材によりそのすべて、大部分、又は一部が被覆されていてよく、また、ポリマー材の内張りを有していてもよい。ステントはポリマーコーティングに埋め込んでもよい。被覆は管状構造を有するように形成できる。好適なポリマー材の例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリナフタレン、ポリテトラフルオロエチレン、発泡ポリテトラフルオロエチレン、シリコーンならびにこれらの組み合わせ及びコポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態においては、ポリマー材はシリコーンである。ポリマー材及び/又はシリコーンは、ステントの外面に施してもよく、また、ステントの内面に施してもよい。もしくは外面と内面の両面に施してもよい。
【0034】
いずれの実施形態においても、ステントは、多くの目的に使用でき、かかる目的としては、体管腔、血管又は導管、例えば、冠状又は末梢血管構造、食道、気管、気管支、結腸、胆道、尿路、前立腺、脳等の開存性の維持が挙げられる。また、本発明の器具は、脆弱化した体管腔の支持や、体管腔のための水密性を有する導管を提供するためにも使用できる。
【0035】
本発明によるステント、例えばステント30は、体内の様々な部位に配置することができる。本発明のいくつかの実施形態においては、ステント30の管状壁36が体管腔内に配置され、ステントの一端、例えば回収/再配置部材42を有するステント端32は、ステント30の管状壁36に支持される体管腔を越えて配置することができる。このような場合、回収/再配置部材42はより大きな体器官内に配置されることが多く、そのため施術者が回収/再配置部材42に容易に接触できる。しかしステントの配置はこれに限定されるものではなく、ステントは、体管腔及び/又は器官の組み合わせを含んだ様々な体管腔及び/又は器官内に配置することができる。
【0036】
本発明によるステントには、単一又は複数の治療薬を施してもよい。「治療薬」、「薬剤」、「薬理的に有効な物質」、「薬」、「遺伝的物質」、及び「生物学的に有効な物質」等の用語は本明細書において互いに区別無く用いられ、遺伝的治療薬、非遺伝的治療薬、及び細胞を含む。「遺伝的物質」という用語は、DNA又はRNAを意味し、限定しないが、下記の有用なタンパク質をコード化し、人体への挿入が意図され、ウイルスベクター及び非ウイルスベクターを含むDNA/RNAを含む。治療薬は単独で用いても組み合わせて用いてもよい。本発明の実施形態においては、様々な治療薬を用いることができる。このような治療薬には、様々な疾病や異常の治療(すなわち、疾病や異常の予防、疾病や異常に伴う症状の軽減、又は疾病や異常の大部分又は全ての解消等)を目的とする治療薬が含まれる。
【0037】
「生体物質」という用語は、細胞、酵母、細菌、タンパク質、ペプチド、サイトカイン、及びホルモンを含む。ペプチド及びタンパク質の例としては、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、形質転換増殖因子(TGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、軟骨成長因子(CGF)、神経成長因子(NGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、骨格成長因子(SGF)、骨芽細胞由来成長因子(BDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、サイトカイン増殖因子(CGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、低酸素誘導因子−1(HIF−1)、幹細胞由来因子(SDF)、幹細胞因子(SCF)、内皮細胞増殖用添加物(ECGS)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、増殖分化因子(GDF)、インテグリン修飾因子(IMF)、カルモジュリン(CaM)、チミジンキナーゼ(TK)、腫瘍壊死因子(TNF)、成長ホルモン(GH)、骨形態形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(PO−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−14、BMP−15、BMP−16等)、マトリクス・メタロプロテイナーゼ(MMP)、マトリクス・メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)、サイトカイン、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15等)、リンホカイン、インターフェロン、インテグリン、コラーゲン(すべての種類)、エラスチン、フィブリリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、トランスフェリン、サイトタクチン、細胞接着ドメイン(RGD等)、及びテネイシンが挙げられる。現在好ましいBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7である。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体、又はこれらの組合せとして、単独で、又は他の分子と併せて形成され得る。細胞は、ヒト由来のもの(自系又は同種異系)であるか、又は必要ならば注目するタンパク質を移植部位に送達するために遺伝子操作された動物由来(異種)とすることができる。送達媒体は、細胞機能及び生存能力を維持するために必要に応じて配合され得る。細胞には、前駆細胞(内皮前駆細胞等)、幹細胞(間葉細胞、造血細胞、及び神経細胞等)、間質細胞、実質細胞、未分化細胞、線維芽細胞、マクロファージ、及び衛星細胞がある。
【0038】
有益な治療薬の例を以下に挙げるが、治療薬はこれらに限定されるものではない。アドレナリン作動薬、副腎皮質ステロイド、副腎皮質の反応抑制薬、嫌酒薬、アルドステロン拮抗薬、アミノ酸及びタンパク質、アンモニア解毒剤、同化剤、蘇生薬、鎮痛薬、アンドロゲン剤、麻酔薬、食欲減退合成物、食欲抑制剤、拮抗剤、下垂体前葉製剤活性剤及び反応抑制薬、駆虫薬、反アドレナリン作用薬、抗アレルギー剤、抗アメーバ剤、抗アンドロゲン剤、抗貧血剤、狭心症治療薬、抗不安剤、関節炎治療薬、喘息治療薬、アテローム硬化治療薬、抗菌剤、胆石の溶解剤、胆石の抗凝固剤、抗コリン剤、抗凝固剤、抗コクシジウム薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、糖尿病薬、止痢薬、抗利尿薬、解毒剤、鎮吐薬、抗てんかん薬、抗エストロゲン薬、抗線維溶解薬、抗真菌薬、緑内障治療薬、抗血友病薬、抗出血性薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血症薬、抗高リポタンパク血症薬、血圧降下剤、抗低血圧薬、抗感染薬、局所的な抗感染薬、抗炎症薬、抗角化薬、抗マラリア薬、抗菌薬、抗片頭痛薬、抗真菌薬、制吐薬、抗腫瘍薬、抗好中球減少症薬、抗肥満薬、抗寄生虫剤、パーキンソン病治療薬、ぜん動抑制薬、抗ニューモシスチス薬、抗増殖薬、前立腺肥大症治療薬、抗原虫薬、止痒薬、抗精神病薬、抗リウマチ薬、抗住血吸虫薬、抗脂漏性薬、抗分泌薬、鎮痙薬、抗血栓薬、鎮咳薬、抗潰瘍薬、抗尿石薬、抗ウイルス薬、食欲減退薬、良性前立腺増殖症治療薬、血糖調整剤、骨吸収阻害剤、気管支拡張剤、炭酸脱水酵素阻害薬、心機能抑制薬、心保護剤、強心薬、心臓脈管薬、利胆薬、コリン作動薬、コリン作動性診断補助薬、利尿薬、ドーパミン作用薬、外部寄生虫駆除剤、催吐剤、酵素阻害剤、エストロゲン、フィブリノーゲン分解薬、蛍光剤、フリー酸素ラジカルスカベンジャー、胃運動作動因子、グルココルチコイド、性腺刺激成分、養毛刺激剤、止血薬、ヒスタミンH2受動態アンタゴニスト、ホルモン、コレステロール低下剤、血糖降下薬、脂質低下薬、降圧剤、HMGCoA還元酵素抑制剤、免疫剤、免疫変調剤、免疫調整剤、免疫賦活剤、免疫抑制剤、性的不全治療補助剤、角質溶解薬、LHRH作用薬、黄体退行剤、粘液溶解薬、粘膜保護剤、散瞳薬、鼻充血除去薬、神経弛緩薬、神経筋遮断薬、神経保護薬、NMDA拮抗剤、非ホルモン性ステロール誘導体、分娩促進薬、プラスミノ−ゲン活性剤、血小板活性化因子拮抗剤、血小板凝集抑制剤、脳卒中後の治療薬、頭部損傷後の治療薬、プロゲスティン、プロスタグランジン、前立腺成長抑制剤、プロチロトロピン剤、向精神薬、放射性医薬品、再分配剤、疥癬虫殺虫剤、硬化剤、鎮静剤、催眠鎮静薬、選択的アデノシンA1拮抗剤、アデノシンA2受容体拮抗薬(CGS21680、リガデノソン、UK432097、及びGW328267等)、セロトニン拮抗薬、セロトニン抑制剤、セロトニン受容体拮抗薬、ステロイド、刺激物、甲状腺ホルモン、抗甲状腺薬、甲状腺ホルモン様剤、精神安定剤、不安定狭心症治療薬、尿酸排泄促進薬、血管収縮剤、血管拡張剤、傷薬、創傷治癒薬、キサンチン酸化酵素阻害薬、及びこれらの組み合わせ。
【0039】
本発明において有益に用いることができる非遺伝的治療薬の例を以下に挙げる。ただし、これらに限定はされない。
(a)ヘパリン、ヘパリン誘導体類、ウロキナーゼ、クロピドグレル及びPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)等の抗血栓症薬、
(b)グルココルチコイド、ベータメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデゾニド、エストロゲン、スルファサラジン、及びメサラミン等の抗炎症薬、
(c)パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、メトトレキサート、アザチオプリン、アドリアマイシン及びムタマイシン、エンドスタチン、アンジオスタチン、アンジオペプチン、平滑筋細胞増殖を阻害するモノクローナル抗体、ミジンキナーゼ阻害薬、クラドリビン、タキソール及びそのアナログもしくは誘導体、パクリタキセル、さらにはその誘導体、類似体、又はタンパク質に結合されたパクリタキセル、及びAbraxane(登録商標)等の抗悪性腫瘍/抗増殖/抗有糸分裂薬、
(d)リドカイン、ブピバカイン、及びロピバカイン等の麻酔薬、
(e)D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、アンチトロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、アンチトロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン(アスピリンは鎮痛薬、解熱剤、及び抗炎症薬にも分類される)、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬、トラピジル又はリプロスチン等の抗血小板薬、及びマダニ抗血小板ペプチド等の抗凝血薬、
(f)増殖因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF、VEGF−2を含む全種類)、成長因子受容体、転写活性化因子、及び翻訳促進因子等の血管細胞増殖促進剤、(g)抗増殖剤、増殖因子阻害剤、増殖因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子と細胞毒素からなる二官能性分子、及び抗体と細胞毒素からなる二官能性分子等の血管細胞増殖阻害剤、
(h)タンパク質キナーゼ及びチロシンキナーゼ阻害剤(例:チルホスチン、ゲニステイン、キノキサリン)、
(i)プロスタサイクリン類似体、
(j)コレステロール降下薬、
(k)アンジオポイエチン、
(l)トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド抗生物質、及びニトロフラントイン等の抗菌剤、
(m)細胞毒性薬、細胞増殖抑制剤及び細胞増殖影響因子、
(n)血管拡張剤、
(o)内因性血管作用メカニズムを妨害する薬剤、
(p)単クローン抗体等の白血球動員の阻害薬、
(q)サイトカイン、
(r)ホルモン、
(s)ゲルダナマイシンを含むHSP90タンパク質の阻害薬(つまり、分子シャペロン又はハウスキーピング・タンパク質であり、細胞の成長及び生存に関与するその他のクライアントタンパク質やシグナル変換タンパク質の機能及び安定性のために必要な熱ショックタンパク質)、
(t)アルファ受容体拮抗薬(例えばドキサゾシン、タムスロシン、テラゾシン、プラゾシン、及びアルフゾシン)等の平滑筋弛緩薬、カルシウムチャネル遮断薬(ベラパミル、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルザピン、ニモジピン、及びベプリジル等)、ベータ受容体作用薬ドブタミン及びサルメテロール等)、ベータ受容体拮抗薬(アテノロール、メトプロロール、及びブトキサミン等)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、エプロサルタン、及びテルミサルタン等)、及び鎮痙/抗コリン薬(塩化オキシブチニン、フラボキセイト、トルテロジン、硫酸ヒヨスチアミン、及びジサイクロミン)、
(u)bARKct阻害薬、
(v)ホスホランバン阻害薬、
(w)Serca2遺伝子/タンパク質、
(x)アミノキゾリン、例えばレジキモド及びイミキモド等のイミダゾキノリンを含む免疫反応調整剤、
(y)ヒトアポリポタンパク質(AI、AII、AIII、AIV、及びAV等)、(z)ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、アルゾキシフェン、ミプロキシフェン、オスペミフェン、PKS3741、MF101、及びSR16234等の選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)、
(aa)ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、ネトグリタゾン、フェノフィブラート、ベクサオテン、メタグリダセン、リボグリタゾン、及びテサグリタザール等の、PPARアルファアゴニスト、PPARガンマアゴニスト、及びPPARデルタアゴニストを含むPPARアゴニスト、
(bb)アルプロスタジル又はONO8815Ly等のPGE2アゴニストを含むプロスタグランジンEアゴニスト、
(cc)トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)、
(dd)ベナゼプリル、ホシノプリル、リジノプリル、キナプリル、ラミプリル、イミダプリル、デラプリル、モエキシプリル、及びスピラプリルを含むバソペプチダーゼ阻害剤、
(ee)チモシンベータ4、
(ff)ホスホリルコリン、ホスファチジルイノシトール、及びホスファチジルコリンを含むリン脂質、
(gg)VLA−4アンタゴニスト及びVCAM−1アンタゴニスト、
(hh)エノキサプリン、アンジオペプチン、平滑筋細胞増殖を阻害できるモノクローナル抗体、ヒルジン、アセチルサリチル酸、タクロリムス、エベロリムス、ピメクロリムス、シロリムス、ゾタロリムス、アムロジピン、及びドキサゾシン等の増殖抑制剤、
(ii)特定のがん細胞において細胞増殖を抑制し、アポトーシスを導くRNA又はDNA代謝体として分類し得る5−アザシチジン等のDNA脱メチル化剤、
(jj)コレステロール降下薬、血管拡張剤、及び内因性血管作動機構に干渉する薬剤、
(kk)プロブコール等の酸化防止剤、
(ll)ペニシリン、セフォキシチン、オキサシリン、トブラマイシン、エリスロマイシン、アンフォテリシン、ラパマイシン(シロリムス)、及びアドリアマイシン等の抗生物質、
(mm)酸性及び塩基性線維芽細胞増殖因子、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、及び17−ベータエストラジオールを含むエストロゲン等の血管新生物質、
(nn)ジゴキシン、ベータブロッカー、カプトプリル及びエナロプリルを含むアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、スタチン、及び関連化合物等の心不全治療薬、ならびに
(oo)シロリムス又はエベロリムス等のマクロライド。
【0040】
非遺伝的治療薬は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。また、ここに記載するいずれの薬剤を組み合わせてもよい。
他の治療薬としては、ニトログリセリン、亜酸化窒素、一酸化窒素、抗生物質、アスピリン、ジギタリス、エストロゲン、エストラジオール、及び配糖体が挙げられる。好ましい治療薬としては、ステロイド、ビタミン、及び再狭窄抑制薬等の抗増殖薬が挙げられる。好ましい再狭窄抑制薬としては、Taxol(登録商標)、パクリタキセル(パクリタキセル、パクリタキセル類似体又はパクリタキセル誘導体、及びこれらの混合物)等の微小管安定化薬が挙げられる。例えば、医療器具で好適に使用できる誘導体としては、2’−スクシニル−タキソール、2’−スクシニル−タクソールトリエタノールアミン、2’−グルタリル−タキソール、2’−グルタリル−タクソールトリエタノールアミン塩、N−(ジメチルアミノエチル)グルタミンとの2’−O−エステル、及びN−(ジメチルアミノエチル)グルダミド塩酸塩との2’−O−エステルが挙げられる。
【0041】
非遺伝的治療薬のさらに他の例としては、パクリタキセル(Abraxane(登録商標)等のアルブミン結合パクリタキセルナノ粒子等のプロテイン結合パクリタキセル粒子等の粒子状のものも含む)、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、EPO D、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、塩化アラゲブリウム(ALT−711)、ABT−578(Abbott Laboratories社)、トラピジル、Liprostin(登録商標)、アクチノマイシンD、RESTEN−NG(登録商標)、Ap−17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、ベータ遮断剤、bARKct阻害薬、ホスホランバン阻害薬、Serca2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒトアポリポタンパク質(AI〜AV等)、増殖因子(VEGF−2等)、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0042】
本発明において好適に使用できる遺伝子治療薬の例としては、アンチセンスDNA及びRNA、様々なタンパク質をコード化するDNA(及びタンパク質自体)が含まれるがこれらに限定されない。これらの治療薬には、(a)アンチセンスのRNA、(b)欠陥又は欠損のある内因性分子を置き換えるtRNA又はrRNA、(c)酸性及び塩基性の心線維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子、内皮細胞分裂増殖因子、表皮成長因子、形質転換成長因子α及びβ、血小板由来内皮成長因子、血小板由来成長因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子及びインシュリン様成長因子等の成長因子を含む血管新生因子及びその他の因子、(d)CD阻害物質を含む細胞周期阻害物質、ならびに(e)チミジンキナーゼ(“TK”)及び細胞増殖を妨げるその他の薬剤が含まれる。
【0043】
骨形成タンパク質(BMP)の群のDNAコードも好適に用いることができ、その例としてはBMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(PO−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−14、BMP−15、BMP−16等が挙げられる。現在特に好適であるのは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、及びBMP−7である。これらのBMPは、ホモ二量体、ヘテロ二量体、又はこれらの組合せとして、単独で、又は他の分子と併せて形成され得る。また、上流又は下流においてBMPの作用を誘発できる分子を、代わりに、もしくは追加で用いてもよい。そのような分子には、「ヘッジホッグ」タンパク質、又はこれらをコードするDNAが含まれる。
【0044】
遺伝的生体活性剤を供給するベクターの例としては、アデノウイルス、実質を有しない(gutted)アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、αウイルス(セムリキ森林熱ウイルス及びシンドビスウィル等)、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、複製構成体ウイルス(例:ONYX−015)及びハイブリッドベクター等のウイルスベクター;人工染色体及びミニ染色体、プラスミドDNAベクター(例:pCOR)、カチオン高分子(例:ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(PEI))、グラフト共重合体(例:ポリエーテル−PEI及びポリエチレンオキシド−PEI)、ポリビニルピロリドン(PVP)又はSP1017(SUPRATEK)等の中性高分子、カチオン性脂質、リポソーム、リポプレックス等の脂質、ナノ粒子又はマクロ粒子のタンパク質形質導入ドメイン(PTD)等の配列を標的としたものと標的としていないものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0045】
本発明において用いることができる細胞の例としては、全骨髄、骨髄由来単核球細胞、前駆細胞(内皮前駆細胞等)、幹細胞(間葉細胞、造血細胞、神経細胞等)、多能性幹細胞、繊維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、及びマクロファージ等のヒト由来の細胞が挙げられる。使用可能な動物由来細胞の例としては所望するタンパク質を形成するために遺伝子操作を行うことができるバクテリアや菌類(異種)が挙げられる。
【0046】
本明細書に記載する治療薬以外の様々な治療薬を、再狭窄を防止する薬剤(狭窄抑制剤)等の血管治療薬として用いることができる。このように本発明の実施において有益である薬剤の例を以下に挙げる。
(a)ジルチアゼム及びクレンチアゼム等のベンゾジアザピン、ニフェジピン、アムロジピン及びニカルザピン等のジヒドロピリジン、ベラパミル等のフェニルアルキルアミンを含むCa−チャネル遮断薬、
(b)ケタンセリン及びナフチドロフリィル等の5−HT拮抗薬、及びフルオキセチン等の5−HT吸収阻害剤を含むセロトニン経路調節因子、
(c)シロスタゾール及びジピリダモール等のホスホジエステラーゼ阻害剤、ホルスコリン等のアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ刺激剤、及びアデノシン類似体を含む環状ヌクレオチド経路作用剤、
(d)プラゾシン及びブナゾジン等のα−拮抗薬、プロプラノロール等のβ−拮抗薬、またラベタロール及びカルベジロール等のα/β−拮抗薬を含むカテコールアミン調節因子、
(e)ボセンタン、シタキスセンタンナトリウム、アトラセンタン、及びエンドネンタン等のエンドセリン受容体拮抗薬、
(f)ニトログリセリン、硝酸イソソルビド及び亜硝酸アミル等の有機硝酸塩/亜硝酸塩、ニトロプルシドナトリウム等の無機ニトロソ化合物、モルシドミン及びリンシドミン等のシドノンイミン、ジアゼニウムジオレート及びアルカンジアミンのNO付加体等のNONOate、低分子量高分子化合物(例:カプトプリル、グルタチオン及びN−アセチルペニシラミンのS−ニトロソ誘導体)及び高分子量高分子化合物(例:タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖類、人工高分子/オリゴマー及び天然高分子/オリゴマーのS−ニトロソ誘導体)を含むS−ニトロソ化合物、C−ニトロソ化合物、O−ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物及びLアルギニンを含む酸化窒素供与体/放出分子、
(g)シラザプリル、フォシノプリル及びエナラプリル等のアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、
(h)サララシン及びロサルチン等のATII−受容体拮抗薬、
(i)アルブミン及びポリエチレンオキシド等の血小板接着阻害剤、
(j)シロスタゾール、アスピリン、及びヴチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)を含む血小板凝集阻害剤、ならびにアブシキシマブ、エピチフィバチド、及びチロフィバン等のGPIIb/IIIa阻害剤、
(k)ヘパリン、低分子量のヘパリン、デキストラン硫酸、及びβ−シクロデキストリンテトラデカサルフェート等のヘパリノイドを含む凝固経路調節因子、ヒルジン、ヒルジン類似体、PPACK(D−phe−L−propyl−L−arg−クロロメチルケトン)、及びアルガトロバン等のトロンビン阻害剤、アンチスタチン及びTAP(ダニ抗凝固剤ペプチド)等のFXa阻害剤、ワルファリン等のビタミンK阻害剤、ならびに活性タンパク質C、
(l)アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、及びスルフィンピラゾン等のシクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、
(m)デキサメタゾン、プレドニゾロン、メタプレドニゾロン、及びヒドロコルチゾン等の天然コルチコステロイド及び人工コルチコステロイド、
(n)ノルジヒドログアヤレト酸、及びカフェ酸等のリポキシゲナーゼ、
(o)ロイコトリエン受容体類似体、
(p)E及びP−セレクチンの類似体、
(q)VCAM−1及びICAM−1相互作用の阻害剤、
(r)プロスタグランジン及びPGE1 PGI2等のプロスタグランジンを含むその類似体、ならびにシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロスト、及びベラプロスト等のプロスタサイクリン類似体、
(s)ビスホスフォネートを含むミクロファージ活性化阻害剤、
(t)ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチンシンバスタチン及びセリバスタチン等のHMG−CoA還元酵素阻害剤、
(u)魚油及びオメガ−3−脂肪酸、
(v)プロブコール、ビタミンC及びE、エブセレン、トランス−レチノイン酸及びSOD模倣体等の遊離基捕捉剤/酸化防止剤、
(w)bFGF抗体及びキメラ融合タンパク質等のFGF経路阻害剤、トラピジル等のPDGF受容体類似体、アンギオペプチン、オクトレオチド等のソマトスタチンを含むIGF経路エージェント、ポリアニオン性のエージェント(ヘパリン、フコイジン)、デコリン及びTGF−β抗体等のTGF−β経路阻害剤、EGF抗体、受容体類似体及びキメラ融合タンパク質等のEGF経路阻害剤、サリドマイド等のTNF−α経路阻害剤及びこれらの類似体、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベン及びリドグレル等のトロンボキサンA2(TXA2)経路調節因子、ならびにチルホスチン、ゲニステイン及びキノキサリン誘導体等のタンパク質チロシンキナーゼを含む様々な成長因子に影響を与える薬剤、
(x)マリマスタット、アイロマスタット、メタスタット、バチマスタット、ポリ硫酸ペントサン、レビマスタット、インサイクリニド、アプラタスタット、PG 116800、RO 1130830、及びABT 518等のマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)経路阻害剤、
(y)サイトカラシンB等の細胞運動阻害剤、
(z)プリン類似体(例:塩化プリンヌクレオシド類似体である6−メルカプロプリン又はクラドリビン)、ピリミジン類似体(例:シタラビン及び5−フルオロウウラシル)、メトトレキサート、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホン酸塩、エチレンイミン、抗生物質(例:ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソウレア、シスプラチン、微小管動態に影響を与えるエージェント(例:ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、Epo D、タキソール、及びエポチロン)、カスパーゼ活性剤、プロテアソーム阻害剤、血管形成阻害剤(例:エンドスタチン、アンギオスタチン、及びスクアラミン)、ラパマイシン、セリバスタチン、フラボプリドール、スラミン等の代謝拮抗物質を含む抗増殖剤/抗腫瘍薬、
(aa)ハロフジノン、その他のキナゾリノン誘導体、ピルフェニドン、及びトラニラスト等のマトリックス堆積/組織化経路阻害剤、
(bb)VEGE及びRGDペプチド等の内皮細胞増殖促進剤、
(cc)ペントキシフィリン等の血液レオロジー調節因子、ならびに
(dd)塩化アラゲブリウム(ALT−711)等のグルコース架橋切断剤。
【0047】
これらの治療薬は、単独で用いてもよいし、本明細書に記載するいかなる溶剤と組み合わせて用いてもよい。
本発明の実施において有益である他の治療薬は、Kunzに付与された米国特許第5,733,925号明細書に開示されている。
【0048】
本発明の実施形態において用いる治療薬の量は様々であってよい。薬理的に有効な量は当業者により容易に決定され、例えば、治療する症状、治療薬の性質、実施形態を導入する体組織等の条件に応じて決定される。
【0049】
さらに、本発明の実施形態によるステントは様々な管状構造に形成することができる。例えば、管状構造の径は様々な大きさに構成し得る。また、管状構造はテーパー状であってもよく、端部が外側に広がっていてもよい。さらに、ステントの端部の径を中間領域の径よりも大きくしてもよい。好適な一実施形態においては、ステントの少なくとも1つの端部において径のサイズが変化する。望ましくは、両端においてこのように径のサイズが変化し、フレア状の端部を有するステントが形成される。
【0050】
ステントはポリマー材でコーティングしてもよい。例えば、ステントワイヤの一部又は全体を生理活性物質が溶出可能に混入されたポリマー剤で被覆することができる。また、ポリマー被覆をステントワイヤ間の空隙の上又は内部に配置して、ステントの内面又は外面の上に中空の管状被覆を形成してもよい。ポリマー材は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリナフタレン、ポリテトラフルオロエチレン、発泡ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、及びこれらの組み合わせから選択し得る。本発明の実施形態においては、様々な種類及び構成のステントを用いることができる。
【0051】
好適なステントの例としては、自己拡張式ステント及びバルーン拡張式ステントが挙げられる。ステントは、径方向に収縮、拡張、及び変形可能である。自己拡張式ステントには、ばね作用により径方向に拡張するステントや、所定の温度にて特定の形状に変形する形状記憶材料から形成されることにより拡張するステントが含まれる。バネ作用のステント及び温度による形状記憶のステントの両方に用いることができる素材の一例としてはニチノールが挙げられるが、ステンレス鋼、白金、金、チタン、他の生体適合性金属、及びポリマー等の他の材料を用いることもできる。また、ステントは様々な形状に構成し得る。例えば、ワイヤステントを、連続する螺旋パターン状に固定し、径方向に変形可能なステントとして形成できる。ワイヤは波状又はジグザク状の部分を有していてもよいし、いなくてもよい。複数のリング又は環状部材を、ストラット、糸、リングの溶着、交錯、及び固定等の手段により互いに連結させて管状ステントを形成してもよい。また、チューブにパターンを形成すべくエッチングや切除を施すことにより形成された管状ステントであってもよい。このようなステントは一般的にスロットステントと呼ばれる。さらに、器具や型にパターンをエッチングしてそのパターンにステント材料を入れ、化学気相堆積等によりステントを形成してもよい。ステントの様々な構成については、Dotterに付与された米国特許第4,503,569号明細書、Palmazに付与された米国特許第4,733,665号明細書、Hillsteadに付与された米国特許第4,856,561号明細書、Gianturcoに付与された米国特許第4,580,568号明細書、Wallstenに付与された米国特許第4,732,152号明細書、Wiktorに付与された米国特許第4,886,062号明細書、Thompsonに付与された米国特許第5,876,448号明細書、Pulnevらに付与された米国特許第6,007,574号明細書、米国特許第6,309,415号明細書、及び米国特許第7,60,323号明細書、米国特許第7,419,502明細書、及び米国特許第7,419,503号明細書、McCullaghらに付与された米国特許第7,311,031号明細書、ならびにColganの米国特許出願公開第2007/0118206号明細書に記載されている。
【0052】
前述した本発明は様々な変形例を実施可能であることが当業者には明らかである。このような変形例は本発明の趣旨及び範囲から逸脱するものではなく、添付の特許請求の範囲の含まれるものとする。さらに、特許請求の範囲に記載される本発明の実施形態は自由に組み合わせて実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1開口端及び第2開口端を含むとともに、同第1開口端及び第2開口端の間に位置して外面及び内面を有する器具管腔を形成する管状本体を含む管状器具を形成すべく編組された1つ又は複数の長尺状ワイヤと、
同長尺状ワイヤのうちの1本のワイヤから一体に形成される回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材と、を備える植え込み型器具であって、
前記回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材が前記第1開口端から延びる長尺状部分を含み、前記回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材が第1開口端の外周に沿ってインターループすることにより、前記長尺状部分に力が加えられると前記管状器具が径方向に収縮するとともに第1開口端が絞られる植え込み型器具。
【請求項2】
前記第1開口端が一連の閉端ループにより形成され、前記回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材が少なくとも2つの前記ループ内を通ることにより前記長尺状部分が第1開口端に連結される請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材が前記1本のワイヤからなり、同1本のワイヤが第1開口端に沿って延び、自らの上に重なるように交差してから前記管状本体に組み込まれる請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材の長尺状部分が単一のワイヤループである請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記単一のワイヤループが前記器具管腔に向かって内側に屈曲して、内側に配向された屈曲部を形成する請求項4に記載の器具。
【請求項6】
前記単一のワイヤループが前記器具管腔から離れるように外側に屈曲して、外側に配向された屈曲部を形成する請求項4に記載の器具。
【請求項7】
前記内側に配向された屈曲部がねじられて結び目を形成する請求項4に記載の器具。
【請求項8】
前記回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材が前記第1開口端から延びてそれぞれ単一のワイヤループを形成する2つの長尺状部分を含む請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記2つの長尺状部分のそれぞれが、前記器具管腔から離れるように外側に屈曲してフック状をなすループである請求項8に記載の器具。
【請求項10】
前記2つの長尺状部分のそれぞれが、前記器具管腔に向かって内側に屈曲してフック状をなすループである請求項8に記載の器具。
【請求項11】
前記長尺状ワイヤが金属材料及びポリマー材料の少なくともいずれかを含む請求項1に記載の器具。
【請求項12】
器具表面の少なくとも一部の上に配置される被覆を含む請求項1に記載の器具。
【請求項13】
回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材と、互いに対向するとともにそれぞれ外周を有する第1開口端及び第2開口端と、同第1開放端及び第2開口端の間に位置する管状本体とを有する管状ステントを形成すべく編組された1つ又は複数の長尺状ワイヤを備えるステントであって、
前記第1開口端が一連の閉端ループにより形成され、前記回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材が、前記第1開口端から延びる少なくとも1つの長尺状閉端ループを含む第1区分と、編組された前記管状本体から出て前記一連の閉端ループの少なくとも1つと編み込まれ、かつ、一体的に前記第1区分に移行すべく延びる第2区分とを含むことにより、前記長尺状閉端ループに力が加えられると管状ステントが径方向に収縮するステント。
【請求項14】
互いに対向する第1ステント端及び第2ステント端を有し、かつ、一体的に形成される回収及び再配置の少なくともいずれかを行うためのループを第1ステント端に有する管状編組ステントを形成する方法であって、
互いに対向する端を有する1つ又は複数の長尺状ワイヤを選択する工程と、
前記長尺状ワイヤのうち少なくとも1本のワイヤから回収及び再配置の少なくともいずれかを行うためのループを形成する工程と、
前記1つ又は複数の長尺状ワイヤを編組して前記管状編組ステントを形成する工程と、を備え、
前記回収及び再配置の少なくともいずれかを行うためのループが、前記第1ステント端を越えて同第1ステント端から上方に延びる長尺状ループを有し、同長尺状ループが操作者に保持されることにより管状編組ステントが径方向に収縮される方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つ又は複数の長尺状ワイヤを編組する工程が、前記回収及び再配置の少なくともいずれかを行うためのループを前記第1ステント端に対して周方向に編み込むことを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記長尺状ループを屈曲させて前記管状編組ステントから外側に延びる屈曲フック部を形成する工程をさらに備える請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記長尺状ループを屈曲させて前記第1ステント端に向かって内側に延びる屈曲フック部を形成する工程をさらに備える請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記屈曲フック部をねじることにより、ねじられた結び目状の部分を形成する工程をさらに備える請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記回収及び再配置の少なくともいずれかを行うためのループを形成する工程が、前記第1ステント端を越えて同第1ステント端から上方に延びる2つの互いに対向する長尺状ループを形成する工程を含み、同2つの長尺状ループが操作者に保持されることにより管状編組ステントが径方向に収縮される請求項14に記載の方法。
【請求項20】
搬送カテーテルと、
ステントと、を備えた搬送システムであって、
前記ステントが、互いに対向する第1開口端及び第2開口端を含むとともに、同第1開口端及び第2開口端の間に位置して外面及び内面を有する器具管腔を形成する管状本体を含む管状器具を形成すべく編組された1つ又は複数の長尺状ワイヤと、同長尺状ワイヤのうちの1本のワイヤから一体に形成される回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材とを有し、
前記回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材が前記第1開口端から延びる長尺状部分を含み、前記回収及び再配置の少なくともいずれかを行うための部材が前記第1開口端の外周に沿って編み込まれることにより、前記長尺状部分に力が加えられると管状の前記ステントが径方向に収縮するとともに第1開口端が絞られる搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−505108(P2013−505108A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530918(P2012−530918)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/048191
【国際公開番号】WO2011/034768
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】