説明

スパイラルモータおよびスパイラルモータの製造方法

【課題】スパイラルモータが備えるスパイラル状の形状を容易に実現する。
【解決手段】スパイラルモータのスパイラル状の形状を分割して複数のブロックで構成することで、スパイラル状の形状を容易に実現する。中心軸とこの中心軸の外周に設けたスパイラル状部とを備えるムーバと、同じピッチのスパイラル状の中空磁極を備えるステータとを備え、ムーバの中心軸をステータの中空磁極内に配置し、ムーバのスパイラル状部をステータの中空磁極のスパイラル状の溝内においてスパイラル状に回転自在とし、ムーバをステータに対してスパイラル状に回転しながら軸方向に直動するスパイラルモータにおいて、複数のムーバブロックおよびステータブロックを中心軸に沿ってスパイラル状に配列してムーバおよびステータを構成し、ムーバのスパイラル状部をステータの中空磁極のスパイラル状の溝内にスパイラル状に回転させながら導入してステータ内にムーバと組み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子に対して回転子が回動しながら軸方向に直動するスパイラルモータ、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NC機械など、外力を受けながら精密な位置決めを行う場合、大きな推力と高い剛性が必要となる。この大きな推力を得るにはギヤによりモータの出力を減速する方法と、大きな磁界を利用するダイレクトドライブ方式が知られている。
【0003】
ギヤによりモータの出力を減速することにより大きな推力を得る場合には、ギヤによりクーロン摩擦力が位置決め精度に大きく影響するという問題があり、また、ダイレクトドライブ方式により大きな推力を得る場合には、装置が大型になるという問題がある。
【0004】
特に直動型のアクチュエータの場合には、ギヤを用いた方式として回転型のモータとボールねじを組み合わせた構成が知られているが、回転型のモータとボールねじを組み合わせる構成は位置決め精度の問題の他、装置が複雑になるという問題がある。また、ダイレクトドライブ方式による直動型のアクチュエータとしては、リニアモータを利用した構成が知られている。
【0005】
また、直進駆動力を発生するモータとして、円筒状表面にN極とS極とをスパイラル状に交互に等間隔で着磁して回転子とし、軸方向に対して垂直平面上に周囲を囲むように電磁コイルを配置して固定子とするスパイラルモータが提案されている。例えば、このようなスパイラルモータとして特許文献1が提案されている。
【0006】
上記したモータ構成では、大きな推力を得るには、装置が複雑になるという問題がある。また、上記文献に提案されるスパイラルモータでは、推力は電磁コイルと回転子の外周面との対向面積に依存するため、大きな推力を得ることが困難であるという問題がある。
【0007】
したがって、従来、直進駆動力を発生するモータとして知られる構成では、小型軽量、高精度、高推力の各点を同時に備えることができないという問題がある。
【0008】
そこで、本願の発明者は、上記した問題点を解決し、直進駆動力を発生するモータにおいて、小型軽量、高精度、高推力の各点を同時に備えることができるスパイラルモータを提案した(特許文献2)。
【0009】
上記特許文献2のスパイラルモータは、回転運動を並進運動に変換するねじの機構と電磁力による動力機構とを一体化することにより、小型軽量、高精度、高推力の各点を同時に備える直動モータを構成するものである。このスパイラルモータは、ねじ機構を電磁力により非接触とすることにより摩擦による影響を排除し、これにより高精度の位置決め制御が可能となる。また、電磁力を作用させるねじ機構部分の面積を大きくとることができるため磁束を有効に利用することができ、同一体積、同一重量の従来のリニアモータよりも大きな推力を得ることができる。
【0010】
スパイラルモータは、可動部分と固定部分を共にスパイラル状に構成し、両スパイラル状の部分を互いに組み合わせることにより、スパイラル状に回転しながら軸方向に直動して推力を発生するものであり、スパイラル状に構成することにより減速ギヤと同様に高推力を得ることができ、また、可動部分と固定部分の軸方向に対向する大きな面積を利用することにより高推力を得ることができる。
【特許文献1】特開平9−56143号
【特許文献2】特許3712073号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記したスパイラルモータは、可動部分と固定部分を共にスパイラル状に構成し、両スパイラル状の部分を互いに組み合わせることにより、スパイラル状に回転しながら軸方向に直動して推力を発生するものであるため、スパイラルモータを製造するには、可動部分と固定部分を同じスパイラルピッチで形成する必要がある。
【0012】
従来知られているモータが備えるロータやステータの構成要素は、通常平面状の形状であって、回転軸方向に対して概ね対称な形状であり、これら構成要素の加工は、鋳造、鍛造、放電ワイヤ加工等の加工技術を用いることによって比較的に容易に行うことができる。
【0013】
これに対して、上記したスパイラルモータが備える可動部分と固定部分の各構成要素は、スパイラルモータを特徴付けているスパイラル状の形状を有している。このようなスパイラル状の形状の部材は、回転軸方向に対して概ね非対称な形状であるため、これらの構成要素の加工は、通常利用される加工技術によっては容易に行うことができず、可能であったとしても多額の費用と加工時間を要すると想定されるという、加工上の課題を有している。
【0014】
そこで、本発明は上記課題を解決して、スパイラルモータを特徴付けているスパイラル状の形状を容易に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、スパイラルモータの可動部分と固定部分を特徴付けているスパイラル状の形状を分割して複数のブロックで構成することで、スパイラル状の形状を容易に実現するものである。ここで、本発明のスパイラルモータの可動部分をムーバと称し、固定部分をステータと称する。
【0016】
本発明はスパイラルモータの態様とスパイラルモータの製造方法の態様の二つの態様を有する。
【0017】
本発明のスパイラルモータの態様は、中心軸と当該中心軸の外周に設けたスパイラル状部とを備えるムーバと、このムーバのスパイラル状部と同じピッチのスパイラル状の中空磁極を備えるステータとを備える。
【0018】
ムーバとスパイラルモータは、そのスパイラル状の構成部分を分割して複数の分割ブロックで構成する。
【0019】
ムーバは、スパイラル状部を分割してなる複数のムーバブロックで構成し、このムーバブロックを中心軸に沿ってスパイラル状に配列して構成する。一方、ステータは、扇状の中空磁極を分割してなる複数のステータブロックで構成し、このステータブロックを中心軸に沿ってスパイラル状に配列して構成する。
【0020】
ムーバの中心軸をステータの中空磁極内に配置し、ムーバのスパイラル状部をステータの中空磁極のスパイラル状の溝内においてスパイラル状に回転自在とする。これによって、ムーバはステータに対してスパイラル状に回転しながら軸方向に直動する。
【0021】
本発明のムーバは、ムーバブロックを6ブロック隣接させることによりスパイラルの一ピッチを形成する。また、本発明のステータはステータブロックを6ブロック隣接させることによりスパイラルの一ピッチを形成する。
【0022】
本発明のムーバブロックは、スパイラル状部の軸方向のスパイラル側面の両側に永久磁石を備える。また、本発明のステータブロックは、中空磁極の軸方向のスパイラル状の両側面に互いに120度位相をずらした3相の巻き線を軸方向に巻回する。また、ステータブロックは、中空磁極のスパイラル状の両側面にスロットを備え、このスロットに巻き線を巻回する。
【0023】
本発明のステータブロックが備える、中空磁極の前記中心軸の軸方向のスパイラル状の両側面は、スパイラル方向に沿って中央の平面とこの中央の平面の両側の2つの傾斜面の3面を有する。傾斜面は、中央平面に対して逆方向に傾斜する。ステータブロックの磁極面において、隣接するステータブロック側の側面部分を傾斜面とすることによって、ステータブロックを組み合わせてステータを構成した際に、ステータブロック間の段差を減少させることができる。
【0024】
本発明において、複数のステータブロックをスパイラル状に組み立てるために、ステータブロックをその外周で固定するフレームを備える。本発明のフレームは、スパイラルの一ピッチ分に相当するステータブロックと同数のフレーム板によって構成することができる。各フレーム板は、ステータブロックを取り付ける溝をスパイラルの一ピッチ間隔で備える。この溝内にステータブロックを組み込むことによって、ステータブロックをスパイラル状に構成した状態でフレームに取り付けることができる。
【0025】
本発明のスパイラルモータの製造方法の態様は、中心軸とこの中心軸の外周に設けたスパイラル状部とを備えるムーバと、ムーバスパイラル状部と同じピッチのスパイラル状の中空磁極を備えるステータとを備え、ムーバの中心軸をステータの中空磁極内に配置し、ムーバのスパイラル状部をステータの中空磁極のスパイラル状の溝内においてスパイラル状に回転自在とし、ムーバをステータに対してスパイラル状に回転しながら軸方向に直動するスパイラルモータの製造方法である。この製造方法は、スパイラル状部を分割してなる複数のムーバブロックを中心軸に沿ってスパイラル状に配列してムーバを構成し、扇状の中空磁極を分割してなる複数のステータブロックを前記中心軸に沿ってスパイラル状に配列してステータを構成し、ムーバのスパイラル状部を前記ステータの中空磁極のスパイラル状の溝内にスパイラル状に回転させながら導入することによって、ステータ内にムーバを組み込む。
【0026】
本発明のステータの製造方法によれば、ムーバおよびステータをそれぞれ複数のムーバブロックを軸方向にスパイラル状に配列することで構成することができる。ムーバおよびステータのスパイラル状の形状を一体で加工することに代えて、それぞれを分割してなる各ムーバブロックおよびステータブロックを加工することによっては、加工を容易とすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、スパイラルモータを特徴付けているスパイラル状の形状を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。図1〜図5はムーバの構成および製造方法を説明するための図であり、図6〜図15はステータの構成および製造方法を説明するための図であり、図16はムーバとステータとを組み合わせて状態を示す図である。
【0029】
本発明のスパイラルモータは、中心軸とこの中心軸の外周に設けたスパイラル状部とを備えるムーバと、ムーバスパイラル状部と同じピッチのスパイラル状の中空磁極を備えるステータとを備え、ムーバの中心軸をステータの中空磁極内に配置し、ムーバのスパイラル状部をステータの中空磁極のスパイラル状の溝内においてスパイラル状に回転自在とし、ムーバをステータに対してスパイラル状に回転しながら軸方向に直動するスパイラルモータである。
【0030】
ここでは、このスパイラルモータにおいて、スパイラル状に回転しながら軸方向に直動する移動体側をムーバと称し、このムーバの移動に対する固定体側をステータと称する。ムーバはステータ側で形成される磁界と協働して駆動力を発生する磁極部分と、この磁極部分を支持すると共に、発生した回転方向の力と直進方向の力を含む駆動力を外部に作用する軸部分とを備える。また、ステータは、ムーバ側の磁極に対する磁界を発生すると共に、ムーバに作用力を生じさせる固定部を備える。
【0031】
本発明のスパイラルモータは、スパイラル状のムーバとステータをそれぞれ複数ブロックに分割し、これら複数のムーバブロックおよびステータブロックをスパイラル状に配列することでスパイラル状体を構成する。
【0032】
はじめに、図1〜図5を用いてムーバについて説明する。
【0033】
図1、図2は、ムーバブロックの概略斜視図である。ムーバ20は、スパイラル形状をスパイラルの進行方向に所定分割ピッチで分割してなる複数のムーバブロック21を備える。
【0034】
ムーバ20は、これら複数のムーバブロック21をスパイラル状に配列することによって擬似的にスパイラル形状を形成する。ムーバブロック21の分割ピッチは、スパイラル形状の一ピッチ間隔を所定数に分割することで定めることができる。例えば、分割数を6分割として分割ピッチを定めた場合には、6個のムーバブロック21をスパイラル状に配列することで、ムーバ20のスパイラル形状の一ピッチ間隔が形成される。
【0035】
ムーバブロック21は、ムーバコア22と、このムーバコア22の軸方向の両側面に貼り付ける永久磁石23とを備える。図1はムーバコア22を示し、図2はムーバコア22に永久磁石23を貼り付けた状態を示している。
【0036】
ムーバコア22は、小径の内周面22cと大径の外周面22dとを有して概ね扇状の形状を成し、軸方向で対向する面を形成する側面21a,21bを有する。ムーバコア22は、例えば珪素鋼板等の電磁鋼板を積層して形成する他、削り出し等の加工によって形成してもよい。ムーバコア22の側面21a,21bには永久磁石23が貼り付けられ、磁極が構成される。ムーバコア22への永久磁石23の貼り付けは、例えばピン止めによって行うことができる。
【0037】
また、ムーバコア22の周方向の端面21e,21fは、ムーバコア22同士をスパイラル方向に並べて配置したとき、互いに隣接面となる。
【0038】
図4はムーバの概略構成を示し、図3はムーバを形成する途中の状態を示している。ムーバ20は、軸24の外周にムーバブロック21をスパイラル状に貼り付けることで形成される。ムーバブロック21は、軸34の軸方向に対して所定の角度を有して取り付けることによって、連結されて各ムーバブロック21は軸方向に順に所定量だけずれ、これによって全体としてスパイラル形状を構成する。
【0039】
図5はムーバ20を軸24の長さ方向に沿って側面から見た図を示している。ムーバ20は、複数のムーバブロック23を軸24に対して所定量のピッチでずらしながら取り付けることでスパイラル形状が形成される。
【0040】
ムーバブロック23の扇形状の角度は、例えば、スパイラル面が一ピッチずれる間に配列するムーバブロック23の個数で定めることができる。例えば、6個のムーバブロック23を配列することで一ピッチ分のスパイラ面を形成する場合には、各ムーバブロック23の扇部分の中心角度はほぼ60°(=360°/6)とすることができる。
【0041】
各ムーバブロック23は、軸24と直交する方向に対して所定角度を有して配列することによって軸方向にずれて取り付けられる。所定個数(例えば6個)のムーバブロック21を軸方向にずらして取り付け、1周分取り付けることによって、1ピッチ分のスパイラル面が形成される。なお、ムーバブロック23を軸24に取り付ける際の、軸24に対する取り付け角度は、パイラル面の1ピッチ分とムーバブロック23の1周当たりの個数で定めることができる。
【0042】
次に、図6〜図15を用いてステータについて説明する。
【0043】
図6、図7は、ステータブロックの概略斜視図である。ステータ30は、スパイラル形状をスパイラルの進行方向に所定分割ピッチで分割してなる複数のステータブロック31を備える。ステータ30は、これら複数のステータブロック31をスパイラル状に配列することによって擬似的にスパイラル形状を形成する。スパイラルブロック31の分割ピッチは、スパイラル形状の一ピッチ間隔を所定数に分割することで定めることができる。例えば、分割数を6分割として分割ピッチを定めた場合には、6個のスパイラルブロック31をスパイラル状に配列することで、ステータ30のスパイラル形状の一ピッチ間隔が形成される。
【0044】
ここでは、ムーバ20のスパイラル形状のピッチを合わせて定めることで、ムーバ20とステータ30とを組み合わせたスパイラルモータを構成することができる。
【0045】
ステータブロック31は、ステータコア32と、このステータコア32に巻回したコイル33とを備える。図6はステータコア32を示し、図7はステータコア32にコイル33(33a,33b)を巻回した状態を示している。
【0046】
ステータブロック31は、概ね扇状の形状を成し、中央コア32aを挟んで両側に設けた磁極面(第1磁極面32b,32c)と、中央コア32aと磁極面との間においてコイルを巻回するスロットを形成するコイル巻回コア32d,32eから構成される。扇状のステータブロック31の放射状の側部を隣接して配列することによって、扇状の要の部分に軸24を通す中空磁極を有すると共に、スパイラル形状のステータ30を形成する。
【0047】
ステータコア32は、例えば珪素鋼板等の電磁鋼板を積層して形成する他、削り出し等の加工によって形成してもよい。また、このステータコア32の形成において、コイルを巻くためのスロットおよび磁極部分を形成する。また、高調波非同期トルクの異常トルクを防止するために、斜めに切削してスキューを設けるようにしてもよい。
【0048】
ステータブロック31のコイル巻回コア32d,32eには、120度位相をずらした3相のコイルを軸方向に巻回する。コイル巻回コア32d,32eに駆動電流を供給することによって第1磁極面32bおよび第1磁極面32cから磁束が発生される。この第1磁極面32bおよび第1磁極面32から発生した磁束は、軸方向で対向するムーバ20の永久磁石23の磁束と作用して、ムーバ20に駆動力を生じさせる。ムーバ20およびステータ30は、その対向する面が共にスパイラル形状であるため、回転方向の作用力と直線方向の作用力の2つの作用力を得ることができる。本発明のスパイラルモータのトルク(回転方向の力)及び推力(直進方向の力)は、ムーバとステータの互いに対向する磁極のスパイラル状側面間で交差する電磁力により発生し、それぞれ独立して制御することができる。
【0049】
図8〜図10は、ステータブロック31をスパイラル状に配列することによって、ステータ30を構成して状態を示している。ステータ30は、右巻きにスパイラルを形成する構成、および左巻きにスパイラルを形成する構成の何れとしてもよい。ステータ20とムーバ30は、スパイラルが同じ巻き方向となるように形成する。図8に示すステータ30は右巻きのスパイラルを示し、図9は左巻きのスパイラルを示している。また、図10は、ステータ30を軸方向に沿って横方向から見た状態を示している。なお、左巻きのスパイラル構成のムーバについては図示していない。
【0050】
ステータブロック31をスパイラル状に配列することで、スパイラル状のステータ30が形成される。図では、6個のステータブロック31を配列することによって、スパイラルの一ピッチ分が形成される例を示している。このスパイラル状の配列を連続して軸方向につなげることによって、任意の長さのステータ30を構成することができる。
【0051】
また、図8〜図10に示す概略構成において、各ステータブロック31の扇形状の要の部分は軸方向に延びる中空部分はムーバ20の軸24を通す空間を形成し、また、軸方向で隣接するステータブロック31間で対向する磁極間に形成されるスパイラル状の隙間はムーバ20のスパイラル状の磁極面が通過する空間を形成する。
【0052】
図11,図12はステータブロックを固定する状態を示している。ステータブロック31は、個々に分離した構成要素であり、この構成要素をスパイラル状に配列してはじめてステータ30が構成される。また、ムーバ20は、ムーバ20とステータ30が発生する電磁力の交差により生じる駆動力によって駆動する。そのため、各ステータブロック31をスパイラル状に配列させると共に、配列状態で固定する必要がある。
【0053】
本発明のスパイラルモータ10は、このステータブロック31を所定位置に位置決めして、その位置で固定するためにフレーム40、41を用いる。図11は、円筒状のフレーム40の例を示し、図12は、多角形の筒体のフレーム41の例を示している。
【0054】
図11に示す構成例では、円筒体の中空のフレーム40の内周面にステータブロック31をスパイラル状に配列する。また、図12に示す構成例では、多角形の中空のフレーム41の内周面にステータブロック31をスパイラル状に配列する。
【0055】
これらの配列では、ステータブロック31の位置決めを行うために、例えば、フレーム40あるいはフレーム41の内周面に位置決め用の溝を設け、この溝内にステータブロック31を嵌め込む構成とする他、予め位置決め用のラックにステータブロック31を組み込んでおき、このラックをフレーム40あるいはフレーム41内に挿入して取り付ける構成としてもよい。
【0056】
図12の構成例では、フレーム41は複数枚のフレーム板42a〜42fによって多角形の筒体を構成している。フレーム41へのステータブロック31の取り付けは、複数枚のフレーム板42a〜42fを組み合わせて予め筒体を形成しておき、この筒体内に各ステータブロック31を取り付ける他、各フレーム板42a〜42fにステータブロック31を取り付けた後、これらのフレーム板42a〜42fを組み合わせて筒体を形成してもよい。
【0057】
図13,図14は、ステータブロック31を取り付けたフレーム板42a〜42fを組み合わせることによって筒体を形成する例を説明するための図である。
【0058】
図13において、各フレーム板42a〜42fは、それぞれ分離した状態でステータブロック31を取り付ける。ステータブロック31の取り付け位置は、フレーム板42a〜42fを組み合わせてフレーム41を構成した際に、スパイラル状に配列されるように所定のピッチ間隔で定められる。
【0059】
この位置決めは、図14に示すように、例えば、フレーム板42a〜42f上に位置決めおよび固定用の溝43を形成しておき(図14(a))、この溝43内にステータブロック31を嵌め込む等によって行うことができる(図14(b))。なお、溝は、ステータブロック31がスパイラル状に配列されるように所定角度を有して形成される。
【0060】
ステータブロック31を取り付けたフレーム板42a〜42fにおいて、隣り合うフレーム板の側片を隣接させ、ステータブロック31が内側となるように組み合わせることでフレーム41を構成する。
【0061】
図13では、各フレーム板42a〜42fはそれぞれ独立した構成を示しているが、各フレーム板42a〜42fを連続した板部材で形成し、予め形成しておいた折り目に沿って折り込みことでフレーム41を構成してもよい。
【0062】
また、各ステータブロック31が備えるステータコア32の磁極面(第1磁極面32b,第2磁極面32c)は、同一平面形状とする他、スパイラル状に配列した際に隣接する箇所で段差が発生しないように、曲面形状あるいは、複数の平面を組み合わせた形状とすることができる。
【0063】
図15は、ステータコア32の磁極面を複数の平面を組み合わせた形状で構成する例を示している。図15に示す構成例では、ステータコア32の磁極面を3つの平面で構成する例を示している。図15において、磁極面32bは、扇形状の要部分と外周部分とを結ぶ放射方向に沿って、中央の平面32A、両側の第1傾斜面32Bおよび第2傾斜面32から構成される。
【0064】
図15(b)はステータコア32の断面を示している。第1傾斜面32Bは平面32Aに対して縁方向に向かって下降する方向に傾斜し、一方、第2傾斜面32Cは平面32Aに対して縁方向に向かって上昇する方向に傾斜して形成される。
【0065】
図15(c)はステータブロック31をスパイラル状に配列した場合における隣接状態を示している。隣接状態では、一方のステータコア32の第1傾斜面32Bは他方のステータコア32の第2傾斜面32Cと隣接する。このとき、第1傾斜面32Bと第2傾斜面32Cとは、その傾斜の方向が逆方向と成っているため、スパイラル状とすることによるステータコア間の位置ずれは低減されて段差量が低減される。
【0066】
上記のようにしてムーバ20とステータ30とをそれぞれ形成し、これらムーバ20とステータ30とを組み合わせることによってスパイラルモータ10を構成する。図16は、ムーバ20とステータ30とを組み合わせた状態のスパイラルモータ10を示している。ここでは、フレームは示していない。
【0067】
ムーバ20とステータ30との組み合わせは、ムーバ20の軸24をステータ30の中心部分に軸方向に形成される空間に挿入し、ステータ30の各ステータブロック31が形成するスパイラル状部分で挟まれるスパイラル状の隙間内において、ムーバ20のスパイラル状の磁極部分をスパイラル状に回転させながら挿入することで行うことができる。
【0068】
このとき、ムーバ20のスパイラルのピッチとステータ30のスパイラルのピッチを合わせることで、ムーバ20の磁極とステータ30の磁極とは接触することなく、所定の面間隔を保持しながら回転動作と直動動作とを行いスパイラル状に駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のムーバブロックの概略斜視図である。
【図2】本発明のムーバブロックの概略斜視図である。
【図3】本発明のムーバブロックの概略斜視図である。
【図4】本発明のムーバを形成する途中の状態を示す図である。
【図5】本発明のムーバの概略構成を示す図である。
【図6】本発明のステータブロックの概略斜視図である。
【図7】本発明のステータブロックの概略斜視図である。
【図8】本発明のステータの概略を示す斜視図である。
【図9】本発明のステータの概略を示す斜視図である。
【図10】本発明のステータの概略を示す平面図である。
【図11】本発明のステータブロックとフレームとを示す図である。
【図12】本発明のステータブロックとフレームとを示す図である。
【図13】本発明のステータブロックとフレームの組み合わせを示す図である。
【図14】本発明のステータブロックとフレームの組み合わせを示す図である。
【図15】本発明のステータコアの磁極面を複数の平面を組み合わせた形状で構成する例を示す図である。
【図16】本発明のスパイラルモータのムーバとステータとの組み合わせ状態を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
10…スパイラルモータ、20…ムーバ、21…ムーバブロック、22…ムーバコア、23…永久磁石、24…軸、30…ステータ、31…ステータブロック、32…ステータコア、32a…中央コア、32b…第1磁極面、32c…第2の磁極面、32d…コイル巻回コア、32e…コイル巻回コア、33a…コイル、33b…コイル、40…フレーム、41…フレーム、42…フレーム板、43…溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸と当該中心軸の外周に設けたスパイラル状部とを備えるムーバと、
前記ムーバのスパイラル状部と同じピッチのスパイラル状の中空磁極を備えるステータとを備え、
前記ムーバは、前記スパイラル状部を分割してなる複数のムーバブロックを有し、当該ムーバブロックを前記中心軸に沿ってスパイラル状に配列して構成し、
前記ステータは、前記扇状の中空磁極を分割してなる複数のステータブロックを有し、当該ステータブロックを前記中心軸に沿ってスパイラル状に配列して構成し、
前記ムーバの中心軸を前記ステータの中空磁極内に配置し、前記ムーバのスパイラル状部を前記ステータの中空磁極のスパイラル状の溝内においてスパイラル状に回転自在とし、前記ムーバは前記ステータに対してスパイラル状に回転しながら軸方向に直動することを特徴とする、スパイラルモータ。
【請求項2】
前記ムーバは前記ムーバブロックを6ブロック隣接させることにより前記スパイラルの一ピッチを形成し、前記ステータは前記ステータブロックを6ブロック隣接させることにより前記スパイラルの一ピッチを形成することを特徴とする、請求項1に記載のスパイラルモータ。
【請求項3】
前記ムーバブロックは、前記スパイラル状部が備える面の内、前記中心軸の軸方向のスパイラル側面の両側に永久磁石を備えることを特徴とする、請求項1に記載のスパイラルモータ。
【請求項4】
前記ステータブロックは、前記中空磁極が備える面の内、前記中心軸の軸方向のスパイラル状の両側面に互いに120度位相をずらした3相の巻き線を軸方向に巻回することを特徴とする、請求項1に記載のスパイラルモータ。
【請求項5】
前記ステータブロックは、前記中空磁極のスパイラル状の両側面にスロットを備え、当該スロットに巻き線を巻回することを特徴とする、請求項1に記載のスパイラルモータ。
【請求項6】
前記ステータブロックが備える、前記中空磁極の軸方向のスパイラル状の両側面は、前記スパイラル方向に沿って中央の平面と当該中央の平面の両側の2つの傾斜面の3面を有し、
当該傾斜面は、前記中央平面に対して逆方向に傾斜することを特徴とする、請求項1から5の何れか一つに記載のスパイラルモータ。
【請求項7】
前記ステータブロックをその外周で固定するフレームを有し、
当該フレームは、スパイラルの一ピッチ分に相当する前記ステータブロックと同数のフレーム板を有し、
前記フレーム板は、前記ステータブロックを取り付ける溝をスパイラルの一ピッチ間隔で備えることを特徴とする、請求項1から6の何れか一つに記載のスパイラルモータ。
【請求項8】
中心軸と当該中心軸の外周に設けたスパイラル状部とを備えるムーバと、
前記ムーバスパイラル状部と同じピッチのスパイラル状の中空磁極を備えるステータとを備え、
前記ムーバの中心軸を前記ステータの中空磁極内に配置し、前記ムーバのスパイラル状部を前記ステータの中空磁極のスパイラル状の溝内においてスパイラル状に回転自在とし、前記ムーバを前記ステータに対してスパイラル状に回転しながら軸方向に直動するスパイラルモータの製造方法であって、
前記スパイラル状部を分割してなる複数のムーバブロックを前記中心軸に沿ってスパイラル状に配列してムーバを構成し、
前記扇状の中空磁極を分割してなる複数のステータブロックを前記中心軸に沿ってスパイラル状に配列してステータを構成し、
前記ムーバのスパイラル状部を前記ステータの中空磁極のスパイラル状の溝内にスパイラル状に回転させながら導入することによって、ステータ内にムーバと組み込むことを特徴とする、スパイラルモータの製造方法。

【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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