説明

スパイラルロッド

【課題】削孔の掘削と同時に供給した水硬性バラ荷に水を供給するための吐出口を有したスパイラルロッドであって、目詰まりによる柱体の構築不良を防止し、強度が均質な柱体を再現性よく、且つ、確実に構築するスパイラルロッドを提供する。
【解決手段】外側に搬送スクリュ3a,3bを、内部に通水路5を有し、該通水路5の終端が、周方向に沿った開口長が10mm未満の吐出口4aを周方向に配列した吐出口ラインを1列以上有し、スパイラルロッド1の軸方向の任意の位置において、本体2の外側面の周長に対する、該位置に開口する全吐出口4aの周方向に沿った開口長の和で示される開口率が50%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩い砂地盤や粘性土地盤、異なる地層が積層した多層地盤といった不安定な地盤において、該地盤の強化を図るべく地盤中に柱体を構築する工法に用いられるスパイラルロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
緩い砂地盤や粘性土からなる地盤、異なる地層が積層した多層地盤は、地震や水害発生時に崩れて該地盤上に建てられた建築物や道路などの構造物の損傷を招いたり、周辺に影響を及ぼしたりする恐れがある。
【0003】
そこで、地盤中に硬質の柱体を構築して地盤を強化する手段が講じられている。このような柱体の構築工法として本発明者は、外側に搬送スクリュを備えた中空のスパイラルロッドを、該搬送スクリュの搬送方向が該スパイラルロッドの圧入方向と一致するように回転させながら地盤中に圧入すると同時に水硬性バラ荷を上記搬送スクリュに供給し、該水硬性バラ荷にスパイラルロッドの中空部を介してスパイラルロッド先端より水を供給して硬化させる工法を提案した。
【0004】
しかしながら、上記工法においては、スパイラルロッド先端に設けた水の供給口がスクリュによって搬送されるバラ荷や周囲の土砂によって目詰まりを生じる恐れがあった。水の供給口が目詰まりを起こした場合、水が周囲のバラ荷に均一に吐出されず、均質な強度を備えた柱体を構築することができない。該目詰まりは工程途中で容易には解消することができず、例えば一時的な高圧で強制的に排水を促すことは可能だが、施工時に瞬時に目詰まりを感知し、水圧を調整することは困難で、且つ、水量が一定にならないため不均質な柱体となるため対応が困難であった。
【0005】
特許文献1には、掘削翼と撹拌翼を備えた掘削ロッドに固化材液吐出口を設け、該掘削ロッドで切削した土壌に固化材液を供給して撹拌し、地盤中に円柱状のコラムを構築する工法において、上記固化材液吐出口の目詰まり防止を図るべく、該固化材液吐出口に磁力作用で動作する弁体を配置し、固化材液が不要な時は該弁体の磁力作用で該吐出口を閉塞し、固化材液が必要な時には固化材液の吐出圧力によって弁体を移動させて吐出口を開放する構造が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−138936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1の掘削ロッドの吐出口も、弁体の下方に土砂またはバラ荷、またはそれらの混合物が詰まった場合には、弁体を下方に移動させて固化材液吐出口を開放することができなくなってしまう。
【0008】
本発明の課題は、削孔の掘削と同時に供給した水硬性バラ荷に水を供給するための吐出口を有したスパイラルロッドであって、目詰まりによる柱体の構築不良を防止し、強度が均質な柱体を再現性よく、且つ、確実に構築するためのスパイラルロッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、外側に搬送スクリュを備え、内部に、後端部から先端部近傍の外側面につながる通水路を備えたスパイラルロッドであって、
上記スパイラルロッドの先端部近傍の外側面における通水路の終端が、
上記外側面の周方向に沿った開口長が10mm未満の吐出口を少なくとも1個、周方向に配列した吐出口ラインを少なくとも1列有し、
スパイラルロッドの軸方向の任意の位置において、スパイラルロッドの外側面の周長に対する、該位置に開口する全吐出口の周方向に沿った開口長の和で示される開口率が50%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2は、外側に搬送スクリュを備え、内部に、後端部から先端部近傍の外側面につながる通水路を備えたスパイラルロッドであって、
上記スパイラルロッドの先端部近傍の外側面における通水路の終端が、
上記外側面の周方向に沿った開口長が10mm未満の吐出口を少なくとも2個、螺旋状に配列した吐出口ラインを少なくとも1列有し、
各列の吐出口ラインにおいて、スパイラルロッドの後端から見て周方向に1周分の螺旋の長さに対する、該螺旋上に開口する全吐出口の該螺旋に沿った方向の開口長の和で示される開口率が50%以下であり、
スパイラルロッドの軸方向の任意の位置において、スパイラルロッドの外側面の周長に対する、該位置に開口する全吐出口の周方向に沿った開口長の和で示される開口率が50%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バラ荷や土砂による吐出口の目詰まりが生じにくく、破線状に吐出口を設けておくことにより、目詰まりする吐出口があっても、他の吐出口から水を吐出することができるため、均一に且つ確実にバラ荷に水を供給することができる。よって、柱体の構築不良を起こす恐れが無く、強度が均質な柱体を所定の位置に確実に構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のスパイラルロッドを用いた柱体の構築工法は、基本的に、外側に搬送スクリュを備えた中空のスパイラルロッドを、該搬送スクリュの搬送方向が該スパイラルロッドの圧入方向と一致するように回転させながら地盤中に圧入する工程と、該スパイラルロッドの先端が所定の深さにまで達した後、該スパイラルロッドを圧入時と同じ方向に回転させながら引き上げる引き上げ工程とを有する。また、上記圧入工程においては、水硬性バラ荷を搬送スクリュに供給する。搬送スクリュの搬送方向はスパイラルロッドの圧入方向と一致していることから、該搬送スクリュに供給された水硬性バラ荷はスパイラルロッドの圧入に伴い、スパイラルロッドで掘削された削孔内に充填されてゆく。また、スパイラルロッドで掘削された土砂は、搬送スクリュの搬送方向がスパイラルロッドの圧入方向と一致することから外部に搬送されることなく、スパイラルロッドの圧入に伴って周囲に押しつけられて固められ、密な削孔壁を形成する。即ち、本発明に係る柱体の構築工法においては、柱体を構築する地盤の土砂が外部に排出されないため、該土砂の廃棄操作が不要である。
【0013】
さらに、本発明に係る柱体の構築工法においては、上記引き上げ工程において、スパイラルロッドの先端部近傍から水を吐出させ、水硬性バラ荷に水を供給する。水硬性バラ荷は供給された水によって硬化する。係る水は連続的に或いは所望のタイミングで水硬性バラ荷に供給される。
【0014】
本発明は、係る水を均一に水硬性バラ荷に供給するための通水路を内部に備えたスパイラルロッドであり、水を吐出する吐出口が土砂またはバラ荷、またはそれらの混合物によって目詰まりする問題を解決したものである。
【0015】
本発明のスパイラルロッドは、好ましくは吐出口を破線状に構成するもので、該吐出口がスパイラルロッドの外側面に周方向に配列した第1の形態と、螺旋状に配列した第2の形態に分けられる。
【0016】
以下、それぞれについて好ましい実施形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明のスパイラルロッドの第1の形態の好ましい一例の先端部近傍の正面図であり、図2はその断面模式図であり、(a)は中心軸に沿った鉛直方向断面図、(b)は(a)中のA−A’断面模式図、(c)は(a)のB−B’断面模式図である。
【0018】
本発明のスパイラルロッド1は、図1,図2に示すように、本体2の外側に搬送スクリュ3a,3bを有している。尚、本例においては搬送スクリュ3a,3bを二重螺旋構造としたが、一重螺旋構造でもかまわない。
【0019】
本発明のスパイラルロッド1は、図2に示すように、本体2の内部に、後端部から先端部近傍の外側面に向かって延びる通水路5を有し、その終端が、スパイラルロッド1の先端部近傍の外側面において、吐出口ラインを構成している。
【0020】
本発明の第1の形態においては、少なくとも1個の吐出口4aを周方向に配列した吐出口ラインを少なくとも1列有する。
【0021】
図3−1は、第1の形態における吐出口4aの配列例を示す図であり、本体2の吐出口ライン近傍の展開図である。図3−1において、(a)は図1,図2の例と同様に、12個の吐出口4aが周方向に上下端をそろえて配列した例であり、吐出口ラインは1列である。(b)は(a)と同様の吐出口ラインをスパイラルロッドの軸方向に2列並べた例である。(c)は吐出口ラインが1列であるが、1個ずつ互い違いに上下端を上下させて配列した例である。本形態において、(c)に示すように、吐出口4aの上下端が揃っていなくても、ほぼ直線状に吐出口4aが配列した構成を1列の吐出口ラインとする。
【0022】
本発明において、吐出口4aの、本体2の外側面の周方向に沿った開口長(L2)は、10mm未満であり、スパイラルロッドの軸方向の任意の位置において、スパイラルロッドの外側面の周長(L1)に対する、該位置に開口する全吐出口の周方向に沿った開口長(L2)の和で示される開口率が50%以下である。即ち、図3−1においては、(a)〜(c)のいずれの例も周方向の開口率は(L2×12/L1)である。
【0023】
本発明において、周方向に沿った吐出口4aの開口長(L2)を10mm未満と小さくすることにより、該吐出口4aの土砂やバラ荷による目詰まりが防止される。好ましくは5mm以下であり、加工性を考慮すると2mm以上である。
【0024】
また、本発明において、直径の小さい本体2に1個の吐出口を開口した場合に、上記開口率が50%を超える吐出口とした場合には、周方向に広く吐出口が開くことになり、このような吐出口は目詰まりしやすくなってしまう。また、直径の小さい本体2に吐出口4aを2個以上設けた場合であっても、開口率が50%を超えると、隣接する吐出口間の間隔が狭くなるため、該吐出口ラインにおいて本体2の強度が低くなり、破損しやすくなってしまう。そのため、本発明においては、周方向において周長に対する全吐出口の開口長の和で示される開口率は50%以下とする必要がある。
【0025】
図1,図2においては、製造の便宜上、吐出口4aを貫通孔として設けた吐出口リング4を本体2に設けた凹部に嵌め込み、スパイラルロッド1の本体2の後端部から先端部に向かって軸方向に伸びてきた通水路5を、先端部近傍で十字型の平面形状に分岐させ、該十字の先端が上記凹部に到達する箇所においてリング4と本体2との間に間隙を設けることで、複数の吐出口4aにまんべんなく水が供給されるように形成している。特に、本例の構成において、通水路5の十字型に分岐して水平方向に伸びる通路部分よりも吐出口4aが下方に位置しており、通水路5から供給される水が吐出口4aより吐出されやすく、且つ、外部より吐出口4aにバラ荷や土砂が入りにくく、吐出口4aがより目詰まりしにくい構造となっている。尚、本発明は当該構成に限定されるものではない。
【0026】
また、吐出口4aの高さ(スパイラルロッドの軸方向の開口長)を高くすれば全体の開口面積が増えて水を吐出しやすくなるが、吐出口4aの高さを高くしすぎると、本体2の強度が低くなるため、全体の開口面積を増やす場合には、図3−1(b)に示すように、吐出口ラインを2列以上とすることが好ましい。尚、このように吐出口ラインを複数列設ける場合、各列の吐出口4aの開口長と開口率は、スパイラルロッドの任意の位置において、上記した周方向における開口長と開口率を満たす範囲内であれば、互いに同じでも異なっていてもよい。即ち、図3−1(b)においては、C−C’ラインと、D−D’ラインにおいてそれぞれ上記した周方向における開口長と開口率を満たす範囲になるように、吐出口4aを設ければよい。また、各列内において、吐出口4aの開口長や高さ、間隔は全てを同一にする必要はなく、2種類以上の形状、寸法を組み合わせて構成してもかまわない。
【0027】
また、図3−1(b)においては、周方向の吐出口4aの位置を上下の吐出口ラインで一致させているが、互い違いに配置してもよく、また、各吐出口ラインの吐出口4aの個数や形状、間隔を互いに異ならせてもかまわない。
【0028】
図3−1(c)は、上記したように、吐出口4aの上下方向(スパイラルロッドの軸方向)の位置を1個ずつ互い違いにずらせた例である。
【0029】
尚、図3−1(a)、(b)においても、C−C’ライン内において、吐出口4aの開口長や高さ、間隔は全てを同一にする必要はなく、2種類以上の形状、寸法を組み合わせて構成してもかまわない。
【0030】
本形態においては、スパイラルロッドの軸方向のいずれにC−C’ラインを設定しても、上記開口率が50%以下となるように吐出口4aを設ければよい。
【0031】
次に、本発明の第2の形態について説明する。第2の形態は、吐出口4aの配列が異なる以外の構成は、第1の形態と同様であり、説明を省略する。
【0032】
図3−2は第2の形態における吐出口4aの配列例を示す図であり、本体2の吐出口ライン近傍の展開図である。図3−2において、(a)は12個の吐出口4aが螺旋状に配列した例であり、各吐出口4aはE−E’ラインで示される螺旋に沿って配列している。吐出口ラインは1列である。(b)はE−E’ラインとG−H−G’ラインの二重螺旋に沿って、(a)と同様の吐出口ラインを2列並べた例である。(c)は吐出口ラインが1列であるが、2個ずつ吐出口が上下方向で同じ位置に並んだ状態で該2個単位でE−E’ラインに沿って配列した例である。本形態において、(c)に示すように、E−E’ラインに対する各吐出口4aの位置関係が同じでない場合であっても、全体としてほぼ螺旋状に配置し、隣り合った吐出口4a同士で上下方向の開口領域が部分的に重複する場合には、該E−E’ラインに開口する吐出口4aを全て1列の吐出口ラインに含むものとする。
【0033】
本形態においても、第1の形態と同様の理由により、周方向に沿った吐出口4aの開口長(L2)は10mm未満である。さらに、第1の形態と同様の理由により、スパイラルロッドの軸方向の任意の位置において、スパイラルロッドの外側面の周長(L1)に対する、該位置に開口する全吐出口の周方向に沿った開口長(L2)の和で示される開口率が50%以下である。即ち、図3−2(a)においては、F−F’ラインにおいて、開口率は(L2×4/L1)であり、(b)においては、F−F’ラインにおいて、開口率は(L2×8/L1)であり、(c)においては、F−F’ラインにおいて、開口率は(L2×4/L1)である。
【0034】
本形態においては、スパイラルロッドの軸方向のいずれにF−F’ラインを設定しても、周方向の開口率が50%以下となるように吐出口4aを設ける。
【0035】
また、本形態においては、1列の吐出口ラインにおいて、スパイラルロッドの後端から見て周方向に1周分(=360°)の螺旋の長さに対する、該螺旋上に開口する全吐出口の該螺旋に沿った方向の開口長の和で示される開口率が50%以下である。即ち、図3−2(a)、(c)においては、E−E’ラインの長さ(S1)に対する、E−E’ライン上に配列する全吐出口4aのE−E’ラインに沿った開口長(S2)の和で示される開口率(=S2×12/S1)が50%以下である。また、図3−2(b)においては、(a)、(c)と同様に、E−E’ラインの長さ(S1)に対する、E−E’ライン上に配列する全吐出口4aのE−E’ラインに沿った開口長(S2)の和で示される開口率(=S2×12/S1)が50%以下であると同時に、G−H−G’ラインの長さ(S1)に対する、G−H−G’ライン上に配列する全吐出口4aのG−H−G’ラインに沿った開口長(S2)の和で示される開口率(=S2×12/S1)が50%以下である。係る開口率が50%を超えると、隣接する吐出口間の間隔が狭くなるため、該吐出口ラインにおいて本体2の強度が低くなり、破損しやすくなってしまう。
【0036】
本発明の第2の形態において、吐出口ラインの螺旋の傾斜角度(図3−2において、F−F’ラインに対してE−E’ラインのなす角度)は、特に限定されるものではないが、製造上の容易性を考慮すると、搬送スクリュ3a,3bの本体2への取り付け位置の螺旋の傾斜角度と一致させておくことが好ましい。
【0037】
尚、図3−2(a)、(b)において、E−E’ライン内において、吐出口4aの開口長や高さ、間隔は全てを同一にする必要はなく、2種類以上の形状、寸法を組み合わせて構成してもかまわない。
【0038】
また、図3−2(b)において、E−E’ラインと、G−H−G’ラインの各列内において、吐出口4aの開口長や高さ、間隔は全てを同一にする必要はなく、2種類以上の形状、寸法を組み合わせて構成してもかまわない。
【0039】
さらに、図3−2(b)においては、周方向の吐出口4aの位置を二重螺旋の上下で一致させているが、互い違いに配置してもよく、また、各吐出口ラインの吐出口4aの個数や形状、間隔を互いに異ならせてもかまわない。
【0040】
尚、本例においては、吐出口4aの形状として矩形のものを例示したが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、円形、楕円形などであっても構わない。
【0041】
本発明のスパイラルロッドを用いた柱体の構築方法において用いられる水硬性バラ荷は、水硬性成分としてのセメント系固化材と、骨材としての砂からなり、一般にこれに水を加えて練ったものがモルタルである。砂は粒径が20mm以下、好ましくは5mm以下のものが用いられる。セメント系固化材は、セメント或いは石灰に必要に応じて硬化促進剤等の添加剤が添加されたものである。セメント系固化材と砂とは重量比で1:2〜1:3の割合で配合される。
【0042】
以下に本発明のスパイラルロッドを用いた柱体の構築工法を図4を参照しながら説明する。
【0043】
スパイラルロッド1を囲むようにホッパー11を配設し、ホッパー11内に水硬性バラ荷12を収納しておく。この状態でスパイラルロッド1を、搬送スクリュ3a,3bの搬送方向が該スパイラルロッド1の圧入方向(矢印B方向)と一致するように回転させながら(矢印A方向)圧入する〔図4(a)〕。即ち、図4において、スパイラルロッド1の後端から見た場合、搬送スクリュ3a,3bはスパイラルロッド1の後端から先端に向かって時計回りに形成されており、該スパイラルロッド1を図4(a)に示すようにスパイラルロッド1の後端から見て反時計回り(矢印A)方向に回転させた場合、搬送スクリュ3a,3bの搬送方向はスパイラルロッド1の後端から先端に向かう方向となり、スパイラルロッド1の圧入方向(矢印B方向)と一致する。即ち、通常、圧入を容易にするために搬送スクリュ3a,3bを利用する場合とは逆方向に回転させることになり、これによりホッパー11内に収納された水硬性バラ荷12が搬送スクリュ3a,3bに供給され、圧入方向、即ちスパイラルロッド1の先端に向かって搬送される。また、搬送スクリュ3a,3bの搬送方向がスパイラルロッド1の圧入方向と同じであるため、地盤の土砂がホッパー11内に排出される恐れがない。
【0044】
スパイラルロッド1の先端が所定の深さまで達した時点で〔図4(b)〕、スパイラルロッド1の圧入で形成された削孔14内壁とスパイラルロッド1との間隙には水硬性バラ荷12が充填されている。
【0045】
次に、スパイラルロッド1を圧入時と同じ方向(矢印A方向)に回転させながら、上方(矢印B’方向)に引き上げる。即ち、搬送スクリュ3a,3bの搬送方向はスパイラルロッド1の引き上げ方向(矢印B’方向)とは逆方向となるため、一旦削孔14内に供給された水硬性バラ荷12がスパイラルロッド1の引き上げによって削孔14外に排出される恐れはない。また、好ましくはスパイラルロッド1を引き上げる際にも、搬送スクリュ3a,3bに引き続き水硬性バラ荷12を供給することで、削孔14内により密に水硬性バラ荷12を充填することができる。特に、スパイラルロッド1の先端側においては、該先端が引き上げられると同時に水硬性バラ荷12が供給されるため、水硬性バラ荷12を密に且つ均一に充填することができる。
【0046】
また、当該工程において、スパイラルロッド1の本体2に形成した通水路5に水を供給し、先端部近傍の吐出口4aより水を吐出して水硬性バラ荷12に水を供給する。尚、供給する水には、硬化促進剤等の添加物を添加してもかまわない。
【0047】
本発明のスパイラルロッド1は、通水路5の終端である吐出口4aの土砂やバラ荷による目詰まりが防止されていることから、確実に削孔14内の水硬性バラ荷12に水を供給することができる。
【0048】
スパイラルロッド1を完全に引き上げた後、水硬性バラ荷12が供給された水によって硬化し、地盤13中に強固な柱体15が構築される〔図4(d)〕。
【実施例】
【0049】
図1,図2に例示した第1の形態のスパイラルロッドを吐出口4aの開口長と個数を変えて4種類作製した。本体2の外径は60mm、搬送スクリュ3a,3bはピッチが100mm、後端から先端部近傍までの最大径が120mm、先端部で漸減して100mm、厚さが6〜9mm、吐出口ラインは吐出口4aの下端が本体2の先端部から500mの位置とし、高さを5mmとして、開口長2mmで12個、5mmで12個、8mmで8個、10mmで8個とした。
【0050】
水硬性バラ荷12として、普通ポルトランドセメントと砂とを重量比で1:2に混合したものを用い、直径が130mm〜200mm(平均160mm)、深さ6mの柱体を構築した。水硬性バラ荷12は深さ1m当たり40kg充填し、深さ1m当たり水は3L〜6L供給した。本例で用いた砂と、該砂とセメントとの混合物の粒度試験の結果を図5に示す。
【0051】
その結果、開口長2mm及び5mmについては流量が一定し、吐出圧力も高くなく、一定で安定していた。開口長8mmについては、流量は2mm、5mmのものに若干届かず、吐出圧力が高くなったが、実用に耐える柱体を構築できるレベルであった。これらに対して開口長10mmの場合には、2mm〜8mmより大幅に吐出圧力が高いにもかかわらず、流量が大幅に低下し、十分な量の水が供給できなかった。スパイラルロッド1を引き上げて吐出口4aを観察したところ、開口長2mm及び5mmの吐出口4aはほとんど目詰まりを起こしていなかったが、8mmはいくつかの吐出口が目詰まりを生じていた。また、開口長10mmの吐出口は8mmよりもさらに多くの吐出口が目詰まりを生じていた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、土壌の強化等を目的として、スパイラルロッドを地盤中に圧入して削孔を形成すると同時に該削孔内に水硬性バラ荷を供給し、該水硬性バラ荷を水によって硬化して柱体を構築する工法において用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のスパイラルロッドの一実施形態の先端部近傍の正面図である。
【図2】図1のスパイラルロッドの断面模式図である。
【図3−1】本発明の第1の形態の吐出口の配列例を示す図である。
【図3−2】本発明の第2の形態の吐出口の配列例を示す図である。
【図4】図1のスパイラルロッドを用いた柱体の構築工法の工程図である。
【図5】本発明の実施例で用いた水硬性バラ荷の粒度試験の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 スパイラルロッド
2 本体
3a,3b 搬送スクリュ
4 吐出口リング
4a 吐出口
5 通水路
11 ホッパー
12 水硬性バラ荷
13 地盤
14 削孔
15 柱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側に搬送スクリュを備え、内部に、後端部から先端部近傍の外側面につながる通水路を備えたスパイラルロッドであって、
上記スパイラルロッドの先端部近傍の外側面における通水路の終端が、
上記外側面の周方向に沿った開口長が10mm未満の吐出口を少なくとも1個、周方向に配列した吐出口ラインを少なくとも1列有し、
スパイラルロッドの軸方向の任意の位置において、スパイラルロッドの外側面の周長に対する、該位置に開口する全吐出口の周方向に沿った開口長の和で示される開口率が50%以下であることを特徴とするスパイラルロッド。
【請求項2】
外側に搬送スクリュを備え、内部に、後端部から先端部近傍の外側面につながる通水路を備えたスパイラルロッドであって、
上記スパイラルロッドの先端部近傍の外側面における通水路の終端が、
上記外側面の周方向に沿った開口長が10mm未満の吐出口を少なくとも2個、螺旋状に配列した吐出口ラインを少なくとも1列有し、
各列の吐出口ラインにおいて、スパイラルロッドの後端から見て周方向に1周分の螺旋の長さに対する、該螺旋上に開口する全吐出口の該螺旋に沿った方向の開口長の和で示される開口率が50%以下であり、
スパイラルロッドの軸方向の任意の位置において、スパイラルロッドの外側面の周長に対する、該位置に開口する全吐出口の周方向に沿った開口長の和で示される開口率が50%以下であることを特徴とするスパイラルロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−281017(P2009−281017A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132819(P2008−132819)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】