説明

スパウト付き収容体、及びスパウト

【課題】弾性体を封入したスパウト付き収容体において、収容体の収容物の収容量を多くすると共に、スパウト付き収容体が設置されるケース内の取り付け構造の簡略化を図ることを目的とする。
【解決手段】複数のシート材によって収容体を形成し、複数のシート材の間にスパウト10を溶着したスパウト付き収容体において、スパウト10は、シート材が溶着されるように一対の溶着面11を具備した本体12を有している。本体12には、略平坦な露出面17と、溶着面11に開口し、所定の押圧力を与えながら弾性体50を収容する収容部15と、露出面17に形成され、収容部15を封止する薄膜状の封止壁18が一体形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば合成樹脂製の収容体の開口部に、収容物の出し入れを行なうスパウトを取着したスパウト付き収容体、及びスパウトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂シートのような比較的柔軟な材質で形成された収容体に、その内部の収容物を取り出すべく、スパウトを取着したスパウト付き収容体が知られている。このスパウトは、通常、合成樹脂等によって一体形成されており、上記した合成樹脂シート間に配置し、熱溶着することで挟着されている。このようなスパウト付き収容体は、様々な分野で用いられており、それに応じて、スパウトは多様な構成が開発されている。
【0003】
例えば、スパウト付き収容体の使用態様として、スパウトの口部に吸出し用の針を刺し込んで収容物を注出し、これを必要個所に供給するものがある。この場合、スパウトの口部には、収容物を封止すると共に、複数回の使用が可能となるように、針を刺し込む弾性体(ゴム)が封入されている。
【0004】
ところで、このような構成では、弾性体は、針が刺し込まれる中心領域に向かって、かなり強い押圧力を有していなければならない。すなわち、この押圧力が弱いと、刺し込まれた針と弾性体との間に隙間が生じたり、或いは、針が引き抜かれた後に、その針の跡がそのまま残って通路が生じてしまい、内容物が漏れ出しやすくなってしまうからである。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1には、合成樹脂シートが溶着される溶着部に弾性体を収容する収容部を形成すると共に、前記溶着部にヒンジを介して開閉可能な分割部を設けておき、前記収容部に弾性体を収容した状態で分割部を閉じることで、弾性体に押圧力を付与するスパウトが開示されている。
【特許文献1】特開2003−104402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した公知技術によれば、簡単な構成で、弾性体に対して中心に向かう押圧力を付与したスパウト、及びそのようなスパウトを取着したスパウト付き収容体が得られる。
【0007】
しかし、上記した公知技術では、合成樹脂シートが溶着される本体に、上方に向けて突出する口部(口栓部)が形成されていることから、収容体全体として見た場合、上下方向に大型化してしまう。例えば、このような収容体を、予め定められたリジッドなケースに設置し、このケースを外部装置に設けられた注出針部分に装着し、口部に前記注出針を刺し込んで収容物を取り出すような構成では、前記ケース内に口部を保持するための保持部を形成する必要があるため、口部の突出量の分だけデッドスペースが生じてしまい、収容物の収容量が減ってしまうという問題がある。また、突出する口部が存在することから、ケース側の取り付け構造が複雑化してしまい、これに伴って、取り付け位置も外部装置の要求に応じてフレキシブルに対応させ難くなる、という問題がある。
【0008】
そして、上記したようなスパウトでは、本体部に対する弾性体の組み込み作業、及び合成樹脂シートの溶着作業が、より簡単に行なえるように構成することが生産性の面から好ましいと考えられる。
【0009】
本発明は、上記した問題に基づいて成されたものであり、弾性体を封入したスパウト付き収容体において、収容体の収容物の収容量を多くすることを可能にすると共に、スパウト付き収容体が設置されるケース内の取り付け構造の簡略化が図れるスパウト付き収容体を提供することを目的とする。また、本発明は、上記したようなスパウト付き収容体において、弾性体の組み込み作業が容易に行なえると共に、合成樹脂シートの溶着作業が容易に行なえるスパウトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、請求項1に係るスパウト付き収容体は、複数のシート材によって収容体を形成し、前記複数のシート材の間にスパウトを溶着した構成において、前記スパウトは、前記シート材が溶着されるように一対の溶着面を具備した本体を有しており、前記本体には、略平坦な露出面と、前記溶着面に開口し、所定の押圧力を与えながら弾性体を収容する収容部と、前記露出面に形成され、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁が一体形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記した構成のスパウト付き収容体では、スパウトの上面側(露出面側)が略平坦に形成されており、口部のような突出する部分が形成されていないことから、例えば、予め定められたケース内にスパウト付き収容体を設置する際、ケース内に口部の突出量の分だけデッドスペースが生じることがなくなる。すなわち、スパウトの露出面の高さ位置まで収容体で構成して、ケース内にデッドスペースを生じさせなくすることができるため、収容物の収容量を最大限確保することが可能になるとともに、ケース内に、突出する口部を保持、案内するような装着部を設ける必要がなくなって、ケース内の装着部分の構成も簡略化される。したがって、前記ケースが装着される外部装置の要求に応じて、ケースのスパウト付き収容体の装着部の位置変更も容易に行なえ、フレキシブルに対応することが可能となる。なお、上記した露出面の「略平坦」とは、厳密に水平な状態に形成されているものが含まれ、それ以外にも、例えば、封止壁が形成される部分に多少の凹凸があるような構成であっても良い。
【0012】
そして、上記した構成において、収容体内の収容物は、前記露出面側に形成された薄膜状の封止壁に注出用の針を、弾性体を貫通するように刺し込み吸引することで注出されるようになる。
【0013】
また、請求項2に係る発明では、前記本体には、前記露出面と同一の構成で、前記収容体の内部空間に露出する内側露出面が形成されており、前記内側露出面には、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁が一体形成されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成では、内側の露出面側にも封止壁が形成されていることから、収容物が弾性体に接触することを防止できる。
【0015】
また、上記した課題を解決するために、請求項3に係るスパウト付き収容体は、複数のシート材によって収容体を形成し、前記複数のシート材の間にスパウトを溶着した構成において、前記スパウトは、前記シート材が溶着されるように一対の溶着面を具備すると共に、2部品によって一体化された本体を有しており、前記本体は、略平坦な露出面と、前記2部品を一体化した際に所定の押圧力を与えながら弾性体を収容する収容部と、前記2部品夫々に形成され、各部品を一体化する接合手段と、前記露出面に形成され、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁とを有することを特徴とする。
【0016】
このように、スパウトの本体は、分割される2部品を一体化したものであっても良く、このような構成においても、請求項1に係る発明と同様、収容物の収容量を最大限確保することが可能になるとともに、ケース内の装着部分の構成も簡略化される。
【0017】
なお、このような構成においても、請求項4に係る発明のように、前記本体に、前記露出面と同一の構成で、前記収容体の内部空間に露出する内側露出面を形成するとともに、前記内側露出面に、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁を形成しておくことで、収容物が弾性体に接触することを防止できる。
【0018】
また、上記した課題を解決するために、請求項5に係るスパウトは、複数のシート材で構成される収容体に溶着され、収容体内の収容物を注出する構成において、前記スパウトは、前記シート材が溶着されるように一対の溶着面を具備した本体を有しており、前記本体は、略平坦な露出面と、前記溶着面に開口し、所定の押圧力を与えながら弾性体を収容可能な収容部とを有し、前記露出面には、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁と、前記複数のシート材を溶着する際、本体を保持するピンが係合される穴部が一体形成されていることを特徴とする。
【0019】
上記した構成のスパウトによれば、シート材を溶着した際、露出面から上方に突出する部分が無くなることから、口部を考慮することなく、収容物の収容量を最大限確保することが可能になる。また、弾性体は、単に、本体の溶着面の開口部分から収容部に押し込むことで所定の押圧力が付与された状態で保持されるようになり、そして、このように弾性体を収容した本体は、露出面に形成された穴部を単に治具に刺し込むことで、その状態が安定して保持されるようになり、容易にシート材を溶着面に溶着することが可能になる。
【0020】
なお、上記した露出面の「略平坦」とは、厳密に水平な状態に形成されているものが含まれ、それ以外にも、例えば、封止壁が形成される部分に多少の凹凸(シート材を溶着する際に、安定して本体をチャックすることができない程度の凹凸があるような構成であっても良い)。
【0021】
また、上記したスパウトの露出面に形成される穴部は、スパウト付き収容体をケース内に設置するような場合、ケース側にピンを設けておき、このピンに、スパウトの穴部を差し込むことで、スパウト付き収容体を移動させること無く安定した状態で設置することに利用可能となる。
【0022】
また、請求項6に係る発明では、前記本体には、前記露出面と同一の構成で、前記収容体の内部空間に露出する内側露出面が形成されており、前記収容部は、前記一対の溶着面の夫々に開口していることを特徴とする。
【0023】
このような構成のスパウトでは、収容部は、本体の両側に形成されている露出面の夫々に開口していることから、弾性体の封入作業が容易に行なえるようになる。
【0024】
また、請求項7に係る発明では、前記内側露出面には、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁が一体形成されていることを特徴とする。
【0025】
このような構成のスパウトでは、一対の溶着面にシート材が溶着され、内部に収容物が収容されると、内側の露出面側に形成された封止壁によって、収容物が弾性体に接触することを防止できる。
【0026】
また、請求項8に係る発明では、前記内側露出面には、前記複数のシート材を溶着する際、本体を保持するピンが係合される穴部が一体形成されていることを特徴とする。
【0027】
このような構成のスパウトでは、本体が対称形状となるため、弾性体の封入作業が容易に行なえるとともに、スパウトの両方の露出面側に穴部が形成されていることから、治具に対する差込作業(保持作業)も、方向性を考慮することなく容易に行なうことが可能となる。
【0028】
また、上記した課題を解決するために、請求項9に係るスパウトは、複数のシート材で構成される収容体に溶着され、収容体内の収容物を注出する構成において、前記スパウトは、前記シート材が溶着されるように一対の溶着面を具備すると共に、2部品によって一体化された本体を有しており、前記本体は、略平坦な露出面と、前記2部品を一体化した際に所定の押圧力を与えながら弾性体を収容可能な収容部と、前記2部品夫々に形成され、各部品を一体化する接合手段とを有し、前記露出面には、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁と、前記複数のシート材を溶着する際、本体を保持するためのピンが係合される穴部が形成されていることを特徴とする。
【0029】
このように、スパウトの本体は、分割される2部品を一体化したものであっても良く、このような構成においても、請求項5に係る発明と同様、収容物の収容量を最大限確保しつつ、穴部を単に治具に刺し込むことで、その状態が安定して保持され、容易にシート材を溶着面に溶着することが可能になる。また、弾性体は、2部品を接合手段によって一体化した際に、所定の押圧力が付与された状態で保持されるようになる。
【0030】
また、このような構成においても、上記したスパウトの露出面に形成される穴部は、スパウト付き収容体をケース内に設置するような場合、ケース側にピンを設けておき、このピンに、スパウトの穴部を差し込むことで、スパウト付き収容体を移動させること無く安定した状態で設置することに利用可能となる。
【0031】
また、請求項10に係る発明では、前記本体は、前記露出面と同一の構成で、前記収容体の内部空間に露出する内側露出面を備えており、前記内側露出面には、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁が形成されていることを特徴とする。
【0032】
このような構成のスパウトでは、一対の溶着面にシート材が溶着され、内部に収容物が収容されると、内側の露出面側に形成された封止壁によって、収容物が弾性体に接触することを防止できる。
【0033】
また、請求項11に係る発明では、前記内側露出面には、前記複数のシート材を溶着する際、本体を保持するピンが係合される穴部が一体形成されていることを特徴とする。
【0034】
このような構成のスパウトでは、本体が対称形状となって両方の露出面側に穴部が形成されていることから、治具に対する差込作業(保持作業)も、方向性を考慮することなく容易に行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のスパウト付き収容体によれば、収容体の収容物の収容量を多くすることができるとともに、そのようなスパウト付き収容体が取り付けられるケースの装着部分の構成を簡略化することが可能となる。
【0036】
また、本発明のスパウトによれば、弾性体の組み込み作業が容易に行なえると共に、合成樹脂シートの溶着作業が容易に行なえるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して具体的に説明する。
図1乃至図4は、本発明に係るスパウト付き収容体、及びスパウトの第1の実施形態を示す図であり、図1(a)はスパウト付き収容体の構成を示す上面図、図1(b)は側面図、図2はスパウトの斜視図、図3はスパウトの中央断面図、そして、図4はスパウトに対するシート材の溶着工程の概略を示す図である。
【0038】
本実施形態に係るスパウト付き収容体1は、シート材2a、例えば、比較的安価な材料である柔軟な合成樹脂シートを複数枚準備し、これを対向配置して格子状の斜線で示す領域を熱溶着することで作成された収容体2と、その上端部分においてシート材間に挟着(熱溶着)されたスパウト10とを備えて構成されている。
【0039】
前記スパウト10は、対向するシート材2aが溶着される一対の溶着面11を具備した本体12を備えており、本体12は、溶着面11にシート材を溶着し易いように、断面略舟型形状となるように形成されている。なお、図に示す各溶着面11は、それぞれ2つの平坦面によって構成されているが、後述する第2実施形態の図5に示すように、単一の湾曲面で構成しても良い。
【0040】
前記本体12の中央部分には、図2に示すように、球形の弾性体50(ゴム)が収容される収容部15が形成されている。この場合、収容部15は、前記両側の溶着面11に対して開口(開口部15aを介して弾性体50が封入される)することで形成されており、その大きさは、封入される弾性体50に対して、図3に示すように、中心領域に向けて押圧力を作用させる程度に形成されている。具体的には、開口部15aの幅は、封入される球形の弾性体50の直径よりも若干小さく(0.5〜1mm程度)形成しておくことで、押圧力を作用させることが可能となる。また、前記収容部15には、封入される球形の弾性体50が安定して保持されるように、上下の対向する位置に凹所15b,15cを形成しておくことが好ましく、この凹所部分に、後述する封止壁が形成されている。
【0041】
なお、上記した開口部15aは、いずれか一方の溶着面11に開口していれば良いが、両側の溶着面11に形成することで、方向性が無くなって弾性体50の封入作業が行ない易くなる。
【0042】
また、前記本体12の上面側には、略平坦な露出面17が形成されている。この露出面17は、最終的にスパウト付き収容体が作成された際に、外部に露出する領域であり、溶着されるシート材の縁部2bと同一高さとなって、上方に突出するような口部等が形成されることはない。そして、この露出面17には、前記収容部15を封止するように円形で薄膜状の封止壁18が一体形成されている。
【0043】
また、本実施形態においては、前記本体12には、前記露出面17と対向する側に、露出面17と同一の構成で前記収容体2の内部空間側に露出する内側露出面20が形成されており、この内側露出面20にも、収容部15を封止するように円形で薄膜状の封止壁21が一体形成されている。
【0044】
また、上記した露出面17には、シート材2aを溶着面11に溶着する際、容易かつ安定して溶着作業が行なえるように、ピン状に構成された治具60が挿入される穴部24が形成されている。本実施形態の穴部24は、封止壁18の両サイドに形成されており、図4に示すように、一対の治具60に対して挿入した際、安定して保持されるように構成されている。すなわち、治具60に対しては、手動でスパウト10の差し込み作業を行なうか、或いは機械的な差込工程の後、溶着装置(図示せず)の溶着部に案内して、図4の一点鎖線で示すように、各溶着面11に対してシート材2aを熱溶着することで、スパウト付き収容体が作成される。
【0045】
なお、上記した穴部24は、同様な構成で、内側露出面20にも形成しておくことが好ましい。すなわち、このような構成の本体12によれば、露出面17側と内側露出面20側の構成が同一となるため、方向性を考慮する必要がなくなって、溶着作業を容易に行なうことが可能になる。すなわち、このような構成では、本体12は対称形状となっていることから、上記した露出面17が、実際のスパウト付き収容体が作成された際、収容体の内側になることも有り得る。
【0046】
以上のように構成されるスパウト10は、合成樹脂を型成型することによってワンピースとして一体形成することが可能である。この場合、上記した封止壁18,21は一体形成しても良いし、予め凹所15b,15c部分を開口させておき、事後的にアルミシート等を取着する構成であっても良い。
【0047】
上記した構成のスパウト10によれば、本体12の溶着面11の開口部15aから弾性体50を収容部15に押し込み、その位置を凹所15b,15cによって安定させることで、弾性体50には、中心に向かう所定の押圧力が付与された状態で保持されるようになる。そして、弾性体50を収容したスパウト10にシート材2aを溶着する際、穴部24を治具60に刺し込むだけの簡単な作業で、スパウト10を安定して保持することが可能となり、シート材2aを容易に溶着面11に熱溶着することが可能となる。すなわち、スパウト10をチャック等する必要がないため、溶着面11に対して、容易かつ安定してシート材2aを熱溶着することが可能となる。
【0048】
そして、シート材が溶着されたスパウト付き収容体は、図1に示すように、溶着したシート材2aの縁部2bから上方に突出する部分(口部や口栓部)は無く、図示されていないケースに装着した際、デッドスペースが無くなることから、収容物の収容量を最大限確保することが可能になる。また、これに伴い、ケース部分のスパウト付き収容体を保持する部分の構成も簡略化されるため、その位置を、外部装置の要求に応じて、容易に変更することが可能となる。例えば、図1に示す構成において、スパウト10を、シート部材の側方部に溶着したり、角部に溶着する等、外部装置の要求に応じて、種々変更することが可能となる。そして、上記した穴部24については、ケース部分に、予め、対応するピンを設けておき、ケースに対する設置時において、穴部24をピンに差し込むことで、ケースに対する設置を安定させる手段として利用することが可能となる。
【0049】
なお、収容体2内に収容される収容物は、重ね合わせたシート材2aのいずれかの端部を未溶着にしてその部分から充填し、その後、未溶着部分を溶着することで最終製品となるスパウト付き収容体が完成される。或いは、中身が入っていないスパウト付き収容体に対し、弾性体50に充填針を刺し込んで収容物を充填することで、最終製品となるスパウト付き収容体が完成される。後者の場合、弾性体50は、収容部15の形状によって、針が刺し込まれる中心領域に向かって押圧力が付与されているため、刺し込まれた針と弾性体50との間に隙間が生じることは無く、また、針が引き抜かれた後においても、その通路を塞ぐような押圧力が作用するため、収容物の漏れが防止される。
【0050】
そして、スパウト付き収容体から実際に収容物を取り出す際には、露出面17側に形成された薄膜状の封止壁18に針を刺し込み、弾性体50、及び下側の封止壁21を貫通させることで、収容体内の収容物を注出することが可能となる。この場合、上記した構成では、内側の露出面20側にも封止壁21が形成されていることから、収容物が弾性体50に接触することが防止される。
【0051】
なお、上記した構成では、内側の露出面20は、露出面17と同様な構成、すなわち平坦面として構成されていなくても良い。また、本体12の内側には、封止壁21を形成しない構成であっても良い。
【0052】
図5〜図7は、本発明に係るスパウトの第2の実施形態を示す図であり、図5はスパウトの斜視図、図6はスパウトの分解斜視図、そして、図7は、スパウトの中央断面図である。
【0053】
本実施形態のスパウト110は、本体112が、上下方向に分割される2部品112A,112Bによって構成されており、両者に設けられた接合手段を組み付けることで一体化されるように構成されている。一体化された本体112には、上記した実施形態と同様、シート材が溶着される溶着面111が形成されており、図1に示す構成と同様、シート材2aの縁部2bと同一高さとなる露出面117は略平坦となるように形成されている。そして、露出面117には、上記した実施形態と同様、円形の封止壁118が形成されるとともに、その両サイドに治具60(図4参照)が挿入される穴部124が形成されている。なお、本実施形態の封止壁118は、露出面117に凹所118aを形成して、その底部に形成されており、封止壁118の位置を容易に視認できるように構成されている。
【0054】
両部品112A,112Bには、互いに面接するように接合面113a,113bが形成されており、接合面113aには、図7に示すように略円錐台状にくり抜かれた凹所115aが形成されている。また、接合面113bにも、図7に示すように、対応する位置に凹所115bが形成されている。そして、両部品112A,112Bを後述する接合手段によって一体化することで、両凹所115a,115bによって、円柱形状の弾性体150を収容する収容部が形成されるようになっている。すなわち、図6に示すように、弾性体150を下側部品112Bの凹所115b内に配置し、上側部品112Aを一体化することで、本体112の内部に円柱状の弾性体150が封入された状態となる。
【0055】
この場合、弾性体150に対する押圧力は、上記した各凹所の形状、大きさ、及び弾性体150の形状、大きさによって適宜、付与することが可能であり、本実施形態の場合、上側部品112Aに形成された凹所115aの縮径する内周壁116によって、押圧力を作用させるようになっている。
【0056】
また、上記した接合手段は、両部品112A,112Bの接合面113a,113bに一体形成されており、図に示すように、収容部の両サイドで、部品112A側に形成された一対の脚部160、及び部品112B側に形成され、前記両脚部160が嵌合される一対の嵌合穴161によって構成されている。この場合、各脚部160には、フランジ160aが形成されるとともに、両嵌合穴161には、フランジ160aを係止させる段部161aが形成されており、両者を係合させた状態で、両部品を各接合面113a,113bで密着させて一体化するように構成されている(各嵌合穴161の底部は、型成形のため開口されている)。
【0057】
前記各凹所115a,115bは、封入される弾性体の大きさ、及び形状によって、その構成が特定されており、両部品112A,112Bを、上記した接合手段を介して一体化した際に、上記したように、収容される弾性体150を中心側に向けて押圧するように構成されたものであれば良い。
【0058】
なお、この実施形態では、凹所115bの底部は、開口していても良いし、上記した実施形態と同様に、収容物が弾性体150に接触しないように封止壁121を形成しておいても良い。また、部品112B側も、部品112A側と同じように、同一構成の露出面117を形成し、かつ穴部124を形成しておくことによって、本体としての方向性が無くなり、シート材の溶着を容易に行なうことが可能になる。
【0059】
以上のように構成された本体112は、2部品112A,112Bのいずれかの凹所に弾性体150を配置し、両者を接合手段によって一体化することで、弾性体150に所定の押圧力を作用させて封入するとことができ、弾性体150を封入した後は、上記した実施形態と同様、穴部124を治具に刺し込むことでスパウトは安定して保持され、溶着面111にシート材を溶着することでスパウト付き収容体が作成される。
【0060】
このように、スパウトの本体は、単一の構造ではなく、分割される2部品を一体化したものであっても良い。このような構成においても、上記した実施形態と同様、露出面から突出するような口部等が形成されないことから、収容物の収容量を最大限確保することが可能になるとともに、ケースの装着部分の構成が簡略化されて、ケース部分のスパウト付き収容体を保持する部分の構成も簡略化され、その位置を、外部装置の要求に応じて、容易に変更することが可能となる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態以外にも、例えば、以下のように種々変形することが可能である。
【0062】
上記した構成の収容部は、封入された弾性体を、針が刺し込まれる中心方向に向けて押圧する構成であれば良く、別途、押圧部を形成しておく等、その形状や押圧方法については、適宜変形することが可能である。また、封入される弾性体についても適宜変形することが可能である。また、シート材溶着時に、スパウトを保持するのに利用される穴部の数や形成位置についても、種々変形することが可能である。また、スパウトに形成される露出面17,117については、上方に突出する口部(チャックされるような口部)が形成されていなければ、多少の凹凸が形成されていても良く、具体的な露出面の形状については、適宜変形することが可能である。
【0063】
さらに、上記した第2実施形態のように、本体を分割可能な2部品によって構成する場合、具体的な分割方向や両者を一体化する接合手段の構成については種々変形することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】スパウト付き収容体の第1の実施形態を示す図であり、(a)はスパウト付き収容体の構成を示す上面図、(b)は側面図。
【図2】スパウト付き収容体におけるスパウトの斜視図。
【図3】スパウトの中央断面図。
【図4】スパウトに対するシート材の溶着工程の概略を示す図。
【図5】スパウトの第2の実施形態を示す斜視図。
【図6】スパウトの分解斜視図。
【図7】スパウトの中央断面図。
【符号の説明】
【0065】
1 スパウト付き収容体
2a シート材
10,110 スパウト
11,111 溶着面
12,112 本体
17,117 露出面
24,124 穴部
50,150 弾性体
60 治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシート材によって収容体を形成し、前記複数のシート材の間にスパウトを溶着したスパウト付き収容体において、
前記スパウトは、前記シート材が溶着されるように一対の溶着面を具備した本体を有しており、
前記本体には、略平坦な露出面と、前記溶着面に開口し、所定の押圧力を与えながら弾性体を収容する収容部と、前記露出面に形成され、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁が一体形成されていることを特徴とするスパウト付き収容体。
【請求項2】
前記本体には、前記露出面と同一の構成で、前記収容体の内部空間に露出する内側露出面が形成されており、
前記内側露出面には、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁が一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスパウト付き収容体。
【請求項3】
複数のシート材によって収容体を形成し、前記複数のシート材の間にスパウトを溶着したスパウト付き収容体において、
前記スパウトは、前記シート材が溶着されるように一対の溶着面を具備すると共に、2部品によって一体化された本体を有しており、
前記本体は、略平坦な露出面と、前記2部品を一体化した際に所定の押圧力を与えながら弾性体を収容する収容部と、前記2部品夫々に形成され、各部品を一体化する接合手段と、前記露出面に形成され、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁とを有することを特徴とするスパウト付き収容体。
【請求項4】
前記本体には、前記露出面と同一の構成で、前記収容体の内部空間に露出する内側露出面が形成されており、
前記内側露出面には、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のスパウト付き収容体。
【請求項5】
複数のシート材で構成される収容体に溶着され、収容体内の収容物を注出するスパウトにおいて、
前記スパウトは、前記シート材が溶着されるように一対の溶着面を具備した本体を有しており、
前記本体は、略平坦な露出面と、前記溶着面に開口し、所定の押圧力を与えながら弾性体を収容可能な収容部とを有し、
前記露出面には、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁と、前記複数のシート材を溶着する際、本体を保持するピンが係合される穴部が一体形成されていることを特徴とするスパウト。
【請求項6】
前記本体には、前記露出面と同一の構成で、前記収容体の内部空間に露出する内側露出面が形成されており、
前記収容部は、前記一対の溶着面の夫々に開口していることを特徴とする請求項5に記載のスパウト。
【請求項7】
前記内側露出面には、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁が一体形成されていることを特徴とする請求項6に記載のスパウト。
【請求項8】
前記内側露出面には、前記複数のシート材を溶着する際、本体を保持するピンが係合される穴部が一体形成されていることを特徴とする請求項7に記載のスパウト。
【請求項9】
複数のシート材で構成される収容体に溶着され、収容体内の収容物を注出するスパウトにおいて、
前記スパウトは、前記シート材が溶着されるように一対の溶着面を具備すると共に、2部品によって一体化された本体を有しており、
前記本体は、略平坦な露出面と、前記2部品を一体化した際に所定の押圧力を与えながら弾性体を収容可能な収容部と、前記2部品夫々に形成され、各部品を一体化する接合手段とを有し、
前記露出面には、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁と、前記複数のシート材を溶着する際、本体を保持するためのピンが係合される穴部が形成されていることを特徴とするスパウト。
【請求項10】
前記本体は、前記露出面と同一の構成で、前記収容体の内部空間に露出する内側露出面を備えており、
前記内側露出面には、前記収容部を封止する薄膜状の封止壁が形成されていることを特徴とする請求項9に記載のスパウト。
【請求項11】
前記内側露出面には、前記複数のシート材を溶着する際、本体を保持するピンが係合される穴部が一体形成されていることを特徴とする請求項10に記載のスパウト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−8138(P2006−8138A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183596(P2004−183596)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000228408)日本キム株式会社 (37)
【Fターム(参考)】