説明

スピンドル巻線装置

【課題】線材に捩れを発生させることなく巻線するに好適なスピンドル巻線装置を提供する。
【解決手段】ワークCを支持して回転するスピンドル機構4と、前記ワークCの少なくとも一側面に近接してスピンドル機構4に配置され、スピンドル機構4のスピンドル軸方向およびワークCに対して接近離反する半径方向に移動可能に支持されて前記ワークCと共に回転し、前記線材供給機構6から供給される線材WをワークCの巻線位置へ案内するガイド10Aと、を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルに保持させたワークを回転させて線材を整列させ多層に巻線するスピンドル巻線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から回転電機の電機子コア等のワークに線材を整列させた状態で巻線するため、フライヤから繰出した線材を線材ガイド(フォーマ)によりワークのティース同士の間のスロットに案内して巻線するフライヤ式巻線装置が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1では、例えば、電機子コアの磁極鉄芯(ティース部)に巻線するにあたり、ワークを割出し装置に保持させ、ワークの磁極側の上下に配置したガイド(対向フォーマ)とフライヤ側の上下に配置したガイド(センタフォーマ)とで形成した隙間、即ち、巻線位置の両側にガイドを位置させる。そして、ワークの周囲を回転するフライヤから繰出した線材を、前記両側のガイドにより案内して巻線位置に巻線させる。次いで、順次両ガイドを一巻づつ移動させることで順次巻線位置を移動させて磁極鉄芯に整列巻線している。2層目以上の巻線時においては、前記両ガイドをワークに対して線径分だけ離れる方向に移動させた状態で、順次両ガイドを一巻づつ移動させることで順次巻線位置を移動させて1層目の巻線上に2層目の巻線を整列巻線するようにしている。各ガイドは巻線位置の移動に合わせてモータ等により前後方向に移動され、巻層の進行に合わせてモータ等により上下方向(ワークから離れる方向)に移動されるよう構成している。
【0004】
特許文献2では、前記ガイドの内のフライヤ側のみの上下にガイド(センタフォーマ)を配置して備えるものであるが、特許文献1と同様にガイドが移動されるよう構成している。
【特許文献1】特許第3266538号公報
【特許文献2】特許第3679337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来例のフライヤ式巻線装置は、ワーク回りに回転するフライヤの外径が大きくなると、その慣性力も大きくなり、重量も増加するため、巻線のために高速で回転させると、巻線装置が振動する等の不具合があった。
【0006】
また、フライヤの1回転に付き線材が1捻りされるため、太い線材を巻線する場合には、線材の剛性により、前記捩じりに対して元に戻ろうとする力が作用すること、フライヤ自体にも線材からかなりの反力が作用すること、フライヤ先端からワークまでの距離が長いこと等のため、フォーマ上を線材が滑ってワークに巻線される過程で、線材のテンション(張力)が変動し易く、整列巻きできない場合があった。
【0007】
さらに、モータコイル、その他の各種コイルの性能向上のために、線材の占積率を上げるように、巻装する線材に四角断面の平角線が採用される機会が多いが、フライヤ式巻線装置では、線材が捩れて、場合によっては裏返し状態に巻線される事態が生じ、整列させて巻線ができない不具合もあった。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、線材に捩れを発生させることなく巻線するに好適なスピンドル巻線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ワークを支持して回転するスピンドル機構と、前記スピンドル機構とともに回転するワークに巻線用の線材を供給する機構と、前記ワークの少なくとも一側面に近接してスピンドル機構に配置され、スピンドル機構のスピンドル軸方向およびワークに対して接近離反する半径方向に移動可能に支持されて前記ワークと共に回転し、前記線材供給機構から供給される線材をワークの巻線位置へ案内するガイドと、前記ガイドの前記ワークに対する軸方向位置および半径方向位置を調整して、前記線材のワークへの巻線位置を調整するガイド移動機構と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
したがって、本発明では、ワークを支持して回転するスピンドル機構と、前記スピンドル機構とともに回転するワークに巻線用の線材を供給する機構と、前記ワークの少なくとも一側面に近接してスピンドル機構に配置され、スピンドル機構のスピンドル軸方向およびワークに対して接近離反する半径方向に移動可能に支持されて前記ワークと共に回転し、前記線材供給機構から供給される線材をワークの巻線位置へ案内するガイドと、前記ガイドの前記ワークに対する軸方向位置および半径方向位置を調整して、前記線材のワークへの巻線位置を調整するガイド移動機構と、を備える。即ち、ワーク側を回転させることで、質量の大きいフライヤ等の回転部材をなくすることができ、巻線作動時に振動が生じにくい。しかも、ワーク側をガイドと共に回転させるため、線材に捩じり力が作用することがなく、また、線材供給機構からワークまでの距離を短くでき、太い線材を巻線する場合においても、ガイド上を線材が滑ってワークに巻線される過程で、線材のテンション(張力)が変動し難く、確実な整列巻きを実施できる。さらに、モータコイル、その他の各種コイルの性能向上のために、線材の占積率を上げるように、巻装する線材に四角断面の平角線が採用される場合においても、線材が捩れて、場合によっては裏返し状態に巻線される事態を抑制して、確実に整列させて巻線することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のスピンドル巻線装置を一実施形態に基づいて説明する。
図1は本発明を適用したスピンドル巻線装置の第1実施形態を示す斜視図、図2はスピンドル巻線装置の要部を拡大して示す斜視図、図3は主スピンドル機構およびガイド機構の要部を説明する説明図である。
【0012】
先ず、巻線対象である電機子コアについて説明する。この電機子コアは、各磁極(ティース部)に電機子コイルが巻線された状態で回転軸に固定して、回転電機の電機子を構成するものである。電機子コアCは全体として円形の外周形状を備え、円周方向等間隔に複数のティース部C1を根元部から放射状に突出させて備えると共に、各ティース部C1間には巻線を収容するスロットC2が形成されている。各ティース部C1の先端は円形に形成されて、回転電機として組立てた場合には、ステータコア内面との間にギャップを介して対面する。各ティース部C1の先端は夫々円周方向の両側に突出されてスロットC2の半径方向外周のスロット開口を狭めて形成し、各ティース部C1に巻装される巻線を夫々スロットC2内に収容する。
【0013】
各ティース部C1には、例えば、ティース部C1の先端側から根元側に向かって1層目の線材Wが整列巻され、2層目は根元側から先端側に向かって整列巻され、順次同様にして巻層を重ねて複数の巻層にわたって整列巻きされて電機子コイルが形成される。前記巻層は、1層目がティース部C1の根元側から先端側へ整列巻され、2層目がティース部C1の先端側から根元側へ整列巻するものであってもよい。
【0014】
なお、本実施形態のスピンドル巻線装置1のワークとしては、上記した複数の巻軸(ティース部C1)を備える電機子コアCに限られず、単数の巻軸を備える、図5に示すような、樹脂製やセラミック製のコイルボビンであっても、ステータの分割コアであっても、巻軸を中心として回転可能なワークであれば適用することができる。以下では、複数の巻軸(ティース部C1)を備える電機子コアCをワークとする場合について、説明する。
【0015】
前記スピンドル巻線装置1は、図1において、ワークとしての電機子コアCを、巻軸としての巻線しようとするティース部C1が回転中心軸上に突出して位置するようチャック機構3により把持し、ワークを巻線しようとするティース部C1を中心に回転駆動する主スピンドル機構4と、前記主スピンドル機構4に把持された前記ワークに対面して、前記主スピンドル機構4と同軸上に配置されて、主スピンドル機構4に同期して回転駆動する副スピンドル機構5と、前記主スピンドル機構4により回転されるワーク対して巻線する線材Wを、前記ワークの巻軸方向にその繰り出し位置を調整しつつ供給する線材供給手段6と、を支持台7に支持して備える。
【0016】
また、スピンドル巻線装置1は、副スピンドル機構5により回転保持され、線材供給手段6より繰出された線材Wをティース部C1の表面に案内するティース部C1の両面に配置された一対のガイド10(フォーマ)と、同じく副スピンドル機構5により回転保持され、前記各ガイド10をスピンドルの軸方向(巻軸方向)およびスピンドルと直交する半径方向(巻軸に接近離反する方向)に移動させる各ガイド移動機構20と、を備える。
【0017】
また、対向する主スピンドル機構4側においても、必要に応じて、例えば、特許第3266538号に記載されているように、前記ガイド10との間でティース部C1表面の巻線位置に線材Wを案内するための、ティース部C1の両面に配置された一対のガイド10A(対向フォーマ)を設けてもよい。この一対のガイド10A(対向フォーマ)に対しても、同じく主スピンドル機構4により回転保持され、前記各ガイド10Aをスピンドルの軸方向(巻軸方向)およびスピンドル直交する半径方向(巻軸に接近離反する方向)に移動させるガイド移動機構20Aと、を備える。
【0018】
前記主副スピンドル機構4,5は、複数の巻軸(ティース部C1)を備える電機子コアCをワークとする場合には、両方のスピンドル機構4,5を使用することが望ましいが、例えば、単数の巻軸を備える、図5に示す樹脂製やセラミック製のコイルボビンやステータの分割コアである場合には、配置されているガイド10およびガイド移動機構20を含めて副スピンドル機構5の設置を省略し、主スピンドル機構4およびそれに関連する一対のガイド10A、各ガイド移動機構20Aのみによりスピンドル巻線装置1を構成することができる。
【0019】
また、単数の巻軸を備える、図5に示す樹脂製やセラミック製のコイルボビンやステータの分割コアである場合には、前記主副スピンドル機構4,5を備えるも、主スピンドル機構4および副スピンドル機構5の少なくとも一方に、前記ワークCの少なくとも一側面に近接して、当該スピンドル機構4(5)のスピンドル軸方向およびワークCに対して接近離反する半径方向に移動可能に支持されて前記ワークCと共に回転し、前記線材供給機構6から供給される線材WをワークCの巻線位置へ案内するガイド10(10A)を配置し、当該ガイド10(10A)の前記ワークCに対する軸方向位置および半径方向位置を調整して、前記線材WのワークCへの巻線位置を調整するガイド移動機構20(20A)を備えるようにしてもよい。
【0020】
さらに、スピンドル巻線装置1は、巻線終了段階において線材供給手段6からティース部の巻き終り端に至る線材Wを切断するカッタ手段8と、ワークの一つの巻軸としてのティース部C1への線材Wの巻装が完了する毎に巻軸としてのティース部C1を変更するためにワークを回転させるインデックス機構9と、を別に備える。なお、ワークとして、図5に示すように、単体の巻軸を備えるボビンW1やステータの分割コアW2である場合には、前記したインデックス機構9を必要とせず、巻装開始および完了時点でワークをスピンドル巻線装置1へ供給および搬出するワーク供給・搬出機構を備えるようにすればよい。
【0021】
前記主スピンドル機構4は、支持台7上に軸方向に離間させて配置した2個のヘッド40に軸受けを介して回転自在に支持した回転体41を備え、両回転体41にはキー手段42を介して一体回転可能に円筒状の主スピンドル軸43を配置して備える。前記主スピンドル軸43の後ろ側のヘッド40から突出した端部にはプーリ44Aを固定して備え、支持台7の下方に配置したスピンドルモータ45の出力軸に固定したプーリ44Bに巻き掛けたベルト44Cを前記したプーリ44Aに巻掛けて、前記主スピンドル軸43はスピンドルモータ45により回転駆動される。なお、主スピンドル機構4においては、副スピンドル機構5に向かう方向を前方とする。
【0022】
前記主スピンドル軸43の軸端(前端)には、図3に示すように、ワークとしての電機子コアCを保持するコア保持治具としてのチャック機構3を備える。前記チャック機構3は、主スピンドル軸43の軸前端に半径方向にスライド移動可能に配置した一対のチャック爪30と、一対のチャック爪30を互いに接近させる方向に付勢して一対のチャック爪30間にワークとしての電機子コアCをチャッキングさせるスプリング等の付勢手段31とを備える。前記一対のチャック爪30の内端は互いに対向する傾斜カム32に形成されている。
【0023】
前記主スピンドル軸43内には、スライド可能に保持したチャック開閉棒33が、待機位置からその後端に配置したシリンダ34により前記主スピンドル軸43の軸端側に押動させて作動位置に前進移動可能に配置されている。そして、前記チャック開閉棒33を前記シリンダ34により前進させると、チャック開閉棒33の先端のカム35が前記傾斜カム32間に入り込み、傾斜カム32を介して一対のチャック爪30を半径方向外方に押し広げてチャック機構3を開放するよう作動する。前記シリンダ34は主スピンドル軸43の後端側に配された支柱36に固定配置され、突出するピストンロッドの先端が主スピンドル軸43の後端から突出するチャック開閉棒33の端部にスラスト軸受け37を介して連結している。
【0024】
前記副スピンドル機構5は、図1に示すように、支持台7上に軸方向に移動可能に配置した移動板56上に、軸方向に離間させて配置した2個のヘッド50に軸受けを介して回転自在に支持した回転体51を備え、両回転体51にはキー手段52を介して一体回転可能に副スピンドル軸53を配置して備える。なお、副スピンドル機構5においては、主スピンドル機構4に向かう方向を前方とする。
【0025】
前記副スピンドル機構5の副スピンドル軸53の先端には、ワークとしての電機子コアCのティース部C1の先端に係合する突起59を設け、主スピンドル機構4と副スピンドル機構5とでワークCを両端支持することにより、ワークCの支持を安定させている。
【0026】
前記移動板56は支持台7に対してリニアガイド56Aにより支持されて副スピンドル軸53の軸方向に移動可能となっており、支持台7上に配置したスピンドル移動モータ57により回転するホールねじ57Aが移動板56に固定のナット手段57Bにねじ結合されている。したがって、スピンドル移動モータ57によりボールねじ57Aが回転されると、ボールねじ57Aにねじ結合しているナット手段57Bがボールねじ57Aの回転方向に応じて前後移動し、前記移動板56および副スピンドル軸53が前後に移動する。
【0027】
前記副スピンドル軸53の後方のヘッド50から突出した後端部にはスプライン結合によりプーリ54Aを固定して備える。プーリ54Aはスピンドル軸53と一体に回転可能であり、移動板56がスピンドル移動モータ57により前後移動される場合には、スプライン結合によりプーリ54Aとの結合位置を変化させて、副スピンドル機構5のみが前後移動するように構成されている。前記プーリ54Aには、支持台7の下方に配置したスピンドルモータ55の出力軸に固定したプーリ54Bに巻き掛けたベルト54Cを巻掛けて、前記副スピンドル軸53がスピンドルモータ55により回転駆動される。
【0028】
前記一対のガイド10は、多極の巻軸(ティース部C1)を備える電機子コアCの場合は、線材供給手段6から繰出される線材Wを曲面に沿ってティース部C1の巻線位置に案内するフォーマ11として構成している。このフォーマ11は、電機子コアCのティース部C1の軸方向の両端面に配置され、夫々、ティース部C1(巻軸)に沿った方向(電機子コアCの半径方向、巻軸方向であり且つスピンドル軸方向であり、以下では「巻軸方向」という)およびティース部C1に接近離脱する方向(電機子コアCの軸方向、巻軸に対して直行方向であり、以下では巻軸を基準として「半径方向」という)に移動可能に構成される。なお、図3では、ティース部C1の片側に配置されたガイド10とガイド移動機構20のみが図示されており、ティース部C1の他方(図中下方)にも、同様の構成により、ガイド10とガイド移動機構20が配置されるものであるが、以下では、図示された部分についてのみ説明し、他方のガイド10とガイド移動機構20については、その説明を省略する。
【0029】
具体的には、副スピンドル機構5の回転体51を軸方向に貫通させて配置した軸方向移動軸12の軸端に固定配置した回転移動板13に半径方向に配置して設けたリニアガイド14により前記フォーマ11が支持されている。これにより、前記フォーマ11は、軸方向移動軸12を回転体51に対してスライドさせて回転移動板13の軸方向位置が変化させることにより、回転移動板13と共に巻軸方向の位置を調整可能としている。また、前記回転移動板13には、L字状のベルクランク15を回動可能に支持して備え、ベルクランク15の一方のアームに設けた長穴にフォーマ11の基部に設けたアイドラピンを係合させ、ベルクランク15の回動位置を調整することにより、フォーマ11の半径方向位置を調整可能としている。
【0030】
前記ベルクランク15の回動位置(フォーマ11の半径方向位置)は、夫々副スピンドル機構5の回転体51を軸方向に貫通させて配置した半径方向移動軸16の軸端をベルクランク15の他方のアームに設けた長穴に係合させて、半径方向移動軸16の前記軸方向移動軸12に対する相対軸方向位置を調整することにより調整するようにしている。
【0031】
即ち、各フォーマ11は、軸方向移動軸12と半径方向移動軸16とを同期させて移動させる際には、フォーマ11の軸方向位置を調整でき、軸方向移動軸12に対して半径方向移動軸16を相対的に移動させる際には、フォーマ11の半径方向位置が調整できる。前記半径方向移動軸16の回転体51への貫通位置は、実施例では前後方向移動軸12よりも内周側であるが、ベルクランク15の形状を変更する等により前後方向移動軸12と同一周上にすることも可能である。
【0032】
前記軸方向移動軸12と半径方向移動軸16には、図1に示すように、各軸毎にカム円板17、18が固定されている。即ち、各軸方向移動軸12には夫々前後カム円板17が固定され、各半径方向移動軸16には夫々上下カム円板18が固定される。各カム円板17、18は、対応する移動軸12、16と共にスピンドル軸方向に移動する。
【0033】
前記夫々のカム円板17、18には、外周側からカムフォロア21、22が夫々係合しており、夫々のカムフォロア21、22は、移動板56に立設させて形成した支柱58上に設けた各可動軸手段23、24により軸方向位置を調整可能に構成している。前記各可動軸手段23、24は、モータ70により回転するボールねじ71と、ボールねじ71と平行に延びるリニアガイド72に係合することでより回り止めされ且つボールねじ71にねじ係合されたナット手段73と、からなり、支柱58側にモータ70およびリニアガイド72が固定され、カムフォロア21、22側にナット手段73が連結されて構成されている。
【0034】
したがって、モータ70が回転すると、ナット手段73およびカムフォロア21、22が軸方向に移動し、カムフォロア21、22が係合しているカム円板17、18および移動軸12、16が前後(軸方向)に移動して、フォーマ11が軸方向および/または半径方向に移動する。
【0035】
前記回転移動板13、ベルクランク15、軸方向移動軸12、半径方向移動軸16、各カム円板17,18、各カムフォロア21,22、および可動軸手段23,24は、前記ガイド10(フォーマ11)をスピンドルの軸方向(巻軸方向)およびスピンドル直交する半径方向(巻軸に接近離反する方向)に移動させるガイド移動機構20を構成している。
【0036】
前記主スピンドル機構4にも、回転保持して、線材供給手段6より繰出された線材Wをティース部C1表面に案内するガイド10A(対向フォーマ11A)を設ける場合には、図3に示すように、対向フォーマ11Aはスピンドル軸43に平行なアーム部と、アーム部の先端からスピンドル軸43に向かって(若干傾斜してもよい)延びる先端部と、を夫々備えるようにする。なお、図3では、ティース部C1の片側に配置されたガイド10Aとガイド移動機構20Aの一部のみが図示されており、ティース部C1の他方(図中下方)にも、同様の構成により、ガイド10Aとガイド移動機構20Aが配置されるものであるが、以下では、図示されたものについてのみ説明し、他方のガイド10Aとガイド移動機構20Aについては、その説明を省略する。そして、前記主スピンドル機構4側の対向フォーマ11Aは、主スピンドル軸43のコア保持具としてのチャック機構3を跨いで前方へ進出可能とする。
【0037】
また、これらの対向フォーマ11Aは、前記フォーマ11と同様に、主スピンドル機構4の回転体41を軸方向に貫通させて配置した軸方向移動軸12Aの軸端に固定配置した回転移動板13Aに支持させて、軸方向移動軸12Aを回転体41に対してスライドさせて回転移動板13Aの軸方向位置を変化させて、対向フォーマ11Aの前後方向位置を調整するようにする。
【0038】
また、各対向フォーマ11Aの基部を、回転移動板13Aに半径方向に配置したリニアガイド14Aによりスピンドル軸43に対して半径方向に移動可能に配置する。そして、各回転移動板13Aに、前記フォーマ11と同様に、L字状のベルクランク15Aを回動可能に支持させ、ベルクランク15Aの一方のアームに設けた長穴に対向フォーマ11Aの基部に設けたアイドラピンを係合させ、夫々主スピンドル機構4の回転体41を軸方向に貫通させて配置した半径方向移動軸16Aの軸端をベルクランク15Aの他方のアームに設けた長穴に係合させて、半径方向移動軸16Aの前記軸方向移動軸12Aに対する相対軸方向位置を調整することにより、対向フォーマ11Aの半径方向位置を調整可能とする。
【0039】
以上の構成により、フォーマ11と同様に、各対向フォーマ11Aは、軸方向移動軸12Aと半径方向移動軸16Aとを同期させて移動させる際には、対向フォーマ11Aの軸方向位置を調整でき、軸方向移動軸12Aに対して半径方向移動軸16Aを相対的に移動させる際には、対向フォーマ11Aの半径方向位置が調整できるようにする。そして、前記フォーマ11の場合と同様に、主スピンドル軸43周りに各カム円板17A,18A、各カムフォロア21A,22A、および可動軸手段23A,24Aを配置して構成する。これらの各カム円板17A,18A、各カムフォロア21A,22A、および可動軸手段23A,24Aの詳細は、前記フォーマ11の場合と同様であり、その説明は省略する。
【0040】
前記線材供給手段6は、線材繰り出し部60と、線材繰り出し部60を水平方向から前記ワークCに接近・離反させるよう支持台7に固定された水平軸移動機構66と、水平軸移動機構66に支持されて線材繰り出し部60を上下方向に位置決めする上下軸移動機構67と、上下軸移動機構67に支持されて線材繰り出し部60をスピンドル軸43(53)と平行方向に位置決めする前後軸移動機構68と、よりなる三軸移動手段65と、を備える。
【0041】
前記線材繰り出し部60は、供給される線材Wを案内する案内ローラ61と、案内ローラ61に案内された線材Wを繰り出す図示しない繰り出しローラ若しくは繰り出しノズルと、図示しない繰り出しローラ若しくは繰り出しノズルと案内ローラ61との間の線材Wをシリンダ63の付勢力によりクランプして保持するワイヤクランプ62とを備える。
【0042】
前記線材供給手段6は、前記主副スピンドル機構4、5により回転されるワークCに対して、三軸移動手段65により繰り出し位置を制御しつつワークCに巻線する線材Wを繰り出すよう機能し、ワイヤクランプ62は線材Wの巻線作動中は線材Wの繰り出し移動を許容するよう開放され、巻線作動が終了された段階で線材Wをクランプして線材Wの繰り出し移動を停止させる。
【0043】
また、前記カッタ手段8は、主スピンドル機構4のヘッド40に固定された支柱81および横材82を介して支持された昇降機構83と、昇降機構83に支持させて設けたカッタ80とを備え、線材Wの巻線終了毎に、昇降手段83を作動させてカッタ80を作動位置に移動させて、巻線が終了したワークCの線材Wの巻端と線材繰り出し部60との間の線材Wを、カッタ80により切断するよう機能する。
【0044】
前記インデックス機構9は、支持台7の例えば下方に配置したインデックスモータ90と、インデックスモータ90から上方に突出したモータ軸に固定された上下シリンダ91と、上下シリンダ91の上端に固定したインデックス軸92とを備える。前記インデックス軸92は電機子コアCの軸穴C3に対して回り止めキー93を介して一体回転するよう結合可能としている。このインデックス機構9は、上下シリンダ91を昇降させて、インデックス軸92を下降させた待機位置とインデックス軸92を上昇させた作動位置とを備える。また、インデックスモータ90によりインデックス軸92を割出し回転させるよう機能する。
【0045】
したがって、一つのティース部C1(巻軸)への線材Wの巻装が完了する毎に、主スピンドル機構4のチャック機構3に保持された電機子コアCに向かって、上下シリンダ91により待機位置から作動位置にインデックス軸92を上昇させる。この場合には、図示しないコントローラに記憶されている電機子コアCの軸穴C3のキー溝の回転位置に、インデックス軸92の回り止めキー93の回転位置をインデックスモータ90により位置合わせしつつ、作動位置においてインデックス軸92を電機子コアCの軸穴C3に嵌合させる。そして、前記チャック機構3が開かれた状態において、スピンドル巻線装置1により次に線材Wを巻装するティース部C1の先端が副スピンドル軸92の先端に対向する回転位置へ電機子コアCをインデックスモータ90により割出し回転させる。そして、再びチャック機構3による電機子コアCの把持が確認された段階で、インデックス軸92を上下シリンダ91により待機位置に下降させるよう作動する。
【0046】
以上の構成のワイヤガイド付き巻線装置1による巻線方法について以下に説明する。
【0047】
前記スピンドル巻線装置1の待機状態においては、副スピンドル機構5は移動板56により主スピンドル機構4から隔たった待機位置にある。各フォーマ11および対向フォーマ11Aは、コア保持具としてのチャック機構3(主スピンドル機構4)および副スピンドル軸53の先端(副スピンドル機構5)より各ヘッド側に後退した待機位置に位置する。線材供給手段6の線材繰り出し部60も繰り出す線材Wをワイヤクランプ62によりクランプして保持した状態で主副スピンドル機構4、5の先端から離脱した待機位置に位置している。また、インデックス機構9のインデックス軸92も下降した待機位置にある。
【0048】
先ず、チャック開閉用のシリンダ34を作動させてチャック開閉棒33を前進作動させ、先端のカム35を傾斜カム32間に押し入れてチャック爪30を半径方向に押し拡げて主スピンドル機構4のチャック機構3を開放する。次いで、図示しない部品供給ロボット等のワーク供給手段により、電機子コアCをその回転位置を位置決めした状態で、チャック爪30の間に電機子コアCの把持部分を挿入し、シリンダ34によりチャック開閉棒33を待機位置に後退させ、スプリング31によりチャック爪30を閉じてチャック爪30により電機子コアCを把持させる。
【0049】
なお、ワークとしての電機子コアCをインデックス機構9の待機位置のインデックス軸92に先ず保持させ、次いで、インデックス軸92を上昇させ、作動位置の手前でチャック機構3とティース部C1との干渉を避けるために、所定角度だけ電機子コアCを回転させ、チャック機構3(主スピンドル軸43)と同じ作動位置に達した段階で電機子コアCを所期の回転位置に復帰させ、前記と同様に電機子コアCをチャック機構3により保持させるようにしてもよい。保持された電機子コアCのティース部C1は、予め巻装される線材Wとの絶縁のために絶縁体等により被覆された状態とされており、主スピンドル軸43の軸方向に巻軸としてのティース部C1が延在され、ティース部C1先端が副スピンドル軸53の先端と対向した状態となる。
【0050】
次いで、副スピンドル機構5をスピンドル移動モータ57を駆動して、移動板56により主スピンドル機構4に向けて前進させ、副スピンドル軸53の先端の突起59を電機子コアCのティース部C1の先端に係合させて停止させ、ワークCのセットを終了する。なお、インデックス機構9によりワークとしての電機子コアCを作動位置に上昇させた場合には、この時点でインデックス機構9のインデックス軸92を待機位置に下降させる。
【0051】
次に、線材供給手段6の線材繰り出し部60を三軸移動手段65により移動させて、線材繰り出し部60のワイヤクランプ62により保持され線材繰り出し部60から延びている線材Wの先端を、巻軸としてのティース部C1の巻き始め位置に向け移動させる。そして、巻軸としてのティース部C1の近傍に設けた、図示しない線材始端保持部に線材W端を挟持させて巻始めの状態とし、ワイヤクランプ62を開放して線材Wに(図示しないテンション機構により)テンションをかけて繰り出しつつ三軸移動手段65を作動させて巻き始めの軸方向位置に移動する。
【0052】
次に、主スピンドル機構4側の各ガイド10A(対向フォーマ11A)を各可動軸手段23A,24A、各カムフォロア21A、22A、各カム円板17A,18A、各移動軸12A,16Aを介して先端の回転移動板13Aおよび対向フォーマ11Aを前進させて、巻軸としてのティース部C1の巻初め端部(ティース部C1の先端側)に移動させる。即ち、主スピンドル機構4の各対向フォーマ11Aの先端は、ティース部C1の先端側の巻端に対して線材Wの一本分だけ隔たった位置に位置決めされる。
【0053】
また、副スピンドル機構5側の各フォーマ11を各可動軸手段23,24、各カムフォロア21、22、各カム円板17,18、各移動軸12,16を介して先端の回転移動板13およびフォーマ11を前進させて、巻軸としてのティース部C1の巻初め端部(ティース部C1の先端側)に移動させる。即ち、副スピンドル機構5の各フォーマ11の先端は、ティース部C1の先端側の巻端位置に位置決めされる。
【0054】
フォーマ11および対向フォーマ11Aの半径方向位置は、前記した上下カム円板18の前後カム円板17に対する相対軸方向位置を調整することにより、その先端がティース部C1の端面に接触するか近接する位置に位置決めされる。フォーマ11と対向フォーマ11Aとの間には、図4(A)に示すように、巻軸方向に線材Wの一ターン分の隙間を設ける。
【0055】
なお、図4では、ティース部C1の片側に配置されたガイド10(10A)のみが図示されており、ティース部C1の他方(図中下方)にも、同様の構成により、ガイド10(10A)が配置されるものであるが、以下では、図示されたものについてのみ説明するが、他方のガイド10(10A)も同様に移動される。
【0056】
前記状態において、両側のスピンドルモータ45,55を同期回転させて、電機子コアCを回転させる。線材繰り出し部60から繰り出される線材Wは、副スピンドル機構5側のフォーマ11の先端と主スピンドル機構4の対向フォーマ11Aとの間に設けられた隙間に案内されて、ティース部C1の先端側外周に巻き付けられる。
【0057】
線材Wのティース部C1への一巻きが終了した段階で、対向フォーマ11Aを、図4(A)の破線で示すように、ティース部C1の根元側へ線材Wの1ピッチ分だけガイド移動機構20Aにより移動させると共に、フォーマ11を、破線で示すように、半径方向外側へガイド移動機構20により移動させ且つ既巻線の上に被さるようにティース部C1の根元側に向けて線材Wの1ピッチ分だけガイド移動機構20により移動させる。そして、フォーマ11と対向フォーマ11Aとの間に設けた線材Wの一ターン分の隙間に線材Wを巻線して2巻目を巻線する。
【0058】
そして、ティース部C1への1巻きを終了する毎(ティース部C1の一回転毎)に、主スピンドル機構4および副スピンドル機構5のガイド移動機構20,20Aにより、フォーマ11と対向フォーマ11Aとを、隙間を保持しつつ線材Wの一ピッチずつ電機子コアCの中心に向けてティース部C1(巻軸)と同軸方向に移動させる。
【0059】
こうして、線材Wに一ターン分の線送りをかけて、フォーマ11と対向フォーマ11Aとにより線材Wを案内することにより、図4(B)に示すように、ティース部C1には、先端側に巻付けられた線材Wの隣に、次に巻付けられる線材Wが側面同士を接触させた状態で、順次、整列巻線を実施することができる。
【0060】
そして、ティース部C1の根元側への巻き終り時においては、図4(C)の破線に示すように、1層目の最後の一巻を終了した段階で、図4(C)の実線に示すように、フォーマ11を半ピッチ(線材Wの径の半分)だけティース部C1の先端側へ後退させると共に、対向フォーマ11Aを、その先端が前記最後の一巻きされた線材Wの上に被さるように、半径方向外側へガイド移動手段20Aにより移動させ且つティース部C1の根元側に向けて線材Wの半ピッチ分だけガイド移動機構20Aにより移動させる。この状態でフォーマ11と対向フォーマ11Aとの間に設けた線材Wの一ターン分の隙間に線材Wを巻線して2層目の一巻目を巻線する。
【0061】
次いで、図4(D)に示すように、フォーマ11をティース部C1の先端側へ線材Wの1ピッチ分だけガイド移動機構20により移動させると共に、対向フォーマ11Aを、半径方向外側へガイド移動機構20Aにより移動させ且つ既巻線Wの上に被さるようにティース部C1の先端側に向けて線材Wの1ピッチ分だけガイド移動機構20Aにより移動させる。そして、フォーマ11と対向フォーマ11Aとの間に設けた線材Wの一ターン分の隙間に線材Wを巻線して2巻目を巻線する。
【0062】
そして、ティース部C1への1巻きを終了する毎(ティース部C1の一回転毎)に、主スピンドル機構4および副スピンドル機構5のガイド移動機構20,20Aにより、フォーマ11と対向フォーマ11Aとを、隙間を保持しつつ線材Wの一ピッチずつ電機子コアCの外周側に向けてティース部C1(巻軸)と同軸方向に移動させる。
【0063】
こうして、線材Wに一ターン分の線送りをかけて、フォーマ11と対向フォーマ11Aとにより線材Wを案内することにより、ティース部C1には、根元側に巻付けられた線材Wの隣に、次に巻付けられる線材Wが側面同士を接触させた状態で、順次、2層目の整列巻線を実施することができる。
【0064】
そして、2層目のティース部C1の先端側への巻き終り時においては、図4(E)の破線に示すように、2層目の最後の一巻を終了した段階で、図4(E)の実線に示すように、対向フォーマ11Aを半ピッチ(線材Wの径の半分)だけティース部C1の根元側へ後退させると共に、フォーマ11を、その先端が前記最後の一巻きされた線材Wの上に被さるように、半径方向外側へガイド移動機構20により移動させ且つティース部C1の根元側に向けて線材Wの半ピッチ分だけガイド移動機構20により移動させる。この状態でフォーマ11と対向フォーマ11Aとの間に設けた線材Wの一ターン分の隙間に線材Wを巻線して3層目の一巻目を巻線する。
【0065】
次いで、図4(F)に示すように、対向フォーマ11Aをティース部C1の先端側へ線材Wの1ピッチ分だけガイド移動機構20Aにより移動させると共に、フォーマ11を、半径方向外側へガイド移動機構20により移動させ且つ既巻線(3層目の一巻線)の上に被さるようにティース部C1の先端側に向けて線材Wの1ピッチ分だけガイド移動機構20により移動させる。そして、フォーマ11と対向フォーマ11Aとの間に設けた線材Wの一ターン分の隙間に線材Wを巻線して3層目の2巻目を巻線する。
【0066】
そして、ティース部C1への1巻きを終了する毎(ティース部C1の一回転毎)に、主スピンドル機構4および副スピンドル機構5のガイド移動機構20,20Aにより、フォーマ11と対向フォーマ11Aとを、隙間を保持しつつ線材Wの一ピッチずつ電機子コアCの外周側に向けてティース部C1(巻軸)と同軸方向に移動させる。
【0067】
こうして、線材Wに一ターン分の線送りをかけて、フォーマ11と対向フォーマ11Aとにより線材Wを案内することにより、ティース部C1には、根元側に巻付けられた線材Wの隣に、次に巻付けられる線材Wが側面同士を接触させた状態で、順次、整列巻線を実施することができる。
【0068】
以上の動作を繰り返すことにより、所定の巻層分に線材Wがティース部C1に巻回される。そして巻線が終了すると、主副スピンドル機構4、5の回転が停止され、その巻き端が電機子コアCの図示しない端子部へ絡げられ、主副スピンドル機構4、5の各フォーマ11および対向フォーマ11Aは待機位置に後退させる。
【0069】
この間、線材供給手段6の先端のから繰り出される線材Wには所望とするテンションを付与して、端子への絡げ中に線材Wが緩まないようにする。そして、線材繰り出し部60に設けたワイヤクランプ62により線材Wの繰り出しが停止され、線材繰り出し部60も三軸移動機構65により初期位置に復帰され、一つのティース部C1への巻線が終了される。
【0070】
以上のように、一つのティース部C1への巻線が終了されると、インデックス機構9のインデックス軸92を上下シリンダ91により上昇させて、電機子コアCの中心部の嵌合穴C3に嵌合させた状態で、副スピンドル機構5を一時的に後退させ、主スピンドル機構4のチャック機構3を開放し、インデックスモータ90により電機子コアCを1ティース分だけ回転させて、新たなティース部C1をフォーマ11に対向させ、再び、チャック機構3により、電機子コアCをチャックし、副スピンドル機構5を前進させて電機子コアCに係合させ、インデックス機構9のインデックス軸92を上下シリンダ91により待機位置に下降させて離間させ、新たなティース部C1に前記した巻線要領により巻線を再開する。
【0071】
このようにして、すべてのティース部C1に巻線を終えたら、線材Wをクランプ62に保持し、線材繰り出し部60のクランプ62から電機子コアC間の線材Wを、昇降機構83により下降されるカッタ手段8のカッタ80により切断し、カッタ80を待機位置へ復帰させる。同時に、副スピンドル機構5を後退させるとともに、主スピンドル機構4の保持冶具のチャック機構3を開放して、巻線されたワークを取り外して、巻線を終了させる。
【0072】
以上のように、本実施形態のスピンドル巻線装置1においては、ワーク側を回転させることで、質量の大きいフライヤ等の回転部材をなくすることができ、巻線作動時に振動が生じにくい。しかも、ワーク側をフォーマ11(対向フォーマ11A)と共に回転させ、このフォーマ11(更には、対向フォーマ11A)の移動機構20(20A)を、主副スピンドル機構4,5と共に回転し且つ各可動軸手段23,24(23A,24A)および各カムフォロア21,22(21A,22A)によりスピンドル軸方向に位置制御される各カム円板17,18(17A,18A)、各移動軸12,16(12A,16A)等よりなるガイド移動機構20(20A)として、コンパクトな構成としたことにより、その回転径を小さくでき、慣性力を小さくして振動を抑えたので、フライヤ方式に比べ、高速に回転させることができるので、巻線タクトを短縮できる特徴がある。
【0073】
また、ワーク側をフォーマ11(更には、対向フォーマ11A)と共に回転させ、線材供給手段6から回転するワークに供給するようにしたので、線材Wの引き回し経路が簡略化され、繰出された線材Wに加わるテンションの変動を抑えることができ、ワークに確実に整列巻きすることができる。
【0074】
しかも、ワーク側をフォーマ11(更には、対向フォーマ11A)と共に回転させ、線材供給手段6から回転するワークに供給するようにしたので、線材Wには捩れを生ずることがなく、線材Wが太く剛性が高くても、ワークに確実に整列巻きすることができる。このことは、平角線にも対応でき、巻線の占積率を向上させて、ワークの性能を向上させることができる。
【0075】
なお、上記実施形態において、ガイド10,10Aとして、ワークの両端面にフォーマ11および対向フォーマ11Aを用いるものについて説明したが、ワークの形状によって、フォーマ(ガイド)の形状を変えたり、その数を増やして、ガイドによって線材をより細かく案内して、正確な巻線軌跡の巻線を行うことも可能である。また、ガイドの増加は、図6に示すように、ガイド軸12,16およびカム円板17,18の増加により容易であるので、そのような要求に容易にこたえることができる。
【0076】
また、ワークの保持手段として、主スピンドル機構4にチャック機構3を設けたものについて説明したが、図示しないが、副スピンドル機構5のスピンドル軸53の先端にもワークと係合するチャック機構を設け、ワークを両側からチャックするようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、線材Wとして、剛性の高い太線に対して好適であると説明したが、図示はしないが、線材の軌跡が線材繰出し手段、例えばノズルの移動軌跡通りにならない、細線等の場合にも有効に整列巻線することができる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態のスピンドル巻線装置1においては、ワークCを支持して回転する主スピンドル機構4と、前記ワークCの少なくとも一側面に近接して主スピンドル機構4に配置され、主スピンドル機構4のスピンドル軸方向およびワークCに対して接近離反する半径方向に移動可能に支持されて前記ワークCと共に回転し、前記線材供給機構6から供給される線材WをワークCの巻線位置へ案内するガイド10Aと、を備えるため、ワークC側を回転させることで、質量の大きいフライヤ等の回転部材をなくすることができ、巻線作動時に振動が生じにくい。しかも、ワークC側をガイド10Aと共に回転させるため、線材Wに捩じり力が作用することがなく、また、線材供給機構6からワークCまでの距離を短くでき、太い線材を巻線する場合においても、ガイド10A上を線材Wが滑ってワークCに巻線される過程で、線材Wのテンション(張力)が変動し難く、確実な整列巻きを実施できる。さらに、モータコイル、その他の各種コイルの性能向上のために、線材Wの占積率を上げるように、巻装する線材Wに四角断面の平角線が採用される場合においても、線材Wが捩れて、場合によっては裏返し状態に巻線されることがなく、確実に整列させて巻線することができる。
【0079】
また、ワークCを支持して回転する主スピンドル機構4と、主スピンドル機構4に保持された前記ワークCを挟んで同軸上に対向配置されて同期回転する副スピンドル機構5とを設け、これら主スピンドル機構4および副スピンドル機構5の少なくとも一方に、前記ワークCの少なくとも一側面に近接して、当該スピンドル機構4(5)のスピンドル軸方向およびワークCに対して接近離反する半径方向に移動可能に支持されて前記ワークCと共に回転し、前記線材供給機構6から供給される線材WをワークCの巻線位置へ案内するガイド10(10A)を配置し、当該ガイド10(10A)の前記ワークCに対する軸方向位置および半径方向位置を調整して、前記線材WのワークCへの巻線位置を調整するガイド移動機構20(20A)を備えることにより、ガイド10(10A)を、主スピンドル機構4に設ける場合には巻装する線材Wを主スピンドル機構4側から、また、副スピンドル機構5に設ける場合には巻装する線材Wを副スピンドル機構5側から、さらに、主副スピンドル機構4,5の両方に設ける場合には巻装する線材Wを軸方向両側から、夫々ガイドすることができ、ワークCの形状に応じて様々な線材案内ガイド方法を選択することができ、ワーク形状に対応して、より一層正確に複数層に渡って整列巻を実施することができる。
【0080】
また、ガイド移動機構20(20A)として、前記ガイド10(10A)の軸方向位置調整用および半径方向位置調整用に夫々、前記ガイド10(10A)に連結されてスピンドル軸方向に移動可能であり、スピンドル機構5(4)に回転するガイド軸12,16と、前記ガイド軸12,16に連結されてスピンドル機構5(4)の外周に配置され、スピンドル機構5(4)とともに回転する円環カム(カム円板17,18)と、前記円環カム(カム円板17,18)の外周部に対して、円環カム(カム円板17,18)の回転を許容しつつスピンドル軸方向には伴に移動可能に係合するカムフォロア21,22と、前記カムフォロア21,22のスピンドル軸方向位置を調整する可動軸手段23,24と、を備えることにより、回転するスピンドル機構5(4)から円環カム(カム円板17,18)とカムフォロア21,22との係合により、スピンドル機構5(4)外に展開させて配置することができ、スピンドル機構5(4)をコンパクトな構成とでき、その回転慣性力を小さくして振動を抑えて、フライヤ方式に比べ、高速に回転させることができるので、巻線タクトを短縮させることができる。また、ガイド10(10A)の位置制御をスピンドル機構5(4)の外部から制御することが容易となる。しかも、円環カム(カム円板17,18)およびカムフォロア21,22の数量を増加させることも容易であるため、線材Wを巻線位置に案内するガイド10,10Aの数を増加させて、正確な巻線軌跡により整列巻線を行うことができる。
【0081】
しかも、ガイド移動機構20(20A)の軸方向位置調整用のガイド軸12(12A)は、そのスピンドル軸方向の移動が直接前記ガイド10(10A)に伝達されるよう前記ガイド10(10A)に連結され、前記ガイド移動機構20(20A)の半径方向位置調整用のガイド軸16(16A)は、そのスピンドル軸方向の移動を前記半径方向移動に変換する移動方向変換手段(ベルクランク15(15A))を介して前記ガイド10(10A)に連結されていることにより、ガイド10(10A)の巻軸方向の位置制御に加えてガイド10(10A)の半径方向の位置制御も、スピンドル軸方向に延びたガイド軸16(16A)、円環カム(カム円板18(18A))およびカムフォロア22(22A)によるガイド移動機構20(20A)により、巻軸方向の位置制御と同様に、スピンドル機構5(4)の外部から制御することができ、ガイド10(10A)の位置制御が容易となる。
【0082】
前記可動軸手段23,24として、前記カムフォロア21,22に連結した移動体73と、前記移動体73にねじ係合するねじ体71と、前記ねじ体71を回転させるモータ70と、からなり、モータ70の回転位置を調整することにより、カムフォロア21,22のスピンドル軸方向位置を調整することにより、多数のガイド10,10Aを用いてワークCに巻線する場合においても、多数の円環カム(カム円板17,18)に対しても円周方向に干渉させることなく多数の可動軸手段23,24を配列することが容易である。
【0083】
前記移動方向変換手段(ベルクランク15)は、一端がガイド軸16,16Aに連結され、他端がガイド10,10Aに連結されたベルクランク機構15,15Aで構成されていることにより、ガイド軸16,16Aの軸方向移動をガイド10,10Aの半径方向移動に容易に変換可能であり、その際に、ベルクランク機構15,15Aと前記ガイド10,10Aおよびガイド軸16,16Aとの連結部に、一方を長穴に形成し、他方をアイドラローラを回転可能に配置し、このアイドラローラを前記長穴内に転動可能に嵌合させて夫々連結することにより、ガイド軸16,16Aの移動が円滑にガイド10,10Aの半径方向の移動に変換させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は回転電機の電機子コアに対する効果的な多層巻線方法および巻線装置を提供するが、回転電機の電機子コアに限定されることなく、例えば、回転電機のステータの分割コアやその他のボビン等への巻線にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態を示すスピンドル巻線装置の概略を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態を示すスピンドル巻線装置の要部を拡大して示す斜視図。
【図3】同じく主副スピンドル機構、ガイドおよびガイド移動機構の要部を説明する説明図。
【図4】ワークとしての電機子コアのティース部への巻線要領(A)〜(E)を示す部分断面図。
【図5】巻線がなされるワークを説明する斜視図。
【図6】スピンドル機構へ設けるガイド移動機構の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0086】
W 線材
1 スピンドル巻線装置
3 チャック機構
4 主スピンドル機構
5 副スピンドル機構
6 線材供給手段
7 支持台
8 カッタ手段
9 インデックス機構
10,10A ガイド
11 フォーマ
11A 対向フォーマ
20,20A ガイド移動機構
12,12A 軸方向移動軸
13,13A 回転移動板
14,14A リニアガイド
15,15A ベルクランク
16,16A 半径方向移動軸
17,18、17A,18A カム円板
21,22、21A,22A カムフォロア
23,24,23A,24A 可動軸手段
43,53 スピンドル軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持して回転するスピンドル機構と、
前記スピンドル機構とともに回転するワークに巻線用の線材を供給する機構と、
前記ワークの少なくとも一側面に近接してスピンドル機構に配置され、スピンドル機構のスピンドル軸方向およびワークに対して接近離反する半径方向に移動可能に支持されて前記ワークと共に回転し、前記線材供給機構から供給される線材をワークの巻線位置へ案内するガイドと、
前記ガイドの前記ワークに対する軸方向位置および半径方向位置を調整して、前記線材のワークへの巻線位置を調整するガイド移動機構と、を備えることを特徴とするスピンドル巻線装置。
【請求項2】
ワークを支持して回転する主スピンドル機構と、
前記主スピンドル機構に保持された前記ワークを挟んで同軸上に対向配置されて同期回転する副スピンドル機構と、
前記スピンドル機構とともに回転するワークに巻線用の線材を供給する機構と、
前記ワークの少なくとも一側面に近接して主スピンドル機構および副スピンドル機構の少なくとも一方に配置され、当該スピンドル機構のスピンドル軸方向およびワークに対して接近離反する半径方向に移動可能に支持されて前記ワークと共に回転し、前記線材供給機構から供給される線材をワークの巻線位置へ案内するガイドと、
前記ガイドの前記ワークに対する軸方向位置および半径方向位置を調整して、前記線材のワークへの巻線位置を調整するガイド移動機構と、を備えることを特徴とするスピンドル巻線装置。
【請求項3】
前記ガイド移動機構は、前記ガイドの軸方向位置調整用および半径方向位置調整用に夫々、
前記ガイドに連結されてスピンドル軸方向に移動可能であり、当該スピンドル機構とともに回転するガイド軸と、
前記ガイド軸に連結されて各スピンドル機構の外周に配置され、当該スピンドル機構とともに回転する円環カムと、
前記円環カムの外周部に対して、円環カムの回転を許容しつつスピンドル軸方向には伴に移動可能に係合するカムフォロアと、
前記カムフォロアのスピンドル軸方向位置を調整する可動軸手段と、を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピンドル巻線装置。
【請求項4】
前記ガイド移動機構の軸方向位置調整用のガイド軸は、そのスピンドル軸方向の移動が直接前記ガイドに伝達されるよう前記ガイドに連結され、
前記各ガイド移動機構の半径方向位置調整用のガイド軸は、そのスピンドル軸方向の移動を前記半径方向移動に変換する移動方向変換手段を介して前記ガイドに連結されていることを特徴とする請求項3に記載のスピンドル巻線装置。
【請求項5】
前記各可動軸手段は、前記カムフォロアに連結した移動体と、前記移動体にねじ係合するねじ体と、前記ねじ体を回転させるモータと、からなり、前記モータの回転位置を調整することにより、カムフォロアのスピンドル軸方向位置を調整することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のスピンドル巻線装置。
【請求項6】
前記各移動方向変換手段は、一端がガイド軸に連結され、他端がガイドに連結されたベルクランク機構で構成されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のスピンドル巻線装置。
【請求項7】
前記各ベルクランク機構と前記各ガイドおよび各ガイド軸とは、一方に長穴を形成し、他方にアイドラローラを回転可能に配置し、アイドラローラを前記長穴内に転動可能に嵌合させて、夫々連結されていることを特徴とする請求項6に記載のスピンドル巻線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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