説明

スピーカーの取り付け金具

【課題】スピーカーの取り付け金具が、本体ケースの部品などのレイアウトを守りつつ、スピーカーに均一な押圧を加えられるようにする。
【解決手段】 取り付け金具20は、本体ケース30に開閉自在に支持される支点部22と、本体ケース30に設置したスピーカー2のマグネット3の周りに接する加圧部21及び、本体ケース30にネジ止めされる固定部23で構成され、本体ケース30に支点部22を支持させて、設置したスピーカー2に加圧部21をセットし、固定部23を本体ケース30にネジ止めすることで、「てこ(第2種)」の原理でスピーカー2に押圧を加える。そのため、支点部22、加圧部21、固定部23は、一直線上にある必要はなく、この位置関係を保持すれば、均一な押圧を加えることができるので、支点部22及び固定部23を本体ケース30のレイアウトに合わせた位置にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピーカーの取り付け金具に関し、特に、防水用スピーカーの取り付けに適したスピーカーの取り付け金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピーカーの取り付け金具として、例えば、特許文献1に示すものがある。
この取り付け金具1は、図8(a)に示すように、スピーカー2の裏面側でマグネット部3の周囲にリング状に延在して上部から挟み込む加圧部4と、前記加圧部4の両端に一対に突出して筐体(ケース)8にネジ止めする固定部5とで構成されている。また、この金具1は、固定部5間を図8(a)の鎖線のように、2分するV字形の曲げ加工部6をリング状の加圧部4の表面に形成するとともに、前記曲げ加工部6を中心とする加圧部4の両側に対称となるように絞り加工により複数の突起状に突出した接点加圧部7を図8(b)のように設けた構成となっている。
【0003】
このように構成される取り付け金具1では、V字状の曲げ加工部6による弾性と複数の接点加圧部7とにより、スピーカー2に応力が一点集中せず均一に押圧できる。また、加圧部4からの応力が集中してスピーカー2を変形してしまう危険性を防止することができる。さらに、図8(a)、(b)のように、筐体8とスピーカー2の間に防水用のパッキン9を介在させた場合では、パッキン9を潰して密着させる圧力を十分に与えることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−186727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の取り付け金具では、押圧を均一とするため、加圧部に突起状の接点加圧部を形成する。その接点加圧部は、固定部間を2分する加圧部表面の曲げ加工部を中心として左右対称に設けるようにしている。このように、接点加圧部を左右対称に設けなければならないことから、固定部も必然的に加圧部に対して対称に設ける必要があると考えられる。
【0006】
しかしながら、特に、小型の携帯用機器では、筐体内の部品配置などを優先するため、ネジ止め用のボスを設ける箇所に制約を受けることが多い。そのため、固定部を加圧部に対して対称に取り付けることが難しい場合が考えられる。
一方、スピーカーのフレームには、裏面に音抜き孔が形成されていて、音質の点からもこれを回避するように固定部を形成する必要がある。しかしながら、音抜き孔を回避して対称に設けるのは難しい。
このように、二つの制約を回避しなければならないので、使用できる対象が限定される。
また、制約を回避するため、固定部の形状を異なるものにした場合、加圧部の押圧が不均一になり、漏水などを起こすことが考えられる。
【0007】
そこで、この発明の課題は、本体ケースの部品などのレイアウトを守りつつ、スピーカーに均一な押圧を加えられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明では、本体ケースに設置したスピーカー裏面のマグネットの周り全部あるいは一部を除いて接するリングまたはC型形状の加圧部と、前記加圧部の一方の側に形成され、本体ケースに開閉自在に支持される支点部と、前記支点部と対する他方の側に形成され、本体ケースにネジ止めされる固定部とからなり、前記加圧部に折り曲げ部分を形成し、前記固定部にスピーカーから離反する向きの力が作用するようにし、一方、前記固定部が加圧部の周に形成された複数のアーム状の突片で構成され、その突片で構成される各固定部の先端と、当該固定部に直近する前記加圧部の折り曲げ部との長さが同じである構成を採用したのである。
【0009】
このような構成を採用することにより、取り付け金具は、本体ケースに支点部を支持させて、設置したスピーカーのマグネットに加圧部をセットし、固定部を本体ケースにネジ止めする。すると、支点部→支点、加圧部→作用点、固定部→力点と見なすことができるため、いわゆる「てこ(第2種)」の原理でスピーカーに押圧を加えることができる。このとき、支点部、加圧部、固定部は、一直線上にある必要はなく、この位置関係を保持すれば、押圧を加えることができる。
そのため、各固定部のアーム状の突片は、同じ形状としなくても、折り曲げ部からの長さを同じにすることで押圧力を均一にすることができる。したがって、アームの形状を本体ケースのレイアウトやスピーカーフレームの音抜き孔の配置に容易に対応させることができる。
その際、スピーカーへの押圧は、加圧部に形成する折り曲げ部分の位置及び曲げ角度を変えることで調整することもできる。また、加圧部の形状をC型とすることにより、スピーカー裏面に設けられる端子を避けて押圧を加えるようにもできる。
また、
【0010】
このとき、上記支点部が加圧部の周に形成されたアーム状の複数の突片で形成されている構成を採用することができる。
【0011】
このような構成を採用することにより、アーム状の複数の突片で形成された支点部は、固定部と加圧部を四方から支持して安定させることができる。また、この際、加圧部に発生する押圧は、「てこ」の原理から支点部と加圧部及び支点部と固定部の長さに応じたものとなる。また、このとき、発生する押圧は、各アーム状の突片ごとに形成される支点部、加圧部、固定部によって加えられる押圧をベクトル合成したものとなる。その結果、アームの形状を本体ケースのレイアウトやスピーカーフレームの音抜き孔の配置に柔軟に対応させることができる。
【0012】
また、このとき、上記固定部が本体ケースにネジ止めされる際のスピーカーに対する高さ方向の位置を調整するようにした構成を採用することができる。
【0013】
このような構成を採用することにより、高さを調整し、加圧部の折り曲げ部分の角度を変えることで、バネ圧を調整して加圧部の押圧が均一になるようにできる。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、上記のように構成することにより、本体ケースのレイアウトの制約を守りつつ、スピーカーを均一に押さえつけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)実施形態の正面図、(b)実施形態の断面図
【図2】実施形態の作用説明図
【図3】実施形態の使用状態を示す斜視図
【図4】図3の断面図
【図5】実施形態の作用説明図
【図6】実施形態の作用説明図
【図7】(a)実施例1の作用説明図、(b)実施例1の作用説明図
【図8】(a)従来例の分解斜視図、(b)従来例の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、この形態の取り付け金具20は、加圧部21、支点部22、固定部23で構成されており、加圧部21の周囲にアーム状の複数の突片24を設けた形状となっている。
【0017】
すなわち、加圧部21は、この形態では、C型に形成して、後述のように、本体ケース30に設置したスピーカー2裏面のマグネット部3の周囲に接するようになっている。
なお、ここでは、加圧部21が、スピーカー端子31に接しないようにするため、開口を形成したC型形状としたものであるが、この形状に限定されるものではない。スピーカー端子31を考慮しなくても良い場合はリング状にするなど、その形状は使用するスピーカー2に合わせることができる。
【0018】
支点部22は、図1(a)のように、ここでは、加圧部21のC型の開口両端から形成された2本の突片24で構成したものである。この突片24は、開口端から一旦外向きに伸びるように形成したのち、平行に形成して突片24間の間隔を広げるようにしてある。また、この支点部22の突片24の先端は、図1(b)に示すように、段25を設けることにより、後述のように、本体ケース30に開閉自在に支持されるようにしてある。
【0019】
固定部23は、支点部22と対する加圧部21の他方の側に形成された2本の突片24で構成したもので、支点部22と本体ケース30の部品レイアウトに合わせる形状に折り曲げられている。この折り曲げられた固定部23の先端部に、貫通孔を設けてネジ止めするようになっている。
この折り曲げられた各固定部23は、図1(a)の矢印で示すように、2本の支点部22と、それぞれ対向するようになっており、各々の固定部23と支点部22が、それぞれ、「てこ(第2種)」の関係を有するようになっている。
【0020】
さらに、加圧部21には、折り曲げ部分26が設けてあって、支点部22の段25を、後述のように、本体ケース30のスリット33に挿入すると、図1(b)のように、固定部23が持ち上がり、固定部23に、スピーカー2から離反する向きの力が作用するようにしてある。そのため、固定部23端をネジ止めすると、加圧部21にバネによる押圧を発生させることができる。この押圧は、折り曲げ部分26の折り曲げの程度によって調整可能であることは明らかである。
【0021】
このように構成される取り付け金具20は、図2のように、例えば防水タイプの携帯無線機など、携帯機器のスピーカー2の取り付けに使用される。
すなわち、本体ケース30に防水パッキン9を介してスピーカー2を設置したのち、スピーカー2の上に取り付ける。
この取り付けは、図3に示すように、取り付け金具20の加圧部4の折り曲げ部分(山側)26がスピーカー2の側となるようにして、本体ケース30の前方に形成された取り付け用の2箇所のスリット33に、それぞれ、取り付け金具20の支点部22を挿入する。このとき、図4で示すように、支点部22の先端の段25がスリット33の上端に当たり挿入がストップする。そのため、前記上端に当たった段25を開閉の軸にして取り付け金具20をスピーカー2に被せ(図4の矢印のように回動して閉じる)、固定部23を本体ケース30のボス34にネジ止めする。
すると、取り付け金具20は、図4のように、スピーカー2に装着される。
【0022】
この装着状態における支点部22、加圧部21、固定部23が順に並んだ位置関係と、前記各部21、22、23に作用する力の向きは、図5のようになる。この位置関係は、支点、作用点、力点が順に並んだ、いわゆる「てこ(第2種)」の位置関係と同じと見なすことができる。
この装着状態では、支点部22の先端の段25から折り曲げ部26までの部分が支点を、2つの折り曲げ部26に挟まれる部分が作用点を、固定部23が力点をなす。このとき、作用点に作用する力は、折り曲げ部26と固定部23の先端との長さに応じる。
したがって、この取り付け金具20では、各固定部23の先端と固定部23の直近の折り曲げ部26との間の長さ(すなわち、図3では、鎖線aで示すような取り付け金具20の形状に沿った長さ)を同じにすることで、2つの力点から生じる力を均一にして、スピーカー2を押圧する力を均一にしている。
このとき、支点部22、加圧部21、固定部23は、一直線上にある必要はなく、支点部22、加圧部21、固定部23の位置関係を保持できればよい。
【0023】
また、このとき、アーム状に形成した複数の支点部22と固定部23は、加圧部21の一方の側と他方の側に分けて設けたことにより、支点部22、加圧部21、固定部23の位置関係を保持することができ、各支点部22とそれぞれの固定部23との間の押圧は、先に述べたように、支点部22と加圧部21及び支点部22と固定部23の長さに応じたものとなる。
【0024】
このとき、加圧部21に発生する押圧は、各アーム状の突片24によって形成される支点部22、加圧部21、固定部23によって加えられる押圧をベクトル合成したものとなる。
【0025】
そのため、例えば、図6の破線に示すように、支点部22から固定部23のネジ止めされる点までの長さを略同じにすれば、加圧部21から固定部23のネジ止めされる点までの突片24の形状が異なっていても両固定部23からの押圧を同じにできるのである。
【0026】
したがって、図3に示すように、固定部23を取り付ける本体ケース30のボス34の位置を前記ケース8のレイアウトに合わせたり、スピーカー2の音抜き孔36を避けたり柔軟に変更できる。
【0027】
その際、押圧は、加圧部21の折り曲げ部分26の折り曲げ程度を変えることでも調整できるようにしてあるので、均一な押圧を容易にスピーカー2に加えられる。
【0028】
また、この形態では、アーム状の複数の突片24で形成された支点部22と固定部23により加圧部21を四方から支持するので、スピーカー2を安定して支持できる。
【0029】
このように、本体ケース30のレイアウトの制約を守りつつ、スピーカー2を均一に押さえつけることができるため、パッキンの密閉度を高めて防水効果を向上させることができる。
なお、この形態では、支点部22と固定部23を2枚ずつの突片24で構成したが、支点部22と固定部23は2枚に限定されるものではない。例えば、スピーカー2の形状や重さ、あるいは押圧によってその枚数は最適なものに設定することは当然である。
【実施例1】
【0030】
この実施例1は、ボス34の高さを調整することで、固定部23が本体ケース30にネジ止めされる際のスピーカー2に対する高さ方向の位置を調整するものである。そして、加圧部21の折り曲げ部26の角度を変え、バネによる押圧を調整して加圧部21の押圧が均一になるようにしたものである。
このとき、加圧部21は水平にスピーカー2を押圧することが好ましい。加圧部21を水平にするためには、加圧部21から距離が遠い固定部23は、加圧部21から距離が近い固定部23よりも低く沈めるように折り曲げ部26を曲げてネジ止めするのが好ましく、加圧部21から距離が遠い固定部23を止めるボス24ほど高さを低くすることが好ましい。
【0031】
このような場合、ボス34を形成する際に、ボス34の高さを最適なものとすればよいことは当然である。
ここでは、図7(a)、(b)に示すように、ネジ止めの際に、スペーサー35を使用してボスの高さを調整するようにしたものを示す。この図では、スペーサー35を一枚使用したものを提示しているが、これに限定されるものではない。バネ圧に応じて最適な枚数に設定することは当然である(例えば、ボス34の高さを低めに設定しておけば、バネによる押圧をプラスにもマイナスにも調整できる。)。
【0032】
なお、実施形態及び実施例1では、取り付け金具の材質に、金属を用いたものについて述べたが、これに限定されるものではない。例えば、金属と同じようにバネ性を有するものであれば、樹脂などを用いたものでも良いことは明らかである。
【符号の説明】
【0033】
2 スピーカー
3 マグネット部
20 取り付け金具
21 加圧部
22 支点部
23 固定部
24 突片
25 段
26 折り曲げ部
30 本体ケース
33 スリット
34 ボス
35 スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースに設置したスピーカー裏面のマグネットの周り全部あるいは一部を除いて接するリングまたはC型形状の加圧部と、
前記加圧部の一方の側に形成され、本体ケースに開閉自在に支持される支点部と、
前記支点部と対する他方の側に形成され、本体ケースにネジ止めされる固定部とからなり、
前記加圧部に折り曲げ部分を形成し、前記固定部にスピーカーから離反する向きの力が作用するようにし、
一方、前記固定部が加圧部の周に形成された複数のアーム状の突片で構成され、その突片で構成される各固定部の先端と、当該固定部に直近する前記加圧部の折り曲げ部との長さが同じであることを特徴とするスピーカーの取り付け金具。
【請求項2】
上記支点部が加圧部の周に形成されたアーム状の複数の突片で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカーの取り付け金具。
【請求項3】
上記固定部が本体ケースにネジ止めされる際のスピーカーに対する高さ方向の位置を調整するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のスピーカーの取り付け金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−97361(P2011−97361A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249256(P2009−249256)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】