説明

スピーカー機能付き建築用パネル

【課題】一般の建築用パネルと同様に利用することができ、尚且つ、スピーカーとしても利用することができ、しかも外観及び施工性の優れたスピーカー機能付き建築用パネルを提供する。
【解決手段】基板1に前面に開口する収納孔5を形成し、該収納孔5の前端部5bの開口縁を後方部5aよりも拡大して段4を形成し、該段状に形成された収納孔5の前端部5bに振動板2を収納孔5の開口を閉塞するように配設すると共に該振動板2の前面を基板1の前面と面一とし、振動板2の後面中央に加振器3を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカー機能付き建築用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように部屋の天井の一部にスピーカーを設置する場合がある。
【0003】
ところで、この種のスピーカーは、本来、建物の天井を構成するものではないため、天井にスピーカーが設けられたことが一目でわかり、部屋が統一感のないものとなる。
【0004】
また、特許文献1のスピーカーは、トランスデューサーを設けた振動板の周縁部がフレームで支持され、フレームと振動板との間に段差が形成される。このため、見栄えが悪く、またフレームの内側に振動板を設けたスピーカーであることが容易に認識でき、この点でも部屋は統一感のないものとなる。
【0005】
また、このスピーカーを取り付ける際には、振動板の裏面側に突出するトランスデューサーが他の部材に干渉する恐れがある等、施工性が悪い。また、このスピーカーにおける振動板は周縁部のみがフレームで支持されるものであり、天井を構成する部材としては強度が低い。
【特許文献1】特許第3763848号(35頁、図25)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、一般の建築用パネルと同様に利用することができ、尚且つ、スピーカーとしても利用することができ、しかも外観及び施工性の優れたスピーカー機能付き建築用パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係るスピーカー機能付き建築用パネルは、基板1に前面に開口する収納孔5を形成し、該収納孔5の前端部5bの開口縁を後方部5aよりも拡大して段4を形成し、該段状に形成された収納孔5の前端部5bに振動板2を収納孔5の開口を閉塞するように配設すると共に該振動板2の前面を基板1の前面と面一とし、振動板2の後面中央に加振器3を設けることを特徴とする。
【0008】
また、前記基板1に収納孔5に通じる配線収納溝8を形成することが好ましい。
【0009】
また、前記加振器3を基板1の厚み内に配置することが好ましい。
【0010】
また、前記振動板2を基板1に対して基板1の前面側から着脱自在に取り付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1では、一般のスピーカー機能を備えていない建築用パネルと同様に、基板により主体が構成されるため、強度の高い建築用パネルとして利用することができる。また、加振器により、基板の前面と共に天井面の一部や壁面の一部を構成する振動板の発音部を振動させ、音を発することができ、スピーカーとしても利用することができる。
【0012】
また、振動板の前面を基板の前面と面一とするため、見栄えが良い。また、振動板の前面と基板の前面との間に段差が形成されないため、一般の建築用パネルと略同じ外観となる。また、加振器を収納孔に収納でき、スピーカー機能付き建築用パネルの際には、加振器が他の部材に干渉することを防止でき、施工性が良い。
【0013】
また請求項2では、加振器に接続される配線を配線収納溝に収納することができ、スピーカー機能付き建築用パネルの施工性をさらに向上できる。また、基板の後方に配線を収納するためのスペースを形成する必要がなく、施工の自由度が増す。
【0014】
また請求項3では、加振器を基板の厚み内に配置することができるため、基板を下地の前面に取り付ける場合に、加振器が他の部材にさらに干渉し難くなる。
【0015】
また請求項4では、スピーカー機能付き建築用パネルの設置後において、スピーカー機能付き建築用パネルの室内側から振動板を加振器と共に取り外したり取り付けたりすることができ、この場合、基板を下地から取り外す等する必要がなく、振動板や加振器のメンテナンスを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示す本実施形態の一例のスピーカー機能付き建築用パネルは、建物の桟や下地板等(以下、単に下地と記載する)に取り付けられ、天井材や壁材等の建築用パネルとして利用されるものである。なお、以下ではスピーカー機能付き建築用パネルの設置状態における室内側を前側として説明する。
【0018】
スピーカー機能付き建築用パネルは矩形状(図示例では長方形状)に形成され、建物の下地に取り付けられる基板1と、基板1の前面側に設けられる複数の振動板2と、振動板2の後面に設けられて振動板2を振動させる加振器3とで構成されている。
【0019】
基板1は木質材料で形成され、振動板2と比べて厚みが大きくなっている。
【0020】
長方形状に形成された基板1の長手方向における両側部分には、基板1の前面側に開口する収納孔5が形成されている。各収納孔5は基板1の厚み方向(前後方向)に貫通する孔からなる。
【0021】
各収納孔5は、前端部5bの開口縁を後方部5aよりも拡大して段4を形成した孔からなる。図示例では、後方部5aが円形の孔からなり、前端部5bが後方部5aよりも大径の孔からなる。
【0022】
後方部5aの内周面と前端部5bの内周面は正面視環状の段4を介して接続されている。基板1は収納孔5が形成されていない部分が大部分を占め、強度が高められている。
【0023】
段状に形成された各収納孔5の前端部5bには収納孔5を閉塞するように振動板2が配設され、また、後方部5aには各振動板2の後面に設けられた加振器3が配置される。
【0024】
各振動板2は円形に形成され、その直径及び厚みは前端部5bの内径及び深さと略同じである。各振動板2は加振器3によって振動しやすいよう基板1と比べて弾力性に富んだ材料からなる。具体的には、振動板2は発泡ポリプロピレンからなる。
【0025】
加振器3は各振動板2の中央に設けられる。各加振器3は一枚の振動板2に対して一個ずつ取り付けられる。
【0026】
図1に示すように、加振器3が設けられた振動板2の外周部を前側から段4に接着することで、各振動板2は前面が基板1の前面と面一とした状態で基板1に取り付けられる。これにより、各振動板2は隙間なく収納孔5の前端部5bに収納され、また、各加振器3は基板1と接触しない状態で収納孔5の後方部5aに配置される。また、このように各振動板2を基板1に取り付けることで、各振動板2の後方部5aに対応する円形部分は基板1に固定されない振動可能な発音部6となる。
【0027】
ここで、各加振器3は、図2(a)に示すように加振器3の一部が基板1よりも後方に突出した状態で収納孔5の後方部5aに収納されるものであっても良く、また、図2(b)に示すように加振器3が収納孔5の後方部5aに完全に収納されるように加振器3の全体が基板1の厚み内に配置されるものであっても良い。
【0028】
前記各加振器3は図示しない音声用アンプ等の音源装置に配線7(図3参照)を介して接続される。各加振器3は、音源装置から出力された音声信号に基づいて振動し、これにより振動板2の発音部6を振動させ、音を前方に発する。
【0029】
以上説明したスピーカー機能付き建築用パネルは、一般のスピーカー機能を備えていない建築用パネルと同様に、基板1により主体が構成されるため、強度の高い建築用パネルとして利用することができる。また、加振器3により、基板1の前面と共に天井面の一部や壁面の一部を構成する振動板2の発音部6を振動させ、音を発することができ、スピーカーとしても利用することができる。
【0030】
また、振動板2の前面は基板1の前面と面一となるため、スピーカー機能付き建築用パネルの前面の全体が段差のない平坦な面となり、見栄えが良い。また、振動板2の前面と基板1の前面との間に段差が形成されないため、一般の建築用パネルと略同じ外観となる。
【0031】
また、各加振器3は図2(a)及び図2(b)に示すように収納孔5に収納されるため、基板1からの後方への突出量が小さい、又は基板1よりも後方に突出しない。従って、スピーカー機能付き建築用パネルを下地に取り付ける際に、加振器3が他の部材に干渉することを防止でき、施工性が良い。特に基板1の背面を下地に直接当接する際に加振器3が下地に干渉せず、良い。
【0032】
また、本例のスピーカー機能付き建築用パネルは複数の加振器3を備えたものである。このため、複数チャンネルの音を出力することができる。
【0033】
次に図3に示す他例のスピーカー機能付き建築用パネルについて説明する。なお以下の説明では一例のスピーカー機能付き建築用パネルと同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0034】
図3に示すスピーカー機能付き建築用パネルは、基板1の後面に各収納孔5の後方部5aに通じる配線収納溝8を形成している。配線収納溝8は、基板1の長手方向に伸びる主溝9と、基板1の短手方向に伸びる複数の副溝10とで構成されている。
【0035】
主溝9の両端はそれぞれ基板1の長手方向の端面に至り、開口している。副溝10は一端が主溝9に連通すると共に他端が収納孔5の後方部5aに連通している。これにより各収納孔5の後方部5aは配線収納溝8を介して基板1の外方に連通している。
【0036】
前記配線収納溝8には図3に示すように各加振器3に接続された配線7を収納することができ、前述のスピーカー機能付き建築用パネルの施工性をさらに向上できる。また、基板1の後方に配線7を収納するためのスペースを形成する必要がなく、施工の自由度が増す。
【0037】
なお、前記各例のスピーカー機能付き建築用パネルは加振器3を2個備えたものであるが、1個又は3個以上の加振器3を備えたものであっても良いものとする。また、加振器3が配される収納孔5の位置や形状、大きさも、出力する音等に応じて適宜変更可能である。
【0038】
次に図4に示す更に他例のスピーカー機能付き建築用パネルについて説明する。なお以下の説明では一例のスピーカー機能付き建築用パネルと同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0039】
本例のスピーカー機能付き建築用パネルは、前記振動板2を基板1に対して基板1の前面側から着脱自在に取り付けている。
【0040】
具体的には、図4に示すように、振動板2の加振器3を挟んだ両側部分には後方に向けて突出する係止部12が設けられている。各係止部12は後端部から外側に向けて突出した突部15を備え、L字状に形成されている。
【0041】
一方、基板1の収納孔5の後方部5aの内周面の各係止部12に対応する箇所には、基板1の厚み方向に貫通する挿通溝14が形成されている。基板1の段4上には制震材13が設けられている。
【0042】
加振器3付きの振動板2を基板1に取り付けるには、図4の矢印に示すように、基板1の前側に配置した振動板2を基板1側に移動することで、振動板2を基板1の段4の前側に制震材13を介して配置すると共に、振動板2の各係止部12を対応する挿通溝14に通して基板1の後面側に配置し、この後、振動板2を回動して、各係止部12の突部15を振動板2の後面側に係止する。
【0043】
また、このように基板1に取り付けられた加振器3付きの振動板2を取り外すには、前記とは逆に、基板1の前側から振動板2を各係止部12が挿通溝14に対応する位置に配されるまで回動し、この後、振動板2を前側に移動して、各係止部12を挿通溝14を通して基板1の前側に引き抜く。
【0044】
このように本例のスピーカー機能付き建築用パネルは、前記振動板2を基板1の前側から着脱自在としてあるので、スピーカー機能付き建築用パネルの設置後においては、スピーカー機能付き建築用パネルの室内側から振動板2を加振器3と共に取り外したり、取り付けたりすることができる。そして、この場合、基板1を下地から取り外す等する必要がなく、振動板2や加振器3のメンテナンスを容易に行うことができる。また、振動板2と段差面4との間に制震材13を挟むことにより、基板1の振動板2と基盤1との間で振動が伝わり難くなり、音質を向上できる。
【0045】
なお、本例では基板1に一個の加振器3を設けたものであるが、前記各例と同様に基板1に複数の加振器3を設けても良いものとする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態の一例の加振器付き振動板を取り付ける前のスピーカー機能付き建築用パネルの斜視図である。
【図2】(a)は加振器の一部が基板よりも後方に突出した例の側面図であり、(b)は加振器の全体を基板の厚み内に配置した例の側面図である。
【図3】他例のスピーカー機能付き建築用パネルの斜視図である。
【図4】更に他例の加振器付き振動板を取り付ける前のスピーカー機能付き建築用パネルの斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 基板
2 振動板
5 収納孔
5a 後方部
5b 前端部
8 配線収納溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に前面に開口する収納孔を形成し、該収納孔の前端部の開口縁を後方部よりも拡大して段を形成し、該段状に形成された収納孔の前端部に収納孔の開口を閉塞するように振動板を配設すると共に該振動板の前面を基板の前面と面一とし、振動板の後面中央に加振器を設けることを特徴とするスピーカー機能付き建築用パネル。
【請求項2】
前記基板に収納孔に通じる配線収納溝を形成することを特徴とする請求項1に記載のスピーカー機能付き建築用パネル。
【請求項3】
前記加振器を基板の厚み内に配置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスピーカー機能付き建築用パネル。
【請求項4】
前記振動板を基板に対して基板の前面側から着脱自在に取り付けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスピーカー機能付き建築用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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