説明

スピーカ用振動板及びその製造方法

【課題】 製造工程を省略して生産効率が高く、防錆性にばらつきが生じることがない安定した防錆効果が期待できるスピーカ用振動板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 振動板基材形成工程(S1)の後、振動板基材を成形工程(S2)により成形し、その後外周に沿ってトリム孔Hを形成する第1トリム工程(S3)を行う。支持部Aを介して振動板成形体1bは振動板基材1bと支持される。その後、表面処理工程(S4)により、振動板成形体表面に陽極酸化処理工程(S41)にて陽極酸化皮膜を形成した後、電極塗装処理工程(S42)にて電着塗装を施し、そして支持部Aを切断する第2トリム工程(S5)を行い、外周に凸部Bを備えたマグネシウム振動板1eを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカ用振動板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属系材料を用いたスピーカ用振動板は、一般に比弾性率が優れている反面、内部損失が小さいため、低音用振動板よりも中音用や高音用のドーム形振動板に多く採用されている。これに対して、マグネシウムを主成分とする金属材料により形成された振動板は、密度が小さく、比較的内部損失が大きいことから、広帯域の再生が可能な振動板として各種のスピーカに採用されている。
【0003】
しかしながら、マグネシウム等は発錆しやすいので、前述した内部損失の大きいマグネシウム等の振動板には、その表面に防錆処理を施す構成が採用されている(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、下記特許文献1には、棒状に加工されたマグネシウム合金のインゴットを圧延加工して、長尺の振動板基材として、さらにカッタで枚葉の振動板基材を形成し、この振動板基材を成形型に密着させて振動板を成形し、次にその外縁部をトリミングした後、振動板に対して防錆被覆層を形成することが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平2002−369284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来技術によると、成形された金属材料振動板をトリミングした後に防錆被覆層を形成する処理を施すので、トリミングされた個々の振動板に対して、例えば電着塗装時の電極を付ける作業を行わなければならず、手間が掛かり高い生産性を得ることができないという問題がある。
【0007】
これに対して、前述した従来技術における長尺の振動板基材の状態で多数の振動板を一度に成形し、この成型品を長尺状態のままで防錆処理して、その後に個々の振動板をトリミングするという技術が考えられる。
【0008】
しかしながら、これによると、トリミングによる切断面に金属表面が現れ、そこから錆が発生することになり、在庫保管時などに振動板の品質が劣化するという問題が生じる。この問題を解消するには、個々の振動板に対してトリミングによる切断面に塗料を塗布する等の後処理を施す必要があり、前述した従来技術と同様に手間が掛かって生産性が悪化する。
【0009】
また、トリミングによる切断面に塗料を塗布する場合には、塗料などのはみ出しが生じて不良の原因になりやすく、さらには、塗料の粘度によって保護膜の厚さにばらつきが生じ、防錆性が悪化するという問題も生じる。また、防錆処理を施したものにトリミングによる切断面にのみ電着塗装することはきわめて困難であり、この切断面に電極を付けることも考えられるが、生産性を考慮すると実用的な方法とは言い難い。
【0010】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一つとするものである。すなわち、防錆処理を施した金属材料振動板を高い生産性で製造することができること、すなわち、防錆処理を施した後に個々の振動板をトリミングする場合にも金属表面の露出をできる限り少なくして、トリミング後に塗料を塗布する等の後処理や電着塗装を行うことなしに、効果的な防錆が可能であること等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明によるスピーカ用振動板及びその製造方法は、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
【0012】
[請求項1] 金属板製の振動板基材からトリミングされた振動板成形体からなるスピーカ用振動板であって、
前記振動板成形体は、表面処理が施されたトリム切断面がその外周に間欠的に形成され、該トリム切断面に表面処理が施されたことを特徴とするスピーカ用振動板。
【0013】
[請求項4]金属板製の振動板基材を振動板成形体に成形加工する成形工程と、
成形された前記振動板の外周に沿って間欠的なトリム孔を形成する第1トリム工程と、前記トリム孔間の支持部で前記振動板基材に支持された前記振動板成形体を表面処理する表面処理工程と、前記支持部の外周を切断して前記振動板成形体を個々に離別させる第2トリム工程とを有することを特徴とするスピーカ用振動板の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態のスピーカ用振動板を製造する手順を示したフロー図である。また、図2〜図5は、図1のフロー図に対応した振動板の製造方法を示した説明図である。以下、これらの図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の実施形態の振動板は、ステップS1〜ステップS5までの各工程を経て形成され、途中の表面処理工程(S4)は、最初に陽極酸化処理工程(S41)を行い、その後電極塗装処理工程(S42)を行う。
【0016】
先ず、振動板基材形成工程(S1)により、マグネシウム又はマグネシウム合金のインゴットが加工切断されて所望の幅及び長さを有する振動板基材1に形成される。この振動板基材1は、厚さが0.2mm程度で、複数の振動板成形体が形成されるために充分な長尺を有するフープ状(板状)のものであってもよいし、或いは1個の振動板が成形される大きさに分断されたものであってもよい。
【0017】
次に、成形工程(S2)により、上述した振動板基材1は上下の金型2からなるプレス成形機により一定の形状を為した振動板基材1aに成形される(図2参照)。なお、図示の例では、ドーム型の例を示したが、本発明の実施形態はこれに限らずコーン型等の形状のものであってもよい。
【0018】
その後、成形された振動板基材1aは第1トリム工程(S3)に移る。図3(a)は同工程の振動板基材1aを説明する側面図であり、図3(b)はトリミングされた振動板基材1aの平面図を示す。同工程は、振動板基材1aに上方からトリム金型3aを加圧してトリミングを行い(図3(a)参照)、振動板成形体1bを複数有する振動板基材1bを得る(図3(b)参照)。具体的には、個々の振動板成形体1bの外周に沿って間欠的なトリム孔Hを形成し、この断面(以下、第1トリム断面という)を個々の振動板成形体1bの外周に間欠的に形成する。
【0019】
これによって、この第1トリム断面形成時にトリム孔Hが形成されると同時に、振動板成形体1bを振動板基材1aに支持する支持部Aが形成されることになる。この状態では、複数の振動板成形体1bはトリム孔Hによって1枚ずつの個々の形状に形成され、この1枚の振動板成形体1bは支持部Aを介してのみ振動板基材1bと支持されている。なお、支持部Aの数や位置については特に制限はないが、少なくとも以後の表面処理工程(S4)で振動板成形体1bが外れないように、支持部Aが振動板成形体1bの外周に形成されていることが必要である。なお、図3(b)は、1枚の振動板成形体1bに対して4箇所の支持部Aを残した例である。
【0020】
本発明の一つの実施形態としては、成形工程(S2)と第1トリム工程(S3)を同一のプレス成形機で行う。
【0021】
この実施形態について説明すると、図6に示すようなプレス成形機10を用いる。このプレス成形機10は、上型ベース11aと下型ベース11bを備え、これらの所望位置にコモンプレート12a,12bを備える。そして、これらのコモンプレート12a,12bに所定の形状の金型13a,13bを設置する。この金型13a,13bは、プレス成形金型13a,13bとトリム金型13a,13bを備え、前者のプレス成形金型13a,13bは成形工程(S2)の金型成形を行い、後者のトリム金型13a,13bは第1トリム工程(S3)の金型成形を行う。
【0022】
具体的には、マグネシウムからなる長尺の振動板基材1を側方より、プレス成形上型金型13aとプレス成形下型金型13bが挟持する所望位置に配置してプレス成形処理を行う。これにより、振動板基材1aが成形される。次に、隣のトリム上型金型13aとトリム下型金型13bの所望位置に先ほど成形された振動板基材1aを配置すると共に、次の新たな振動板基材1を同様に側方から挿入して所望位置に配置し、これらを同時にプレス成形及びトリミングする。これにより、トリミングがなされた振動板基材1bと新たに成形された振動板基材1aが形成される。このようにして成形工程(S2)と第1トリム工程(S3)とを同時に行うことができる。
【0023】
この実施形態によると成形工程(S2)で利用しているプレス成形機10の空いているスペースを利用して、他の加工工程(上記では第1トリム工程(S3)を実施)を同時行うことができるので、生産性の効率化を図ることができる。また、本発明の実施形態では、連続する別工程を同一のプレス成形機で実施しているため、成形品を送りだす搬送ロスを最小限度に抑えることが可能となり、更に生産性が高まる。更には、既存に設置されたプレス成形機を有効に活用することで、不必要に設備を増加させることがないため製造コストの低減化にも寄与する。
【0024】
次に、表面処理工程(S4)について説明する。第1トリム工程(S3)で外周に沿ってトリミングされた振動板基材1bは表面処理工程に移される。図1に示すように、この表面処理工程(S4)は陽極酸化処理工程(S41)と電極塗装処理工程(S42)の2工程からなる。
【0025】
これらの2工程の前に、複数の振動板成形体1bを有するフープ状の振動板基材1bに前処理を施す。この前処理工程は、例えばピロリン酸塩や苛性アルカリなどにて脱脂など、表面の汚れを除去するものである。なお、研磨処理により、振動板基材1bの表面を鏡面仕上げしてもよい。この場合、研磨後に界面活性剤やアルカリ処理などにて洗浄することが好ましい。これらの前処理を経て、振動板基材1bは陽極酸化処理工程(S41)に進む。
【0026】
次に、図4に示すように、陽極酸化処理工程(S41)は、振動板基材1bを電解液Lが入った処理槽4aに浸す。このとき、振動板基材1bを陽極に接続し、陰極を電解液L中に入れる。この陽極酸化処理工程によって、振動板基材1bの表面及び第1トリム切断面に陽極酸化皮膜が形成され、防錆性を高めることができる。
【0027】
具体的には、電解液Lとして苛性ソーダなどのアルカリに金属塩が溶解されてpHが12以上に調製されたアルカリ混合水溶液を用いる。そして、陽極の振動板基材1a及び陰極を電解液L中に浸漬して、所定の電圧を所定時間(例えば、20V以上100V以下で2分間以上20分間以下の条件で)印加する。
【0028】
このような陽極酸化処理工程(S41)により、振動板基材1bの表面及び第1トリム切断面に、厚さ0.1μm以上3μm以下の陽極酸化皮膜が形成された振動板基材1cが得られる。これにより、これらの表面の陽極酸化皮膜によって防錆性を向上することができる。
【0029】
その後、図4に示すように、振動板基材1cは電極塗装処理工程(S42)に移る。電極塗装処理工程(S42)は、表面に陽極酸化皮膜を形成された振動板基材1cを電着塗料Tが入った処理槽4bに浸す。この電極塗装処理工程によると、防錆処理された振動板基材1cの表面等に塗装を施し、均一な保護膜を備えた振動板基材1cを得ることができる。
【0030】
具体的には、この工程は、アクリル系樹脂が溶解された電着塗料Tを用いたアニオン型あるいはカチオン型の電極塗装処理である。そして、陽極酸化処理された振動板基材1cを陽極に接続し、陰極と共に電着塗料T中に浸漬する。この状態で、例えば20V以上100V以下で10秒間以上120秒間以下の条件で電圧を印加することで、振動板基材1cの表面にアクリル樹脂を有する振動板基材1cが得られる。このような電極塗装処理工程(S42)により、振動板基材1cの表面に、厚さ2μm以上30μm以下の電着塗装皮膜(保護膜)が形成された振動板基材1cが得られる。これによって、これらの表面等は、均一な保護膜を有し、上述した防錆性を更に向上させることができる。
【0031】
この後、適宜乾燥、例えば60℃以上180℃以下で30分間以上60分間以下の条件で加温処理し、保護膜が形成された振動板基材1dが得られる。
【0032】
このように、本発明の実施形態は、陽極酸化処理工程(S41)及び電極塗装処理工程(S42)に述べたように、振動板成形体1bを複数備えたフープ状の振動板基材1bをそのまま処理槽4a,4bに浸すことで、1度の表面処理工程で多数個の振動板成形体1bを表面処理できるため生産性が著しく向上する。
【0033】
このような表面処理工程(S4)の後に、第2トリム工程(S5)に移る。この工程では、図5に示すように表面処理して乾燥された振動板基材1dの支持部Aの外周を切断し、断面(以下、第2トリム断面という)を形成することで、個々に離別したマグネシウム振動板1eが得られる。なお、この第2トリム工程(S5)は、トリム金型3bを有するトリム装置を利用して行われる。
【0034】
図7に、第2トリム断面を形成するトリム装置20を示す。トリム装置20は、トリム金型3bを備えた上下型のトリム金型21a,21bを有し、上型トリム金型21aは、支持柱22の端部に設置され、下型トリム金型21bは、支持台22上の所望位置に設置されている。
【0035】
そして、表面処理工程を経た振動板基材1dは、上型トリム金型21aと下型トリム金型21bに挟持された所定位置に配置され、上型トリム金型21aを備えた支持柱22を上方から動作させることで、振動板基材1dの個々の振動板の外周の支持部Aをすべてトリミングする。このように、第2トリム工程(S5)は、複数の振動板を有するフープ状の振動板基材1dから個々の振動板1eを離別するために図7に示すトリム装置20を用いた。なお、トリム装置20は、第2トリム工程(S5)に用いたトリム装置の一例を示したものであり、他のトリム装置を用いて第2トリム工程を行ってもよい。
【0036】
その結果、以上の各工程(S41〜S42を含むS1〜S5)を経て、図5(b)に示すような個々のマグネシウム振動板1eが得られる。このマグネシウム振動板1eは、外周に凸部Bを備える。この凸部Bは、第2トリム工程(S5)で支持部Aの外周を切り離した際に意図的に残したものである。つまり、第2トリム工程では、支持部Aの外周と振動板基材1d本体との境界付近を切断し、形成された凸部Bは切断された支持部Aの残余である。
【0037】
この凸部Bの表面(側面を含む)は、上述した表面処理により陽極酸化皮膜と電着塗装皮膜である保護膜が形成されているが、第2トリム工程(S5)により切断された第2トリム切断面はマグネシウム等が露出している。しかしながら、スピーカユニット組立時にこの切断面に接着材を塗布するため、これらの切断面から錆びが発生し、更にはその錆びが進行する可能性は非常に低い。
【0038】
本発明の一つの実施形態としては、この凸部Bをスピーカユニット組立時の位置決め(位置出し機構)として利用する。具体的に、図8を用いて説明する。
【0039】
図8(a)は外周に複数の凸部Bを有するマグネシウム振動板1eを樹脂プレート40に装着した平面図である。図8(b)は、この樹脂プレート40の一部(凸部Bと接合される凹部P)を拡大した断面図である。つまり、樹脂プレート40はマグネシウム振動板1eを支持する支持面41aとその外枠41bからなり、この外枠41bの所定位置にマグネシウム振動板1eの凸部Bに対応した凹部Pを予め設けておく。
【0040】
組み立てる際に、マグネシウム振動板1eは凸部Bが凹部Pと接合されると共に樹脂プレート40の支持面41a等に装着される。なお、樹脂プレート40は、マグネシウム振動板1eを支持するフレーム機能を有し、多種の用途に適合したスピーカユニットの一部、又は全部である。つまり、この樹脂プレート40は設計上の理由等により必要に応じて様々な形状をし、例えば図8に示すように外形部40a等を備えるものであってもよい。
【0041】
これにより、マグネシウム振動板1eの凸部Bが樹脂プレート40の所望位置に予め形成された凹部Pに接合することで、マグネシウム振動板1eの位置決めが正確にでき、安定した振動板の動作を可能とする。
【0042】
図8(c)は、マグネシウム振動板1eにボイスコイルリード42を取り付け、樹脂プレート40の外形部40a上の端子43とボイスコイルリード42を接続した例である。このボイスコイルリード42は、ボイスコイル(不図示)に音声信号を供給するためのリード線であり、必要以上に長く形成すると他部品との接触による断線等の原因となるだけでなく、異常共振を起こして異常音を発生することがある。これにより、スピーカ装置の品質を著しく低下させる恐れがある。
【0043】
しかし、図8(c)に示すように本発明の実施形態は、凸部B(マグネシウム振動板1eの外周に形成)と凹部P(樹脂プレート40に形成)を所定の位置に配置し、両者を正確に接合するように設計しているため、マグネシウム振動板1eやボイスコイルリード42等の位置決めを容易に、且つ正確に行うことができる。更には、これらのボイスコイルリード42の左右の長さを適正に且つ均等に配置できるので、上記断線等を含め予期せぬトラブルを未然に回避できる。
【0044】
このような本発明の実施形態によると、凸部Bを備えることでスピーカユニット組立時の位置決めが非常に容易になり、組立作業を能率的に行うことが可能となると共にスピーカ装置の品質を損なうことを予め防止できる。
【0045】
更に、本発明の実施形態において、第2トリム工程(S5)により形成された凸部Bの第2トリム断面は非常に小さな面積にすぎず、マグネシウム振動板の錆びが発生することや進行することを最小限に留めることができる。加えて、スピーカユニット組立時にこの小面積の切断面に接着剤を塗布するので、マグネシウム振動板の錆びを極力抑制することができる。このように、本発明の実施形態は、発錆し易いマグネシウムを振動板として採用した場合であっても、錆の発生を最大限抑制できるように配慮されたものである。
【0046】
なお、本発明の実施形態は振動板の素材としてマグネシウム及びマグネシウム合金を採用する例を開示したが、他の金属又はその合金を用いてもよい。したがって、振動板に他の金属等(マグネシウムよりも発錆しにくいもの)を用いた場合は、振動板が錆びることはほとんどないと言える。
【0047】
また、本発明の実施形態は、マグネシウム振動板1eの外周に凸部Bを形成した例を開示したが、これに限らず凹部となるように第1トリム工程(S3)を行い、樹脂プレート40に位置決めのために凸部を形成するものであってもよい。
【0048】
更に、本発明の実施形態はマグネシウム振動板1eがドーム型となる例を開示したが、これに限らず他にコーン型でもよく、この場合、コーン型のマグネシウム振動板は、表面処理工程(S4)において内形部(ボイスコイルボビンを取り付ける箇所)をすべて切断して表面処理することで対応する。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施形態によると、表面処理工程内で電着塗装を実施しているので、トリミング断面に対し別途塗装するという工程が不要となり、製造工程を削減でき、従来技術に見られるように電着塗装のため切断面に電極を取り付けるという作業を省略できる。更に、複数の振動板成形体を備えた振動板基材を用いて一度に表面処理等を行っているため、個々の振動板成形体を個別に処理することに比べ著しい生産性の向上が可能となる。
【0050】
また、本発明の実施形態は、異なる2工程(例えば、成形工程とトリム工程)を同一のプレス成形機で行うため、製造工程のロスが低減でき、更に生産効率を向上できる。
【0051】
そして、本発明の実施形態によると、表面処理において防錆のための陽極酸化皮膜が形成され、次いで電着塗装により保護膜が均一に形成されるので、塗装の粘度等の影響を受けて防錆性にばらつきが生じることを回避でき、安定した防錆効果が期待できる。
【0052】
また、振動板の外周に設けた凸部又は凹部が、スピーカユニットの組立時において振動板やボイスコイルリード等の位置決めを正確に行う位置出し機構を有するので常に安定動作を行う信頼性の高いスピーカユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係るスピーカ用振動板の製造方法を示すフロー図である。
【図2】図1の成形工程(S2)を示す説明図である。
【図3】図1の第1トリム工程(S3)を示す説明図である。
【図4】図1の表面処理工程(S4)を示す説明図である。
【図5】図1の第2トリム工程(S5)を示す説明図である。
【図6】図1の成形工程(S2)と第1トリム工程(S3)を同時行うプレス成形機の説明図である。
【図7】図1の第2トリム工程(S5)を行うトリム装置を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係るスピーカ用振動板を用いた位置決めを示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1,1a,1b,1c,1c,1d 振動板基材
1b 振動板成形体
1e マグネシウム振動板
10 プレス成形機
20 トリム装置
40 樹脂プレート
A 支持部
B 凸部
P 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板製の振動板基材からトリミングされた振動板成形体からなるスピーカ用振動板であって、
前記振動板成形体は、表面処理が施されたトリム切断面がその外周に間欠的に形成され、該トリム切断面に表面処理が施されたことを特徴とするスピーカ用振動板。
【請求項2】
前記トリム切断面は第1トリム切断面であって、
該第1トリム切断面間に、スピーカユニットに対する位置決め用の凸部が形成され、前記凸部は、前記第1トリム切断面形成時に前記振動板を前記振動板基材に支持する支持部を形成し、前記表面処理後にその外周に形成される第2トリム切断面を有することを特徴とする請求項1に記載されたスピーカ用振動板。
【請求項3】
前記振動板基材がマグネシウム又はマグネシウム合金からなることを特徴とする請求項1又は2に記載されたスピーカ用振動板。
【請求項4】
金属板製の振動板基材を振動板成形体に成形加工する成形工程と、
成形された前記振動板成形体の外周に沿って間欠的なトリム孔を形成する第1トリム工程と、
前記トリム孔間の支持部で前記振動板基材に支持された前記振動板成形体を表面処理する表面処理工程と、
前記支持部の外周を切断して前記振動板成形体を個々に離別させる第2トリム工程とを有することを特徴とするスピーカ用振動板の製造方法。
【請求項5】
前記振動板基材の一つに対して複数の前記振動板成形体が成形されることを特徴とする請求項4に記載されたスピーカ用振動板の製造方法。
【請求項6】
前記表面処理工程は、前記振動板成形体表面に防錆のための被膜処理を施した後、当該表面に電着塗装を施すことを特徴とする請求項4又は5に記載されたスピーカ用振動板の製造方法。
【請求項7】
前記支持部によって前記振動板成形体の外周にスピーカユニットに対する位置決め用の凸部を形成する請求項4〜6のいずれかに記載されたスピーカ用振動板の製造方法。
【請求項8】
前記成形工程と前記第1トリム工程とが同一の成形機で行われることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載されたスピーカ用振動板の製造方法。
【請求項9】
前記振動板基材がマグネシウム又はマグネシウム合金からなることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載されたスピーカ用振動板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−5458(P2006−5458A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177095(P2004−177095)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】