説明

スピーカ

【課題】振動板が大きく振動してその径方向外周部を支持する支持部材が大きく伸びても、該支持部材がフレームに接触しない状態を維持しつつ、接着剤によって前記支持部材の最外周屈曲部の屈伸動のし易さが影響され難い構造のスピーカを提供することである。
【解決手段】径方向及び周方向にジグザグに屈曲した形状となり、その最外周屈曲部11aに続いた外周縁部に形成される固定部110がフレーム50前端の取付け部51に接着固定された支持部材11によって振動板10の径方向外側部が支持されたスピーカであって、支持部材11における最外周屈曲部11aと固定部110の取付け部51への接着面110aとの間に段差αが形成された構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、径方向及び周方向にジグザグに屈曲した形状となる支持部材にて振動板の径方向外周部が支持された構造となるスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音響信号に応じた振動の付与される振動板の径方向外側部が径方向及び周方向にジグザグに屈曲した形状となる支持部材にて支持された構造のスピーカ(例えば、ギャザードエッジタイプという)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このスピーカは、例えば、図4及び図5に示すように構成される。なお、図4は、スピーカの断面構造を示す断面図であり、図5は、スピーカの外周部位を部分的に示す平面図である。
【0003】
図4において、このスピーカは、ヨーク20、リング状の磁石30及びリング状のトッププレート31を備えている。ヨーク20は円盤状の底部21の中央に円柱状の突出部22が形成された構造となっている。ヨーク20の底部21に磁石30が突出部22を囲むように固定され、更に、磁石30上にトッププレート31がヨーク20の突出部22を囲むように固定されている。これらヨーク20、磁石30及びトッププレート31によって磁気回路ユニットが構成される。そして、トッププレート31上に、前方に突出するホーン状のフレーム50が固定され、そのフレーム50の前端に取付け部51が形成されている。
【0004】
このスピーカは、更にコーン状となる振動板10と、ボイスコイル41がボビン42に巻かれた構造となるボイスコイルユニット40とを備えている。ボイスコイル41がヨーク20の突出部22とトッププレート21との間に形成された磁気ギャップG内に配置されるようにボビン42の一端部が振動板10の径方向内側部に固定されている。
【0005】
図5に示すようにリング状で径方向及び周方向にジグザグに屈曲した支持部材11が振動板10の径方向外側部に接着固定されている。支持部材11の外周縁部には径方向の最外周屈曲部11aに続いて固定部111が形成されている。そして、フレーム50の前端に形成された取付け部51の前方(図4における上方向)に向いた取付け面51a上に支持部材11の固定部111が接着固定されている。即ち、このスピーカは、外周縁部の固定部111がフレーム50の取付け部51に接着固定された支持部材11によって、振動板10の径方向外側部が振動可能に支持された構造となっている。
【0006】
フレーム50の取付け部51には、取付け面51aの径方向内側エッジから立ち下がる段部51bが形成されており、支持部材11の最外周屈曲部11aと取付け部51との間には隙間Soが形成される。
【0007】
このような構造のスピーカでは、ボイスコイル41に音響信号が与えられると、ボイスコイル41に流れる電流と磁気回路ユニットから発生する磁束との相互作用によって、ボイスコイル41がボビン42と一体となって前後方向(図4における上下方向)に振動し、その振動が振動板10の径方向内側部に付与される。この付与された振動に基づく振動板10の振動によって前記音響信号に応じた音が前方に向けて発せられる。
【0008】
支持部材11は、その径方向及び周方向にジグザグに屈曲していることから、振動板10の振動を妨げることなくその振動に追従して大きく伸びることが可能となり、この支持部材11に径方向外側部が支持された振動板10は、例えば、図6に示す状態A0、状態A1及び状態A2のように大きく振動することができるようになる。その結果、ダイナミックレンジの広い音圧を得ることができるようになる。また、取付け部51には取付け面51aの径方向内側エッジから立ち下がる段部51bが形成されて支持部材11の最外周屈曲部11aと取付け部51との間に隙間Soが形成されているので、図6の状態A2に示すように振動板10が下方向へ大きく振動してその径方向外周部を支持する支持部材11が大きく伸びても、支持部材11がフレーム50前端の取付け部51に接触することはない。
【特許文献1】特公昭49−28447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述したような構造のスピーカでは、取付け部51の取付け面51aから立ち下がる段部51bが形成されてはいるものの、支持部材11において、図7(a)に示すように、固定部111の取付け面51aへの接着面111aに最外周屈曲部11aが略同一面上で続いているために、取付け面51aと固定部111の接着面111aとの間から接着剤60がはみ出して固まった場合、その接着剤60によって支持部材11の最外周屈曲部11aが屈伸動し難くなる。更に、周方向において部分的に接着剤60のはみ出しがあると、支持部材11の最外周屈曲部11aの屈伸動のし易さが周方向で不均一なる。このように支持部材11の最外周屈曲部11aの屈伸動のし易さが周方向で不均一になると、支持部材11によって径方向外周部が支持される振動板10の振動がアンバランスになって、所望の音響特性が得られないおそれがある。
【0010】
また、リング状の支持部材11とホーン状のフレーム50とが相対的に偏芯して支持部材11の取付け部51に対する径方向位置が正規の位置からずれてしまうと、図7(b)、(c)に示すように、支持部材11における固定部111の接着面111aと取付け面51aとの接触面積、即ち、固定部111の取付け部51への実質的な接着面積が変動してしまう。このように支持部材11の外周縁部(固定部111)の取付け部51への実質的な接着面積が周方向で不均一になることは、信頼性の観点から好ましくない。このため、支持部材11とフレーム50との芯合わせをより精度良く行なう必要があり、その作業に手間がかかる。
【0011】
本発明は、前述したような従来の問題を解決するためになされたもので、振動板が大きく振動してその径方向外周部を支持する支持部材が大きく伸びても、該支持部材がフレームに接触しない状態を維持しつつ、接着剤によって前記支持部材の最外周屈曲部の屈伸動のし易さが影響され難く、また、前記支持部材の外周縁部の取付け部への接着面積を周方向において容易に均一に保持することができる構造のスピーカを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るスピーカは、径方向及び周方向にジグザグに屈曲した形状となりその最外周屈曲部に続いた外周縁部に形成される固定部がフレームの取付け部に接着固定された支持部材によって、振動板の径方向外側部が前記フレームに対して振動可能に支持されたスピーカであって、前記支持部材における前記最外周屈曲部が前記固定部の前記取付け部への接着面よりも前記取付け部から離れるように、前記最外周屈曲部と前記接着面との間に段差が形成された構成となる。
【0013】
このような構成により、支持部材の外周縁部に形成された固定部のフレームに形成された取付け部への接着面と当該支持部材の最外周屈曲部との間に段差が形成されているので、前記固定部が接着される取付け部の面に段差を特に形成しなくても、前記支持部材の最外周屈曲部と前記取付け部の面との間に隙間が形成されることとなる。このように前記支持部材の最外周屈曲部と前記取付け部の面との間に隙間が形成されるので、支持部材の固定部と取付け部との間から当該取付け部の面に沿って接着剤がはみ出したとしても、その接着剤が前記隙間によって取付け部の面から隔離した支持部材の最外周屈曲部に付着し難くなる。
【0014】
上記構成において、前記フレームの取付け部の径方向における幅寸法よりも、前記固定部の前記接着面の径方向における幅寸法が小さいことが好ましく、この場合、前記固定部の前記接着面の内径寸法を前記フレームの前記取付け部の内径寸法より大きく、且つ、前記接着面の外径寸法を前記取付け部の外径寸法より小さくすることで構成できる。
【0015】
このような構成により、支持部材の径方向の位置がフレームに対して多少変化しても、当該支持部材の外周縁部に形成された固定部を前記フレームの取付け部の面内に位置させることができ、該固定部とフレームの取付け部との接着面積の変動を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るスピーカによれば、前記固定部が接着される取付け部の面に段差を特に形成しなくても、前記支持部材の最外周屈曲部と前記取付け部の面との間に隙間が形成されるので、振動板の大きな振動に伴って支持部材が大きく屈伸動しても、前記隙間によって支持部材が前記取付け部の形成されたフレームに接触しない状態を維持することができる。そして、支持部材の固定部と取付け部との間から当該取付け部の面に沿って接着剤がはみ出したとしても、その接着剤が前記隙間によって取付け部の面から隔離した支持部材の最外周屈曲部に付着し難くなるので、接着剤によって前記支持部材の最外周屈曲部の屈伸動のし易さが影響され難いものとなる。また、支持部材の径方向の位置がフレームに対して多少変化しても、当該支持部材の外周縁部に形成された固定部が前記フレームの取付け部の面内に有る限りその接着面積の変動はないので、前記支持部材の外周縁部の取付け部への接着面積を容易に周方向において均一に維持することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
本発明の実施の一形態に係るスピーカは、図1に示すように構成される。なお、図1は、スピーカの断面構造を示す断面図である。
【0019】
図1において、このスピーカは、図4に示すものと同様に、円盤状の底部21の中央に円柱状の突出部22が形成されたヨーク20と、ヨーク20の底部21に突出部22を囲むように固定されたリング状の磁石30と、磁石30上に固定されたリング状のトッププレート31とから構成される磁気回路ユニットを備えている。そして、前方に突出するホーン状となり、その前端に取付け部51の形成されたフレーム50がトッププレート31上に固定されている。
【0020】
また、このスピーカは、図4に示すものと同様に、振動板10及びボビン42にボイスコイル41の巻かれた構造となるボイスコイルユニット40を備えている。振動板10は合成樹脂、薄い金属板あるいは紙等でコーン状に形成され、その径方向内側部にボビン42の一端部が固定され、ボイスコイル41が前記磁気回路ユニットにおけるトッププレート31とヨーク20の突出部22との間に形成された磁気ギャップG内に配置されている。
【0021】
支持部材11は、ゴム等の弾性部材あるいは合成樹脂や布等でリング状に形成され、径方向及び周方向にジグザグに屈曲した構造となり(図5参照)、振動板10の径方向外側部に接着固定されている。支持部材11の外周縁部には径方向の最外周屈曲部11aに続いて固定部110が一体的に形成されている。そして、フレーム50の前端に形成された取付け部51の前方(図1における上方向)に向いた取付け面51a上に支持部材11の固定部110が接着固定されている。このように、外周縁部の固定部110がフレーム50の取付け部51に接着固定された支持部材11によって、振動板10の径方向外側部が振動可能に支持されている。
【0022】
支持部材11における固定部110の取付け部51への接着面110aは後方(図示下方)へ向けて突出しており、この接着面110aと支持部材11の最外周屈曲部11aとの間に、図2に示すように、段差αが形成されている。これにより、従来のように取付け部51に特に段差(図6及び図7における段部51b参照)を形成しなくても、支持部材11の最外周屈曲部11aと取付け部51の取付け面51aとの間に隙間Sが形成される。
【0023】
図2に示すように、径方向における固定部110の接着面110aの幅寸法Waは、取付け部51の取付け面51a(平坦面)の径方向の幅寸法Wbよりも小さく設定されている。また、接着面110aの内径寸法daは取付け面51aの内径寸法dbよりも大きく、且つ、接着面110aの外径寸法Daは取付け面51aの外径寸法Dbよりも小さく設定されている。
【0024】
なお、合成樹脂や布等でリング状に形成されたダンパ15の外周縁部がフレーム50の平坦部52に接着固定され、その内周縁部がボビン42の所定部位に接着固定されている。ダンパ15によってボイスコイルユニット40が前後方向に振動可能に支持されている。また、振動板10上にはボビン42を覆うように椀状のダストキャップ16が設けられている。
【0025】
このような構造のスピーカでは、ボイスコイル41に音響信号が与えられると、ボイスコイル41に流れる電流と磁気回路ユニットから発生する磁束との相互作用によって、ボイスコイル41がボビン42と一体となって前後方向(図1における上下方向)に振動し、その振動が振動板10の径方向内側部に付与される。この付与された振動に基づく振動板10の振動によって前記音響信号に応じた音が前方に向けて発せられる。
【0026】
このように振動板10が音響信号に応じて振動する際に、その振幅が、図3に示す状態A0、状態A1及び状態A2のように大きくなっても、支持部材11の最外周屈曲部11aと取付け部51の取付け面51aとの間に隙間Sが形成されているので、振動板10の振動に追従して屈伸動する支持部材11がフレーム50(取付け部51)に接触することはない。
【0027】
また、図2に示すように、支持部材11の固定部110と取付け部51との間から取付け面51aに沿って接着剤60がはみ出したとしても、その接着剤60が前記隙間Sによって取付け面51aから隔離した支持部材11の最外周屈曲部11aに付着し難くなる。また、前述したように固定部110の接着面110aの径寸法da、Da及び幅寸法Waと、取付け部51の取付け面51aの径寸法db、Db及び幅寸法Wbが設定されているので、支持部材11とフレーム50との芯合わせの精度が多少ラフであっても、支持部材11の固定部110を取付け面51a内に位置させることができ、固定部110はその接着面110a全体にて取付け面51aに接着されることになるので、その接着面積の変動はない。
【0028】
前述したように、本発明の実施の形態に係るスピーカによれば、支持部材11の固定部110が接着される取付け部51の取付け面51aに段差を特に形成しなくても、支持部材11の最外周屈曲部11aと取付け面51aとの間に隙間Sが形成されるので、振動板10の大きな振動に追従して支持部材11が大きく屈伸動しても、前記隙間Sによって支持部材11が取付け部51の形成されたフレーム50に接触しない状態を維持することができる。そして、支持部材11の固定部110と取付け部51との間から取付け面51aに沿って接着剤60がはみ出したとしても、その接着剤60が支持部材11の最外周屈曲部11aに付着し難くなるので、その接着剤60によって支持部材11の最外周屈曲部11aのし易さが影響され難くなる。従って、接着剤60が支持部材11の最外周屈曲部11aに付着することに起因して音響特性が損なわれることを防止することができる。
【0029】
更に、支持部材11の径方向の位置がフレーム50に対して多少変化しても、支持部材11の固定部110を取付け部51における取付け面51a内に位置させることができ、支持部材11の外周縁部(固定部110)の取付け部51への接着面積を容易に周方向において均一に保持することができる。従って、支持部材11の取付け部51への接着面積が周方向において不均一になることに起因した信頼性の低下を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上、説明したように、本発明に係るスピーカによれば、振動板が大きく振動してその径方向外周部を支持する支持部材が大きく伸びても、該支持部材がフレームに接触しない状態を維持しつつ、接着剤によって前記支持部材の最外周屈曲部の屈伸動のし易さが影響され難く、また、前記支持部材の外周縁部の取付け部への接着面積を周方向において容易に均一に保持することができる構造となり、径方向及び周方向にジグザグに屈曲した形状となる支持部材にて振動板の径方向外周部が支持されたスピーカとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の一形態に係るスピーカの構造を示す断面図である。
【図2】支持部材の固定部とフレームの取付け部との接着構造を詳細に示す断面図である。
【図3】図1に示すスピーカにおける振動板の振動状態を示す部分断面図である。
【図4】従来のスピーカの構造例を示す断面図である。
【図5】図4に示すスピーカの外周部位を部分的に示す平面図である。
【図6】図4に示すスピーカにおける振動板の振動状態を示す部分断面図である。
【図7】図4に示すスピーカにおける支持部材の固定部とフレームの取付け部との接着構造及びそれらの位置関係を詳細に示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 振動板
11 支持部材
11a 最外周屈曲部
15 ダンパ
16 ダストカバー
20 ヨーク
21 底部
22 突出部
30 磁石
31 トッププレート
40 ボイスコイルユニット
41 ボイスコイル
42 ボビン
50 フレーム
51 取付け部
51a 取付け面
110 固定部
110a 接着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向及び周方向にジグザグに屈曲した形状となりその最外周屈曲部に続いた外周縁部に形成される固定部がフレームの取付け部に接着固定された支持部材によって、振動板の径方向外側部が前記フレームに対して振動可能に支持されたスピーカであって、
前記支持部材における前記最外周屈曲部が前記固定部の前記取付け部への接着面よりも前記取付け部から離れるように、前記最外周屈曲部と前記接着面との間に段差が形成されたことを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記フレームの取付け部の径方向における幅寸法よりも、前記固定部の前記接着面の径方向における幅寸法が小さいことを特徴とする請求項1記載のスピーカ。
【請求項3】
前記固定部の前記接着面の内径寸法は前記フレームの前記取付け部の内径寸法より大きく、且つ、前記接着面の外径寸法は前記取付け部の外径寸法より小さいことを特徴とする請求項2記載のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−340185(P2006−340185A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164305(P2005−164305)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】