スピーカ
スピーカが、平たい形状を有する非収容の単体スピーカ(11a、11b、11c)の二次元アレイ(10)を備えている。非収容の単体スピーカは平たいハウジング(1)に収容され、ハウジングの奥行きは、例えば5cmよりも小さい。使用される非収容の単体スピーカは、好ましくは5cm未満のダイアフラム径を有するヘッドホンカプセル及び/又は小型スピーカである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サウンド再生システムに関し、特に広いサウンド再生帯域幅を有するスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
平面型スピーカの技術への関心が、最近の10年において顕著な高まりを見せている。これは、基本的には、5.1サラウンド又は波面合成などといった最新のサウンド再生方法がより多くの空間を必要とすることに起因し、ますます小型化及び/又は薄型化が進む例えば携帯電話機又はノート型コンピュータなどのマルチメディアデバイスにおいて、スピーカのための設置空間が減少していることに起因する。従来からのスピーカではなくて平面型のスピーカを使用することは、これらの要件の高まりに対応するためである。
【0003】
平面型スピーカの技術は、典型的にはKellogg及びRiceによるコーン型スピーカと同じように古いが、種々の平面型スピーカの技術について行われた研究により、非収容の平面型スピーカを壁に直接取りつけること、及び平坦なスピーカハウジングを使用することのどちらも、かなりの音質低下を伴うことが示されている。従来技術を、Beer, D.の「Flachlautsprecher-ein Uberblick(平面型スピーカ−その概要)」、DAGA08 trade fair、March 2008、Dresden; H. Azima及びJ. Panzerの「Distributed-Mode Loudspeakers(DML) in Small Enclosures」、106th AES Convention、Munich、Germany、May 1999; Beerらの「The air spring effect of flat panel speakers」、124th AES Convention、May 2008、Amsterdam/The Netherlands; 及びWagner, Rolandの「Electrostatic Loudspeaker-Design and Construction」、Audio Amateure Press、Peterborough、New Hampshire、1993に見つけることができる。
【0004】
非収容の平面型スピーカは、典型的には、音響的な短絡に起因して低周波数の音色範囲の音圧レベルが低いダイポール放射体である。そのようなダイポールが壁の近くに設置される場合、後方へのサウンド成分が反射してダイアフラムの前面から放射されるサウンド部分と重なり合うこと、及びそれに関連した回折効果により、短絡周波数よりも上において、くし形フィルタ状のサウンドの着色が生じる。この理由で、従来からのスピーカにおいて、スピーカハウジングが使用されている。しかしながら、平たい設計の利点を維持するために、典型的には内側のエアボリュームが比較的少ない平坦なハウジングが使用される。従来からのスピーカとまったく同じように、エアボリュームが小さすぎると、サウンドトランスデューサの基本共振周波数が高くなる。結果として、下方のカットオフ周波数も高くなり、低周波数の音色の再生が減少することになる。
【0005】
US 2005/0201583 A1が、ダイポールの原理にもとづく低周波数の二次元アレイを開示している。このシステムは、開放フレームを有する支持システムを備えており、複数のサブウーハが、水平面及び垂直面の両方に制御されたサウンドの分散をもたらすために、ダイポールの二次元アレイの構成にて開放フレームシステムに収容されている。サブウーハは、約300Hzを下回る低周波数のサウンドの分散をもたらすように動作することができる。
【0006】
DE 695 07 896 T2が、制御された方向感受性を有するスピーカ装置を開示している。そのスピーカ装置は、少なくとも3つのスピーカを所定のパターンに従って第1の直線に沿って配置してなる第1のセットを有しており、スピーカからスピーカまでの距離が可変の様相で構成され、スピーカを互いに接するように配置することも可能になっている。
【0007】
米国特許第2,602,860号が、9個の円錐スピーカがただ1つのフレームに3×3の列にてそれぞれ対称に配置されているスピーカ構造を開示している。そのフレームは、放射の角度を増やすべく互いに傾けられたセグメントを備えている。例えば、スピーカの縁の間の距離はスピーカの半径よりも小さくすべきであるとされており、すべてのスピーカが1つの同じ音源によって動作する。さらに、ハウジングによる空気の移動に関しては制限すべきでないとされている。空気の移動の制限は低周波数における性能に悪影響を及ぼすと考えられるからである。
【0008】
米国特許第4,399,328号が、電子音響トランスデューサの制御動作の特定の状況がもたらされるように、種々の振幅を使用して制御される電子音響トランスデューサからなり、方向及び周波数について独立であるカラムを開示している。
【0009】
米国特許第6,801,631 B1号が、最適な音響サウンド放射パターンを達成すべく平面内に配置された複数のトランスデューサを特徴とするスピーカシステムを開示している。4つの中央トランスデューサ(ウーハ)が低い周波数及び中間の周波数を再生すべく協働し、これらのウーハは、いずれの2つのウーハも共通の垂直軸又は共通の水平軸を共有することがないように配置されている。さらに、第5のトランスデューサ、特に高い周波数のツイータが、ウーハの間の中央の位置に配置されて設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、優れたスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載のスピーカによって達成される。
【0012】
本発明は、安価かつ平坦でありながら品質が高いスピーカを、いずれも平たい形状を有している非収容の単体スピーカで構成される二次元のアレイを平たいハウジングに配置することで実現できるという発見にもとづいており、このスピーカは、広い再生帯域幅又は所望の狭い(例えば、低い)周波数範囲における充分な音圧を有している。
【0013】
このスピーカは、平坦な単体スピーカ(典型的には、直径も小さい)の使用により、必要とされる空間がきわめて小さい点で好都合である。非収容の単体スピーカが小型かつ平たいという事実によって、単体スピーカあたりの必要なハウジング容積も比較的小さい。その結果、平坦なハウジングのハウジング容積が小さいので、スピーカ全体をコンパクトに設計できる。単体スピーカとして、低い屋外共振を有するエレメントが好ましい。この場合、典型的には等価エアボリュームも小さい。ここで、単体スピーカのダイアフラムの懸架の剛性が、等価エアボリュームの剛性に一致させられる。この観点から、150Hz未満、特に120Hz未満、さらには100Hz未満の共振周波数を有する単体スピーカが好ましい。
【0014】
本発明のさらなる利点は、平坦な非収容の単体スピーカを使用できることにより、必要なハウジング容積が、ほぼ任意の形状にてもたらされ、すなわち平坦なハウジングにてもたらされる点にある。さらに、平坦な形状を有する非収容の単体スピーカを利用することは、これら単体スピーカをきわめて低いコストで大量に入手できるという利点を有する。これらの非収容の単体スピーカを二次元のアレイに配置することによって、100Hzなどの低い周波数においても充分な音圧を生み出すために低周波数におけるスピーカの結合が利用される。対照的に、小型な単体スピーカ(すなわち、比較的小さいダイアフラム径を有する単体スピーカ)の利用は、比較的大きいダイアフラムを有するスピーカの利用に比べて、特に高い周波数において、きわめて有利である。なぜならば、小さなダイアフラムにおいては、比較的大きいダイアフラムと比較して、より高い周波数でなければ部分的振動が生じないからである。
【0015】
さらなる利点は、多数の非収容の単体スピーカ、すなわち二次元アレイの部分領域を、さまざまに制御できる点にある。その目的は、このスピーカが単体スピーカのアレイを備え、そのアレイが大きな寸法を有しているという事実にもかかわらず、スピーカの前方の空間において可能なかぎり位置にほとんど依存しない全領域の音波への暴露を実現することにある。
【0016】
好ましくは、このスピーカは、もっぱら同一の単体スピーカを備えている。それらの単体スピーカはヘッドホンカプセルであってもよく、大まかに言えば、例えば小型サウンドトランスデューサであってもよい。その結果として、スピーカを安価に製造することが可能になる。さらなる好ましい実施形態においては、単体スピーカがいくつかのアレイにグループ化される。例えば、2ウェイシステムが採用される場合に、単体スピーカを備える二次元のアレイが低周波数の音色の再生のために設けられ、1つ以上の同一の単体スピーカからなるアレイが高周波数の音色の再生のために設けられる。あるいは、第2のアレイがいくつかの中間周波数のスピーカを備えており、高周波数の音色範囲が好ましくは1つ又は少数の単体スピーカによって担当される3ウェイシステムを実現することも可能である。しかしながら、非収容の平坦な単体スピーカを複数個使用する1ウェイシステムが、驚くほど広い再生範囲において良好な再生をすでに提供する。
【0017】
他の実施形態においては、二次元アレイに低域通過信号のみを供給し、全帯域幅を有するオーディオ信号を、中間周波数及び高周波数を担当するさらなるアレイにおいて利用できるようにすることが好ましい。これは、この場合における周波数分離手段が、高域通過関数を有さずに、低域通過関数だけを有することを意味する。
【0018】
本発明の好ましい実施形態においては、平坦なスピーカハウジングが5cm未満の奥行きしか有しておらず、特に3cm未満の奥行きしか有していないにもかかわらず、同一の単体スピーカにて100Hz〜20kHzの周波数範囲の再生を少なくとも90dB/1W/1mの感度で可能にするスピーカが得られる。好ましい実施形態は二次元アレイを形成する25個の小型サウンドトランスデューサを含んでおり、その二次元アレイはおよそ21×21cmのサイズを有し、低い周波数の音色の再生のための2つの部分アレイとその2つの部分アレイの間に位置する高周波数の音色の再生のための直線アレイを備えているものである。
【0019】
本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して、以下で詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明の第1の実施形態によるスピーカの正面図を示している。
【図1B】本発明の第1の実施形態によるスピーカの後面図を示している。
【図1C】一実施形態による非収容の単体スピーカの配線接続を示している。
【図1D】3ウェイ制御について、図1Aのアレイ構成要素の周波数に関する分割を示している。
【図2A】本発明の第2の実施形態によるスピーカの正面図を示している。
【図2B】図2Aのスピーカのハウジングの図を示している。
【図2C】ハウジング後壁を除いた図2Aのスピーカの後面図を示している。
【図2D】2ウェイ制御について、非収容の単体スピーカの制御の構成を示している。
【図2E】斜めの面取りを有する図2Aのスピーカの別の実施例を示している。
【図3】図2Dに示したスピーカの制御の構成のための追加の駆動電子部を有する非収容の単体スピーカの配線接続を示している。
【図4A】図2A、図2B及び図2Cのスピーカの平坦なハウジングの概略図を示している。
【図4B】図2A、図2B及び図2Cのスピーカのハウジングの別の概略図を示している。
【図5A】2ウェイ制御のための周波数分離手段の伝達関数を示している。
【図5B】図2Aに示したスピーカについて、高周波数及び低周波数の音色の経路の周波数応答を示している。
【図5C】図2A〜2Dによる2ウェイスピーカの均一化されていない周波数応答を示している。
【図5D】図3による制御を備えた図2Aのスピーカの均一化された周波数応答を示している。
【図6A】ヘッドホンカプセルの形態である好ましい非収容の単体スピーカの正面図及び後面図を示している。
【図6B】図6Aの非収容の単体スピーカの技術データを示している。
【図7A】互いに傾けられて配置された高周波数及び/又は中間周波数範囲のスピーカを有している平面型スピーカの応用分野の概略図を示している。
【図7B】中間周波数又は高周波数の音色の後退させられたアレイを有しているスピーカの概略図を示しており、中間周波数又は高周波数の音色のアレイの指向パターンを均質化するためのホーン又は導波部が備えられている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1Aは、本発明の一実施形態によるスピーカの正面図を示している。図1Aのスピーカは、非収容の単体スピーカ11a、11b、11c、・・・で構成される二次元のアレイ10を備えており、非収容の単体スピーカの各々は、例えば非収容の単体スピーカ11dの図1Bの後面図においてすでに見ることができるように、平坦な形状を有している。特に、図1Aの正面図は単体スピーカの前部領域(すなわち、スピーカのダイアフラムの平面図)を示しており、後面図は、単体スピーカの全体が、図1Bに示されているハウジング及び/又は対応するハウジング穴に収容され、穴からほとんど突き出さないように、充分に平坦であることを示している。図4Aにおいても見られるように、図1B及び図1Aにおいて例として使用され図6Aに詳しく示されている非収容の単体スピーカに関し、その単体スピーカは、スピーカのわずかな部分だけがハウジングの前壁よりも突き出し、さらに、スピーカのわずかな部分だけがハウジングの前壁から後ろ側へと突き出すように、スピーカの前壁の材料の全体としての厚さの範囲内にほぼ完全に収容されている。一実施形態においては、ハウジングの前壁からのスピーカの突き出しがわずかに4.5mmであり、ハウジングの前壁の後ろ側において、スピーカは約1.5mmしか突き出しておらず、きわめて平坦な単体スピーカである。
【0022】
しかしながら、優れた性能を理由に、基本的にコーンスピーカのように設計された動電気力型の非収容単体スピーカを使用することが好ましい。コーンスピーカは、システム関連の最小限の奥行きを本質的に有する。しかしながら、特にヘッドホンカプセルにおいては、この奥行きはきわめて小さい。したがって、例えばきわめて奥行きが小さく、すなわち設計奥行きが例えばわずか10.6mmである図6A及び図6Bに示されているようなヘッドホンカプセルが好適であるとともに、低コストで提供されている。
【0023】
図1Cは、1ウェイの実施例の場合における図1Aの個々の非収容の単体スピーカの制御を示している。特に、少なくとも2つのスピーカからなる少なくとも2つのグループの各々が、二次元アレイの非収容の単体スピーカから形成されている。図1Cに示した実施形態においては5つのグループ12a〜12eが形成され、各々のグループが、5つの単体スピーカを有しており、したがって全体としてのスピーカは、合計で25個の非収容の単体スピーカを備えている。
【0024】
単体スピーカの数が9〜49個の間でさまざまであるスピーカを用意することが一般的には好ましいが、単体スピーカの正確な数は、スピーカの個々の条件に依存し、必要とされる音圧レベル(特に、スピーカの設計において対象とされる低い周波数範囲の音圧レベル)に依存して決まる。
【0025】
図1A及び図1Bに示した実施形態において、単体スピーカのダイアフラムの直径は、36mmである。好ましい実施形態においては、ダイアフラムの直径が5cmよりも小さく、好ましくは4cmよりも小さいような非収容の単体スピーカが好ましい。なぜならば、本発明の二次元アレイの構成においては、高周波数の音色範囲の性能が、単体スピーカのダイアフラムの直径が小さくなるにつれて向上するからである。比較的小さい単体スピーカによって達成される比較的小さいダイアフラムの面積、及び非収容の単体スピーカの使用が、単体スピーカをより密に配置して、アレイの全体サイズを小さくすることを可能にする。その結果として指向性が少なくなる。さらに、室内の音圧レベルの顕著な空間的変動につながりかねない部分的振動が、あまり問題にならないより高い周波数へと移動する。たとえ部分的振動がそこで生じても、もはや低い周波数の位置ではないという事実により、もはや妨害にはならない。
【0026】
低い周波数において生じる音圧レベルの低下は、複数の単体スピーカをアレイに組み合わせて配置することによって補償されるが、低周波数の音色の再生のための単体スピーカは、例えば直線アレイよりもむしろ二次元アレイに配置することが不可欠である。二次元のアレイは、少なくとも2つの隣接する列を必要とし、一方の列は少なくとも2つのスピーカを有さなければならず、他方の列は少なくとも1つのスピーカを有さなければならない。例えば、図1Aのスピーカ11a、11b、11cで構成された三角形配置が、すでに二次元のアレイであり、長方形、正方形、あるいは円形及び/又は楕円形の形態の二次元アレイが好ましい。特に、正方形のアレイが最も好ましい。なぜならば、正方形の形状は円形の形状を最もよく近似し、個々の単体スピーカをいわば直角に配置することは、全体として正方形の二次元アレイをもたらし、単体スピーカを可能なかぎり互いに近付けて配置することを可能にするからである。特に、単体スピーカが、互いに接するように、又は互いに隣接する単体スピーカの間に存在する直接的な距離が5mm未満であり、特に3mm未満であるように、互いに近付けて配置される。
【0027】
図1Cに示した直列/並列接続は、すべてのスピーカが並列に接続される状況と比べ、全体としてのスピーカアレイが依然として相当のオーム抵抗を有することを可能にし、その結果、流れる電流がサウンドトランスデューサのボイスコイルのパワー処理能力を超えない。一方で、個々のスピーカのすべてを完全に直列に接続することに比べ、直列/並列接続によれば、直列に接続されたすべてのスピーカが互いに電気的影響を及ぼすということはない。このように、図1Cによる直列/並列接続は、単体スピーカの配線接続の複雑さと、単体スピーカによってあらかじめ定められる最大電流についての仕様との間の正当な妥協を表わしている。
【0028】
図1Dは、図1Aに示した実施形態の別の実施例を示しており、単体スピーカが図1Aと同様に配置されているが、3ウェイのシステムとして制御される。ここでは、非収容の単体スピーカで構成される二次元のアレイが、低周波数の音色のスピーカで構成される第1の半アレイ13aと、低周波数の音色のスピーカで構成される第2の半アレイ13bとに構成されている。これら2つの半アレイ(あるいは、部分アレイ)は、中間周波数の音色のスピーカ13cで構成される他のアレイ、及びただ1つの高周波数の音色のスピーカ13dで構成されるさらに他のアレイから分離されている。図1Dに示した実施例においては、「x」で示された2つの単体スピーカは、サウンドの出力に寄与せず、受動ダイアフラムとしての振動を防止できるという趣旨で、短絡され、すなわち作動しないようにされている。
【0029】
図1Dに示した実施形態において、低周波数の音色の単体スピーカの数が、中間周波数の音色のスピーカ又は高周波数の音色のスピーカの数よりも相当に多いことに気付くことができる。この低周波数の音色の再生に有利な分割は、低周波数の音色範囲のための単体スピーカを組み合わせることによって、低周波数において充分な音圧をもたらすために行われており、そのような組み合わせは、低周波数の音色の単体スピーカを二次元のアレイにおいて可能なかぎり互いに近付けて配置することによって達成される。
【0030】
本発明によれば、内部の奥行きが2.4cmでしかない平坦なスピーカハウジングが使用され、結果として内部のエアボリュームのばね剛性が高いにもかかわらず、100Hz(−6dB)〜20kHz(−6dB)の周波数範囲の再生が101dB/1W/1mの感度で可能になる。この目的のため、21cm×21cmというサイズのアレイが25個の小型サウンドトランスデューサから形成され、サイズ(L×W×H)のハウジングに設置される。個々のドライバの制御は、可能なかぎり線形な振幅周波数応答及び主たる聴取方向における一様な指向性という目標に合わせて調節される。この目的のため、アレイは3ウェイシステムとして構成される。ダイアフラムへの駆動力の可能なかぎり一様な分布を実現し、多数の小さなダイアフラム面積によって平行振動の発生をより高い周波数へと高めるために、そのアレイの手法が選択されている。しかしながら、大きなダイアフラム面積と対照的に、個々のダイアフラムの重量が大幅に小さいことが、高周波数の再生にとって大きな利点である。
【0031】
特に波面合成の応用において、そのアレイの手法は、再生チャネルを形成するためにトランスデューサを任意にグループ化できる点で、隣接する再生チャネル間のスピーカの距離を可変なやり方で実現する可能性を提供する。波面合成における境界条件は、1kHzの音色の非エイリアシング再生について、17cmごとに1つのスピーカエレメントを存在させ、各々のスピーカエレメントをそれぞれ固有の信号で制御することを必要とする「空間サンプリング周波数」である。10kHzにおいては、その距離は1.7cmでなければならず、100Hzにおいてはその距離は1.7mでなければならない。1.7mという距離は容易に達成できるであろう。しかしながら、1.7cmという距離を達成することは困難であり、あるいはおおよそでしか可能でない。本発明の平面型スピーカは、比較的大きな幅を有する比較的大きな単体スピーカグループに低域通過フィルタ処理された信号を供給することを可能にする。低周波数の範囲において充分な音圧をもたらすためには単体スピーカがいずれにせよ二次元のアレイであることが必要とされるため、好都合な相乗効果が存在するであろう。それとは対照的に、隣り合うグループ又は隣接する単体スピーカには、より高い周波数のために、ダイアフラムの直径程度の大きさである小さなチャネル距離を生じさせるために、異なるスピーカ信号が供給される。スピーカ信号は、高域通過信号とすることができ、又は高域通過成分と低域通過成分を有する信号であってもよい。
【0032】
したがって、好ましくは、単体スピーカのさらなるアレイが存在し、1kHz超の信号成分を有する空間的に隣接した波面合成チャネルを再生する隣接する単体スピーカ又はより小さな小グループのグループに比べて距離が大きい単体スピーカの隣接グループによって、1kHz未満の限られた帯域幅を有する空間的に隣接した波面合成チャネルを再生できるように、二次元アレイの単体スピーカがグループ化される。
【0033】
本発明によれば、きわめて平坦でありながら、可能なかぎり広い周波数範囲にわたって線形な周波数応答を有し、良好なパルス応答及び応用において有用な一様な放射の挙動を呈し、1mという距離で101dB以上の最大音圧レベルを生成できるスピーカが得られる。この平面型スピーカは、周囲に目立たぬように組み込むことができるにもかかわらず、良好な送信特性を有している点で、好都合である。ハウジングは、5cm、好ましくは3.6cm、さらにより好ましくは3.0cmというきわめて小さな設置の奥行きを超えることがないような設計であるべきである。この目的のため、設置の奥行きがきわめて小さい音響ドライバが使用される。サウンドトランスデューサとして好ましいのはコーンスピーカの動電気力の原理である。それは、この技術が容易に制御可能で、かつ良好に機能するからである。設置の奥行きが小さいことが求められるがゆえに、小型のスピーカを使用する必要が生じ、結果として小さなダイアフラム面積を使用する必要が生じる。したがって、個々のドライバがグループ構成で使用され、そのような二次元のアレイにおいて、必要に応じて、同じダイアフラム面積を有する単体の大型の屈曲波トランスデューサ及び/又は単体のピストン式放射体とは対照的に、周波数に依存したアレイエレメントの制御によって、それぞれの有効放射体面積を変えることが可能である。この選択肢は、高周波数におけるサイドローブの形成の回避及び部分的振動の回避に関して好都合であり、ダイアフラムの半径は、可能であれば、部分的信号が重要でない周波数においてのみ生じるように選択される。公知の厚み振動子と比べて、顕著に大きいダイアフラムの振幅、したがってより大きい音のレベルを、より低い周波数範囲において達成することができる。したがって、二次元のアレイは、本発明の平面型スピーカにとって有利である。
【0034】
図6Aは、好ましく使用される小型スピーカ又は「小型シャシ」の正面図及び後面図を示している。小型シャシは、好ましくは、図6Aに示されるように、後方が開いたヘッドホンカプセルとして実現される。そのような非収容の単体スピーカについて、測定によって割り出されたパラメータが図6Bの表に示されている。そのような単体スピーカの屋外共振周波数は120Hzにある。
【0035】
図1Aに示したスピーカ及び本発明のさらなる実施形態によるスピーカ(図2A〜図2Eを参照して説明される)の両方において、閉じたハウジングが使用される。別の好ましい実施形態においては、特にバス・リフレックス・システムを備える開放型のハウジング(すなわち、この技術分野において公知のヘルムホルツ共振器としてのバス・リフレックス・ハウジング)を使用することもできる。
【0036】
平坦なハウジングの材料に関しては、充分に強固なハウジングを7mm未満、特に3mm以下の材料の厚さで得ることができるように、適度に剛な材料が好ましい。材料として、鋼板又はプラスチック異形材を使用することが好ましいが、木材も使用可能である。同一の周波数の縦基準振動及び横基準振動の影響を可能なかぎり受けにくくするために、全体としてのスピーカの辺の寸法が互いの整数倍でないことが好ましく、又はスピーカが平行な壁を持たないことが好ましい。それでもなお平行な壁による望ましい視覚的印象を有するようにするために、平行な壁を有する外ハウジングに平行でない壁を有する内ハウジングを挿入してもよい。図1Aに示した実施形態の内寸の例は、幅61.5cm、高さ80cm、及び奥行き2.4cmである。6mmのMDF板材を使用する場合には、63.7cmという幅、81.2cmという高さ、及び3.6cmという奥行きを有する外寸がもたらされる。
【0037】
ハウジングの共振を防止するために、ハウジングの内部に前面と後面との間に隆起を挿入することが好ましく、さらには外側から後壁に異形材を取り付けることが好ましい。例えば図2A及び図2Bに見られるように、スピーカの二次元アレイを、ハウジングの幅の中央で、辺に対して平行に、しかし高さに関しては偏心した位置に取りつけることが好ましい。単体スピーカは、特に個々の穴に収容され、ハウジング材料の中へと途中まで後退させられている。単体スピーカを、例えばホットメルト接着剤又は任意の他のシール材料を使用して接着することができ、特に音響的に封じることができる。
【0038】
スピーカのアレイ配置の利点は、個々のエレメント、すなわちアレイの個々の部分表面を、さまざまに制御できる点にある。アレイの有効エレメントを周波数に依存した方法で決定できるように、マルチウェイの制御を使用するのが好ましい。この目的のため、図1Dによって説明したような二次元のアレイが、低周波数の音色の再生のための2つの部分アレイ13a、13bに分割される。
【0039】
図1Dに示した実施形態に代わるものとして、中央の列では真ん中に位置する1つのスピーカ以外のスピーカが作動しないか又は存在しないようにした2ウェイの構成が考えられる。その場合には、ただ1つの中央のスピーカがただ1つの高周波数のスピーカとして働く。達成できる最大の音圧レベルを高めるために、図1Dに示した3ウェイのシステムが使用される。3ウェイによって放射されるサウンドの位相が正しく重ね合わせられるよう、低周波数の音色のアレイに比べて、中間周波数の音色の部分が特に0.5msだけ遅延させられ、高周波数の音色の部分が0.52msだけ遅延させられる。
【0040】
放射の挙動をさらに改善するために、図2Dに概略的に示されるように、ベッセル重み付け直線アレイの形態の高周波数の音色の経路を有する2ウェイの制御を使用することが好ましい。これにより、フォーカシング及びサイドローブの形成の抑制が改善される。この効果は、図2Dに示されるように、高周波の音色の単体スピーカ群が中央に配置され、低周波数の音色のスピーカで構成される二次元のアレイが2つの部分アレイ13a、13bに分割される場合にさらに改善される。しかしながら、図1Dと対照的に、図2においては、ただ1つのさらなる高周波の音色のアレイ13eしか存在せず、高周波の音色の単体スピーカ群が、図2Dに概略的に示されているように重み付けによって制御される。重み付け係数0.5、1、−1は、回路工学によりベッセル重み付けの簡単な実行のみにより得られていることに注意すべきである。それらの重み付け係数は、計算によれば0.11、0.44、0.76、−0.44及び0.11として得られるが、かなり多大な苦労を伴わなければ実現することができない。
【0041】
図2Dに示した制御は、アレイ13eの中央に位置する3つの単体スピーカが完全な振幅で制御され、これら3つの単体スピーカのうちの下方のスピーカが逆位相で制御される一方で、アレイ13eの一番上の単体スピーカ及び一番下の単体スピーカが半分の振幅で制御されるように実現される。ベッセル関数を使用して計算される係数とは対照的に、上述のレベル及び位相の状態は、きわめて単純な手段によって実現することができる。上述の振幅の状態は、アレイ13eの一番上及び一番下のスピーカの直列接続に、真ん中の3つの単体スピーカを並列に接続することによって生み出すことができる。図2Dにおいて「−1」の重み付け係数を有している単体スピーカにおいては、その位相は、図3に15で示されているように端子の極性を逆にすることによって簡単に実現される。
【0042】
図1Cと同様に、低周波数の音色のアレイの4つの列は、それぞれが5つの単体スピーカからなる4つのグループへとグループ化され、これらのグループが互いに並列に接続されている。これは、高周波の音色のアレイについて10オームという公称インピーダンスをもたらし、低周波数の音色のアレイについて56オームという公称インピーダンスをもたらす。低周波数の音色の単体スピーカのすべてを並列に接続することも考えられるが、その場合には、ボイスコイルをより多くの電流が流れる。しかし、これは、過負荷となって単体スピーカのボイスコイルの配線を壊す可能性がある。
【0043】
図3に示されているように、この実施形態においては、710Hzというカットオフ周波数を有する周波数分離手段16が好ましい。アレイの面積がより大きい場合、周波数分離手段はより低いカットオフ周波数を有するべきであり、アレイの面積がより小さい場合、周波数分離手段はより高いカットオフ周波数を有するべきである。周波数分離手段により、高周波数の音色の経路17aと低周波数の音色の経路17b(より一般的に言えば、低周波数の音色の経路と低周波数の音色成分を有さない高周波数の音色の経路の代わりの全帯域幅を有する経路)の両方が、好ましくは、それぞれイコライザEQ18a及び18bによって等しくされ、等しくされた信号が、さらに好ましくは、それぞれ増幅器19a及び19bによって増幅される。
【0044】
図2Aに示したスピーカにおいて、本発明の第2の実施形態によれば、閉じたシステムも使用される。ハウジングは非収容の単体スピーカのいわゆるティール−スモール(Thiele-Small)のパラメータを用いた計算にもとづいており、そこではハウジング及びアレイの組み合わせの全体としての品質Qtcが0.707でなければならない。このチューニングはバターワース(Butterworth)チューニングとも称され、理想的な自由大気の周波数応答の場合に最大の平滑さを呈する周波数応答に現れ、最小限に達成できる共振周波数に現れる。
【0045】
図2Aは、ハウジング前壁1a及びハウジング側壁1bを有する第2の実施形態によるスピーカの斜視図を示しており、そのスピーカは低反響室に配置されている。ハウジング前壁は、幅と、幅よりも大きい高さとを有しており、スピーカのアレイは、図2Bに示されているように、幅に関して中央、辺に対して平行に挿入し、かつ高さに関しては中央にではなく中央からずらして収容することが好ましい。図2Cは、開いたスピーカの後面図を示しており、隆起19a、19bが垂直方向に示され、隆起190cが水平方向に示されている。これらの隆起は、好ましくはハウジングの前側からハウジングの後ろ側まで設けられ、異なって駆動される単体スピーカのカプセル化を可能にする。さもないと、個々のダイアフラムの振動によって引き起こされるスピーカの内部の圧力変化が、同じ空間内で動作するすべての単体スピーカに悪影響を及ぼしかねない。これを避けるために、中央のアレイ列の単体スピーカは、いずれも隆起19a、19b、19cによって実現される仕切られた個々の空間において動作する。これらの単体スピーカは、高周波数の音色部分に使用され、すなわち自身の共振周波数のはるかに上方で動作するため、得られる空間の高価につく寸法付けは不要である。高周波数の音色の各々の単体スピーカに組み合わせられる空間は、0.0361リッターである。空間の寸法は、単体スピーカの寸法にもとづいて決定される。
【0046】
支え19a、19bが、ハウジングのさらなる補強を果たし、図2Cならびに図4A又は図4Bからわかるように、低周波数の音色のアレイのための空間を2つの部屋へと仕切っている。低周波数の音色のスピーカの部分アレイについてその全体の空間を2つの部屋へと仕切ることで、ハウジングの効率的な補強がもたらされ、ハウジングの前壁及び/又はハウジングの後壁の曲げ振動ならびにハウジング内の基準振動が抑制され、これに対応するスピーカの性能への悪影響が低減される。図4Bに21で示され、あるいは図4Aに22で示されているようなさらなる補強要素が、使用される木質材料の比較的低い剛性を改善するために挿入される。補強点の間の距離を最小にすることによって、スピーカの動作時に内部に存在する高い圧力に起因するハウジングの壁の共振を防止することができる。縦基準振動及び横基準振動が同時に形成されやすくならないように、ハウジングの高さと幅とは整数倍でないことが好ましい。図2A及び/又は図2Bに示した実施形態においては、内部の奥行きがやはり2.4cmである。図2Aに示した実施形態の外寸は、幅が35.2cm、高さが46.2cm、奥行きが3.6cmになる。これらの外寸は、この実施形態の他の好ましい寸法とともに、図4Aの概略図にも示されている。
【0047】
アレイをスピーカの前面において中心からずらして配置することが好ましい。スピーカの前面を介して音源から伝播する音波の音圧は、ひとたびエッジにぶつかると変化する。それは、波動のエネルギーが、変化した容積へと分かれるためである。ハウジングのエッジの場合、音波がハウジングを中心に曲がる。音波が伝播する空間及び波面の表面が大きくなる。この表面に作用する音圧が小さくなる。圧力の変化により、反対の位相を有する第2の音源がこのエッジに形成される。この第2の音源によって放射されるサウンドが、第1の音源によって放射されるサウンドに重なる。移動時間の差(2つの音源の間の距離、及びスピーカと聴取位置との間の距離によって左右される)に応じて、強め合い及び弱め合いの干渉が、スピーカの周波数応答において交互に生じる。移動時間の差に相当する行路差が波長の整数倍に一致する場合、該当の周波数において極小値が生じ、半波長の整数倍において極大値が生じる。仮にアレイがバッフルの中央に配置されると、0°の軸の付近の観測点において、バッフルの右辺及び左辺あるいは上辺及び下辺に関して移動時間が同一であることに起因して、干渉現象の重なり合いが生じる。その結果は、激しい低下及び上昇を特徴の一部とする位置依存性の周波数応答となる。これを避けるために、前板におけるアレイの位置は、中央の単体スピーカからハウジングの上辺、下辺、又は側縁までの距離が可能なかぎり相違し、互いの整数倍ではないように選択される。これにより、不都合であると考えられる、干渉の影響の同時発生が防止される。
【0048】
補強隆起によってハウジングを同じサイズの2つの部屋に仕切ることは、アレイを水平方向の中心に配置することを必要とする。例えば、アレイの中心から両側縁までの距離は、いずれの場合も17.6cmである。アレイの中心からハウジングの上辺までの距離は、14.1cmと測定される。したがって、ハウジングの下辺からの距離は、23.1cmである。この実施形態においては6mmという厚さを有し高周波数の音色のドライバを隔てるために使用されている帯状の部材が、後ろが開いているダイアフラムにおいて空気の圧縮を妨げることがないようにするために、アレイの単体スピーカは、すべてがすき間なく配置されているわけではない。むしろ、アレイの中央列の単体スピーカと、左側及び右側に隣接する列の単体スピーカとの間には、図4Aからわかるように、6mmの間隔が設けられている。
【0049】
ハウジングの基準振動を避けるために、ハウジングを減衰ウールによって減衰させることが好ましい。3cmの厚さ及び280g/m2の質量を有する減衰ウールを使用することができる。エネルギーが減衰材料における吸収によってハウジング基準振動から取り去られるため、そのようなハウジング基準振動は不完全にしか生じることができないか、又はまったく生じることができない。この原理は、高いサウンド速度についてのみ機能する。定常波の場合においてハウジングのエッジには圧力の最大値及び速度の最小値が常に存在するため、図2Cにおいて概念的に見て取ることができるとおり、ハウジングのエッジには約7cmの幅にわたり減衰材料は導入されない。
【0050】
好ましい実施形態による図2A〜図2Dにおいて説明したスピーカにおいて実行された種々の測定を、図5A〜図5Dを参照して以下で説明する。
【0051】
周波数分離手段16によるオーディオ信号の高周波数の音色部分及び低周波数の音色部分への分離が、周波数分離手段のための四次のリンクウィッツ−ライリー(Linkwitz-Riley)フィルタの助けを借りて実行される。周波数分離手段の透過関数が、図5Bに示されている。高周波数の音色部分のレベルが、低周波数の音色信号に比べて3dBだけ高められている。スピーカは、下流に接続された80Hzの高域通過フィルタを有している(図3には示されていない)。
【0052】
上記のフィルタ処理が加えられた信号がアレイへと供給される。図5Bは、0°の軸上での高周波数及び低周波数の音色の経路の周波数応答を示している。両方の経路の音響的な和が、図5Cに示されている均一化されていない周波数応答をもたらす。周波数応答の線形性及び低い周波数の両方を要件に近付けるために、イコライザ18a、18bを使用して均一化を実行することが好ましい。図5Dは、均一化された周波数応答を示しており、明らかにより良好な線形性を見て取ることができ、さらには低い周波数範囲における明らかに改善された性能及びより低い下方のカットオフ周波数が得られている。両方の経路によって放射されるサウンド成分が、重なり合いの領域において可能なかぎり理想的な様相で重なるように、高周波数の音色の経路を0.17msだけ遅延させることが好ましい。図5Dの測定技術によって特徴付けられる実施形態の周波数応答は、100Hz〜20kHzの範囲において線形化され、+/−2dBのリップルが達成されている。−6dBにおいて、カットオフ周波数は100Hzである。20kHzにおいて、音圧レベルは、やはり6dBだけ低下している。スピーカの平均電気感度は、101dB/1W/1mである。従来からのHiFiスピーカと比べて、この値は高く、非収容の単体スピーカの高い感度ゆえである。図2Eは、ハウジングのエッジにおける回折現象に起因する干渉を軽減するために、断頭ピラミッドと同様のハウジング前部に近付くように、斜めの面取りを有する平坦なハウジングの別の実施例を示している。このようにして、優れた線形の周波数応答を実現することができる。
【0053】
低周波数(すなわち、100Hz付近及びさらに下)においてスピーカによって放射される音圧を改善するために、本発明のいくつかの実施形態においては、平坦なハウジングを、完全には閉じておらず、1つ以上の開口をバッフルに有しているバス・リフレックス・ハウジングとして構成することができ、それらの開口を、チャネルとしてハウジングの中に延ばすこともできる。バス・リフレックス・システムのハウジングは、サウンドトランスデューサのための閉じた設置開口を有するヘルムホルツ共振器である。バス・リフレックス・チャネルは、共振の場合に最大振幅で振動する空気の塊を内部に有している。その共振器は、サウンドトランスデューサの共振周波数よりも低い共振周波数に調節され、低い周波数においてスピーカのサウンドの放射に大きく貢献する。正しく調節されたバスリフレックス構成は、2つの隣り合う極大値を有するインピーダンス曲線を有する。最大の音圧は、インピーダンスの2つの極大値の間に位置する極小値fbにおいて、バスリフレックス管によって放射される。それより高い周波数及びそれより低い周波数の方向において、バス・リフレックス・チャネルによって放射される音圧は低下する。バス・リフレックス・システムの調節の目的は、サウンドトランスデューサによって放射されるサウンド成分及びバスリフレックス開口によって放射されるサウンド成分の強め合いの重ね合わせにある。好ましい実施形態においては、バスリフレックス開口は、例えば図2Bに示したハウジングの下方の側壁に設けられ、このチャネル開口は矩形で5cmの幅を有するように構成される。そのとき、空間のためのリフレックス管の長さは、例えば3.3cmである。これらの条件において最適化されたハウジングは、寸法で、幅41.5cm、高さ66.2cm及び奥行き2.4cmという寸法を有する。バス・リフレックス・チャネルの開口は、他の実施形態においてはより大きくすることができ、具体的には、例えば17.2cmなど、空間の全幅に及ぶように拡大することができる。これに合わせ、リフレックス管の長さを増やすことができる。なぜならば、調節の周波数をそのままにする場合、開口の面積が大きくなるにつれて、長さも大きくしなければならないからである。
【0054】
別の実施例においては、リフレックス開口を、ハウジングの上部の狭い端部に配置してもよい。
【0055】
特に、サウンドトランスデューサとしての25個の小型スピーカからなる二次元配置を有している閉じたスピーカが好ましい。サウンドトランスデューサの数は、用途に応じて9〜49個の範囲にすることもできる。サウンドトランスデューサを正方形に配置することが好ましく、その二次元のアレイは、重要な低周波数の音色範囲をもたらす単体スピーカの部分アレイへと分割されつつ、別々の空間にて好ましく動作する。好ましくは、対称な2ウェイ配置が使用され、2つの部分アレイの間に位置して高周波数のスピーカとして働くさらなるアレイの単体スピーカが、ベッセル関数の係数によって重み付けされる。システムの励磁信号がスピーカコントローラを使用して均一化され、2つの出力段によって能動的に分離され、かつ増幅される。このようにして、達成可能な最大の音圧レベル、ならびに周波数応答及び高調波ひずみのリップルの両方について、HiFiにおいて一般的な値が実現される。このスピーカは、連続的であって過度の集中がなく、かつサイドローブを有していない指向性を特徴とする。
【0056】
本発明によるスピーカを、古典的なステレオ又はマルチチャネルの配置の両方において、好ましくは最も低い周波数範囲のためのサブウーハとともに使用することができる。アレイの考え方がシステムの高い評価につながる。すなわち、波面合成のためのスピーカパネルにおいて、隣り合う再生チャネルの間隔を、単体スピーカの小さな直径ゆえに最小にすることができる。単独の非収容の単体スピーカを個別に制御でき、すなわちアレイの特定の領域を別々に制御することができるため、時間に関して修正可能な制御動作を使用することもできる。ただ1つのスピーカだけが10kHzよりも上で動作する場合に、10kHzよりも上での垂直面におけるスピーカのバンドル効果を、修正されたアレイの制御によってさらに減らすことができる。その単一のスピーカの指向性に従って、10kHzよりも上での垂直放射角を、そのような3ウェイシステムを使用することによって増やすことができる。実施形態において使用される小型ドライバの周波数応答の音圧の上反りが好ましく取り除かれ、それ以上の均一化が不要になる。
【0057】
リアルタイムに関して重要でないスピーカの利用のために、均一化のためのフィルタの線形位相セットを使用することが好ましい。このようにして、スピーカ及びコントローラで構成されるシステムのグループ駆動時間を積極的に操作することができる。
【0058】
より低い周波数においてスピーカを改善するために、アレイの面積を増やすよりもむしろ、ダイアフラムの振幅を増すことによって放射される音圧を高めることが好ましい。ダイアフラムの振幅が2倍にされると、理想的には、放射される音圧も2倍になる。しかしながら、この目的のために、サウンドトランスデューサの構造を、振幅の増加に合わせた構成にしなければならない。動電気力サウンドトランスデューサの駆動部が生じさせる力は、磁石の磁束密度Bと、コイル巻線の長さLと、コイルを流れる電流Iとの積によって決定される。
【0059】
好ましくは、本発明のスピーカは、(例えば能動的な)周波数分離手段及び均一化ならびに多チャネルの増幅を採用してスピーカハウジングに組み込むことができるため、DSPにて、内部の信号処理を有するアクティブスピーカとして実現される。
【0060】
本発明のスピーカは、ハウジングの奥行きがきわめて小さいこと、安価に製造できること、ならびに測定技術及び主観的レベルの両方において説得力のある値であることを特徴とする。
【0061】
図7Aは、単体スピーカのさらなるアレイが、好ましくはスピーカの真ん中に存在しているスピーカを示しており、そこでは1つ以上の単体スピーカが、二次元アレイの単体スピーカに対して傾けられて配置されることで、さらなるアレイの単体スピーカの有効領域の表面の法線が二次元アレイの単体スピーカの有効領域の表面の法線とは異なっている。その傾きは、例えば法線に対して30°とすることができ、好ましくは10°〜70°の範囲とすることができる。この場合、たとえ平面型スピーカが壁に取り付けられて回転不可能であっても、聴取者は自身に向けられたスピーカを有することができる。しかしながら、低周波の音色のアレイはほぼ無指向性であるため、整列は必要とされない。
【0062】
図7Bは、単体スピーカのさらなるアレイが、ハウジングの中へと後退させられ、又は有効領域の前方に導波手段を有しているスピーカを示している。好ましくは、後退及び導波構造が、スピーカの平坦な表面を有するために使用される。さらに、高周波数のスピーカに必要なエアボリュームが、高い周波数ゆえに小さいか又はまったく不要であるため、中央の高周波数のスピーカの後退は問題にならない。導波構造は目的の領域における固有の指向性を均質化するように機能し、ホーン状の形状を有する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、サウンド再生システムに関し、特に広いサウンド再生帯域幅を有するスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
平面型スピーカの技術への関心が、最近の10年において顕著な高まりを見せている。これは、基本的には、5.1サラウンド又は波面合成などといった最新のサウンド再生方法がより多くの空間を必要とすることに起因し、ますます小型化及び/又は薄型化が進む例えば携帯電話機又はノート型コンピュータなどのマルチメディアデバイスにおいて、スピーカのための設置空間が減少していることに起因する。従来からのスピーカではなくて平面型のスピーカを使用することは、これらの要件の高まりに対応するためである。
【0003】
平面型スピーカの技術は、典型的にはKellogg及びRiceによるコーン型スピーカと同じように古いが、種々の平面型スピーカの技術について行われた研究により、非収容の平面型スピーカを壁に直接取りつけること、及び平坦なスピーカハウジングを使用することのどちらも、かなりの音質低下を伴うことが示されている。従来技術を、Beer, D.の「Flachlautsprecher-ein Uberblick(平面型スピーカ−その概要)」、DAGA08 trade fair、March 2008、Dresden; H. Azima及びJ. Panzerの「Distributed-Mode Loudspeakers(DML) in Small Enclosures」、106th AES Convention、Munich、Germany、May 1999; Beerらの「The air spring effect of flat panel speakers」、124th AES Convention、May 2008、Amsterdam/The Netherlands; 及びWagner, Rolandの「Electrostatic Loudspeaker-Design and Construction」、Audio Amateure Press、Peterborough、New Hampshire、1993に見つけることができる。
【0004】
非収容の平面型スピーカは、典型的には、音響的な短絡に起因して低周波数の音色範囲の音圧レベルが低いダイポール放射体である。そのようなダイポールが壁の近くに設置される場合、後方へのサウンド成分が反射してダイアフラムの前面から放射されるサウンド部分と重なり合うこと、及びそれに関連した回折効果により、短絡周波数よりも上において、くし形フィルタ状のサウンドの着色が生じる。この理由で、従来からのスピーカにおいて、スピーカハウジングが使用されている。しかしながら、平たい設計の利点を維持するために、典型的には内側のエアボリュームが比較的少ない平坦なハウジングが使用される。従来からのスピーカとまったく同じように、エアボリュームが小さすぎると、サウンドトランスデューサの基本共振周波数が高くなる。結果として、下方のカットオフ周波数も高くなり、低周波数の音色の再生が減少することになる。
【0005】
US 2005/0201583 A1が、ダイポールの原理にもとづく低周波数の二次元アレイを開示している。このシステムは、開放フレームを有する支持システムを備えており、複数のサブウーハが、水平面及び垂直面の両方に制御されたサウンドの分散をもたらすために、ダイポールの二次元アレイの構成にて開放フレームシステムに収容されている。サブウーハは、約300Hzを下回る低周波数のサウンドの分散をもたらすように動作することができる。
【0006】
DE 695 07 896 T2が、制御された方向感受性を有するスピーカ装置を開示している。そのスピーカ装置は、少なくとも3つのスピーカを所定のパターンに従って第1の直線に沿って配置してなる第1のセットを有しており、スピーカからスピーカまでの距離が可変の様相で構成され、スピーカを互いに接するように配置することも可能になっている。
【0007】
米国特許第2,602,860号が、9個の円錐スピーカがただ1つのフレームに3×3の列にてそれぞれ対称に配置されているスピーカ構造を開示している。そのフレームは、放射の角度を増やすべく互いに傾けられたセグメントを備えている。例えば、スピーカの縁の間の距離はスピーカの半径よりも小さくすべきであるとされており、すべてのスピーカが1つの同じ音源によって動作する。さらに、ハウジングによる空気の移動に関しては制限すべきでないとされている。空気の移動の制限は低周波数における性能に悪影響を及ぼすと考えられるからである。
【0008】
米国特許第4,399,328号が、電子音響トランスデューサの制御動作の特定の状況がもたらされるように、種々の振幅を使用して制御される電子音響トランスデューサからなり、方向及び周波数について独立であるカラムを開示している。
【0009】
米国特許第6,801,631 B1号が、最適な音響サウンド放射パターンを達成すべく平面内に配置された複数のトランスデューサを特徴とするスピーカシステムを開示している。4つの中央トランスデューサ(ウーハ)が低い周波数及び中間の周波数を再生すべく協働し、これらのウーハは、いずれの2つのウーハも共通の垂直軸又は共通の水平軸を共有することがないように配置されている。さらに、第5のトランスデューサ、特に高い周波数のツイータが、ウーハの間の中央の位置に配置されて設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、優れたスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載のスピーカによって達成される。
【0012】
本発明は、安価かつ平坦でありながら品質が高いスピーカを、いずれも平たい形状を有している非収容の単体スピーカで構成される二次元のアレイを平たいハウジングに配置することで実現できるという発見にもとづいており、このスピーカは、広い再生帯域幅又は所望の狭い(例えば、低い)周波数範囲における充分な音圧を有している。
【0013】
このスピーカは、平坦な単体スピーカ(典型的には、直径も小さい)の使用により、必要とされる空間がきわめて小さい点で好都合である。非収容の単体スピーカが小型かつ平たいという事実によって、単体スピーカあたりの必要なハウジング容積も比較的小さい。その結果、平坦なハウジングのハウジング容積が小さいので、スピーカ全体をコンパクトに設計できる。単体スピーカとして、低い屋外共振を有するエレメントが好ましい。この場合、典型的には等価エアボリュームも小さい。ここで、単体スピーカのダイアフラムの懸架の剛性が、等価エアボリュームの剛性に一致させられる。この観点から、150Hz未満、特に120Hz未満、さらには100Hz未満の共振周波数を有する単体スピーカが好ましい。
【0014】
本発明のさらなる利点は、平坦な非収容の単体スピーカを使用できることにより、必要なハウジング容積が、ほぼ任意の形状にてもたらされ、すなわち平坦なハウジングにてもたらされる点にある。さらに、平坦な形状を有する非収容の単体スピーカを利用することは、これら単体スピーカをきわめて低いコストで大量に入手できるという利点を有する。これらの非収容の単体スピーカを二次元のアレイに配置することによって、100Hzなどの低い周波数においても充分な音圧を生み出すために低周波数におけるスピーカの結合が利用される。対照的に、小型な単体スピーカ(すなわち、比較的小さいダイアフラム径を有する単体スピーカ)の利用は、比較的大きいダイアフラムを有するスピーカの利用に比べて、特に高い周波数において、きわめて有利である。なぜならば、小さなダイアフラムにおいては、比較的大きいダイアフラムと比較して、より高い周波数でなければ部分的振動が生じないからである。
【0015】
さらなる利点は、多数の非収容の単体スピーカ、すなわち二次元アレイの部分領域を、さまざまに制御できる点にある。その目的は、このスピーカが単体スピーカのアレイを備え、そのアレイが大きな寸法を有しているという事実にもかかわらず、スピーカの前方の空間において可能なかぎり位置にほとんど依存しない全領域の音波への暴露を実現することにある。
【0016】
好ましくは、このスピーカは、もっぱら同一の単体スピーカを備えている。それらの単体スピーカはヘッドホンカプセルであってもよく、大まかに言えば、例えば小型サウンドトランスデューサであってもよい。その結果として、スピーカを安価に製造することが可能になる。さらなる好ましい実施形態においては、単体スピーカがいくつかのアレイにグループ化される。例えば、2ウェイシステムが採用される場合に、単体スピーカを備える二次元のアレイが低周波数の音色の再生のために設けられ、1つ以上の同一の単体スピーカからなるアレイが高周波数の音色の再生のために設けられる。あるいは、第2のアレイがいくつかの中間周波数のスピーカを備えており、高周波数の音色範囲が好ましくは1つ又は少数の単体スピーカによって担当される3ウェイシステムを実現することも可能である。しかしながら、非収容の平坦な単体スピーカを複数個使用する1ウェイシステムが、驚くほど広い再生範囲において良好な再生をすでに提供する。
【0017】
他の実施形態においては、二次元アレイに低域通過信号のみを供給し、全帯域幅を有するオーディオ信号を、中間周波数及び高周波数を担当するさらなるアレイにおいて利用できるようにすることが好ましい。これは、この場合における周波数分離手段が、高域通過関数を有さずに、低域通過関数だけを有することを意味する。
【0018】
本発明の好ましい実施形態においては、平坦なスピーカハウジングが5cm未満の奥行きしか有しておらず、特に3cm未満の奥行きしか有していないにもかかわらず、同一の単体スピーカにて100Hz〜20kHzの周波数範囲の再生を少なくとも90dB/1W/1mの感度で可能にするスピーカが得られる。好ましい実施形態は二次元アレイを形成する25個の小型サウンドトランスデューサを含んでおり、その二次元アレイはおよそ21×21cmのサイズを有し、低い周波数の音色の再生のための2つの部分アレイとその2つの部分アレイの間に位置する高周波数の音色の再生のための直線アレイを備えているものである。
【0019】
本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して、以下で詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明の第1の実施形態によるスピーカの正面図を示している。
【図1B】本発明の第1の実施形態によるスピーカの後面図を示している。
【図1C】一実施形態による非収容の単体スピーカの配線接続を示している。
【図1D】3ウェイ制御について、図1Aのアレイ構成要素の周波数に関する分割を示している。
【図2A】本発明の第2の実施形態によるスピーカの正面図を示している。
【図2B】図2Aのスピーカのハウジングの図を示している。
【図2C】ハウジング後壁を除いた図2Aのスピーカの後面図を示している。
【図2D】2ウェイ制御について、非収容の単体スピーカの制御の構成を示している。
【図2E】斜めの面取りを有する図2Aのスピーカの別の実施例を示している。
【図3】図2Dに示したスピーカの制御の構成のための追加の駆動電子部を有する非収容の単体スピーカの配線接続を示している。
【図4A】図2A、図2B及び図2Cのスピーカの平坦なハウジングの概略図を示している。
【図4B】図2A、図2B及び図2Cのスピーカのハウジングの別の概略図を示している。
【図5A】2ウェイ制御のための周波数分離手段の伝達関数を示している。
【図5B】図2Aに示したスピーカについて、高周波数及び低周波数の音色の経路の周波数応答を示している。
【図5C】図2A〜2Dによる2ウェイスピーカの均一化されていない周波数応答を示している。
【図5D】図3による制御を備えた図2Aのスピーカの均一化された周波数応答を示している。
【図6A】ヘッドホンカプセルの形態である好ましい非収容の単体スピーカの正面図及び後面図を示している。
【図6B】図6Aの非収容の単体スピーカの技術データを示している。
【図7A】互いに傾けられて配置された高周波数及び/又は中間周波数範囲のスピーカを有している平面型スピーカの応用分野の概略図を示している。
【図7B】中間周波数又は高周波数の音色の後退させられたアレイを有しているスピーカの概略図を示しており、中間周波数又は高周波数の音色のアレイの指向パターンを均質化するためのホーン又は導波部が備えられている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1Aは、本発明の一実施形態によるスピーカの正面図を示している。図1Aのスピーカは、非収容の単体スピーカ11a、11b、11c、・・・で構成される二次元のアレイ10を備えており、非収容の単体スピーカの各々は、例えば非収容の単体スピーカ11dの図1Bの後面図においてすでに見ることができるように、平坦な形状を有している。特に、図1Aの正面図は単体スピーカの前部領域(すなわち、スピーカのダイアフラムの平面図)を示しており、後面図は、単体スピーカの全体が、図1Bに示されているハウジング及び/又は対応するハウジング穴に収容され、穴からほとんど突き出さないように、充分に平坦であることを示している。図4Aにおいても見られるように、図1B及び図1Aにおいて例として使用され図6Aに詳しく示されている非収容の単体スピーカに関し、その単体スピーカは、スピーカのわずかな部分だけがハウジングの前壁よりも突き出し、さらに、スピーカのわずかな部分だけがハウジングの前壁から後ろ側へと突き出すように、スピーカの前壁の材料の全体としての厚さの範囲内にほぼ完全に収容されている。一実施形態においては、ハウジングの前壁からのスピーカの突き出しがわずかに4.5mmであり、ハウジングの前壁の後ろ側において、スピーカは約1.5mmしか突き出しておらず、きわめて平坦な単体スピーカである。
【0022】
しかしながら、優れた性能を理由に、基本的にコーンスピーカのように設計された動電気力型の非収容単体スピーカを使用することが好ましい。コーンスピーカは、システム関連の最小限の奥行きを本質的に有する。しかしながら、特にヘッドホンカプセルにおいては、この奥行きはきわめて小さい。したがって、例えばきわめて奥行きが小さく、すなわち設計奥行きが例えばわずか10.6mmである図6A及び図6Bに示されているようなヘッドホンカプセルが好適であるとともに、低コストで提供されている。
【0023】
図1Cは、1ウェイの実施例の場合における図1Aの個々の非収容の単体スピーカの制御を示している。特に、少なくとも2つのスピーカからなる少なくとも2つのグループの各々が、二次元アレイの非収容の単体スピーカから形成されている。図1Cに示した実施形態においては5つのグループ12a〜12eが形成され、各々のグループが、5つの単体スピーカを有しており、したがって全体としてのスピーカは、合計で25個の非収容の単体スピーカを備えている。
【0024】
単体スピーカの数が9〜49個の間でさまざまであるスピーカを用意することが一般的には好ましいが、単体スピーカの正確な数は、スピーカの個々の条件に依存し、必要とされる音圧レベル(特に、スピーカの設計において対象とされる低い周波数範囲の音圧レベル)に依存して決まる。
【0025】
図1A及び図1Bに示した実施形態において、単体スピーカのダイアフラムの直径は、36mmである。好ましい実施形態においては、ダイアフラムの直径が5cmよりも小さく、好ましくは4cmよりも小さいような非収容の単体スピーカが好ましい。なぜならば、本発明の二次元アレイの構成においては、高周波数の音色範囲の性能が、単体スピーカのダイアフラムの直径が小さくなるにつれて向上するからである。比較的小さい単体スピーカによって達成される比較的小さいダイアフラムの面積、及び非収容の単体スピーカの使用が、単体スピーカをより密に配置して、アレイの全体サイズを小さくすることを可能にする。その結果として指向性が少なくなる。さらに、室内の音圧レベルの顕著な空間的変動につながりかねない部分的振動が、あまり問題にならないより高い周波数へと移動する。たとえ部分的振動がそこで生じても、もはや低い周波数の位置ではないという事実により、もはや妨害にはならない。
【0026】
低い周波数において生じる音圧レベルの低下は、複数の単体スピーカをアレイに組み合わせて配置することによって補償されるが、低周波数の音色の再生のための単体スピーカは、例えば直線アレイよりもむしろ二次元アレイに配置することが不可欠である。二次元のアレイは、少なくとも2つの隣接する列を必要とし、一方の列は少なくとも2つのスピーカを有さなければならず、他方の列は少なくとも1つのスピーカを有さなければならない。例えば、図1Aのスピーカ11a、11b、11cで構成された三角形配置が、すでに二次元のアレイであり、長方形、正方形、あるいは円形及び/又は楕円形の形態の二次元アレイが好ましい。特に、正方形のアレイが最も好ましい。なぜならば、正方形の形状は円形の形状を最もよく近似し、個々の単体スピーカをいわば直角に配置することは、全体として正方形の二次元アレイをもたらし、単体スピーカを可能なかぎり互いに近付けて配置することを可能にするからである。特に、単体スピーカが、互いに接するように、又は互いに隣接する単体スピーカの間に存在する直接的な距離が5mm未満であり、特に3mm未満であるように、互いに近付けて配置される。
【0027】
図1Cに示した直列/並列接続は、すべてのスピーカが並列に接続される状況と比べ、全体としてのスピーカアレイが依然として相当のオーム抵抗を有することを可能にし、その結果、流れる電流がサウンドトランスデューサのボイスコイルのパワー処理能力を超えない。一方で、個々のスピーカのすべてを完全に直列に接続することに比べ、直列/並列接続によれば、直列に接続されたすべてのスピーカが互いに電気的影響を及ぼすということはない。このように、図1Cによる直列/並列接続は、単体スピーカの配線接続の複雑さと、単体スピーカによってあらかじめ定められる最大電流についての仕様との間の正当な妥協を表わしている。
【0028】
図1Dは、図1Aに示した実施形態の別の実施例を示しており、単体スピーカが図1Aと同様に配置されているが、3ウェイのシステムとして制御される。ここでは、非収容の単体スピーカで構成される二次元のアレイが、低周波数の音色のスピーカで構成される第1の半アレイ13aと、低周波数の音色のスピーカで構成される第2の半アレイ13bとに構成されている。これら2つの半アレイ(あるいは、部分アレイ)は、中間周波数の音色のスピーカ13cで構成される他のアレイ、及びただ1つの高周波数の音色のスピーカ13dで構成されるさらに他のアレイから分離されている。図1Dに示した実施例においては、「x」で示された2つの単体スピーカは、サウンドの出力に寄与せず、受動ダイアフラムとしての振動を防止できるという趣旨で、短絡され、すなわち作動しないようにされている。
【0029】
図1Dに示した実施形態において、低周波数の音色の単体スピーカの数が、中間周波数の音色のスピーカ又は高周波数の音色のスピーカの数よりも相当に多いことに気付くことができる。この低周波数の音色の再生に有利な分割は、低周波数の音色範囲のための単体スピーカを組み合わせることによって、低周波数において充分な音圧をもたらすために行われており、そのような組み合わせは、低周波数の音色の単体スピーカを二次元のアレイにおいて可能なかぎり互いに近付けて配置することによって達成される。
【0030】
本発明によれば、内部の奥行きが2.4cmでしかない平坦なスピーカハウジングが使用され、結果として内部のエアボリュームのばね剛性が高いにもかかわらず、100Hz(−6dB)〜20kHz(−6dB)の周波数範囲の再生が101dB/1W/1mの感度で可能になる。この目的のため、21cm×21cmというサイズのアレイが25個の小型サウンドトランスデューサから形成され、サイズ(L×W×H)のハウジングに設置される。個々のドライバの制御は、可能なかぎり線形な振幅周波数応答及び主たる聴取方向における一様な指向性という目標に合わせて調節される。この目的のため、アレイは3ウェイシステムとして構成される。ダイアフラムへの駆動力の可能なかぎり一様な分布を実現し、多数の小さなダイアフラム面積によって平行振動の発生をより高い周波数へと高めるために、そのアレイの手法が選択されている。しかしながら、大きなダイアフラム面積と対照的に、個々のダイアフラムの重量が大幅に小さいことが、高周波数の再生にとって大きな利点である。
【0031】
特に波面合成の応用において、そのアレイの手法は、再生チャネルを形成するためにトランスデューサを任意にグループ化できる点で、隣接する再生チャネル間のスピーカの距離を可変なやり方で実現する可能性を提供する。波面合成における境界条件は、1kHzの音色の非エイリアシング再生について、17cmごとに1つのスピーカエレメントを存在させ、各々のスピーカエレメントをそれぞれ固有の信号で制御することを必要とする「空間サンプリング周波数」である。10kHzにおいては、その距離は1.7cmでなければならず、100Hzにおいてはその距離は1.7mでなければならない。1.7mという距離は容易に達成できるであろう。しかしながら、1.7cmという距離を達成することは困難であり、あるいはおおよそでしか可能でない。本発明の平面型スピーカは、比較的大きな幅を有する比較的大きな単体スピーカグループに低域通過フィルタ処理された信号を供給することを可能にする。低周波数の範囲において充分な音圧をもたらすためには単体スピーカがいずれにせよ二次元のアレイであることが必要とされるため、好都合な相乗効果が存在するであろう。それとは対照的に、隣り合うグループ又は隣接する単体スピーカには、より高い周波数のために、ダイアフラムの直径程度の大きさである小さなチャネル距離を生じさせるために、異なるスピーカ信号が供給される。スピーカ信号は、高域通過信号とすることができ、又は高域通過成分と低域通過成分を有する信号であってもよい。
【0032】
したがって、好ましくは、単体スピーカのさらなるアレイが存在し、1kHz超の信号成分を有する空間的に隣接した波面合成チャネルを再生する隣接する単体スピーカ又はより小さな小グループのグループに比べて距離が大きい単体スピーカの隣接グループによって、1kHz未満の限られた帯域幅を有する空間的に隣接した波面合成チャネルを再生できるように、二次元アレイの単体スピーカがグループ化される。
【0033】
本発明によれば、きわめて平坦でありながら、可能なかぎり広い周波数範囲にわたって線形な周波数応答を有し、良好なパルス応答及び応用において有用な一様な放射の挙動を呈し、1mという距離で101dB以上の最大音圧レベルを生成できるスピーカが得られる。この平面型スピーカは、周囲に目立たぬように組み込むことができるにもかかわらず、良好な送信特性を有している点で、好都合である。ハウジングは、5cm、好ましくは3.6cm、さらにより好ましくは3.0cmというきわめて小さな設置の奥行きを超えることがないような設計であるべきである。この目的のため、設置の奥行きがきわめて小さい音響ドライバが使用される。サウンドトランスデューサとして好ましいのはコーンスピーカの動電気力の原理である。それは、この技術が容易に制御可能で、かつ良好に機能するからである。設置の奥行きが小さいことが求められるがゆえに、小型のスピーカを使用する必要が生じ、結果として小さなダイアフラム面積を使用する必要が生じる。したがって、個々のドライバがグループ構成で使用され、そのような二次元のアレイにおいて、必要に応じて、同じダイアフラム面積を有する単体の大型の屈曲波トランスデューサ及び/又は単体のピストン式放射体とは対照的に、周波数に依存したアレイエレメントの制御によって、それぞれの有効放射体面積を変えることが可能である。この選択肢は、高周波数におけるサイドローブの形成の回避及び部分的振動の回避に関して好都合であり、ダイアフラムの半径は、可能であれば、部分的信号が重要でない周波数においてのみ生じるように選択される。公知の厚み振動子と比べて、顕著に大きいダイアフラムの振幅、したがってより大きい音のレベルを、より低い周波数範囲において達成することができる。したがって、二次元のアレイは、本発明の平面型スピーカにとって有利である。
【0034】
図6Aは、好ましく使用される小型スピーカ又は「小型シャシ」の正面図及び後面図を示している。小型シャシは、好ましくは、図6Aに示されるように、後方が開いたヘッドホンカプセルとして実現される。そのような非収容の単体スピーカについて、測定によって割り出されたパラメータが図6Bの表に示されている。そのような単体スピーカの屋外共振周波数は120Hzにある。
【0035】
図1Aに示したスピーカ及び本発明のさらなる実施形態によるスピーカ(図2A〜図2Eを参照して説明される)の両方において、閉じたハウジングが使用される。別の好ましい実施形態においては、特にバス・リフレックス・システムを備える開放型のハウジング(すなわち、この技術分野において公知のヘルムホルツ共振器としてのバス・リフレックス・ハウジング)を使用することもできる。
【0036】
平坦なハウジングの材料に関しては、充分に強固なハウジングを7mm未満、特に3mm以下の材料の厚さで得ることができるように、適度に剛な材料が好ましい。材料として、鋼板又はプラスチック異形材を使用することが好ましいが、木材も使用可能である。同一の周波数の縦基準振動及び横基準振動の影響を可能なかぎり受けにくくするために、全体としてのスピーカの辺の寸法が互いの整数倍でないことが好ましく、又はスピーカが平行な壁を持たないことが好ましい。それでもなお平行な壁による望ましい視覚的印象を有するようにするために、平行な壁を有する外ハウジングに平行でない壁を有する内ハウジングを挿入してもよい。図1Aに示した実施形態の内寸の例は、幅61.5cm、高さ80cm、及び奥行き2.4cmである。6mmのMDF板材を使用する場合には、63.7cmという幅、81.2cmという高さ、及び3.6cmという奥行きを有する外寸がもたらされる。
【0037】
ハウジングの共振を防止するために、ハウジングの内部に前面と後面との間に隆起を挿入することが好ましく、さらには外側から後壁に異形材を取り付けることが好ましい。例えば図2A及び図2Bに見られるように、スピーカの二次元アレイを、ハウジングの幅の中央で、辺に対して平行に、しかし高さに関しては偏心した位置に取りつけることが好ましい。単体スピーカは、特に個々の穴に収容され、ハウジング材料の中へと途中まで後退させられている。単体スピーカを、例えばホットメルト接着剤又は任意の他のシール材料を使用して接着することができ、特に音響的に封じることができる。
【0038】
スピーカのアレイ配置の利点は、個々のエレメント、すなわちアレイの個々の部分表面を、さまざまに制御できる点にある。アレイの有効エレメントを周波数に依存した方法で決定できるように、マルチウェイの制御を使用するのが好ましい。この目的のため、図1Dによって説明したような二次元のアレイが、低周波数の音色の再生のための2つの部分アレイ13a、13bに分割される。
【0039】
図1Dに示した実施形態に代わるものとして、中央の列では真ん中に位置する1つのスピーカ以外のスピーカが作動しないか又は存在しないようにした2ウェイの構成が考えられる。その場合には、ただ1つの中央のスピーカがただ1つの高周波数のスピーカとして働く。達成できる最大の音圧レベルを高めるために、図1Dに示した3ウェイのシステムが使用される。3ウェイによって放射されるサウンドの位相が正しく重ね合わせられるよう、低周波数の音色のアレイに比べて、中間周波数の音色の部分が特に0.5msだけ遅延させられ、高周波数の音色の部分が0.52msだけ遅延させられる。
【0040】
放射の挙動をさらに改善するために、図2Dに概略的に示されるように、ベッセル重み付け直線アレイの形態の高周波数の音色の経路を有する2ウェイの制御を使用することが好ましい。これにより、フォーカシング及びサイドローブの形成の抑制が改善される。この効果は、図2Dに示されるように、高周波の音色の単体スピーカ群が中央に配置され、低周波数の音色のスピーカで構成される二次元のアレイが2つの部分アレイ13a、13bに分割される場合にさらに改善される。しかしながら、図1Dと対照的に、図2においては、ただ1つのさらなる高周波の音色のアレイ13eしか存在せず、高周波の音色の単体スピーカ群が、図2Dに概略的に示されているように重み付けによって制御される。重み付け係数0.5、1、−1は、回路工学によりベッセル重み付けの簡単な実行のみにより得られていることに注意すべきである。それらの重み付け係数は、計算によれば0.11、0.44、0.76、−0.44及び0.11として得られるが、かなり多大な苦労を伴わなければ実現することができない。
【0041】
図2Dに示した制御は、アレイ13eの中央に位置する3つの単体スピーカが完全な振幅で制御され、これら3つの単体スピーカのうちの下方のスピーカが逆位相で制御される一方で、アレイ13eの一番上の単体スピーカ及び一番下の単体スピーカが半分の振幅で制御されるように実現される。ベッセル関数を使用して計算される係数とは対照的に、上述のレベル及び位相の状態は、きわめて単純な手段によって実現することができる。上述の振幅の状態は、アレイ13eの一番上及び一番下のスピーカの直列接続に、真ん中の3つの単体スピーカを並列に接続することによって生み出すことができる。図2Dにおいて「−1」の重み付け係数を有している単体スピーカにおいては、その位相は、図3に15で示されているように端子の極性を逆にすることによって簡単に実現される。
【0042】
図1Cと同様に、低周波数の音色のアレイの4つの列は、それぞれが5つの単体スピーカからなる4つのグループへとグループ化され、これらのグループが互いに並列に接続されている。これは、高周波の音色のアレイについて10オームという公称インピーダンスをもたらし、低周波数の音色のアレイについて56オームという公称インピーダンスをもたらす。低周波数の音色の単体スピーカのすべてを並列に接続することも考えられるが、その場合には、ボイスコイルをより多くの電流が流れる。しかし、これは、過負荷となって単体スピーカのボイスコイルの配線を壊す可能性がある。
【0043】
図3に示されているように、この実施形態においては、710Hzというカットオフ周波数を有する周波数分離手段16が好ましい。アレイの面積がより大きい場合、周波数分離手段はより低いカットオフ周波数を有するべきであり、アレイの面積がより小さい場合、周波数分離手段はより高いカットオフ周波数を有するべきである。周波数分離手段により、高周波数の音色の経路17aと低周波数の音色の経路17b(より一般的に言えば、低周波数の音色の経路と低周波数の音色成分を有さない高周波数の音色の経路の代わりの全帯域幅を有する経路)の両方が、好ましくは、それぞれイコライザEQ18a及び18bによって等しくされ、等しくされた信号が、さらに好ましくは、それぞれ増幅器19a及び19bによって増幅される。
【0044】
図2Aに示したスピーカにおいて、本発明の第2の実施形態によれば、閉じたシステムも使用される。ハウジングは非収容の単体スピーカのいわゆるティール−スモール(Thiele-Small)のパラメータを用いた計算にもとづいており、そこではハウジング及びアレイの組み合わせの全体としての品質Qtcが0.707でなければならない。このチューニングはバターワース(Butterworth)チューニングとも称され、理想的な自由大気の周波数応答の場合に最大の平滑さを呈する周波数応答に現れ、最小限に達成できる共振周波数に現れる。
【0045】
図2Aは、ハウジング前壁1a及びハウジング側壁1bを有する第2の実施形態によるスピーカの斜視図を示しており、そのスピーカは低反響室に配置されている。ハウジング前壁は、幅と、幅よりも大きい高さとを有しており、スピーカのアレイは、図2Bに示されているように、幅に関して中央、辺に対して平行に挿入し、かつ高さに関しては中央にではなく中央からずらして収容することが好ましい。図2Cは、開いたスピーカの後面図を示しており、隆起19a、19bが垂直方向に示され、隆起190cが水平方向に示されている。これらの隆起は、好ましくはハウジングの前側からハウジングの後ろ側まで設けられ、異なって駆動される単体スピーカのカプセル化を可能にする。さもないと、個々のダイアフラムの振動によって引き起こされるスピーカの内部の圧力変化が、同じ空間内で動作するすべての単体スピーカに悪影響を及ぼしかねない。これを避けるために、中央のアレイ列の単体スピーカは、いずれも隆起19a、19b、19cによって実現される仕切られた個々の空間において動作する。これらの単体スピーカは、高周波数の音色部分に使用され、すなわち自身の共振周波数のはるかに上方で動作するため、得られる空間の高価につく寸法付けは不要である。高周波数の音色の各々の単体スピーカに組み合わせられる空間は、0.0361リッターである。空間の寸法は、単体スピーカの寸法にもとづいて決定される。
【0046】
支え19a、19bが、ハウジングのさらなる補強を果たし、図2Cならびに図4A又は図4Bからわかるように、低周波数の音色のアレイのための空間を2つの部屋へと仕切っている。低周波数の音色のスピーカの部分アレイについてその全体の空間を2つの部屋へと仕切ることで、ハウジングの効率的な補強がもたらされ、ハウジングの前壁及び/又はハウジングの後壁の曲げ振動ならびにハウジング内の基準振動が抑制され、これに対応するスピーカの性能への悪影響が低減される。図4Bに21で示され、あるいは図4Aに22で示されているようなさらなる補強要素が、使用される木質材料の比較的低い剛性を改善するために挿入される。補強点の間の距離を最小にすることによって、スピーカの動作時に内部に存在する高い圧力に起因するハウジングの壁の共振を防止することができる。縦基準振動及び横基準振動が同時に形成されやすくならないように、ハウジングの高さと幅とは整数倍でないことが好ましい。図2A及び/又は図2Bに示した実施形態においては、内部の奥行きがやはり2.4cmである。図2Aに示した実施形態の外寸は、幅が35.2cm、高さが46.2cm、奥行きが3.6cmになる。これらの外寸は、この実施形態の他の好ましい寸法とともに、図4Aの概略図にも示されている。
【0047】
アレイをスピーカの前面において中心からずらして配置することが好ましい。スピーカの前面を介して音源から伝播する音波の音圧は、ひとたびエッジにぶつかると変化する。それは、波動のエネルギーが、変化した容積へと分かれるためである。ハウジングのエッジの場合、音波がハウジングを中心に曲がる。音波が伝播する空間及び波面の表面が大きくなる。この表面に作用する音圧が小さくなる。圧力の変化により、反対の位相を有する第2の音源がこのエッジに形成される。この第2の音源によって放射されるサウンドが、第1の音源によって放射されるサウンドに重なる。移動時間の差(2つの音源の間の距離、及びスピーカと聴取位置との間の距離によって左右される)に応じて、強め合い及び弱め合いの干渉が、スピーカの周波数応答において交互に生じる。移動時間の差に相当する行路差が波長の整数倍に一致する場合、該当の周波数において極小値が生じ、半波長の整数倍において極大値が生じる。仮にアレイがバッフルの中央に配置されると、0°の軸の付近の観測点において、バッフルの右辺及び左辺あるいは上辺及び下辺に関して移動時間が同一であることに起因して、干渉現象の重なり合いが生じる。その結果は、激しい低下及び上昇を特徴の一部とする位置依存性の周波数応答となる。これを避けるために、前板におけるアレイの位置は、中央の単体スピーカからハウジングの上辺、下辺、又は側縁までの距離が可能なかぎり相違し、互いの整数倍ではないように選択される。これにより、不都合であると考えられる、干渉の影響の同時発生が防止される。
【0048】
補強隆起によってハウジングを同じサイズの2つの部屋に仕切ることは、アレイを水平方向の中心に配置することを必要とする。例えば、アレイの中心から両側縁までの距離は、いずれの場合も17.6cmである。アレイの中心からハウジングの上辺までの距離は、14.1cmと測定される。したがって、ハウジングの下辺からの距離は、23.1cmである。この実施形態においては6mmという厚さを有し高周波数の音色のドライバを隔てるために使用されている帯状の部材が、後ろが開いているダイアフラムにおいて空気の圧縮を妨げることがないようにするために、アレイの単体スピーカは、すべてがすき間なく配置されているわけではない。むしろ、アレイの中央列の単体スピーカと、左側及び右側に隣接する列の単体スピーカとの間には、図4Aからわかるように、6mmの間隔が設けられている。
【0049】
ハウジングの基準振動を避けるために、ハウジングを減衰ウールによって減衰させることが好ましい。3cmの厚さ及び280g/m2の質量を有する減衰ウールを使用することができる。エネルギーが減衰材料における吸収によってハウジング基準振動から取り去られるため、そのようなハウジング基準振動は不完全にしか生じることができないか、又はまったく生じることができない。この原理は、高いサウンド速度についてのみ機能する。定常波の場合においてハウジングのエッジには圧力の最大値及び速度の最小値が常に存在するため、図2Cにおいて概念的に見て取ることができるとおり、ハウジングのエッジには約7cmの幅にわたり減衰材料は導入されない。
【0050】
好ましい実施形態による図2A〜図2Dにおいて説明したスピーカにおいて実行された種々の測定を、図5A〜図5Dを参照して以下で説明する。
【0051】
周波数分離手段16によるオーディオ信号の高周波数の音色部分及び低周波数の音色部分への分離が、周波数分離手段のための四次のリンクウィッツ−ライリー(Linkwitz-Riley)フィルタの助けを借りて実行される。周波数分離手段の透過関数が、図5Bに示されている。高周波数の音色部分のレベルが、低周波数の音色信号に比べて3dBだけ高められている。スピーカは、下流に接続された80Hzの高域通過フィルタを有している(図3には示されていない)。
【0052】
上記のフィルタ処理が加えられた信号がアレイへと供給される。図5Bは、0°の軸上での高周波数及び低周波数の音色の経路の周波数応答を示している。両方の経路の音響的な和が、図5Cに示されている均一化されていない周波数応答をもたらす。周波数応答の線形性及び低い周波数の両方を要件に近付けるために、イコライザ18a、18bを使用して均一化を実行することが好ましい。図5Dは、均一化された周波数応答を示しており、明らかにより良好な線形性を見て取ることができ、さらには低い周波数範囲における明らかに改善された性能及びより低い下方のカットオフ周波数が得られている。両方の経路によって放射されるサウンド成分が、重なり合いの領域において可能なかぎり理想的な様相で重なるように、高周波数の音色の経路を0.17msだけ遅延させることが好ましい。図5Dの測定技術によって特徴付けられる実施形態の周波数応答は、100Hz〜20kHzの範囲において線形化され、+/−2dBのリップルが達成されている。−6dBにおいて、カットオフ周波数は100Hzである。20kHzにおいて、音圧レベルは、やはり6dBだけ低下している。スピーカの平均電気感度は、101dB/1W/1mである。従来からのHiFiスピーカと比べて、この値は高く、非収容の単体スピーカの高い感度ゆえである。図2Eは、ハウジングのエッジにおける回折現象に起因する干渉を軽減するために、断頭ピラミッドと同様のハウジング前部に近付くように、斜めの面取りを有する平坦なハウジングの別の実施例を示している。このようにして、優れた線形の周波数応答を実現することができる。
【0053】
低周波数(すなわち、100Hz付近及びさらに下)においてスピーカによって放射される音圧を改善するために、本発明のいくつかの実施形態においては、平坦なハウジングを、完全には閉じておらず、1つ以上の開口をバッフルに有しているバス・リフレックス・ハウジングとして構成することができ、それらの開口を、チャネルとしてハウジングの中に延ばすこともできる。バス・リフレックス・システムのハウジングは、サウンドトランスデューサのための閉じた設置開口を有するヘルムホルツ共振器である。バス・リフレックス・チャネルは、共振の場合に最大振幅で振動する空気の塊を内部に有している。その共振器は、サウンドトランスデューサの共振周波数よりも低い共振周波数に調節され、低い周波数においてスピーカのサウンドの放射に大きく貢献する。正しく調節されたバスリフレックス構成は、2つの隣り合う極大値を有するインピーダンス曲線を有する。最大の音圧は、インピーダンスの2つの極大値の間に位置する極小値fbにおいて、バスリフレックス管によって放射される。それより高い周波数及びそれより低い周波数の方向において、バス・リフレックス・チャネルによって放射される音圧は低下する。バス・リフレックス・システムの調節の目的は、サウンドトランスデューサによって放射されるサウンド成分及びバスリフレックス開口によって放射されるサウンド成分の強め合いの重ね合わせにある。好ましい実施形態においては、バスリフレックス開口は、例えば図2Bに示したハウジングの下方の側壁に設けられ、このチャネル開口は矩形で5cmの幅を有するように構成される。そのとき、空間のためのリフレックス管の長さは、例えば3.3cmである。これらの条件において最適化されたハウジングは、寸法で、幅41.5cm、高さ66.2cm及び奥行き2.4cmという寸法を有する。バス・リフレックス・チャネルの開口は、他の実施形態においてはより大きくすることができ、具体的には、例えば17.2cmなど、空間の全幅に及ぶように拡大することができる。これに合わせ、リフレックス管の長さを増やすことができる。なぜならば、調節の周波数をそのままにする場合、開口の面積が大きくなるにつれて、長さも大きくしなければならないからである。
【0054】
別の実施例においては、リフレックス開口を、ハウジングの上部の狭い端部に配置してもよい。
【0055】
特に、サウンドトランスデューサとしての25個の小型スピーカからなる二次元配置を有している閉じたスピーカが好ましい。サウンドトランスデューサの数は、用途に応じて9〜49個の範囲にすることもできる。サウンドトランスデューサを正方形に配置することが好ましく、その二次元のアレイは、重要な低周波数の音色範囲をもたらす単体スピーカの部分アレイへと分割されつつ、別々の空間にて好ましく動作する。好ましくは、対称な2ウェイ配置が使用され、2つの部分アレイの間に位置して高周波数のスピーカとして働くさらなるアレイの単体スピーカが、ベッセル関数の係数によって重み付けされる。システムの励磁信号がスピーカコントローラを使用して均一化され、2つの出力段によって能動的に分離され、かつ増幅される。このようにして、達成可能な最大の音圧レベル、ならびに周波数応答及び高調波ひずみのリップルの両方について、HiFiにおいて一般的な値が実現される。このスピーカは、連続的であって過度の集中がなく、かつサイドローブを有していない指向性を特徴とする。
【0056】
本発明によるスピーカを、古典的なステレオ又はマルチチャネルの配置の両方において、好ましくは最も低い周波数範囲のためのサブウーハとともに使用することができる。アレイの考え方がシステムの高い評価につながる。すなわち、波面合成のためのスピーカパネルにおいて、隣り合う再生チャネルの間隔を、単体スピーカの小さな直径ゆえに最小にすることができる。単独の非収容の単体スピーカを個別に制御でき、すなわちアレイの特定の領域を別々に制御することができるため、時間に関して修正可能な制御動作を使用することもできる。ただ1つのスピーカだけが10kHzよりも上で動作する場合に、10kHzよりも上での垂直面におけるスピーカのバンドル効果を、修正されたアレイの制御によってさらに減らすことができる。その単一のスピーカの指向性に従って、10kHzよりも上での垂直放射角を、そのような3ウェイシステムを使用することによって増やすことができる。実施形態において使用される小型ドライバの周波数応答の音圧の上反りが好ましく取り除かれ、それ以上の均一化が不要になる。
【0057】
リアルタイムに関して重要でないスピーカの利用のために、均一化のためのフィルタの線形位相セットを使用することが好ましい。このようにして、スピーカ及びコントローラで構成されるシステムのグループ駆動時間を積極的に操作することができる。
【0058】
より低い周波数においてスピーカを改善するために、アレイの面積を増やすよりもむしろ、ダイアフラムの振幅を増すことによって放射される音圧を高めることが好ましい。ダイアフラムの振幅が2倍にされると、理想的には、放射される音圧も2倍になる。しかしながら、この目的のために、サウンドトランスデューサの構造を、振幅の増加に合わせた構成にしなければならない。動電気力サウンドトランスデューサの駆動部が生じさせる力は、磁石の磁束密度Bと、コイル巻線の長さLと、コイルを流れる電流Iとの積によって決定される。
【0059】
好ましくは、本発明のスピーカは、(例えば能動的な)周波数分離手段及び均一化ならびに多チャネルの増幅を採用してスピーカハウジングに組み込むことができるため、DSPにて、内部の信号処理を有するアクティブスピーカとして実現される。
【0060】
本発明のスピーカは、ハウジングの奥行きがきわめて小さいこと、安価に製造できること、ならびに測定技術及び主観的レベルの両方において説得力のある値であることを特徴とする。
【0061】
図7Aは、単体スピーカのさらなるアレイが、好ましくはスピーカの真ん中に存在しているスピーカを示しており、そこでは1つ以上の単体スピーカが、二次元アレイの単体スピーカに対して傾けられて配置されることで、さらなるアレイの単体スピーカの有効領域の表面の法線が二次元アレイの単体スピーカの有効領域の表面の法線とは異なっている。その傾きは、例えば法線に対して30°とすることができ、好ましくは10°〜70°の範囲とすることができる。この場合、たとえ平面型スピーカが壁に取り付けられて回転不可能であっても、聴取者は自身に向けられたスピーカを有することができる。しかしながら、低周波の音色のアレイはほぼ無指向性であるため、整列は必要とされない。
【0062】
図7Bは、単体スピーカのさらなるアレイが、ハウジングの中へと後退させられ、又は有効領域の前方に導波手段を有しているスピーカを示している。好ましくは、後退及び導波構造が、スピーカの平坦な表面を有するために使用される。さらに、高周波数のスピーカに必要なエアボリュームが、高い周波数ゆえに小さいか又はまったく不要であるため、中央の高周波数のスピーカの後退は問題にならない。導波構造は目的の領域における固有の指向性を均質化するように機能し、ホーン状の形状を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平たい形状を有する非収容の単体スピーカで構成された二次元アレイ(10)と、
前壁、後壁及び側壁を備えて、前記単体スピーカ(11a、11b、11c)を収容している平たいハウジング(1)と
を備えており、
前記平たいハウジング(1)が5cm未満の奥行きを有しているか、又は前記二次元アレイ(10)の非収容の単体スピーカ(11a、11b、11c)の直径が5cmよりも小さいスピーカ。
【請求項2】
単体スピーカからなるさらなるアレイ(13b、13c、13e)が存在し、該さらなるアレイの単体スピーカと前記二次元アレイの単体スピーカとの間の最小距離が、前記二次元アレイ(13a、13b)の2つの直に隣接する単体スピーカの間の最小距離よりも大きく、
さらなるアレイ(13e)を制御するために使用される高域通過信号(17a)と、前記二次元アレイ(1;13a、13b)を制御するために使用される低域通過信号(17b)とをもたらすための周波数分離手段(16)をさらに備えている請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
単体スピーカからなるさらなるアレイ(13b、13c、13e)が存在し、該さらなるアレイの単体スピーカと前記二次元アレイの単体スピーカとの間の最小距離が、2つの直に隣接する単体スピーカの間の最小距離よりも大きい請求項1に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記二次元アレイが、第1の二次元部分アレイ(13a)及び第2の二次元部分アレイ(13b)を備えており、該第1及び第2の二次元部分アレイの間に、前記さらなるアレイ(13c、13d、13e)が配置されている請求項2又は3に記載のスピーカ。
【請求項5】
さらなるアレイ(13e)を制御するために使用される高域通過信号(17a)と、前記二次元アレイ(1;13a、13b)を制御するために使用される低域通過信号(17b)とをもたらすための周波数分離手段(16)をさらに備えている請求項3又は4に記載のスピーカ。
【請求項6】
イコライザ(18a、18b)及び/又は増幅器(19a、19b)が、前記高域通過信号及び/又は前記低域通過信号のために設けられ、該イコライザ及び/又は増幅器が、所定の周波数範囲内の当該スピーカのサウンド出力の周波数応答を均一化するように構成されている請求項5に記載のスピーカ。
【請求項7】
前記平たいハウジング(1)が、該ハウジングの前壁と後壁とを接続する1つ以上の隆起(19a、19b、19c)を内部に備えており、該少なくとも1つの隆起は、前記二次元アレイ(1)の単体スピーカと前記さらなるアレイ(13e)の隣接する単体スピーカとの間に位置するように配置されている請求項2から6のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項8】
前記二次元アレイが、該アレイの中心が前記ハウジングの前壁の中心から該前壁の短辺の少なくとも10%だけは異なるように、前記ハウジングの前壁に偏心配置されている請求項1から7のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項9】
前記二次元アレイ(1;13a、13b)の単体スピーカの数が、前記さらなるアレイ(13c、13d、13e)の単体スピーカの数の少なくとも2倍である請求項2から8のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項10】
前記二次元アレイは、単体スピーカからなる少なくとも2つのグループ(12a、12b、12c、12d、12e)を備えており、各グループが、少なくとも2つの単体スピーカを含んでおり、グループ内の単体スピーカが直列接続され、グループが並列接続されている請求項1から9のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項11】
前記さらなるアレイ(13e)は、スピーカの直線アレイであり、前記さらなるアレイのうちの外側の単体スピーカに前記さらなるアレイのうちの中央のスピーカよりも振幅に関して弱い駆動信号を供給するように構成された制御回路が存在している請求項2から10のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項12】
前記二次元アレイのすべての単体スピーカ、又は当該スピーカ全体のすべての単体スピーカが、同一の有効領域を有している請求項1から11のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項13】
前記二次元アレイのすべての単体スピーカ、又は当該スピーカ全体のすべての単体スピーカが、動電気力スピーカである請求項1から12のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項14】
前記二次元アレイのすべての単体スピーカ、又は当該スピーカ全体のすべての単体スピーカが、コーンスピーカ又はピストン式放射体である請求項1から13のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項15】
前記二次元アレイのすべての単体スピーカ、又は当該スピーカ全体のすべての単体スピーカが、ヘッドホンカプセルである請求項1から14のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項16】
前記二次元アレイの各々の単体スピーカのダイアフラムの後ろ側と直近のハウジング壁との間に少なくとも0.8cmかつ最大で4cmの距離が存在するように、スピーカが前記ハウジングに配置されている請求項1から15のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項17】
前記二次元アレイの単体スピーカは、隣り合う単体スピーカの縁の間が3mm以上は離れず、又は互いに接するように、互いに充分に近付けて配置されている請求項1から16のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項18】
前記二次元アレイは、第1の部分アレイ(13a)、第2の部分アレイ(13b)及びさらなるアレイを含んでおり、
前記第1の部分アレイ(13a)及び第2の部分アレイ(13b)の各々は単体スピーカからなる隣接する2つの列を含んでおり、前記さらなるアレイは単体スピーカからなる1つの列を含んでおり、列ごとの単体スピーカの数がすべての列及びアレイについて同一である請求項1から17のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項19】
前記ハウジングは、前記二次元アレイの単体スピーカごとに必要とされる最小の容積に前記二次元アレイの単体スピーカの総数を掛け算したものに等しい容積を有するのに充分に大きい請求項1から18のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項20】
前記平たいハウジングの奥行きが、該ハウジングの前壁又は後ろ壁の短辺の1/10未満である請求項1から19のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項21】
前記二次元アレイのすべての単体スピーカは、配線長の相違を除けば相互の位相のずれのない制御信号によって制御されるように配線されており、単体スピーカとドライバ出力との間に位相シフタが存在せず、
前記二次元アレイの単体スピーカは、1ウェイシステムにおいてサウンドの帯域幅の全体をもたらすように構成され、又はマルチウェイシステムにおいて低周波数の音色範囲をもたらすように構成されている請求項1から20のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項22】
前記二次元アレイは第1の部分アレイ(13a)及び第2の部分アレイ(13b)へと分割され、前記ハウジングの前記第1の部分アレイ(13a)のための第1のハウジング空間と前記第2の部分アレイ(13b)のための第2のハウジング空間とをもたらすための連続的な仕切り(19a、19b)を備えており、前記第1のハウジング空間及び前記第2のハウジング空間が前記仕切り(19a、19b)によって互いから分離されている請求項1から21のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項23】
単体スピーカのさらなるアレイが存在し、該アレイは前記ハウジングの内側へと後退させられているか、又は有効領域の前側に導波手段を有している請求項1から22のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項24】
単体スピーカのさらなるアレイが存在し、該さらなるアレイにおいて、該さらなるアレイの単体スピーカの有効領域の表面の法線が前記二次元アレイの単体スピーカの有効領域の表面の法線とは異なるよう、1つ以上の単体スピーカが前記二次元アレイの単体スピーカに対して傾けられて配置されている請求項1から23のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項25】
単体スピーカのさらなるアレイが存在し、前記二次元アレイの単体スピーカは1kHz未満の限られた帯域幅を有する空間的に隣接した波面合成チャネルを単体スピーカの隣接グループによって再生できるようにグループ化されており、
該隣接グループ間の距離は、隣接する単体スピーカの間の距離よりも大きく、又は1kHz超の信号成分を有する空間的に隣接した波面合成チャネルを再生するためのより小さな小グループのグループに比べて大きい請求項1から24のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項1】
平たい形状を有する非収容の単体スピーカで構成された二次元アレイ(10)と、
前壁、後壁及び側壁を備えて、前記単体スピーカ(11a、11b、11c)を収容している平たいハウジング(1)と
を備えており、
前記平たいハウジング(1)が5cm未満の奥行きを有しているか、又は前記二次元アレイ(10)の非収容の単体スピーカ(11a、11b、11c)の直径が5cmよりも小さいスピーカ。
【請求項2】
単体スピーカからなるさらなるアレイ(13b、13c、13e)が存在し、該さらなるアレイの単体スピーカと前記二次元アレイの単体スピーカとの間の最小距離が、前記二次元アレイ(13a、13b)の2つの直に隣接する単体スピーカの間の最小距離よりも大きく、
さらなるアレイ(13e)を制御するために使用される高域通過信号(17a)と、前記二次元アレイ(1;13a、13b)を制御するために使用される低域通過信号(17b)とをもたらすための周波数分離手段(16)をさらに備えている請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
単体スピーカからなるさらなるアレイ(13b、13c、13e)が存在し、該さらなるアレイの単体スピーカと前記二次元アレイの単体スピーカとの間の最小距離が、2つの直に隣接する単体スピーカの間の最小距離よりも大きい請求項1に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記二次元アレイが、第1の二次元部分アレイ(13a)及び第2の二次元部分アレイ(13b)を備えており、該第1及び第2の二次元部分アレイの間に、前記さらなるアレイ(13c、13d、13e)が配置されている請求項2又は3に記載のスピーカ。
【請求項5】
さらなるアレイ(13e)を制御するために使用される高域通過信号(17a)と、前記二次元アレイ(1;13a、13b)を制御するために使用される低域通過信号(17b)とをもたらすための周波数分離手段(16)をさらに備えている請求項3又は4に記載のスピーカ。
【請求項6】
イコライザ(18a、18b)及び/又は増幅器(19a、19b)が、前記高域通過信号及び/又は前記低域通過信号のために設けられ、該イコライザ及び/又は増幅器が、所定の周波数範囲内の当該スピーカのサウンド出力の周波数応答を均一化するように構成されている請求項5に記載のスピーカ。
【請求項7】
前記平たいハウジング(1)が、該ハウジングの前壁と後壁とを接続する1つ以上の隆起(19a、19b、19c)を内部に備えており、該少なくとも1つの隆起は、前記二次元アレイ(1)の単体スピーカと前記さらなるアレイ(13e)の隣接する単体スピーカとの間に位置するように配置されている請求項2から6のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項8】
前記二次元アレイが、該アレイの中心が前記ハウジングの前壁の中心から該前壁の短辺の少なくとも10%だけは異なるように、前記ハウジングの前壁に偏心配置されている請求項1から7のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項9】
前記二次元アレイ(1;13a、13b)の単体スピーカの数が、前記さらなるアレイ(13c、13d、13e)の単体スピーカの数の少なくとも2倍である請求項2から8のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項10】
前記二次元アレイは、単体スピーカからなる少なくとも2つのグループ(12a、12b、12c、12d、12e)を備えており、各グループが、少なくとも2つの単体スピーカを含んでおり、グループ内の単体スピーカが直列接続され、グループが並列接続されている請求項1から9のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項11】
前記さらなるアレイ(13e)は、スピーカの直線アレイであり、前記さらなるアレイのうちの外側の単体スピーカに前記さらなるアレイのうちの中央のスピーカよりも振幅に関して弱い駆動信号を供給するように構成された制御回路が存在している請求項2から10のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項12】
前記二次元アレイのすべての単体スピーカ、又は当該スピーカ全体のすべての単体スピーカが、同一の有効領域を有している請求項1から11のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項13】
前記二次元アレイのすべての単体スピーカ、又は当該スピーカ全体のすべての単体スピーカが、動電気力スピーカである請求項1から12のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項14】
前記二次元アレイのすべての単体スピーカ、又は当該スピーカ全体のすべての単体スピーカが、コーンスピーカ又はピストン式放射体である請求項1から13のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項15】
前記二次元アレイのすべての単体スピーカ、又は当該スピーカ全体のすべての単体スピーカが、ヘッドホンカプセルである請求項1から14のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項16】
前記二次元アレイの各々の単体スピーカのダイアフラムの後ろ側と直近のハウジング壁との間に少なくとも0.8cmかつ最大で4cmの距離が存在するように、スピーカが前記ハウジングに配置されている請求項1から15のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項17】
前記二次元アレイの単体スピーカは、隣り合う単体スピーカの縁の間が3mm以上は離れず、又は互いに接するように、互いに充分に近付けて配置されている請求項1から16のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項18】
前記二次元アレイは、第1の部分アレイ(13a)、第2の部分アレイ(13b)及びさらなるアレイを含んでおり、
前記第1の部分アレイ(13a)及び第2の部分アレイ(13b)の各々は単体スピーカからなる隣接する2つの列を含んでおり、前記さらなるアレイは単体スピーカからなる1つの列を含んでおり、列ごとの単体スピーカの数がすべての列及びアレイについて同一である請求項1から17のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項19】
前記ハウジングは、前記二次元アレイの単体スピーカごとに必要とされる最小の容積に前記二次元アレイの単体スピーカの総数を掛け算したものに等しい容積を有するのに充分に大きい請求項1から18のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項20】
前記平たいハウジングの奥行きが、該ハウジングの前壁又は後ろ壁の短辺の1/10未満である請求項1から19のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項21】
前記二次元アレイのすべての単体スピーカは、配線長の相違を除けば相互の位相のずれのない制御信号によって制御されるように配線されており、単体スピーカとドライバ出力との間に位相シフタが存在せず、
前記二次元アレイの単体スピーカは、1ウェイシステムにおいてサウンドの帯域幅の全体をもたらすように構成され、又はマルチウェイシステムにおいて低周波数の音色範囲をもたらすように構成されている請求項1から20のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項22】
前記二次元アレイは第1の部分アレイ(13a)及び第2の部分アレイ(13b)へと分割され、前記ハウジングの前記第1の部分アレイ(13a)のための第1のハウジング空間と前記第2の部分アレイ(13b)のための第2のハウジング空間とをもたらすための連続的な仕切り(19a、19b)を備えており、前記第1のハウジング空間及び前記第2のハウジング空間が前記仕切り(19a、19b)によって互いから分離されている請求項1から21のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項23】
単体スピーカのさらなるアレイが存在し、該アレイは前記ハウジングの内側へと後退させられているか、又は有効領域の前側に導波手段を有している請求項1から22のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項24】
単体スピーカのさらなるアレイが存在し、該さらなるアレイにおいて、該さらなるアレイの単体スピーカの有効領域の表面の法線が前記二次元アレイの単体スピーカの有効領域の表面の法線とは異なるよう、1つ以上の単体スピーカが前記二次元アレイの単体スピーカに対して傾けられて配置されている請求項1から23のいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項25】
単体スピーカのさらなるアレイが存在し、前記二次元アレイの単体スピーカは1kHz未満の限られた帯域幅を有する空間的に隣接した波面合成チャネルを単体スピーカの隣接グループによって再生できるようにグループ化されており、
該隣接グループ間の距離は、隣接する単体スピーカの間の距離よりも大きく、又は1kHz超の信号成分を有する空間的に隣接した波面合成チャネルを再生するためのより小さな小グループのグループに比べて大きい請求項1から24のいずれか一項に記載のスピーカ。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【公表番号】特表2012−518304(P2012−518304A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549523(P2011−549523)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051382
【国際公開番号】WO2010/091999
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(500341779)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン (75)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051382
【国際公開番号】WO2010/091999
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(500341779)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン (75)
【Fターム(参考)】
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