スプライス止水構造部及びスプライス止水構造部の製造方法
【課題】紫外線硬化樹脂を全体的に硬化させること。
【解決手段】スプライス止水構造部10は、複数の電線20において絶縁被覆24の一部分が剥離されて露出した芯線22の一部分同士が接合されて形成されたスプライス部28を止水した構成である。このスプライス止水構造部10は、スプライス部28と露出芯線部23と被覆部25とを有する複数の電線20と、複数の電線20における被覆部25の露出芯線部23寄りの部分で、被覆部25同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に介在し、紫外線透過性を有する線間透過部30と、紫外線硬化樹脂を含む止水剤により形成され、スプライス部28と、露出芯線部23と、被覆部25における線間透過部30が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う第1止水部40と、第1止水部40を覆う筒状に形成され、紫外線透過性を有する第2止水部50とを備える。
【解決手段】スプライス止水構造部10は、複数の電線20において絶縁被覆24の一部分が剥離されて露出した芯線22の一部分同士が接合されて形成されたスプライス部28を止水した構成である。このスプライス止水構造部10は、スプライス部28と露出芯線部23と被覆部25とを有する複数の電線20と、複数の電線20における被覆部25の露出芯線部23寄りの部分で、被覆部25同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に介在し、紫外線透過性を有する線間透過部30と、紫外線硬化樹脂を含む止水剤により形成され、スプライス部28と、露出芯線部23と、被覆部25における線間透過部30が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う第1止水部40と、第1止水部40を覆う筒状に形成され、紫外線透過性を有する第2止水部50とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスのスプライス部における止水技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の電線の絶縁被覆を剥離して露出させた芯線同士を接続するスプライス部が止水処理されたワイヤーハーネスが開示されている。このワイヤーハーネスは、スプライス部、露出芯線部及び絶縁被覆部に光硬化性シリコーン樹脂を塗布し、絶縁樹脂シートをスプライス部、露出芯線部、絶縁被覆部及び光硬化性シリコーン樹脂を包囲するように巻き付け、絶縁樹脂シートの両端開口から光を照射して光硬化性シリコーン樹脂を硬化させて形成されている。すなわち、絶縁樹脂シートの長さ方向の両端開口からの光硬化シリコーン樹脂の流出を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−136039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1によると、絶縁樹脂シートの長さ方向の両端部では光硬化性シリコーン樹脂が硬化し得るものの、複数の電線が立体的に束ねられ、絶縁被覆部が互いに密着している場合、光が各絶縁被覆部に遮られてしまい、内部の光硬化性シリコーン樹脂のうち絶縁被覆部間に介在する部分が未硬化のまま残ってしまう恐れがある。
【0005】
そこで、この発明は、紫外線硬化樹脂を全体的に硬化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るスプライス止水構造部は、それぞれ芯線が絶縁被覆によって被覆されて形成され、前記絶縁被覆の一部が剥離されて露出した前記芯線の一部分同士が接合されて形成されたスプライス部と、前記芯線が前記絶縁被覆によって被覆されたままの被覆部と、前記スプライス部と前記被覆部との間で前記芯線が露出された露出芯線部とを有する複数の電線と、前記複数の電線における前記被覆部の前記露出芯線部寄りの部分で、前記被覆部同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に介在し、紫外線透過性を有する線間透過部と、紫外線硬化樹脂を含む止水剤により形成され、前記スプライス部と、前記露出芯線部と、前記被覆部における前記線間透過部が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う第1止水部と、前記第1止水部を覆う筒状に形成され、紫外線透過性を有する第2止水部と、を備える。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係るスプライス止水構造部であって、前記線間透過部は、少なくとも1本の前記電線において、前記被覆部の外周部を囲む筒状の形態で設けられている。
【0008】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るスプライス止水構造部であって、前記線間透過部は、前記複数の電線のそれぞれにおいて、前記被覆部の外周部を囲む筒状の形態で設けられている。
【0009】
第4の態様は、それぞれ芯線が絶縁被覆によって被覆されて形成され、前記絶縁被覆の一部が剥離されて露出した前記芯線の一部分同士が接合されて形成されたスプライス部と、前記芯線が前記絶縁被覆によって被覆されたままの被覆部と、前記スプライス部と前記被覆部との間で前記芯線が露出された露出芯線部とを有する複数の電線における前記スプライス部を止水するスプライス止水構造部の製造方法であって、(a)前記複数の電線の前記被覆部における前記露出芯線部寄りの部分で、前記被覆部同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に、紫外線透過性を有する透過材を介在させる工程と、(b)紫外線硬化樹脂を含む止水剤により、前記スプライス部と、前記露出芯線部と、前記被覆部における前記透過材が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う工程と、(c)前記止水剤を覆う形態で、前記複数の電線に対して紫外線透過性を有する止水用シートを巻き付ける工程と、(d)前記止水剤に対して紫外線を照射する工程と、を備える。
【0010】
第5の態様は、第4の態様に係るスプライス止水構造部の製造方法であって、前記工程(a)では、シート状の透過材を、前記電線の前記被覆部に巻き付けて、前記被覆部の外周部に密着する筒状に形成する。
【発明の効果】
【0011】
第1の態様に係るスプライス止水構造部によると、紫外線透過性を有する線間透過部が、複数の電線における被覆部の露出芯線部寄りの部分で、被覆部同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に介在しているため、紫外線硬化樹脂を含む止水剤を硬化させて第1止水部が形成される際に、線間透過部を通じて複数の電線の被覆部間にまで紫外線が行き届いて、紫外線硬化樹脂を全体的に硬化させることができる。
【0012】
第2の態様に係るスプライス止水構造部によると、線間透過部が、少なくとも1本の電線において被覆部の外周部を囲む筒状の形態で設けられているため、紫外線硬化樹脂をより確実に全体的に硬化させることができる。
【0013】
第3の態様に係るスプライス止水構造部によると、線間透過部が、複数の電線それぞれにおいて被覆部の外周部を囲む筒状の形態で設けられているため、紫外線硬化樹脂をより確実に全体的に硬化させることができる。
【0014】
第4の態様に係るスプライス止水構造部の製造方法によると、複数の電線の被覆部における露出芯線部寄りの部分で、被覆部同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に、紫外線透過性を有する透過材を介在させるため、紫外線を照射して止水剤を硬化させる際に、紫外線が複数の電線の被覆部間で透過材を通過して被覆部同士の隙間に介在する止水剤にも行き届き、紫外線硬化樹脂を全体的に硬化させることができる。
【0015】
第5の態様に係るスプライス止水構造部の製造方法によると、シート状の透過材を、電線の被覆部に巻きつけて被覆部の外周部に密着する筒状に形成するため、複数の電線に対する通し作業が不要であり、電線端部のコネクタ接続後においても取り付け可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スプライス止水構造部の平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】透過材の巻き付け作業を示す図である。
【図4】止水剤の塗布作業及び止水用シートの巻き付け作業を示す図である。
【図5】紫外線照射作業を示す図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】補助シートの巻き付け作業を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態に係るスプライス止水構造部10及びその製造方法について説明する(図1参照)。このスプライス止水構造部10は、止水剤として紫外線硬化樹脂を用いて複数の電線20のスプライス部28を止水した構成である。
【0018】
説明の便宜上、止水対象であるスプライス部28を有する複数の電線20について説明する。複数の電線20は、それぞれ芯線が絶縁被覆によって被覆されて形成された電線である。この複数の電線20は、絶縁被覆の一部が剥離されて露出した芯線の一部分同士が接合されて形成されたスプライス部を有する。すなわち、複数の電線20は、スプライス部28において互いに電気的に接続される。ここでは、複数の電線20は、延在方向中途部にスプライス部28(中間スプライス部)を有している。このスプライス部28は、芯線22の露出部分同士を重ねる形態で複数の電線20を束ねて、各芯線22の露出部分の一部分(延在方向中間部分)を抵抗溶接、超音波溶接、半田付け、端子圧着等により接合して形成される。
【0019】
この複数の電線20は、前記スプライス部28と、芯線22が絶縁被覆24によって被覆されたままの被覆部25と、スプライス部28と被覆部25との間(ここではスプライス部28の両側方)で芯線22が露出された露出芯線部23とを有する。そして、スプライス止水構造部10は、複数の電線20におけるスプライス部28及び露出芯線部23を覆うことにより止水及び絶縁処理される。
【0020】
ここでは、3本の電線20が立体的に重ねて並べられ、スプライス部28で接合されている例で説明する。すなわち、3本の電線20の内側には、該3本の電線20に囲まれる空間が形成されている(図2参照)。なお、電線20は、2本又は4本以上であってもよい。もっとも、本スプライス止水構造部10は、3本以上の電線20を含み、各電線20が立体的に重ねて並べられることにより電線20に囲まれた空間が形成されている場合に、より顕著な作用効果を奏する。
【0021】
スプライス止水構造部10は、上記複数の電線20と、線間透過部30と、第1止水部40と、第2止水部50と、締め付け部60とを備えている(図1、図2参照)。以下、スプライス止水構造部の製造方法を説明してから、完成形態のスプライス止水構造部10の構成を説明する。
【0022】
まず、複数の電線20の被覆部25における露出芯線部23寄りの部分で、被覆部25同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に、紫外線透過性を有する透過材32を介在させる(工程(a)、図3参照)。ここで、被覆部25における露出芯線部23寄りの部分とは、被覆部25の端部を含む部分であってもよいし、被覆部25の端部と隣合う部分であってもよい。ここでは、透過材32を、複数の電線20のそれぞれにおいて被覆部25の外周部を囲む(好ましくは外周部に密着する)筒状に形成している。より具体的には、シート状の透過材32を、電線20の被覆部25に巻き付けて、被覆部25の外周部に密着する筒状に形成する。なお、透過材32の被覆部25に対する巻き付け形態は、矩形状シートを採用して電線20の中心軸周りの周方向に沿って巻き付けてもよいし、帯状シートを採用して電線20の延在方向にずらして幅方向に重ねつつ螺旋状に巻き付けてもよい(ここでは前者)。
【0023】
これにより、各電線20の被覆部25間には、透過材32が介在することによって形成された紫外線UVを透過する層が存在する(図6参照)。そして、この透過材32によって形成される層は、複数の電線20の被覆部25に囲まれる内側の空間に紫外線UVを通過させる通路となっている。
【0024】
この透過材32は、例えば、透明のPVC(ポリ塩化ビニル)粘着テープを採用できる。もっとも、透過材32は、粘着層を有さないシートであってもよく、この場合、巻き付け状態のシートを紫外線透過性を有する粘着テープ等で保持するとよい。また、より紫外線UVを透過させ易くする観点から言うと、紫外線UVの通過路を広くするように、透過材32としてより厚いものを採用するとよい。
【0025】
もっとも、上記工程は、複数の電線20の被覆部25間に透過材32による紫外線UVを透過させる層が形成されればよく、透過材32を、少なくとも1本の電線20において被覆部25の外周部を囲む(好ましくは外周部に密着する)筒状に形成すればよい。さらに、透過材32を、複数の電線20における被覆部25同士の間に位置するように、いずれかの被覆部25の外周部の周方向一部分に設けるだけでもよい。また、透過材32は、透明の粘着テープに限らず、熱収縮チューブ等の筒状等の形状の材料であってもよいし、有色の紫外線透過材料であってもよい。
【0026】
次に、紫外線硬化樹脂を含む止水剤42により、スプライス部28と露出芯線部23と被覆部25における透過材32が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う(工程(b)、図4参照)。ここでは、止水剤42は、紫外線UVの照射前には液状又はペースト状(流動可能な状態)で、紫外線UVの照射により硬化する(又は流動しない程度に固まる)紫外線硬化樹脂である。この止水剤42の塗布作業は、吐出ノズルを有する塗布装置を用いて行うことができる。より具体的には、止水剤42を、スプライス部28と露出芯線部23と被覆部25における透過材32が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲で、複数の電線20の外周部に直接塗布する。また、止水剤42を、露出芯線部23における芯線22同士の隙間、被覆部25同士の隙間にも介在させるように、複数の電線20に対して塗布してもよい。
【0027】
上記止水剤42の塗布量は、後述する止水用シート52を複数の電線20に対して巻きつけた際に、露出芯線部23及びスプライス部28を覆うと共に芯線22同士の隙間及び被覆部25同士の隙間に行き亘り、且つ、止水用シート52の両端部からはみ出さない量に設定されているとよい。
【0028】
さらに、止水剤42を覆う形態で、複数の電線20に対して紫外線透過性を有する止水用シート52を巻き付ける(工程(c)、図4、図5参照)。止水用シート52は、複数の電線20のうち、延在方向において止水剤42が覆う部分の両側方の部分を含む範囲を覆うことが可能であると共に、止水剤42に覆われた複数の電線20の外周を巻いて少なくとも端部同士を重ねることが可能な大きさの矩形状に形成されたシートである。すなわち、止水用シート52は、複数の電線20の上記範囲を覆い、自身の端部同士を重ねて複数の電線20の外周を包囲する形態で巻き付けられる。
【0029】
止水用シート52は、例えば、矩形状に形成された透明のPVC(ポリ塩化ビニル)シートを採用できる。また、より紫外線UVを透過させ易くする観点から言うと、止水用シートとして、より薄いものを採用するとよい。
【0030】
また、本作業では、止水用シート52を、複数の電線20を締め付ける態様で巻き付けるとよい。すなわち、複数の電線20同士の間隔を詰めると共に、止水剤42を複数の電線20における芯線22の隙間及び被覆部25の隙間に浸透させる。この際、止水剤42は、芯線22と絶縁被覆24との隙間にも浸透することがある。さらに、止水用シート52を複数の電線20に巻き付けた後、止水剤42を複数の電線20の各部に浸透させるように、止水用シート52を複数の電線20に押し付けてもよい。
【0031】
上記2工程(工程(b)、(c))は、順に行われてもよいし、複数の電線20を止水用シート52の上に載置した状態で、複数の電線20の対象箇所に対して止水剤42を塗布し、止水用シート52を複数の電線20に巻き付けてもよい。他にも、止水剤42を塗布した止水用シート52を複数の電線20に対して巻き付けてもよい。
【0032】
次に、止水剤42に対して紫外線UVを照射する(工程(d)、図5参照)。照射された紫外線UVは、止水用シート52を透過してその内側に進入する。また、透過材32のうち、複数の電線20の被覆部25同士の間に介在する部分を通じて、被覆部25に囲まれた空間内に進入する(図6参照)。これにより、止水用シート52内の止水剤42は紫外線硬化する。より具体的には、芯線22及び被覆部25と止水用シート52との隙間、芯線22同士の隙間及び被覆部25同士の隙間(被覆部25に囲まれた空間を含む)に介在している止水剤42が硬化する。
【0033】
さらに、止水用シート52の外周に補助シート62を巻き付けてもよい(図7参照)。この補助シート62は、止水用シート52を、複数の電線20、透過材32及び止水剤42に対してより密着させるように締め付ける態様で巻き付けられるとよい。また、補助シート62は、矩形状のシートを採用して端部同士を重ねる形態で止水用シート52の外周部に巻き付けてもよいし、帯状のシートを採用して幅方向に部分的に重ねつつ止水用シート52の外周部に螺旋状に巻き付けてもよい。
【0034】
以上の工程により、スプライス止水構造部10が形成される。このスプライス止水構造部10は、上述したように、複数の電線20と、線間透過部30と、第1止水部40と、第2止水部50と、締め付け部60とを備えている(図1、図2参照)。
【0035】
線間透過部30は、複数の電線20の被覆部25に巻き付けられた透過材32によって形成される部分である。この線間透過部30は、複数の電線20の全てにおける被覆部25の外周部を囲む筒状の形態で設けられている(図2参照)。好ましくは、線間透過部30は、被覆部25の外周部に密着しているとよい。ここでは、線間透過部30同士は密接している。
【0036】
もっとも、線間透過部30は、複数の電線20における被覆部25の露出芯線部23寄りの部分で、被覆部25同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に介在していればよく、例えば、複数の電線20のうちの少なくとも1本の(全部でない)電線20における被覆部25の外周部を囲む筒状の形態で設けられていてもよい。
【0037】
第1止水部40は、止水剤42が硬化することにより形成される部分である、この第1止水部40は、スプライス部28と露出芯線部23と被覆部25の線間透過部30が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う形状に形成されている(図1参照)。より具体的には、第1止水部40は、上記範囲において、複数の電線20と第2止水部50との隙間、芯線22同士の隙間、被覆部25同士の隙間(被覆部25により囲まれた空間も含む)に介在している。
【0038】
第2止水部50は、複数の電線20に巻き付けられた止水用シート52により形成された部分である。この第2止水部50は、第1止水部40を覆う筒状に形成されている。より具体的には、第2止水部50は、スプライス部28、露出芯線部23及び被覆部25のうち線間透過部30が設けられた部位及びその各側方の部位を含む範囲を覆っている。第2止水部50は、第1止水部40が内在しない箇所で、周方向部分的に被覆部25又は線間透過部30の外周部に接触しているとよい。
【0039】
なお、図1では、第2止水部50の内側において、主として第1止水部40が存在する箇所を示しており、図示されない箇所に第1止水部40が介在していることもある。例えば、第1止水部40は、被覆部25の外周に形成された線間透過部30全体を覆うと共に、第2止水部50の端部付近にも内在していてよい。もっとも、第1止水部40は、第2止水部50の外部にははみ出していない。
【0040】
締め付け部60は、止水用シート52の外周部に巻き付けられた補助シート62により形成された部分である。より具体的には、締め付け部60は、第2止水部50を締め付けて、複数の電線20、線間透過部30及び第1止水部40の外周部に押し付けるように、第2止水部50の外周に設けられている。この締め付け部60は、スプライス部28と露出芯線部23と被覆部25の線間透過部30が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲で、第2止水部50の外周部に設けられていることが好ましい。
【0041】
上記構成に係るスプライス止水構造部10及びその製造方法によると、紫外線透過性を有する透過材32により形成される線間透過部30が、複数の電線20における被覆部25の露出芯線部23寄りの部分で、被覆部25同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に介在しているため、紫外線UVを照射して止水剤42を硬化させて第1止水部40を形成する際に、紫外線UVが複数の電線20の被覆部25間で透過材32を通過して被覆部25同士の隙間に介在する止水剤42にも行き届き、紫外線硬化樹脂を全体的に硬化させることができる。
【0042】
また、透過材32を、少なくとも1本、ここでは複数の電線20それぞれにおいて被覆部25の外周部を囲む筒状に形成することにより線間透過部30を得るため、紫外線硬化樹脂をより確実に全体的に硬化させることができる。
【0043】
また、シート状の透過材32を、電線20の被覆部25に巻きつけて被覆部25の外周部に密着する筒状に形成するため、複数の電線20に対する通し作業が不要であり、電線20端部のコネクタ接続後においても取り付け可能である。
【0044】
また、止水剤42として紫外線硬化樹脂を用いる(熱硬化樹脂を添加しない)場合、熱硬化させるための加熱工程を省略して作業効率を向上させることができると共に、ヒーター等の設備費及びランニングコストの低減を図ることができる。また、作業環境による加熱工程の加熱条件設定も省略でき、作業工程の簡略化も図ることができる。
【0045】
これまで、複数の電線20の長手方向中途部分で絶縁被覆24を剥離して露出された芯線22を接合したスプライス部28(中間スプライス部)を止水対象とする例で説明したが、いくつかの電線20の長手方向中途部の芯線22と他のいくつかの電線20の端部で絶縁被覆24を剥離して露出された芯線22とを接合したスプライス部を止水対象としてもよい。また、複数の電線の端部同士を接合したスプライス部を止水対象としてもよい。この場合、第2止水部は、一方が閉じられた形状に形成されているとよい。
【0046】
また、止水剤42は、紫外線硬化樹脂に熱硬化樹脂、湿気硬化樹脂等を添加した止水剤であってもよい。そして、紫外線硬化樹脂に熱硬化樹脂を添加した止水剤を用いる場合、紫外線UVの照射工程に加えて加熱工程を設けるとよい。
【符号の説明】
【0047】
10 スプライス止水構造部
20 電線
22 芯線
23 露出芯線部
24 絶縁被覆
25 被覆部
28 スプライス部
30 線間透過部
32 透過材
40 第1止水部
42 止水剤
50 第2止水部
52 止水用シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスのスプライス部における止水技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の電線の絶縁被覆を剥離して露出させた芯線同士を接続するスプライス部が止水処理されたワイヤーハーネスが開示されている。このワイヤーハーネスは、スプライス部、露出芯線部及び絶縁被覆部に光硬化性シリコーン樹脂を塗布し、絶縁樹脂シートをスプライス部、露出芯線部、絶縁被覆部及び光硬化性シリコーン樹脂を包囲するように巻き付け、絶縁樹脂シートの両端開口から光を照射して光硬化性シリコーン樹脂を硬化させて形成されている。すなわち、絶縁樹脂シートの長さ方向の両端開口からの光硬化シリコーン樹脂の流出を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−136039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1によると、絶縁樹脂シートの長さ方向の両端部では光硬化性シリコーン樹脂が硬化し得るものの、複数の電線が立体的に束ねられ、絶縁被覆部が互いに密着している場合、光が各絶縁被覆部に遮られてしまい、内部の光硬化性シリコーン樹脂のうち絶縁被覆部間に介在する部分が未硬化のまま残ってしまう恐れがある。
【0005】
そこで、この発明は、紫外線硬化樹脂を全体的に硬化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るスプライス止水構造部は、それぞれ芯線が絶縁被覆によって被覆されて形成され、前記絶縁被覆の一部が剥離されて露出した前記芯線の一部分同士が接合されて形成されたスプライス部と、前記芯線が前記絶縁被覆によって被覆されたままの被覆部と、前記スプライス部と前記被覆部との間で前記芯線が露出された露出芯線部とを有する複数の電線と、前記複数の電線における前記被覆部の前記露出芯線部寄りの部分で、前記被覆部同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に介在し、紫外線透過性を有する線間透過部と、紫外線硬化樹脂を含む止水剤により形成され、前記スプライス部と、前記露出芯線部と、前記被覆部における前記線間透過部が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う第1止水部と、前記第1止水部を覆う筒状に形成され、紫外線透過性を有する第2止水部と、を備える。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係るスプライス止水構造部であって、前記線間透過部は、少なくとも1本の前記電線において、前記被覆部の外周部を囲む筒状の形態で設けられている。
【0008】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るスプライス止水構造部であって、前記線間透過部は、前記複数の電線のそれぞれにおいて、前記被覆部の外周部を囲む筒状の形態で設けられている。
【0009】
第4の態様は、それぞれ芯線が絶縁被覆によって被覆されて形成され、前記絶縁被覆の一部が剥離されて露出した前記芯線の一部分同士が接合されて形成されたスプライス部と、前記芯線が前記絶縁被覆によって被覆されたままの被覆部と、前記スプライス部と前記被覆部との間で前記芯線が露出された露出芯線部とを有する複数の電線における前記スプライス部を止水するスプライス止水構造部の製造方法であって、(a)前記複数の電線の前記被覆部における前記露出芯線部寄りの部分で、前記被覆部同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に、紫外線透過性を有する透過材を介在させる工程と、(b)紫外線硬化樹脂を含む止水剤により、前記スプライス部と、前記露出芯線部と、前記被覆部における前記透過材が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う工程と、(c)前記止水剤を覆う形態で、前記複数の電線に対して紫外線透過性を有する止水用シートを巻き付ける工程と、(d)前記止水剤に対して紫外線を照射する工程と、を備える。
【0010】
第5の態様は、第4の態様に係るスプライス止水構造部の製造方法であって、前記工程(a)では、シート状の透過材を、前記電線の前記被覆部に巻き付けて、前記被覆部の外周部に密着する筒状に形成する。
【発明の効果】
【0011】
第1の態様に係るスプライス止水構造部によると、紫外線透過性を有する線間透過部が、複数の電線における被覆部の露出芯線部寄りの部分で、被覆部同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に介在しているため、紫外線硬化樹脂を含む止水剤を硬化させて第1止水部が形成される際に、線間透過部を通じて複数の電線の被覆部間にまで紫外線が行き届いて、紫外線硬化樹脂を全体的に硬化させることができる。
【0012】
第2の態様に係るスプライス止水構造部によると、線間透過部が、少なくとも1本の電線において被覆部の外周部を囲む筒状の形態で設けられているため、紫外線硬化樹脂をより確実に全体的に硬化させることができる。
【0013】
第3の態様に係るスプライス止水構造部によると、線間透過部が、複数の電線それぞれにおいて被覆部の外周部を囲む筒状の形態で設けられているため、紫外線硬化樹脂をより確実に全体的に硬化させることができる。
【0014】
第4の態様に係るスプライス止水構造部の製造方法によると、複数の電線の被覆部における露出芯線部寄りの部分で、被覆部同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に、紫外線透過性を有する透過材を介在させるため、紫外線を照射して止水剤を硬化させる際に、紫外線が複数の電線の被覆部間で透過材を通過して被覆部同士の隙間に介在する止水剤にも行き届き、紫外線硬化樹脂を全体的に硬化させることができる。
【0015】
第5の態様に係るスプライス止水構造部の製造方法によると、シート状の透過材を、電線の被覆部に巻きつけて被覆部の外周部に密着する筒状に形成するため、複数の電線に対する通し作業が不要であり、電線端部のコネクタ接続後においても取り付け可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スプライス止水構造部の平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】透過材の巻き付け作業を示す図である。
【図4】止水剤の塗布作業及び止水用シートの巻き付け作業を示す図である。
【図5】紫外線照射作業を示す図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】補助シートの巻き付け作業を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態に係るスプライス止水構造部10及びその製造方法について説明する(図1参照)。このスプライス止水構造部10は、止水剤として紫外線硬化樹脂を用いて複数の電線20のスプライス部28を止水した構成である。
【0018】
説明の便宜上、止水対象であるスプライス部28を有する複数の電線20について説明する。複数の電線20は、それぞれ芯線が絶縁被覆によって被覆されて形成された電線である。この複数の電線20は、絶縁被覆の一部が剥離されて露出した芯線の一部分同士が接合されて形成されたスプライス部を有する。すなわち、複数の電線20は、スプライス部28において互いに電気的に接続される。ここでは、複数の電線20は、延在方向中途部にスプライス部28(中間スプライス部)を有している。このスプライス部28は、芯線22の露出部分同士を重ねる形態で複数の電線20を束ねて、各芯線22の露出部分の一部分(延在方向中間部分)を抵抗溶接、超音波溶接、半田付け、端子圧着等により接合して形成される。
【0019】
この複数の電線20は、前記スプライス部28と、芯線22が絶縁被覆24によって被覆されたままの被覆部25と、スプライス部28と被覆部25との間(ここではスプライス部28の両側方)で芯線22が露出された露出芯線部23とを有する。そして、スプライス止水構造部10は、複数の電線20におけるスプライス部28及び露出芯線部23を覆うことにより止水及び絶縁処理される。
【0020】
ここでは、3本の電線20が立体的に重ねて並べられ、スプライス部28で接合されている例で説明する。すなわち、3本の電線20の内側には、該3本の電線20に囲まれる空間が形成されている(図2参照)。なお、電線20は、2本又は4本以上であってもよい。もっとも、本スプライス止水構造部10は、3本以上の電線20を含み、各電線20が立体的に重ねて並べられることにより電線20に囲まれた空間が形成されている場合に、より顕著な作用効果を奏する。
【0021】
スプライス止水構造部10は、上記複数の電線20と、線間透過部30と、第1止水部40と、第2止水部50と、締め付け部60とを備えている(図1、図2参照)。以下、スプライス止水構造部の製造方法を説明してから、完成形態のスプライス止水構造部10の構成を説明する。
【0022】
まず、複数の電線20の被覆部25における露出芯線部23寄りの部分で、被覆部25同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に、紫外線透過性を有する透過材32を介在させる(工程(a)、図3参照)。ここで、被覆部25における露出芯線部23寄りの部分とは、被覆部25の端部を含む部分であってもよいし、被覆部25の端部と隣合う部分であってもよい。ここでは、透過材32を、複数の電線20のそれぞれにおいて被覆部25の外周部を囲む(好ましくは外周部に密着する)筒状に形成している。より具体的には、シート状の透過材32を、電線20の被覆部25に巻き付けて、被覆部25の外周部に密着する筒状に形成する。なお、透過材32の被覆部25に対する巻き付け形態は、矩形状シートを採用して電線20の中心軸周りの周方向に沿って巻き付けてもよいし、帯状シートを採用して電線20の延在方向にずらして幅方向に重ねつつ螺旋状に巻き付けてもよい(ここでは前者)。
【0023】
これにより、各電線20の被覆部25間には、透過材32が介在することによって形成された紫外線UVを透過する層が存在する(図6参照)。そして、この透過材32によって形成される層は、複数の電線20の被覆部25に囲まれる内側の空間に紫外線UVを通過させる通路となっている。
【0024】
この透過材32は、例えば、透明のPVC(ポリ塩化ビニル)粘着テープを採用できる。もっとも、透過材32は、粘着層を有さないシートであってもよく、この場合、巻き付け状態のシートを紫外線透過性を有する粘着テープ等で保持するとよい。また、より紫外線UVを透過させ易くする観点から言うと、紫外線UVの通過路を広くするように、透過材32としてより厚いものを採用するとよい。
【0025】
もっとも、上記工程は、複数の電線20の被覆部25間に透過材32による紫外線UVを透過させる層が形成されればよく、透過材32を、少なくとも1本の電線20において被覆部25の外周部を囲む(好ましくは外周部に密着する)筒状に形成すればよい。さらに、透過材32を、複数の電線20における被覆部25同士の間に位置するように、いずれかの被覆部25の外周部の周方向一部分に設けるだけでもよい。また、透過材32は、透明の粘着テープに限らず、熱収縮チューブ等の筒状等の形状の材料であってもよいし、有色の紫外線透過材料であってもよい。
【0026】
次に、紫外線硬化樹脂を含む止水剤42により、スプライス部28と露出芯線部23と被覆部25における透過材32が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う(工程(b)、図4参照)。ここでは、止水剤42は、紫外線UVの照射前には液状又はペースト状(流動可能な状態)で、紫外線UVの照射により硬化する(又は流動しない程度に固まる)紫外線硬化樹脂である。この止水剤42の塗布作業は、吐出ノズルを有する塗布装置を用いて行うことができる。より具体的には、止水剤42を、スプライス部28と露出芯線部23と被覆部25における透過材32が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲で、複数の電線20の外周部に直接塗布する。また、止水剤42を、露出芯線部23における芯線22同士の隙間、被覆部25同士の隙間にも介在させるように、複数の電線20に対して塗布してもよい。
【0027】
上記止水剤42の塗布量は、後述する止水用シート52を複数の電線20に対して巻きつけた際に、露出芯線部23及びスプライス部28を覆うと共に芯線22同士の隙間及び被覆部25同士の隙間に行き亘り、且つ、止水用シート52の両端部からはみ出さない量に設定されているとよい。
【0028】
さらに、止水剤42を覆う形態で、複数の電線20に対して紫外線透過性を有する止水用シート52を巻き付ける(工程(c)、図4、図5参照)。止水用シート52は、複数の電線20のうち、延在方向において止水剤42が覆う部分の両側方の部分を含む範囲を覆うことが可能であると共に、止水剤42に覆われた複数の電線20の外周を巻いて少なくとも端部同士を重ねることが可能な大きさの矩形状に形成されたシートである。すなわち、止水用シート52は、複数の電線20の上記範囲を覆い、自身の端部同士を重ねて複数の電線20の外周を包囲する形態で巻き付けられる。
【0029】
止水用シート52は、例えば、矩形状に形成された透明のPVC(ポリ塩化ビニル)シートを採用できる。また、より紫外線UVを透過させ易くする観点から言うと、止水用シートとして、より薄いものを採用するとよい。
【0030】
また、本作業では、止水用シート52を、複数の電線20を締め付ける態様で巻き付けるとよい。すなわち、複数の電線20同士の間隔を詰めると共に、止水剤42を複数の電線20における芯線22の隙間及び被覆部25の隙間に浸透させる。この際、止水剤42は、芯線22と絶縁被覆24との隙間にも浸透することがある。さらに、止水用シート52を複数の電線20に巻き付けた後、止水剤42を複数の電線20の各部に浸透させるように、止水用シート52を複数の電線20に押し付けてもよい。
【0031】
上記2工程(工程(b)、(c))は、順に行われてもよいし、複数の電線20を止水用シート52の上に載置した状態で、複数の電線20の対象箇所に対して止水剤42を塗布し、止水用シート52を複数の電線20に巻き付けてもよい。他にも、止水剤42を塗布した止水用シート52を複数の電線20に対して巻き付けてもよい。
【0032】
次に、止水剤42に対して紫外線UVを照射する(工程(d)、図5参照)。照射された紫外線UVは、止水用シート52を透過してその内側に進入する。また、透過材32のうち、複数の電線20の被覆部25同士の間に介在する部分を通じて、被覆部25に囲まれた空間内に進入する(図6参照)。これにより、止水用シート52内の止水剤42は紫外線硬化する。より具体的には、芯線22及び被覆部25と止水用シート52との隙間、芯線22同士の隙間及び被覆部25同士の隙間(被覆部25に囲まれた空間を含む)に介在している止水剤42が硬化する。
【0033】
さらに、止水用シート52の外周に補助シート62を巻き付けてもよい(図7参照)。この補助シート62は、止水用シート52を、複数の電線20、透過材32及び止水剤42に対してより密着させるように締め付ける態様で巻き付けられるとよい。また、補助シート62は、矩形状のシートを採用して端部同士を重ねる形態で止水用シート52の外周部に巻き付けてもよいし、帯状のシートを採用して幅方向に部分的に重ねつつ止水用シート52の外周部に螺旋状に巻き付けてもよい。
【0034】
以上の工程により、スプライス止水構造部10が形成される。このスプライス止水構造部10は、上述したように、複数の電線20と、線間透過部30と、第1止水部40と、第2止水部50と、締め付け部60とを備えている(図1、図2参照)。
【0035】
線間透過部30は、複数の電線20の被覆部25に巻き付けられた透過材32によって形成される部分である。この線間透過部30は、複数の電線20の全てにおける被覆部25の外周部を囲む筒状の形態で設けられている(図2参照)。好ましくは、線間透過部30は、被覆部25の外周部に密着しているとよい。ここでは、線間透過部30同士は密接している。
【0036】
もっとも、線間透過部30は、複数の電線20における被覆部25の露出芯線部23寄りの部分で、被覆部25同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に介在していればよく、例えば、複数の電線20のうちの少なくとも1本の(全部でない)電線20における被覆部25の外周部を囲む筒状の形態で設けられていてもよい。
【0037】
第1止水部40は、止水剤42が硬化することにより形成される部分である、この第1止水部40は、スプライス部28と露出芯線部23と被覆部25の線間透過部30が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う形状に形成されている(図1参照)。より具体的には、第1止水部40は、上記範囲において、複数の電線20と第2止水部50との隙間、芯線22同士の隙間、被覆部25同士の隙間(被覆部25により囲まれた空間も含む)に介在している。
【0038】
第2止水部50は、複数の電線20に巻き付けられた止水用シート52により形成された部分である。この第2止水部50は、第1止水部40を覆う筒状に形成されている。より具体的には、第2止水部50は、スプライス部28、露出芯線部23及び被覆部25のうち線間透過部30が設けられた部位及びその各側方の部位を含む範囲を覆っている。第2止水部50は、第1止水部40が内在しない箇所で、周方向部分的に被覆部25又は線間透過部30の外周部に接触しているとよい。
【0039】
なお、図1では、第2止水部50の内側において、主として第1止水部40が存在する箇所を示しており、図示されない箇所に第1止水部40が介在していることもある。例えば、第1止水部40は、被覆部25の外周に形成された線間透過部30全体を覆うと共に、第2止水部50の端部付近にも内在していてよい。もっとも、第1止水部40は、第2止水部50の外部にははみ出していない。
【0040】
締め付け部60は、止水用シート52の外周部に巻き付けられた補助シート62により形成された部分である。より具体的には、締め付け部60は、第2止水部50を締め付けて、複数の電線20、線間透過部30及び第1止水部40の外周部に押し付けるように、第2止水部50の外周に設けられている。この締め付け部60は、スプライス部28と露出芯線部23と被覆部25の線間透過部30が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲で、第2止水部50の外周部に設けられていることが好ましい。
【0041】
上記構成に係るスプライス止水構造部10及びその製造方法によると、紫外線透過性を有する透過材32により形成される線間透過部30が、複数の電線20における被覆部25の露出芯線部23寄りの部分で、被覆部25同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に介在しているため、紫外線UVを照射して止水剤42を硬化させて第1止水部40を形成する際に、紫外線UVが複数の電線20の被覆部25間で透過材32を通過して被覆部25同士の隙間に介在する止水剤42にも行き届き、紫外線硬化樹脂を全体的に硬化させることができる。
【0042】
また、透過材32を、少なくとも1本、ここでは複数の電線20それぞれにおいて被覆部25の外周部を囲む筒状に形成することにより線間透過部30を得るため、紫外線硬化樹脂をより確実に全体的に硬化させることができる。
【0043】
また、シート状の透過材32を、電線20の被覆部25に巻きつけて被覆部25の外周部に密着する筒状に形成するため、複数の電線20に対する通し作業が不要であり、電線20端部のコネクタ接続後においても取り付け可能である。
【0044】
また、止水剤42として紫外線硬化樹脂を用いる(熱硬化樹脂を添加しない)場合、熱硬化させるための加熱工程を省略して作業効率を向上させることができると共に、ヒーター等の設備費及びランニングコストの低減を図ることができる。また、作業環境による加熱工程の加熱条件設定も省略でき、作業工程の簡略化も図ることができる。
【0045】
これまで、複数の電線20の長手方向中途部分で絶縁被覆24を剥離して露出された芯線22を接合したスプライス部28(中間スプライス部)を止水対象とする例で説明したが、いくつかの電線20の長手方向中途部の芯線22と他のいくつかの電線20の端部で絶縁被覆24を剥離して露出された芯線22とを接合したスプライス部を止水対象としてもよい。また、複数の電線の端部同士を接合したスプライス部を止水対象としてもよい。この場合、第2止水部は、一方が閉じられた形状に形成されているとよい。
【0046】
また、止水剤42は、紫外線硬化樹脂に熱硬化樹脂、湿気硬化樹脂等を添加した止水剤であってもよい。そして、紫外線硬化樹脂に熱硬化樹脂を添加した止水剤を用いる場合、紫外線UVの照射工程に加えて加熱工程を設けるとよい。
【符号の説明】
【0047】
10 スプライス止水構造部
20 電線
22 芯線
23 露出芯線部
24 絶縁被覆
25 被覆部
28 スプライス部
30 線間透過部
32 透過材
40 第1止水部
42 止水剤
50 第2止水部
52 止水用シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ芯線が絶縁被覆によって被覆されて形成され、前記絶縁被覆の一部が剥離されて露出した前記芯線の一部分同士が接合されて形成されたスプライス部と、前記芯線が前記絶縁被覆によって被覆されたままの被覆部と、前記スプライス部と前記被覆部との間で前記芯線が露出された露出芯線部とを有する複数の電線と、
前記複数の電線における前記被覆部の前記露出芯線部寄りの部分で、前記被覆部同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に介在し、紫外線透過性を有する線間透過部と、
紫外線硬化樹脂を含む止水剤により形成され、前記スプライス部と、前記露出芯線部と、前記被覆部における前記線間透過部が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う第1止水部と、
前記第1止水部を覆う筒状に形成され、紫外線透過性を有する第2止水部と、
を備える、スプライス止水構造部。
【請求項2】
請求項1に記載のスプライス止水構造部であって、
前記線間透過部は、少なくとも1本の前記電線において、前記被覆部の外周部を囲む筒状の形態で設けられている、スプライス止水構造部。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスプライス止水構造部であって、
前記線間透過部は、前記複数の電線のそれぞれにおいて、前記被覆部の外周部を囲む筒状の形態で設けられている、スプライス止水構造部。
【請求項4】
それぞれ芯線が絶縁被覆によって被覆されて形成され、前記絶縁被覆の一部が剥離されて露出した前記芯線の一部分同士が接合されて形成されたスプライス部と、前記芯線が前記絶縁被覆によって被覆されたままの被覆部と、前記スプライス部と前記被覆部との間で前記芯線が露出された露出芯線部とを有する複数の電線における前記スプライス部を止水するスプライス止水構造部の製造方法であって、
(a)前記複数の電線の前記被覆部における前記露出芯線部寄りの部分で、前記被覆部同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に、紫外線透過性を有する透過材を介在させる工程と、
(b)紫外線硬化樹脂を含む止水剤により、前記スプライス部と、前記露出芯線部と、前記被覆部における前記透過材が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う工程と、
(c)前記止水剤を覆う形態で、前記複数の電線に対して紫外線透過性を有する止水用シートを巻き付ける工程と、
(d)前記止水剤に対して紫外線を照射する工程と、
を備える、スプライス止水構造部の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のスプライス止水構造部の製造方法であって、
前記工程(a)では、シート状の透過材を、前記電線の前記被覆部に巻き付けて、前記被覆部の外周部に密着する筒状に形成する、スプライス止水構造部の製造方法。
【請求項1】
それぞれ芯線が絶縁被覆によって被覆されて形成され、前記絶縁被覆の一部が剥離されて露出した前記芯線の一部分同士が接合されて形成されたスプライス部と、前記芯線が前記絶縁被覆によって被覆されたままの被覆部と、前記スプライス部と前記被覆部との間で前記芯線が露出された露出芯線部とを有する複数の電線と、
前記複数の電線における前記被覆部の前記露出芯線部寄りの部分で、前記被覆部同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に介在し、紫外線透過性を有する線間透過部と、
紫外線硬化樹脂を含む止水剤により形成され、前記スプライス部と、前記露出芯線部と、前記被覆部における前記線間透過部が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う第1止水部と、
前記第1止水部を覆う筒状に形成され、紫外線透過性を有する第2止水部と、
を備える、スプライス止水構造部。
【請求項2】
請求項1に記載のスプライス止水構造部であって、
前記線間透過部は、少なくとも1本の前記電線において、前記被覆部の外周部を囲む筒状の形態で設けられている、スプライス止水構造部。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスプライス止水構造部であって、
前記線間透過部は、前記複数の電線のそれぞれにおいて、前記被覆部の外周部を囲む筒状の形態で設けられている、スプライス止水構造部。
【請求項4】
それぞれ芯線が絶縁被覆によって被覆されて形成され、前記絶縁被覆の一部が剥離されて露出した前記芯線の一部分同士が接合されて形成されたスプライス部と、前記芯線が前記絶縁被覆によって被覆されたままの被覆部と、前記スプライス部と前記被覆部との間で前記芯線が露出された露出芯線部とを有する複数の電線における前記スプライス部を止水するスプライス止水構造部の製造方法であって、
(a)前記複数の電線の前記被覆部における前記露出芯線部寄りの部分で、前記被覆部同士の隣接箇所の少なくとも一箇所に、紫外線透過性を有する透過材を介在させる工程と、
(b)紫外線硬化樹脂を含む止水剤により、前記スプライス部と、前記露出芯線部と、前記被覆部における前記透過材が介在する部分の少なくとも一部分とを含む範囲を覆う工程と、
(c)前記止水剤を覆う形態で、前記複数の電線に対して紫外線透過性を有する止水用シートを巻き付ける工程と、
(d)前記止水剤に対して紫外線を照射する工程と、
を備える、スプライス止水構造部の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のスプライス止水構造部の製造方法であって、
前記工程(a)では、シート状の透過材を、前記電線の前記被覆部に巻き付けて、前記被覆部の外周部に密着する筒状に形成する、スプライス止水構造部の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−62968(P2013−62968A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200384(P2011−200384)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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