説明

スプライン部の嵌合方法

【課題】スプラインを形成した部材同士を嵌合させる方法を提供する。
【解決手段】本発明のスプライン部の嵌合方法は、外周スプラインが形成されたサンシャフト4を治具上部14に配置する工程と、内周スプラインが形成されたハウジング2をサンシャフト4に被せるように配置する工程と、サンシャフト4を押下げるように押圧する工程と、ハウジング2とサンシャフト4のスプライン部の位相を合わせる工程と、サンシャフト4の押圧を解放する工程とを含んでいる。サンシャフト4を押圧する工程は、補助治具21を介してサンシシャフト4を下方に押圧することで、スプライン同士の噛合いを外し、補助治具21を介してサンシャフト4を回転させて補助治具21を位置決め柱15に当接させて、この状態でサンシャフト4を下方に押下げる押圧を解放することで、両部材のスプラインを嵌合させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングとシャフトのスプライン部を嵌合する方法、特に、可変動弁用アクチュエータのハウジングに形成されたスプラインと差動ローラギヤのサンシャフトに形成されたスプラインを嵌合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、可変動弁用アクチュエータには、差動ローラギヤのサンシャフトの外周に外側スプラインが形成されており、この外側スプラインをハウジングに形成された開口部の内側スプラインに位相を合わせた状態で嵌合させる必要がある。
【0003】
従来、例えば、特許文献1には、軸部材と管部材とのスプライン嵌合によるスプライン継手の組付け方法として、軸部材の外周に形成されているアウタスプラインと、管部材の内周に形成されているインナスプラインとを相互間のスライド抵抗を測定しながらスプライン嵌合方向に相対的に挿入し、所定値以上のスライド抵抗が測定されたら、両部材を軸心周りに回転させつつ、所定値以上のスライド抵抗が測定された管部材の外周にダイスを押付け、この箇所のスライド抵抗が所定値となるように管部材を塑性変形させて、軸部材のアウタスプラインを管部材のインナスプラインに挿入させて嵌合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−238369
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたスプライン継手の組付け方法では次のような課題が存在する。つまり、特許文献1のスプライン継手の組付け方法では、両部材のスプライン同士を合わせる際に、スプラインを嵌合させる箇所が1周のうち数箇所にしか存在しない場合、スプラインを半嵌合させた状態では、スプライン同士が噛合うため回転させることができず、スプラインを嵌合させることができない。また、管部材のインナスプラインは、内周に配置されているため、作業者は、両部材のスプライン同士が正しく嵌合されているのかどうか明確に判断することができない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、スプラインを形成した部材同士のスプラインを嵌合する際に、両部材のスプライン同士の噛合いを外して、回転可能な状態で両部材を嵌合させる位置を見つけ出すことで、両部材のスプライン同士を容易に嵌合させることができるスプライン部の嵌合方法を提案することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るスプライン部の嵌合方法は、外周にスプラインが形成されたシャフトを治具に配置する工程と、
開口部の内周にスプラインが形成されたハウジングを前記治具に位置決めして、前記シャフトに被せるように配置する工程と、
前記シャフトを押下げるように押圧する工程と、
前記ハウジングのスプラインと前記シャフトのスプラインの位相を合わせる工程と、
前記シャフトの押圧を解放する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
(発明の態様)
以下に、本発明において特許請求が可能と認識される発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の(1)乃至(3)項が請求項1乃至3にそれぞれ対応する。
【0009】
(1)外周にスプラインが形成されたシャフトを治具に配置する工程と、
開口部の内周にスプラインが形成されたハウジングを前記治具に位置決めして、前記シャフトに被せるように配置する工程と、
前記シャフトを押下げるように押圧する工程と、
前記ハウジングのスプラインと前記シャフトのスプラインの位相を合わせる工程と、
前記シャフトの押圧を解放する工程と、を含むことを特徴とするスプライン部の嵌合方法。
(1)項のスプライン部の嵌合方法では、上下動自在の治具を用意して、この治具上に外周にスプラインが形成されたシャフトを配置する(シャフトを治具に配置する工程)。
そして、シャフトを治具上に配置した状態で、開口部の内周にスプラインが形成されたハウジングをシャフトの上に被せるように治具上に配置する(ハウジングを治具に配置する工程)。この際、ハウジングの位置決め孔を前記治具の位置決めピンに挿入して位置決めする。この状態では、シャフトの上端部がハウジングの開口部に挿入されているが、シャフトのスプラインとハウジングのスプラインとは、シャフトのスプラインの上端にハウジングのスプラインの下端が接触した半嵌合状態にされている。
その後、例えば、下記(2)項のように、シャフトの上端部に形成された孔に補助治具を挿入すると共にシャフトの上端部を押圧して、シャフトを押下げる(シャフトを押下げる工程)。この工程では、シャフトの上端部を作業員が手で押下げるように押圧するか、又は、他の工具を使用して、この工具でシャフトの上端部を押圧する。
このシャフトを押下げた状態で、補助治具を治具上に配置した位置決め部材に当接するまで回転させる(ハウジングのスプラインとシャフトのスプラインの位相を合わせる工程)。その結果、補助治具の回転と共にシャフトも回転され、補助治具を位置決め部材に当接させた位置が、ハウジングのスプラインとシャフトのスプラインとの位相が合わされた位置となる。
そして、両者のスプラインの位相が合わされた位置で、シャフトを押下げる押圧力を解放すると、シャフトは、治具の上動に伴って上昇して、シャフトのスプラインをハウジングのスプラインに嵌合させることができる(シャフトの押圧を解放する工程)。
なお、ハウジングのスプラインとシャフトのスプラインとの位相を合わせる工程は、下記(3)項のように、シャフトに形成された孔の貫通面積を監視することにより実施することもできる。
【0010】
(2)前記ハウジングのスプラインと前記シャフトのスプラインの位相を合わせる工程は、
前記シャフトに形成された孔に補助治具を挿通する工程と、
前記補助治具を位置決め部材に当接させる位置まで前記シャフトを回転させる工程と、を含むことを特徴とする(1)項に記載のスプライン部の嵌合方法。
(2)項のスプライン部の嵌合方法では、上記(1)項で説明したように、補助治具を使用してシャフトを回転させて、ハウジングのスプラインとシャフトのスプラインとの位相を簡単に一致させることができる。
【0011】
(3)前記ハウジングのスプラインと前記シャフトのスプラインの位相を合わせる工程は、前記シャフトに形成された孔の貫通面積を監視して、該貫通面積が正位相と判断されるまで前記シャフトを回転させる工程を含むことを特徴とする(1)項に記載のスプライン部の嵌合方法。
(3)項のスプライン部の嵌合方法では、シャフトに形成された孔の貫通面積を、例えば、カメラを利用して監視して、シャフトの孔の貫通面積が正位相(ハウジングのスプラインとシャフトのスプラインとの位相が一致している位相)と判断されるまでシャフトを回転させるだけで、ハウジングのスプラインとシャフトのスプラインとの位相を簡単に一致させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るスプライン部の嵌合方法によれば、スプラインを形成した部材同士のスプラインを嵌合する際に、両部材のスプライン同士の噛合いを外して、回転可能な状態で両部材を嵌合させる位置を見つけ出すことで、両部材のスプライン同士を容易に嵌合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るスプライン部の嵌合方法を適用する可変動弁用アクチュエータの概略縦断面図である。
【図2】図1に示すハウジングの内周スプラインの拡大図である。
【図3】図1示すサンシャフトの外周スプラインの拡大図である。
【図4】第1実施形態のハウジングとサンシャフトのスプライン同士が半嵌合状態の断面図である。
【図5】第1実施形態のハウジングとサンシャフトのスプライン同士が嵌合状態の断面図である。
【図6】第2実施形態のハウジングとサンシャフトのスプラインが半嵌合状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1実施形態に係るスプライン部の嵌合方法を適用する可変動弁用アクチュエータの概略縦断面図を図1に示す。図1に示すように、可変動弁用アクチュエータ1は、ハウジング2と、ハウジング2の内部に配置された遊星差動ネジ型回転直動変換機構3と、ハウジング2の背面側を閉塞するように配置された制御部(図示せず)で構成されている。
【0015】
ハウジング2は、前部(図1の上方向)にサンシャフト4を外部に突出するための開口部5と、開口部5の内周面に形成された内周スプライン5aと、ハウジング位置決め孔6を備えている。ハウジング2の内周スプライン5aは、図2に示すように、複数の凹歯を有しているが直径方向に対向する二箇所に他の凹歯に比べて幅が広い凹歯5bが形成されている。これらの凹歯5bが、ハウジング位置決め孔6に合わせて形成されている。
【0016】
遊星差動ネジ型回転直動変換機構3は、サンシャフト4と、ナット7と、プラネタリシャフト(図示せず)を備えている。ナット7の外周には、前方にベアリング8が、後方にローラ9が取付けられている。ハウジング2とロータ9との間には、ステータ(図示せず)が配置されており、制御部のステータを電磁駆動させることで、ロータ9とステータとがモータとして機能して、駆動する。この駆動により、ナット7は、ベアリング8によって支持されて、ロータ9と共に回転する。
【0017】
サンシャフト4には、一端部に軸方向に対して、直交するように貫通しているサンシャフト孔10と、このサンシャフト孔10の下方に外周スプライン4aが形成されている。また、サンシャフト4は、ナット7の内部に配置されている。サンシャフト孔10は、サンシャフト4の外周スプライン4aの2つの凸歯4bと位相を一致させた方向に形成されている。サンシャフト4の外周スプライン4aには、図3に示すように、複数の凸歯が形成されているが、ハウジング2の内周スプライン5aの2つの凹歯5bに合わせて、直径方向の二箇所に他の凸歯よりも幅が広い凸歯4bが形成されている。
更に、サンシャフト4の外周スプライン4aは、ハウジング2の内周スプライン5aと噛合うことで、サンシャフト4は、ハウジング2に対して、回転が阻止されるが、軸方向の移動は可能に組込まれる。
【0018】
遊星差動ネジ型回転直動変換機構3の内部は、ナット7、サンシャフト4及びプラネタリシャフト(図示せず)の各ギヤ及びネジが噛合って形成されている。そのため、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3は、ステータの電磁駆動により、ナット7が回転することで、プラネタリシャフトが自転しつつサンシャフト4の周りを公転する。このプラネタリシャフトの動作により差動が生じて、サンシャフト4は、回転方向に拘束された状態で軸方向に移動することができる。その結果、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3は、ナット7の回転を、サンシャフト4を軸方向に直動させる駆動力に変換することができる。
【0019】
以上のように構成した第1実施形態に係るスプライン部の嵌合方法について、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aを嵌合させる方法を図4及び図5に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係るスプライン部の嵌合方法は、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3を治具上部14に配置する工程(シャフトを治具に配置する工程)と、ハウジング2を治具11に位置決めして、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3に被せるように配置する工程(ハウジングを治具に配置する工程)と、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3のサンシャフト4を押下げるように押圧する工程(シャフトを押下げる工程)と、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aの位相を合わせる工程(ハウジングのスプラインとシャフトのスプラインの位相を合わせる工程)と、サンシャフト4の押圧を解放する工程(シャフトの押圧を解放する工程)とを含んでいる。以下各工程を順番に説明する。
【0020】
図4には、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aとを半嵌合状態に嵌合して、治具11に配置した状態の断面図が示されている。本発明の第1実施形態に係るスプライン部の嵌合方法を説明する前に、まず、治具11について説明する。図4に示すように、治具11は、平板状のベース板12と、ベース板12の上面に取付けられた治具下部13及び治具下部13に上下動自在に嵌合された治具上部14と、治具上下部13,14に隣接して、ベース板12の上面に配置された位置決め柱15とから構成されている。
【0021】
ベース板12の上面に取付けられた治具下部13は、有底円筒状の部材であり、上端部に治具上部14の位置を決めるための位置決めピン16を備えている。治具上部14は、断面が略H型の円筒部材であり、上部の空間が遊星差動ネジ型回転直動変換機構3を配置する空間に、下部の空間がスペーサ17を配置する空間に形成されている。
【0022】
スペーサ17は、治具上部14の下部の空間に取付けられている上スペーサ18と、治具下部13の底面上に取付けられている下スペーサ19と、上スペーサ18と下スペーサ19との間に配置されているバネ20から構成されている。スペーサ17は、治具上部14の沈み込み量を調整することができる。ここで、治具上部14の沈み込み量は、治具上部14と治具下部13との間に配設した上下動制限機構、例えば、治具下部13の円筒部の内面に形成した上下方向の溝に、治具上部14の円筒部の外面に形成した突起16Aを係合させて、治具下部13の位置決めピン16に、治具上部14の突起16Aを当接させることにより構成することができる。そして、治具上部14は、治具下部13に嵌込まれたとき、スペーサ17のバネ20によって、フローティング状態、すなわち、浮いている状態で設置されている。
【0023】
ベース板12の上面に取付けられた位置決め柱15は、ベース板12に対して、垂直に延びる円柱状の棒状体であり、その上端部が小径に形成され、この小径部がハウジング2の位置決め孔6に挿通される。
【0024】
次に本発明の第1実施形態に係るスプライン部の嵌合方法について説明する。まず、図4に示すように、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3を治具上部14に配置する工程(シャフトを治具に配置する工程)では、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3のサンシャフト4の外周スプライン4aを上にして、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3を治具上部14の上部の空間に嵌込ませる。このとき、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3のベアリング8の下端が治具上部14に当接して、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3が治具11に配置される。
【0025】
次に、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3にハウジング2を載せる工程(ハウジングを治具に配置する工程)では、治具上部14に配置した遊星差動ネジ型回転直動変換機構3に被せるようにハウジング2を載せる。このとき、ハウジング2は、ベース板12に取付けられた位置決め柱15と位相を合わせるために、位置決め柱15にハウジング2の位置決め孔6を通挿する。
【0026】
遊星差動ネジ型回転直動変換機構3に被せるようにハウジング2を治具11に配置したとき、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aは、内周スプライン5aの下端と外周スプライン4aの上端が接触した半嵌合状態になっている。すなわち、ハウジング2の内周スプライン5aの2箇所の凹歯5bとサンシャフト4の外周スプライン4aの2箇所の凸歯4bは、完全に噛合っていない状態である。
【0027】
また、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3は、単体では、サンシャフト4はナット7に対して回転する構造となっているが、半嵌合状態では、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aの凹凸歯部がわずかに噛合っているため、回転することができない。
【0028】
そして、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3のサンシャフト4を押圧する工程(シャフトを押下げる工程)では、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3のサンシャフト4をハウジング2に対して、位相を合わせるように回転させるために、サンシャフト4の上端を作業者の手で下方に押下げて、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aとの噛合いを外し、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3のサンシャフト4を回転させる。この工程では、サンシャフト4を下方に押下げると、治具上部14は、治具下部13に対して、下方に押下げられる。なお、サンシャフト4を下方に押下げる方法は、工具を使用して押圧することもできる。
【0029】
ハウジング2とサンシャフト4のスプライン部の位相を合わせる工程(ハウジングのスプラインとシャフトのスプラインの位相を合わせる工程)では、サンシャフト4を押圧する工程でサンシャフト4に取付けた補助治具21を回転させて、ベース板12に取付けた位置決め柱15に当接させる。ここで、サンシャフト4を下方に押圧して、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3を回転させるとき、サンシャフト4のサンシャフト孔10に、補助治具21を通して、補助治具21を介してサンシャフト4を回転させる。補助治具21は、ハウジング2の内周スプライン5aの二箇所の凹歯5bとサンシャフト4の外周スプライン4aの二箇所の凸歯4bとの嵌合位置を決める際に使用するものであり、断面が略半円形の棒状体である。補助治具21は、略半円形の断面形状にすることで、サンシャフト孔10に通したとき、ハウジング2の上面との間に隙間を確保することができ、これにより、サンシャフト4を下方に押圧することが可能となる。
【0030】
そして、補助治具21を位置決め柱15に当接させた状態で、サンシャフト4を下方に押圧する力を解放する(シャフトの押圧を解放する工程)と、治具上部14がスペーサ17のバネ20の付勢力により上昇して、図5に示すように、ハウジング2の内周スプライン5aの二箇所の凹歯5bとサンシャフト4の外周スプライン4aの二箇所の凸歯4bが嵌合される。
【0031】
第1実施形態に係るスプライン部嵌合方法では、補助治具21を介してサンシシャフト4を下方に押圧することで、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aとの半嵌合状態の噛合いを外し、補助治具21を介してサンシャフト4を回転させて補助治具21を位置決め柱15に当接させて、この状態でサンシャフト4を下方に押下げる押圧力を解放することで、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aとを嵌合させることができるので、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aの嵌合する位置を容易に見つけ出すことができ、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aを簡単に組付けることができる。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態に係るスプライン部の嵌合方法について、図6を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態に対して、同様の部分には同じ参照符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
図6には、本発明の第2実施形態に係るスプライン部の嵌合方法について、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aが半嵌合状態の断面図が示されている。図6に示すように、第2実施形態のスプライン部の嵌合方法では、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aとの位相を合わせる工程で、上記第1実施形態のスプライン部の嵌合方法で利用する補助治具21の代りにカメラ22を用いている。
【0033】
カメラ22は、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aとの位相が合わされた位置に配置する。そして、カメラ22に対向するようにサンシャフト4の反対側にスクリーン(図示せず)を配置する。そして、サンシャフト孔10の貫通する面積をカメラ22で監視した状態で、サンシャフト4を回転させることにより、正位相、又は、誤位相の判定を行うことができる。ここで、正位相は、サンシャフト孔10の開口部の面積、つまり、サンシャフト孔10の貫通面積が最大となる位相である。正位相と判定されたら、サンシャフト4の回転を停止して、サンシャフト4の押圧を解放することで、ハウジング2の内周スプライン5aとサンシャフト4の外周スプライン4aとを嵌合させることができる。
【0034】
なお、第2実施形態において、カメラ22とスクリーンを用いて、サンシャフト孔10の貫通面積を監視し、正位相、又は、誤位相を判定しているが、2台のカメラ22をサンシャフト孔10を間にして対向するように配置して、サンシャフト孔10の貫通面積を監視し、正位相、又は、誤位相を判定することもできる。
また、本発明の第1及び第2の実施形態に係るスプライン部の嵌合方法を、遊星差動ネジ型回転直動変換機構3のサンシャフト4の外周スプライン4aとハウジング2の内周スプライン5aとを嵌合させる形態について説明してきたが、外周にスプラインが形成された部材と開口部の内周にスプラインが形成された部材を、両部材の位相を合わせた状態に嵌合させる場合には、他の種々の部材に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
2…ハウジング、2a…内周スプライン(スプライン)、3…遊星差動ネジ型回転直動変換機構、4…サンシャフト(シャフト)、4a…外周スプライン(スプライン)、5a…内周スプライン(スプライン)、11…治具、14…治具上部(治具)、15…位置決め柱(治具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周にスプラインが形成されたシャフトを治具に配置する工程と、
開口部の内周にスプラインが形成されたハウジングを前記治具に位置決めして、前記シャフトに被せるように配置する工程と、
前記シャフトを押下げるように押圧する工程と、
前記ハウジングのスプラインと前記シャフトのスプラインの位相を合わせる工程と、
前記シャフトの押圧を解放する工程と、を含むことを特徴とするスプライン部の嵌合方法。
【請求項2】
前記ハウジングのスプラインと前記シャフトのスプラインの位相を合わせる工程は、
前記シャフトに形成された孔に補助治具を挿通する工程と、
前記補助治具を位置決め部材に当接させる位置まで前記シャフトを回転させる工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のスプライン部の嵌合方法。
【請求項3】
前記ハウジングのスプラインと前記シャフトのスプラインの位相を合わせる工程は、前記シャフトに形成された孔の貫通面積を監視して、該貫通面積が正位相と判断されるまで前記シャフトを回転させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のスプライン部の嵌合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−78833(P2013−78833A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221002(P2011−221002)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】