説明

スプラッシュガードの窓材清掃装置

【課題】スプラッシュガードの窓材を介した外部からの視界を良好にする。
【解決手段】スプラッシュガードに設けられた窓材20の一部を覆うように窓材20の内面に対向して透明な板部材21を配設し、窓材20と板部材21との間にエア通路SPを形成する。エア通路SP内には供給口30を介して外部から気体を供給し、エア通路SP内に供給された気体を噴出口31を介して窓材20の内面に噴出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプラッシュガードに設けられた窓材の内面を清掃するスプラッシュガードの窓材清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプラッシュガードによって加工領域を囲繞された工作機械において、窓材の内面に圧縮空気を吹き付け、窓材に付着した切削油や切り屑を除去して、外部からの視界を確保するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置では、窓材の側方に鉛直方向にノズル部を配設し、ノズル部に開口された複数の噴出しノズルから窓材の内面に向けて空気を噴出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−37582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、窓材の側方にノズル部を配設しているため、窓材の幅方向中央部等、ノズル部から離れた位置まで十分に空気を吹き付けることができず、外部からの良好な視界を確保することが困難である。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、スプラッシュガードの窓材を介した外部からの視界を良好にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スプラッシュガードに設けられた窓材の内面を清掃するスプラッシュガードの窓材清掃装置であって、窓材の一部を覆うように窓材の内面に対向して配設され、窓材との間にエア通路を形成する透明な板部材を備え、エア通路は、エア通路内に外部から気体を供給する供給口と、エア通路内に供給された気体を窓材の内面に噴出する噴出口とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、窓材の一部を覆うように窓材の内面に対向して透明な板部材を配設し、窓材と板部材との間のエア通路を介して窓材の内面に向けて気体を噴出するようにしたので、窓材を損傷することなく、窓材の中央部等における付着物も容易に除去することができ、外部からの良好な視界を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る窓材清掃装置が適用される工作機械の概略構成を示す図。
【図2】(a)および(b)は、それぞれ図1の工作機械に設けられた扉の正面図および裏面図。
【図3】図2(b)のIII-III線断面図。
【図4】図2(b)の窓材とノズル板との位置関係を示す斜視図。
【図5】(a)〜(e)は、それぞれ本発明の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1〜図5を参照して、本発明によるスプラッシュガードの窓材清掃装置の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るスプラッシュガードの窓材清掃装置が適用される工作機械の概略構成を示す図であり、一例として横形のマシニングセンタを示している。なお、便宜上、以下では図示のように前後左右および上下方向を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
【0010】
スプラッシュガード10によって周囲を囲繞された加工領域には、前後方向に向けて主軸11が配置され、主軸11に取り付けた工具によりワークが加工される。スプラッシュガード10の前方にはパレット載置台12が設けられ、パレット載置台12に載置された交換用パレット13を介して加工領域にワークが搬送される。主軸11の左側方には、加工領域に面して開閉可能な扉14が取り付けられている。扉14の中央部には略矩形の開口部15が設けられ、その開口部15を塞ぐように透明な窓材20が装着され、窓材20を介して加工領域を外部から視認可能となっている。
【0011】
このような工作機械においては、ワーク加工中に切削油や切り屑が飛散して窓材20の内面に付着すると、窓材20を介した外部からの視界が遮られるため、窓材20への付着物を除去する必要がある。この場合、例えば窓材20の内面にゴムリップ式のワイパを取り付け、ワイパを用いて付着物を除去する構成では、窓材20とワイパとの間に挟まった切り屑によって窓材20やワイパが損傷するおそれがある。一方、窓材20の側方にノズル部を配設して窓材20の内面にエアを吹き付ける構成では、窓材20の中央部等、ノズル部から離れた位置まで勢いよくエアを吹き付けることができず、窓材20の大きさに見合った十分な視界を確保することが難しい。そこで、本実施の形態では、窓材20を傷付けることなく外部からの良好な視界を確保するために、以下のように窓材清掃装置を構成する。
【0012】
図2(a)は扉14の正面図(工作機械の外側から見た図)であり、図2(b)は扉14の裏面図(加工領域側から見た図)である。図2(a)に示すように、開口部15を有する扉14の窓枠16の表面後端部には、鉛直方向に延在する棒状の取っ手17が取り付けられ、扉14を前後方向にスライドさせて開閉可能である。図2(b)に示すように、窓材20の周囲は窓枠16の内側にて、枠部材22と押え部材22aとにより固定されている。枠部材22は平面視略L字形、押え部材22aは、枠部材22のない3辺をそれぞれ押える板状をなしている。窓材20には、窓材20の内面に対向して略直角三角形状の透明なノズル板21が配設され、ノズル板21の直角部210を挟んだ2つの辺部(第1辺部211,第2辺部212)が押え板23を介して固定されている。残りの辺部(第3辺部213)は、前後方向、かつ、上下方向斜めに延設されている。
【0013】
図3は、図2(b)のIII-III線断面図であり、図4は、窓材20とノズル板21との位置関係を示す斜視図である。図3に示すように窓枠16の右面には、略矩形の第1凹部161が形成され、第1凹部161の内側に略矩形の第2凹部162が形成され、第2凹部162の内側に開口部15が設けられている。第2凹部162の形状および深さは、窓材20の外形形状および厚さとほぼ等しく、第2凹部162に窓材20が嵌合されている。第1凹部161の底面には、枠部材22および押え部材22aがボルト24によって取り付けられ、窓材20は、枠部材22および押え部材22aにより第1凹部161の底面に押さえ付けられて固定されている。窓材20は、ポリカーボネート板の両面を強化ガラス板とアクリル板とで挟み込んで構成された全体が透明な積層体であり、強化ガラス板が加工領域に面している。
【0014】
枠部材22には、ノズル板21の第1辺部211および第2辺部212に沿って、ノズル板21を支持するための支持板部25が形成されている。支持板部25は、押え板23(図2)の取付部も兼ね、押え板23と同様、平面視略L字状に設けられている。図3に示すように、支持板部25は、枠部材22の右表面から略直角に右方に延びる突設部26と、突設部26の内側面、すなわち第1辺部211側の突設部26の前面および第2辺部212側の突設部26の下面からそれぞれ突出するフランジ部27とを有する。なお、以下では、第1辺部211側のフランジ部を第1フランジ部271と、第2辺部212側のフランジ部を第2フランジ部272とそれぞれ称する。第1フランジ部271と第2フランジ部272は、枠部材22の後端かつ上端の角部273(図2)で連設され、全体でフランジ部27を構成する。フランジ部27の突設部26からの突出長さは一定である。
【0015】
第1フランジ部271および第2フランジ部272の取付高さ(左右方向の取付位置)は、それぞれ第1辺部211および第2辺部212に沿って徐々に変化している。すなわち、第1フランジ部271は、その上端部から下端部にかけて窓材20に徐々に接近するように斜め方向に形成され、第2フランジ部272も、その後端部から前端部にかけて窓材20に徐々に接近するように斜め方向に形成されている。また、第1フランジ部271と第2フランジ部272の表面全体が同一平面上に位置するように、各フランジ部271,272は窓材20に向けて斜め左方向に突出している。これにより第1フランジ部271と第2フランジ部272とにより、窓材20に対して勾配をもった平面、すなわち、角部273の近傍で窓材20の右表面から最も離れ、角部273から離れるに従い徐々に窓材20の右表面に接近するような平面が形成される。
【0016】
第1フランジ部271および第2フランジ部272の右表面には、それぞれシール用のゴム部材28を介してノズル板21の第1辺部211および第2辺部212が配置され、各辺部211,212の表面に押え板23が配置されている。フランジ部27には所定ピッチでねじ孔が設けられ、各ねじ孔に、押え板23、ノズル板21およびゴム部材28を順次貫通したボルト29が螺合して、ゴム部材28を介してノズル板21がフランジ部27に固定されている。
【0017】
これにより、図3,4に示すように窓材20の右表面に対向して、ノズル板21が勾配をもって傾斜して配設され、窓材20とノズル板21との間に空間SPが形成される。このとき、窓材20とノズル板21との間の隙間tは下方および前方にかけて徐々に小さくなり、第3辺部213に沿った窓材20との間の開口31において、隙間tが最小となる。この隙間tは、フランジ部27の形成角度によって定まり、第3辺部213に沿った開口31の隙間tが一定となるようにフランジ部27の形成位置が設定されている。
【0018】
ノズル板21は、窓材20と同様、透明な板部材により形成されている。例えば強化ガラス板とポリカーボネート板との積層体により形成され、強化ガラス板が加工領域に面している。図3において、ゴム部材28は、例えばNBR(ニトリルブタジエンゴム)で形成され、ボルト29の締結力を調整することで、ゴム部材28の厚さが変化する。これによりノズル板21の位置を微調整することができ、窓材20とノズル板21との間の隙間tを変更することができる。
【0019】
ノズル板21の直角部210の近傍には、突設部26を貫通して管継手30が取り付けられている。管継手30には、図示しない配管を介して空圧源が接続され、管継手30を介して空間SP内に外部から圧縮空気が供給可能となっている。なお、圧縮空気に限らず他の気体を空間SP内に供給することもできる。
【0020】
本発明の実施の形態に係るスプラッシュガードの窓材清掃装置の動作を説明する。圧縮空気は、ワークの加工を開始する際に管継手30を介して空間SP内に供給される。なお、加工状況に応じて手動で圧縮空気の供給を開始するようにしてもよい。この際、空間SPの後端面および上端面は突設部26により閉塞されているため、空間SP内に供給された圧縮空気は空間SP内を前方かつ下方に流れ、図4の矢印に示すように開口31から噴出する。
【0021】
これにより窓材20の内面に圧縮空気が吹き付けられ、窓材20の内面に付着した切削油や切り屑等を除去することができる。この場合、ノズル板21が窓材20に対して傾斜して取り付けられ、窓材20とノズル板21との間の隙間tが徐々に小さくなっている。このため、空間SP内の圧縮空気の流れを整流にすることができ、第3辺部213における開口31から圧縮空気を勢いよく噴出することができる。よって、広範囲にわたり、窓材20への付着物を除去することができる。
【0022】
そして、本実施の形態では、ノズル板21を透明に形成しているため、切削油を用いないドライ加工ではノズル板21により視界を遮られることなく、また、切削油を用いるウェット加工では少なくとも第3辺部213の近傍において、付着物のないクリア領域AR(図4)を得ることができ、良好な視界を確保することができる。ここで、第3辺部213は、窓材20の幅方向(前後方向)にわたり、かつ、上下方向斜めに延在しているので、クリア領域ARは、窓材20の幅方向だけでなく、高さ方向にも拡大する。このため、高さ方向の広範囲な視界の確保が可能である。
【0023】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)窓材20の一部を覆うように窓材20の内面に対向して透明な三角形状のノズル板21を配設し、窓材20とノズル板21との間に空気通路としての空間SPを形成するとともに、管継手30を介して空間SP内に圧縮空気を供給し、第3辺部213における開口31から窓材20の内面に圧縮空気を噴出するようにした。これにより窓材20を傷付けることなく、窓材20の幅方向中央部にも十分に空気を吹き付けることができ、ノズル板21によって視界も遮られずに、外部からの良好な視界を確保することができる。また、空気の噴出口は不連続ではなく、第3辺部213に沿って連続的に設けられるため、クリア領域ARを得ることができる。
【0024】
(2)空気の噴出口である辺部213を、窓材20の幅方向にわたり、かつ、上下方向斜めに延設するようにしたので、幅方向および上下方向に広範囲のクリア領域ARを得ることができる。このため、作業員の身長の高低に拘わらず、良好な視界を確保することができる。
(3)直角部210から第3辺部213にかけて窓材20とノズル板21との間の隙間tが小さくなるように、窓材20に対してノズル板21を傾斜して配設するようにしたので、空間SP内における圧縮空気の流れを整流にすることができ、窓材20に効率よく圧縮空気を吹き付けることができる。
(4)ノズル板21の取付用のフランジ部27とノズル板21との間にゴム部材28を介装してシールするようにしたので、フランジ部27からの圧縮空気の漏れを防ぐことができる。また、ボルト29の締結力を調整することによりゴム部材28の変形量を調整することができ、窓材20とノズル板21との間の隙間tの設定を容易に変更することができる。
【0025】
なお、上記実施の形態では、ノズル板21を直角三角形状として構成したが、窓材20の一部を覆うように窓材20の内面に対向してノズル板21を配設し、窓材20との間にエア通路としての空間SPを形成するのであれば、透明な板部材としてのノズル板21の形状はいかなるものでもよい。例えば図5(a)に示すように、窓材20の上部に略矩形状のノズル板21を配設するようにしてもよく、図5(b)に示すように、窓材20の前部あるいは後部にノズル板21を配設するようにしてもよい。図5(c)に示すように、窓材20の前部あるいは後部の上下方向中央部に略矩形状のノズル板21を配設し、ノズル板21の三辺から空気を噴出するようにしてもよい。図5(d)に示すように、ノズル板21を半円形状として構成し、放射状に空気を噴出するようにしてもよい。図5(e)に示すように、略直角三角形状のノズル板21を分割して配置し、各ノズル板21の斜辺からそれぞれ空気を噴出するようにしてもよい。
【0026】
上記実施の形態では、窓材20を矩形状としたが、円形や三角形状としてもよい。管継手30を介して空間SP内に圧縮空気を供給するようにしたが、供給口の構成はこれに限らない。ボルト29の締結力を調整することにより、窓材20とノズル板21との間の隙間tを調整するようにしたが、調整手段はいかなるものでもよい。枠部材22と一体に支持板部25を設けるようにしたが、支持板部25を枠部材22とは別に設けてもよく、ノズル板21の支持構造は上述したものに限らない。また、上記実施の形態では、スプラッシュガード10に設けられた扉14の窓材20について述べたが、スプラッシュガード10に直接設けられた窓材に本発明を適用してもよい。
【0027】
以上では、横形マシニングセンタのスプラッシュガード10に設けられた窓材20に窓材清掃装置を適用した例を説明したが、縦形マシニングセンタや他の工作機械にも本発明によるスプラッシュガードの窓材清掃装置を同様に適用可能である。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の窓材清掃装置に限定されない。
【符号の説明】
【0028】
10 スプラッシュガード
20 窓材
21 ノズル板
28 ゴム部材
29 ボルト
30 管継手
210 直角部
213 辺部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプラッシュガードに設けられた窓材の内面を清掃するスプラッシュガードの窓材清掃装置であって、
前記窓材の一部を覆うように前記窓材の内面に対向して配設され、前記窓材との間にエア通路を形成する透明な板部材を備え、
前記エア通路は、エア通路内に外部から気体を供給する供給口と、前記エア通路内に供給された気体を前記窓材の内面に噴出する噴出口とを有することを特徴とするスプラッシュガードの窓材清掃装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスプラッシュガードの窓材清掃装置において、
前記噴出口は、前記窓材の幅方向にわたり、かつ、上下方向斜めに、延設されているスプラッシュガードの窓材清掃装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスプラッシュガードの窓材清掃装置において、
前記板部材は、略三角形状をなし、その一の頂角を前記窓材の一の頂角とほぼ同じ角度に形成され、かつ、ほぼ同じ位置になるように配設され、
前記供給口は、前記板部材の一の頂角に設けられ、前記噴出口は、前記板部材の一の頂角の対辺に設けられているスプラッシュガードの窓材清掃装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスプラッシュガードの窓材清掃装置において、
前記窓材と前記板部材との間の隙間が前記供給口から前記噴出口にかけて小さくなるように、前記板部材は、前記窓材に対して傾斜して配設されているスプラッシュガードの窓材清掃装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のスプラッシュガードの窓材清掃装置において、
前記噴出口における前記窓材と前記板部材との間の隙間を調整可能な調整手段をさらに備えるスプラッシュガードの窓材清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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