説明

スプリンクラヘッド

【課題】平常時には腐食ガスから半田を保護し、火災発生時等の異常時には半田が流出できるように間隙を開通させることを可能にしたスプリンクラヘッドを提供する。
【解決手段】スプリンクラヘッド100は、シリンダー50と、シリンダー50内に設けられた半田99と、半田99を押圧する第1のピストン54と、半田99と外気とを連通する間隙95の少なくとも一部に設けられ、半田99の溶融によって中心方向に縮小し、設置された部分の間隙95を開放する間隙開閉部材90と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスプリンクラヘッドには、「給水配管と接続し、内部にノズルを有する本体と、感熱分解部分によりノズルを閉塞している止水部と、熱によって分解する感熱分解部と、本体と接合され感熱分解部を支持しているフレームと、ノズル開放時に給水配管から供給される消火水を散布させる散布部から構成されるスプリンクラーヘッドにおいて、散布部をフレームの外側に設置して散水部以外の構成品によって組み立てられたユニットと着脱可能に設置される」というものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のスプリンクラヘッドにおいては、半田(低融点合金)がシリンダー内でピストンに押圧されており、火災発生時にシリンダー内でピストンに押圧されている半田が流出可能になっている。そのため、溶融した半田を流出させるための間隙がシリンダー内周面とピストン外周面との間に設けられている。半田は、この間隙を介してスプリンクラヘッドの周囲に存在する腐食ガスに常時曝されていることになる。よって、間隙から浸入した腐食ガスによって半田が腐食してしまうとことがある。半田が腐食すると、半田の融点が変化してしまい、半田が溶けにくくなってしまう可能性がある。こうなると、スプリンクラヘッドの正常動作に支障をきたす可能性が生じる。
【0004】
そこで、「シリンダ内に感熱体を設け、該感熱体上部にピストンを設けたスプリンクラヘッドにおいて、前記シリンダ内に、前記感熱体より溶融温度が高く、かつ、耐腐食性のある封止部材を設け、該封止部材により前記感熱体に外気を接触させない」ようにしたスプリンクラヘッドが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。このスプリンクラヘッドは、封止部材を設けることで、半田と外気との接触を遮断して、半田の腐食を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−339901号公報
【特許文献2】特開2007−236443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のスプリンクラヘッドにおいては、シリンダー内周面とピストン外周面との間に設けられた間隙があるために、半田のクリープ現象が促進されることにもなっている。つまり、半田には常時荷重がかかっているため、半田は常時間隙側に変形しようとする。この状態は、半田に荷重がかかっている間、継続して進行している。このため、時間の経過により半田が間隙から徐々に流出し、流出量が一定量に達するとスプリンクラヘッドが作動することになる。すなわち、シリンダー内周面とピストン外周面との間に設けられた間隙が製品寿命を短くする要因になっている。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、平常時には腐食ガスから半田を保護すると共に、半田のクリープ現象を抑制し、火災発生時等の異常時には半田が流出できるように間隙を開通させることを可能にしたスプリンクラヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスプリンクラヘッドは、筒状のシリンダーと、シリンダー内に設けられた半田と、半田を押圧するピストンと、半田の流出路となる間隙の少なくとも一部に設けられ、前記半溶融に伴って中心方向に縮小変形し、設置された部分の間隙を開放する間隙開閉部材と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るスプリンクラヘッドによれば、間隙開閉部材を設けたことにより、平常時には間隙を閉塞して腐食ガスから半田を保護し、火災発生時等の異常時には半田が流出できるように間隙を開通させることが可能になる。すなわち、本発明に係るスプリンクラヘッドによれば、間隙開閉部材の作用によって半田の腐食を効率的に抑制することができるとともに、半田のクリープ現象を効率的に抑制することができる。その結果、製品の長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの断面構成の一例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドのリンク機構の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの動作を説明する概略図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの間隙開閉部材の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの間隙開閉部材のいくつかの形状を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの間隙開閉部材の別の構成例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るスプリンクラヘッドの断面構成の一例を示した縦断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るスプリンクラヘッドの動作を説明する概略図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係るスプリンクラヘッドの間隙開閉部材を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッド100の断面構成の一例を示す縦断面図である。図2は、スプリンクラヘッド100の分解斜視図である。図3は、リンク機構40の分解斜視図である。図4は、スプリンクラヘッド100の動作を説明する概略図である。図1〜図4に基づいて、スプリンクラヘッド100の構成及び動作について説明する。なお、図1を含め、以下の図面においては、各構成部材同士の大きさの関係を限定するものではなく、実際のものとは異なる場合がある。
【0012】
[スプリンクラヘッド100の構成]
図1に示すように、スプリンクラヘッド100は、ヘッド本体1、フレーム10、弁体20、アームガイド30、バランサー35、リンク機構40、カバー61、及び、感熱板63を備えている。
【0013】
(ヘッド本体1)
ヘッド本体1は、外周に設けられたねじ部と、ねじ部の下端部に設けられたフランジ部3と、フランジ部3の下端側外周にフランジ部3と一体に形成されたねじ部と、からなり、中心部にはこれらねじ部、フランジ部3及びねじ部を貫通して放水口5が設けられている。そして、放水口5の下部は、拡径されて後述の弁体20が収容される凹部6が形成されており、放水口5と凹部6との間には弁座7が設けられている。
【0014】
(フレーム10)
フレーム10は、有底円筒状であり、内壁の上部にはヘッド本体1のねじ部に螺合されるねじ部が設けられており、ねじ部の下方(高さ方向の中央部よりやや下方)には、後述のアーム41の一端が係止される係止段部12が形成されている。フレーム10の係止段部12の下方には、散水口15が形成されている。
【0015】
(弁体20)
弁体20は、ヘッド本体1の放水口5を開閉するものである。
【0016】
(アームガイド30)
アームガイド30は、1枚の金属板を曲げ加工して形成されている。アームガイド30は、後述するアーム41の動作をガイドする機能を有している。
【0017】
(バランサー35)
バランサー35は、金属材料を折曲げ加工してほぼコ字状に形成されている。バランサー35の中央部には弁体20により下向き荷重が、また、両端部にはリンク機構40による上向き荷重が加えられるものである。
【0018】
(リンク機構40)
リンク機構40は、図3に示すように、一対のアーム41、アーム支持板46、シリンダー50、第1のピストン54、リンク押え板55、第2のピストン59等からなる。
【0019】
アーム41は、図3に示すように、外側にほぼ円弧状に折曲げられた頭部42と、頭部42より幅広に形成され、途中から外側(後述のシリンダーから離れる方向)に折曲げられた(傾斜した)脚部43とによりほぼ逆J字状に形成されており、脚部43には第1の係止穴44と第2の係止穴45が設けられている。
【0020】
また、アーム41の脚部43に設けた第1の係止穴44の下面は、外側から内側に向って下り斜面に形成されており、また、頭部42の幅は、バランサー35の側壁の間に遊嵌しうる幅に、バランサー35の脚部の幅は、アームガイド30のガイド片の間に遊嵌しうる幅に形成されている。
【0021】
アーム支持板46は、直線状の2辺と円弧状の2辺とによりほぼ四角形状に形成され、中心部に貫通穴48を有する本体47と、直線状の2辺から僅かに下方に傾斜して突設され、先端部が斜め下方に折曲げられた係止片49とからなり、アーム41の間に配設されて係止片49がアーム41の第1の係止穴44に係止される。
【0022】
シリンダー50は、図3に示すように、外壁の高さ方向のほぼ中央部にはつば部51が設けられており、下面にはねじ部52が突設されている。そして、このシリンダー50は、つば部51が当接するまでアーム支持板46の貫通穴48に挿入され、その位置でアーム支持板46と一体に固定される。このシリンダー50の内部には、たとえばコンプレッション半田からなる半田99が収容されている。第1のピストン54は、その外径がシリンダー50の内径よりもわずかに小さく形成され、半田99を押圧するようにシリンダー50内に摺動可能に収容されている。すなわち、シリンダー50内に第1のピストン54を収容した状態において、シリンダー50の内周面と第1のピストン54の外周面との間には半田99が流出するための流出路となる間隙95が形成される。
【0023】
また、半田99の上面周縁には間隙開閉部材90が設けられている。この間隙開閉部材90については後段で詳細に説明する。なお、実施の形態1で説明する間隙95は、上方に向かって開放されるようになっている。
【0024】
リンク押え板55は、図3に示すように、中心部にねじ穴57を有しアーム支持板46の本体47の幅より若干狭い幅の四角形の本体56と、その両側に突設された嵌合片58からなり、両アーム41の間に配設されて嵌合片58が両アーム41の第2の係止穴45に遊嵌する。第2のピストン59は、一端に設けたねじ部60がリンク押え板55のねじ穴57に螺入され、他端が第1のピストン54に当接する。
【0025】
(カバー61)
カバー61は、受熱板を兼ね、リンク機構40等を下側から覆うものである。このカバー61は、中心部に突出しているねじ部52にカバー61の中心にある穴を通した後、感熱板63の中心部を螺合することにより、フレーム10やリンク機構40の下面を覆って固定される。なお、カバー61は、その上端部がフレーム10の散水口15を覆う高さまで延伸させてもよい。また、感熱板63の中心部には、ねじ部52が螺合するねじ部62が設けられている。
【0026】
(感熱板63)
感熱板63は、カバー61を固定するようにカバー61の下側に設けられる。
【0027】
以上のように構成したスプリンクラヘッド100は、建物の天井に設けた穴から挿入され、ねじ部を天井の穴に配置されている給水管(図示省略)に螺入して接続することにより天井面に装着され、その一部(全長の2分の1程度)が天井面から露出する。
【0028】
[スプリンクラヘッド100の動作]
いま、火災が発生して受熱板を兼ねたカバー61及び感熱板63が加熱され、その熱及び周辺からの熱気流により半田99が加熱される。半田99が溶融し始めると、溶融した半田99の一部はシリンダー50と第1のピストン54との間に形成された間隙95から流出する。そうすると、シリンダー50及びこれに固定されたアーム支持板46が上昇し、両アーム41の少なくとも一方のアーム41が、フレーム10の係止段部12との係止部を支点として外方に回動する。
【0029】
この結果、両アーム41の少なくとも一方のアーム41がアーム支持板46から外れ、リンク機構40は分解する。これにより、カバー61を含むリンク機構40及びバランサー35は、外部に落下する。
【0030】
同時に、弁体20と一体化されたアームガイド30は、自重と消火水の圧力によりフレーム10の開口部の両側縁に沿って下降し、弁体20のフランジ部がフレーム10の底部に着座してフレーム10の開口部を閉塞する。これにより、放水口5が開口され、消火水は、フレーム10内を通って散水口15から散水される。
【0031】
図5は、間隙開閉部材90の説明図であり、(a)が平常時の状態におけるシリンダー50の断面を概略的に拡大して示した概略拡大断面図、(b)が火災時(半田99の溶融時)の状態におけるシリンダー50の断面を概略的に拡大して示した概略拡大断面図である。図6は、間隙開閉部材90のいくつかの形状を示す図である。図7は、間隙開閉部材90の別の構成例を示す説明図である。図5〜図7に基づいて、間隙開閉部材90について詳細に説明する。
【0032】
上述したように、シリンダー50内に第1のピストン54が収容された状態において、シリンダー50の内周面と第1のピストン54の外周面との間には半田99が流出するための間隙95が形成される。この状態では、半田99が外気(腐食ガス)に常時曝されることになっている。間隙95から腐食ガスが浸入すると、その腐食ガスによって半田99が腐食してしまうことがある。半田99が腐食すると、その融点が変化してしまい、溶けにくくなってしまう可能性がある。また、間隙95があるために、半田99のクリープ現象が促進されることにもなっている。つまり、半田99には、第1のピストン54により常時荷重がかかっているため、常時、半田99が間隙95側に変形しようとする。
【0033】
そこで、スプリンクラヘッド100では、従来は円柱状であった半田99の上面周縁に段部96を設け、この段部96に間隙開閉部材90を設置するようにしている。言い換えると、間隙95に対向する部分に間隙開閉部材90を設けることになる。この間隙開閉部材90は、断面形状がたとえば図6に示すように長方形状になっている。また、間隙開閉部材90は、図6に示すように、平面形状がリング状、リングの一部を切り欠いた形状(Cリング状)、または、リングの一部を切り欠いて端部を重ね合わせた形状(コイル状)などに形成されている。間隙開閉部材90の一部に切り欠きを形成することで、間隙開閉部材90の中心方向の変形量を調整することができる。なお、間隙開閉部材90と段部96の高さは同じか、間隙開閉部材90の方が低くなっている。
【0034】
この間隙開閉部材90は、図5に示すように、平常においては間隙95を閉塞し、間隙95からの腐食ガスの浸入を抑制するとともに、半田99のクリープ現象を抑制するようにしている。一方、半田99が溶融し始めると、間隙開閉部材90は中心に向かって、例えばその外径が第1ピストン54の内径と同じくらいになるまで収縮し、間隙95を開放し、半田99の流出路を確保するようになっている。
【0035】
間隙開閉部材90は、たとえば弾性変形、熱変形等することによって中心方向に伸縮可能な部材で構成されている。間隙開閉部材90は通常時よりも大きく開かれた状態で半田99又は第1のピストン54の段部96に設けられる。火災により、半田99が溶融して軟化することで、通常の大きさに戻る。間隙開閉部材90の中心方向への伸縮は、半田99が流出できるように、間隙95が開放される程度でよい。つまり間隙開閉部材90の通常時の外径は、第1ピストン54の内径と同じか、それ以下である。間隙開閉部材90の構成材料を特に限定するものではないが、たとえば上記のような性質を有している樹脂材料や金属材料などで構成するとよい。このような性質を有しているので、間隙開閉部材90は、半田99の溶融(液化)がトリガーとなり中心方向に変形する。なお、間隙開閉部材90は、図6に示す平面形状の他、円盤形状であってもよい。また、間隙開閉部材90は、平常時において間隙95の少なくとも一部を閉塞することができればよく、必ずしも間隙95の全部を閉塞しなくてもよい。さらに、間隙開閉部材90の断面形状を長方形状に限定するものではなく、断面形状を円形状や楕円形状としてもよい(図7(b)参照)。
【0036】
また、図5では、半田99側に段部96を形成して間隙開閉部材90を設置するようにした場合を例に示したが、図7に示すように第1のピストン54の下面周縁に段部96を形成して間隙開閉部材90を設置するようにしてもよい。この場合、間隙開閉部材90の中心側への収縮をガイドするために、段部96の中心側の壁面を図7に示すように傾斜させておくとよい。第1ピストン54の段部96に間隙開閉部材90を設置する場合においても、図6に示したような形状の間隙開閉部材90を適用することができる。また、この場合、半田は円柱状のものでよい。
【0037】
つまり、間隙95がシリンダー50の内周面とピストン54の外周面との間に形成される形のスプリンクラヘッドでは、間隙開閉部材90は、間隙95で、ピストン54及び半田99に接するように設けられることになる。また、ピストン72又は半田99は、間隙開閉部材90と接する位置に段部又はテーパ部を有している。
【0038】
[スプリンクラヘッド100の有する効果]
実施の形態1に係るスプリンクラヘッド100によれば、間隙開閉部材90を設置したので、平常時には間隙を閉塞して腐食ガスから半田99を保護し、火災発生時等の異常時には半田99が流出できるように間隙95を開通させることが可能になる。すなわち、スプリンクラヘッド100によれば、間隙開閉部材90の作用によって半田99の腐食を効率的に抑制することができるとともに、半田99のクリープ現象を効率的に抑制することができる。その結果、スプリンクラヘッド100の長寿命化を実現することができる。
【0039】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2に係るスプリンクラヘッド100Aの断面構成の一例を示した縦断面図である。図9は、スプリンクラヘッド100Aの動作を説明する概略図である。図8及び図9に基づいて、スプリンクラヘッド100Aの構成及び動作について説明する。なお、この実施の形態2では上述した実施の形態1との相違点を中心に説明するものとし、実施の形態1と同一の箇所については説明を割愛するものとする。また、実施の形態1に対応している部材については符号の末尾に「A」を付記している。
【0040】
(弁体支持機構120)
弁体支持機構120は、感熱部121、ボール保持機構130及びセットスクリュー65を備えている。
【0041】
感熱部121は、ピストン72、感熱板73、感熱板81及び断熱材74を備えている。ピストン72は、円筒状に形成され、下部にフランジ72aが形成されている。ピストン72の内部には、雌ねじ72bが形成され、セットスクリュー65の脚部にある雄ねじがねじ込まれ両者は結合している。ピストン72の上部からドーナツ状の半田99Aが挿入され、ピストン72のフランジ72a上に載っている。この半田99Aの上部に、円板状であって、断面クランク型であってシリンダーを構成する感熱板73が設けられている。すなわち、この感熱板73は、ピストン72のフランジ72aに設けられた半田99Aを覆う突部(垂直部)73aと、この突部73aに連続し、ヘッド本体1Aの軸芯に対して直交する方向に延びた円板部73bとを備えている。
【0042】
そして、ピストン72には、後述するボール保持機構130によって半田99Aを圧縮するように力がかかっている。また、ピストン72のフランジ72aの外周面と、シリンダーとしての役割を持つ感熱板73(突部73a)の内周面との間には半田99Aが流出するための間隙95Aが形成される。また、半田99Aの下面周縁には間隙開閉部材90Aが設けられている。この間隙開閉部材90Aについては後段で詳細に説明する。なお、実施の形態2で説明する間隙95Aは、下方に向かって開放されている下方開放型であり、半田99Aは下方に向かって流出する。
【0043】
感熱板72の上部には、ドーナツ状の断熱材74が設けられ、感熱板73で受熱した熱が後述するバランサー133側に逃げないようにしてある。また、断熱材74と感熱板73との間には、別の感熱板81が設けられている。
【0044】
ボール保持機構130は、ボール131、スライダー132及びバランサー133を備えている。
【0045】
ボール131の外周下部は、フレーム10Aの係止段部12Aに係止されている。この状態で、ボール131を上から押さえるのがスライダー132であり、スライダー132からボール131に力がかかることで、ボール131には内側に入り込む方向に力が作用する。バランサー133は、ボール131の内側に設けられ、この内側に入りこもうとするボール131の動きを規制する。スライダー132及びバランサー133ともに円板状に形成され、中央には貫通穴があり、バランサー133の貫通穴にはセットスクリュー65が貫通している。バランサー133の貫通穴はセットスクリュー65の外径よりも僅かに大きく、両者は結合していない。
【0046】
バランサー133は、外周下部に段部が形成されている。この外周下部の段部は、フレーム10Aの係止段部12Aの内周下部にある段部に、当接するように構成されており、バランサー133の下側から外力がかかった場合には、この部分で衝撃を吸収する。また、バランサー133の中央の貫通穴の周りには、断熱材74がはまる段部133aが突出し、バランサー133の上部には、ボール131があたる傾斜部133bが突出して形成されている。
【0047】
スライダー132の外周側下部には凹部132aが形成され、その凹部132aのボール131が接する面は、下方に向かって内側に傾斜するようにテーパー状(傾斜部)に形成されている。
【0048】
ボール131には、皿ばね32のバネ力が、弁体20A、セットスクリュー65をスライダー132を介して伝達され、常に内側に移動するように力がかかり、その結果、また、バランサー133を下方に移動させるように力が作用する。したがって、半田99Aが溶融して流出すれば、バランサー133が下方に移動し、それに伴って、ボール131が内側に入り込み、フレーム10Aの係止段部12Aとの係止状態が解除されるので、ボール保持機構130は感熱部121と共に落下する。ボール保持機構130が落下すれば、それに伴って、散水部110を構成する弁体20A、ストッパリング113等が落下して、放水が行われることになる。
【0049】
セットスクリュー65は、頭部と脚部とからなるボルトであって、その脚部の下部がピストン72の上部と結合することで、ボール保持機構130としてのバランサー133、スライダー132及び感熱部121を一体化している。
【0050】
上記のようなスプリンクラヘッド100Aには、図8の状態においては、放水口5Aの消火水の水圧や部品の組立荷重がボール131に作用し、ボール131は内側(中心側)に移動しようとするが、ボール131は、バランサー133によってその移動が阻止されており、ボール保持機構130はボール131を保持している。そして、この状態においては、弁体20A及び皿ばね32がヘッド本体1Aの放水口5Aを封止している。このため、スプリンクラヘッド100Aには、加圧された消火水が供給されるが、消火水は漏れない。また、散水部110は、弁体20Aにデフレクタ111が固定され、デフレクタ111にガイドロッド112が固定されており、弁体20Aが放水口5Aを封止している状態では、ガイドロッド112がヘッド本体1Aの空間18に収納された状態になっている。
【0051】
[スプリンクラヘッド100Aの動作]
図8に示すように、スプリンクラヘッド100Aの監視状態においては、ヘッド本体1Aの放水口5Aには加圧された消火水が供給されており、弁体20Aには消火水の圧力が加えられている。火災が発生し、その熱気流が感熱板73、感熱板81に当たるとこれらが加熱され、感熱板73、感熱板81の熱は半田99Aへ伝播する。そして、半田99Aが周囲から加熱されて溶融し始めると、溶融した半田99Aはピストン72と感熱板73(突部73a)との間に形成された間隙95Aから流出してその体積が減少する。
【0052】
図9(a)に示すように、半田99Aが溶融して外部に流出すると、感熱板73、感熱板81は半田99Aの流出量に対応して降下する。感熱板73、感熱板81が降下すると、感熱板73、感熱板81の上に取り付けられている断熱材74及びバランサー133が降下する。
【0053】
図9(b)に示すように、バランサー133が降下すると、バランサー133とスライダー132との間の間隙が広がり、内側に付勢されているボール131がバランサー133の傾斜部133bを越えて内側に移動し、フレーム10Aの係止段部12Aとボール131との係合が解かれる。それによって、弁体20A及び弁体支持機構120は降下する。
【0054】
図9(c)に示すように、弁体20Aの下に配置されている皿ばね32を含む弁体支持機構120は落下すると、弁体20Aが降下する。また、弁体20Aの降下に伴って、弁体20Aに取り付けられているデフレクタ111、デフレクタ111に取り付けられているガイドロッド112、及びストッパリング113が降下する。ガイドロッド112が降下すると、ストッパリング113はフレーム10Aの係止段部12Aに係止され、弁体20A及びデフレクタ111がガイドロッド112によりフレーム10Aから吊り下げられた状態になる。
【0055】
実施の形態2では、放水動作時において、デフレクタ111は、ガイドロッド112と共に下降するので、デフレクタ111の下降動作が円滑に行われる。
【0056】
以上のようにして、弁体20Aが降下すると放水口5Aは開放され、加圧された消火水がデフレクタ111から散水されて火災を消火する。
【0057】
図10は、間隙開閉部材90Aを説明するための説明図である。図10に基づいて、間隙開閉部材90Aについて詳細に説明する。
【0058】
上述したように、ピストン72のフランジ72aの外周面と感熱板73(突部73a)の内周面との間には半田99Aが流出するための間隙95Aが形成される。この状態では、半田99Aが外気(腐食ガス)に常時曝されることになっている。また、半田99Aには、感熱板73により常時荷重がかかっているため、常時、半田99Aが間隙95A側に変形しようとする。
【0059】
そこで、スプリンクラヘッド100Aでは、半田99Aの下面周縁に間隙開閉部材90Aを設置するようにしている。この間隙開閉部材90Aは、断面形状がたとえば図10に示すように円形状になっている。また、間隙開閉部材90Aは、実施の形態1で説明したような平面形状に形成されている。この間隙開閉部材90Aは、間隙開閉部材90と同様に、平常においては間隙95Aを閉塞し、間隙95Aからの腐食ガスの浸入を抑制するとともに、半田99Aのクリープ現象を抑制するようにしている。一方、半田99Aが溶融し始めると、間隙開閉部材90Aは中心に向かって火災時の熱によって収縮し、間隙95Aを開放し、半田99Aの流出路を確保するようになっている。
【0060】
間隙開閉部材90Aは、たとえば弾性変形、熱変形等することによって中心方向に伸縮可能な部材で構成されている。間隙開閉部材90Aの構成材料を特に限定するものではないが、たとえば上記のような性質を有している樹脂材料や金属材料などで構成するとよい。このような性質を有しているので、間隙開閉部材90Aは、半田99Aの溶融(液化)がトリガーとなり中心方向に変形する。なお、間隙開閉部材90Aは、図6に示す平面形状の他、円盤形状や円筒形状であってもよい。また、間隙開閉部材90Aは、平常時において間隙95Aの少なくとも一部を閉塞することができればよく、必ずしも間隙95Aの全部を閉塞しなくてもよい。さらに、間隙開閉部材90Aの断面形状を円形状に限定するものではなく、断面形状を長方形状や楕円形状としてもよい。
【0061】
また、図10では、ピストン72のフランジ72aの上面周縁を切り欠いて、間隙開閉部材90Aの設置場所を確保するようにしている。この場合、間隙開閉部材90Aの中心側への収縮をガイドするために、フランジ72aの上面周辺を図10に示すように傾斜させておくとよい。また、半田99側に段部(実施の形態1で説明した段部96に相当するような段部)を形成して間隙開閉部材90Aを設置するようにしてもよい。
【0062】
つまり、間隙95Aがシリンダーとしての役割を担う感熱板73の内周面とフランジ72aとの外周面との間に形成される形のスプリンクラヘッドでは、間隙開閉部材90Aは、間隙95Aで、フランジ72a及び半田99Aに接するように設けられる。また、ピストン72又は半田99Aは、間隙開閉部材90Aと接する位置に段部又はテーパ部を有している。
【0063】
[スプリンクラヘッド100Aの有する効果]
実施の形態2に係るスプリンクラヘッド100Aによれば、間隙開閉部材90Aを設置したので、平常時には間隙を閉塞して腐食ガスから半田99Aを保護し、火災発生時等の異常時には半田99Aが流出できるように間隙95Aを開通させることが可能になる。すなわち、スプリンクラヘッド100Aによれば、間隙開閉部材90Aの作用によって半田99Aの腐食を効率的に抑制することができるとともに、半田99Aのクリープ現象を効率的に抑制することができる。その結果、スプリンクラヘッド100Aの長寿命化を実現することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ヘッド本体、1A ヘッド本体、3 フランジ部、3A フランジ部、5 放水口、5A 放水口、6 凹部、7 弁座、7A 弁座、10 フレーム、10A フレーム、12 係止段部、12A 係止段部、15 散水口、18 空間、19 放水筒、20 弁体、20A 弁体、20a 弁本体、20b フランジ部、20bA フランジ部、20c かしめ片、21 突起部、23 上面、23a パッキン、30 アームガイド、32 皿ばね、35 バランサー、40 リンク機構、41 アーム、42 頭部、43 脚部、44 第1の係止穴、45 第2の係止穴、46 アーム支持板、47 本体、48 貫通穴、49 係止片、50 シリンダー、51 つば部、52 ねじ部、54 第1のピストン、55 リンク押え板、56 本体、57 ねじ穴、58 嵌合片、59 第2のピストン、60 ねじ部、61 カバー、62 ねじ部、63 感熱板、65 セットスクリュー、72 ピストン、72a フランジ、72b ねじ部、73 感熱板、73a 突部、73b 円板部、74 断熱材、81 感熱板、90 間隙開閉部材、90A 間隙開閉部材、95 間隙、95A 間隙、96 段部、99 半田、99A 半田、100 スプリンクラヘッド、100A スプリンクラヘッド、110 散水部、111 デフレクタ、112 ガイドロッド、113 ストッパリング、120 弁体支持機構、121 感熱部、130 ボール保持機構、131 ボール、132 スライダー、132a 凹部、133 バランサー、133a 段部、133b 傾斜部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシリンダーと、
前記シリンダー内に設けられた半田と、
前記半田を押圧するピストンと、
前記半田の流出路となる間隙の少なくとも一部又は間隙に対向する部分に設けられ、前記半田の溶融に伴って中心方向に縮小変形し、設置された部分の間隙を開放する間隙開閉部材と、
を備えたことを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項2】
前記間隙は、前記シリンダーの内周面と前記ピストンの外周面との間に形成されることを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラヘッド。
【請求項3】
前記ピストンに形成されたフランジに前記半田が乗せられるものにおいて、
前記間隙は、前記シリンダーの内周面と前記フランジとの外周面との間に形成されることを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラヘッド。
【請求項4】
前記間隙が前記シリンダーの内周面と前記ピストンの外周面との間に形成されるものにおいて、
前記間隙開閉部材は、前記間隙で、前記ピストン及び前記半田に接するように設置されることを特徴とする請求項2に記載のスプリンクラヘッド。
【請求項5】
前記間隙が前記シリンダーの内周面と前記フランジとの外周面との間に形成されるものにおいて、
前記間隙開閉部材は、前記間隙で、前記フランジ及び前記半田に接するように設置されることを特徴とする請求項3に記載のスプリンクラヘッド。
【請求項6】
前記ピストン又は前記半田は、前記間隙開閉部材と接する位置に段部又はテーパ部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスプリンクラヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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