説明

スプリンクラー装置を天井パネルに対して固定する固定装置、固定構造及び固定方法

【課題】天井が完成した後におけるスプリンクラー装置の施工及びメンテナンスを容易にすることができる、スプリンクラー装置のための固定装置、固定構造、及び固定方法を提供する
【解決手段】本発明による固定装置(10)は、野縁(6)に固定される一対のレール(12,14)と、一対のレール(12,14)に固定される固定部材(20)を有し、固定部材(20)にスプリンクラーヘッド(26)と、スプリンクラー配管(28)が固定される。固定部材(20)は、それが一対のレール(12,14)に仮固定されている状態において、開口(8)から遠ざかるように一対のレール(12,14)に沿って摺動可能である。それにより、天井パネル(4)の下側から、固定部材(20)よりも上側に位置する配管作業箇所(42)にアクセスすることを容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー装置を天井パネルに対して固定するための固定装置、固定構造及び固定方法に関し、更に詳細には、スプリンクラー装置を、天井パネルの下側からの作業によって天井パネルに対して固定することが可能な固定装置、固定構造及び固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火災を自動的に検出して天井等から散水するスプリンクラー装置が知られている。スプリンクラー装置は、水を噴射するスプリンクラーヘッドと、スプリンクラーヘッドに水を供給するために天井パネルの上側に通されるスプリンクラー配管とを有している。具体的には、スプリンクラー配管の大部分は、吊り具等によって吊られ、スプリンクラーヘッド及びその周囲のスプリンクラー配管は、天井パネルを上方から支持するために互いに平行に配置された野縁に固定装置を介して固定されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
スプリンクラー装置を天井パネルに対して固定する作業は、一般には、天井パネルを野縁に取付けて天井を完成させる前に行われるので、作業スペース及び視野が十分に確保されている。
【0003】
【特許文献1】実公昭第55−23560号公報(図1)
【特許文献2】特許第2780617号公報(図1)
【特許文献3】特許第3894800号公報(図5)
【特許文献4】特開2005−319278号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、天井を完成させた後に、スプリンクラー装置を追加する作業が増加している。これは、防災意識の高まり、及び、スプリンクラー装置が設置されていない既存施設への、法改正によるスプリンクラー装置の設置の義務付け等が理由である。
【0005】
天井の完成後に、従来と同様のスプリンクラー装置を天井パネルに対して固定する作業を行う場合、作業スペース及び視野を確保するために、多数の天井パネルを外す必要があった。このため、固定作業は、かなり手間がかかっていた。
【0006】
また、天井の完成後に、スプリンクラー装置を点検する場合、点検するための視野を確保するために、多数の天井パネルを外して、少なくとも作業者の上半身を天井の上側に入れる必要があった。更に、スプリンクラー装置の修理や交換が必要な場合、更に、天井パネルを外す必要があった。このため、点検、修理、交換作業は、かなり手間がかかっていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、天井が完成した後におけるスプリンクラー装置の施工及びメンテナンスを容易にすることができる、スプリンクラー装置のための固定装置、固定構造、及び固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明による固定装置は、スプリンクラー装置を、天井パネルの下側からの作業によって天井パネルに対して固定することを可能にする固定装置であって、天井パネルを上方から保持する天井パネル保持部に固定される一対のレールを有し、この一対のレールは、スプリンクラー装置からの散水及びその取付けのために天井パネルに形成される開口の一方の側から他方の側に延び、更に、一対のレールの間を橋渡しするように一対のレールに固定される固定部材を有し、この固定部材の少なくとも一部分は、開口の上方に位置し、スプリンクラー装置は、固定部材の下側に配置されるスプリンクラーヘッドと、スプリンクラーヘッドに向かって固定部材の上側から下側に延び且つ固定部材に固定されるスプリンクラー配管とを有し、スプリンクラー配管は、固定部材よりも上側に位置する配管作業箇所を有し、配管作業箇所への天井パネルの下側からのアクセスを容易にするために、固定部材は、それが一対のレールに仮固定されている状態において、一方の端部及び他方の端部に向かう方向に一対のレールに沿って摺動可能であることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明による固定装置では、天井が完成した後、天井パネルに設けた開口を利用して、スプリンクラー装置を天井パネルに固定することができる。詳細には、開口の上方に位置し且つスプリンクラー装置が固定される固定部材は、レールに沿って摺動させることができる。固定部材を摺動させて、開口に対して移動させることにより、開口から固定部材の上側、即ち、裏側へのアクセス経路を確保することができる。それにより、固定部材の上側に位置する配管作業箇所における作業を、天井パネルの開口から行うことができる。その結果、天井パネルを必ずしも外す必要がなくなり、スプリンクラー装置の固定作業を、従来の固定装置よりも容易に行うことができる。また、同様に、メンテナンス作業も、従来の固定装置よりも容易に行うことができる。
【0010】
本発明の固定装置において、好ましくは、一対のレール、固定部材及びスプリンクラー配管は、開口を通して天井パネルの下側から上側に導入することが可能である。
【0011】
このように構成された本発明による固定装置では、天井パネルを外すことなしに、一対のレール、固定部材、スプリンクラー配管を天井パネルの上側、即ち、裏側に導入することができるので、天井パネルを外すことなしに、スプリンクラー装置を天井パネルに固定することが可能である。
【0012】
本発明の固定装置において、好ましくは、スプリンクラー配管は、固定部材の上側に固定された配管接続部を有し、配管接続部は、一方の側に向けられた接続ポートと、他方の側に向けられた接続ポートとを有し、これらの接続ポートは、配管作業箇所を構成する。
【0013】
このように構成された固定装置では、接続ポートが一方の側と他方の側の両側にある場合、開口をうまく利用して、固定部材の上側の配管作業箇所の作業を行うことができる。
詳細には、一方の側の接続ポートにおいて配管作業を行う場合には、固定部材を他方の側に摺動させる。それにより、開口は、一方の側の接続ポートのためのアクセス経路を構成する。次いで、他方の側の接続ポートにおいて配管作業を行う場合には、固定部材を一方の側に摺動させる。それにより、開口は、他方の側の接続ポートのためのアクセス経路を構成する。即ち、固定部材を摺動させることにより、開口をある程度小さくしながら、より広範囲なアクセス経路を効率的に確保することができる。
【0014】
本発明の固定装置において、好ましくは、天井パネル保持部材は、野縁である。
【0015】
このように構成された固定装置では、既存の野縁の寸法が分かっているので、野縁にあわせて、スプリンクラーヘッドの取付け高さを予め設定することができ、スプリンクラーヘッドの現場での上下調整が不要になる。
【0016】
本発明の固定装置において、好ましくは、更に、開口を下方から覆うカバーと、カバーを天井パネルに向かって押付けるために、カバーと固定部材との間に配置された引張りばねと、を有する。
【0017】
このように構成された固定装置では、スプリンクラーヘッドに対して大きく形成された開口を、見た目良く覆うことができる。逆にいえば、開口を大きくして、アクセス経路を広くすることにより、作業性を向上させることができる。
【0018】
本発明の固定装置において、好ましくは、スプリンクラー配管は、天井パネルに沿って延びる樹脂製のホースを有する。
【0019】
このように構成された固定装置では、ホースがスプリンクラー配管として固定部材に固定された状態でも、ホースが撓む又は曲がることにより、固定部材がレールに沿って摺動することを、金属管の場合よりも妨害しない。従って、固定部材の上側へのアクセス経路を容易に得ることができる。
【0020】
また、本発明の固定装置において、好ましくは、一対のレールは、天井パネル保持部にブラケットを介して固定され、ブラケットは、一対のレールが延びる方向と垂直な方向に一対のレールが移動することを規制する規制部を有する。
【0021】
また、本発明の固定装置において、好ましくは、一対のレールは、天井パネル保持部にブラケットを介して固定され、一対のレールの各々は、レバー式の締付け具によってブラケットに押付けられるように固定される。
【0022】
また、上記目的を達成するために、スプリンクラー装置を、天井パネルの下側からの作業によって天井パネルに対して固定することが可能な本発明による固定構造は、天井パネルと、天井パネルを上方から保持する天井パネル保持部と、スプリンクラー装置からの散水のために天井パネルに形成される開口と、天井パネル保持部に固定され且つ開口の一方の側から他方の側に延びる一対のレールと、一対のレールの間を橋渡しするように一対のレールに固定される固定部材と、を有し、この固定部材の少なくとも一部分は、開口の上方に位置し、更に、スプリンクラー装置を有し、スプリンクラー装置は、固定部材の下側に配置されるスプリンクラーヘッドと、スプリンクラーヘッドに向かって固定部材の上側から下側に延び且つ固定部材に固定されるスプリンクラー配管とを有し、一対のレール、固定部材及びスプリンクラー配管は、開口を通して天井パネルの下側から上側に導入することが可能であり、スプリンクラー配管は、固定部材よりも上側に位置する配管作業箇所を有し、配管作業箇所への天井パネルの下側からのアクセスを容易にするために、固定部材は、それが一対のレールに仮固定されている状態において、一方の端部及び他方の端部に向かう方向に一対のレールに沿って摺動可能であることを特徴としている。
【0023】
このように構成された本発明による固定構造では、上述した本発明による固定装置と同様の作用、効果を奏する。
【0024】
また、上記目的を達成するために、スプリンクラー装置を、天井パネルの下側からの作業によって天井パネルに対して固定する本発明による固定方法は、天井パネル保持部によって上方から保持された天井パネルの下側から、スプリンクラー装置からの散水及びその取付けのための開口を天井パネルに形成する工程と、一対のレールを開口を通して天井パネルの上側に導入して、開口の一方の側から他方の側に延びるように天井パネル保持部に固定する工程と、固定部材を開口を通して天井パネルの上側に導入して、一対のレールの間を橋渡しするように一対のレールに仮固定する工程と、スプリンクラー装置の配管の少なくとも一部を、開口を通して天井パネルの上側に導入して、固定部材の上側から下側に延びるように固定部材に仮固定する工程と、固定部材を開口の一方の側に一対のレールに沿って移動させ、固定部材よりも上側における配管の作業を、天井パネルの下側から行う工程と、配管の作業後、固定部材を開口の上方に一対のレールにそって移動させ、一対のレールに固定する工程と、固定部材を一対のレールに固定した後、仮固定されていた配管を固定部材に固定する工程と、を有することを特徴としている。
【0025】
このように構成された本発明による固定方法では、天井が完成した後、天井パネルに設けた開口を利用して、スプリンクラー装置を天井パネルに固定することができる。詳細には、開口の上方に位置し且つスプリンクラー装置が固定される固定部材は、レールに沿って摺動させることができる。固定部材を摺動させて、開口に対して移動させることにより、開口から固定部材の上側、即ち、裏側へのアクセス経路を確保することができる。それにより、固定部材の上側に位置する配管作業箇所における作業を、天井パネルの開口から行うことができる。その結果、天井パネルを必ずしも外す必要がなくなり、スプリンクラー装置の固定作業を、従来の固定装置よりも容易に行うことができる。また、同様に、メンテナンス作業も、従来の固定装置よりも容易に行うことができる。
【0026】
本発明の固定方法において、好ましくは、配管は、継手を含み、継手を固定部材に仮固定する工程の後、固定部材を一対のレールに仮固定する工程を行う。
【0027】
このように構成された固定方法によれば、継手を固定部材に仮固定してから、開口を通して、天井パネルの上側に導入するので、継手を固定部材に仮固定する工程を天井パネルの下側で行うことができる。
【0028】
本発明の固定方法において、好ましくは、配管は、継手を含み、継手を固定部材に仮固定している間、継手は固定部材に対して回転可能である。
【0029】
このように構成された固定方法によれば、継手に接続されるスプリンクラー配管の向きに応じて、継手が回転し、その後、最も適当な向きで継手を固定することができる。
【0030】
本発明の固定方法において、好ましくは、一対のレールは、天井パネル保持部にブラケットを介して固定され、ブラケットは、一対のレールが延びる方向と垂直な方向に一対のレールが移動することを規制する規制部を有している。
【0031】
このように構成された固定方法によれば、レールをブラケットに固定する位置の確認が容易になる。
【0032】
本発明の固定方法において、好ましくは、一対のレールは、天井パネル保持部にブラケットを介して固定され、一対のレールの各々は、レバー式の締付け具によってブラケットに押付けられるように固定される。
【0033】
このように構成された固定方法によれば、確実かつ容易にレールをブラケットに固定することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明によるスプリンクラー装置のための固定装置、固定構造、及び固定方法によれば、天井が完成した後におけるスプリンクラー装置の施工及びメンテナンスを容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図面を参照して、スプリンクラー装置のための本発明による固定装置及び固定構造の第1の実施形態を説明する。図1は、住宅用のスプリンクラー装置の配管の一例の概略図である。図2は、スプリンクラー装置のための本発明による固定構造を示す正面図である。図3は、図2に示す固定構造の平面図である。図4は、図2の線IV−IVにおける断面図であり、図5は、図2の線V−Vにおける断面図である。図6は、後述する固定具の拡大斜視図である。
【0036】
図1に示すように、住宅用のスプリンクラー装置のための配管100は、水道管101からの分岐管102に止水栓103を介して取付けられた分岐ヘッダー104と、分岐ヘッダー104から停滞水防止継手105を介してトイレのタンク106まで延びるスプリンクラー配管107と、停滞水防止継手105に取付けられたスプリンクラーヘッド108とを有している。スプリンクラー配管107は、主に、天井パネル109の上側、即ち、裏側を通っている。
【0037】
止水栓103が開いているとき、トイレの使用のたびに、スプリンクラー配管107の中を水が流れ、スプリンクラー装置が火災を感知したとき、停滞水防止継手105を介してスプリンクラーヘッド108から散水される。
【0038】
図2〜図5に示すように、本発明による固定構造の実施形態である、スプリンクラー装置のための固定構造1は、スプリンクラー装置2を、天井パネル4の下側からの作業によって天井パネル4に対して固定することが可能であり、スプリンクラー装置2と、天井パネル4と、天井パネル4を上方から保持する天井パネル保持部である野縁6と、スプリンクラー装置2からの散水及びその取付けのために天井パネル4に形成される開口8と、本発明による固定装置の実施形態である固定装置10とを有している。
【0039】
天井パネル4は、例えば、石膏ボード、コンパネ等で作られた厚さが約9〜25mmの板材である。天井パネル4は、野縁6に木ネジ、ビス等によって固定されている。
【0040】
野縁6は、互いに平行に天井パネル4に沿って延びる複数の棒状部材である。野縁6は、一般的には、矩形断面の木材(図2〜図5参照)、又は、引掛け部(図8参照)を有するアルミ材で作られている。本実施形態では、矩形断面の木材で作られた野縁6を示している。
【0041】
開口8の形状及び寸法は、後述するスプリンクラー装置2の固定作業及びメンテナンス作業を行うことができれば、任意である。例えば、開口8は、円形であり、その直径は、250〜300mmである。
【0042】
固定装置10は、野縁6に固定され且つ開口8の一方の側8aから他方の側8bに延びる一対のレール12、14を有している。詳細には、一対のレール12、14は、互いに間隔をおいて平行に配置された矩形断面の2本の棒状部材である。レール12、14は、軽量化のために、中空であることが好ましい。レール12、14はまた、隣り合った一方の側8aの野縁6から他方の側8bの野縁6まで延び、ブラケット16を介して野縁6に固定されている。ブラケット16は、野縁6に引掛けることが可能な上側水平部16aと、野縁6に側方から当接する垂直部16bと、レール12、14の端部を乗せることができる上面16dを有する下側水平部16cとを有している。垂直部16bは、ブラケット16を野縁6に側方からねじで留めるための孔16eを有している。レール12は、下側水平部16cに乗せたときにそれに当接する下面12a、14aを有している。
【0043】
レール12、14は、下側水平部16cに固定具18によって固定されている。図6に示すように、固定具18は、ねじを回転させることによってレール12、14と下側水平部16cを挟みつける種類のものであることが好ましい。本実施形態では、固定具18は、レール12、14の両側において下側水平部16cに下方から引掛けられる2つの引掛け部18aと、引掛け部18aから上方に延びてレール12、14を越えてからその上方に曲げられるL字形部18bと、レール12、14を下側水平部16cに下向きに押付けることができるようにL字形部18bの曲げられた部分に螺合するねじ18cとを有している。
【0044】
図2〜図5に示すように、固定装置10は、一対のレール12、14の間を橋渡しするように一対のレール12、14に固定される固定部材20を有している。固定部材20は、レール12、14の上に乗せられる下面20aを有し、レール12、14は、固定部材を乗せる上面12b、14bを有している。固定部材20は、例えば、アルミニウム又はステンレスの板材で作られる。
【0045】
固定部材20は、レール12、14に固定具22によって固定されている。固定具22は、レール12、14をブラケット16の下側水平部16cに固定するときに用いた固定具18(図6参照)と同じものであるのがよい。この場合、固定具22は、レール12、14の両側において固定部材20に上方から引掛けられる引掛け部22aと、引掛け部22aから下方に延びてレール12、14を越えてからその下方に曲げられるL字形部22bと、レール12、14を固定部材20に上向きに押付けることができるようにL字形部22bの曲げられた部分に螺合するネジ22cとを有している。固定部材20は、それが固定具22によってレール12、14に固定されているとき、天井パネル4の開口8の上方に位置している。また、固定具22のネジ22cを完全に締付けない状態、即ち、固定部材20が一対レール12、14に仮固定されている状態において、開口8から一方の端部8aの方向に向かって又は他方の端部8bの方向に向かって一対のレール12、14に沿って摺動可能である(図7参照)。
【0046】
固定部材20は、スプリンクラー装置2を固定するための下面20a、上面20b、及び貫通孔24を有している。貫通孔24は、固定部材20の中央に設けられている。
【0047】
スプリンクラー装置2は、固定部材20の下側に配置されるスプリンクラーヘッド26と、スプリンクラーヘッド26に向かって固定部材20の上側から下側に延び且つ固定部材20に固定されるスプリンクラー配管28とを有している。詳細には、スプリンクラー配管28は、大部分が固定部材20の上側に位置した状態で固定された配管接続部30と、天井パネルに沿って延びる樹脂製のホース32を有している。
【0048】
配管接続部30は、好ましくは、停滞水防止継手である。停滞水防止継手30は、概略的には、T字形をなし、下方に延びる下方管状部分30aと、側方に延びる2つの側方管状部分30bとを有している。下方管状部分30aは、固定部材20の上面20bと当接する段付き部30cと、且つ固定部材20の貫通孔24の中を下方に延びる延長部30dを有している。延長部30dは、散水機構を備えたスプリンクラーヘッド26がねじ込まれる雌ネジ部30eと、停滞水防止継手30を固定部材20に締付け固定するためのナット30fが螺合する雄ネジ部30gとを有している。スプリンクラーヘッド26は、延長部分30dに当接して位置決めされることが好ましい。停滞水防止継手30は、それがナット30fによって固定部材20に完全に締付け固定されていない状態、即ち、仮固定された状態で、貫通孔24を中心に回転可能である。
【0049】
2つの側方管状部分30bは、停滞水防止継手30が固定部材20に固定されている状態において、概略的には、一方の側8aと他方の側8bに向けられ、かくして、一方の側に向けられた接続ポート34aと、他方の側に向けられた接続ポート34bとを有している。
【0050】
樹脂製のホース32は、さや管36に入れられていることが好ましく、防災継手38等を介して、接続ポート34a、34bに接続されている。また、停滞水防止継手30及びそれとホース32との接続部の周りに、保温カバー40が設けられていることが好ましい。保温カバー40は、2つ割りになっており、停滞水防止継手30を挟むように覆うことが可能である。保温カバー40は、例えば、発泡ポリスチレンで作られている。
【0051】
スプリンクラー配管28は、固定部材20よりも上側に位置するいくつかの箇所に、配管作業を行う配管作業箇所42を有している。本実施形態では、配管作業箇所42は、停滞水防止継手30を固定部材に取付ける箇所30c、樹脂製のホースを防災継手38を介して接続ポート34a、34bに接続する箇所、保温カバー40を取付ける箇所等である。
【0052】
固定装置20は、更に、天井パネル4の開口8を下方から覆う下カバー44と、下カバー44を天井パネル4に向かって押付けるために、下カバー44と固定部材20との間に配置された引張りばね46とを有している。下カバー44は、中央孔と、それを閉鎖するコンシールドを有していることが好ましい。
【0053】
一対のレール12、14、固定部材20及びスプリンクラー配管28は、組み立てられた形態で又は分解された形態で、天井パネル4の開口8を通して天井パネル4の下側から上側に導入できることが好ましい。
【0054】
次に、スプリンクラー装置を天井パネルに固定する方法を説明する。図7は、固定部材を一方の側にずらした図2と同様の図である。
【0055】
野縁6によって上方から保持された天井パネル4の下側から、スプリンクラー装置2からの散水のための開口8を天井パネル4に形成する。詳細には、スプリンクラー装置2を設置する箇所を、隣接した野縁6の間に決定する。決定した設置箇所を中心とする開口を、天井パネル4の下側からあける。この開口は、スプリンクラー装置2が散水するための開口でもあり、後述するスプリンクラー装置2の固定作業に使用する開口でもある。
【0056】
次に、さや管36に通した樹脂製のホース32を天井パネル4の上に配置する。樹脂製のホース32は、開口8から導入されてもよいし、他の箇所から導入されてもよい。
【0057】
次に、一対のレール12、14を開口8を通して天井パネル4の上側に導入して、開口の一方の側8aから他方の側8bに延びるように野縁6に固定する。詳細には、ブラケット16を開口8から天井パネル4の上側に導入し、その上側水平部16aを野縁6に引掛けると共に、開口8から取付け工具、例えば、電動ドリルを差入れ、ブラケット16を、垂直部16bの側方から野縁6にねじ止め固定する。
【0058】
次いで、レール12、14を開口8から天井パネル4の上側に導入し、ブラケット16下側水平部16cに乗せる。また、固定具18を開口8から天井パネルの上側に導入し、レール12、14を固定具18によって仮固定する。レール12、14の間の距離は、固定部材20が一対のレール12、14に沿って摺動できるように定められ、その距離が決まれば、レール12、14をブラケット16に固定するのがよい。固定具18のネジ18cを、開口8から導入した手で固定具18の上方で回すことになる。
【0059】
次に、停滞水防止継手30を開口8から天井パネル4の上側に導入し、樹脂性のホース32と停滞水防止継手30の接続ポート34a、34bとを防災継手38を介して接続する。開口8の上方には、レール12、14が配置されているだけなので、かかる接続作業を容易に行うことができる。
【0060】
次に、固定部材20を開口8を通して天井パネル4の上側に導入して、一対のレール12、14の間を橋渡しするように一対のレール12、14に仮固定する。更に、停滞水防止継手30を、固定部材20の上側から下側に延びるように固定部材20に仮固定する。
詳細には、固定部材20を開口8を通して天井パネルの上側に導入し、停滞水防止継手30の延長部30dを、固定部材20の貫通孔24に通し、ナット30fを延長部30dの雄ネジ部30gに螺合させ、固定部材20を締付ける。それにより、停滞水防止継手30が固定部材に固定される。本実施形態では、ナット30fを完全に締付けない状態、即ち、停滞水継手30を固定部材20に仮固定する。それにより、停滞水防止継手30は、固定部材20に対して回転可能である。次いで、固定部材20を2本のレール12、14の上に乗せる。また、固定具22を、開口8を通して天井パネル4の上側に導入し、固定部材20を固定具22によってレール12、14に仮固定する。それにより、固定部材20は、レール12、14に沿って摺動可能である。固定具22のネジ22cについて、それを開口8から導入した手で下方から回すことができる。変形例として、固定部材20をレール12、14に仮固定してから、停滞水防止継手30を固定部材20に仮固定してもよい。
【0061】
次に、固定部材20を開口8の一方の側8aに一対のレール12、14に沿って摺動させ、固定部材20よりも上側におけるスプリンクラー配管28の配管作業を、天井パネル4の下側から行う。具体的には、図7に示すように、固定部材20を一対のレール12、14に沿って一方の側8aにずらす。次いで、保温カバー40を開口8を通して固定部材20の上側に導入し、停滞水防止継手30の周り及びそれとホース32との接続部の周りに、保温カバー40を取付ける。固定部材20が開口8の中央に位置しているときは、保温カバー40を固定部材20の上側まで導入することはできないが、固定部材20をずらすことにより、保温カバー40が固定部材20の上側まで通る経路Aが形成される。また、それと同時に、作業者が手を入れるスペース及び視野が確保され、保温カバー40を容易に停滞水防止継手30の周りに取付けることができる。保温カバー40を一方の側8aと他方の側8bの両方で停滞水防止継手30に固定する場合、いったん固定部材を一方の側8aに摺動させて、他方の側8bを固定した後、次いで、固定部材を他方の側8bに摺動させて、一方の側8aを固定するのがよい。
【0062】
スプリンクラー配管28の配管作業後、固定部材20を開口8の上方に一対のレール12、14に沿って摺動させ、固定部材20を一対のレール12、14に固定具22によって固定する。更に、ナット30fを締め付け、停滞水防止継手30を固定部材20に固定する。また、スプリンクラーヘッド26を停滞水防止継手30の雌ネジ部30eにねじ込んで、固定する。
【0063】
樹脂のホース32は、ある程度の可撓性があるけれども、長さが決まっているため、停滞水防止継手30の位置が変化すると、ホースに働く力が変化する。本実施形態では、ホースに働く力が変化する際、ホース32に働く力が釣り合うように、停滞水防止継手30が固定部材20に対して回転する。従って、ホースに不釣合いな力が働いた状態で停滞水防止継手30を固定部材20に固定することが防止される。
【0064】
次いで、引張りばね46の一方の端部を固定部材20に引掛け、他方の端部を引張り状態で下カバーに引掛ける。手を離すと、下カバー44は、引張りばね46によって天井パネル4に押付けられ、開口8が閉鎖される。
【0065】
メンテナンスするときは、下カバー44を外し、必要に応じて、固定具22を緩め、固定部材20をレール12、14に沿って摺動させる。それにより、天井パネル4の下側から固定部材20の上側の配管作業箇所42等に容易にアクセスすることが可能になる。天井パネル4を外さずにメンテナンスできるので、天井パネル4を外さなければならない場合よりも作業効率を向上させることができる。
【0066】
また、上述した固定構造及び固定方法では、既存の野縁6を切断することなしに、スプリンクラー装置2を天井パネル4に固定することができる。逆に、既存の野縁6の寸法が分かっているため、ブラケット16、レール12、14、固定部材20を介してスプリンクラーヘッドの高さ方向位置を予め設定することができる。また、固定部材20が、一対のレール12、14の上に乗せられて固定されるので、固定部材20の上面20bを水平方向に配置することが容易であり、その結果、スプリンクラーヘッド26の取付け方向、即ち、散水方向が設計通りになるように、固定部材20に固定することができる。
【0067】
上記実施形態では、野縁6が矩形の木材である場合を説明したが、野縁6がアルミ材であってもよい。図8は、野縁6がアルミ材の場合の本発明による固定構造の部分的な正面図である。野縁6’は、開口6a’を有する上面6b’と、開口6a’に設けられ且つ固定具18を引掛けるための引掛け部6c’を有している。この場合、ブラケット16を省略して、レール12、14を野縁6’の上に直接乗せ、レール12、14を固定具18によって野縁6に固定することができる。
【0068】
次に、スプリンクラー装置のための本発明による固定装置及び固定構造の第2の実施形態を説明する。図9は、スプリンクラー装置のための本発明による固定構造の第2の実施形態を示す正面図である。図10は、図9に示す固定構造の平面図である。図11は、後述する締付け具を省略した図9の線XI−XIにおける断面図であり、図12は、図9の線XII−XIIにおける断面図であり、図13は、後述する締付け具を省略した図12と同様の図である。図14は、後述する締付け具の拡大斜視図である。
【0069】
第2の実施形態である固定構造50は、第1の実施形態の固定構造1のブラケット16、固定具18、固定部材20、固定具22及び下カバー44をそれぞれ、ブラケット54、締付け具56、固定部材58、ネジ60及び下カバー62に変更したこと以外、第1の実施形態と同様の構造を有している。従って、以下の説明において、第1の実施形態と共通する構成要素には、図9〜図13において同じ参照符号を付し、その説明を省略する。また、上記変更部分が単なる置換えである場合の説明を一部省略する。
【0070】
図9〜図13に示すように、本発明による固定構造の第2の実施形態である、スプリンクラー装置のための固定構造50は、スプリンクラー装置2を、天井パネル4の下側からの作業によって天井パネル4に対して固定することが可能であり、スプリンクラー装置2と、天井パネル4と、天井パネル4を上方から保持する天井パネル保持部である野縁6と、スプリンクラー装置2からの散水及びその取付けのために天井パネル4に形成される開口8と、本発明による固定装置の実施形態である固定装置52とを有している。
【0071】
固定装置52は、野縁6に固定され且つ開口8の一方の側8aから他方の側8bに延びる一対のレール12、14を有している。詳細には、一対のレール12、14は、互いに間隔をおいて平行に配置された矩形断面の2本の棒状部材である。レール12、14はまた、隣り合った一方の側8aの野縁6から他方の側8bの野縁6まで延び、ブラケット54を介して野縁6に固定されている。ブラケット54は、野縁6に引掛けることが可能な上側水平部54aと、野縁6に側方から当接する垂直部54bと、レール12、14の端部を乗せることができる上面54dを有する下側水平部54cとを有している。垂直部54bは、ブラケット54を野縁6に側方からねじで留めるための孔54eを有している。
【0072】
ブラケット54は、一対のレール12、14が延びる方向と垂直な方向、即ち、野縁6が延びる方向(野縁方向)Bに一対のレール12、14が移動することを規制する規制部55を有している。具体的には、ブラケット54は、下側水平部54cの先端から上方に延び且つ野縁方向Bに間隔をおいて配置された3つの上向き延長部54fを有しており、上記規制部は、隣接した上向き延長部54fの側縁55によって構成されている(図13参照)。本実施形態では、隣接した上向き延長部54fの間の距離D1は、レール12、14の幅Wよりも僅かに大きく、かくして、隣接した上向き延長部54fの間にレール12、14を配置したときに、レール12、14が、予め決められたピッチPに位置決めされる。また、ブラケット54の取付け位置が正確であれば、隣接した上向き延長部54fの間にレール12、14を配置したときに、レール12、14が、野縁方向Bに対して垂直な方向に位置決めされる。変形例として、レール12、14を上向き延長部54fの側縁55に当接させることによって、レール12、14の野縁方向Bの移動を規制してもよい。この場合、中央の上向き延長部54fだけが設けられてもよいし、両側の上向き延長部54fだけが設けられてもよい。
【0073】
ブラケット54fは、更に、下側水平部54cの先端から下方に延び且つ野縁方向Bに間隔をおいて配置された2つの下向き延長部54gを有している。下向き延長部54gは、好ましくは、レール12、14の下方に配置され、かくして、隣接した上向き延長部54fの間に配置されている。ブラケット54は、1枚の板材から形成されていることが好ましい。
【0074】
レール12、14は、レバー式の締付け具56によってブラケット54に押付けられるように固定されている。レバー式の締付け具56は、レバーを回動させることによって、レール12、14をブラケット54の下側水平部54cに押付けて固定する種類のものであることが好ましい。具体的には、図14に示すように、締付け具56は、回動軸線56cを中心に互いに回動可能に取付けられた回動レバー56aと、引掛け部56bとを有している。回動レバー56aは、回動軸線56cの近くに設けられた脚部56dを有し、それから一方の方向に延びている。
【0075】
脚部56dは、レール12、14の上面12b、14bに当接箇所で当接し、その上を転動且つ摺動可能である。脚部56dの輪郭は、回動レバー56aを上方からレール12、14に近づけるように回動させたときに、引掛け部56bを引っ張る力が増大するように回動軸線56cと当接箇所との間の距離が増大し、且つ、回動レバー56を更に回動させたときに、かかる距離が減少するように定められている。本実施形態では、回動レバー56aが水平方向に向けられたときに、かかる距離は最大になる。
【0076】
引掛け部56bは、折り曲げられた棒材からなり、回動軸線56c一方の側から下方に延びる第1の側部56eと、回動軸線56cの他方の側から下方に延びる第2の側部56fと、第1の側部の端部と第2の側部の端部とをほぼ横方向に連結するループ部56gとを有している。第1の側部56e及び第2の側部56fは、J字形に延び、即ち、回動軸線56cから下方に延びた後、回動レバー56aが回動軸線56cから延びる方向と反対方向に少し上方に延びている。回動レバー56a、第1の側部56e、第2の側部56f及びループ部56gによって囲まれる空間は、その中をレール12、14が通り抜けることができる形状及び大きさであることが好ましい。
【0077】
図9〜図11に示すように、固定装置52は、一対のレール12、14の間を橋渡しするように一対のレール12、14に固定される固定部材58を有している。固定部材58は、レール12、14の上に乗せられる下面58aを有し、レール12、14は、固定部材を乗せる上面12b、14bを有している。固定部材20は、例えば、アルミニウム又はステンレスの板材で作られる。
【0078】
また、固定部材58は、一対のレール12、14を予め決められたピッチPで受入れる受け部を有している。詳細には、固定部材は、レール12、14を越えてから下方に延びる第1の延長部58cと、レール12、14を越える前に下方に延び、次いで、レール12、14の下方に延びる第2の延長部58dとを有している。第1の延長部58cと第2の延長部58dとの間の野縁方向Bの距離D2は、レール12、14の幅Wよりも僅かに大きいことが好ましい。レール12のための第1の延長部58c及び第2の延長部58dと、レール14のための第1の延長部58c及び第2の延長部58dとは、一対のレール12、14を予め決められたピッチPで受入れるように配置され、好ましくは、レール12、14が延びる方向に間隔をおいて2箇所ずつ設けられる。かくして、第1の延長部58c及び第2の延長部58dは、上記受け部を構成する。第2の延長部58dは、レール12、14を下方から押付けるためのネジ60が螺合するねじ山付きの孔58eを有している。
【0079】
また、固定部材58は、引張りばね46の一方の端部を支持するために斜め上方に延びる第3の延長部58fを有している。
【0080】
固定部材58は、ネジ60によってレール12、14に押付けられることによって固定されている。ネジ60は、ねじ山付きの孔58eからはずれて落下することを防止するためのはずれ防止部(図示せず)を有していることが好ましい。また、固定部材58は、それを一方の側8a又は他方の側8bに移動させたときに開口8と一致する部分が少なくなるようにするための切欠きを有していることが好ましい。
【0081】
固定装置52は、更に、天井パネル4の開口8を下方から覆う下カバー62と、下カバー62を天井パネル4に向かって押付けるために、下カバー62と固定部材58との間に配置された引張りばね46とを有している。
【0082】
一対のレール12、14、締付け具56、固定部材58、及びスプリンクラー配管28は、組み立てられた形態で又は分解された形態で、天井パネル4の開口8を通して天井パネル4の下側から上側に導入できることが好ましい。
【0083】
次に、スプリンクラー装置を天井パネルに固定する方法を説明する。第1の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0084】
一対のレール12、14を開口8を通して天井パネル4の上側に導入して、開口の一方の側8aから他方の側8bに延びるように野縁6に固定する工程において、ブラケット54を開口8を通して天井パネル4の上側に導入して、開口の一方の側8aと他方の側8bの野縁6に固定する工程と、固定部材の第1の延長部58c及び第2の延長部58dの間にレール12、14を通し、レールの両端部に締付け具56を通して、これらを開口8から天井パネル4の上側に導入し、レール12、14の両端部をブラケット54下側水平部54cに乗せる工程を行う。
【0085】
具体的には、ブラケット54を開口8から天井パネル4の上側に導入し、その上側水平部54aを野縁6に引掛けると共に、開口8から取付け工具、例えば、電動ドリルを差入れ、ブラケット54を、垂直部54bの側方から野縁6にねじ止め固定する。
【0086】
また、固定部材58の第1の延長部58cと第2の延長部58dとの間にレール12、14を挿入し、レール12、14の両端部に、締付け具56の引掛け部56bを嵌めておく。そして、固定部材58、レール12、14及び締付け具56を一体にした状態で、開口8を通して天井パネル4の上側に導入し、レール12、14の両端部をブラケット54下側水平部54cに乗せる。このとき、レール12、14を隣接した上向き延長部54fの側縁55の間に配置することにより、レール12、14が所定の場所にピッチPで位置決めされる。
【0087】
次いで、締付け具56のループ部56gをブラケット54の下向き延長部54gに引掛け、回動レバー56aを上向きから下方に水平方向を越えるまで回動させる。回動レバーは、それがレール12、14に当接するまで回動することが可能である。この状態において、引掛け部56bが上方に引っ張られると共に、レール12、14がブラケット54に押付けられて固定される。また、回動レバー56aが水平方向を越えるまで回動されているので、回動レバー56aが上向きに戻ることが防止される。
【0088】
スプリンクラー配管28の配管作業後、固定部材58を開口8の上方に一対のレール12、14に沿って摺動させ、固定部材58を一対のレール12、14にネジ60によって固定する。ネジ60は、トルクリミッタ付きの電動ねじ回し等によって、一定のトルクで締付けられることが好ましい。
【0089】
第2の実施形態の固定構造は、第1の実施形態の固定構造と同様の作用及び効果を有している。
【0090】
また、第2の実施形態では、レール12、14を野縁6に固定するとき、ブラケット54の規制部、即ち、側縁55によって、レール12、14がブラケット54に対して位置決めされると共に、レール12、14の野縁方向Bの移動が阻止される。それにより、レール12、14の野縁6への固定が一層容易になる。
【0091】
また、締付け具56の回動レバー56aが水平方向を越えて下方に回動していることを視認できれば、レール12、14が予め設計された力でブラケット54に押付けられていることを容易に確認することができる。また、固定部材58をレール12、14に固定するネジ60が開口8を介して下方に向いているので、ネジ60の締付けトルクをトルクリミッタ付きの電動ねじ回し等によって容易に調整することができる。その結果、固定構造50の保守管理が一層容易になる。
【0092】
上記第2の実施形態では、野縁6が矩形の木材である場合を説明したが、野縁6がアルミ材であってもよい。図15は、野縁6がアルミ材の場合の本発明の第2の実施形態による固定構造の部分的な正面図である。また、図16は、図15の平面図であり、図17は、締付け具を省略した図15の右側面図である。野縁6’は、開口6a’を有する上面6b’と、開口6a’に設けられ且つ締付け具56を引掛けるための引掛け部6c’を有している。
【0093】
また、ブラケット54の代わりに、ブラケット64が用いられている。ブラケット64は、野縁6に引掛けることが可能な第1の水平部64aと、野縁6に側方から当接する垂直部64bと、レール12、14の端部を乗せることができる上面64dを有する第2の水平部64cとを有している。第1の水平部64aの先端から下方に延長部が延びていることが好ましい。垂直部64bは、ブラケット64を野縁6に側方からねじで留めるための孔64eを有している。ブラケット64は、更に、一対のレール12、14を位置決めするための規制部を有している。具体的には、垂直部64bから上方に延び且つ野縁方向Bに間隔をおいて配置された4つの上向き延長部64fを有しており、上記規制部は、隣接した上向き延長部64fの側縁65によって構成されている(図17参照)。本実施形態では、隣接した上向き延長部64fの間の距離D3は、レール12、14の幅Wよりも僅かに大きく、かくして、隣接した上向き延長部64fの間にレール12、14を配置したときに、レール12、14が、予め決められたピッチPに位置決めされる。また、ブラケット64の取付け位置が正確であれば、隣接した上向き延長部64fの間にレール12、14を配置したときに、レール12、14が、野縁方向Bに対して垂直な方向に位置決めされる。変形例として、レール12、14を上向き延長部64fの側縁65に当接させることによって、レール12、14を位置決めしてもよい。この場合、中央寄りの上向き延長部64fだけが設けられてもよいし、両側の上向き延長部64fだけが設けられてもよい。ブラケット54は、1枚の板材から形成されていることが好ましい。
【0094】
また、締付け具56の引掛け部56bは、野縁6’の引掛け部6c’に引掛けられる。
【0095】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0096】
上記固定方法の実施形態では、停滞水防止継手30をホース32に取付けてから、停滞水防止継手30を固定部材20に仮固定したけれども、その逆に、停滞水防止継手30を固定部材20に仮固定してから、それらを開口8を通して、天井パネル4の上側に導入し、停滞水防止継手30をホース32に取付けてもよい。この場合、配管作業箇所42が、接続ポート34a、34bの箇所になる。固定部材20がレール12、14に沿って摺動するので、ホース32の取付けを、開口8に手を導入することによって行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】住宅用のスプリンクラー装置の配管の一例の概略図である。
【図2】スプリンクラー装置のための本発明による固定構造を示す正面図である。
【図3】図2に示す固定構造の平面図である。
【図4】図2の線IV−IVにおける段め面図である。
【図5】図2の線V−Vにおける断面図である。
【図6】固定具の拡大斜視図である。
【図7】固定部材を一方の側にずらした図2と同様の図である。
【図8】本発明による固定構造の部分的な正面図である。
【図9】スプリンクラー装置のための本発明による固定構造の第2の実施形態を示す正面図である。
【図10】図9に示す固定構造の平面図である。
【図11】締付け具を省略した図9の線XI−XIにおける断面図である。
【図12】図9の線XII−XIIにおける断面図である。
【図13】締付け具を省略した図12と同様の図である。
【図14】締付け具の拡大斜視図である。
【図15】本発明の第2の実施形態による固定構造の部分的な正面図である。
【図16】図15の平面図である。
【図17】締付け具を省略した図15の右側面図である。
【符号の説明】
【0098】
1 固定構造
2 スプリンクラー装置
4 天井パネル
6、6’ 野縁(天井パネル保持部)
8 開口
8a 一方の側
8b 他方の側
10 固定装置
12、14 一対のレール
20 固定部材
26 スプリンクラーヘッド
28 スプリンクラー配管
30 停滞水防止継手(配管接続部、継手)
32 ホース
34a、34b 接続ポート
42 配管作業箇所
44 下カバー
46 引張りばね
54、64 ブラケット
55、65 側縁(規制部)
56 締付け具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラー装置を、天井パネルの下側からの作業によって天井パネルに対して固定することを可能にする固定装置であって、
天井パネルを上方から保持する天井パネル保持部に固定される一対のレールを有し、この一対のレールは、スプリンクラー装置からの散水及びその取付けのために天井パネルに形成される開口の一方の側から他方の側に延び、
更に、前記一対のレールの間を橋渡しするように前記一対のレールに固定される固定部材を有し、この固定部材の少なくとも一部分は、前記開口の上方に位置し、
スプリンクラー装置は、前記固定部材の下側に配置されるスプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに向かって前記固定部材の上側から下側に延び且つ前記固定部材に固定されるスプリンクラー配管とを有し、
前記スプリンクラー配管は、前記固定部材よりも上側に位置する配管作業箇所を有し、前記配管作業箇所への天井パネルの下側からのアクセスを容易にするために、前記固定部材は、それが前記一対のレールに仮固定されている状態において、前記一対のレールに沿って摺動可能であることを特徴とする、固定装置。
【請求項2】
前記一対のレール、前記固定部材及び前記スプリンクラー配管は、前記開口を通して天井パネルの下側から上側に導入することが可能であることを特徴とする、請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記スプリンクラー配管は、前記固定部材の上側に固定される配管接続部を有し、前記配管接続部は、前記一方の側に向けられた接続ポートと、前記他方の側に向けられた接続ポートとを有し、これらの接続ポートは、前記配管作業箇所を構成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の固定装置。
【請求項4】
前記天井パネル保持部材は、野縁であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固定装置。
【請求項5】
更に、前記開口を下方から覆うカバーと、
前記カバーを前記天井パネルに向かって押付けるために、前記カバーと前記固定部材との間に配置された引張りばねと、を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の固定装置。
【請求項6】
前記スプリンクラー配管は、前記天井パネルに沿って延びる樹脂製のホースを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固定装置。
【請求項7】
スプリンクラー装置を、天井パネルの下側からの作業によって天井パネルに対して固定することが可能な固定構造であって、
天井パネルと、
天井パネルを上方から保持する天井パネル保持部と、
スプリンクラー装置からの散水のために天井パネルに形成される開口と、
前記天井パネル保持部に固定され且つ前記開口の一方の側から他方の側に延びる一対のレールと、
前記一対のレールの間を橋渡しするように前記一対のレールに固定される固定部材と、を有し、この固定部材の少なくとも一部分は、前記開口の上方に位置し、
更に、スプリンクラー装置を有し、前記スプリンクラー装置は、前記固定部材の下側に配置されるスプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに向かって前記固定部材の上側から下側に延び且つ前記固定部材に固定されるスプリンクラー配管とを有し、
前記一対のレール、前記固定部材及び前記スプリンクラー配管は、前記開口を通して天井パネルの下側から上側に導入することが可能であり、
前記スプリンクラー配管は、前記固定部材よりも上側に位置する配管作業箇所を有し、前記配管作業箇所への天井パネルの下側からのアクセスを容易にするために、前記固定部材は、それが前記一対のレールに仮固定されている状態において、前記一対のレールに沿って摺動可能であることを特徴とする、固定構造。
【請求項8】
スプリンクラー装置を、天井パネルの下側からの作業によって天井パネルに対して固定する固定方法であって、
天井パネル保持部によって上方から保持された天井パネルの下側から、スプリンクラー装置からの散水及びその取付けのための開口を天井パネルに形成する工程と、
一対のレールを前記開口を通して天井パネルの上側に導入して、前記開口の一方の側から他方の側に延びるように天井パネル保持部に固定する工程と、
固定部材を前記開口を通して天井パネルの上側に導入して、前記一対のレールの間を橋渡しするように前記一対のレールに仮固定する工程と、
スプリンクラー装置の配管の少なくとも一部を、前記開口を通して天井パネルの上側に導入して、前記固定部材の上側から下側に延びるように前記固定部材に仮固定する工程と、
前記固定部材を前記開口の一方の側に前記一対のレールに沿って移動させ、前記固定部材よりも上側における前記配管の作業を、前記天井パネルの下側から行う工程と、
前記配管の作業後、前記固定部材を前記開口の上方に前記一対のレールにそって移動させ、前記一対のレールに固定する工程と、
前記固定部材を前記一対のレールに固定した後、仮固定されていた前記配管を前記固定部材に固定する工程と、を有することを特徴とする固定方法。
【請求項9】
前記配管は、継手を含み、前記継手を前記固定部材に仮固定する工程の後、前記固定部材を前記一対のレールに仮固定する工程を行うことを特徴とする、請求項8に記載の固定方法。
【請求項10】
前記配管は、継手を含み、前記継手を前記固定部材に仮固定している間、前記継手は前記固定部材に対して回転可能であることを特徴とする、請求項8に記載の固定方法。
【請求項11】
前記一対のレールは、前記天井パネル保持部にブラケットを介して固定され、前記ブラケットは、前記一対のレールが延びる方向と垂直な方向に前記一対のレールが移動することを規制する規制部を有することを特徴とする、請求項1に記載の固定装置。
【請求項12】
前記一対のレールは、前記天井パネル保持部にブラケットを介して固定され、前記一対のレールの各々は、レバー式の締付け具によって前記ブラケットに押付けられるように固定されることを特徴とする、請求項1に記載の固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−95638(P2009−95638A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52412(P2008−52412)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【特許番号】特許第4225367号(P4225367)
【特許公報発行日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】