説明

スプリンクラー装置

【課題】スプリンクラーヘッド部近傍における停滞水が発生しないスプリンクラー装置を提供する。
【解決手段】スプリンクラー装置100は、スプリンクラーヘッド部1と、スプリンクラーヘッド部1及び二本の給水管15a,15bに接続可能な略Y字形状の分岐継手13と、を備えている。分岐継手13は、一方の給水管15aから水を流入させる流入部13aと、他方の給水管15bへ水を流出させる流出部13bと、スプリンクラーヘッド部1へ水を流出させるスプリンクラー流出部13cと、流入部13aより流入した水が流出部13b及びスプリンクラー流出部13cへ分岐する分岐部13dと、を有している。流入部13aの水の流れ方向W1に対する断面積は分岐部13dに向かって減少し、流出部13bの水の流れ方向W2に対する断面積は給水管13bに向かって増大している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水源である上水道に連結され水道水供給圧を利用して水を噴射するスプリンクラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火災を自動的に検出して天井等から散水するスプリンクラー装置のうち、上水道に連結して水道水供給圧を利用して水を噴射する方式のスプリンクラー装置においては、水道配管の途中部分(分岐継手部分)にスプリンクラーヘッドが取り付けられているため、スプリンクラーヘッド近傍に、所謂「死に水」と呼ばれる停滞水が発生することがある。
【0003】
水道配管の途中に配置されたスプリンクラー装置内にこのような停滞水が発生すると、上水道して使用することができなくなるため、停滞水の防止は極めて重要な課題である。そこで、停滞水の発生を防止する機能を有する分岐継手を用いたスプリンクラー装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
引用文献1記載のスプリンクラー装置(消火用散水装置)においては分岐継手部分が屈曲管で形成され、引用文献2記載のスプリンクラー装置(スプリンクラーヘッド用分岐継手)においては、略Y字状の分岐継手が用いられている。そして、これらの分岐継手内を流動する水道水で水道水ヘッド接続口付近に渦流を発生させることによって停滞水の発生を防止している。
【0005】
【特許文献1】特開平2−239877号公報
【特許文献2】特開平5−15614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2記載のスプリンクラー装置においては、屈曲形状あるいは略Y字形状の分岐継手内に発生する渦流により停滞水を抑制することはできるが、スプリンクラーヘッド部近傍における停滞水の発生を完全に無くすことができないのが実状である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、スプリンクラーヘッド部近傍に停滞水が発生しないスプリンクラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスプリンクラー装置は、スプリンクラーヘッド部と、前記スプリンクラーヘッド部及び二本の給水管に接続可能な略Y字形状の分岐継手と、を備え、天井裏に配置されるスプリンクラー装置であって、
前記分岐継手は、前記一方の給水管から水が流入する流入部と、前記他方の給水管に水が流出する流出部と、前記スプリンクラーヘッド部に水が流出するスプリンクラー流出部と、前記流入部より流入した水が前記流出部及び前記スプリンクラー流出部に分岐する分岐部とを有し、
前記流入部の水の流れ方向に対する断面積は前記分岐部に向かって減少し、前記流出部の水の流れ方向に対する断面積は前記他方の給水管に向かって増大していることを特徴とする。
【0009】
このような構成において、流入部の断面積は分岐部に向かって減少し、且つ流出部の断面積が分岐部から給水管に向かって増大していることにより、断面積が分岐部に向かって減少した流入部から入ってきた水は、停滞水を防止するための渦流を発生させるのに十分な水量及び流速となって、スプリンクラー流出部に流入するようになるため、スプリンクラー流出部に過流が発生し、スプリンクラー流出部の停滞水をなくすことができる。
【0010】
ここで、前記流入部及び前記流出部を、水の流れ方向に対して、上側流入部と下側流入部、上側流出部と下側流出部としたとき、
前記上側流入部の水の流れ方向に対する断面積が前記分岐部に向かって減少し、前記上側流出部の水の流れ方向に対する断面積が前記他方の給水管に向かって増大していることが望ましい。
【0011】
このような構成とすれば、流入部と流出部の上側の流れ方向に対する断面積が変化した状態となるため、流入部の水の流速が上がり、さらに、断面積を変化させるための突起を上側に設けることにより、スプリンクラー流出部への水の流れを誘導する効果が発生するため、さらに過流が発生し易くなり、スプリンクラー流出部の停滞水を無くす上で有効である。
【0012】
また、前記スプリンクラー流出部の外周面に雄ネジ部を設けることが望ましい。このような構成とすれば、当該スプリンクラー装置の設置場所である天井部またはその構成部材に前記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を設けたスプリンクラー固定部材を設置することにより、高さ調整可能な状態で設置することができる。
【0013】
一方、スプリンクラー流出部の内周面に雄ネジ部などを設けて高さ調整を行う構成とした場合、スプリンクラー流出部に雄ネジ部などの凹凸を形成する必要があるのに対し、スプリンクラー流出部の外周面に雄ネジ部を設けた場合、雄ネジ部などの凹凸を内周面に形成する必要がなくなるので、内周面を、より凹凸のない流線構造とすることができる。このため、比較的少ない流入量であっても停滞水防止に必要な渦流を発生させることができる。さらに、スプリンクラー流出部の内周面に凹凸がなくなれば、分岐継手の箇所での通水圧損が少なくなるため、低水圧地域において、スプリンクラー装置からの散水に必要な水圧の不足を補うための付帯設備増加の可能性が減少し、比較的低コストでのスプリンクラー設置が可能となる。
【0014】
さらに、前記分岐継手の前記分岐部の上側に固定用ネジ部を設けることが望ましい。このような構成とすれば、分岐部の上側に設けられた固定用ネジ部に任意の吊り具を螺着することにより、当該スプリンクラー装置を天井部分の梁などから吊り下げる形で設置することができるようになるため、より多様な設置工法に対応することができる。
【0015】
一方、前記流入部及び前記流出部の開口部をその軸心が水平方向に対して傾斜した状態で、且つ、前記流入部及び前記流出部の開口部が前記分岐部より上側に位置する状態に設けることが望ましい。このような構成とすれば、スプリンクラー装置より上方に配管されることの多い水道管との接続が容易となり、前記開口部と水道管との接続部分の屈曲を無くすことができるため圧損も減少する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、スプリンクラーヘッド部近傍に停滞水が発生しないスプリンクラー装置を提供するスプリンクラー装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態であるスプリンクラー装置を示す垂直断面図、図2は図1に示すスプリンクラー装置の拡大図、図3は図2に示すスプリンクラー装置を構成する分岐継手の正面図、図4は図3に示す分岐継手の平面図、図5は図3に示す分岐継手の側面図である。また、図6は図1に示すスプリンクラー装置の設置工事が完了した後の状態を示す垂直断面図である。
【0018】
図1,図2に示すように、本実施形態のスプリンクラー装置100は、スプリンクラーヘッド部1と、スプリンクラーヘッド部1及び二本の給水管15a,15bに接続可能な略Y字形状の分岐継手13と、を備え、天井面3の裏側に配置される。分岐継手13は、一方の給水管15aから水を流入させるための流入部13aと、他方の給水管15bへ水を流出させるための流出部13bと、スプリンクラーヘッド部1へ水を流出させるためのスプリンクラー流出部13cと、流入部13aより流入した水が流出部13b方向及びスプリンクラー流出部13c方向へ分岐する分岐部13dとを有している。
【0019】
図1に示すように、天井面3の裏面に断面L字状の取付板4で固定された2本の平行な野縁5の間に、当該野縁5と直交する方向に2本の角バー7がクリップ6を介して着脱可能に取り付けられ、これらの角バー7を横架するように装着された台座9にスプリンクラー装置100が固定されている。スプリンクラー装置100を構成する分岐継手13のスプリンクラー流出部13cの外周が、台座9に開設された取付孔9aを貫通するように配置され、取付孔9aの上下に配置された止めリング10、ロックナット8をスプリンクラー流出部13cの外周面の雄ネジ部13mに螺着させ、止めリング10及びロックナット8によって台座9を挟むように締め付けられている。
【0020】
また、天井面3に円形の開口部3aが開設され、この開口部3aに、取付板11を介して円板状のボード16が取り付けられ、分岐継手13のスプリンクラー流出部13cに取り付けられたスプリンクラーヘッド1は、ボード16の中央に開設された開口部6aを貫通して室内側へ露出した状態に保たれている。開口部3aとボード16の外周との隙間を覆うように、リング状のカバー2が天井面3の下面に装着されている。そして、一方の取付板11とスプリンクラーヘッド1とを繋ぐ玉鎖12が設けられている。
【0021】
図2に示すように、流入部13aの水の流れ方向W1に対する当該流入部13aの断面積は分岐部13dに向かって減少し、流出部13bの水の流れ方向W2に対する当該流出部13bの断面積は他方の給水管15bに向かって増大するように形成されている。ここで、前記断面積とは、水の流れ方向W1,W2と直交する横断面の面積をいう。
【0022】
具体的には、スプリンクラー流出部13c上方の分岐部13d直上に位置する分岐継手13内面に分岐部13dに向かって垂下した滑らかな突起23を設けることにより、流入部13a及び流出部13bを各々の軸心を境界にして、それぞれの水の流れ方向W1,W2に対して、上側流入部13auと下側流入部13ad、上側流出部13buと下側流出部13bdとに区画したとき、上側流入部13auの水の流れ方向W1に対する断面積が分岐部13dに向かって減少し、上側流出部13buの水の流れ方向W2に対する断面積が他方の給水管15bに向かって増大するように構成されている。
【0023】
これにより、流入部13aの断面積は分岐部13dに向かって減少し、且つ流出部13bの断面積は分岐部13dから給水管15bに向かって増大した形状となる結果、断面積が分岐部13dに向かって減少した流入部13aから入ってきた水は、停滞水を防止するための渦流を発生させるに十分な水量及び流速となって、スプリンクラー流出部13cに流入するようになるため、スプリンクラー流出部13c内に過流Tが発生し、スプリンクラー流出部13cの停滞水をなくすことができる。
【0024】
また、分岐部13dに向かって垂下した滑らかな突起23を設けることにより、上側流入部13auの断面積を分岐部13dに向かって減少させ、上側流出部13buの断面積を給水管15bに向かって増大するように構成したことにより、流入部13aと流出部13bの上側の水の流れ方向に対する断面積が変化した状態となるため、過流Tが発生し易く、スプリンクラー流出部13cの停滞水を無くす上で有効である。
【0025】
さらに、スプリンクラー流出部13cの外周面に雄ネジ部13mが設けられているため、雄ネジ部13mに螺合する止めリング10及びロックナット8の螺着位置を変更することにより台座9に対する固定位置を変更することができる。即ち、スプリンクラー装置100全体を高さ調整可能な状態で設置することができる。
【0026】
一方、図3〜図5に示すように、流入部13a及び流出部13bの開口部25a,25bをそれぞれの軸心25ac,25bcが水平方向に対して斜めに傾斜した状態に設けている。従って、図1に示すように、スプリンクラー装置100より上方に配管されることの多い水道管(給水管15a,15b)との接続が容易となり、開口部25a,25bと水道管(給水管15a,15b)との接続部分の屈曲を無くすことができるため圧損も減少する。
【0027】
また、図6に示すように、分岐継手13の分岐部13dの上側に設けられた固定用ネジ部24を、屋根や上階スラブに固定した雄ねじ状の吊り具20に螺着することにより、前述した台座9を用いることなく当該スプリンクラー装置100を天井面3部分に設置することができるようになるため、多様な設置工法に対応することができる。また、夏季の結露発生及び冬季の凍結などを防止するため、開口部25a,25b及び給水管15a,15bの外周を断熱材26で覆うこともできる。
【0028】
次に、図7,図8に基づいて、分岐継手に関するその他の実施形態について説明する。図7は分岐継手に関するその他の実施の形態を示す垂直断面図、図8は分岐継手に関するその他の実施の形態を示す垂直断面図である。なお、図1〜図6に示す分岐継手13の構成部分と同じ構造、機能などを有する部分は同じ符号を付して説明を省略する。
【0029】
図7に示す分岐継手30においては、流入部13a内面とスプリンクラー流出部13c内面との境界部、流出部13b内面とスプリンクラー流出部13c内面との境界部にそれぞれ分岐部13dに向かって滑らかに突出した突起31が設けられている。つまり、下側流入部13adの水の流れ方向W1に対する断面積が分岐部13dに向かって減少し、下側流出部13bdの水の流れ方向W2に対する断面積が他方の給水管15bに向かって増大するように構成されている。このような構成とすれば、下側流入部13adの水の流れ方向W1に対する断面積が分岐部13dに向かって減少し、下側流出部13bdの水の流れ方向W2に対する断面積が給水管15bに向かって増大した状態となる。
【0030】
従って、前述した分岐継手13(図2参照)の場合と同様、断面積が分岐部13dに向かって減少した流入部13aから入ってきた水は、停滞水を防止するための渦流を発生させるに十分な水量及び流速となって、スプリンクラー流出部13cに流入するようになるため、スプリンクラー流出部13c内に過流が発生し、スプリンクラー流出部13cの停滞水をなくすことができる。
【0031】
図8に示す分岐継手40においては、図2に示す分岐継手13と同様の突起23及び図7に示す分岐継手31と同様の突起31が設けられている。つまり、上側流入部13auと下側流入部13adの水の流れ方向W1に対する断面積が、分岐部13dに向かって減少し、上側流出部13buと下側流出部13bdの水の流れ方向W2に対する断面積が、他方の給水管15bに向かって増大するように構成されている。このような構成とすれば、流入部13aの水の流れ方向W1に対する断面積が分岐部13dに向かって急激に減少し、流出部13bの水の流れ方向W2に対する断面積が給水管15bに向かって急激に増大した状態となる。このため、スプリンクラー流出部13c内に過流が発生し易くなり、スプリンクラー流出部13cの停滞水を無くす上で有効である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のスプリンクラー装置は、オフィスビル、工場、映画館、デパートなどの建築物において広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態であるスプリンクラー装置を示す垂直断面図である。
【図2】図1に示すスプリンクラー装置付近の一部省略拡大図である。
【図3】図2に示すスプリンクラー装置を構成する分岐継手の正面図である。
【図4】図3に示す分岐継手の平面図である。
【図5】図3に示す分岐継手の側面図である。
【図6】図1に示すスプリンクラー装置の設置工事が完了した後の状態を示す垂直断面図である。
【図7】分岐継手に関するその他の実施の形態を示す垂直断面図である。
【図8】分岐継手に関するその他の実施の形態を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 スプリンクラーヘッド
2 カバー
3 天井面
3a,6a,25a,25b 開口部
4 取付板
5 野縁
6 クリップ
7 角バー
8 ロックナット
9 台座
9a 取付孔
10 止めリング
11 取付板
12 玉鎖
13,30 分岐継手
13a 流入部
13b 流出部
13c スプリンクラー流出部
13d 分岐部
13au 上側流入部
13ad 下側流入部
13bu 上側流出部
13bd 下側流出部
13m 雄ネジ部
14 継手
15a,15b 給水管
16 ボード
20 吊り具
23,31 突起
24 固定用ネジ部
25ac,25bc 軸心
26 断熱材
100 スプリンクラー装置
T 渦流
W1,W2 水の流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラーヘッド部と、前記スプリンクラーヘッド部及び二本の給水管に接続可能な略Y字形状の分岐継手と、を備え、天井裏に配置されるスプリンクラー装置であって、
前記分岐継手は、前記一方の給水管から水が流入する流入部と、前記他方の給水管に水が流出する流出部と、前記スプリンクラーヘッド部に水が流出するスプリンクラー流出部と、前記流入部より流入した水が前記流出部及び前記スプリンクラー流出部に分岐する分岐部とを有し、
前記流入部の水の流れ方向に対する断面積は前記分岐部に向かって減少し、前記流出部の水の流れ方向に対する断面積は前記他方の給水管に向かって増大していることを特徴とするスプリンクラー装置。
【請求項2】
前記流入部及び前記流出部を、水の流れ方向に対して、上側流入部と下側流入部、上側流出部と下側流出部としたとき、
前記上側流入部の水の流れ方向に対する断面積が前記分岐部に向かって減少し、前記上側流出部の水の流れ方向に対する断面積が前記他方の給水管に向かって増大していることを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラー装置。
【請求項3】
前記スプリンクラー流出部の外周面に雄ネジ部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のスプリンクラー装置。
【請求項4】
前記分岐継手の前記分岐部の上側に固定用ネジ部を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のスプリンクラー装置。
【請求項5】
前記流入部及び前記流出部の開口部をその軸心が水平方向に対して傾斜した状態で、且つ、前記流入部及び前記流出部の開口部が前記分岐部より上側に位置する状態に設けた請求項1〜4の何れかに記載のスプリンクラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−75398(P2010−75398A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246502(P2008−246502)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】