説明

スプリンクラ消火設備

【課題】過流量に起因するウォーターハンマによる設備の破損を防止するスプリンクラ消火設備を得る。
【解決手段】スプリンクラ消火設備の給水装置に送水量制御手段を設け、送水開始後所定時間が経過するまでの間には送出する消火用水の流量が定格送水量を超えないように制御して配管内を流れる水の流量が過流量とならないように制御し、かつ、所定時間が経過した後には定格送水量となるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラ消火設備に関し、特に、開放弁二次側にある二次側配管を正圧または負圧の気体で満たしたスプリンクラ消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スプリンクラヘッドが接続された二次側配管内を加圧気体で充填し、その二次側配管の基端側に、二次側圧力低下によって開弁する乾式流水検知装置を設けた、乾式スプリンクラ消火設備がある。この設備は、寒冷地において二次側配管内の水が凍結して配管等の設備を破損しないように構成されている。この乾式スプリンクラ設備では、火災によってスプリンクラヘッドが開栓したとき、開栓したスプリンクラヘッドから規定時間内に規定流量で散水させるために、二次側配管内の加圧気体を急速に排気する機構を有するものがある。
【0003】
また、従来、スプリンクラヘッドが接続された二次側配管内を加圧気体で充填し、その二次側配管の基端側に予作動弁を設けた、加圧型予作動式スプリンクラ消火設備がある。この設備は、スプリンクラヘッドと同じ防護区画に設置された火災感知器が動作すると、予作動弁が開放し、二次側配管に充水するように構成されている。この加圧型予作動式スプリンクラ設備では、火災によってスプリンクラヘッドが開栓したとき、開栓したスプリンクラヘッドから規定時間内に規定流量で散水させるために、二次側配管内の加圧気体を急速に排気する機構を有するものがある。
【0004】
これらの乾式スプリンクラ消火設備や加圧型予作動式スプリンクラ消火設備では、スプリンクラヘッドが開栓したときに二次側配管内の圧力が急速に低下する。
【0005】
ところで加圧型予作動式スプリンクラ消火設備では、火災感知器とスプリンクラヘッドの両方が動作したときに水が放水されるので水損を生じにくいが、竣工時等の通水試験を行った後に二次側配管を排水しても、スプリンクラヘッドが接続される立ち下がり管部分に水が残る場合があり、スプリンクラヘッドが破損した場合に漏水を起こすことがある。
【0006】
そこで、二次側配管に真空ポンプを接続し、配管内を負圧にした予作動式スプリンクラ消火設備が提案されている(例えば特許文献2参照)。この負圧型予作動式スプリンクラ消火設備では、二次側配管内は圧縮空気の代わりに負圧空気となるので、前述のような漏水が起こりにくい。
【0007】
なお、これらのスプリンクラ消火設備は、火災発生初期に消火および火災抑制を有効に行えるよう、火災によって開栓したスプリンクラヘッドより規定時間(例えば60秒)以内に規定水量で散水するように日本国等の規格で定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭56−116969号公報
【特許文献2】実公平6−26292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の乾式スプリンクラ消火設備または加圧型予作動式スプリンクラ消火設備は、スプリンクラヘッドが開栓したときに二次側配管内の圧力が急速に低下し、開栓したスプリンクラヘッドや、二次側配管内の加圧気体によって消火用水の通水が遅れないように設けられる、二次側配管内の加圧気体を排気させるために開弁される急速排気弁へ向かう気流が生ずるので、配管内を移動する消火用水が加速されて過流速となり、配管の屈曲部等に衝突してウォーターハンマが発生し、スプリンクラ消火設備の配管が破損する虞れがある。
【0010】
また、従来の負圧型の予作動式スプリンクラ消火設備は、火災感知器が動作して予作動弁が開放するとき、二次側配管内が負圧状態になっていることから、配管内を流れる水の流量が規定放水量を超えた過流量となり、ウォーターハンマが発生してスプリンクラ消火設備の配管が破損する虞れがある。 本発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、配管内を流れる消火用水が過速度または過流量となることを防止し、過速度または過流量に起因するウォーターハンマによるスプリンクラ消火設備の破損を防止し、規定時間内に規定水量で散水できるスプリンクラ消火設備を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスプリンクラ消火設備は、加圧送水装置と、開放弁と、該開放弁一次側に設けられ、基端側に加圧送水装置が接続される一次側配管と、を有する給水装置と、前記開放弁の二次側に設けられ、スプリンクラヘッドが接続され、平常時は充水されず加圧気体で満たされる二次側配管と、を備えるスプリンクラ消火設備において、前記給水装置は送水量制御手段を備え、該送水量制御手段は、送水開始後、少なくとも前記二次側配管内の圧力低下が解消されるまでであって60秒以内の所定時間が経過するまでは、送出する消火用水の流量が定格送水量を下回るように制御し、かつ、前記所定時間が経過した後には送出する消火用水の流量が定格送水量となるように制御することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るスプリンクラ消火設備は、加圧送水装置と、開放弁と、該開放弁一次側に設けられ、基端側に加圧送水装置が接続される一次側配管と、を有する給水装置と、前記開放弁の二次側に設けられ、スプリンクラヘッドが接続され、平常時は充水されず負圧気体で満たされる二次側配管と、を備えるスプリンクラ消火設備において、前記給水装置は送水量制御手段を備え、該送水量制御手段は、送水開始後、少なくとも前記二次側配管内の負圧が解消されるまでであって60秒以内の所定時間が経過するまでは、送出する消火用水の流量が定格送水量を超えないように制御し、かつ、前記所定時間が経過した後には送出する消火用水の流量が定格送水量となるように制御することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るスプリンクラ消火設備は、前記送水量制御手段が、送水開始後前記所定時間が経過するまでの間には、送出する消火用水の流量を漸次増大させるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスプリンクラ消火設備は、請求項1乃至6に記載の構成によれば、二次側配管内を流れる水が急激に加速または加圧されず、配管内を流れる水が過流速または過流量とならないので、過流速または過流量に起因するウォーターハンマによるスプリンクラ消火設備の破損を防止し、規定時間内に規定水量で散水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1に係るスプリンクラ消火設備の構成図である。
【図2】実施の形態1における給水装置制御の一例を説明する図である。
【図3】実施の形態1における給水装置制御の他の例を説明する図である。
【図4】実施の形態2に係るスプリンクラ消火設備の構成図である。
【図5】実施の形態2における給水装置制御の一例を説明する図である。
【図6】実施の形態2における給水装置制御の他の例を説明する図である。
【図7】実施の形態3に係るスプリンクラ消火設備の構成図である。
【図8】実施の形態3における給水装置制御の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1
図1乃至図3に基づいて、本発明の実施の形態1に係るスプリンクラ消火設備について説明する。
【0017】
まず図1を用いて、スプリンクラ消火設備の構成について説明する。
【0018】
本実施の形態1のスプリンクラ消火設備は、加圧送水装置26と、開放弁としての予作動弁22と、予作動弁22の一次側に設けられ基端側に加圧送水装置26が接続される一次側配管11とで構成される給水装置と、予作動弁22の二次側に設けられ、スプリンクラヘッド2が接続され、平常時は充水されず負圧気体としての負圧空気で満たされる二次側配管12と、真空配管14と、真空ポンプ24と、流水遮断弁31と、ヘッド作動検出装置46と、真空スイッチ41および53等とから構成されている。
【0019】
防護区画1には、複数のスプリンクラヘッド2が設けられている。また、防護区画1には、防護区画1内で発生した火災を感知する火災感知器3が設けられている。この火災感知器3は火災受信機4と電気的に接続されており、火災感知器3の火災発報を受信した火災受信機4は、火災信号を消火システム制御盤5と真空ポンプ制御盤52へと送出する。また、消火システム制御盤5は、中継器51を介して、予作動弁22を駆動する電動のパイロット弁である遠隔起動弁22bおよび予作動弁22の開放による消火用水の通水を検知する流水信号スイッチ22a、開放弁47、真空スイッチ41およびヘッド作動検出装置46と電気的に接続されており、さらに消火ポンプ制御盤60は加圧送水装置26とも電気的に接続されている。消火システム制御盤5は、所定の圧力で作動する真空スイッチ41、または、単位時間当たりの圧力上昇が所定の値を超えるときに作動するヘッド作動検出装置46のいずれかが作動することによって、スプリンクラヘッド2が作動したかどうかを判断する。
【0020】
複数のスプリンクラヘッド2は各々立ち下がり配管13に接続されている。また、立ち下がり配管13のそれぞれは、二次側配管12に接続されている。この二次側配管12の一方の端部は、平常時は閉止しており火災時に電気的に開放される予作動弁22の一方の端部に接続されている。予作動弁22の他方の端部は、一次側配管11の一方の端部に接続されている。また、一次側配管11の他方の端部(基端側)は、インバータ制御される加圧送水装置26の吐出口に接続されている。本実施の形態では、このインバータ制御される加圧送水装置26が送水量制御手段に相当する。
【0021】
一方、二次側配管12の他方の端部は、末端試験弁25の一方の端部に接続されている。末端試験弁25の他方の端部には、排水配管16が接続されている。スプリンクラ消火設備の水漏れ試験等によって二次側配管12に充填された水は、末端試験弁25及び予作動弁22に備えた図示しない排水弁を開くことにより、外部に排出される。通常の監視状態においては、末端試験弁25は閉じられた状態となっている。
【0022】
また、二次側配管12には、真空配管14の一方の端部が接続されている。真空配管14の他方の端部には、真空ポンプ24が接続されている。
【0023】
この真空配管14には、二次側配管12との接続部側から真空ポンプ24側に向けて、二次側の圧力上昇で閉止する流水遮断弁31、真空スイッチ41、圧力上昇が所定の値以上で作動するヘッド作動検出装置46及びオリフィス42が順に設けられている。また、オリフィス42と真空ポンプ24との間の真空配管14には、真空スイッチ53が接続されており、真空配管14の内圧を所定の値以下とするように真空ポンプ制御盤52を介して、真空ポンプ24を制御している。
<スプリンクラ消火設備の動作>
【0024】
本実施の形態に係るスプリンクラ消火設備は、平常時の監視状態においては、二次側配管12は充水せず、真空ポンプ24を起動させて二次側配管12内及び真空配管14内が大気圧より低い負圧となっている、真空式の予作動式スプリンクラ消火設備である。
【0025】
以下、このスプリンクラ消火設備の動作について説明する。まず、スプリンクラヘッド2の作動を検出する動作について説明する。続いて、スプリンクラ消火設備の消火動作について説明する。
(スプリンクラヘッド作動検出動作)
【0026】
スプリンクラヘッド2の作動を検出する動作について説明する。
【0027】
上述のように、通常の監視状態において、二次側配管12内及び真空配管14内は負圧となっている。これら二次側配管12内及び真空配管14内は、立ち下がり配管13とスプリンクラヘッド2との接続部等から徐々に空気が流入し、負圧である管内圧力が上がってくる(大気圧に近づいてくる)。負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力が所定の圧力以上となったことを真空スイッチ53で検出した場合、真空ポンプ制御盤52が真空ポンプ24を作動させて、二次側配管12内及び真空配管14内の負圧を一定以下の圧力に保っている。なお、負圧である二次側配管12内の圧力が上昇する場合には、スプリンクラヘッド2の作動によるものと、配管からの空気流入による場合とがある。ここでは、配管からの空気流入による圧力上昇を真空スイッチ53で検出し、スプリンクラヘッド2の作動による圧力上昇をヘッド作動検出装置46または真空スイッチ41で検出している。
【0028】
防護区画1で火災が発生し、スプリンクラヘッド2が作動すると(スプリンクラヘッド2の放水口が開放されると)、スプリンクラヘッド2の放水口から二次側配管12内及び真空配管14内に防護区画1の空気が流入する。これにより、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力が上昇する。
【0029】
そこで、本実施の形態では、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力を真空スイッチ41で検出し、真空スイッチ41の作動、または、ヘッド作動検出装置46における所定時間当たりの圧力変化量に基づいてスプリンクラヘッド2の作動を検出している。より具体的には、平常状態において配管の接続部等から空気が流入する場合には、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力上昇速度は小さい。つまり、平常状態における圧力の所定時間当たりの変化量は小さい。一方、スプリンクラヘッド2作動時においては、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力上昇速度は、通常の監視状態の場合よりも大きくなる。つまり、スプリンクラヘッド2作動時における所定時間当たりの圧力変化量は、平常状態の場合よりも大きくなる。ヘッド作動検出装置46は所定時間当たりの圧力変化量のこの違いによって、スプリンクラヘッド2の作動を検出している。換言すると、ヘッド作動検出装置46は所定時間当たりの圧力変化量の絶対値が所定の閾値よりも大きくなったときに、消火システム制御盤5はスプリンクラヘッド2が作動したと判断している。
【0030】
ここで、スプリンクラヘッド2の作動検出を所定時間当たりの圧力変化量に基づいてヘッド作動検出装置46で行う理由について説明する。
【0031】
従来のスプリンクラ消火設備は、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力がある閾値よりも大きくなったとき(ある閾値よりも大気圧に近い値となったとき)、スプリンクラヘッド2が作動したと判断していた。しかしながら、二次側配管12内及び真空配管14内の体積と比較してスプリンクラヘッド2の放水口は小さく、また二次側配管12内の圧力と防護区画1の圧力差が小さいため、スプリンクラヘッド2から二次側配管12に流入する空気量が少ないので、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力上昇には時間がかかってしまう。このため、スプリンクラヘッド2作動時に例えば真空ポンプ24を起動したばかりで、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力が低く、現在の圧力とある閾値との圧力差が大きい場合、閾値まで圧力が上昇するのには時間がかかり、スプリンクラヘッド2の作動検出が遅くなってしまう。
【0032】
一方、本実施の形態では、負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力(真空スイッチ41の検出値)の所定時間当たりの変化量の絶対値が所定の閾値よりも大きくなったときに、スプリンクラヘッド2が作動したと判断している。このため、スプリンクラヘッド2作動時における二次側配管12内及び真空配管14内の圧力にかかわらず、早期にスプリンクラヘッド2の作動を検出することができる。なお、本実施の形態では、真空ポンプ24の作動中にスプリンクラヘッド2が作動したとき、二次側配管12の圧力が変化しなくなり、ヘッド作動検出装置46が作動しなくなることを防ぐため、ヘッド作動検出装置46と真空ポンプ24の間の真空配管14にオリフィス42を設けている。なお、本実施の形態では、火災感知器3が火災を感知すると、真空ポンプ24の運転は停止させるか、又は、火災検出時には真空配管14内の圧力が上昇しても真空ポンプ24を起動しないように制御する。このため、必ずしもオリフィス42を設ける必要はない。
(消火動作)
【0033】
続いて、スプリンクラ消火設備の消火動作について、図1乃至図3に基づいて説明する。
【0034】
平常状態においては、一次側配管11の予作動弁22まで水が充填され、二次側配管12内及び真空配管14内に水が充填されていない状態となっている。
【0035】
防護区画1で火災が発生すると、火災感知器3は火災を感知する。そして、火災受信機4は消火システム制御盤5に火災信号を発信する。また、その後スプリンクラヘッド2が作動し、負圧である二次側配管12の圧力が上昇すると、消火システム制御盤5は中継器51を介して、ヘッド作動検出装置46における所定時間当たりの圧力変化量に基づき、スプリンクラヘッド2の作動を検出する。火災信号とスプリンクラヘッド2の作動の両方を検知した場合、消火システム制御盤5は、遠隔起動弁22bを開放することによって予作動弁22を開放し、二次側配管12に水を供給する(充填する)。これにより、立ち下がり配管13を介して作動したスプリンクラヘッド2から防護区画1に放水し、防護区画1で発生した火災を消火する。なお、予作動弁22が開放されると、予作動弁22に設けられた流水信号用スイッチ22aは、中継器51を介して消火システム制御盤5に流水信号を発信する。
【0036】
このとき、予作動弁22の開放に伴って一次側配管11の圧力が低下し、図示しない圧力検出手段がこれを検出して消火ポンプ制御盤6に圧力低下信号を送出し、これを受けた消火ポンプ制御盤60が加圧送水装置26を始動させる。加圧送水装置26は消火ポンプ制御盤60によって送水開始時の流量が一定の流量に制限されるようにインバータ制御される。
【0037】
例えば、図2に示すように、放水開始から、少なくとも二次側配管12への送水によって二次側配管12内の負圧が解消される所定時間T(例えば60秒)が経過するまでの間、すなわち二次側配管12内の圧力が大気圧以上となるまで、加圧送水装置26の送出圧力を、送出する消火用水の流量が定格送水量を超えないような値n%(nは100未満)に制限し、所定時間Tが経過した後は、加圧送水装置26の送出圧力を、送出する消火用水の流量が定格送水量となるような値100%とするように、消火ポンプ制御盤60は加圧送水装置をインバータ制御する。
【0038】
また、図3に示すように、放水開始から所定時間T(例えば60秒)が経過するまでの間、加圧送水装置26の送出圧力を漸次増大させてゆき、所定時間Tが経過した後は、加圧送水装置26の送出圧力を、送出する消火用水の流量が定格送水量となるような値100%とするように、消火ポンプ制御盤60は加圧送水装置をインバータ制御しても良い。
【0039】
なお、上記図2および図3に基づいて説明した制御を行うにあたっては、図示しない計時手段を消火ポンプ制御盤60内に備え、該計時手段は放水開始からの経過時間を計時し、この計時結果に基づいて消火ポンプ制御盤60内に備わる図示しないインバータ制御部が加圧送水装置26を制御する。そして、予め定められた負荷で加圧送水装置26を運転しても良いし、加圧送水装置26の出口部、すなわち一次側配管11の基端側に、図示しない流量計測手段を設け、該流量計測手段の計測信号を消火ポンプ制御盤60へ送出し、前記インバータ制御部によって加圧送水装置26をフィードバック制御するようにしても良い。
【0040】
以上の説明のように、加圧送水装置26の送水量を制御するので、二次側配管12に流入する水の流量が過流量となることを防止できる。したがって、前記過流量に起因するウォーターハンマは防止することができる。また、ウォーターハンマは、配管内を流れる水の流量が大きいほど発生しやすいので、加圧送水装置26を送水開始時の流量が一定の流量に制限されるようにインバータ制御することにより、二次側配管12等でのウォーターハンマの発生を抑制することができる。
【0041】
本実施の形態では、二次側配管12の圧力上昇によって流水遮断弁31が閉止される。このため、予作動弁22が開放して二次側配管12に水が供給されても、流水遮断弁31より下流部の真空配管14に水が流入することを防止できる。つまり、真空ポンプ24に水が流入することを防止できる。したがって、真空ポンプ24が水を吸引して、過負荷で停止したり故障を起こしたりすることを防止できる。
【0042】
なお、本実施の形態では、予作動弁22の開放と流水遮断弁31の閉止とを、機械的に連動させたが、これに限らず、予作動弁22の開放と流水遮断弁31の閉止とを、消火システム制御盤5を介して電気的に連動させてもよい。 以上の説明は、火災感知器3が火災を感知し、かつ、スプリンクラヘッド2の作動を検出することによって予作動弁22を開放するように制御するスプリンクラ消火設備に関するものであるが、一般的な予作動式スプリンクラ消火設備のように、火災感知器3が火災を感知したときに予作動弁22を開放するように制御するスプリンクラ消火設備においても、スプリンクラヘッド2の作動を待たずに二次側配管12を充水するだけであり、本発明がウォーターハンマを抑制する効果を奏することに変わりはない。
【0043】
また、二次側配管12が負圧でない消火設備においても、過流量以外の要因で発生し得る放水開始時のウォーターハンマを抑制することもできる。
実施の形態2
【0044】
図4乃至図6に基づいて、本発明の実施の形態に係るスプリンクラ消火設備について説明する。実施の形態1と同じものは同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
まず図4を用いて、スプリンクラ消火設備の構成について説明する。本実施の形態のスプリンクラ消火設備が、実施の形態1と構成上異なる点は、インバータ制御される加圧送水装置26が送水量制御されずに定格運転する一般的な加圧送水装置21へ、インバータ制御する消火ポンプ制御盤60がインバータ制御しないで加圧送水装置21を定格運転する消火ポンプ制御盤6へ、開放弁としての予作動弁22が弁開度を制御される予作動弁27へと、置き換わっていることにある。また、これに付随して予作動弁27に附属する装置である、流水信号用スイッチ22aが27aへ、遠隔起動弁22bが27bへ、と置き換わっている。本実施の形態においては予作動弁27が送水量制御手段に相当する。その他の構成は実施の形態1と同じ為、説明を省略する。
<スプリンクラ消火設備の動作>
【0046】
次に、本実施の形態のスプリンクラ消火設備が実施の形態1と異なる動作について、図4乃至図6に基づいて説明する。
【0047】
消火動作において、予作動弁27が開放されるとき、直ちに全開するのではなく、放水開始時に開放を始め、所定時間が経過するまでは弁開度を制限して放水流量を制限する。
【0048】
例えば、図5に示すように、放水開始から所定時間T(例えば60秒)が経過するまでの間、予作動弁27の弁開度を、送出する消火用水の流量が定格送水量を超えないような値n%(nは100未満)に制限し、所定時間Tが経過した後は、全開(弁開度を100%)とするように、予作動弁27が自律的に、または、消火システム制御盤5から中継器51を介して予作動弁27の弁開度を制御する。
【0049】
また、図6に示すように、放水開始から、少なくとも二次側配管12への送水によって二次側配管12内の負圧が解消される所定時間T(例えば60秒)が経過するまでの間、すなわち二次側配管12内の圧力が大気圧以上となるまで、予作動弁27の弁開度を漸次増大させてゆき、所定時間Tが経過した後は、予作動弁27を全開(開度100%)とするように、予作動弁27が自律的に、または、消火システム制御盤5から中継器51を介して予作動弁27の弁開度が制御されるようにしてもよい。
【0050】
なお、図5および図6に基づいて説明した上記制御を行うにあたっては、特開2005−069344号公報で開示した二段階放水を行う自動調圧弁や、特開2005−103050号公報で開示した開閉弁装置を用いて、上記の如く放水開始から所定時間Tが経過するまでの間を上記の弁開度となるように予め設定しておいて自律的に制御を行うようにしても良いし、消火システム制御盤5に備わる図示しない制御部に、図示しない計時手段を設けるとともに経過時間による弁開度を図示しない記憶部に予め登録しておき、予作動弁27の弁開度をシーケンシャルに制御しても良いし、予作動弁27の出口部、すなわち二次側配管12の基端側に、図示しない流量計測手段を設け、該流量計測手段の計測信号を消火システム制御盤5へ送出し、消火システム制御盤5に備わる図示しない制御部によって予作動弁27の弁開度をフィードバック制御するようにしても良い。
【0051】
以上の説明のように、予作動弁27から送水する消火用水の流量を制御するので、二次側配管12に流入する水の流量が過流量となることを防止できる。したがって、前記過流量に起因するウォーターハンマは防止することができる。
実施の形態3
【0052】
図7乃至図8に基づいて、本発明の実施の形態に係るスプリンクラ消火設備について説明する。実施の形態1と同じものは同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
まず図7を用いて、スプリンクラ消火設備の構成について説明する。本実施の形態のスプリンクラ消火設備が、実施の形態1と構成上異なる点は、まず、インバータ制御される加圧送水装置26が流量制御されずに定格運転する一般的な加圧送水装置21へ置き換わっていることにある。同様にインバータ制御を行う消火ポンプ制御盤60もインバータ制御せず定格運転する一般的な消火ポンプ制御盤6に置き換わっている。また、二次側配管12の一方の端部は、第1の開放弁としての予作動弁22の一方の端部の他に、予作動弁22をバイパスする流路に設けられる流量制限手段としてのオリフィス28の一方の端部に接続されている。オリフィス28の他方の端部は、平常時は閉止しており火災時に電気的に開放される第2の開放弁としての開放弁29を介して一次側配管11に、それぞれ接続されている。
【0054】
加圧送水装置21と、一次側配管11と、予作動弁22と、開放弁29と、オリフィス28と、開放弁29とオリフィス28とが介在し予作動弁22を迂回する流路としてのバイパス流路と、で給水装置を構成している。なお、流量制限手段としてのオリフィス28は定流量弁に代えても良い。 そして、送水量制御は、前記バイパス流路を通水する開放弁29の開放制御と、予作動弁22の開放制御とに、時間差を設けることによって行うものであり、本実施の形態における送水量制御手段は、前記バイパス流路と、予作動弁22を通る主流路と、これらを開放制御する消火システム制御盤5とが相当する。その他の構成は実施の形態1と同じ為、説明を省略する。
<スプリンクラ消火設備の動作>
【0055】
続いて、本実施の形態のスプリンクラ消火設備が実施の形態1と異なる動作について、図7および図8に基づいて説明する。
【0056】
消火動作において消火システム制御盤5は、まず開放弁29を、次に予作動弁22を、順に開放して二次側配管12に水を供給する。開放弁29の開放に伴って一次側配管11の圧力が低下し、これによって消火ポンプ制御盤6が加圧送水装置21を始動する。これにより、立ち下がり配管13を介して作動したスプリンクラヘッド2から防護区画1に放水し、防護区画1で発生した火災を消火する。
【0057】
予作動弁22の開放に先立ち、まず開放弁29が放水開始時に開放されるが、開放弁29を通過する消火用水はオリフィス28で流量が定格送水量を超えぬように制限され、放水開始から所定時間が経過するまでは予作動弁22を開放せず、オリフィス28によって放水流量を制限する。
【0058】
例えば、図8に示すように、放水開始時に開放弁29を開放し、放水開始から、少なくとも二次側配管12への送水によって二次側配管12内の負圧が解消される所定時間T(例えば60秒)が経過するまでの間、すなわち二次側配管12内の圧力が大気圧以上となるまで、送出する消火用水の流量が定格送水量を超えないような値n%(nは100未満)になるように、また、所定時間Tが経過した後は、開栓したスプリンクラヘッド2から規定流量で散水されるように、定格送水量に達するまでの時間遅れΔTを考慮して、所定時間TよりΔT以上を減じた早い時間に予作動弁22を開放するように、消火システム制御盤5から中継器51を介して開放弁29と予作動弁22とが制御される。
【0059】
以上の説明のように、放水開始時は予作動弁22を開弁せず、開放弁29と流量を制限するオリフィス28とが介在する予作動弁をバイパスする流路から送水して、送水する消火用水の流量を制御するので、二次側配管12に流入する水の流量が過流量となることを防止できる。したがって、前記過流量に起因するウォーターハンマを防止することができる。
実施の形態4
【0060】
二次側配管内の加圧気体を急速に排気する機構を有する従来の乾式スプリンクラ設備または加圧型予作動式スプリンクラ設備(背景技術参照)において、給水装置を実施の形態1乃至3のいずれかで開示した送水量制御手段を備える給水装置とし、送水開始後、少なくとも前記二次側配管内の圧力低下が解消されるまでであって60秒以内の所定時間が経過するまでの間、すなわち二次側配管12内の圧力が一定となる、または、上昇に転じるまで、送出する消火用水の流量が定格送水量を下回るように制御し、かつ、前記所定時間が経過した後には送出する消火用水の流量が定格送水量となるように制御することにより、二次側配管内を流れる水が急激に加速されず、配管内を流れる水が過流速とならないので、過流速に起因するウォーターハンマによるスプリンクラ消火設備の破損を防止し、規定時間内に規定水量で散水することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 防護区画、 2 スプリンクラヘッド、 3 火災感知器、
4 火災受信機、 5 消火システム制御盤、 6、60 消火ポンプ制御盤、
10 消火水槽、 11 一次側配管、 12 二次側配管、
13 立ち下がり配管、 14 真空配管、 16 排水配管、
21、26 加圧送水装置、 22、27 予作動弁、
22a、27a 流水信号用スイッチ、 22b、27b 遠隔起動弁、
24 真空ポンプ、 25 末端試験弁、 27 予作動弁、
31 流水遮断弁、 41 真空スイッチ、 28、42 オリフィス、
46 ヘッド作動検出装置、 29、47 開放弁、 51 中継器、
52 真空ポンプ制御盤、 53 真空スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧送水装置と、開放弁と、該開放弁一次側に設けられ、基端側に加圧送水装置が接続される一次側配管と、を有する給水装置と、前記開放弁の二次側に設けられ、スプリンクラヘッドが接続され、平常時は充水されず加圧気体で満たされる二次側配管と、を備えるスプリンクラ消火設備において、;

前記給水装置は送水量制御手段を備え、該送水量制御手段は、送水開始後、少なくとも前記二次側配管内の圧力低下が解消されるまでであって60秒以内の所定時間が経過するまでは、送出する消火用水の流量が定格送水量を下回るように制御し、かつ、前記所定時間が経過した後には送出する消火用水の流量が定格送水量となるように制御することを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項2】
加圧送水装置と、開放弁と、該開放弁一次側に設けられ、基端側に加圧送水装置が接続される一次側配管と、を有する給水装置と、前記開放弁の二次側に設けられ、スプリンクラヘッドが接続され、平常時は充水されず負圧気体で満たされる二次側配管と、を備えるスプリンクラ消火設備において、;

前記給水装置は送水量制御手段を備え、該送水量制御手段は、送水開始後、少なくとも前記二次側配管内の負圧が解消されるまでであって60秒以内の所定時間が経過するまでは、送出する消火用水の流量が定格送水量を超えないように制御し、かつ、前記所定時間が経過した後には送出する消火用水の流量が定格送水量となるように制御することを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項3】
前記送水量制御手段は、送水開始後前記所定時間が経過するまでの間には、送出する消火用水の流量を漸次増大させるように制御することを特徴とする請求項1または2に記載のスプリンクラ消火設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−200312(P2012−200312A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65455(P2011−65455)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】