説明

スプリンクラ設備

【課題】消火用のスプリンクラ設備を利用して、屋内空間内の雰囲気の除菌及び消臭を効率よく行う。
【解決手段】スプリンクラ設備1は、水道管30に連通する一次側配管20と、第1の開閉弁22を介して一次側配管20に連結された二次側配管21と、二次側配管21に設けられ、水道管30から供給された水を散水する複数のスプリンクラヘッド40と、二次側配管21に設けられ、除菌消臭剤を噴霧する複数のミストノズル50と、二次側本管21aから分岐し、タンク52に連通する供給管51と、供給管51に設けられた第2の開閉弁54及びポンプ53と、第1の開閉弁22の開閉、第2の開閉弁54の開閉、及びポンプ53の作動を制御する制御部70と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用のスプリンクラ設備に関し、特に屋内空間の除菌消臭作用を有するスプリンクラ設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建屋に設置される消火設備としてスプリンクラ設備が普及している。スプリンクラ設備は、例えば給水源に連通する一次側配管と、制御弁を介して一次側配管に連結された二次側配管と、二次側配管に設けられた複数のスプリンクラヘッドとを有している。そして、火災が発生すると、供給源からスプリンクラヘッドに水が供給され、当該スプリンクラヘッドから水が散水されて火災が消火される(特許文献1)。
【0003】
ところで、上述したスプリンクラ設備は、例えば住居の他、介護施設や病院、あるいはオフィスビルやショッピングセンタ等、不特定多数の人が滞在する種々の建屋に設置される。近年、かかる建屋の屋内環境を良好に保つため、当該屋内空間の雰囲気を清浄化すること、すなわち屋内空間の雰囲気を除菌及び消臭することが要望されている。そこで、このような除菌消臭効果を発揮する除菌消臭剤として、例えば塩素含有酸化剤を所定の濃度含んだ水溶液が提案されている。そして、屋内空間に除菌消臭剤を噴霧して、屋内空間の雰囲気を清浄化している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−240463号公報
【特許文献2】特開2001−316213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した除菌消臭剤の噴霧は、例えばトリガースプレイヤー等の空気圧を利用した噴霧手段を用いて行われている。かかる場合、主として手動で除菌消臭剤が噴霧されるため、手間がかかる上、屋内空間を均一に除菌消臭することができなかった。また、除菌消臭剤を噴霧する際には、超音波振動子等の振動素子を用いて除菌消臭剤を噴霧したり、あるいは加温により除菌消臭剤を噴霧することも行われるが、かかる場合、噴霧手段を別途設ける必要があるので、装置コストが高くなっていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、消火用のスプリンクラ設備を利用して、屋内空間内の雰囲気の除菌及び消臭を効率よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、給水源に連通する一次側配管と、第1の開閉弁を介して前記一次側配管に連結された二次側配管と、前記二次側配管に設けられ、前記給水源から供給された水を散水する複数のスプリンクラヘッドとを有する、消火用のスプリンクラ設備において、前記二次側配管に設けられ、除菌消臭剤を噴霧する複数の除菌消臭剤ノズルと、前記複数の除菌消臭剤ノズルに除菌消臭剤を供給する除菌消臭剤供給源と、前記複数のスプリンクラヘッド及び前記複数の除菌消臭剤ノズルより一次側の前記二次側配管から分岐し、前記除菌消臭剤供給源に連通する除菌消臭剤供給管と、前記除菌消臭剤供給管に設けられ、当該除菌消臭剤供給管内の除菌消臭剤の流通を制御する第2の開閉弁と、前記除菌消臭剤供給管に設けられ、前記除菌消臭剤供給源から前記除菌消臭剤ノズルに除菌消臭剤を送液するためのポンプと、前記第1の開閉弁の開閉、前記第2の開閉弁の開閉、及び前記ポンプの作動を制御する制御部と、を有することを特徴としている。なお、除菌消臭剤とは、除菌及び消臭作用を有する処理液をいう。
【0008】
本発明によれば、複数の除菌消臭剤ノズルと複数のスプリンクラヘッドがそれぞれ二次側配管に設けられており、制御部により第1の開閉弁の開閉、第2の開閉弁の開閉及びポンプの作動を制御することで、複数の除菌消臭剤ノズルから除菌消臭剤を噴霧することができ、また複数のスプリンクラヘッドから水を散水することができる。具体的には、後述するように、例えば平時には、第1の開閉弁を閉塞し、第2の開閉弁を開放すると共に、所定の時間毎にポンプを作動させて、除菌消臭剤供給源から除菌消臭剤ノズルに除菌消臭剤を供給する。一方、例えば火災時には、第1の開閉弁を開放し、第2の開閉弁を閉塞すると共に、ポンプの作動を停止し、給水源からスプリンクラヘッドに水を供給する。以上のように本発明のスプリンクラ設備によれば、消火機能を維持しつつ、屋内空間の除菌消臭を自動で行うことができる。したがって、従来のように手間がかからず、しかも屋内空間を均一に除菌消臭することができる。また、複数の除菌消臭剤ノズル等は、消火用のスプリンクラ設備を利用して設置されているので、装置コストを低廉化することができる。以上のように、本発明によれば、屋内空間内の雰囲気の除菌消臭を効率よく行うことができる。
【0009】
前記制御部は、平時には、前記第1の開閉弁を閉塞し、前記第2の開閉弁を開放すると共に、所定の時間毎に前記ポンプを作動させて、前記除菌消臭剤供給源から前記除菌消臭剤ノズルに除菌消臭剤を供給し、火災時には、前記第1の開閉弁を開放し、前記第2の開閉弁を閉塞すると共に、前記ポンプの作動を停止し、前記給水源から前記スプリンクラヘッドに水を供給するように、前記第1の開閉弁の開閉、前記第2の開閉弁の開閉、及び前記ポンプの作動を制御するのが好ましい。
【0010】
前記給水源から供給される水の圧力は第1の圧力であり、前記除菌消臭剤供給源から供給される除菌消臭剤の圧力は、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力であって、前記除菌消臭剤ノズルは、前記第1の圧力よりも大きい圧力で除菌消臭剤を噴霧可能に構成され、前記制御部は、火災時にのみ、前記スプリンクラヘッドを開放して散水させるように制御するのが好ましい。
【0011】
前記除菌消臭剤ノズルにおいて、除菌消臭剤の噴出口の径は1mm以下であってもよい。
【0012】
前記除菌消臭剤は、電解次亜塩素酸水を有していてもよい。
【0013】
前記給水源は水道管であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、消火用のスプリンクラ設備を利用して、屋内空間内の雰囲気の除菌及び消臭を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態にかかるスプリンクラ設備の側面視における構成の概略を示す説明図である。
【図2】本実施の形態にかかるスプリンクラ設備の平面視における構成の概略を示す説明図である。
【図3】ミストノズルの構成の概略を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかるスプリンクラ設備1の側面視における構成の概略を示す説明図である。図2は、スプリンクラ設備1の平面視における構成の概略を示す説明図である。
【0017】
スプリンクラ設備1は、図1に示すように、例えば介護施設や病院などの建屋10に設置される。建屋10は例えば2階建構造であって、各屋内空間11は天井体12と壁体13によって区画されている。
【0018】
スプリンクラ設備1には、一次側配管20と二次側配管21が第1の開閉弁22を介して連結されている。第1の開閉弁22には、例えば電磁弁が用いられる。また、第1の開閉弁22は、壁体13内に配置されている。
【0019】
一次側配管20は、例えば給水源としての水道管30に連通している。そして、一次側配管20は、水道管30から分岐し、壁体13内を鉛直方向に延伸して設けられている。したがって、第1の開閉弁22を開放すると、水道管30から一次側配管20を介して二次側配管21に水が供給されるようになっている。なお、水道管30自体は、開閉弁31を介して屋内空間11に設置された水栓32に接続され、屋内空間11に水を供給できる。
【0020】
二次側配管21は、第1の開閉弁22から壁体13内を鉛直方向に延伸する二次側本管21aと、当該二次側本管21aから複数に分岐し、各階の天井体12内を延伸する二次側分岐管21bとを有している。
【0021】
二次側分岐管21bには、複数のスプリンクラヘッド40が設けられている。スプリンクラヘッド40は、例えば1m毎に1個設置されている。また、スプリンクラヘッド40には、第1の圧力である例えば0.3MPa〜0.4MPaの圧力で、例えば50000cm/分(50リットル/分)の流量の水が水道管30から供給され、当該スプリンクラヘッド40から散水される。なお、スプリンクラヘッド40から水が散水されるのは火災時のみであって、平時においてスプリンクラヘッド40は閉塞され水は散水されない。
【0022】
二次側分岐管21bには、さらにミスト状の除菌消臭剤を噴霧する複数の除菌消臭剤ノズルとしてのミストノズル50が設けられている。ミストノズル50は、例えば3.3m毎に1個設置されている。また、ミストノズル50には、上述した第1の圧力よりも高い第2の圧力である例えば0.7MPaの圧力で、例えば10cm/分〜1000cm/分(0.01リットル/分〜1リットル/分)、本実施の形態においては50cm/分(0.05リットル/分)の流量の除菌消臭剤が供給され、当該ミストノズル50から除菌消臭剤が噴霧される。なお、ミストノズル50の構造と除菌消臭剤の成分については、後述において説明する。
【0023】
二次側分岐管21bに設けられた複数のスプリンクラヘッド40と複数のミストノズル50は、図2に示すように屋内空間11に均一に分布するように配置されている。そして、このように複数のスプリンクラヘッド40と複数のミストノズル50を配置するため、二次側分岐管21bも天井体12内においてさらに分岐して配置されている。
【0024】
複数のスプリンクラヘッド40と複数のミストノズル50より一次側の二次側配管21、すなわち二次側本管21aには、図1に示すように除菌消臭剤供給管としての供給管51が分岐して設けられている。供給管51は、内部に液体状の除菌消臭剤を貯留する除菌消臭剤供給源としてのタンク52に連通している。また、供給管51には、タンク52からミストノズル50に除菌消臭剤を送液するためのポンプ53と、供給管51内の除菌消臭剤の流通を制御する第2の開閉弁54が、タンク52側からこの順で設けられている。第2の開閉弁54には、例えば電磁弁が用いられる。
【0025】
各屋内空間11の天井には、複数の感知器60が設置されている。複数の感知器60は、図2に示すように屋内空間11に均一に分布するように配置されている。感知器60は、火災の発生を感知し、具体的には屋内空間11内の熱又は煙を感知する。そして、図1に示すように屋内空間11内の雰囲気が所定温度、例えば70℃〜90℃以上に上昇したり、あるいは所定量以上の煙が発生するのを感知器60が感知すると、その信号が受信器61に送信される。また、各屋内空間11には、警報器62が設置されている。警報器62には非常ベル(図示せず)が設けられ、屋内空間11に滞在する人が火災を発見したときに非常ベルが押されると、その信号が受信器61に送信される。また、警報器62は、受信器61に上述した火災の発生を知らせる信号が送信されると、警報音を発するように構成されている。さらに、このように受信器61に火災発生の信号が送信されると、後述する制御部70によって火災発生箇所のスプリンクラヘッド40が開放され、当該スプリンクラヘッド40から水が散水されるようになっている。
【0026】
スプリンクラ設備1には、第1の開閉弁22の開閉、第2の開閉弁54の開閉、ポンプ53の作動を制御する制御部70が設けられている。制御部70には制御盤(図示せず)が設けられ、作業者はこの制御盤にポンプ53の作動タイミングや作動時間を入力することができる。また、制御部70は、受信器61からの火災発生の信号に基づいて、第1の開閉弁22の開閉と第2の開閉弁54の開閉を制御する。具体的には、平時には、第1の開閉弁22を閉塞し、第2の開閉弁54を開放しておく。一方、火災時には、第1の開閉弁22を開放し、第2の開閉弁54を閉塞する。
【0027】
なお、制御部70は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、スプリンクラ設備1を制御するためのプログラムが格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部70にインストールされたものであってもよい。
【0028】
次に、上述したミストノズル50の構造について説明する。図3は、ミストノズルの構成の概略を示す縦断面図である。
【0029】
ミストノズル50は、本体80を有している。本体80の内部には、液体状の除菌消臭剤が流通する流通路81が形成されている。流通路81は、上流側(二次側分岐管21b側)から下流側に向かって、段々にその内径が小さくなるように形成されている。流通路81の基端部には、除菌消臭剤中の異物を除去するフィルタ82が設けられている。また、流通路81の他端部には、除菌消臭剤が噴射される噴出口83が形成されている。噴出口83の内径Dは例えば1mm以下、より好ましくは0.1mm以下となっている。なお、噴出口83付近には、噴出口83から噴射されるミスト状の除菌消臭剤を拡散させるための拡散手段(図示せず)が設けられている。
【0030】
かかるミストノズル50に二次側分岐管21bから液体状の除菌消臭剤が供給されると、除菌消臭剤はフィルタ82を通過し流通路81に流入する。このとき、除菌消臭剤がフィルタ82を通過することで当該除菌消臭剤に含まれる異物が除去される。そして、除菌消臭剤は、内径Dの微小な噴出口83を通過する際にミスト化される。ミスト化された除菌消臭剤は、噴出口83から屋内空間11に噴射される。なお、噴射された除菌消臭剤の径は微小であるため、屋内空間11内の人や物が濡れることはない。また、このように微小な噴出口83を通過させるために、除菌消臭剤は高い圧力、すなわち上述した第1の圧力より高い圧力で供給される必要があり、第2の圧力で供給されるのが好ましい。したがって、上述したように水道管30から第1の圧力で水を供給しても、この水がミストノズル50から噴射されることは殆どない。
【0031】
次に、上述した除菌消臭剤の成分について説明する。除菌消臭剤は、約99.9%の純水と、約0.1%の電解次亜塩素酸水とを含有する水溶液である。電解次亜塩素酸水は、例えばオゾン、二酸化塩素及び次亜塩素酸ナトリウムを混合し、この混合液を電気分解して生成したものである。また、本実施の形態の除菌消臭剤は、例えばpH8.9を有する。発明者らによれば、かかる除菌消臭剤を屋内空間11に噴霧した場合、優れた除菌効果を発揮すると共に、優れた消臭効果を奏することが分かった。具体的には、例えば大腸菌、黄色ブドウ球菌、MRSA(メチシリン・レジスタント・スタヒロコッカス・アウレウス)、サルモネラ菌、緑膿菌、芽胞菌等を除菌することができ、またインフルエンザウイルス等のウィルスが活性化するのを抑制することができる。しかも、電解次亜塩素酸水は人体に対して無害であって、且つ無公害物質であるので、人や環境に対しても安全である。
【0032】
本実施の形態にかかるスプリンクラ設備1は以上のように構成されている。次に、そのスプリンクラ設備1で行われる作用について、平時と火災時に分けて説明する。
【0033】
平時においては、制御部70によって、第1の開閉弁22が閉塞される。そうすると、水道管30から二次側配管21に水が流入しない。また、第2の開閉弁54が開放されると共に、制御部70の制御盤に入力されたポンプ53の作動タイミング及び作動時間に基づいてポンプ53が作動する。ポンプ53は、例えば4時間毎に1回且つ5秒間作動する。そして、タンク52から二次側配管21に第2の圧力で50cm/分の液体状の除菌消臭剤が供給され、ミストノズル50から屋内空間11にミスト状の除菌消臭剤が噴霧される。このとき、スプリンクラヘッド40は閉じられており、当該スプリンクラヘッド40から除菌消臭剤が流出することはない。こうして噴霧されたミスト状の除菌消臭剤によって屋内空間11が除菌消臭され、雰囲気が清浄に維持される。なお、本実施の形態において、ポンプ53の作動タイミングを4時間毎に1回としたのは、除菌消臭剤による除菌効果の持続時間が4時間であるという発明者らの知見に基づくものである。
【0034】
一方、火災時においては、先ず、感知器60又は警報器62からの火災発生の信号が受信器61に送信され、さらに制御部70に送信される。このとき、警報器62から警報音が発せられる。そして、制御部70によって、第2の開閉弁54が閉塞されると共に、ポンプ53の作動が停止する。そうすると、タンク52から二次側配管21に除菌消臭剤が流入しない。また、火災発生箇所のスプリンクラヘッド40が開放されると共に、第1の開閉弁22が開放される。そして、水道管30から二次側配管21に第1の圧力で50000cm/分の水が供給され、スプリンクラヘッド40から屋内空間11に水が散水される。このとき、供給される水の圧力は第1の圧力と低いため、この水がミストノズル50から噴射されることは殆どない。こうして屋内空間11に散水された水によって、火災が消火される。
【0035】
以上の実施の形態によれば、複数のミストノズル50と複数のスプリンクラヘッド40がそれぞれ二次側配管21に設けられており、制御部70により第1の開閉弁22の開閉、第2の開閉弁54の開閉及びポンプ53の作動を制御することで、複数のミストノズル50から除菌消臭剤を噴霧することができ、また複数のスプリンクラヘッド40から水を散水することができる。具体的には、例えば平時には、第1の開閉弁22を閉塞し、第2の開閉弁54を開放すると共に、所定の時間毎にポンプ53を作動させて、タンク52からミストノズル50に除菌消臭剤を供給する。一方、例えば火災時には、第1の開閉弁22を開放し、第2の開閉弁54を閉塞すると共に、ポンプ53の作動を停止し、水道管30からスプリンクラヘッド40に水を供給する。以上のように本実施の形態のスプリンクラ設備1によれば、消火機能を維持しつつ、屋内空間11の除菌消臭を自動で行うことができる。したがって、従来のように手間がかからず、しかも屋内空間11を均一に除菌消臭することができる。また、複数のミストノズル50等は、消火用のスプリンクラ設備1を利用して設置されているので、装置コストを低廉化することができる。以上のように、本実施の形態によれば、屋内空間11内の雰囲気の除菌消臭を効率よく行うことができる。
【0036】
また、発明者らが調べたところ、本実施の形態と同様の条件で屋内空間11に除菌消臭剤を噴霧すると、除菌消臭剤を噴霧しない場合と比較して、屋内空間11内の温度を2℃〜6℃下げる効果があることが分かった。したがって、例えば夏季において、空気調節に要するエネルギー消費を抑えることができ、CO削減にも貢献できる。また、このように除菌消臭剤を噴霧することで、屋内空間11内の湿度を50%〜70%の適切な湿度に維持できることが分かった。したがって、例えば冬季において、加湿に要するエネルギー消費を抑えることができ、CO削減にも貢献できる。さらに、屋内空間11を適度な湿度に保つことにより、乾燥によるウィルスの活性化及び蔓延を抑制できる。以上のように、本実施の形態によれば、環境保全にも貢献することができる。
【0037】
また、ミストノズル50の噴出口83の内径Dは1mm以下と微小であり、噴出口83から除菌消臭剤を噴射させるためには、ミストノズル50に除菌消臭剤が上述した第1の圧力より高い圧力で供給されることを要する。この点、平時においては、タンク52からミストノズル50に第1の圧力より高い第2の圧力で除菌消臭剤が供給されるので、ミストノズル50からミスト状の除菌消臭剤を適切に噴射できる。一方、火災時において、水道管30から第1の圧力で水が供給されても、この水がミストノズル50から噴射されることは殆どない。このように平時には、ミストノズル50のみからミスト状の除菌消臭剤が噴射され、火災時にはスプリンクラヘッド40のみから水が散水される。したがって、平時の除菌消臭と火災時の消火を共に適切に行うことができる。なお、火災時において、ミストノズル50から水が流出するおそれもあるが、その量は極めて微量であり、火災時の消火に影響を及ぼすことはない。
【0038】
さらに、ミストノズル50の噴出口83の内径Dは1mm以下と微小であるため、ミストノズル50から噴射される除菌消臭剤の径は微小となり、屋内空間11内の人や物が濡れることはない。したがって、人に不快感を与えることがなく、また物が損傷することもない。
【0039】
また、一次側配管20は水道管30に接続されているため、容易に給水源を確保できる。さらに、平時には第1の開閉弁22が閉塞されているが、水道管30内の水は絶えず入れ替わるため、一次側配管20内の水の腐敗や一次側配管20の腐蝕及び劣化を防止することができる。
【0040】
以上の実施の形態では、建屋10が2階建構造を有する場合について説明したが、建屋の構造は本実施の形態に限定されず、種々の構造を取り得る。また、以上の実施の形態では、一次側配管20、二次側本管21a及び第1の開閉弁22は、壁体13内に設けられていたが、壁体13の外側に設置されていてもよい。さらに、以上の実施の形態のスプリンクラ設備1において、スプリンクラヘッド40とミストノズル50の数及び配置は任意に設定できる。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、消火用のスプリンクラ設備を用いて、屋内空間の除菌消臭する際に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 スプリンクラ設備
10 建屋
11 屋内空間
12 天井体
13 壁体
20 一次側配管
21 二次側配管
21a 二次側本管
21b 二次側分岐管
22 第1の開閉弁
30 水道管
31 開閉弁
32 水栓
40 スプリンクラヘッド
50 ミストノズル(除菌消臭剤ノズル)
51 供給管(除菌消臭剤供給管)
52 タンク(除菌消臭剤供給源)
53 ポンプ
54 第2の開閉弁
60 感知器
61 受信器
62 警報器
70 制御部
80 本体
81 流通路
82 フィルタ
83 噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源に連通する一次側配管と、第1の開閉弁を介して前記一次側配管に連結された二次側配管と、前記二次側配管に設けられ、前記給水源から供給された水を散水する複数のスプリンクラヘッドとを有する、消火用のスプリンクラ設備において、
前記二次側配管に設けられ、除菌消臭剤を噴霧する複数の除菌消臭剤ノズルと、
前記複数の除菌消臭剤ノズルに除菌消臭剤を供給する除菌消臭剤供給源と、
前記複数のスプリンクラヘッド及び前記複数の除菌消臭剤ノズルより一次側の前記二次側配管から分岐し、前記除菌消臭剤供給源に連通する除菌消臭剤供給管と、
前記除菌消臭剤供給管に設けられ、当該除菌消臭剤供給管内の除菌消臭剤の流通を制御する第2の開閉弁と、
前記除菌消臭剤供給管に設けられ、前記除菌消臭剤供給源から前記除菌消臭剤ノズルに除菌消臭剤を送液するためのポンプと、
前記第1の開閉弁の開閉、前記第2の開閉弁の開閉、及び前記ポンプの作動を制御する制御部と、を有することを特徴とする、スプリンクラ設備。
【請求項2】
前記制御部は、
平時には、前記第1の開閉弁を閉塞し、前記第2の開閉弁を開放すると共に、所定の時間毎に前記ポンプを作動させて、前記除菌消臭剤供給源から前記除菌消臭剤ノズルに除菌消臭剤を供給し、
火災時には、前記第1の開閉弁を開放し、前記第2の開閉弁を閉塞すると共に、前記ポンプの作動を停止し、前記給水源から前記スプリンクラヘッドに水を供給するように、
前記第1の開閉弁の開閉、前記第2の開閉弁の開閉、及び前記ポンプの作動を制御することを特徴とする、請求項1に記載のスプリンクラ設備。
【請求項3】
前記給水源から供給される水の圧力は第1の圧力であり、
前記除菌消臭剤供給源から供給される除菌消臭剤の圧力は、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力であって、
前記除菌消臭剤ノズルは、前記第1の圧力よりも大きい圧力で除菌消臭剤を噴霧可能に構成され、
前記制御部は、火災時にのみ、前記スプリンクラヘッドを開放して散水させるように制御することを特徴とする、請求項1又は2に記載のスプリンクラ設備。
【請求項4】
前記除菌消臭剤ノズルにおいて、除菌消臭剤の噴出口の径は1mm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のスプリンクラ設備。
【請求項5】
前記除菌消臭剤は、電解次亜塩素酸水を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のスプリンクラ設備。
【請求項6】
前記給水源は水道管であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のスプリンクラ設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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