説明

スプリング端子付配線基板及びその実装構造とソケット

【課題】被接続物と実装用基板とを電気的に接続する信号伝送路の一部として用いるスプリング端子と基板上の配線パターンのインピーダンス整合を可能にすること。
【解決手段】スプリング端子付配線基板30は、第1の面11A及びこれと反対側の第2の面11Bを有する配線基板10と、第1の面に実装されたスプリング端子20とを備える。第1の面に設けられた配線層12は、スプリング端子20に電気的に接続された配線パターン12Sと、グランド電位に接地されるGNDパターン12Gとを含む。このGNDパターン12Gは、配線パターン12Sから絶縁され、かつ、配線パターン12Sを囲むように第1の面11Aに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリング性を有した接続端子を備えた配線基板(以下、「スプリング端子付配線基板」という。)及びその実装構造とソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
MPU(マイクロプロセッサユニット)等の高速(高周波数)で動作するLSIは、LGA(ランド・グリッド・アレイ)型のパッケージ構造を有している。これらのLSIをマザーボード等の実装用基板に実装して安定動作させるためには、LGAパッケージに対応したソケット(LGAソケット)が必要である。
【0003】
かかるLGAソケットには、LGAパッケージとマザーボードとの間で電気的相互接続を維持するための導電性部材として接続用の端子(コンタクトピン)が設けられている。例えば、スプリングを内装し先端部分がそのスプリングで上下に伸縮する可動型プローブピン(「ポゴピン」とも呼ばれている)が用いられている。また、先端部分がスプリング性を有し上下に可動するピン、全体がスプリング性を有し上下に可動するピン(スプリング端子)などが用いられている。
【0004】
ポゴピンや先端がスプリング形状のピンを使用する形態では、耐熱性樹脂基板に貫通孔を形成し、その貫通孔にピンを挿し込むようにして実装を行い、LGAソケットの基板として用いている。これに対し、スプリング端子を使用する形態では、プリント基板上にピン(スプリング端子)をはんだ付けして実装を行い、LGAソケットの基板として用いている。スプリング端子を使用する形態の一例は、下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−277829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
信号の伝送周波数が高速化(高周波化)すると、信号伝送路が微小な長さであっても伝送路の特性インピーダンスは変動する。そのため、特性インピーダンスの不整合により伝送路の終端で信号反射が発生し、ノイズや信号の位相変動を発生させてしまう。その結果、信号が正しく伝送されず、伝送先の回路等において誤動作の発生原因となる。
【0007】
これらの対策として、LSI、LGAパッケージ内の信号配線及びLSIを実装するマザーボードの信号配線については、その特性インピーダンスを50Ωに整合させて、信号伝送路上での信号反射を抑制している。
【0008】
一方、LGAパッケージ(LSI)とマザーボードを相互接続しているソケットの配線については、信号の伝送周波数に対して無視できる(集中定数回路として扱える)程度の長さであるとして、特にインピーダンス整合を考慮していなかった。
【0009】
しかしながら、MPU等の超高速演算処理回路を備えたLSIの信号周波数は数GHzから数十GHzに達しようとしており、これらの周波数に対してソケットにおける信号配線も分布定数回路として扱う必要がある。よって、インピーダンス整合を適正に施さないと信号が正しく伝送されない状況にある。
【0010】
従来のLGAパッケージ対応ソケットでは、上記のいずれの形態(ポゴピンや先端がスプリング形状のピンを使用する形態、スプリング端子を使用する形態)においても、コンタクトピンのインピーダンスを整合調整できる構造にはなっていない。つまり、インピーダンスを整合させる手段を備えていなかった。
【0011】
以上に鑑み、被接続物と実装用基板とを電気的に接続する信号伝送路の一部として用いるスプリング端子と基板上の配線パターンのインピーダンス整合を可能にするスプリング端子付配線基板及びその実装構造とソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下の開示の一観点によれば、第1の面及びこれと反対側の第2の面を有する配線基板と、前記配線基板の第1の面に実装されたスプリング端子とを備え、前記配線基板の第1の面に設けられた配線層が、前記スプリング端子に電気的に接続された第1の配線パターンと、グランド電位に接地される第1のGNDパターンとを含み、前記第1のGNDパターンが、前記第1の配線パターンから絶縁され、かつ、前記第1の配線パターンを囲むように前記第1の面に形成されていることを特徴とするスプリング端子付配線基板が提供される。
【0013】
また、以下の開示の他の観点によれば、上記のスプリング端子付配線基板と、被接続物と、実装用基板とを備え、前記スプリング端子付配線基板が、前記スプリング端子を介して前記被接続物上の電極端子に接触するとともに、前記配線基板の第2の面側に設けられた外部接続端子を介して前記実装用基板上の電極端子に接続されていることを特徴とするスプリング端子付配線基板の実装構造が提供される。
【0014】
また、以下の開示のさらに他の観点によれば、上記のスプリング端子付配線基板と、実装用基板と、前記スプリング端子付配線基板を収容可能な開口部を有するフレームとを備え、前記フレームが前記実装用基板に固定され、前記スプリング端子付配線基板が、前記フレームの開口部内で、前記配線基板の第2の面側に設けられた外部接続端子を介して前記実装用基板上の電極端子に接続されていることを特徴とするソケットが提供される。
【発明の効果】
【0015】
上記の一観点に係るスプリング端子付配線基板によれば、スプリング端子が接続されている配線パターンを囲むように(つまり、配線パターンの直近に)GNDパターンが配置されている。これにより、被接続物と実装用基板とを電気的に接続する信号伝送路(例えば、LGAソケットの電気信号伝送配線)の一部として用いるスプリング端子と基板上の配線パターンについて、インピーダンスの整合に向けた調整を行うことができる。
【0016】
このインピーダンス整合(調整)に付随して得られる種々の利点については、後述する実施形態において具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態に係るスプリング端子付配線基板の構成を示す断面図である。
【図2】図1のスプリング端子付配線基板を両面から見たときの概略構成を示したものであり、(a)はスプリング端子が実装されている側の面から見た上面図、(b)はその反対側の面から見た底面図である。
【図3】図1のスプリング端子付配線基板の実装構造の一例を示す断面図である。
【図4】図1のスプリング端子付配線基板におけるGNDプレーンの接地手段の一例を説明するための断面図である。
【図5】図4に示すスプリング端子付配線基板を、スプリング端子が実装されている側と反対側の面から見たときの概略構成を示す底面図である。
【図6】図1のスプリング端子付配線基板におけるGNDプレーンの接地手段の他の例を説明するための断面図である。
【図7】図6に示すスプリング端子付配線基板を両面から見たときの概略構成を示したものであり、(a)はスプリング端子が実装されている側の面から見た上面図、(b)はその反対側の面から見た底面図である。
【図8】スプリング端子の直近にGNDプレーンを配置することによって得られる利点(その1)を説明するための図である。
【図9】スプリング端子の直近にGNDプレーンを配置することによって得られる利点(その2)を説明するための図である。
【図10】スプリング端子の直近にGNDプレーンを配置することによって得られる利点(その3)を説明するための図である。
【図11】スプリング端子の直近にGNDプレーンを配置することによって得られる利点(その4)を説明するための図である。
【図12】シミュレーションによる伝送特性の解析結果を示す図である。
【図13】第2の実施の形態に係るスプリング端子付配線基板の構成を示す断面図である。
【図14】図13のスプリング端子付配線基板を両面から見たときの概略構成を示したものであり、(a)はスプリング端子が実装されている側の面から見た上面図、(b)はその反対側の面から見た底面図である。
【図15】第3の実施の形態に係るスプリング端子付配線基板の構成を示す断面図である。
【図16】図15のスプリング端子付配線基板を両面から見たときの概略構成を示したものであり、(a)はスプリング端子が実装されている側の面から見た上面図、(b)はその反対側の面から見た底面図である。
【図17】第4の実施の形態に係るスプリング端子付配線基板の構成を示す断面図である。
【図18】図3に示した実装構造を補足説明するためのLGAソケットの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0019】
(第1の実施の形態…図1〜図12、図18参照)
図1は第1の実施の形態に係るスプリング端子付配線基板30の構成を断面図の形態で示したものである。
【0020】
本実施形態のスプリング端子付配線基板30は、配線基板10と、この配線基板10の一方の面に実装されたスプリング端子20とを備えている。このスプリング端子付配線基板30は、後述するようにLGAソケットに組み込まれ、被接続物(本実施形態ではLGAパッケージ)と実装用基板(本実施形態ではマザーボード)とを電気的に相互接続する導電手段として用いられる。
【0021】
配線基板10は、基板本体を構成する樹脂基板11と、この樹脂基板11の両面にそれぞれ所要の形状にパターニングされた配線層12及び13を備えている。さらに、各配線層12,13の所要の箇所に画定されたパッドP1,P2の部分を露出させてそれぞれ当該配線層及び樹脂基板11を覆うように形成されたソルダレジスト層16a及び16bを備えている。
【0022】
樹脂基板11の一形態としては、ガラスエポキシ樹脂のシートの両面に銅箔を被着させた基材(両面銅張基板)を基に形成した両面配線基板が用いられる。また、他の形態としては、ビルドアップ法などにより形成され得る多層構造の配線基板が用いられる。この樹脂基板11の両面に形成された配線層12,13(配線基板10の最外層の配線層)は、基板内部の所要箇所に適宜形成された各配線層(図示せず)及び各配線層間を相互に接続する導体ビア(図示せず)を介して電気的に接続されている。配線層12,13の材料としては、代表的に銅(Cu)が用いられる。また、樹脂基板11の絶縁材料としては、エポキシ系樹脂などが用いられる。
【0023】
樹脂基板11の上面11A(この面を便宜上「F面」ともいう。)に配置される配線層12は、信号伝送用の配線パターン12S(パッドP1を含む)と、グランド(GND)電位に接地されるパターン(以下、「GNDパターン」)12Gとを含むように形成されている。また、樹脂基板11の底面11B(この面を便宜上「B面」ともいう。)に配置される配線層13も同様に、配線パターン13S(パッドP2を含む)と、GNDパターン13Gとを含むように形成されている。各配線パターン12S,13S及び各GNDパターン12G,13Gの具体的な形状等については後で説明する。
【0024】
樹脂基板11のF面11A及びB面11Bに形成された配線パターン12S及び13Sは、ビア15Aを介して電気的に接続されている。同様にF面11A及びB面11Bに形成されたGNDパターン12G及び13Gも、ビア15Bを介して電気的に接続されている。各ビア15A,15Bは、樹脂基板11を厚さ方向にそれぞれ貫通して形成されたスルーホールTH1,TH2(例えば、直径が150μm程度)の内壁面に形成された導体層(例えば、厚さが20μm程度のCuめっき層)からなる。
【0025】
図1の例では、ビア15A,15Bを「導体層」の形態で設けているが、この形態に限定されないことはもちろんである。各スルーホールTH1,TH2に導電性材料(導体)を充填し、この充填された導体をビアとしてもよい。
【0026】
樹脂基板11のF面11A側を覆って形成されたソルダレジスト層16aには、パッドP1を露出させる開口部(例えば、直径が400μm程度)が設けられている。この開口部から露出するパッドP1には、ニッケル(Ni)めっき及び金(Au)めっきをこの順に施してなるNi/Auめっき層17a(例えば、厚さが3μm程度)が形成されている。さらに、このNi/Auめっき層17a上にはんだ18が被着され(例えば、厚さが50μm程度)、このはんだ18を介してスプリング端子20が接続されている。
【0027】
一方、樹脂基板11のB面11B側を覆って形成されたソルダレジスト層16bの開口部(例えば、直径が560μm程度)から露出するパッドP2にも、同様のNi/Auめっき層17bが形成されている。さらに、このNi/Auめっき層17b上に、スプリング端子付配線基板30をマザーボードに実装する際に使用される外部接続端子(はんだボール19)が接合されている。
【0028】
各パッドP1,P2上に形成されるNi/Auめっき層17a,17bを構成するAu層の部分は、はんだ18を被着させ、はんだボール19を接合したときのコンタクト性を高めるのに寄与する。Ni層の部分は、各パッドP1,P2を構成する金属(Cu)とAu層との密着性を高め、この金属(Cu)がAu層中へ拡散するのを防止するのに寄与する。
【0029】
はんだ18及びはんだボール19には、例えば、錫(Sn)と銀(Ag)と銅(Cu)の組成からなる鉛(Pb)フリーはんだが用いられる。ただし、このPbフリーはんだに限定されず、SnとPbの組成からなる共晶はんだを使用してもよい。
【0030】
配線基板10は、その基板本体(樹脂基板11)の厚さが0.2〜1.0mm程度となるように選定され、はんだボール19の高さが0.2〜0.5mm程度となるように選定されている。
【0031】
配線基板10上に実装されるスプリング端子20は、図1に示すように大別して3つの部分(接合部分21、接触部分22、スプリング部分23)からなり、これらの部分が一体的に成形された構造を有している。このスプリング端子20は、後述するように適当な弾性(ばね性、曲げ性)を有した金属材料からなる。
【0032】
スプリング端子20の大きさは、例えば、その高さ(接合部分21の下端面から接触部分22の上端面までの長さ)が0.5〜2.0mm程度、奥行き(高さ方向と直交する方向において接合部分21の側端面からスプリング部分23の最遠の外側面までの長さ)が0.5〜2.0mm程度、幅(高さ方向及び奥行き方向と直交する方向における長さ)が0.1〜0.5mm程度となるように選定されている。また、接続端子20を構成する金属薄板の厚さは、0.08mm程度のものを選定している。
【0033】
スプリング端子20の接合部分21は、はんだ18(図1)を介して配線基板10のパッドP1(Ni/Auめっき層17a)に接続される部分である。この接合部分21は、スプリング部分23の一方の端部(図示の例では下側)に繋がり、スプリング部分23の幅よりも広い幅(図9参照)を有し、かつ、両面が平坦な形状となるように成形されている。
【0034】
接合部分21をこのような形状に形成することで、接合部分21を配線基板10のパッドP1(Ni/Auめっき層17a)に接合したときの接合面積を増やし、十分なはんだ接続強度を確保することができる。つまり、接合される相手側の平坦なパッドP1(Ni/Auめっき層17a)との密着度を高めることができる。
【0035】
接触部分22は、スプリング端子付配線基板30に接続されるLGAパッケージのパッドに接触する部分である。この接触部分22は、スプリング部分23の他方の端部(図示の例では上側)に繋がり、スプリング端子20の高さ方向で見たときに接合部分21に対向する位置に配置されている。接触部分22は、スプリング部分23と同じ幅を有し(図9参照)、かつ、外側に(接合部分21から遠ざかる方向に)突出した形状となるように形成されている。より具体的には、スプリング部分23から外側方向に突出し、さらにこの突出部から内側方向に円弧状に湾曲するように形成されている。
【0036】
接触部分22をこのような形状に形成することで、以下のメリットがある。先ず、突出部を設けることで、LGAパッケージのパッドが接触部分22を押圧した際のスプリング部分23の変形による、LGAパッケージとスプリング部分23の端部(接触部分22に繋がる部分)との接触を防止することができる(スプリング端子20の破損の防止)。また、接触部分22の先端部を湾曲させているので、この湾曲部がLGAパッケージのパッドにより押圧された際、この湾曲部によって当該パッドが破損するのを防止することができる。
【0037】
スプリング部分23は、外側に(接合部分21及び接触部分22から遠ざかる方向に)湾曲した形状となるように形成されている。かかる形状に成形することで、スプリング部分23は高さ方向に弾性変形することができる。
【0038】
このスプリング部分23の一方の端部(接合部分21に繋がっている側)は固定化されるが、他方の端部(接触部分22に繋がっている側)は自由端となっている。そのため、このスプリング部分23は、LGAパッケージのパッドが接触部分22に押圧されて接触したときに、その押圧力に抗する弾性力により、当該パッドと接触部分22との接触状態を安定に維持するのに寄与する。このスプリング部分23は接触部分22と一体的に「ばね」として機能する。このときのばね定数は、例えば、0.6〜0.8N/mm程度に選定されている。
【0039】
図2は本実施形態のスプリング端子付配線基板30(図1)を両面から見たときの概略構成を示したものであり、(a)はスプリング端子20が実装されている側の面から見た上面図、(b)はその反対側の面から見た底面図である。図2の構成では、ソルダレジスト層16a,16b、Ni/Auめっき層17a,17b、はんだ18及びはんだボール19の図示を省略している。
【0040】
配線基板10(図1)の上面側(樹脂基板11のF面11A)に配置される信号伝送用の配線パターン12Sは、図2(a)に示すように、大円形の部分LPと小円形の部分SPが繋がった形状(「だるま」に似た形状)にパターニングされている。例えば、大円形の部分LPは直径が600μm程度、小円形の部分SPは直径が350μm程度に選定され、各部分LP,SPの中心間距離は500μm程度に選定されている。この配線パターン12Sは、スプリング端子20の設置個数に応じた数だけ形成され、アレイ状に配設されている。
【0041】
また、樹脂基板11の同じF面11Aに配置されるGNDパターン12Gは、各配線パターン12Sから絶縁され(例えば、80μm程度の間隔を空ける)、かつ、各配線パターン12Sを囲むようにF面11Aに「べた状」にパターニングされている。つまり、GNDパターン12Gは「GNDプレーン」を構成している。
【0042】
各配線パターン12S(大円形の部分LP)上には、それぞれスプリング端子20が接続されている。各スプリング端子20は、その配設方向(図2(a)において破線の矢印で示す方向)に対して所定の角度θ(例えば、25〜35度)をなすように配列されている。つまり、スプリング端子20は、その配設方向に対して傾斜するように配置されている。このような配列形態とすることにより、配設方向に対して平行となるように端子を配列した場合と比べて、単位面積当たりの端子の設置個数を増やすことができる。これは、LGAパッケージのパッドの狭ピッチ化に対応したスプリング端子20の接触部分22の狭ピッチ化に寄与する。
【0043】
一方、配線基板10(図1)の底面側(樹脂基板11のB面11B)に配置される信号伝送用の配線パターン13Sも同様に、図2(b)に示すように、大円形の部分LPと小円形の部分SPが繋がった形状(「だるま」に似た形状)にパターニングされている。ただし、大円形の部分LPについては、その直径が680μm程度に選定されている。この配線パターン13Sは、外部接続端子(はんだボール19)の設置個数に応じた数だけ形成され、アレイ状に配設されている。そして、この配線パターン13Sは、反対側のF面11Aに形成された対応する配線パターン12Sと、ビア15Aを介して電気的に相互接続されている。
【0044】
また、樹脂基板11の同じB面11Bに配置されるGNDパターン13Gも同様に、各配線パターン13Sから絶縁され、かつ、各配線パターン13Sを囲むようにB面11Bに「べた状」にパターニングされている。つまり、GNDパターン13Gも「GNDプレーン」を構成している。そして、このGNDパターン13Gは、反対側のF面11Aに形成されたGNDパターン12Gと、複数のビア15Bを介して電気的に相互接続されている。
【0045】
本実施形態に係るスプリング端子付配線基板30は、例えば、本願出願人が既に提案している技術(前述した特許文献1)を利用して製造することができる。その製造方法の詳細については省略するが、その一例を概略的に説明すると以下の通りである。
【0046】
先ず、配線基板10に実装されるスプリング端子20を用意する。スプリング端子20は、均一な厚さを有した金属薄板から、形成すべきスプリング端子20のパターン(平面状に伸ばしたときの形状に応じたパターン)を型で打ち抜いて(スタンピング)、所要の形状に曲げ加工(ベンディング)を施すことで作製することができる。スタンピングの代わりに、エッチングにより、所要のスプリング端子20の形状に応じたパターンを得ることも可能である。
【0047】
使用する金属薄板の材料としては、適当な弾性(ばね性、曲げ性)を有した材料、例えば、ベリリウム銅(Cu−Be)、りん青銅(Cu−Sn)、コルソン材(Cu−Ni−Si−Mg、Cu−Ni−Si、Cu−Ni−Co−Si−Cr等)などの銅(Cu)をベースとした合金が好適に用いられる。
【0048】
また、スタンピング又はエッチングによりスプリング端子20の形状に応じたパターンを得た後、その金属薄板の表面にNiめっき、Ni−Co合金めっき等を施す。コバルト(Co)を含む合金めっきを施した場合、弾性を高めることができるという点で有用である。これらNiめっき等は、ベンディングを施す前に行ってもよいし、ベンディングを施した後に行ってもよい。さらに、そのNiめっき等が施された表面(少なくとも接合部分21と接触部分22)に、金(Au)めっきを施す。
【0049】
次に、このようにして作製されたスプリング端子20を端子整列用の治具上に仮固定する。この治具には、最終的にスプリング端子20が実装される配線基板10のパッドP1の配列に合わせて凹部が設けられている。スプリング端子20の仮固定は、振込み法やピック&プレイス法などにより実施することができる。
【0050】
例えば、ステッチングマシーンを使用したピック&プレイス法の場合、金属薄板(フレーム)上で所要の形状にスタンピング(又はエッチング)及びベンディングが施されたスプリング端子20を、その金属フレームから折り取りながらつまんで(ピック)、治具に設けられた対応する凹部内に挿し込んでいく(プレイス)。これにより、治具に設けられた各凹部内に、それぞれ対応するスプリング端子20が仮固定される。その際、治具の凹部からスプリング端子20の接合部分21を突出させるように仮固定を行う。このように接合部分21を突出させておくことで、この接合部分21に対する配線基板10側のパッドの接合が行い易くなる。
【0051】
次に、治具に仮固定されたスプリング端子20を固定実装するための配線基板10を用意する。配線基板10の形態としては、上述したように基板本体に樹脂基板11を使用したものを用いることができる。この配線基板10の一方の面側のソルダレジスト層16aから露出するパッドP1(Ni/Auめっき層17a)には、適量のはんだ18が被着される。また、他方の面側のソルダレジスト層16bから露出するパッドP2(Ni/Auめっき層17b)には、はんだボール19が接合される。
【0052】
次に、この配線基板10に上記の構造体(治具に複数個のスプリング端子20を仮固定し整列させたもの)を接合する。すなわち、配線基板10のはんだ18が被着されている側の面を、治具のスプリング端子20が仮固定されている側の面に対向させて位置合わせし、はんだ18を対応するスプリング端子20の接合部分21に当接させる。次いで、リフローによりはんだ18を溶融させて、配線基板10のパッドP1(Ni/Auめっき層17a)にスプリング端子20の接合部分21を電気的に接続する。
【0053】
本実施形態では、はんだ18を用いているが、これに代えて、導電性樹脂ペースト等を使用してもよい。例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂に銀(Ag)フィラーを含有させたAgペーストを用いることができる。この場合、配線基板10のパッドP1に被着させたAgペーストをスプリング端子20の接合部分21に当接させた後、加熱により硬化させて、パッドP1と接合部分21とを電気的に接続する。
【0054】
以上の工程により、本実施形態のスプリング端子付配線基板30が作製されたことになる。
【0055】
図3は、第1の実施形態に係るスプリング端子付配線基板30の実装構造の一例(配線基板30をLGAパッケージ40とマザーボード50との間に介在させて電気的に接続した実装構造)を断面図の形態で示したものである。また、図18はこの実装構造を補足説明するためのLGAソケットの構成を断面図の形態で示したものである。
【0056】
図3に示す実装構造60において、スプリング端子付配線基板30は、配線基板10において樹脂基板11のB面11Bに配置されたパッドP2(Ni/Auめっき層17b)に接合されたはんだボール19(外部接続端子)を介して、マザーボード50上に配設された対応するパッド51(電極端子)に接続されている。
【0057】
LGAパッケージ40は、例えば、ビルドアップ配線基板の形態を有している。このLGAパッケージ40の上面側には(図18参照)、例えば、MPU(マイクロプロセッサユニット)等の高周波数で動作するLSI(半導体チップ)45が搭載されている。このLSI45は、はんだバンプ等の導電性部材46を介してLGAパッケージ40上にフリップチップ実装されている。さらに、このLSI45とLGAパッケージ40との間にアンダーフィル樹脂48が充填されている。一方、LGAパッケージ40の下面側には、パッド41が設けられている。なお、図3の例では、LSI45、導電性部材46及びアンダーフィル樹脂48の図示を省略している。
【0058】
このLGAパッケージ40は、スプリング端子付配線基板30(図3)と共に、LGAソケット70(図18)のフレーム72内に収容される。このため、LGAソケット70のフレーム72は、平面視したときにLGAパッケージ40とスプリング端子付配線基板30を収容可能な開口部を有する枠体の形状に形成されている。例えば、エンプラ(エンジニアリング・プラスチック)等により形成することができる。このような形状のフレーム72を使用することで、ソケット70に実装されるスプリング端子付配線基板30とLGAパッケージ40の相互の位置合わせが行い易くなる。
【0059】
LGAソケット70のフレーム72は、その下端面がマザーボード50にねじ止め等で固定されている。一方、フレーム72の上端面には、金属製のキャップ74がそのヒンジ部75を支点として回動自在に取り付けられている。このキャップ74は、図18に示すように、その内側の部分がフレーム72の内部側に突出した形状に成形されている。これにより、キャップ74が閉じられたときにその突出した部分がLGAパッケージ40の上面(LSI45の背面)を押圧し、このLGAパッケージ40をスプリング端子付配線基板30に対して押し付けるようになっている。
【0060】
マザーボード50上に実装されたスプリング端子付配線基板30のスプリング端子20は、その接触部分22(図3)を介して、LGAパッケージ40の下面側のソルダレジスト層(図示せず)から露出するパッド41(電極端子)に接触している。その接触の際、LGAパッケージ40は、LGAソケット70のキャップ74によりその上面(図18に示すLSI45の背面)が押圧されるようになっている。これにより、LGAパッケージ40の下面側のパッド41がスプリング端子20の接触部分22に押圧され、その押圧力により、スプリング端子20のスプリング部分23(図3)が高さ方向に(接触部分22が接触するパッド41の面と直交する方向に)圧縮される。その結果、スプリング端子20の接触部分22とLGAパッケージ40のパッド41との接触力を高めることができ、LGAパッケージ40との電気的接続を安定に行うことができる(接続信頼性の向上)。
【0061】
なお、図18の例では特に示していないが、必要に応じてLGAパッケージ40上に、LSI45の背面にその一部分が接着されたキャップ状の放熱板を設けてもよい。この形態の場合、LGAパッケージ40をソケット70に搭載したときに、その放熱板がソケット70のキャップ74(その突出した部分)により押圧されることになる。
【0062】
次に、GNDプレーン12G及び13GをGND電位に接地する方法(接地手段)について、図4〜図7を参照しながら説明する。
【0063】
図4は、その接地手段の一例を適用した場合のスプリング端子付配線基板30の構成を断面図の形態で示したものである。また、図5は、この場合のスプリング端子付配線基板30を、スプリング端子20が実装されている側と反対側の面から見たときの概略構成を示している。図5の構成では、ソルダレジスト層16b、Ni/Auめっき層17b及びはんだボール19の図示を省略している。
【0064】
図4、図5に示す接地方法では、配線基板10の底面側(樹脂基板11のB面11B)にGND接地専用のパッドP2(G)を設け、これに対向するマザーボード50側にもGND接地専用のパッド51(G)を設け、両パッドP2(G)、51(G)間をはんだボール19を介して接続している。これにより、樹脂基板11のF面11Aに配置されたGNDプレーン12G、及びビア15Bを介して接続されたGNDプレーン13Gは、パッドP2(G)、Ni/Auめっき層17b、はんだボール19及びパッド51(G)を介してGND電位に接地される。
【0065】
図6は、接地手段の他の例を適用した場合のスプリング端子付配線基板30の構成を断面図の形態で示したものである。また、図7は、この場合のスプリング端子付配線基板30を両面から見たときの概略構成を示したものであり、(a)はスプリング端子20が実装されている側の面から見た上面図、(b)はその反対側の面から見た底面図である。図7の構成では、ソルダレジスト層16a,16b、Ni/Auめっき層17a,17b、はんだ18及びはんだボール19の図示を省略している。
【0066】
図6、図7に示す接地方法では、いずれかのスプリング端子20が予めグランド用端子20(G)として割り当てられている場合(つまり、各スプリング端子20について電気信号配置があらかじめ確定している場合)を前提としている。具体的には、グランド用として割り当てられたスプリング端子20(G)が接続されている配線パターン12Ga、12Gb(図7(a)参照)を、同じF面11A上に形成されたGNDプレーン12Gと接続している(パターンショート)。この場合、GNDプレーン12Gとの間に隙間なく一体に形成してもよいし(配線パターン12Ga)、GNDプレーン12Gと部分的に接続されるようパターニングしてもよい(配線パターン12Gb)。
【0067】
F面11A上の各配線パターン12Ga、12Gbは、それぞれビア15Bを介して、反対側のB面11B上に形成された対応する配線パターン13Gaに接続されている。この配線パターン13Gaについても同様に、同じB面11B上に形成されたGNDプレーン13Gと接続されている。
【0068】
以上説明したように、第1の実施形態に係るスプリング端子付配線基板30の構成によれば(図1〜図3参照)、配線基板10の上面側(樹脂基板11のF面11A)に配置された信号伝送用の配線パターン12Sにスプリング端子20が接続され、この配線パターン12Sを囲むようにGNDパターン12Gが「べた状」に形成されている(GNDプレーン)。同様に、配線基板10の底面側(樹脂基板11のB面11B)に配置された信号伝送用の配線パターン13Sにはんだボール19が接続され、この配線パターン13Sを囲むようにGNDパターン13Gが形成されている。そして、B面11B側の配線パターン13S及びGNDパターン13Gは、それぞれビア15A及び15Bを介して、F面11A側の配線パターン12S及びGNDパターン12Gに接続されている。
【0069】
このように本実施形態のスプリング端子付配線基板30では、被接続物(LGAパッケージ40)と実装用基板(マザーボード50)とを電気的に接続する信号伝送路の一部として用いるスプリング端子20の直近にGNDプレーン12Gが配置された構造となっている。
【0070】
このようにスプリング端子20の直近にGNDプレーン12Gを配置することにより、以下に記述する種々の利点が得られる。これらの利点について、図8〜図11を参照しながら説明する。
【0071】
図8はスプリング端子20の等価回路を示したものである。スプリング端子20の接触部分22(その端部をAとする)を入力側とし、接合部分21(その端部をBとする)を出力側とすると、この等価回路は、入出力間に直列に接続された抵抗成分R及びインダクタンス成分Lと、並列に接続されたコンダクタンス成分G及び容量成分Cとによって表される。ここに、各成分R,L,G,Cはそれぞれ単位長あたりの値を示すものとする。また、入力端Aに対する端子A’及び出力端Bに対する端子B’は、GNDプレーン12Gに相当する。
【0072】
特性インピーダンスZ0は、この等価回路(図8)から導出した偏微分方程式を解いて得られた線路上の電圧及び電流の各式から求められ(導出は省略)、以下の式(1)で 表される。
【0073】
Z0=√{(R+jωL)/(G+jωC)}……(1)
導体部分の損失(抵抗成分R)と誘電体部分の損失(コンダクタンス成分G)が十分に小さく無視できるものとすると、上記の式(1)は以下の式(2)のように近似できる。
【0074】
Z0≒√(L/C)……(2)
ここで、スプリング端子20の直近にGNDプレーンが無い場合には、等価的に形成される容量成分Cが小さく見えるので、この場合のスプリング端子20の特性インピーダンスZ0は「誘導性」を呈し、比較的高い値となる(上記の式(2)参照)。
【0075】
これに対し、本実施形態(図1、図2)のようにスプリング端子20の実装面(樹脂基板11のF面11A)をGNDプレーン12Gで覆った場合、当該端子20とその直近のGNDプレーン12Gとの間に等価容量成分Cが形成される。その結果、スプリング端子20の特性インピーダンスZ0は相対的に低下する(上記の式(2)参照)。つまり、スプリング端子20の直近にGNDプレーン12Gを配置することで、スプリング端子20の特性インピーダンスZ0を変えることができる。これは、特性インピーダンスZ0の調整が可能であることを意味する。
【0076】
図9は、スプリング端子20に流れる電流と該電流によって発生する磁束及び渦電流との関係を模式的に示したものである。
【0077】
スプリング端子20に電気信号が伝送されると電流Iaが流れ、この電流Iaによって磁界が発生し、磁束φaが形成される。スプリング端子20から発せられた磁束φaがGNDプレーン12Gに当たると、その磁束φaによりGNDプレーン12G上に電流(渦電流Ib)が誘導される。この誘導される渦電流Ibは、レンツの法則により、スプリング端子20から発せられた磁束φaを妨げる方向に流れる。つまり、この渦電流Ibによって、磁束φaを妨げる方向に磁束φbが発生する。
【0078】
これにより、スプリング端子20に電流Iaが流れることにより発生した磁束φaは、GNDプレーン12G上に誘導された渦電流Ibによって発生した磁束φbにより打ち消され、スプリング端子20の磁束が弱まる。その結果、スプリング端子20のインダクタンス(図8に示すインダクタンス成分L)が減少する。つまり、スプリング端子20の直近にGNDプレーン12Gを配置することで、スプリング端子20の特性インピーダンスZ0を変えることができる。これは、特性インピーダンスZ0の調整が可能であることを意味する。
【0079】
図10及び図11は、スプリング端子20とGNDプレーン12Gとの間を流れる電流の経路によって形成される閉回路(閉ループ)を模式的に示したものである。
【0080】
LGAソケットに実装されたLSI(LGAパッケージ40)からマザーボード50に向けて信号を出力する場合は、LSI側が「信号源SS(SS1,SS2)」となり、マザーボード側で信号を受信するデバイスが「負荷LD(LD1,LD2)」となる。その逆方向に信号を出力する場合は、マザーボード側が「信号源」となり、信号を受信するLSIが「負荷」となる。いずれの場合も、信号源と負荷との間に閉ループ回路が形成される(図10参照)。ただし、図10(a)に示す閉ループ回路は、比較例として示したものであり、GNDプレーンを備えていない場合に相当する。
【0081】
信号源を備えた1つの閉ループ回路は、信号が伝送路を通って負荷に伝送される際に電流が流れるが(往路)、その後は負荷の直近のグランド(GND)に流れ、リターン電流として信号源に戻ってくる(帰路)。その際、リターン電流は、GNDプレーン12G上で信号配線(往路)に最も近い部分(インピーダンスの低い部分)を流れる。
【0082】
図10(b)に示す「帰路」、図11に示す「帰路1」及び「帰路2」は、F面11Aに配置されたGNDプレーン12Gの、スプリング端子20に隣接した部分に相当する。
【0083】
このような閉ループ回路に電流が流れるとインダクタンスが発生する。一般にループコイルのインダクタンスはコイルのループ面積に比例するため、ループ面積を小さくした方がインダクタンスを低くすることができる。
【0084】
従って、本実施形態のようにスプリング端子20の直近にGNDプレーン12Gを配置すれば、そこにリターン電流が流れることになり、スプリング端子20を信号伝送路の一部として含む閉回路を最小面積の閉ループとすることができる(図10(b)参照)。これは、ループインダクタンスの低減に寄与する。
【0085】
また、スプリング端子20を含む閉回路によって形成される閉ループの面積が最小となることで(図11において梨地模様で示す部分)、隣接するスプリング端子20間での閉ループ間隔DSが広がる。その結果、閉ループ間の相互インダクタンスが低減し、隣接するスプリング端子20からの誘導性ノイズの干渉を受け難くなる(相互干渉ノイズの低減)。つまり、スプリング端子20を含めた信号伝送路に誘導されるノイズを低減することができる。
【0086】
図12はシミュレーションによる伝送特性の解析結果を示したものである。
【0087】
解析ツールとして、ANSOFT社製の電磁界解析ツール(HFSS13.0)を使用し、周波数:0〜4GHzの範囲で解析を行った。また、解析対象とするポートは、LSI(LGAパッケージ40)から信号出力するドライバとして、ポート1(LGAパッケージ40のパッド41)及びポート2(マザーボード50のパッド51)を定めた。また、解析するSパラメータは、S11(反射特性)及びS21(透過特性)とした。
【0088】
図12において(a)及び(b)は、それぞれ周波数の変化に対するSパラメータの反射特性(S11)及び透過特性(S21)を表している。また、実線は、F面11A及びB面11Bの両面にGNDプレーン12G,13Gを配置した場合の伝送特性を表し、破線は、F面11AのみにGNDプレーン12Gを配置した場合の伝送特性を表し、一点鎖線は、GNDプレーン無しの場合の伝送特性を表している。
【0089】
GNDプレーン無しの場合と比べて、F面11AのみにGNDプレーン12Gを配置すると、反射特性(S11)は2.2dB向上した(図12(a)参照)。また、F/B両面にGNDプレーン12G,13Gを配置すると、配線のインピーダンス整合がなされ、GNDプレーン無しの場合と比べて、反射特性(S11)は3.1dB向上した。
【0090】
透過特性(S21)については、F面11AのみにGNDプレーン12Gを配置した場合と、F/B両面にGNDプレーン12G,13Gを配置した場合とで、配線のインピーダンス整合による特性向上の効果にあまり差がなかった。それでも、いずれの場合も、GNDプレーン無しの場合と比べて、特性向上の効果は見られた。
【0091】
(第2の実施の形態…図13、図14参照)
図13は第2の実施の形態に係るスプリング端子付配線基板30aの構成を断面図の形態で示したものである。また、図14はこのスプリング端子付配線基板30aを両面から見たときの概略構成を示したものであり、(a)はスプリング端子20が実装されている側の面から見た上面図、(b)はその反対側の面から見た底面図である。図14の構成では、ソルダレジスト層16a,16b、Ni/Auめっき層17a,17b、はんだ18及びはんだボール19の図示を省略している。
【0092】
この第2の実施形態に係るスプリング端子付配線基板30a(図13、図14)は、上述した第1の実施形態に係るスプリング端子付配線基板30(図1、図2)の構成と比べて、配線基板10aを平面視したときにスプリング端子20がはんだ18を介して接合されるパッドP1(Ni/Auめっき層17a)の位置とはんだボール19が接合されるパッドP2(Ni/Auめっき層17b)の位置とが互いに重なり合うように各配線パターン12S,13Sを形成した点で相違する。このため、配線基板10aの上面側(樹脂基板11のF面11A)に配置される配線パターン12S(図14(a)参照)は、上述した第1の実施形態における図2(a)の構成とは異なり、大円形の部分LPと小円形の部分SPが左右方向に反転した形状となっている。
【0093】
スプリング端子付配線基板30aにおける他の部分の構成、及びGNDプレーン(GNDパターン12G,13G)の接地手段については、第1の実施形態の場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0094】
この第2の実施形態(図13、図14)においても、上述した第1の実施形態(図1、図2)の場合と同様に、スプリング端子20が接続されている配線パターン12Sを囲むように(配線パターン12Sの直近に)GNDプレーン12Gが配置されている。これにより、同様の作用効果を奏することができる。すなわち、スプリング端子20と基板上の配線パターン(12S,13Sなど)のインピーダンス整合に向けた調整を行うことができる。
【0095】
さらに、この第2の実施形態では、パッドP1と同等のピッチでパッドP2を設ける場合、図13に示すように配線パターンを引き回すと、パッドP1とパッドP2との間の配線長を短くすることができる。これは、電気特性上有利であり、特に、上述した信号伝送特性(Sパラメータ)の向上に寄与する。
【0096】
(第3の実施の形態…図15、図16参照)
図15は第3の実施の形態に係るスプリング端子付配線基板30bの構成を断面図の形態で示したものである。また、図16はこのスプリング端子付配線基板30bを両面から見たときの概略構成を示したものであり、(a)はスプリング端子20が実装されている側の面から見た上面図、(b)はその反対側の面から見た底面図である。図16の構成では、ソルダレジスト層16a,16b、Ni/Auめっき層17a,17b、はんだ18及びはんだボール19の図示を省略している。
【0097】
この第3の実施形態に係るスプリング端子付配線基板30b(図15、図16)は、上述した第1の実施形態に係るスプリング端子付配線基板30(図1、図2)の構成と比べて、以下の点で相違する。
【0098】
先ず、配線基板10bを平面視したときにスプリング端子20がはんだ18を介して接合されるパッドP1(Ni/Auめっき層17a)の位置とはんだボール19が接合されるパッドP2(Ni/Auめっき層17b)の位置とが互いに重なり合うように各配線パターン12Sa,13Saが形成されている。また、各配線パターン12Sa,13Sa(図16参照)は、上述した第1の実施形態における配線パターン12S,13S(図2参照)の形状とは異なり、円形の形状にパターニングされている。
【0099】
さらに、スプリング端子20が接合されるパッドP1とはんだボール19が接合されるパッドP2とは、樹脂基板11を貫通して設けられたビア15Cを介して電気的に接続されている。同様に、樹脂基板11のF面11A及びB面11Bにそれぞれ形成されたGNDパターン12G及び13Gも、樹脂基板11を貫通して設けられたビア15Dを介して電気的に接続されている。各ビア15C,15Dは、樹脂基板11の所要の箇所にそれぞれスルーホール(例えば、直径が150μm程度)を形成し、各スルーホールに導電性材料(導体)を充填することにより、形成することができる。
【0100】
スプリング端子付配線基板30bにおける他の部分の構成、及びGNDプレーン(GNDパターン12G,13G)の接地手段については、第1の実施形態の場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0101】
この第3の実施形態(図15、図16)においても、上述した第1の実施形態(図1、図2)の場合と同様に、スプリング端子20が接続されている配線パターン12Saを囲むように(配線パターン12Saの直近に)GNDプレーン12Gが配置されている。これにより、同様の作用効果を奏することができる。すなわち、スプリング端子20と基板上の配線パターン(12Sa,13Saなど)のインピーダンス整合に向けた調整を行うことができる。
【0102】
さらに、この第3の実施形態では、スプリング端子20が接合されるパッドP1とはんだボール19が接合されるパッドP2とはビア15Cを介して接続されている。従って、スプリング端子20と外部接続端子(はんだボール19)との間の信号伝搬経路長(配線長)を最短にすることができる。これは、上述した信号伝送特性(Sパラメータ)の向上に寄与する。
【0103】
(第4の実施の形態…図17参照)
図17は第4の実施の形態に係るスプリング端子付配線基板30cの構成を断面図の形態で示したものである。
【0104】
この第4の実施形態に係るスプリング端子付配線基板30c(図17)は、上述した第1の実施形態に係るスプリング端子付配線基板30(図1)の構成と比べて、GNDパターン14Gを配線基板10cの内層に配置した点で相違する。より具体的には、GNDパターン14Gは、スプリング端子20が接続されている配線パターン12Sの直下に位置する内層の配線層14に設けられている。
【0105】
スプリング端子付配線基板30cにおける他の部分の構成、及びGNDプレーン(GNDパターン14G)の接地手段については、基本的に第1の実施形態の場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0106】
この第4の実施形態(図17)においても、上述した第1の実施形態(図1)の場合と同様に、スプリング端子20が接続されている配線パターン12Sの近傍(直下の位置)にGNDプレーン14Gが配置されているので、同様の作用効果を奏することができる。すなわち、スプリング端子20と基板上の配線パターン(12S,13Sなど)のインピーダンス整合に向けた調整を行うことができる。
【0107】
なお、図17の例では配線基板10cを3層構造としているが、4層以上の多層構造としてもよい。この場合、最外層の配線層12,13以外の他の配線層(内層側)をすべてGNDプレーンとしてもよい。あるいは、第1〜第3の各実施形態のように最外層の配線層12,13にGNDプレーン12G,13Gを設けた上で、さらに第4の実施形態のように内層の配線層14にGNDプレーン14Gを設けた構造としてもよい。
【0108】
上述した各実施形態では、スプリング端子付配線基板30(30a,30b,30c)をLGAソケットの一部として(LGAパッケージ40の実装用として)適用した場合を例にとって説明したが、本発明のスプリング端子付配線基板の適用形態がこれに限定されないことはもちろんである。例えば、インターポーザや、半導体パッケージの試験装置等のソケットの一部として適用することも可能である。
【0109】
特に図示はしないが、インターポーザとして適用する場合のスプリング端子付配線基板は、配線基板の両面にそれぞれスプリング端子が接合された構造を有する。配線基板の構成については、各実施形態における配線基板10(10a,10b,10c)の構成と基本的に同じである。ただし、配線基板10(10a,10b,10c)の底面側に設けられているパッドP2(Ni/Auめっき層17b)上のはんだボール19は不要である。その代わりに、当該パッドP2(Ni/Auめっき層17b)上にはんだが被着され、このはんだを介してスプリング端子20の接合部分21が当該パッドP2に接合される。
【0110】
かかる構造を有したスプリング端子付配線基板(インターポーザ)は、図3に例示した実装構造におけるスプリング端子付配線基板30と同様の態様で使用することができる。すなわち、このインターポーザの上面側のスプリング端子20は、その接触部分22を介してLGAパッケージ40のパッド41との接続に使用され、これと反対側(底面側)のスプリング端子20は、その接触部分22を介してマザーボード50のパッド51との接続に使用される。
【0111】
また、上述した各実施形態では、配線基板10(10a,10b,10c)の基板本体として樹脂基板11を使用した場合を例にとって説明したが、基板本体の形態がこれに限定されないことはもちろんである。例えば、シリコン基板を使用してもよい。この場合の基板本体の形態としては、シリコン基板に複数の貫通孔(100μm程度の直径)を形成し、この貫通孔に導電性材料(例えば、Cu)を充填して貫通電極を形成する。その際、貫通電極は、その両端面がそれぞれシリコン基板の両面とほぼ同一面となるように形成する。また、この貫通電極と基板本体(シリコン基板)との間に、絶縁膜(例えば、シリコン酸化膜)を形成する。この基板本体(シリコン基板)では、基板面から露出する貫通電極の両端面が、上記の各パッドP1,P2に対応する。
【0112】
また、上述した第1〜第3の各実施形態では、GNDプレーン12G,13Gとして完全な「べた状」のパターンを形成した場合を例にとって説明したが、GNDプレーン12G,13Gのパターンがこれに限定されないことはもちろんである。例えば、メッシュ状のパターンや、マトリクス状に開口が設けられたパターンとしてもよい。このような形状にすることで、ソルダレジスト層16a,16bと樹脂基板11とが直接接する部分の面積が増大し、相互の密着性が向上する。
【符号の説明】
【0113】
10,10a,10b,10c…配線基板、
11(11A,11B)…樹脂基板(上面/F面、底面/B面)、
12,13,14…配線層、
12G,13G,14G…GNDプレーン(GNDパターン)、
12S,12Sa,13S,13Sa…信号伝送用の配線パターン、
12Ga,12Gb,13Ga…グランド用の配線パターン、
15A,15B,15C,15D…ビア、
16a,16b…ソルダレジスト層、
17a,17b…Ni/Auめっき層、
18…はんだ、
19…はんだボール(外部接続端子)、
20(21,22,23)…スプリング端子(接合部分、接触部分、スプリング部分)、
30,30a,30b,30c…スプリング端子付配線基板、
40…LGAパッケージ(被接続物)、
41,51…パッド(電極端子)、
50…マザーボード(実装用基板)、
60…スプリング端子付配線基板の実装構造、
70…LGAソケット、
72…フレーム、
74…(パッケージ押え用の)キャップ、
P1,P2…パッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面及びこれと反対側の第2の面を有する配線基板と、
前記配線基板の第1の面に実装されたスプリング端子とを備え、
前記配線基板の第1の面に設けられた配線層が、前記スプリング端子に電気的に接続された第1の配線パターンと、グランド電位に接地される第1のGNDパターンとを含み、
前記第1のGNDパターンが、前記第1の配線パターンから絶縁され、かつ、前記第1の配線パターンを囲むように前記第1の面に形成されていることを特徴とするスプリング端子付配線基板。
【請求項2】
前記配線基板の第2の面に設けられた配線層が、前記第1の配線パターンにビアを介して電気的に接続された第2の配線パターンと、前記第1のGNDパターンにビアを介して電気的に接続された第2のGNDパターンとを含み、
前記第2のGNDパターンが、前記第2の配線パターンから絶縁され、かつ、前記第2の配線パターンを囲むように前記第2の面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスプリング端子付配線基板。
【請求項3】
前記配線基板の内層に設けられた配線層の、前記第1の配線パターンの直下に位置する部分に、グランド電位に接地される第3のGNDパターンが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスプリング端子付配線基板。
【請求項4】
前記第1の配線パターン上の、前記スプリング端子が接合された第1のパッドと、前記第2の配線パターン上の、外部接続端子が接合された第2のパッドとが、ビアを介して相互に接続されていることを特徴とする請求項2に記載のスプリング端子付配線基板。
【請求項5】
前記スプリング端子がグランド用端子として割り当てられている場合に、前記第1の配線パターンは前記第1のGNDパターンと接続された形状を有し、かつ、前記第2の配線パターンも前記第2のGNDパターンと接続された形状を有することを特徴とする請求項2に記載のスプリング端子付配線基板。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のスプリング端子付配線基板と、被接続物と、実装用基板とを備え、
前記スプリング端子付配線基板が、前記スプリング端子を介して前記被接続物上の電極端子に接触するとともに、前記配線基板の第2の面側に設けられた外部接続端子を介して前記実装用基板上の電極端子に接続されていることを特徴とするスプリング端子付配線基板の実装構造。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載のスプリング端子付配線基板と、実装用基板と、前記スプリング端子付配線基板を収容可能な開口部を有するフレームとを備え、
前記フレームが前記実装用基板に固定され、前記スプリング端子付配線基板が、前記フレームの開口部内で、前記配線基板の第2の面側に設けられた外部接続端子を介して前記実装用基板上の電極端子に接続されていることを特徴とするソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−73882(P2013−73882A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214041(P2011−214041)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】