説明

スプレー容器

【課題】内容物の噴出状態を安定させることができるスプレー容器を提供する。
【解決手段】ステム22を上下動可能に収容するハウジング24と、ハウジング24とステム22との間に配設され、ステム22を上方付勢する付勢手段83と、上端がハウジング24内に向けて開放される一方、下端が容器本体2内で内容物に浸漬される吸上筒部26と、を備え、ステム22は、吸上筒部26内に連通する下側室62と、ノズル孔23aに連通する上側室63と、が上下方向に沿って区画されるとともに、下側室62、及び上側室63には、それぞれハウジング24内に連通可能な下側連通孔67、及び上側連通孔66が各別に形成され、ステム22には、容器本体2内の圧力に応じて拡縮変形することで、下側連通孔67を開閉可能とする弁筒体68が外嵌され、上側連通孔66は、ステム22の上下方向の移動に伴って逆止弁101により開閉可能とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体内に収容された内容物を噴出するスプレー容器として、容器本体内に空気を自力で供給して容器本体内を蓄圧し、蓄圧した空気によって容器本体から内容物を噴出する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的に、スプレー容器は、容器本体に上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムと、ステムの上端に装着され、容器本体内の内容物を噴出するノズル孔を有するノズル部材と、を備え、ノズル部材をステムとともに押下することにより、容器本体内とステム内とが連通され、容器本体内の内容物がノズル孔から噴出される構成とされ、容器本体には、筒状の固定部材が固定されるとともに、固定部材には、筒状の可動部材が容器軸方向に摺動自在に嵌合され、固定部材に対して可動部材を押し込むことにより、固定部材内の空気が押し出され、容器本体内に空気が流入し、容器本体と固定部材との間に、固定部材側から容器本体内への空気の流入を許容する一方、その逆の流れを禁止する逆止弁が設けられている。
このようなスプレー容器では、固定部材と、可動部材と、の協働によるピストン運動により、容器本体内に空気を供給し、容器本体内を蓄圧した後、ノズル部材を押下することにより、容器本体内に収容された内容物がノズル孔を通って噴出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平02−70749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、ノズル部材から噴出される内容物の液滴の大きさや噴出範囲等の噴出状態を安定させることに対しては改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内容物の噴出状態を安定させることができるスプレー容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るスプレー容器は、上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムと、該ステムの上端に装着され、容器本体内の内容物を噴出するノズル孔を有するノズル部材と、を備え、前記ノズル部材を前記ステムとともに押下することにより、前記容器本体内と前記ステム内とが連通され、前記容器本体内の内容物が前記ノズル孔から噴出される構成とされ、前記容器本体には、筒状の固定部材が固定されるとともに、該固定部材には、筒状の可動部材が容器軸方向に摺動自在に嵌合され、前記固定部材に対して前記可動部材を押し込むことにより、前記固定部材と前記可動部材との間の空気が押し出され、前記容器本体内に空気が流入し、前記容器本体と前記固定部材との間に、前記固定部材側から前記容器本体内への空気の流入を許容する一方、その逆の流れは禁止する逆止弁が設けられたスプレー容器であって、前記ステムを上下動可能に収容するハウジングと、該ハウジングと前記ステムとの間に配設され、前記ステムを上方付勢する付勢手段と、上端が前記ハウジング内に向けて開放される一方、下端が前記容器本体内で前記内容物に浸漬される吸上筒部と、を備え、前記ステムは、前記吸上筒部内に連通する下側室と、前記ノズル孔に連通する上側室と、が容器軸方向に沿って区画されるとともに、前記下側室、及び前記上側室には、それぞれ前記ハウジング内に連通可能な下側連通孔、及び上側連通孔が各別に形成され、前記ステムに外嵌されるとともに、前記容器本体内の圧力に応じて拡縮変形することで、前記下側連通孔を開閉可能とする弁筒体を有する弁部材を備え、前記上側連通孔は、前記ステムの容器軸方向の移動に伴って前記逆止弁により開閉可能とされていることを特徴とする。
【0008】
このような特徴により、容器本体の内圧が所定値以上になると、下側室内の圧力が下側連通孔を介して弁筒体に作用し、弁筒体を径方向の外側に押し広げることで、弁筒体が拡径する。これにより、下側連通孔が開放されて、下側室とハウジング内とが連通することで、下側室内の内容物が下側連通孔を通って下流側に向かって流通する。そして、弁筒体の開弁状態で、ノズル部材とともにステムを押下することで、逆止弁により閉塞されていた上側連通孔が開放され、ハウジングと上側室とが連通し、内容物が上側室内に流入する。これにより、ノズル孔から内容物が噴出される。
一方で、容器本体の内圧が所定値未満まで低下すると、弁筒体が復元(縮径)することで、下側連通孔が閉塞される。これにより、下側室とハウジング内との連通が遮断されることで、下側室よりも下流側への内容物の流通が停止される。よって、ノズル部材とともにステムを操作しても内容物が噴出されなくなるようになっている。
このように、容器本体内の圧力に応じて噴出を許容、または停止することができるので、内容物の噴出状態を安定させることができる。すなわち、弁筒体が開弁状態のときのみ噴出が許容されるため、一定圧力以上の好適な噴霧状態で液滴(内容物)を噴出することができる。
【0009】
また、本発明のスプレー容器において、前記弁部材と前記付勢手段とが一体的に形成されていてもよい。
【0010】
この場合には、弁部材を付勢手段と一体的に形成することで、部品点数の削減、及び低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスプレー容器によれば、内容物の噴出状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態におけるスプレー容器の断面図である。
【図2】ヘッド部材の断面図である。
【図3】図2に相当する断面図であって、内容物の噴出時の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係るスプレー容器を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るスプレー容器1は、内容物が収容される容器本体2と、容器本体2の口部11に装着されたヘッド部材3と、を備えている。なお、本実施形態では、容器本体2、及びヘッド部材3の各中心軸線は、共通軸上に位置している。以下、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿う方向を上下方向、上下方向に沿ったヘッド部材3側を上側、容器本体2側を下側という。また、容器軸Oに直交する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0014】
容器本体2は、上述した口部11と、口部11の下端に連設されて下方に向かうに従い漸次拡径された肩部12と、肩部12の下端から下方に向けて延設された胴部13と、胴部13の下端開口部を閉塞する底部14と、を有している。また、胴部13の下部は、上部に比べ縮径された縮径部15とされ、この縮径部15、及び底部14を下方から覆うように有底筒状のスタンド16が、縮径部15にアンダーカット嵌合されている。
【0015】
図1,2に示すように、ヘッド部材3は、容器本体2内に空気を供給するポンプ部材21と、上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステム22と、ステム22の上端に装着され、容器本体2内の内容物を噴出するノズル孔23aを有するノズル部材23と、ステム22に連通可能に構成されるとともに、ステム22を上下動可能に収容するハウジング24と、ハウジング24とステム22との間に配設され、ステム22を上方付勢する付勢手段83と、上端がハウジング24内に向けて開放される一方、下端が容器本体2内で内容物に浸漬される吸上筒部26と、を備えている。
【0016】
ポンプ部材21は、容器本体2の口部11に取り付けられた筒状の固定部材31と、固定部材31に対して上下方向に沿って摺動自在に嵌合された筒状の可動部材32(図1参照)と、を備えている。
固定部材31は、容器本体2内を上下方向に沿って延在する外筒33と、外筒33の径方向の内側に配置された内筒34と、外筒33、及び内筒34の下端部同士を連結する連結環35(図1参照)と、を備えている。
【0017】
外筒33の上端部には、径方向の外側に向けて張り出す外フランジ部36が形成され、この外フランジ部36がシール部材30(パッキン)を間に挟んで口部11の上端縁に支持されている。また、外フランジ部36は、固定キャップ37によって容器本体2に固定されている。固定キャップ37は、有頂筒状に形成され、径方向の中央部に円形の開口部38が形成された円板状の天板部39と、天板部39の外周縁から下方に向けて延設され、容器本体2の口部11に取り付けられた取付筒40と、を備えている。そして、天板部39の外周側と口部11の上端縁との間で、上述したシール部材30を介して外フランジ部36が挟持されている。なお、天板部39の開口部38は、上述した外筒33の内径よりも僅かに大きく形成されており、開口部38の内側には内筒34の上端部が配置されている。
【0018】
一方、内筒34の上端部には、径方向の内側に向けて張り出す内フランジ部41が形成されている。この内フランジ部41には、上下方向に沿って貫通する貫通孔42(図2参照)が周方向に沿って間隔をあけて複数形成されている。また、内フランジ部41の内周縁には、上方に向けてガイド筒部43が立設されている。
【0019】
図1に示すように、可動部材32は、上述した外筒33と内筒34との間に挿入されて外筒33と内筒34との間を上下方向に沿って摺動自在な摺動筒45(本実施形態では、外筒33の内面に摺動している)と、摺動筒45の上端部に取り付けられたキャップ46と、を備えている。
摺動筒45は、その下端部に径方向の外側に向けて張り出すフランジ部47を有している。このフランジ部47は、外周面が外筒33に密接している。フランジ部47の上方には、摺動筒45を径方向に沿って貫通するスリット48が、周方向に一定範囲で延びるように形成されている。なお、摺動筒45の下端縁には、上方に向けて窪んだ溝部44が形成されており、摺動筒45の下端部が径方向に弾性変形可能に構成されている。
なお、前記スリット48は複数設けてもよい。
また、摺動筒45の上部は、下部に比べて縮径した縮径部49とされ、この縮径部49の上端開口部を閉塞するように天板部50が連設されている。
【0020】
キャップ46は、天板部51、及び周壁部52を備える有頂筒状に形成されている。周壁部52は、容器本体2の胴部13とほぼ同径に形成され、容器本体2の口部11、及び肩部12を上方から覆うように配置されている。天板部51における径方向の中央部には、下方に沿って延設された嵌合筒53が形成され、摺動筒45の縮径部49に外嵌されている。
【0021】
図2に示すように、ステム22は、上下方向に沿って延びる筒状に形成され、本体筒部61と、本体筒部61を下側の下側室62、上側の上側室63に区画する仕切壁64と、を備えている。
本体筒部61は、上部が固定部材31のガイド筒部43(固定キャップ37の天板部39)よりも上方に突出した状態で、ガイド筒部43内に配設され、ガイド筒部43に対して上下移動可能に支持されている。また、本体筒部61は、上下方向におけるガイド筒部43よりも下側の部分に、径方向の外側に向けて突出する段部65が形成されており、この段部65が内フランジ部41との間で後述する逆止弁101を挟持している。
【0022】
本体筒部61における段部65よりも上側の部分には、本体筒部61を径方向に沿って貫通する上側連通孔66が周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では対向配置された一対)形成されている。上側連通孔66は、径方向の内側の開口部が上側室63内に向けて開放される一方、径方向の外側の開口部が逆止弁101により閉塞されている。
【0023】
仕切壁64は、本体筒部61の上下方向の中央部よりも下側の部分、具体的には段部65の下側の部分で本体筒部61内を上下方向に区画している。したがって、下側室62は、容器本体2における口部11の径方向の内側で、上側室63よりも小さく形成されている。また、本体筒部61における段部65よりも下側の部分には、本体筒部61を径方向に沿って貫通する下側連通孔67が周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では対向配置された一対)形成されている。下側連通孔67は、径方向の内側の開口部が下側室62内に向けて開放される一方、径方向の外側の開口部は後述する弁筒体68により閉塞されている。
【0024】
ノズル部材23は、有頂筒状に形成され、ノズル天板部71と、ノズル天板部71の外周縁から下方に沿って延設されたノズル周壁部72と、を有している。
ノズル天板部71は、面方向が上下方向に対して僅かに傾斜した状態で配置された円板状の部材である。ノズル天板部71における径方向の中央部には、下方に沿って延設された装着筒73が形成され、この装着筒73が上述したステム22の上端部分に外嵌されている。
ノズル周壁部72は、上方から下方に向かうに従い拡径された円錐台状に形成されている。ノズル周壁部72の上部における周方向の一部には、径方向の外側に向けて開口する上述したノズル孔23aが形成されている。このノズル孔23aは、上述した装着筒73内を介してステム22の上側室63内に連通している。
また、前記ノズル部材23は、前記貫通孔42を上方から覆うように位置している。
【0025】
ハウジング24は、上下方向に沿って延びる筒状に形成され、容器本体2内でステム22を径方向の外側から囲繞するように配設されている。具体的に、ハウジング24は、ステム22の本体筒部61における径方向の外側に配置された囲繞筒部75と、囲繞筒部75の下端部から径方向の内側に向けて延設されたリング部76と、リング部76の内周縁から上方に向けて延びる取付筒77と、を備えている。
【0026】
囲繞筒部75の上端縁には、下方に向けて窪んだ溝部78が周方向に間隔をあけて複数形成されている。溝部78は、囲繞筒部75における径方向の全長に亘って形成され、囲繞筒部75の内外を連通させている。また、囲繞筒部75における溝部78よりも下方には、径方向の外側に向けて張り出すフランジ部79が形成されている。フランジ部79は、上述した固定部材31の内筒34にアンダーカット嵌合されており、これによりハウジング24が固定部材31に取り付けられている。フランジ部79には、径方向の内側に向けて窪んだ連通溝81が周方向に間隔をあけて複数形成されている。これら連通溝81は、フランジ部79における上下方向の全長に亘って形成され、フランジ部79に対して上側空間と下側空間とを連通させている。なお、ハウジング24の囲繞筒部75と固定部材31の内筒34との間の空間は、容器本体2内に供給される空気が流通する空気流路R1を構成している。
【0027】
取付筒77は、上下方向の長さが囲繞筒部75よりも短く形成され、その内側に吸上筒部26が取り付けられている。吸上筒部26は、上端部がハウジング24に向けて開放される一方、下端部が容器本体2の底部14に近接する位置まで延設され、内容物に浸漬されている。また、取付筒77と囲繞筒部75との間には、両者間を架け渡すように径方向に沿って延びるリブ80が、周方向に間隔をあけて複数形成されている。これらリブ80は、下端部がリング部76に連設される一方、上端部が取付筒77よりも上方に位置している。
【0028】
ここで、容器本体2と固定部材31との間には、固定部材31側から容器本体2内への空気の流入を許容する一方、その逆の流れは禁止する逆止弁101が設けられている。この逆止弁101は、弾性変形可能なリング状の板材であり、内フランジ部41の貫通孔42を下方から覆い、容器本体2の内外を区画している。具体的に、逆止弁101は、その内周側が固定部材31の内フランジ部41と、ステム22の段部65及びハウジング24の囲繞筒部75と、の間に上下方向で挟持されている。これにより、逆止弁101の外周側は、径方向の外側に向かうに従い下方に垂れ下がった状態で保持され、外周縁が内筒に密接している。
【0029】
また、逆止弁101の内周面によって、ステム22の上側連通孔66が閉塞されている。この場合、ステム22が下方に移動することで、上側連通孔66が逆止弁101よりも下方に配置され、上側連通孔66が開放される。すなわち、上側連通孔66は、ステム22の上下方向の移動に伴って開閉可能とされている。
【0030】
本実施形態では、ステム22とハウジング24との間に弁部材25が配設されている。弁部材25は、有底筒状に形成され、ステム22とともにハウジング24内を上下移動可能に構成されている。具体的に、弁部材25は、ステム22の本体筒部61、及びハウジング24の囲繞筒部75の間で上下方向に沿って延設された上述した弁筒体68と、弁筒体68の下端開口部を閉塞する底部82と、を備えており、本実施形態においてはステム22を上方付勢する上述した付勢手段83が底部82の外周縁に連設されており、これらが弾性材料により一体的に形成されている。
【0031】
弁筒体68は、上述した本体筒部61において、段部65よりも下側の部分(下側室62に相当する部分)で下側連通孔67を閉塞するように外嵌されている。そして、弁筒体68は、下側室62内の圧力に応じて径方向に沿って拡縮変形可能に構成されている。すなわち、弁筒体68は、下側室62内の圧力に応じてステム22の本体筒部61に対して密接、離間することで、下側連通孔67を開閉可能とされている。
【0032】
底部82は、上側が本体筒部61の下端縁に当接して下側室62を下方から覆うように配置されている。また、底部82における径方向の中央部には、上下方向に沿って貫通する貫通孔84が形成されている。この貫通孔84は、吸上筒部26と下側室62とを連通させ、吸上筒部26を流通する内容物が下側室62内に流入するようになっている。
【0033】
付勢手段83は、弁部材25の底部82の外周縁において、上方から下方に向かうに従い径方向の外側に広がりながら延設されており、その下端部がハウジング24のリブ80の上端縁に支持されている。したがって、付勢手段83は、ステム22及び弁部材25の上下移動に伴って、底部82とハウジング24との間で弾性変形可能に構成されている。なお、付勢手段83は、底部82の全周に亘って形成されており、リブ80の上周縁と囲繞筒部75との接続部分に密接して、付勢手段83に対して径方向の内側と外側とをシールしている。
【0034】
次に、上述したスプレー容器1の作用について説明する。
まず、図1,2に示すように、固定部材31の外筒33と内筒34との間で可動部材32の摺動筒45を上下移動させることで、容器本体2内に空気を供給して容器本体2の内圧を高める。
具体的には、可動部材32の摺動筒45を外筒33と内筒34との間に挿入した状態で、摺動筒45を下方に向けて押し込み、固定部材31と可動部材32とで囲まれたシリンダ空間S1(摺動筒45のフランジ部47よりも下側の空間、摺動筒45と内筒34との間の空間、及び摺動筒45とノズル部材23との間の空間)を加圧する。すると、シリンダ空間S1の圧力が固定部材31の内フランジ部41に形成された貫通孔42を通して逆止弁101に作用する。これにより、逆止弁101の外周側が下方に向けて撓み変形することで、逆止弁101が開弁される。なお、内筒34の外周面に上下方向の全長に亘るとともに、周方向に沿って複数の縦溝が形成され、摺動筒45の一部が内筒34の外周面に摺接していてもよい。
【0035】
逆止弁101が開弁されると、シリンダ空間S1と容器本体2とが連通して、シリンダ空間S1から空気流路R1内に空気が流入する。空気流路R1内に流入した空気は、ハウジング24の連通溝81を通った後、ハウジング24の囲繞筒部75と固定部材31の内筒34との間を通って容器本体2内に供給される。なお、空気流路R1内に流入した空気の一部は、ハウジング24の溝部78を通って径方向の内側に向けて流通し、ステム22とハウジング24との間の貯留空間S2にも供給される。なお、貯留空間S2に供給される空気は、ステム22、及び逆止弁101により上側室63への流通が塞き止められている。
【0036】
また、可動部材32の摺動筒45を下端位置まで押し下げ、摺動筒45の押下操作を停止すると、摺動筒45によるシリンダ空間S1の加圧が停止され、逆止弁101が復元変形することで、逆止弁101が閉弁される。
その後、可動部材32の摺動筒45を引き上げると、シリンダ空間S1が負圧となり、この負圧により摺動筒45のスリット48が開放される。すると、外気がスリット48を通して流入し、シリンダ空間S1が大気圧まで上昇する。
そして、可動部材32の上下移動を繰り返すことで、固定部材31と、可動部材32と、の協働によるピストン運動により、容器本体2内に空気を供給し、容器本体2の内圧を高めることができる。
【0037】
ここで、容器本体2の内圧が高まると、容器本体2内の内容物が吸上筒部26を通って付勢手段83の内側空間に到達した後、弁部材25における底部82の貫通孔84を通って下側室62内に流入する。
そして、図3に示すように、容器本体2の内圧がさらに高まり所定値以上になると、下側室62内の圧力が下側連通孔67を介して弁筒体68に作用し、弁筒体68を径方向の外側に押し広げることで、弁筒体68が拡径する。これにより、下側連通孔67が開放されて、下側室62の内外が連通することで、下側室62内の内容物が下側連通孔67を通って貯留空間S2内に供給される(図3中矢印Y1参照)。なお、貯留空間S2に供給される内容物は、ステム22、及び逆止弁101により上側室63側への流通が塞き止められている。
【0038】
次に、スプレー容器1から内容物を噴出する場合は、まず可動部材32を引き上げて固定部材31から取り外し、ノズル部材23を押下する。ノズル部材23を押下すると、ステム22、及び弁部材25がノズル部材23とともに下方に向けて移動する。このとき、ステム22の上側室63に形成された上側連通孔66が、上下方向において逆止弁101よりも下方まで移動すると、貯留空間S2に向けて開放され、上側室63と貯留空間S2とが連通する。すると、逆止弁101とステム22によって塞き止められていた内容物、及び空気が上側連通孔66を通って、ステム22の上側室63内に流入する(図3中矢印Y2参照)。その後、ステム22内に流入した内容物は、ノズル部材23の装着筒73内を通った後、空気とともにノズル孔23aから噴出される。これにより、好適な噴霧形態で液滴が噴出される。
【0039】
ところで、本実施形態のスプレー容器1では、噴出を繰り返すことで、内容物とともに空気が容器本体2から排出され、容器本体2の内圧が低下する。
ここで、本実施形態では、容器本体2の内圧が所定値未満まで低下すると、弁筒体68が復元(縮径)することで、弁筒体68が再びステム22に密接する。これにより、下側連通孔67が閉塞され、下側室62と貯留空間S2との間での内容物の流通が遮断される。よって、この状態でノズル部材23を操作して、ステム22(上側室63)内とハウジング24内とが連通したとしても内容物が噴出されなくなるようになっている。なお、再び内容物を噴出するためには、可動部材32を固定部材31に装着して容器本体2の内圧を所定値以上まで高めることで、上述した作用と同様の作用によって内容物を噴出することができる。
【0040】
このように、本実施形態では、ステム22を下側室62と上側室63とに区画するとともに、容器本体2内の圧力に応じて弁筒体68により下側室62を開閉可能とし、ステム22の上下移動に伴って上側室63を開閉可能とする構成とした。
この構成によれば、容器本体2の内圧が所定値以上の場合は、下側連通孔67を開放して下側室62よりも下流側への内容物の流通を許容することができる。この場合には、下側連通孔67の開放時に、ノズル部材23とともにステム22を押下して上側室63の上側連通孔66が開放されることで、内容物が上側室63内に流入してノズル孔23aから内容物が噴出される。
一方で、容器本体2の内圧が所定値未満に低下した場合には、下側連通孔67を閉塞して下側室62よりも下流側への内容物の流通を停止することができる。この場合には、ノズル部材23とともにステム22を押下しても、上側室63内へ内容物が流入しないため、ノズル孔23aから内容物が噴出されないようになっている。
【0041】
したがって、容器本体2内の圧力に応じて内容物の噴出を許容、または停止することができるので、内容物の噴出状態を安定させることができる。すなわち、弁筒体68が開弁状態のときのみ噴出が許容されるため、一定圧力以上の好適な噴霧状態で液滴(内容物)を噴出することができる。
【0042】
また、本実施形態では、弁筒体68と付勢手段83とを一体的に形成することで、部品点数の削減、及び低コスト化を図ることができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、弁筒体68と付勢手段83(コイルスプリングなどの弾性部材でもよい)とを別体で形成しても構わない。
また、上述した実施形態では、ハウジング24における本体筒部61の上端縁に溝部78を形成する構成について説明したが、これに限らず、本体筒部61における上端縁よりも下方に径方向に貫通する貫通孔を形成しても構わない。
この構成によれば、本体筒部61の上端縁と逆止弁101とが全周に亘って均等に接触させることが可能になるので、逆止弁101の耐久性を向上でき、流通の阻害を生じることもなくなる。
【0044】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…スプレー容器 2…容器本体 22…ステム 23a…ノズル孔 23…ノズル部材24…ハウジング 25…弁部材 26…吸上筒部 31…固定部材 32…可動部材 62…下側室 63…上側室 66…上側連通孔 67…下側連通孔 68…弁筒体 83…付勢手段 101…逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムと、
該ステムの上端に装着され、容器本体内の内容物を噴出するノズル孔を有するノズル部材と、を備え、
前記ノズル部材を前記ステムとともに押下することにより、前記容器本体内と前記ステム内とが連通され、前記容器本体内の内容物が前記ノズル孔から噴出される構成とされ、
前記容器本体には、筒状の固定部材が固定されるとともに、該固定部材には、筒状の可動部材が容器軸方向に摺動自在に嵌合され、前記固定部材に対して前記可動部材を押し込むことにより、前記固定部材と前記可動部材との間の空気が押し出され、前記容器本体内に空気が流入し、前記容器本体と前記固定部材との間に、前記固定部材側から前記容器本体内への空気の流入を許容する一方、その逆の流れは禁止する逆止弁が設けられたスプレー容器であって、
前記ステムを上下動可能に収容するハウジングと、
該ハウジングと前記ステムとの間に配設され、前記ステムを上方付勢する付勢手段と、
上端が前記ハウジング内に向けて開放される一方、下端が前記容器本体内で前記内容物に浸漬される吸上筒部と、を備え、
前記ステムは、前記吸上筒部内に連通する下側室と、前記ノズル孔に連通する上側室と、が容器軸方向に沿って区画されるとともに、前記下側室、及び前記上側室には、それぞれ前記ハウジング内に連通可能な下側連通孔、及び上側連通孔が各別に形成され、
前記ステムに外嵌されるとともに、前記容器本体内の圧力に応じて拡縮変形することで、前記下側連通孔を開閉可能とする弁筒体を有する弁部材を備え、
前記上側連通孔は、前記ステムの容器軸方向の移動に伴って前記逆止弁により開閉可能とされていることを特徴とするスプレー容器。
【請求項2】
前記弁部材と前記付勢手段とが一体的に形成されていることを特徴とする請求項1記載のスプレー容器。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−10532(P2013−10532A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144146(P2011−144146)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】